説明

車載機及び制御方法

【課題】少ない電力の消費で携帯機に車両の制御結果を確実に送信できる車載機を提供する。
【解決手段】
携帯機との間で行う無線通信に従って車両を制御する車載機であって、携帯機から信号を受信する無線通信部と、無線通信部が受信した信号の強度を検出する強度検出処理と、通信部が受信した信号に従って車両を制御する車両制御処理と、車両制御処理で車両を制御した制御結果を表す信号を、強度検出処理で検出した信号の強度に応じた強度で携帯機へ返信するよう無線通信部を制御する通信制御処理と、を実行する制御部とを備える。これによれば、携帯機から受信した信号の強度に応じた強度で制御結果を送信するため、少ない電力の消費で携帯機に車両の制御結果を確実に送信できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機との間で行う無線通信に従って車両を制御する車載機及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車両の運転者等が携帯する携帯機から電波を用いて送信される命令に従って、エンジン等を始動させるよう制御できる車載機が知られるに至った。
【0003】
また、他の無線通信システムと通信が干渉する場合であっても車載機との間で信頼性の高い通信を行える携帯機が知られるに至った(例えば、特許文献1)。
この携帯機は、車載機から受信した受信信号の強度を検知する手段と、検知した受信信号の強度が受信に充分なレベルであるにもかかわらず受信を失敗すると、信号の受信を妨害する妨害電波の強度が受信信号の強度よりも低く弱くなるまで待って受信信号に応答した応答信号を送信する。
【0004】
更に、通信状態が悪い場合又は電池が消耗している場合であっても確実に車載機と無線通信できる携帯型の送信機が知られるに至った(例えば、特許文献2)。
この送信機は、キー操作の深度を検出する手段と、検出されたキー操作の深度に応じて車載機へ送信する電波の出力強度が順次強くなるように信号を増幅する手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191870号公報
【特許文献2】特開2001−279971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、車載機と携帯機との動作距離がより一層長くなったため、車両から離れた遠隔地で携帯機を操作する運転者に対してエンジン等の車載機による制御結果を表示する必要が生じた。このため車載機は、携帯機から命令を受信するだけでなく、遠隔地にある携帯機へ制御結果を確実に送信する必要が生じると共に、制御結果を遠隔地まで送信するために要する電力の消費量が増加するという問題が生じた。
【0007】
また、特許文献1に記載の携帯機では、妨害電波の強度が受信信号の強度よりも低い時であっても、車載機と確実に通信できるだけの強度で電波を送信できない場合があった。
更に、特許文献2に記載の携帯型の送信機では、車載機と十分に通信できる強度を超えた出力強度で通信してしまうことがあるため、電池が蓄積した電力を必要以上に消耗してしまう場合があるという問題があった。また、逆に、十分な電力が供給されていてもキー操作の深度が浅い場合には、車載機と確実に通信できる強度で信号を出力できないことがあるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、少ない電力の消費で携帯機へ車両の制御結果を確実に送信できる車載機及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車載機は、携帯機との間で行う無線通信に従って車両を制御する車載機であって、携帯機から信号を受信する無線通信部と、無線通信部が受信した信号の強度を検出する強度検出処理と、無線通信部が受信した信号に従って車両を制御する車両制御処理と、車両制御処理で車両を制御した制御結果を表す信号を、強度検出処理で検出した信号の強度に応じた強度で携帯機へ返信するよう無線通信部を制御する通信制御処理とを実行する制御部とを備えることを特徴としている。
この構成によれば、携帯機から受信した信号の強度に応じた強度で制御結果を送信するため、少ない電力の消費で携帯機に車両の制御結果を確実に送信できる。
【0010】
上記構成において、車両制御処理は、無線通信部が受信した信号に従って、車両に搭載されたエンジンの始動を制御し、無線通信部は、蓄電池が供給する電力を用いて、エンジンの制御結果を携帯機へ返信し、制御部は、車両制御処理で始動させたエンジンの回転により発電する発電機が、蓄電池及び無線通信部のいずれか1つ以上に供給される電力を発電しているか否かを判定する発電判定処理を更に実行し、通信制御処理は、発電判定処理で発電機が発電していると判定すると、発電していないと判定する場合よりも強い強度で制御結果を返信するよう無線通信部を制御する構成を採用できる。
