説明

車体構造

【課題】閉断面構造とされた車体骨格部材の屈曲部の変形を良好に抑制できる車体構造を提供する。
【解決手段】フロントフロアパネル22の下面に接合し、閉断面構造とされたフロントサイドメンバ12の屈曲部16の内部に、長手方向に直交する断面視でクランク形状の連結部材24を配置し、連結部材24の縦壁部24Aで、フロントフロアパネル22のメンバ幅方向中央部分と底壁12Aのメンバ幅方向中央部分とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体骨格部材、例えば、フロントサイドメンバの屈曲部の変形を抑える方法として、フロントサイドメンバの板厚を厚くする方法、断面壁の面外変形を抑制するために閉断面内を発泡樹脂で充填する、あるいは、所定の断面形状を持った部材を発泡接着剤にてフロントサイドメンバ内に接着する方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−348813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フロントサイドメンバの中空部分に発泡樹脂を充填する方法は、第1の課題として、フロントサイドメンバの板厚を厚くする方法に比較し、断面内へ充填する量が多い分、軽量化のメリットが出て来ない場合がある。また、さらなる軽量化を狙うために、断面内の連結部材を、質量当たりの強度に優れた材料、例えば、アルミニウム合金、合成樹脂等に変更するとコストアップになる。
【0005】
フロントサイドメンバは、防錆の為に、亜鉛メッキ鋼板の上に塗装を施すが、第2の課題として、発泡接着剤が発泡する際の圧力によりメンバ内面の塗膜が押されるため、発泡接着剤で押された部分の塗装の膜厚が薄くなり、発泡接着剤で押された部分では予め設定した必要な塗膜厚さが得られなくなる。
【0006】
したがって、何らかの衝撃で発泡接着剤が剥れると、発泡接着剤が剥れた部分では塗膜の薄い部分が露出することになる。フロントサイドメンバの断面内が水路になる車体構造においては、このような塗膜が薄い部分が露出すると、塗膜の薄い部分が水に曝される事になり、防錆上不利となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、軽量化を図りつつフロントサイドメンバ等の車体骨格部材の屈曲部の変形を良好に抑制できる車体構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の車体構造は、長手方向の一部分に屈曲部を有する閉断面構造とされる車体骨格部材と、少なくとも前記屈曲部の閉断面内に配置され、一端が互いに対向する一対の屈曲壁面の内の一方の屈曲壁面の断面幅方向中間部に位置し、他端が前記一対の屈曲壁面の内の他方の屈曲壁面の断面幅方向中間部に位置して前記一方の屈曲壁面と前記他方の屈曲壁面とを連結する連結部材と、を有する。
【0009】
次に、請求項1に記載の車体構造の作用を説明する。
全体が直線状に形成された車体骨格部材と、長手方向の一部分に屈曲部を有する車体骨格部材とを比較すると、例えば、車体骨格部材に対して衝突荷重等の荷重を車体骨格部材軸方向に入力させた場合、長手方向の一部分に屈曲部を有する車体骨格部材の方が変形し易い。
【0010】
長手方向の一部分に屈曲部を有する車体骨格部材では、軸方向の荷重が入力した際に、屈曲部が更に屈曲する方向へと変形する。このときの屈曲部を軸方向直角断面で見ると、互いに対向する一対の屈曲壁面は、それぞれ断面幅方向中央部が内側に凸となるように変形する、即ち、一対の屈曲壁面はそれぞれの断面幅方向中央部が互いに接近する方向、即ち、間隔が狭くなる方向へ変形する。
【0011】
請求項1の車体構造では、連結部材の一端が一方の屈曲壁面の断面幅方向中間部に位置し、連結部材の他端が他方の屈曲壁面の断面幅方向中間部に位置して、一方の屈曲壁面の断面幅方向中間部と他方の屈曲壁面の断面幅方向中間部とが連結部材によって連結されているので、車体骨格部材に軸方向の荷重が入力して屈曲部に荷重が伝達された際、連結部材が屈曲壁面の変形を抑え、これによって屈曲部の変形が抑えられる。
【0012】
