説明

車載ナビゲーション装置及び車両方位変更箇所判定プログラム

【課題】ターンテーブル設置箇所のような車両方位変更箇所をより高い信頼度で判定する技術を提供する。
【解決手段】自車両の方位変化量と移動距離とによって自車両の進行方位を表す進行方位情報に基づいて自車両の走行軌跡を生成する走行軌跡生成部16と、GPS測位によって取得された自車両位置情報前記自車両位置情報に基づく自車両位置と走行軌跡の先頭部の位置との間の所定値以上の位置ずれを検出する位置ずれ検出部17と、位置ずれ検出時に走行軌跡を剛体変換しながら道路パターンと間でパターンマッチング処理を行う走行軌跡マッチング処理部20とが備えられ、パターンマッチング処理でパターン一致した道路パターンを真の走行軌跡とみなして自車両の位置を一致した道路パターンの先頭部としと、パターン一致した走行軌跡のための剛体変換の基点を車両方位変更箇所と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両に搭載され、自車両の進行方位を表す進行方位情報を取得することが可能な車載ナビゲーション装置、及びそれに用いることが可能な車両方位変更箇所判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載ナビゲーション装置等においては、ジャイロスコープ等の方位センサの出力や、GPS(Global Positioning System)受信機により取得した位置情報の変化等に基づいて自車両の進行方位を表す進行方位情報を取得する構成が既に知られている。このようなナビゲーション装置では、取得した進行方位情報を用いて、自車両の位置や進行方位を表す自車マークを地図とともに表示装置に表示する処理や目的地までの適切な経路を案内する処理などが行われる。
【0003】
ところで、一般的に、自車両のアクセサリ(ACC)電源がオフの状態では、それに連動してナビゲーション装置の電源もオフとなっており、自車両の進行方位を検出することができない。したがって、従来のナビゲーション装置では、電源がオフの間に、例えば、立体駐車場に設置されているターンテーブル等の方向転換装置によって自車両の方向転換が行われた場合に、当該方向転換による自車両の進行方位の変化を検出することができなかった。そのため、電源がオンされた後に、ナビゲーション装置が保持している進行方位と自車両の実際の進行方位とが異なることになり、自車両が走行を開始した後に正しい自車位置を認識できないという問題があった。
【0004】
このような問題を解消するため、ターンテーブルを備えた駐車場の位置や回転角度等の方位変更情報を格納したデータベースを備え、車両のイグニッションスイッチがオフしたときに、データベースに格納された方位情報を用いて自車方位を補正し、出庫する際の自車方位を正確に検出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。 しかしながら、特許文献1に記載の装置は、ターンテーブルを備えた駐車場を表す情報が予めデータベースに格納されている必要があり、ターンテーブル駐車場が新設された場合など、利用する駐車場を表す情報がデータベースに格納されていない場合、自車方位が補正できず、出庫して走行を開始した自車両の進行方位が間違ったままとなる問題が生じる。
【0005】
このため、データベースに予めターンテーブルを表す情報が格納されていなくても、自車位置を補正できるようにするナビゲーション装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。このナビゲーション装置は、自車の方位変化量および移動距離を検出する位置情報検出手段を備え、前記位置情報検出手段の検出結果に基づき推測航法を用いて自車位置を表す推測位置を特定し、自車の走行開始時に、ターンテーブルの位置および前記ターンテーブルの旋回による回転角を示すターンテーブル候補情報が記憶されたデータベースを参照して、自車位置に前記ターンテーブルが存在しないことを判定した場合には、前記推測位置を自車位置として特定し、自車位置に前記ターンテーブルが存在することを判定した場合には、前記ターンテーブル候補情報に含まれる前記回転角に応じて前記推測位置を補正して自車位置を特定し、前記特定した自車位置を記憶手段に記憶する。