説明

車体構造

【課題】サイドメンバアウタパネルとフロアパネルとの接合部のシール作業性を向上させる。
【解決手段】車体構造10によれば、サイドメンバアウタパネル18の中間パネル部22がフロアパネル14側に向けて延設されており、しかも、この中間パネル部22の延設端部がフロアパネル14の車両幅方向外側の接合壁部16に接合されている。従って、サイドメンバアウタパネル18とフロアパネル14との接合部P1の位置がフロア面14Aと略同じ高さとなるので、これにより、フロア面14A側(車両上下方向上側)からサイドメンバアウタパネル18とフロアパネル14との接合部P1にシーラ32を塗布する際のシール作業性を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に係り、特に、車両幅方向に延在されたフロアパネルよりも車両幅方向外側に車体側部を構成するアウタパネルを備えた構成された車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車体構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1の背景技術には、ワゴン車の後端部の例が開示されている。この特許文献1に記載の例では、車両幅方向にフロアパネルが延在されており、このフロアパネルよりも車両幅方向外側には、アウタパネルが設けられている。
【0003】
アウタパネルは、車両上下方向に延在されており、その車両上下方向下端部にてフロアパネルの車両幅方向外側から垂下された下端部と接合されている。
【特許文献1】特開2005−313797号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載の如く、アウタパネルが、その車両上下方向下端部にてフロアパネルの車両幅方向外側から垂下された下端部と接合される構成とされた場合には、アウタパネルとフロアパネルとの間に凹部が形成され、しかも、この凹部の底部にアウタパネルとフロアパネルとの接合部が位置する。このため、この接合部のシール作業を車室内側(上側)から行い難かった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、アウタパネルとフロアパネルとの接合部のシール作業性を向上させることが可能な車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車体構造は、車両幅方向に延在されたフロアパネルと、前記フロアパネルよりも車両幅方向外側に配置されると共に車両上下方向に延在されて車体側部を構成し、且つ、その車両上下方向中間に位置する中間パネル部が車両幅方向に延設されて前記フロアパネルに接合されたアウタパネルと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の車体構造によれば、アウタパネルの中間パネル部が車両幅方向に延設されてフロアパネルに接合されている。従って、アウタパネルとフロアパネルとの接合部の位置がフロア面と略同じ高さとなるので、これにより、フロア面側(車両上下方向上側)からアウタパネルとフロアパネルとの接合部にシーラを塗布する際のシール作業性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、請求項1に記載の車体構造によれば、アウタパネルとフロアパネルとが直接的に接合されているので、フロアパネルとアウタパネルとの間に例えばサイドパネル等を介在させる必要が無い。これにより、フロアパネルとアウタパネルとの間の例えばサイドパネル等を廃止することで、結果として、車体の軽量化を図ることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の車体構造は、請求項1に記載の車体構造において、前記アウタパネルの前記中間パネル部よりも車両上下方向上側の上側パネル部には、車室内側の空気を車室外側に排出するためのベンチレーションダクトが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の車体構造によれば、アウタパネルには、フロアパネルと接合される中間パネル部とは別に上側パネル部が設けられており、車室内側の空気を車室外側に排出するためのベンチレーションダクトは、この上側パネル部に設けられている。従って、フロアパネルと接合される中間パネル部とは別に上側パネル部を設けることで、ベンチレーションダクトの配置スペースを十分に確保できる。
【0011】
請求項3に記載の車体構造は、請求項1又は請求項2に記載の車体構造において、前記フロアパネルの車両上下方向下側には、バンパカバーが周り込んで配置され、前記アウタパネルの前記中間パネル部よりも車両上下方向下側の下側パネル部は、前記フロアパネルと前記バンパカバーとの間の車両上下方向の開口を塞ぐように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の車体構造によれば、アウタパネルに設けられた下側パネル部がフロアパネルとバンパカバーとの間の車両上下方向の開口を塞ぐので、これにより、フロアパネルとバンパカバーとの間の車両上下方向の開口を介してタイヤノイズ等が車室内に進入することを抑制できる。これにより、車室内の遮音性を高めることができる。
【0013】
請求項4に記載の車体構造は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車体構造において、前記フロアパネルの車両上下方向下側には、バンパカバーが周り込んで配置され、前記アウタパネルの前記中間パネル部よりも車両上下方向下側の下側パネル部は、前記バンパカバーに接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の車体構造によれば、アウタパネルの下側パネル部がバンパカバーに接続されている。従って、アウタパネルによってバンパカバーを支持することができる。これにより、バンパカバーの取付剛性を確保できる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したように、本発明によれば、アウタパネルとフロアパネルとの接合部の位置がフロア面と略同じ高さとなるので、これにより、フロア面側(車両上下方向上側)からアウタパネルとフロアパネルとの接合部にシーラを塗布する際のシール作業性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る車体構造10をSUV等の車両12に適用した例について説明する。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態に係る車体構造10が適用された車両12の側面図、図2には、図1の2−2線断面図、図3には、図1のA部においてバンパカバー34を取り外した状態における車体構造10の構成を示す図が示されている。なお、これらの図において、矢印Frは、車両前後方向前側、矢印Outは、車両幅方向外側、矢印Upは、車両上下方向上側をそれぞれ示している。
