説明

車体前部構造

【課題】フロントサイドフレームに入力される前方からの荷重を、より効果的にフロントピラーへと伝達できるようにする。
【解決手段】左右一対のフロントピラー2の下端部からそれぞれ前方へ延びる左右一対のエプロンレイン5と、フロントピラー2の前方において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム10と、エプロンレイン5およびフロントサイドフレーム10に結合された左右一対のサスペンションタワー部50とを有する。フロントサイドフレーム10が、サスペンションタワー部50付近において複数の結合メンバ11〜13に分岐されて、第1結合メンバ11が、フロントピラー2の下端部に結合される。好ましくは、第2結合メンバ12がサイドシル3に結合され、左右一対の第3結合メンバ13が車幅方向に伸びて互いに結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体前部における強度部材として、フロントピラーの前方に位置される左右一対のフロントサイドフレームがある。そして、フロントサイドフレームとフロントピラーの下端部から前方へ伸びるエプロンレインとに跨ってサスペンションタワー部が構成されることも一般に行われている。
【0003】
前方衝突時において、フロントサイドフレームに入力された前方からの荷重を、いかに効果的に車体に分散して伝達するかが重要であり、特にフロントピラーを通してル−フパネルへと衝撃をいかに効果的に伝達させるかが重要となる。特許文献1、特許文献2には、フロントサイドフレームとエプロンレインとを荷重伝達部材でもって結合すると共に、この荷重伝達部材を、サスペンションタワー部の側壁部を経由するように配設したものが開示されている。
【特許文献1】特開2003−182633号公報
【特許文献2】特開2006−21590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献に記載のように、フロントサイドフレームに入力された前方への荷重を、エプロンレインを介してフロントピラーへ伝達するようにした場合は、荷重伝達経路が大きく曲がりすぎることになって荷重をフロントピラーに効果的に伝達するという点では十分に満足のいかないものとなる。また、エプロンレインを、荷重伝達経路となるため、通常一般に要求されている以上に十分に強固なものに変更せざるを得ないものとなる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、フロントサイドフレームに入力される前方からの荷重を、より効果的にフロントピラーへと伝達できるようにした車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
左右一対のフロントピラーの下端部から前方へ延びる左右一対のエプロンレインと、
前記フロントピラーの前方において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、
車幅方向外方側上端部が前記エプロンレインに結合され、車幅方向内方側下端部が前記フロントサイドフレームに結合された左右一対のサスペンションタワー部と、
閉断面構造とされ、前記フロントサイドフレームのうち前記サスペンションタワー部付近と前記フロントピラーの下端部とを結合する左右一対の第1結合メンバと、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、フロントサイドフレームに入力された前方からの荷重は、閉断面構造とされた第1結合メンバによって効果的にフロントピラーへと伝達されることになり、ル−フパネルをも利用して効果的に荷重を受け止めることができる。また、第1結合メンバは、エプロンレインを介することなく直接的にフロントサイドフレームとフロントピラーとを結合しているので、荷重伝達経路が大きく曲げられることなく構成することが可能となって、フロントピラーへの荷重伝達を効果的に伝達する上でより一層好ましいものとなる。
【0007】
上記第1の解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項10に記載のとおりである。すなわち、
前記フロントサイドフレームに対して、サスペンションフレームが取付ボルトによって固定され、
前記第1結合メンバが、取付ボルトによって前記フロントサイドフレームに対して共締めされている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、サスペンションフレーム取付用の取付ボルトを有効に利用して、フロントサイドフレームと第1結合メンバとの結合を行うことができる。また、サスペンションフレームをフロントサイドフレームに対して強固に結合して、操縦安定性を向上させる上でも好ましいものとなる。