この構成によれば、供給される電力に応じた強度で制御結果を送信するため、蓄電池の消耗を防止しながら制御結果を携帯機へ確実に送信できる。
【0011】
本発明に係る制御方法は、携帯機との間で行う無線通信に従って車両を制御する制御方法であって、無線通信部が携帯機から信号を受信する無線通信ステップと、無線通信ステップで受信した信号の強度を検出する強度検出ステップと、無線通信ステップで受信した信号に従って車両を制御する車両制御ステップと、車両制御ステップで車両を制御した制御結果を表す信号を、強度検出ステップで検出した信号の強度に応じた強度で携帯機へ返信するよう無線通信部を制御する通信制御ステップとを備えることを特徴としている。
この構成によれば、携帯機から受信した信号の強度に応じた強度で制御結果を送信するよう制御するため、少ない電力の消費で携帯機に車両の制御結果を確実に送信するよう通信部を制御できる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書開示の車載機及び制御方法によれば、少ない電力の消費で携帯機に車両の制御結果を確実に送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の車載機と車載機が制御する車両とを備える制御システムの一実施形態を示す構成図である。
【図2】携帯機の備える制御部が実行する制御処理の一例を表すフローチャートである。
【図3】車両の一構成例を表すハードウェア構成図である。
【図4】車載機が備える制御部の一構成例を表す機能ブロック図である。
【図5】車載機の備える制御部が実行する制御処理の一例を表すフローチャートの一部である。
【図6】車載機の制御部が実行する制御処理の一例を表すフローチャートの他部である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の車載機と携帯機とでを備える制御システムの一実施形態を示す構成図である。
図1(a)に示す制御システム1は、携帯機100と携帯機100が無線通信を用いて制御する車両200とで構成される。携帯機100は、車両200の乗員によって携帯される。尚、本実施例において、車両200は、例えば、乗用車、バス、及びトラック等の自動車だけでなく、原動機付自転車、軽車両、及びトロリーバス、戦車等の軍用車両、並びに鉄道車両を含む。また、制御システム1は、車両のみならず、船舶、航空機、並びに人工衛星等の宇宙機に用いても良い。
【0016】
ここで、図1(b)を参照して、携帯機100の外観構成について説明する。図1(b)は、携帯機100を上面から表す上面図である。
携帯機100は、表示部110と操作部120とを有する。表示部110は、車両200の状態を表示する。具体的には、表示部110は、それぞれ燈色、緑色、及び赤色に点灯するLED110O(Light Emitting Diode)、110G、及びLED110Rを備える。表示部110は、これら3つのLEDの点灯パターンにより、車両の状態を表示する。より具体的には、赤色のLED110Rは、例えば、車両200が盗難又は若しくは侵入を受けた、又は対象物の取り外し若しくは移動体の存在を検知した等の異常な状態にある場合に点灯する。また、緑色のLED110Gは、例えば、携帯機100の制御に従って動作した状態に車両200がある場合に点灯する。更に、燈色のLED110Oは、車両200の状態が不明である場合に点灯する。
尚、表示部110は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)で構成されても良い。また、携帯機100は、表示部110に代えて、例えば、スピーカ等の音声出力装置を備え、車両の状態に応じて予め定める通知音を出力しても良い。
【0017】
操作部120は、車両200の乗員の操作を受けて、車両の制御を命じる制御命令を入力する。つまり、ユーザは、車両に所望する制御を実行させる際に操作部120を操作する。具体的には、操作部120は、ロックボタン121、アンロックボタン122、エンジンスタートボタン123、エンジンストップボタン124、及び監視モードボタン125で構成される。ロックボタン121及びアンロックボタン122は、それぞれ車両200のドアをロックする制御及びアンロックする制御を行うよう命じるドアロック制御命令及びドアアンロック制御命令を入力する。エンジンスタートボタン123及びエンジンストップボタン124は、車両200のエンジンを始動する制御及びエンジンを停止する制御を行うよう命じるエンジン始動制御命令及びエンジン停止制御命令を入力する。監視モードボタン125は、車両200の安全に関する状態の監視を開始及び終了するよう命じる監視開始命令及び監視終了命令を入力する。
【0018】