さらにこのナビゲーション装置は、GPS衛星からの電波を受信して測位データを出力するGPS受信装置と、自車の走行開始時に、GPS受信装置からの測位データに基づいて自車位置を表すGPS位置を測位したか否かを判定するGPS測位判定手段と、GPS測位判定手段によってGPS位置を測位したと判定された場合、GPS位置と推測位置に基づいて、ターンテーブルによる旋回が実施されたか否かを判定する旋回判定手段と、旋回判定手段によってターンテーブルによる旋回が実施されたと判定された場合、記憶手段に記憶された走行開始前の自車位置をターンテーブルの位置として、該ターンテーブルの位置およびターンテーブルの旋回による回転角を示すターンテーブル候補情報をデータベースに記憶する第1のデータベース記憶手段とを備えている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のナビゲーション装置では、算出された推測軌跡から特定される自車の推測位置と、GPS受信装置から入力される測位データから特定したGPS位置を比較して、両者が一致しない場合にはターンテーブルによる旋回が実施されたと判定し、両者が一致する場合にはターンテーブルによる旋回が実施されないと判定するが、その際、自車の推測位置とGPS位置には測位誤差が含まれるため、両者が完全に一致していなくても、ある許容誤差内に両者が含まれていれば、一致すると判定している。しかしながら、このように推測位置とGPS位置という2つの点だけの比較でターンテーブルの存在を判定する場合、許容誤差を大きくするとターンテーブルによる旋回が実施されていないのに実施されたと判定する可能性が高くなり、許容誤差を小さくするとターンテーブルによる旋回が実施されているのに実施されていないと判定する可能性が高くなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−267460号公報(段落番号0008−0012、図1)
【特許文献2】特開2008−215923号公報(段落番号0027−0088、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記実状に鑑み、本発明の目的は、ターンテーブル設置箇所のような車両方位変更箇所をより高い信頼度で判定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る車載ナビゲーション装置の特徴構成は、GPS測位によって自車両の位置を表す自車両位置情報を取得するGPS位置情報取得部と、自車両の方位変化量と移動距離とによって自車両の進行方位を表す進行方位情報を取得する進行方位情報取得部と、前記進行方位情報に基づいて自車両の走行軌跡を生成する走行軌跡生成部と、前記走行軌跡の先頭部の位置と前記自車両位置情報に基づく自車両位置との間の所定値以上の位置ずれを検出する位置ずれ検出部と、前記位置ずれ検出部による位置ずれ検出時に前記走行軌跡の位置座標を剛体変換しながら道路パターンと間でパターンマッチング処理を行う走行軌跡マッチング処理部と、前記パターンマッチング処理でパターン一致した道路パターンを真の走行軌跡とみなして自車両の位置を前記一致した道路パターンの先頭部とする自車位置決定部と、パターン一致した走行軌跡のための剛体変換の基点を車両方位変更箇所と判定する判定部と、を備えた点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、進行方位情報に基づく現在自車両位置である走行軌跡の先頭部の位置とGPS測位に基づく現在自車両位置とが所定値以上ずれた場合、進行方位情報に基づいて生成された走行軌跡の位置(姿勢)を剛体変換によって変更しながら道路パターンとの間でパターンマッチング処理を行う。このパターンマッチング処理でパターン一致した道路パターンが真の走行軌跡となるので、その真の走行軌跡の先頭部の位置が現在自車両位置とみなすことができる。GPS測位に基づく現在自車両位置はある程度の正確さが保証されているので、この位置を剛体変換時の近似的な拘束点とすることができ、走行軌跡の剛体変換のパラメータ(一般には回転行列と並進ベクトル)が効率的に算定することができる。従来技術(例えば特許文献2)のように推測位置とGPS位置の2つの点を用いたマップマッチング処理に比べて、より高い信頼度で車両方位変更箇所の存在を判定することができる。
【0010】
進行方位情報が取得できない状態下で車両の方位が変更するというような現象の多くは、駐車設備の内部などに設置されている車両ターンテーブルによって引き起こされる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、車両方位変更箇所を車両ターンテーブル設置箇所と限定される。これにより、剛体変換は回転変換に限定されることになるので、その剛体変換パラメータの算定が簡単化され、演算処理負担が軽減される。さらに、設置されている車両ターンテーブルの多くが180°回転タイプであることを考慮するなら、車両を180°回転させる180°ターンテーブルに前記車両ターンテーブルを限定することも好適である。これにより剛体変換が180°回転に限定され、さらに演算処理負担が軽減される。