【0008】
閉断面構造とされ、前記フロントサイドフレームのうち前記サスペンションタワー部付近とサイドシルとを結合する左右一対の第2結合メンバと、
閉断面構造とされ、前記フロントサイドフレームのうち前記サスペンションタワー部付近同士を結合する第3結合メンバと、
を備えるようにしてある(請求項3対応)。この場合、フロントサイドフレームへ入力された前方からの荷重を、第2結合メンバを介してサイドシルへ効果的に伝達することができる。また、左右一対のフロントサイドフレーム同士は、実質的に第3結合メンバによって連結されて、左右一方のフロントサイドフレームに入力された荷重を第3結合メンバを介して左右反対側に位置するフロントピラーやサイドシルへと伝達して、荷重を広く分散して受け持たせる上で好ましいものとなる。
【0009】
正面視において、前記第1結合メンバと第2結合メンバと第3結合メンバとが、前記フロントサイドフレームを中心として該フロントサイドフレームの周方向略等間隔となる配置関係とされている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、フロントサイドフレームへ入力された前方からの荷重を、各結合メンバに対してバランスよく分配して伝達させる上で好ましいものとなる。
【0010】
ダッシュパネルと該ダッシュパネルの前方に位置する前記第1結合メンバ、第2結合メンバ、第3結合メンバとの間に、クラッシャブルゾ−ンを構成するための空間が形成されている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、前方衝突時の安全性向上の上で好ましいものとなる。
【0011】
フロアパネルの車幅方向中間部に、前後方向に延びる閉断面構造の縦フレーム部が構成され、
前記第3結合メンバの車幅方向中間部が、前記縦フレーム部の前端部に結合されている、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、フロントサイドフレームに入力される前方からの荷重を、縦フレーム部によっても受け持たせることができる。
【0012】
前記縦フレーム部が、フロアトンネル部の上端部に結合されて該フロアトンネル部を補強している、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、フロアトンネル部の上端部の補強が行われて、フロアパネル部分のねじり剛性や曲げ剛性向上の上で好ましいものとなる。
【0013】
前記縦フレーム部が、前記フロアトンネル部の上端部に左右一対構成されている、ようにしてある(請求項8対応)。この場合、縦フレーム部を、左右一対というように分散させた構成として、1つの縦フレーム部でもって同じ強度を得る場合に比して、スペースの有効利用や荷重を極力分散させて受け持つ等の上で好ましいものとなる。
【0014】
前記各縦フレーム部は、前記フロアトンネル部の上面側に位置されて該フロアトンネル部と共働して閉断面を構成する上側フレーム部と、前記フロアトンネル部の下面側に位置されて該フロアトンネル部と共働して閉断面を構成する下側フレーム部とで構成されている、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、縦フレーム部が実質的に2つの閉断面を有する構成として、縦フレーム部そのものを強度を十分に強いものとすることができる。
【0015】
サスペンションフレーム後端部の取付部位となるフロアトンネル部の下端部を車室外側から補強する補強メンバが設けられ、
前記補強メンバを前記フロントサイドフレームに対して連結するための連結メンバが設けられている、
ようにしてある(請求項10対応)。この場合、サスペンションフレームの取付部位の強度向上を図りつつ、フロントサイドフレームに入力される前方からの荷重を、強度的に優れたサスペンションフレームの取付部位でもって受け持たせることができる。
【0016】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項11に記載のように、
左右一対のサイドシルの前端部から上方へ伸びる左右一対のヒンジピラーと、
前記ヒンジピラーの上端部から上方へ伸びる左右一対のフロントピラーと、
前記ヒンジピラーの前方において前後方向に伸ばして配設された左右一対のフロントサイドフレームと、
前後方向に伸び、フロアトンネル部の上端部を補強する縦フレーム部と、
を備え、
前記左右一対のフロントサイドフレームの後端部に対して、それぞれ閉断面構造とされた第1結合メンバと第2結合メンバと第3結合メンバとの各前端部が結合されており、
前記第1結合メンバが、後方に向かうにつれて上方に位置するように伸びて、その後端部が前記フロントピラーの下端部に結合され、