また、連結部材は、車体骨格部材の閉断面内部全体を充填していないので、比較的軽量な構造でありながら、良好な補強効果が得られる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体構造において、前記車体骨格部材は、底壁、前記底壁の両側から前記底壁と交差する一方向側に向かって延設される一対の縦壁部、及び前記縦壁部の一方向側の端部に設けられ前記縦壁部と交差する方向に延びるメンバフランジを含んで構成される断面ハット形状に形成されたメンバ部材と、前記メンバ部材の一方向側に配置されて前記メンバフランジと接合されるパネル部材とで閉断面構造が形成されている。
【0014】
次に、請求項2に記載の車体構造の作用を説明する。
請求項2に記載の車体構造では、車体骨格部材が、パネル部材を、断面ハット形状に形成されたメンバ部材のメンバフランジ部に接合することで形成されている。
【0015】
このように、請求項2に記載の車体骨格部材は、メンバ部材の内部に連結部材を配置してからパネル部材を接合することで形成される構成のため、連結部材を車体骨格部材の長手方向中間部、屈曲部等のメンバ部材の所望の位置に容易に配置することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車体構造において、前記メンバ部材は、下方に配置された前記底壁の両側から前記縦壁部が上方に向けて延設され、前記屈曲部が上下方向に屈曲されており、前記連結部材は、前記屈曲部の閉断面内において、前記一端が前記底壁の断面幅方向中間部に位置し、前記他端が一対の縦壁部間に位置する前記パネル部材の断面幅方向中間部に位置している。
【0017】
次に、請求項3に記載の車体構造の作用を説明する。
請求項3に記載の車体構造のメンバ部材は、上側が開放された断面ハット形状となるので、メンバ部材の中に上側から連結部材を入れて底部の上に連結部材を載置し、その上からパネル部材を配置して閉断面構造を得ることができ、車体骨格部材の製造が容易な構造となる。
【0018】
また、連結部材は、屈曲部の閉断面内において、屈曲部の変形時に最も変形の変位が大きい底壁の断面幅方向中間部及びパネル部材の断面幅方向中間部に、一端及び他端が位置しているので、屈曲部の曲げ変形を効果的に抑えることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の車体構造において、前記連結部材の前記一端及び前記他端には、前記車体骨格部材の内面に接合される連結部材フランジが設けられている。
【0020】
次に、請求項4に記載の車体構造の作用を説明する。
請求項4に記載の車体構造では、連結部材の一端及び他端に設けられた連結部材フランジを車体骨格部材の内面に接合することで、連結部材が車体骨格部材に連結される。連結フランジと車体骨格部材の壁面とを面接触させることができるので、連結部材と車体骨格部材との接触面積が確保でき、スポット溶接、接着等の接合が容易となる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車体構造において、パネル部材側の前記連結部材フランジと、底壁側の前記連結部材フランジとは互いに反対方向に延びており、前記連結部材の断面形状がクランク形状とされている。
【0022】
次に、請求項5に記載の車体構造の作用を説明する。
請求項5に記載の車体構造では、パネル部材側の連結部材フランジと、底壁側の連結部材フランジとが互いに反対方向に延びているため、例えば、連結部材フランジと底壁とをスポット溶接する際に、パネル部材側に配置される電極が、連結部材フランジに干渉することが無く、スポット溶接が容易となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の車体構造において、パネル部材側の前記連結部材フランジには、前記メンバフランジに接触して前記メンバ部材との位置決めを行う位置決め部が形成されている。
【0024】
次に、請求項6に記載の車体構造の作用を説明する。
請求項6に記載の車体構造では、連結部材フランジに形成された位置決め部をメンバフランジに接触させることで、メンバ部材に対して連結部材の仮置きが可能となり、メンバ部材に連結部材を接合するにあたって連結部材をクランプ等の保持具を用いて保持しておく必要がなく、生産性が向上する。
【0025】
また、メンバ部材に対して連結部材の位置決めを行うことができるので、連結部材をメンバ部材の所望の位置に正確に配置することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車体構造において、前記位置決め部は、前記メンバフランジを挟み込む一対の折り曲げ部である。
【0027】
次に、請求項7に記載の車体構造の作用を説明する。