【0011】
ところで、方位センサなどに基づく進行方位情報が取得できない状態で車両の方位が変更される場合、車両ターンテーブルなどでもそうであるが、進行方位情報取得部を動作させる電源がオフの状態での車両方位変更である可能性が高い。このことから、そのような電源のオン・オフ時点での車両位置を車両方位変更箇所の位置とみなすことが合理的である。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記進行方位情報取得部を動作させる電源のオン・オフを検出する電源動作検出部が備えられ、前記電源動作検出部による電源オン・オフ検出時の自車位置を前記剛体変換の基点とするように構成されている。これにより、剛体変換パラメータを算定する際に予め剛体変換の基点が既知となるので、その演算負担は軽減される。
【0012】
車載ナビゲーション装置で用いられている道路データはノード点とそのノード点を結ぶリンクから構成されているので、道路パターンは容易に点群で表すことができる。また、進行方位情報に基づいて生成される走行軌跡は一般に進行方位情報が方位センサや距離センサの測定信号から作り出されるものであることから、走行軌跡もそのような測定点に対応する軌跡点群で容易に表すことができる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記走行軌跡マッチング処理部は、前記走行軌跡を規定する軌跡点群と地図情報から抽出された道路パターンを規定する道路点群に合わせる位置合わせアルゴリズムを有するように構成される。点群と点群の位置合わせアルゴリズムはマイクロコンピュータベースで正確かつ高速なものが開発されており、これを流用することで、少ないコストで大きな利点を享受することができる。
【0013】
前記判定された車両方位変更箇所が車載ナビゲーション装置に備えられている地図データベースに記録されるような構成を採用すれば、以後は、特許文献1に開示されているような、車両のイグニッションスイッチがオフしたときに、データベースに格納された方位情報を用いて自車方位を補正する技術を、人為的な地図更新なしで利用することができる。
【0014】
さらには、上述した本発明による車載用ナビゲーション装置の技術的特徴は車両方位変更箇所判定プログラムにも適用可能であり、それゆえ、本発明は、そのようなプログラムや方法も権利の対象とすることができる。例えば、GPS測位によって自車両の位置を表す自車両位置情報を取得するGPS位置情報取得部と、自車両の方位変化量と移動距離とによって自車両の進行方位を表す進行方位情報を取得する進行方位情報取得部と、前記進行方位情報に基づいて自車両の走行軌跡を生成する走行軌跡生成部とを備えた車載ナビゲーション装置を制御するコンピュータにより実行される車両方位変更箇所判定プログラムは、前記走行軌跡の先頭部の位置と前記自車両位置情報に基づく自車両位置との間の所定値以上の位置ずれを検出する位置ずれ検出ステップと、前記位置ずれ検出ステップによる位置ずれ検出時に前記走行軌跡の位置座標を剛体変換しながら道路パターンと間でパターンマッチング処理を行う走行軌跡マッチング処理ステップと、前記パターンマッチング処理でパターン一致した道路パターンを真の走行軌跡とみなして自車両の位置を前記一致した道路パターンの先頭部とする自車位置決定ステップと、パターン一致した走行軌跡のための剛体変換の基点を車両方位変更箇所と判定する判定ステップと、をコンピュータに実行させる。当然ながら、このような車両方位変更箇所判定プログラムも上述した車載ナビゲーション装置で述べた作用効果を得ることができ、さらにその好適な形態例として述べたいくつかの付加的技術を組み込むことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る車載ナビゲーション装置を示す機能ブロック図である。
【図2】地図データベースに格納されている道路データを模式的に示す模式図である。
【図3】、自車位置マークが推測航法に基づいて算定された推測位置から最新のGPS測位に基づく自車位置に位置飛びした状態を示すモニタ画面図である。
【図4】位置飛び発生時の位置飛び元である推測位置までの走行軌跡と、位置飛び先である自車両位置を含む道路パターンの1つを示す説明図である。
【図5】位置飛び元である推測位置までの走行軌跡と、位置飛び先である自車両位置を含む道路パターンの1つを示す走行軌跡を剛体変換することで合致する特定の道路パターン見つけ出すパターンマッチング処理を説明する模式図である。