次に、図1(c)を参照して、携帯機100の構成について説明する。図1(c)は、携帯機100の一構成例を表すハードウェア構成図である。
携帯機100は、制御部130及び無線通信部140のみならず、図1(b)で既に説明した表示部110及び操作部120で構成される。制御部130については後述する。
【0019】
無線通信部140は、例えば、アンテナと送受信回路とを備える。アンテナは、車両200が送信した所定の波動を受信して発生させた電流を送受信回路へ出力する。尚、本実施例において、波動とは、電波をいうとして説明するが、これに限定される訳ではなく、光、電磁波、赤外線、超音波、及び音のいずれかをいう構成を採用できる。また逆に、アンテナは、送受信回路が出力する電流に基づいて波動を車両200へ発する。
送受信回路は、例えば、AF(Audio Frequency)回路等の低周波増幅回路及びRF(Radio Frequency)回路等の高周波増幅回路で構成される。送受信回路は、アンテナが出力する信号電流を制御部130へ出力する。逆に、制御部130が出力する信号電流を無線通信部140へ出力する。
【0020】
制御部130は、例えば、マイクロコンピュータ(以下単に、マイコンという)で構成される。制御部130は、不図示の電池が供給する電力を用いてソフトウェア処理である制御処理を実行して車両200を制御する。制御部130は、実行部130a、記憶部130b、及び入出力部130dで構成される。実行部130a、記憶部130b、及び入出力部130dは互いにバス130fによって情報の授受が可能なように接続している。実行部130aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。記憶部130bは、例えば、ROM(Read-Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)で構成される。入出力部130dは、例えば、A/D(Analog / Digital)変換器等で構成される。
【0021】
ソフトウェア処理は、実行部130aが、記憶部130bに格納したプログラムを読み込み、読み込んだプログラムが表すソフトウェア処理の実行手順に従って演算を行うことにより実現される。尚、記憶部130bには、実行部130aが行った演算の結果を表す情報が書き込まれる。また、必要に応じて入出力部130dは、接続する表示部110、操作部120、及び無線通信部140との間で入出力する情報を、実行部130aが演算対象とする情報又は演算した結果を表す情報として入出力する。
【0022】
次に、図2を参照して、制御部130が実行する制御処理について説明する。図2は、制御部130が実行する制御処理の一例を表すフローチャートである。尚、制御部130は、起動時に制御処理を実行する。
先ず、制御部130は、例えば、不図示の電池が取り外された又は電池に蓄積した電力が枯渇したために電源が「OFF」になるか否かを判断する(ステップS01)。制御部130は、電源が「OFF」になると判断する場合には制御処理の実行を終了し、そうでない場合にはステップS02の処理を実行する。
【0023】
ステップS01において、電源が「OFF」にならないと判断した場合には、制御部130は、ボタン121から125が操作されたか否かを判断する(ステップS02)。制御部130は、ボタン121から125のいずれかが操作されたと判断する場合にはステップS03の処理を実行し、そうでない場合にはステップS01に戻り上記処理を繰り返す。
【0024】
ステップS02において、制御部130は、ボタン121から125のいずれかが操作されたと判断した場合には、ボタン121から125に応じた信号を車両200へ送信するよう無線通信部140を制御する(ステップS03)。具体的には、ボタン121が操作された場合にはドアロック制御命令を表す信号を送信するよう無線通信部140を制御する。同様に、ボタン122から125が操作された場合には、それぞれドアアンロック制御命令、エンジン始動制御命令、エンジン停止制御命令、監視開始命令、及び監視終了命令を送信するよう制御する。
【0025】
次に、制御部130は、車両200から信号を受信するよう無線通信部140を制御する(ステップS04)。その後、制御部130は、車両200から信号を受信できたか否かを判断する(ステップS05)。制御部130は、信号を受信できたと判断する場合にはステップS07の処理を実行し、受信できなかったと判断する場合にはステップS06の処理を実行する。
【0026】
ステップS05において、制御部130は、信号を受信でなかったと判断する場合には、所定時間を経過したか否かを判断する(ステップS06)。制御部130は、所定時間を経過したと判断する場合にはステップS07の処理を実行し、そうでない場合にはステップS04に戻り上記の処理を繰り返す。
【0027】