請求項7に記載の車体構造では、一対の折り曲げ部でメンバフランジを挟み込むように連結部材をメンバ部材に配置することで、メンバ部材に対する連結部材の位置決めが行われる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜請求項7の何れか1項に記載の車体構造において、前記底壁と前記パネル部材とは互いに平行に配置され、前記連結部材は、前記底壁と前記パネル部材に対して垂直に配置されている。
【0029】
連結部材が底壁及びパネル部材に対して傾斜している場合は底壁及びパネル部材からの荷重により連結部材が曲げ変形し易く、連結部材が底壁とパネル部材に対して垂直な場合には連結部材は曲げ変形し難い。
請求項8に記載の車体構造では、互いに平行に配置される底壁とパネル部材に対して連結部材が垂直に配置されているため、連結部材に沿って底壁及びパネル部材からの荷重が伝達されることとなり、底壁及びパネル部材に対して傾斜して連結部材を配置した場合に比較して、連結部材の変形を抑えつつ大きな荷重を支持することができる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項2〜請求項8の何れか1項に記載の車体構造において、前記連結部材の前記一端は前記底壁の断面幅方向中央部に位置し、前記連結部材の前記他端は前記パネル部材の断面幅方向中央部に位置している。
【0031】
次に、請求項9に記載の車体構造の作用を説明する。
車体骨格部材の屈曲部を長手方向直角断面で見た時、屈曲部が曲げ変形する際には、底壁の断面幅方向中央部、及びパネル部材の断面幅方向中央部の変位が最も大きい。
したがって、底壁の断面幅方向中央部、及びパネル部材の断面幅方向中央部の変位を抑えることが、屈曲部の曲げ変形を抑える上で効果的である。
【0032】
請求項9に記載の車体構造では、一端が底壁の断面幅方向中央部に位置し、他端がパネル部材の断面幅方向中央部に位置した連結部材が、底壁及びパネル部材の互いの断面幅方向中央部が内側へ凸となる変形を抑え、これにより屈曲部の曲げ変形が効果的に抑えられる。
【0033】
請求項10に記載の車体構造は、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の車体構造において、前記連結部材には、剛性を向上させるビード部が設けられている。
【0034】
次に、請求項10に記載の車体構造の作用を説明する。
連結部が車体骨格部材の屈曲部の曲げ変形を抑える際に、連結部には車体骨格部材からの入力により圧縮応力が作用するため、該圧縮応力によって連結部が変形(曲げ、座屈)しないように、連結部にビード部を設けて連結部の剛性を上げることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、請求項1に記載の車体構造は上記構成としたので、軽量化を図りつつフロントサイドメンバ等の車体骨格部材の屈曲部の変形を良好に抑制できる、という優れた効果を有する。
【0036】
請求項2に記載の車体構造は上記構成としたので、メンバ部材の内部に連結部材を配置してからパネル部材を接合して閉断面を構成することができるので、連結部材を車体骨格部材の長手方向中間部、屈曲部等のメンバ部材の所望の位置に容易に配置することができる、という優れた効果を有する。
【0037】
請求項3に記載の車体構造は上記構成としたので、閉断面構造とされた車体骨格部材の製造が容易となり、また、屈曲部の曲げ変形を効果的に抑えることができる。
【0038】
請求項4に記載の車体構造は、連結部材の一端及び他端に車体骨格部材の内面に接合される連結部材フランジが形成されているため、連結部材と車体骨格部材との接触面積を確保でき、スポット溶接、接着等の接合が容易となる、という優れた効果を有する。
【0039】
請求項5に記載の車体構造は、パネル部材側の連結部材フランジと、底壁側の連結部材フランジとが互いに反対方向に延びているため、スポット溶接する際に、パネル部材側に配置される電極が連結部材フランジに干渉することが無く、溶接が容易となる。
【0040】
請求項6に記載の車体構造は、連結部材フランジに位置決め部を備えているため、連結部材をメンバ部材に仮置きすることで生産性が向上し、また、連結部材をメンバ部材の所望の位置に正確に配置することができる、という優れた効果を有する。
【0041】
請求項7に記載の車体構造は、一対の折り曲げ部でメンバフランジを挟み込むように連結部材をメンバ部材に配置できるので、簡単な構成でメンバ部材に対する連結部材の位置決めを行うことができる、という優れた効果を有する。