【図6】誤表示修正制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る車載ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。この車載ナビゲーション装置は、自車両の現在位置を表す自車位置情報、進行方位を表す進行方位情報、地図情報を取得し、それらの情報に基づいて、自車位置表示、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路案内等の案内処理を行う。そして、この車載ナビゲーション装置は、進行方位情報に基づいて自車両の走行軌跡を生成する機能、電源オフ状態等に起因して進行方位情報を取得できない間にターンテーブル等の車両方位変更装置(以下単にターンテーブルと称する)によって自車両の進行方向が変更させられたことを自車両の走行軌跡等を用いて判定する機能、その判定結果に基づいて自車位置を補正する機能を備えている。
【0017】
図1に示す車載ナビゲーション装置の各機能部は、車載ナビゲーション装置に含まれているコントロールユニット1によって構築されている。コントロールユニット1は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部をハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により構築している。本発明に特に関係する機能部は、GPS位置情報取得部11、進行方位情報取得部12、地図データベース13、マップマッチング部14、電源動作検出部15、走行軌跡生成部16、位置ずれ検出部17、自車位置決定部18、判定部19、走行軌跡マッチング処理部20、ナビゲーション用データ処理部30などである。
【0018】
なお、地図データベース13は、例えば、ハードディスクドライブ、DVD−ROMを備えたDVDドライブ、CD−ROMを備えたCDドライブ等のように、情報を記憶可能な記録媒体やその駆動装置といったハードウェアが構成要素の中心となっているが、地図情報を構成する道路データなどの記録や抽出のプログラムも含んでいる。地図データベース13は、所定の区画毎に分けられた地図情報が格納されており、図2にそのデータ構造が模式的に示されている。図2に示すように、地図情報は、交差点に対応する多数のノードnと、各交差点間を結ぶ道路に対応するリンクkとの接続関係により道路ネットワークを表す道路データを有している。各ノードnは、緯度及び経度で表現された地図上の位置(座標)の情報を有している。各リンクkは、ノードnを介して接続されている。また、各リンクkは、その属性情報として、道路種別、リンク長、道路幅、リンク形状を表現するための形状補間点等の情報を有している。ここで、道路種別情報は、例えば、高速道路、国道、県道、一般道、細街路、導入路等のように、道路を複数の種別に区分した際の道路種別の情報である。なお、図2においては、一つの区画の道路データのみを図示し、他の区画の道路データは省略している。
【0019】
GPS位置情報取得部11は、GPS測位によって自車両の位置を表す自車両位置情報を取得する機能を有する。このためGPS位置情報取得部11は、GPS受信機2と接続されている。GPS受信機2は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信する装置である。このGPS信号は、通常1秒おきに受信され、GPS位置情報取得部11へ出力される。GPS位置情報取得部11では、GPS受信機2で受信されたGPS衛星からの信号を解析し、自車両の現在位置(座標位置:緯度及び経度)を取得することができる。
【0020】
進行方位情報取得部12は、自車両の方位変化量と移動距離とによって自車両の進行方位を表す進行方位情報を取得する機能を有する。このため進行方位情報取得部12は、方位センサ3及び距離センサ4と接続されている。方位センサ3は自車両Cの進行方位又はその進行方位の変化を検出するセンサである。この方位センサ3は、例えば、ジャイロスコープや、地磁気センサ等により構成される。そして、方位センサ3は、その検出結果を進行方位情報取得部12へ出力する。距離センサ4は、自車両の車速や移動距離を検出するセンサである。この距離センサ4は、例えば、車両のドライブシャフトやホイール等が一定量回転する毎にパルス信号を出力する車速パルスセンサ、自車両の加速度を検知するヨー・Gセンサ及び検知された加速度を積分する回路等により構成される。そして、距離センサ4は、その検出結果としての車速及び移動距離の測定信号を進行方位情報取得部12へ出力する。
【0021】