前記第2結合メンバが、後方に向かうにつれて下方に位置するように伸びて、前記ヒンジピラーの下端部に結合され、
左右一対の前記第3結合メンバが、それぞれ車幅方向内方側に向けて伸びて互いに結合されると共に、前記縦フレーム部に結合されている、
ようにしてある。
【0017】
上記第2の解決手法によれば、フロントサイドフレームに入力された前方からの荷重は、閉断面構造とされた第1結合メンバによって効果的にフロントピラーへと伝達されることになり、ル−フパネルをも利用して効果的に荷重を受け止めることができる。また、第1結合メンバは、エプロンレインを介することなく直接的にフロントサイドフレームとフロントピラーとを結合しているので、荷重伝達経路が大きく曲げられることなく構成することが可能となって、フロントピラーへの荷重伝達を効果的に伝達する上でより一層好ましいものとなる。さらに、フロントサイドフレームへ入力された前方からの荷重を、閉断面構造とされた第2結合メンバを介してサイドシルへ効果的に伝達することができる。さらにまた、左右一対のフロントサイドフレーム同士は、閉断面構造とされて実質的に第3結合メンバによって連結されて、左右一方のフロントサイドフレームに入力された荷重を第3結合メンバを介して左右反対側に位置するフロントピラーやサイドシルへと伝達して、荷重を広く分散して受け持たせる上で好ましいものとなる。以上に加えて、縦フレーム部によってフロアトンネル部の補強を図りつつ、フロントサイドフレームに入力される前方からの荷重を縦フレーム部によっても受け持たせることができる。
【0018】
上記第2の解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項12に記載のとおりである。すなわち、
前記第1結合メンバと第2結合メンバと第3結合メンバとの各前端部が、上下方向に積層された積層部分を構成しており、
前記積層部分が、前記フロントサイドフレームの後端部に対して嵌合状態でもって結合され、
サスペンションフレームの取付ボルトが、前記積層部分を上下方向に貫通している、
ようにしてある(請求項12対応)。この場合、第1結合メンバ〜第3結合メンバのフロントサイドフレームへの結合部位を積層状態にして、フロントサイドフレームへの結合が容易になると共に、フロントサイドフレームから各結合メンバへと前方からの荷重を効果的に伝達することができる。また、取付ボルトを利用して各結合メンバ同士を強固に結合できると共に、フロントサイドフレームからの荷重を各結合メンバへと確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、フロントサイドフレームに入力された前方からの荷重を、フロントピラーへ効果的に伝達することができる。
請求項11に記載された発明によれば、フロントサイドフレームに入力された前方からの荷重を、フロントピラーのみならず、サイドシルや縦フレーム部へと効果的に伝達することができ、また左右一方のフロントサイドフレームに入力された荷重を左右反対側のフロントピラーやサイドシルへと伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1において、1は上下方向に伸びるヒンジピラーであり、このヒンジピラー1の上端部には、上下方向に伸びるフロントピラー2の下端部が結合されている。ヒンジピラー1の下端部には、前後方向に伸びるサイドシル3の前端部が結合されている。ヒンジピラー1,フロントピラー2,サイドシル3は、車体強度部材となるもので、それぞれ閉断面構造とされている。各部材1〜3は、それぞれ左右一対設けられて(車体左側部分については、図2を参照)、左右一対のサイドシル3の間がフロアパネル4として構成されている。フロントピラーの2の下端部、つまりヒンジピラー1とフロントピラー2との境界部位からは、エプロンレイン5が前方へ向けて伸びている。なお、フロントピラー2の上端部は、図示を略すル−フパネルに結合されている。
【0021】
ヒンジピラー1の前方には、前後方向に伸びるフロントサイドフレーム10が配設されている。フロントサイドフレーム10は、車体強度部材となるもので、閉断面構造とされている。このフロントサイドフレーム10は、エプロンレイン5よりも下方でかつ車体内方側に位置されている。フロントサイドフレーム10の後端部には、第1結合メンバ11,第2結合メンバ12および第3結合メンバ13が結合されている。各結合メンバ11〜13は、それぞれ閉断面構造とされて車体強度部材を構成するもので、フロントサイドフレーム10の後端部から上下方向に3本に分岐された形式とされている。
【0022】
上記第1結合メンバ11は、各結合メンバ11〜13のうちもっとも上方に位置されて、フロントサイドフレーム10の後端部とフロントピラー2の下端部(ヒンジピラー1との結合部位付近)とを結合している。より具体的には、第1結合メンバ11は、フロントサイドフレーム10の後方延長線上に位置するように一旦後方へ伸びた後、湾曲されつつ、後方に向かうにつれて車幅方向外方側および上方に向かうように伸びている。