【0042】
請求項8に記載の車体構造は、互いに平行に配置される底壁とパネル部材に対して連結部材が垂直に配置されているため、連結部材は変形し難くなり、屈曲部の変形を効果的に抑えることができる。
【0043】
請求項9に記載の車体構造は、連結部材の一端が底壁の断面幅方向中央部に位置し、他端がパネル部材の断面幅方向中央部に位置しているので、連結部材は底壁及びパネル部材の変形を効果的に抑えることができ、これにより屈曲部の曲げ変形が効果的に抑えられる。
【0044】
請求項10に記載の車体構造は、連結部材にビード部が設けられているため、連結部の変形が抑えられ、これにより屈曲部の曲げ変形がより一層効果的に抑えられる。

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体構造を備えた車両のフロントサイドメンバ部分の側面図である。
【図2】図1に示すフロントサイドメンバの屈曲部の2−2線断面図である。
【図3】フロントサイドメンバの内部に配置した連結部材の斜視図である。
【図4】(A)は連結部材の無いフロントサイドメンバの側面図であり、(B)は連結部材の無いフロントサイドメンバの長手方向直角断面図であり、(C)は連結部材の無いフロントサイドメンバの変形時の側面図であり、(D)は連結部材の無いフロントサイドメンバの変形時の長手方向直角断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る車体構造を備えた車両10のフロントサイドメンバ部分の要部を示す側面図であり、図2はフロントサイドメンバ部分の屈曲部の長手方向直角断面図である。なお、各図において、車体前方向を矢印FRで示し、車体上方向を矢印UPで示す。
【0047】
図1で示すように、車両10の前部には、車体前後方向に延在する左右一対のフロントサイドメンバ(メンバ部材)12が、車幅方向(図1の紙面裏表方向)に所定の間隔を隔てて配設されている。なお、左右のフロントサイドメンバ12の車体前方側端部には、車幅方向に延在する図示しないフロントバンパリインフォースメントが架設されている。
【0048】
また、各フロントサイドメンバ12は、車体前方側端部が、車体後方側の後方直線部14よりも所定高さ高くなるように、車幅方向から見た側面視で、車体前上方向へ湾曲した屈曲部16が形成されている。
【0049】
図2に示すように、フロントサイドメンバ12は、長手方向直角断面で見て水平な底壁12Aと底壁12Aの車幅方向両端から車体上方に向けて延びる一対の縦壁部12Bと、縦壁部12Bの上端からメンバ幅方向外側へ水平に延びるメンバフランジ12Cとを備え、断面視でハット形状に形成されている。
【0050】
また、各フロントサイドメンバ12の車体上方側には、鋼板からなるフロントフロアパネル(パネル部材)22が設けられており、フロントフロアパネル22よりも車体前方側には図示しないダッシュパネルが車体前上方側へ延在するように設けられている。
【0051】
図2に示すように、フロントフロアパネル22とフロントサイドメンバ12のフランジ12Cとはスポット溶接によって固定されており、これによりフロントサイドメンバ12が閉断面構造とされている。
【0052】
(連結部材)
また、図2,3に示すように、フロントサイドメンバ12の屈曲部16の内部には、フロントサイドメンバ12の長手方向に直交する断面視で略クランク形状とされると共に、その屈曲部16の形状に沿うように側面視で屈曲形状とされた連結部材24が設けられている。
【0053】
図2に示すように、連結部材24は、底壁12A及びフロントフロアパネル22に対して垂直に配置され、鉛直方向に直線状に延びる縦壁部24Aと、縦壁部24Aの上端から車体幅方向一方側へフロントフロアパネル22に沿って水平方向に延びる上フランジ24B、縦壁部24Aの下端から車体幅方向他方側へ底壁12Aに沿って水平方向に延びる下フランジ24Cとを備えて、断面形状が略クランク形状とされている。
【0054】
上フランジ24Bは、フロントサイドメンバ12のメンバフランジ側へ向けて延びる延設部24Baを車両前後方向両側に有しており、延設部24Baには、メンバフランジ12Cよりも外側へ延びてメンバフランジ12Cの幅方向外側端を超えた位置で下方に折り曲げられた第1折り曲げ部26Aと、縦壁部12Bの上端直前で下方に折り曲げられた第2折り曲げ部26Bが形成されており、フロントサイドメンバ12に連結部材24を接合する際に第1折り曲げ部26Aと第2折り曲げ部26Bとでフロントサイドメンバ12のメンバフランジ12Cを挟持するように連結部材24をフロントサイドメンバ12に配置することで、フロントサイドメンバ12に対する連結部材24の位置決めが行われる。