マップマッチング部14は、地図データベース13から自車位置周辺の地図情報を取得し、それに基づいて公知のマップマッチングを行う機能を有する。このマップマッチングにより、GPS位置情報取得部11から出力される自車両位置情報や進行方位情報取得部12から出力される進行方位情報による自車両の現在位置から最短の、地図情報に示される道路上における位置を探索する。この探索された位置は自車両道路上位置であり、この自車両道路上位置を自車位置決定部18はモニタ6に道路地図に重ねて表示する最終的な自車位置として決定する。つまり、自車両位置情報又は進行方位情報あるいはその両方による自車両の現在位置は、必要に応じてマップマッチング部14によって修正され、新たな自車両の現在位置となる。本出願では、この修正された自車両の現在位置に関する情報も自車位置に含まれるものとしている。
【0022】
電源動作検出部15は、進行方位情報取得部12を動作させる電源5aのオン・オフ(オン又はオフあるいはその両方)を検出する機能を有する。本実施形態においては、電源5aは、進行方位情報取得部12に電力を供給するだけでなく、コントロールユニット1を含む車載ナビゲーション装置の全体に電力を供給して動作させる。この電源5aとしては、例えば、自車両が備えるバッテリ等の蓄電装置が用いられる。そして、この電源5aのオン・オフは、ナビゲーション装置の主電源スイッチ5bにより切り替えられる。本実施形態においては、この主電源スイッチ5bの動作は、自車両Cが備える各電気機器に対する電源5aからの電力供給のオン又はオフを切り替えるアクセサリスイッチ(ACC)等の車両電源スイッチ5cに連動している。そして、電源動作検出部15は、このような主電源スイッチ5bの状態が、ナビゲーション装置に電力供給を行うオン状態であるか、そのような電力供給を遮断するオフ状態であるかを検出することにより、電源5aのオン又はオフを検出する。
【0023】
走行軌跡生成部16は、進行方位情報取得部12から出力される進行方位情報に基づいて自車両の走行軌跡を生成して一時的に記憶する機能を有する。位置ずれ検出部17は、走行軌跡生成部16によって生成された走行軌跡の先頭部の位置と自車両位置情報(マップマッチング部14によって修正された自車両位置情報も含む)に基づく自車両位置との間の所定値以上の位置ずれを検出する機能を有する。
【0024】
走行軌跡マッチング処理部20は、後で詳しく説明するが、位置ずれ検出部17による位置ずれ検出時に走行軌跡生成部16によって生成された走行軌跡の位置座標を剛体変換しながら地図データベース13から読み出された道路パターンと間で、この実施の形態では2つの点群間の位置合わせ処理と呼ばれるパターンマッチング処理を行う機能を有する。
【0025】
自車位置決定部18は、ターンテーブル等により進行方位情報には記録されない状況で車両の方位が変更された場合には走行軌跡マッチング処理部20によって実行されたパターンマッチング処理でパターン一致した道路パターンを真の走行軌跡とみなして自車両の位置を前記一致した道路パターンの先頭部とする機能を有する。また、この自車位置決定部18は、通常の走行状態では、マップマッチング部14によって修正された自車両位置情報に基づいて自車両の現在位置を決定する。
【0026】
判定部19は、走行軌跡マッチング処理部20におけるパターンマッチング処理で実質的にパターン一致した走行軌跡のための剛体変換の基点を車両が方位変更した箇所と判定する機能を有する。車両方位変更箇所としてターンテーブル設置箇所を取り扱っている場合、この判定された箇所の地図位置がターンテーブル設置位置として、地図データベース13の地図情報に追記される。
【0027】
走行軌跡マッチング処理部20は、特徴的な機能部として、点群生成部21と剛体変換部2と位置合わせ部23を含んでいる。これらの各機能を図3、図4、図5を用いて説明する。図3は、位置ずれ検出部17によって位置ずれが検出され、モニタ6の画面において、自車位置マークが推測航法に基づいて算定された推測位置から最新のGPS測位に基づく自車位置に位置飛びした状態を示している。図4は、位置飛び発生時の位置飛び元である推測位置までの走行軌跡と、位置飛び先である自車両位置:gを含む道路パターンの1つを示している。図3と図4において、車両方位変更箇所としてのターンテーブル設置箇所は、図番TTで示されている。図5は、位置飛び元である推測位置までの走行軌跡と、位置飛び先である自車両位置を含む道路パターンの1つを示す走行軌跡を剛体変換することで合致する特定の道路パターン見つけ出すパターンマッチング処理を説明する模式図である。
【0028】