【0023】
前記第2結合メンバ12は、各結合メンバ11〜13のうちもっとも下方に位置されて、フロントサイドフレーム10の後端部とヒンジピラー1の下端部(サイドシル3との結合部位)とを結合している。より具体的には、第2結合メンバ12は、フロントサイドフレーム10の後方延長線上に位置するように一旦後方に伸びた後、湾曲されつつ、ダッシュパネル(図示を略す)に結合された状態で、後方に向かうにつれて車幅方向外方側かつ下方に位置するように伸びている。
【0024】
前記第3結合メンバ13は、各結合メンバ11〜13のうち上下方向中間に位置されて、左右のフロントサイドフレーム10同士を連結している。具体的には、第3結合メンバ13は、フロントサイドフレーム10の後方延長線上に位置するように一旦後方に伸びた後、ダッシュパネル(図示を略す)に結合された状態で車幅方向内方側に向けて伸びて、左右の第3結合メンバ13同士が互いに同一直線上に位置するようにして互いに一体となっている。第3結合メンバ13と第1結合メンバ11および第2結合メンバ12との分岐部分に形成される空間S1は、後方に向かうにつれて徐々のその間隔が大きくなるような設定とされている。
【0025】
各結合メンバ11〜13は、図3に示すように、例えば角パイプを加工することによって形成されて、その前端部において、互いに上下方向において積層状態とされて、例えば溶接によって接合されており、この溶接部分が符合Yで示されると共に、積層部分が符合14で示される。そして、上記積層部分14は、フロントサイドフレーム10の後端部内に嵌合された状態でもって、例えば溶接によってフロントサイドフレーム10に対して接合されている(溶接部分が符合Yで示される)。
【0026】
各結合メンバ11〜13の積層部分14には、上下方向に伸びる取付ボルト15が貫通されている。すなわち、取付ボルト15は、その頭部15aが積層部分14の上面に突出された状態で、そのねじ部分が積層部分14の下面から下方へ突出している。そして、この取付ボルト15とこれに螺合されるナット16とによって、フロントサイドフレーム10の下方に配設されるサスペンションフレーム17の前後方向中間部が固定される。このような取付ボルト15の頭部15aよりも前方位置において、フロントサイドフレーム10の後端が位置されている。このような取付ボルト15によって、各結合メンバ11〜13の結合が強固に行われると共に、フロントサイドフレーム10に入力された前方からの荷重が、取付ボルト15を介して各結合メンバ11〜13に確実に伝達されるようになっている。
【0027】
左右一対のサイドシル3の間に構成されるフロアパネル4は、その車幅方向中間部において、上方へ膨出されたフロアトンネル部20を有する。このフロアトンネル部20は、車室とトランクルームとの境界付近に位置されるクロスメンバ21にまで伸びている。
【0028】
フロアトンネル部20の上端部には、左右一対の縦フレーム部30が構成されている。この縦フレーム部30は、前後方向に伸びて、フロアパネル4の前端部からクロスメンバ21まで伸びている。各縦フレーム部30は、図5に示すように、フロアトンネル部20の上端部のうち左右端部に位置されて、車室内側に位置する第1部材30Aと、車室外側に位置する第2部材30Bとによって構成されて、実質的に、2つの閉断面を有するように構成されている。このような縦フレーム部30の前端部が、前述した第3結合メンバ13の車幅方向中間部に結合されている。
【0029】
フロアトンネル部20は、その下端部が、補強メンバ35によって補強されている。この補強メンバ35は、フロアトンネル部20の車室外側に位置されて、フロアトンネル部20と共働して閉断面を構成している。補強メンバ35は、フロアトンネル部20の下端部を補強する(左右一対の閉断面構造を構成する)と共に、フロアトンネル部20の上下方向に伸びる部分に沿って伸びており、さらにフロアトンネル部20の上壁部にも沿うようにされていて、フロアトンネル部20の左右幅よりも大きな左右幅を有するように左右方向に連続している。そして、補強メンバ35のうちフロアトンネル部20の上壁部付近に位置する部分が、縦フレーム部30(の第2部材30B)に結合されている。
【0030】
前述した第2結合メンバ12の中間部と補強メンバ35の前端部とが、図4に示すように、連結メンバ40によって結合されている。図4は、フロントサイドフレーム10に関係する各部材を車体前方側から見た正面図である。この図4において、第3結合メンバ13に対して(水平方向線に対して)、第1結合メンバ11と第2結合メンバ12とが、略120の等間隔をなすように設定されている。換言すれば、フロントサイドフレーム10を中心として見たときに、3つの結合メンバ11〜13が、フロントサイドフレーム10の周方向に略等間隔に位置するように設定されている。