【0055】
連結部材24の縦壁部24Aは、フロントサイドメンバ12の幅方向中央部に配置され、下端が底壁12Aの車体幅方向中央部に位置し、上端が一対の縦壁部12Bの間に配置されているフロントフロアパネル22の車体幅方向中央部に位置している。
【0056】
図1、及び図2に示すように、連結部材24の縦壁部24Aには、座屈変形を抑えるために、上下方向に延びる複数のビード24Aaが、フロントサイドメンバ長手方向に間隔をあけて形成されている。
【0057】
ここで、連結部材24の上フランジ24Bは、フロントサイドメンバ12のメンバフランジ12Cとフロントフロアパネル22とで挟まれる延設部24Baが、メンバフランジ12Cとフロントフロアパネル22と重ね合わされてスポット溶接されている。
【0058】
また、連結部材24の上フランジ24Bは、縦壁部24Aに近い部分がフロントフロアパネル22の上面側から、例えば、レーザー溶接により溶接されている。なお、上フランジ24Bの縦壁部24Aに近い部分とフロントフロアパネル22とは、溶接に限らず、発泡接着剤等を用いて接合することも出来る。
【0059】
一方、連結部材24の下フランジ24Cは、フロントサイドメンバ12の底壁12Aにスポット溶接されている。
【0060】
なお、本実施形態では、連結部材24をフロントサイドメンバ12にスポット溶接する際の基準となる溶接工程基準ピン32を挿入するための丸孔34、36が下フランジ24C及び底壁12Aに形成されている。
【0061】
本実施形態のフロントサイドメンバ12、フロントフロアパネル22、及び連結部材24は、亜鉛メッキ鋼板のプレス成形品であるが、アルミニウム合金等、他の金属材料で形成することもできる。
【0062】
また、本実施形態の車体10は、車体全体が製造された後に、従来一般に行われている様に防錆用の塗装が施されている。
【0063】
(作用)
以上のような構成の車体構造において、次にその作用について説明する。
例えば、図示しない障壁等に車両が前面衝突すると、車体10には、フロントバンパリインフォースメントを介してフロントサイドメンバ12へその衝撃(衝突荷重)が伝達される。
【0064】
ここで、図4(A),(B)に示すように、フロントサイドメンバ12の屈曲部16の内部に連結部材24が設けられていない場合について説明すると、衝突荷重が入力すると図4(C)に示すように、屈曲部16がさらに屈曲する方向へ変形する。これは、図4(D)の断面図で示すように、フロントサイドメンバ12の底壁12Aが幅方向中央部分が上方へ凸となるように変形し、フロントフロアパネル22も中央部分が下方へ凸となるように変形し、さらに、一対の縦壁部12Bの高さ方向中央部が外側へ向けて凸となるように変形するからである。
【0065】
一方、本実施形態では、図2に示すように、フロントサイドメンバ12の屈曲部16の内部にクランク形状の連結部材24が設けられており、メンバ長手方向に直交する断面視で垂直方向に延びる縦壁部24Aが、フロントサイドメンバ12の底壁12Aの幅方向中央部とフロントサイドメンバ12の縦壁部間に配置されるフロントフロアパネル22の幅方向中央部とに接触するようにフロントサイドメンバ12とフロントフロアパネル22に対して連結部材24が接合されているので、底壁12Aの幅方向中央部分が上方へ凸となる変形、及びフロントフロアパネル22の幅方向中央部分が下方へ凸となる変形が抑えられ、フロントサイドメンバ12の屈曲部16が、前突時の衝突荷重によってさらに屈曲する方向に曲げ変形されようとしても、屈曲部16の内部に連結部材24が配置されて曲がり難い構造になっているため、フロントサイドメンバ12の屈曲部16における曲げ変形が良好に抑制される。
これにより、前突時の衝撃(衝突荷重)による車室の変形を抑制することができる。
【0066】
本実施形態では、前突時におけるフロントサイドメンバ12の底壁12Aの最も変形変位量の大きい部分(即ち、幅方向中央部分)と、フロントフロアパネル22の最も変形変位量の大きい部分(即ち、(一対の)縦壁部12Bの間の幅方向中央部分)とを、これら底壁12Aとフロントフロアパネル22に対して垂直方向に延びる連結部材24の縦壁部24Aで連結しているので、荷重入力時の底壁12A及びフロントフロアパネル22の変形を効果的に抑制し、屈曲部16の変形を効果的に抑制することができる。