点群生成部21は、図4及び図5に模式的に示されているように、走行軌跡生成部16によって生成された走行軌跡からその走行軌跡線を規定する複数の走行軌跡点群を生成する。図4では、走行軌跡線は実線で描かれ図番TLが付与されており、走行軌跡点群は黒丸で描かれ図番pi(iは各点を識別する数値である)が付与されている。なお、この走行軌跡は、GPS位置情報である自車位置情報による修正なしで、しかもマップマッチング部14によるマップマッチング処理も受けておらず、進行方位情報のみで生成されているので、必ずしも道路上に沿うわけではない。しかしながら、自車両の方位変化量と移動距離とによって算出される進行方位に基づいているので、走行軌跡生成部16によって生成される走行軌跡線の幾何学的な形状そのものは実際の走行軌跡とほぼ一致している。点群生成部21は、さらに、地図データベース13から読み出された道路データから自車両周辺の道路網を規定する道路点群を生成するとともに、その道路点群から車両の走行が予想される道路パターンを規定する連続した道路パターン点群を抽出する。図4では、道路パターンは点線で描かれ図番RLが付与されており、道路点群は白抜き四角で描かれ図番mi(iは各点を識別する数値である)が付与されている。道路点群は道路データのノードnを利用することができる。
【0029】
剛体変換部22は、点群生成部21によって生成ないしは選択された走行軌跡点群:pi・・を特定の道路パターンを規定する道路点群:mi・・へ合同変換するための変換パラメータを生成して、走行軌跡点群の座標位置を変換する。なお剛体変換部22で扱われる変換パラメータは通常、回転行列:Rと並進ベクトル:tであるが、車両方位変更設備をターンテーブルとすると変換パラメータは回転行列:Rだけとなり、処理が簡単化される。さらに、そのターンテーブルを180°ターンテーブルまたは90°ターンテーブルに限定するとより処理は簡単となる。
【0030】
位置合わせ部23は、走行軌跡点群:piと道路点群:miとの各点を対応させながら剛体変換部22で実行される剛体変換を監視して、走行軌跡点群:piに一致する特定の道路点群:mi、つまり道路パターンを決定する。進行方位情報取得部12が動作していない状態で車両がターンテーブル設置箇所で方位転換されると、進行方位情報だけで生成された走行軌跡は、実際の走行軌跡とその幾何学的形状はあまり違わないとしてもその向きは全く相異している可能性がある。その相異は、位置ずれ検出部17によって検出されるので、この位置ずれ検出時に、走行軌跡マッチング処理部20は起動し、走行軌跡の先頭がGPS位置情報取得部11から出力された自車位置:gに近い道路上の位置に実質的に一致するとともに、その走行軌跡(p1・・・p6で規定される)も実質的に一致する特定の道路パターン(m1・・・で規定される)を決定する。
【0031】
進行方位情報取得部12が動作していない状態で車両がターンテーブル設置箇所で方位転換されるという事象の発生の際には、進行方位情報取得部12を動作させる電源5aのオン・オフが発生しているとすれば、ターンテーブルによる車両の方位変更が行われた箇所では設置箇所電源動作検出部15によって電源5aのオン・オフ動作が検出されているとみなすことができる。このことを考慮すると、走行軌跡マッチング処理部20における走行軌跡マッチング処理において、電源動作検出部16による電源オン・オフ検出時の自車位置を剛体変換の基点、例えば回転変換における回転中心とすることができ、処理が簡単になる。
【0032】
ナビゲーション用データ処理部30は、自車位置表示、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路案内、目的地検索等のナビゲーション機能を作り出す。例えば、ナビゲーション用データ処理部30は、マップマッチング部14で決定された自車位置としての自車両道路上位置に基づいて地図データベース13から自車両周辺の地図情報を取得してモニタ6の表示画面に地図の画像を表示するとともに、当該地図の画像上に、自車両の現在位置及び進行方位を表す自車位置マークを重ね合わせて表示する。また、ナビゲーション用データ処理部30は、地図データベース13に記憶された地図情報に基づいて、所定の出発地から目的地までの経路探索を行う。さらに、ナビゲーション用データ処理部30は、探索された出発地から目的地までの経路と自車位置とに基づいて、モニタ6及びスピーカ7の一方又は双方を用いて、運転者に対する経路案内を行う。モニタ6には操作デバイス8として機能するタッチパネルが装着されているが、これとは別な操作スイッチや操作ボタンを操作デバイス8として付加してもよい。
【0033】