【0031】
図1において、6は、図示を略すダッシュパネルの上端部に構成されるカウルアッパパネルである。カウルアッパパネル6の前後方向位置、つまり車室とエンジンルームとを仕切るダッシュパネルの前後方向位置は、ヒンジピラー1の前端位置とほぼ同じ位置とされて、第1結合メンバ11,第2結合メンバ12,第3結合メンバ13の分岐部分よりも後方に位置されている。つまり、ダッシュパネルと上記各結合メンバ11〜13の分岐部分との間に、前後方向の空間S1が形成されて、この空間S1がクラッシュゾーン(衝撃吸収ゾーン)とされている。
【0032】
前述したサスペンションフレーム17は、全体的に方形の枠形とされて、その後端部が、前述の補強メンバ35の下面にボルト固定され、その前端部がフロントサイドフレーム10の前端部下面にボルト固定され、その前後方向中間部が、前述した取付ボルト15によって各結合メンバ11〜13の積層部分14に固定されている。そして、サスペンションフレーム17のうち前後方向に左右一対の前後方向に伸びる部分の後端部上面には、上方に向けて開口された弱化部17aが形成されている。
【0033】
フロントサイドフレーム10に関連して、サスペンションタワー部50が構成されている。すなわち、サスペンションタワー部50は、下方が開口されたキャップ状とされて、その上端部のうち車幅方向外側端部がエプロンレイン5に結合され、その下端部のうち車幅方向内方側端部が、フロントサイドフレーム10およびこれに連なる各結合メンバ11〜13の積層部分14に結合されている。
【0034】
サスペンションタワー部50の前後には、前連結メンバ51と後連結メンバ52とが配設されている。前連結メンバ51は、閉断面構造とされて、エプロンレイン5の前端部とフロントサイドフレーム10とを連結している。この前連結メンバ51は、さらに、サスペンションタワー部50の前側壁部に接合されている。
【0035】
前記後連結メンバ52は、閉断面構造とされて、エプロンレイン5のうちサスペンションタワー部50の直後方位置と第1結合メンバ11の中間部とを連結している。後連結メンバ52は、車幅方向に伸びてサスペンションタワー部50の後側壁部に接合された横部分52aと、横部分52aの車幅方向内方側端部から後方に伸びて第1結合メンバ11に連なる縦部分52bとを有して、平面視において略L字形状とされている。各連結メンバ51,52によって、エプロンレイン5とフロントサイドフレーム10とが結合されて剛性が向上されると共に、サスペンションタワー部50の補強が行われる(操縦安定性の向上)。
【0036】
いま、前方衝突したときを想定すると、フロントサイドフレーム10には、前方からの荷重が入力される(後方へ向かう衝撃が入力される)。このフロントサイドフレーム10に入力された前方からの荷重Fは、図1矢印で示すように分散さえて伝達される。すなわち、荷重Fは、第1結合メンバ11を介してフロントピラー2に伝達されると共に、前連結メンバ51からエプロンレイン5を介してフロントピラー2へ伝達される。また、荷重Fは、第2結合メンバ12を介してサイドシル3へと伝達されると共に、連結メンバ40を介して補強メンバ35へ伝達される。さらに、荷重Fは、第3結合メンバ13を介して、縦フレーム部30へ伝達されることになる。このように、フロントサイドフレーム10に入力された前方からの荷重Fは、図4に示すような配置関係から、フロントピラー2,サイドシル3,縦フレーム部30へとバランスよく分散して伝達されることになる。
【0037】
前方衝突時において、サスペンションフレーム17に入力される前方からの荷重は、フロントサイドフレーム10および補強部材35によってしっかりと受け止められる。また、サスペンションフレーム17は、その前後方向中間部でも取付ボルト15を介してフロントサイドフレーム10やこれに連なる結合メンバ11〜13と上下方向において結合されているので、この中間部分でフロントサイドフレーム10とサスペンションフレーム17とが上下方向に大きく開いてしまうような事態が防止されて、前方からの荷重をフロントサイドフレーム10とサスペンションフレーム17とで共働して効果的に受け止めることができる。そして、所定以上の大きな荷重が入力されると、弱化部17aで座屈されることになり、サスペンションフレーム17そのものが車室側に向けて大きく後退してしまう事態が防止あるいは抑制されることになる。
【0038】
サスペンションタワー部50付近は、前後の連結メンバ51,52によってその剛性が飛躍的に向上されて、サスペンションタワー部50、各連結メンバ51,52部分を含む剛体部分によって、フロントサイドフレーム10に入力される前方からの荷重が、フロントピラー2へ効果的に伝達されることにもなる。