【0018】
図2に示されるように、本発明の一実施形態に係る車体構造10が適用された車両12では、車体中央側にフロアパネル14(リアフロアパン)が設けられている。フロアパネル14は、車両幅方向に延在されており、その車両幅方向外側の部分に車両上下方向上側に向けて折り曲げられた接合壁部16を有して構成されている。
【0019】
また、この車両12では、フロアパネル14よりも車両幅方向外側に車体後方側部を構成するためのサイドメンバアウタパネル18が配置されている。このサイドメンバアウタパネル18は、概ね車両上下方向に延在されており、車両上下方向上側から下側に向けて順に、上側パネル部20、中間パネル部22、下側パネル部24を有して構成されている。
【0020】
上側パネル部20は、中間パネル部22の車両幅方向外側の端部から車両上下方向上側に向けて延設されている。また、この上側パネル部20の車両上下方向中間部には、車室内の空気を車室外に排出するためのベンチレーションダクト26が穿設されている。このベンチレーションダクト26には、筒状のドラフタ28が設けられており、このドラフタ28には、例えばゴム製の蓋材30が開閉自在に設けられている。
【0021】
中間パネル部22は、フロアパネル14のフロア面14Aと略同一の高さに設けられ、上側パネル部20の車両上下方向下側の端部から車両幅方向に沿ってフロアパネル14側に向けて延設されている。また、この中間パネル部22のフロアパネル14側の延設端部は、上述のフロアパネル14に設けられた接合壁部16に接合されている。さらに、この中間パネル部22とフロアパネル14との接合部P1には、車両上下方向上側からシーラ32が塗布されている。
【0022】
下側パネル部24は、中間パネル部22のフロアパネル14側の延設端部から車両上下方向下側に向けて延設されている。また、この下側パネル部24は、フロアパネル14の車両幅方向外側の端部とバンパカバー34の車両上下方向下側の端部との間の車両上下方向の開口36を塞ぐように構成されている。
【0023】
そして、この下側パネル部24の車両上下方向下側の端部には、ボルト及びナットからなる締結具38によってブラケット40の一端が接合されている。また、このブラケット40の他端には、フロアパネル14の車両上下方向下側に周り込んで配置されたバンパカバー34の下端部がリベット42によって接続されている。
【0024】
さらに、この下側パネル部24には、図2,図3に示されるように、車両上下方向に延びる補強用の剛性ビード44が複数形成されている。この剛性ビード44は、下側パネル部24の一般面から車両幅方向外側に膨出するように構成されている。
【0025】
なお、この車両12では、図3に示されるように、サイドメンバアウタパネル18に設けられた下側パネル部24の車両上下方向上側の端部に、ホイルハウスインナパネル46が接合されている。
【0026】
また、このホイルハウスインナパネル46とサイドメンバアウタパネル18に設けられた下側パネル部24の車両前後方向前側の端部とには、ホイルハウスインナガセット48が接合されている。さらに、サイドメンバアウタパネル18の車両前後方向後側の端部には、ロアバックパネル50が接合されている。
【0027】
次に、比較例の構成と比較しながら、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
図4,図5には、本発明の一実施形態に対する比較例が示されている。先ず、比較例の構成をはじめに説明すると、図4,図5に示されるように、比較例に係る車体構造60が適用された車両62では、サイドメンバアウタパネル68のベンチレーションダクト76よりも下側のパネル部74が車両上下方向上側から下側に向かうに従って車両幅方向外側から内側へ向かうように湾曲して構成されている。
【0029】
また、フロアパネル64の車両幅方向外側の端部には、リアフロアサイドパネル77の車両上下方向上側の端部が接合されている。このリアフロアサイドパネル77は、フロアパネル64の車両幅方向外側の端部から車両上下方向下側に向けて延設されており、その車両上下方向下側の端部は、上述のサイドメンバアウタパネル68の車両上下方向下側の端部に接合されている。
【0030】
また、このリアフロアサイドパネル77とサイドメンバアウタパネル68との接合部P2には、締結具88によってブラケット90の一端が接合されており、このブラケット90の他端には、バンパカバー84の下端部がリベット92によって接続されている。さらに、上述のリアフロアサイドパネル77とサイドメンバアウタパネル68との接合部P2には、車両上下方向上側からシーラ82が塗布されている。
【0031】
次に、この比較例に係る車体構造10の問題点について考察すると、この比較例に係る車体構造60が適用された車両62では、サイドメンバアウタパネル68とリアフロアサイドパネル77とによって凹部80が形成され、しかも、この凹部80の底部にサイドメンバアウタパネル68とリアフロアサイドパネル77との接合部P2が位置する。すなわち、上述のリアフロアサイドパネル77とサイドメンバアウタパネル68との接合部P2は、フロアパネル64のフロア面64Aから下がった位置に配置されている。このため、この接合部P2にフロア面64A側(車両上下方向上側)からシーラ82を塗布する際のシール作業性に劣る。
【0032】