次に、上述のように構成された車載ナビゲーション装置において、車両がターンテーブルによって方位変更されることによって生じているかもしれない自車位置の進行方位情報に基づく誤表示を修正する誤表示修正制御ルーチンを説明する。図6はその誤表示修正制御ルーチンを示すフローチャートである。この誤表示修正制御ルーチンは、車両方位変更させたターンテーブルから車両が出たところでスタートしている。車両が始動してからしばらくの間は、GPS位置情報取得部11は新しい自車位置情報を出力できないので、進行方位情報による走行軌跡の生成と一時記憶だけが走行軌跡生成部16によって行われる(#01)。この走行軌跡の生成と記憶はGPS位置情報取得部11が新しいGPS信号に基づいた自車両位置情報を取得して出力するまで続けられる(#02)。自車両位置情報が出力されると(#02Yes分岐)、一時記憶されている走行軌跡からその軌跡先頭部の位置が読み出される(#03)。自車両位置情報から読み出された自車両位置と走行軌跡先頭部の位置とを比較して位置ずれがチェックされる(#04)。位置ずれ量が判定閾値としての所定値未満であれば(#04Yes分岐)、ターンテーブルによる車両の方位変更がなかったとみなしてこのルーチンを終了する。位置ずれ量が所定値を越えていれば(#04No分岐)、ターンテーブルによる車両の方位変更が発生していたとして、以下のような走行軌跡修正処理を行う。
【0034】
走行軌跡修正処理では、まず電源動作検出部15で検出された電源オン・オフ地点で取得されていた自車位置をセットする(#05)。次に、ステップ#02で得られた自車両位置情報から読み出されたGPSによる自車両位置の周辺領域をセットする(#06)。さらに、上述した、一時記憶されている走行軌跡を規定する走行軌跡点群をセットする(#07)。ステップ#05でセットされた自車位置とステップ#06セットされた周辺領域を抽出拘束条件としてパターンマッチングの参照パターンとして用いられる道路パターンを規定する道路点群をセットする(#08)。走行軌跡点群と道路点群とがセットされると、剛体変換パラメータを算定して、走行軌跡点群を道路点群に移行させようとする変換を行うパターンマッチング処理を実行する(#09)。なお、ここでは車両方位変換設備としてターンテーブルを想定しているので、剛体変換パラメータは回転行列だけとなる。パターンマッチングの結果、走行軌跡点群を道路点群が許容範囲内で一致すると(#10Yes分岐)、剛体変換後の走行軌跡先頭点を真の自車位置が認識されたとして設定される(#12)。なお、この走行軌跡先頭点が道路上から外れている場合には、その走行軌跡先頭点を道路上に移行させる微調整が行われる。走行軌跡点群を道路点群が許容範囲内より外れていると(#10No分岐)、マッチング処理回数が所定回数行われたかどうかチェックされる(#11)。このチェックで所定回数以下なら(#11No分岐)、ステップ#08に戻って異なる道路点群をセットして、再度パターンマッチングを行い、所定回数を超えていれば、走行軌跡を用いたマッチングは不可能として、このルーチンを終了する。なお、その場合は、自車両位置情報に基づいた自車両位置の修正を行うことになるが、GPSの誤差以上に道路の密集度が高い場合、修正された自車両位置の精度は低くなる。
【0035】
ステップ#12で真の自車位置が設定されると、使用された剛体変換、つまり使用された回転行列で示される回転角度で方位変換されるターンテーブルが電源オン・オフ地点に設置されているとみなされ(#13)、この特定されたターンテーブルの位置や方位変更角度などの情報が地図情報に記録される(#14)。
【0036】
〔その他の実施形態〕
(1)上述した実施の形態の説明では、車両方位変更設備をターンテーブルと想定していたが、入り口と出口が異なる自動駐車設備や、トランバーサのような設備で車両の方位と位置を変更させる設備も想定する場合には、剛体変換部22で算定する剛体変換パラメータとして回転行列だけでなく並進ベクトルも加えるとよい。従って、本発明では、車両の方位と位置を変更させる種々の形式の設備を取り扱うことが可能である。
(2)剛体変換の基点は、電源動作検出部15による電源オン・オフ検出時の自車位置とすることに限定されない。道路データに基づいて剛体変換の基点を順次変えながら逐次収束処理を行って最適な剛体変換の基点と剛体変換パラメータを求めるようなアルゴリズムを採用してもよい。その際、順次指定していく剛体変換の基点を道路にアクセス可能な領域などに拘束することで演算処理は簡単化される。
(3)上述した実施の形態の説明では、走行軌跡と道路パターンのマッチングは走行軌跡と道路パターンとを規定する点群を用いて実行されていたが、これ以外、それらのライン形状を用いたパターンマッチングなど他の位置合わせマッチングアルゴリズムを採用してもよい。