【0039】
クラッシュゾーンS1の設定によって、前方衝突時に、車体強度部材としての第1結合メンバ11、第2けめ 12、第3結合メンバ13等が車室内に向けて侵入してくる事態が防止あるいは抑制されることになる。また、第1結合メンバ11と第2結合メンバ12および第3結合メンバ13との分岐部分に構成される空間S1によって、この分岐部分が徐々につぶれ変形されて、衝撃吸収が効果的に行われることになる。
【0040】
図6は、本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符合を付してその重複した説明は省略する(このことは、以下の第3の実施形態についても同じ)。図6に示す実施形態では、取付ボルト15の位置を、各結合メンバ11〜13の積層部分14とフロントサイドフレーム10とのの嵌合部分において行うようにしたものである(共締め)。本実施形態では、取付ボルト15を利用して、フロントサイドフレーム10と各結合メンバ11〜13との結合強度を高めることができる。
【0041】
図7は、本発明の第3の実施形態を示すものである。本実施形態では、縦フレーム部35B(図5における35に相当)を、フロアトンネル部20の上壁部付近において、車室外側において1つ構成するようにしたものであり(フロアトンネル部20と共働して構成される閉断面も全体として1つのみ)、これにより、車室内方側への突出容積を小さくして、車室内容積確保の上で好ましいものとなる。また、補強部材35B(図5における35に相当)を、フロアトンネル部20の下端部においてのみ、左右一対構成するようにしてある。
【0042】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。フロアトンネル部20に構成される縦フレーム部30は、フロアトンネル部20の車室内方側にのみ構成するようにしてもよい。縦フレーム部30を有しないものであってもよい。フロアトンネル部20の左右位置において、前後方向に伸びる左右一対のフロアフレームを有するものであってもよく、この場合、フロアフレームの前端部を、連結メンバを介して、第3結合メンバ13あるいは第2結合メンバ12に連結するようにしてもよい。連結メンバ40は、第2結合メンバ12を介してフロントサイドフレーム10と結合させるようにしたが、フロントサイドフレーム10に直接結合するようにしてもよく、この場合、各結合メンバ11〜13と共に、上下方向に積層された積層部分を構成して、フロントサイドフレーム10の後端部に結合するようにすることもでき、あるいはフロントサイドフレーム10の下面に結合するようにすることもできる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の左側部分の構成を示す要部斜視図。
【図3】フロントサイドフレームと結合メンバとの結合部位を示す要部斜視図。
【図4】フロントサイドフレームと各結合メンバ部分を前方から見た簡略正面図。
【図5】図1のX5−X5線相当断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示すもので、図3に対応した要部斜視図。
【図7】本発明の第3の実施形態を示すもので、図5に対応した断面図。
【符号の説明】
【0044】
1:ヒンジピラー
2:フロントピラー
3:サイドシル
4:フロアパネル
5:エプロンレイン
10:フロントサイドフレーム
11:第1結合メンバ
12:第2結合メンバ
13:第3結合メンバ
14:積層部分
15:取付ボルト
17:サスペンションフレーム
20:フロアトンネル部
30:縦フレーム部
30B:縦フレーム部
35:補強メンバ
40:連結メンバ
50:サスペンションタワー部
51:前連結メンバ
52:後連結メンバ
S1:空間
S2:空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のフロントピラーの下端部から前方へ延びる左右一対のエプロンレインと、
前記フロントピラーの前方において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、
車幅方向外方側上端部が前記エプロンレインに結合され、車幅方向内方側下端部が前記フロントサイドフレームに結合された左右一対のサスペンションタワー部と、
閉断面構造とされ、前記フロントサイドフレームのうち前記サスペンションタワー部付近と前記フロントピラーの下端部とを結合する左右一対の第1結合メンバと、
を備えていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記フロントサイドフレームに対して、サスペンションフレームが取付ボルトによって固定され、