ステップS05において、制御部130は、信号を受信できたと判断した場合には、受信した受信信号が表す車両の状態を表示するよう表示部110を制御する(ステップS07)。具体的には、制御部130は、受信信号が車両200の異常を報告する場合には赤色のLED110Rを点灯させる。また、制御部130は、送信した制御命令に従って制御された状態に車両200があると受信信号が報告する場合には緑色のLED110Gを点灯させる。更に、ステップS06において、所定時間を経過しても信号を受信できないと判断した場合には、制御部130は、燈色のLED110Oを点灯させる。その後、制御部130は、ステップS01に戻り、上記処理を繰り返す。
【0028】
次に、図3を参照して、携帯機100により制御される車両200の構成について説明を行う。図3は、車両200の一構成例を表すハードウェア構成図である。
車両200は、車載機210、エンジン制御装置221、ボデー制御装置222、パワーマネジメント装置223、エンジン231、発電機232、蓄電池233、及びドア235を備える。
【0029】
車載機210については後述する。エンジン制御装置221、ボデー制御装置222、及びパワーマネジメント装置223(以下、エンジン制御装置221等という)は、例えば、ECU(Electronic control unit)で構成される。エンジン制御装置221は、車載機210に制御されて、エンジン231の始動及び停止を制御する。具体的には、エンジン制御装置221は、蓄電池233が供給する電力を用いて、不図示のスタータを駆動させると共に、不図示のインジェクタのエンジン231に対する燃料噴射タイミングを制御することで、エンジン231を始動させる。尚、エンジン制御装置221は、例えば、回転数センサからの出力に基づいて、エンジン231の制御結果を取得すると共に、取得した制御結果を表す信号を車載機210及びパワーマネジメント装置223へ送信する。
【0030】
ボデー制御装置222は、車載機210に制御されて、ドア235の開閉等を制御する。尚、ボデー制御装置222は、蓄電池233が供給する電力を用いて、例えば、ドアセンサからの出力に基づいてドア235の制御結果を取得すると共に、取得した制御結果を表す信号を車載機210へ送信する。
【0031】
パワーマネジメント装置223は、主にハイブリッド車に搭載される。パワーマネジメント装置223は、蓄電池233が供給する電力を用いて蓄電池233に充電される電力量及び蓄電池233から充電される電力量を制御する。具体例としては、蓄電池233の充電量が所定値を下回った場合に、車載機210がエンジン231を始動させると、エンジン231が発生させたトルクを用いて電力を発電するよう発電機232を制御する。また、エンジン231の回転数が所定値を超えると、停止するようエンジン231を制御すると共に、蓄電池233の蓄積した電力を用いてトルクを発生させるモータとして機能するよう発電機232を制御する。尚、パワーマネジメント装置223は、例えば、電流センサからの出力に基づいて、発電機232の制御結果を取得すると共に、取得した制御結果を表す信号を車載機210へ送信する。
【0032】
エンジン231は、例えば、レシプロエンジン又はロータリーエンジンで構成される。発電機232は、例えば、オルタネーターで構成される。発電機232は、パワーマネジメント装置132に制御されて、電力を発電する。また、発電機232は、発電した電力を、車載機210及びエンジン制御装置221等に供給すると共に、車載機210及びエンジン制御装置221等で消費されなかった電力を、例えば、鉛蓄電池で構成される蓄電池233へ充電する。
【0033】
車載機210は、蓄電池233が供給する電力を用いて、携帯機100との間で行う無線通信に従って車両200を制御する。
ここで、図3(b)を参照して、車載機210のハードウェア構成について説明を行う。図3(b)は、車載機210の一構成例を表すハードウェア構成図である。
車載機210は、制御部211と無線通信部212とで構成される。制御部211は、ソフトウェア処理である制御処理を実行して、無線通信部212が受信した信号に従って車両200を制御する。制御部211は、実行部211a、記憶部211b、有線通信部211c、及び入出力部211dで構成される。尚、実行部211a、記憶部211b、及び入出力部211dは、図1を参照して説明した実行部130a、記憶部130b、及び入出力部130dと同様であるので説明を省略する。
【0034】
有線通信部211cは、例えば、CAN(Controller Area Network)コントローラ又はLIN(Local Interconnect Network)コントローラで構成される。有線通信部211cは、有線接続するエンジン制御装置221等とCAN又はLINプロトコルを用いて通信する。有線通信部211cは、エンジン制御装置221等と通信する情報を、実行部130aが演算対象とする情報又は演算した結果を表す情報として入出力する。