また、この比較例に係る車体構造60が適用された車両62では、サイドメンバアウタパネル68とフロアパネル64とを接合するためにリアフロアサイドパネル77を設けている。このため、このリアフロアサイドパネル77を設けることにより車体の重量が増加する。
【0033】
さらに、この比較例に係る車体構造60が適用された車両62に、例えば、フレーム構造が適用された場合には、フロアパネル64の高さが高くなる。そこで、バンパカバー84の位置をフレーム構造の場合と同一高さに保つために、例えば、図4の想像線(二点鎖線)で示される如く、ブラケット90を車両上下方向下側に延長すると、このブラケット90は車両前後方向幅の短い部材であるため、サイドメンバアウタパネル68とバンパカバー84との車両上下方向の開口86が大きくなる。この結果、図4中矢印Aで示す如く、この開口86及びベンチレーションダクト76を介して車室内へ進入する音が大きくなり、車室内の遮音性が低下する。
【0034】
また、上述の如く、ブラケット90を車両上下方向下側に延長した場合には、バンパカバー84の取付剛性が低下する。
【0035】
これに対し、図2に示される本発明の一実施形態に係る車体構造10によれば、サイドメンバアウタパネル18の中間パネル部22がフロアパネル14側に向けて延設されており、しかも、この中間パネル部22の延設端部がフロアパネル14の車両幅方向外側の接合壁部16に接合されている。従って、サイドメンバアウタパネル18とフロアパネル14との接合部P1の位置がフロア面14Aと略同じ高さとなるので、これにより、フロア面14A側(車両上下方向上側)からサイドメンバアウタパネル18とフロアパネル14との接合部P1にシーラ32を塗布する際のシール作業性を向上させることが可能となる。
【0036】
また、本発明の一実施形態に係る車体構造10によれば、サイドメンバアウタパネル18とフロアパネル14とが直接的に接合されているので、フロアパネル14とサイドメンバアウタパネル18との間に比較例に係る車体構造60の如くリアフロアサイドパネル77を介在させる必要が無い。これにより、リアフロアサイドパネル77を廃止することで、結果として、車体の軽量化を図ることが可能となる。
【0037】
さらに、本発明の一実施形態に係る車体構造10によれば、サイドメンバアウタパネル18に設けられた下側パネル部24がフロアパネル14とバンパカバー34との間の車両上下方向の開口36を塞ぐので、これにより、フロアパネル14とバンパカバー34との間の車両上下方向の開口36を介してタイヤノイズ等が車室内に進入することを抑制できる。これにより、車室内の遮音性を高めることができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る車体構造10によれば、サイドメンバアウタパネル18の下側パネル部24が車両上下方向下側に向けて延設されて、この下側パネル部24がブラケット40を介してバンパカバー34に接合されている。従って、サイドメンバアウタパネル18によってバンパカバー34を支持することができる。これにより、バンパカバー34の取付剛性を確保できる。
【0039】
また、本発明の一実施形態に係る車体構造10によれば、サイドメンバアウタパネル18には、フロアパネル14と接合される中間パネル部22とは別に上側パネル部20が設けられており、車室内側の空気を車室外側に排出するためのベンチレーションダクト26は、この上側パネル部20に設けられている。従って、フロアパネル14と接合される中間パネル部22とは別に上側パネル部20を設けることで、ベンチレーションダクト26の配置スペースを十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体構造が適用された車両の側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1のA部においてバンパカバーを取り外した状態における車体構造の構成を示す図である。
【図4】比較例に係る車体構造の構成を示す図である。
【図5】比較例に係る車体構造の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 車体構造
14 フロアパネル
18 サイドメンバアウタパネル(アウタパネル)
20 上側パネル部
22 中間パネル部
24 下側パネル部
26 ベンチレーションダクト
32 シーラ
34 バンパカバー
36 開口
40 ブラケット(接合部)
P1 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延在されたフロアパネルと、
前記フロアパネルよりも車両幅方向外側に配置されると共に車両上下方向に延在されて車体側部を構成し、且つ、その車両上下方向中間に位置する中間パネル部が車両幅方向に延設されて前記フロアパネルに接合されたアウタパネルと、
を備えたことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記アウタパネルの前記中間パネル部よりも車両上下方向上側の上側パネル部には、車室内側の空気を車室外側に排出するためのベンチレーションダクトが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記フロアパネルの車両上下方向下側には、バンパカバーが周り込んで配置され、
前記アウタパネルの前記中間パネル部よりも車両上下方向下側の下側パネル部は、前記フロアパネルと前記バンパカバーとの間の車両上下方向の開口を塞ぐように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記フロアパネルの車両上下方向下側には、バンパカバーが周り込んで配置され、
前記アウタパネルの前記中間パネル部よりも車両上下方向下側の下側パネル部は、前記バンパカバーに接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−13059(P2008−13059A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186684(P2006−186684)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】