【0067】
また、これらの変形を縦壁部24Aが抑制するにあたり、縦壁部24Aには上下方向の圧縮荷重が作用するが、縦壁部24Aには上下方向に延びるビード24Aaが複数形成されているので、縦壁部24Aも圧縮荷重に対して変形(曲げ、及び座屈)し難くなっており、ビード24Aaの補強効果によってフロントサイドメンバ12の屈曲部16の変形抑制効果が更に向上している。
【0068】
本実施形態では、連結部材24をフロントサイドメンバ12、及びフロントフロアパネル22に対して溶接にて接合しているので、衝撃荷重等の入力によってフロントサイドメンバ12、及びフロントフロアパネル22が変形した場合であっても、連結部材24がフロントサイドメンバ12、及びフロントフロアパネル22から剥離することは無く、亜鉛メッキ、及び防錆用の塗装による高い防錆効果が維持される。
【0069】
本実施形態では、フロントサイドメンバ12の閉断面内部を樹脂等で充填せず、板材からなる連結部材24を配置しているため、軽量化を図りつつ、フロントサイドメンバ12の剛性が確保されている。
【0070】
また、本実施形態の連結部材24には、位置決め部としての第1折り曲げ部26Aと第2折り曲げ部26Bが設けられているため、フロントサイドメンバ12に連結部材24を接合するにあたって第1折り曲げ部26Aと第2折り曲げ部26Bとでフロントサイドメンバ12のメンバフランジ12Cを挟持するように連結部材24をフロントサイドメンバ12に配置することで、連結部材24の上フランジ24Bがフロントサイドメンバ12のメンバフランジ12Cの上に載り、連結部材24の下フランジ24Cがフロントサイドメンバ12の底壁12Aの上に載り、これにより、クランプ等の保持具を用いずに連結部材24をフロントサイドメンバ12の上に仮置きすることができ、生産性が向上する。
【0071】
連結部材24をフロントサイドメンバ12の内部に配置する際、第1折り曲げ部26Aと第2折り曲げ部26Bとでメンバフランジ12Cを挟持することで、縦壁部24Aをフロントサイドメンバ12の幅方向中央部に正確に配置することができる。
【0072】
また、連結部材24をフロントサイドメンバ12に配置する際、丸孔34と丸孔36とを一致させることで、フロントサイドメンバ12に対する連結部材24のフロントサイドメンバ長手方向の位置決めを行うことができる。そして、スポット溶接する際、溶接機の溶接工程基準ピン32を丸孔34、36に挿入することで、予め決められた位置をスポット溶接することが出来る。
【0073】
[その他の実施形態]
上記実施形態の連結部材24は、下フランジ24Cが上フランジ24Bと反対方向に延びていたが、図2に2点鎖線で示すように、下フランジ24Cは上フランジ24Bと同方向に延びていても良い。
【0074】
上記実施形態では、連結部材24の縦壁部24Aが、フロントサイドメンバ12の幅方向中央部に配置されていたが、フロントサイドメンバ12の屈曲部16の曲げ変形抑制効果が得られる範囲内であれば幅方向に若干量位置をずらすこともできる。例えば、一対の縦壁部12B間の距離をW、一方の縦壁部12Bの内面12Baから縦壁部24Aの厚み中心位置までの距離をXとしたときに、X=0.4〜0.6Wを満足する様に縦壁部12Bをフロントサイドメンバ12の内部に配置することが好ましい。
【0075】
上記実施形態では、フロントサイドメンバ12の長手方向直角断面で見た時に、連結部材24の縦壁部24Aがフロントサイドメンバ12の底壁12A、及びフロントフロアパネル22に対して垂直に配置されていたが、屈曲部16の曲げ変形抑制効果が十分に得られる範囲内であれば若干傾斜させることもできる。
【0076】
上記実施形態では、フロントサイドメンバ12の屈曲部16が1箇所であったが、複数設けられていても良く、その場合には、各々の屈曲部16の内部に連結部材24を設けることが好ましい。
【0077】
上記実施形態では、本発明をフロントサイドメンバ12に適用した例を説明したが、本発明はフロントサイドメンバ12以外にも適用可能であり、中空で屈曲した部分がある車体骨格部材、例えば、リヤサイドメンバ、ピラー等のフロントサイドメンバ以外の車体骨格部材にも適用可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、フロントサイドメンバ12の屈曲部16が上方に屈曲されていたが、左右の何れかに屈曲された中空の車体骨格部材に本発明を適用する場合には、連結部材24の縦壁部24Aは、屈曲する方向(水平方向)に配置される。