【0035】
無線通信部212は、図1を参照して説明した無線通信部140と同様であるので重複した説明を省略する。無線通信部212は、携帯機100が送信した命令等を表す信号を受信すると共に、受信した信号を制御部211が備える入出力部211dへ出力する。また、無線通信部212は、受信した受信信号の表す命令に従って制御部211が車両を制御した制御結果、又は制御部211が検知した車両の状態を表す信号を、制御部211に指定された強度で携帯機100へ送信する。
【0036】
次に、図4を参照して、制御部211の構成について機能に着目して説明を行う。図4は、制御部211の一構成例を表す機能ブロック図である。
制御部211は、取得部211g、車両制御部211h、侵入検知部211i、強度検知部211j、発電判定部211k、及び通信制御部211lで構成される。
【0037】
取得部211gは、実行部211aが取得処理を実行することで実現される。取得部211gは、無線通信部211cが携帯機100から受信した受信信号を取得する。また、取得部211gは、受信信号が表す制御命令に従って車両200を制御した結果をエンジン制御装置221、ボデー制御装置222、及びパワーマネジメント装置223から取得する。更に、取得部211gは、不図示の移動体検知センサから移動体を検知したことを表す信号を取得する。移動体検知センサは、例えば、ドップラセンサで構成され、車両200の車室内又は車両周辺における(以下単に、車両におけるという)移動体の存在を検知する。尚、車両周辺は、車室外であって車両に対して侵入行為を行うことができる範囲を少なくとも含む。
【0038】
車両制御部211hは、実行部211aが車両制御処理を実行することで実現される。車両制御部211hは、取得部211gが取得した制御命令に従って車両200を制御する。具体的には、エンジン始動制御命令又はエンジン停止制御命令を取得部211gが取得すると、エンジン231を始動又は停止させるようエンジン制御装置221を制御する。また、ドアロック制御命令又はドアアンロック制御命令を取得部211gが取得すると、ドア235を施錠する又は開錠するようボデー制御装置222を制御する。更に、監視開始命令又は監視終了命令を取得部211gが取得すると、車両における移動体の存在又は車両200に対する侵入を監視し始めるよう又は監視を終了するよう侵入検知部211i及び不図示の移動体検知センサを制御する。
【0039】
侵入検知部211iは、実行部211aが侵入検知処理を実行することで実現される。侵入検知部211iは、不図示の移動体検知センサが出力する信号に基づいて、車両における移動体の存在又は車両に対する侵入等を検知する。具体例としては、移動体の存在又は移動体の侵入を監視している監視状態において移動体検知センサが出力する信号が所定値を超えると、車両における移動体の存在又は車両に対する侵入を検知する。
【0040】
強度検知部211jは、実行部211aが強度検知処理を実行することで実現される。強度検知部211jは、取得部211gが無線通信部212から受信した受信信号の強度を検出する。具体例としては、強度検知部211jは、取得部211gが無線通信部212から受信した電気信号のピーク電圧を強度として検出する。尚、本実施例において、強度検知部211jはソフトウェア処理により実現されるとして説明したが、これに限定される訳ではなく、例えば、強度検知部211jの機能を有するハードウェア回路で実現される構成を採用できる。
【0041】
発電判定部211kは、実行部211aが発電判定処理を実行することで実現される。発電判定部211kは、発電機232が蓄電池233及び無線通信部212のいずれか1つ以上に供給される電力を発電しているか否かを判定する。具体例としては、発電判定部211kは、取得部211gがパワーマネジメント装置223から取得した発電機232の制御結果に基づいて発電機232が発電しているか否かを判断する。他の具体例としては、発電判定部211kは、取得部211gがエンジン制御装置221から取得した制御結果が表すエンジン231の回転数に基づいて発電機232が発電しているか否かを判断する構成を採用できる。更に他の具体例としては、発電判定部211kは、不図示の回転数センサの出力するエンジン231の回転数が所定値を超えている場合に、発電機232が発電していると判定する構成を採用できる。
【0042】
通信制御部211lは、実行部211aが通信制御処理を実行することで実現される。通信制御部211lは、制御結果等を表す送信信号を、強度検出部211jで検出した信号の強度に応じた強度で携帯機100へ返信するよう無線通信部212を制御する。尚、制御結果等とは、車両制御部211hで車両200を制御した制御結果及び侵入検知部211iが検知した車両200の状態を含む。