(4)上述した誤表示修正制御ルーチンでは、特定されたターンテーブルの位置や方位変更角度などの情報は自己の地図データベース13に登録されていたが、通信回線やその他のデータ転送手法を用いて外部の地図データベースに登録するような構成も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
11:GPS位置情報取得部
12:進行方位情報取得部
13:地図データベース
15:電源動作検出部
16:走行軌跡生成部
17:位置ずれ検出部
18:自車位置決定部
19:判定部
20:走行軌跡マッチング処理部
21:点群生成部
22:剛体変換部
23:位置合わせ部
TT:ターンテーブル(車両方位変換設備)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS測位によって自車両の位置を表す自車両位置情報を取得するGPS位置情報取得部と、
自車両の方位変化量と移動距離とによって自車両の進行方位を表す進行方位情報を取得する進行方位情報取得部と、
前記進行方位情報に基づいて自車両の走行軌跡を生成する走行軌跡生成部と、
前記走行軌跡の先頭部の位置と前記自車両位置情報に基づく自車両位置との間の所定値以上の位置ずれを検出する位置ずれ検出部と、
前記位置ずれ検出部による位置ずれ検出時に前記走行軌跡の位置座標を剛体変換しながら道路パターンと間でパターンマッチング処理を行う走行軌跡マッチング処理部と、
前記パターンマッチング処理でパターン一致した道路パターンを真の走行軌跡とみなして自車両の位置を前記一致した道路パターンの先頭部とする自車位置決定部と、
パターン一致した走行軌跡のための剛体変換の基点を車両方位変更箇所と判定する判定部と、
を備えた車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記剛体変換が回転変換であり、前記判定部は前記車両方位変更箇所が車両ターンテーブル設置箇所であると判定する請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記回転変換は180°回転変換であり、前記車両ターンテーブルは車両を180°回転させる180°ターンテーブルである請求項2に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記進行方位情報取得部を動作させる電源のオン・オフを検出する電源動作検出部が備えられ、前記電源動作検出部による電源オン・オフ検出時の自車位置を前記剛体変換の基点とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記走行軌跡マッチング処理部は、前記走行軌跡を規定する軌跡点群と地図情報から抽出された道路パターンを規定する道路点群に合わせる位置合わせアルゴリズムを有する請求項1から4のいずれか一項に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記判定された車両方位変更箇所が地図データベースに記録される請求項1から5のいずれか一項に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項7】
GPS測位によって自車両の位置を表す自車両位置情報を取得するGPS位置情報取得部と、自車両の方位変化量と移動距離とによって自車両の進行方位を表す進行方位情報を取得する進行方位情報取得部と、前記進行方位情報に基づいて自車両の走行軌跡を生成する走行軌跡生成部とを備えた車載ナビゲーション装置を制御するコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記走行軌跡の先頭部の位置と前記自車両位置情報に基づく自車両位置との間の所定値以上の位置ずれを検出する位置ずれ検出ステップと、
前記位置ずれ検出ステップによる位置ずれ検出時に前記走行軌跡の位置座標を剛体変換しながら道路パターンと間でパターンマッチング処理を行う走行軌跡マッチング処理ステップと、
前記パターンマッチング処理でパターン一致した道路パターンを真の走行軌跡とみなして自車両の位置を前記一致した道路パターンの先頭部とする自車位置決定ステップと、
パターン一致した走行軌跡のための剛体変換の基点を車両方位変更箇所と判定する判定ステップと、
をコンピュータに実行させる車両方位変更箇所判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190721(P2010−190721A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35159(P2009−35159)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】