【0079】
上記実施形態の連結部材24には、縦壁部24Aの上端に上フランジ24B、縦壁部24Aの下端に下フランジ24Cが設けられて、溶接が容易になる構造としているが、本発明としては、縦壁部24Aが底壁12Aの断面幅方向中間部とフロントサイドメンバ平断面内のフロントフロアパネル22の断面幅方向中間部とを連結していれば良く、他の溶接方法を用いて縦壁部24Aの端部を底壁12Aとフロントフロアパネル22に溶接できれば、上フランジ24B及び下フランジ24Cは省略することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 車両
12 フロントサイドメンバ(車体骨格部材)
12A 底壁
12B 縦壁部
12C メンバフランジ
16 屈曲部
22 フロントフロアパネル(車体骨格部材、パネル部材)
24 連結部材
24A 縦壁部(連結部材)
24B 上フランジ(連結部材フランジ)
24C 下フランジ(連結部材フランジ)
26A 第1折り曲げ部(位置決め部、折り曲げ部)
26B 第2折り曲げ部(位置決め部、折り曲げ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一部分に屈曲部を有する閉断面構造とされる車体骨格部材と、
少なくとも前記屈曲部の閉断面内に配置され、一端が互いに対向する一対の屈曲壁面の内の一方の屈曲壁面の断面幅方向中間部に位置し、他端が前記一対の屈曲壁面の内の他方の屈曲壁面の断面幅方向中間部に位置して前記一方の屈曲壁面と前記他方の屈曲壁面とを連結する連結部材と、
を有する車体構造。
【請求項2】
前記車体骨格部材は、底壁、前記底壁の両側から前記底壁と交差する一方向側に向かって延設される一対の縦壁部、及び前記縦壁部の一方向側の端部に設けられ前記縦壁部と交差する方向に延びるメンバフランジを含んで構成される断面ハット形状に形成されたメンバ部材と、前記メンバ部材の一方向側に配置されて前記メンバフランジと接合されるパネル部材とで閉断面構造が形成されている、請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記メンバ部材は、下方に配置された前記底壁の両側から前記縦壁部が上方に向けて延設され、前記屈曲部が上下方向に屈曲されており、
前記連結部材は、前記屈曲部の閉断面内において、前記一端が前記底壁の断面幅方向中間部に位置し、前記他端が一対の縦壁部間に位置する前記パネル部材の断面幅方向中間部に位置している、請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記連結部材の前記一端及び前記他端には、前記車体骨格部材の内面に接合される連結部材フランジが設けられている、請求項2または請求項3に記載の車体構造。
【請求項5】
パネル部材側の前記連結部材フランジと、底壁側の前記連結部材フランジとは互いに反対方向に延びており、前記連結部材の断面形状がクランク形状とされている、請求項4に記載の車体構造。
【請求項6】
パネル部材側の前記連結部材フランジには、前記メンバフランジに接触して前記メンバ部材との位置決めを行う位置決め部が形成されている、請求項4または請求項5に記載の車体構造。
【請求項7】
前記位置決め部は、前記メンバフランジを挟み込む一対の折り曲げ部である、請求項6に記載の車体構造。
【請求項8】
前記底壁と前記パネル部材とは互いに平行に配置され、
前記連結部材は、前記底壁と前記パネル部材に対して垂直に配置されている、請求項2〜請求項7の何れか1項に記載の車体構造。
【請求項9】
前記連結部材の前記一端は前記底壁の断面幅方向中央部に位置し、
前記連結部材の前記他端は前記パネル部材の断面幅方向中央部に位置している、請求項2〜請求項8の何れか1項に記載の車体構造。
【請求項10】
前記連結部材には、剛性を向上させるビード部が設けられている、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178266(P2011−178266A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44161(P2010−44161)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】