この構成によれば、携帯機100から受信した信号の強度に応じた強度で制御結果等を送信するため、少ない電力の消費で携帯機100に車両200の制御結果等を確実に送信できる。
【0043】
具体的には、通信制御部211lは、強度検出部211jで検出したピーク電圧が所定の値よりも大きい場合には、所定の値よりも小さいピーク電圧を送信信号が有するよう通信制御部211lを制御する。
この構成によれば、携帯機100から受信した信号の強度が強い場合には、携帯機100は、例えば、車載機210から近い距離等の電波を車載機210へ送信し易い環境にあるため、弱い強度で信号を返信しても携帯機100と確実に通信できる。
【0044】
また、通信制御部211lは、発電判定部211kで発電機232が発電していると判定すると、発電していないと判定する場合よりも強い強度で制御結果等を返信するよう無線通信部212を制御する。
この構成によれば、供給される電力に応じた強度で制御結果等を送信するため、蓄電池233の消耗を防止しながら制御結果等を携帯機100へ確実に送信できる。
【0045】
より具体的には、通信制御部211lは、発電判定部211kで発電機232が発電していると判定すると、無線通信部212が送信し得る最も強い強度で制御結果等を返信するよう無線通信部212を制御する。
この構成によれば、発電機232が発電している場合には、最も強い強度で制御結果等を送信するため、蓄電池233の消耗を防止しながら制御結果等を携帯機100へ確実に送信できる。
【0046】
ここで、図5及び6を参照して、制御部211が実行する制御処理について説明する。図5及び6は、制御部211が実行する制御処理の一例を表すフローチャートである。尚、制御部211は、起動時に制御処理を実行する。
先ず、制御部211は、例えば、蓄電池233が取り外された又は蓄電池233に蓄積した電力が枯渇したために電源が「OFF」になるか否かを判断する(ステップS11)。制御部130は、電源が「OFF」になると判断する場合には制御処理の実行を終了し、そうでない場合にはステップS12の処理を実行する。
【0047】
次に、制御部211は、携帯機100が送信する信号を受信するよう無線通信部212を制御する(ステップS12)。その後、制御部211は、携帯機100から無線通信部212が信号を受信したか否かを判断する(ステップS13)。制御部211は、信号を受信したと判断する場合にはステップS14の処理を実行し、そうでない場合にはステップS11に戻り上記処理を繰り返す。
【0048】
ステップS13において、制御部211は、信号を受信したと判断した場合には、受信信号が表す制御命令に応じた上記の制御を実行する(ステップS14)。次に、制御部211は、上記の様に、エンジン231が停止しているか否かに基づいて、発電機232が発電しているか否かを判断する(ステップS15)。制御部211は、エンジン231が停止していると判断する場合にはステップS16の処理を、そうでない場合にはステップS18の処理を実行する。
【0049】
ステップS15において、制御部211は、エンジン231が停止していると判断した場合には、無線通信部212が受信した信号の受信強度がレベル「大」であるか否かを判断する(ステップS16)。具体的には、受信信号のピーク電圧が「4V」から「5V」の範囲にある場合に、レベル「大」であると判断する。制御部211は、受信強度がレベル「大」であると判断する場合にはステップS20の処理を実行し、そうでない場合にはステップS17の処理を実行する。
【0050】
ステップS16において、制御部211は、受信強度がレベル「大」でないと判断した場合には、受信強度がレベル「中」であるか否かを判断する(ステップS17)。具体的には、受信信号のピーク電圧が「2V」から「4V」の範囲にある場合に、レベル「中」であると判断する。制御部211は、受信強度がレベル「中」であると判断する場合にはステップS19の処理を実行し、そうでない場合にはステップS18の処理を実行する。
【0051】
ステップS15において、制御部211は、エンジン231が停止していないと判断した場合には、無線通信部212の送信出力を最大に設定する。また、ステップS17において、制御部211は、受信強度がレベル「中」でないと判断した場合には、受信強度がレベル「小」であると判断し、送信出力を最大に設定する(ステップS18)。携帯機100が、例えば、距離が遠い場所等の電波を受信し難い環境にあると推定されるからである。具体的には、制御部211は、「5V」のピーク電圧を送信信号が有するよう通信制御部211l無線通信部211cを制御する。
【0052】
ステップS17において、制御部211は、受信強度がレベル「中」であると判断した場合には、送信出力を「中」に設定する(ステップS19)。具体的には、制御部211は、「4V」のピーク電圧を送信信号が有するよう通信制御部211l無線通信部211cを制御する。
【0053】