前記第1結合メンバが、取付ボルトによって前記フロントサイドフレームに対して共締めされている、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
閉断面構造とされ、前記フロントサイドフレームのうち前記サスペンションタワー部付近とサイドシルとを結合する左右一対の第2結合メンバと、
閉断面構造とされ、前記フロントサイドフレームのうち前記サスペンションタワー部付近同士を結合する第3結合メンバと、
を備えていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項4】
請求項3において、
正面視において、前記第1結合メンバと第2結合メンバと第3結合メンバとが、前記フロントサイドフレームを中心として該フロントサイドフレームの周方向略等間隔となる配置関係とされている、ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
ダッシュパネルと該ダッシュパネルの前方に位置する前記第1結合メンバ、第2結合メンバ、第3結合メンバとの間に、クラッシャブルゾ−ンを構成するための空間が形成されている、ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項6】
請求項3ないし請求項4のいずれか1項において、
フロアパネルの車幅方向中間部に、前後方向に延びる閉断面構造の縦フレーム部が構成され、
前記第3結合メンバの車幅方向中間部が、前記縦フレーム部の前端部に結合されている、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記縦フレーム部が、フロアトンネル部の上端部に結合されて該フロアトンネル部を補強している、ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項8】
請求項6において、
前記縦フレーム部が、前記フロアトンネル部の上端部に左右一対構成されている、ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項9】
請求項6において、
前記各縦フレーム部は、前記フロアトンネル部の上面側に位置されて該フロアトンネル部と共働して閉断面を構成する上側フレーム部と、前記フロアトンネル部の下面側に位置されて該フロアトンネル部と共働して閉断面を構成する下側フレーム部とで構成されている、ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、
サスペンションフレーム後端部の取付部位となるフロアトンネル部の下端部を車室外側から補強する補強メンバが設けられ、
前記補強メンバを前記フロントサイドフレームに対して連結するための連結メンバが設けられている、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項11】
左右一対のサイドシルの前端部から上方へ伸びる左右一対のヒンジピラーと、
前記ヒンジピラーの上端部から上方へ伸びる左右一対のフロントピラーと、
前記ヒンジピラーの前方において前後方向に伸ばして配設された左右一対のフロントサイドフレームと、
前後方向に伸び、フロアトンネル部の上端部を補強する縦フレーム部と、
を備え、
前記左右一対のフロントサイドフレームの後端部に対して、それぞれ閉断面構造とされた第1結合メンバと第2結合メンバと第3結合メンバとの各前端部が結合されており、
前記第1結合メンバが、後方に向かうにつれて上方に位置するように伸びて、その後端部が前記フロントピラーの下端部に結合され、
前記第2結合メンバが、後方に向かうにつれて下方に位置するように伸びて、前記ヒンジピラーの下端部に結合され、
左右一対の前記第3結合メンバが、それぞれ車幅方向内方側に向けて伸びて互いに結合されると共に、前記縦フレーム部に結合されている、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項12】
請求項11において、
前記第1結合メンバと第2結合メンバと第3結合メンバとの各前端部が、上下方向に積層された積層部分を構成しており、
前記積層部分が、前記フロントサイドフレームの後端部に対して嵌合状態でもって結合され、
サスペンションフレームの取付ボルトが、前記積層部分を上下方向に貫通している、
ことを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−137507(P2008−137507A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326010(P2006−326010)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】