ステップS16において、制御部211は、受信強度がレベル「大」であると判断した場合には、送信出力を「小」に設定する(ステップS20)。携帯機100が、例えば、距離が近い電波を受信し易い環境にあると推定されるからである。具体的には、制御部211は、「2V」のピーク電圧を送信信号が有するよう通信制御部211l無線通信部211cを制御する。
【0054】
ステップS18からS20を実行した後に、制御部211は、ステップS14で実行した制御の制御結果を、ステップS18からS20で設定した出力で送信するよう通信制御部211l無線通信部211cを制御する(ステップS21)。その後、制御部211は、ステップS11に戻り上記処理を繰り返す。
【0055】
尚、図5及び6において、ステップS112及びS18からS21の処理が通信制御部211lを実現するための通信制御処理の一例に相当する。また、ステップS14の処理が車両制御部211hを実現するための車両制御処理の一例に相当し、ステップS15の処理が発電判定部211kを実現するための発電判定処理の一例に相当し、ステップS16及びS17の処理が強度検知部211jを実現するための強度検知処理の一例に相当する。
【0056】
車載機210がソフトウェア処理を実行することで実現する機能の一部又は全部は、ハードウェア回路を用いて実現することができる。逆に、車載機210がハードウェア回路を用いて実現する機能の一部又は全部は、ソフトウェア処理を実行することで実現することができる。
【0057】
車載機210が実行する処理手順を記述したプログラムは、磁気ディスクや光ディスク、半導体メモリ、その他の記録媒体に格納して配布したり、ネットワークを介して配信したりすることにより提供できる。
【0058】
本発明の制御方法は、車載機210を用いて実施できる。
【0059】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…制御システム 100…携帯機
110…表示部 120…操作部
130…制御部(マイコン) 130a…演算装置
130b…ROM 130d…I/F
130f…バス 140…無線通信部
200…車両 210…車載機
211…制御部 211a…CPU
211b…ROM 211c…無線通信部
211d…入出力部 211f…バス
211g…取得部 211h…車両制御部
211i…侵入検知部 211j…強度検知部
211k…発電判定部 211l…通信制御部
212…無線通信部 221…エンジン制御装置
222…ボデー制御装置 223…パワーマネジメント装置
231…エンジン 232…発電機
233…蓄電池 235…ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機との間で行う無線通信に従って車両を制御する車載機であって、
携帯機から信号を受信する無線通信部と、
無線通信部が受信した信号の強度を検出する強度検出処理と、
無線通信部が受信した信号に従って車両を制御する車両制御処理と、
車両制御処理で車両を制御した制御結果を表す信号を、強度検出処理で検出した信号の強度に応じた強度で携帯機へ返信するよう無線通信部を制御する通信制御処理と、
を実行する制御部とを備えることを特徴とする車載機。
【請求項2】
車両制御処理は、無線通信部が受信した信号に従って、車両に搭載されたエンジンの始動を制御し、
無線通信部は、蓄電池が供給する電力を用いて、エンジンの制御結果を携帯機へ返信し、
制御部は、車両制御処理で始動させたエンジンの回転により発電する発電機が、蓄電池及び無線通信部のいずれか1つ以上に供給される電力を発電しているか否かを判定する発電判定処理を更に実行し、
通信制御処理は、発電判定処理で発電機が発電していると判定すると、発電していないと判定する場合よりも強い強度で制御結果を返信するよう無線通信部を制御することを特徴とする請求項1に記載の車載機。
【請求項3】
携帯機との間で行う無線通信に従って車両を制御する制御方法であって、
無線通信部が携帯機から信号を受信する無線通信ステップと、
無線通信ステップで受信した信号の強度を検出する強度検出ステップと、
無線通信ステップで受信した信号に従って車両を制御する車両制御ステップと、
車両制御ステップで車両を制御した制御結果を表す信号を、強度検出ステップで検出した信号の強度に応じた強度で携帯機へ返信するよう無線通信部を制御する通信制御ステップとを備えることを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−223052(P2010−223052A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70171(P2009−70171)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】