説明

車載用電源装置

【課題】AC出力およびDC出力を提供する車載用電源装置において、未知のAC負荷が接続する場合であっても各負荷に適切に電力を供給できるようにする。
【解決手段】DC/DCコンバータ11は、所定のDC電圧を生成する。DC出力は、自動車の走行に必要な機器に供給される。DC/ACコンバータ12は、DC/DCコンバータ11により生成されるDC電圧を交流に変換する。AC出力は、コンセントプラグに導かれる。コントローラ13は、DC出力およびAC出力の総電力がDC/DCコンバータ11の最大電力を超えると、DC/ACコンバータ12によるAC出力を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC出力およびDC出力を提供する車載用電源装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来より、AC出力およびDC出力の双方を提供可能な電源装置が知られている。例えば、特許文献1には、給電部、給電部と交流負荷との間に設けられるスイッチ、給電部と直流負荷との間に設けられるスイッチ、及びそれらのスイッチを制御する制御部を備える電源装置が記載されている。そして、この電源装置は、給電部の能力および各負荷が必要とする電力が既知であることを前提とし、動作すべき負荷の組み合わせに応じて、給電部へ過剰な負担がかからないようにスイッチを制御する。これにより、給電部への過剰な負担を避けながら、負荷を効率よく動作させることができる。
【特許文献1】特開昭63−69434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の電源装置においては、各負荷が必要とする電力が未知である場合には、スイッチを適切に制御することができず、各負荷に適切に電力を供給できないおそれがある。例えば、電源装置のAC出力がコンセントプラグに導かれる場合には、そのコンセントプラグに接続される負荷によっては、いずれかの負荷に必要な電力を供給できなくなることがある。
【0004】
また、特許文献1では、負荷の優先順位については特に考慮されていない。すなわち、例えば、停止することが許されない負荷が電源装置に接続される場合に、各スイッチをどのように制御すべきかについては記載がない。なお、電源装置が自動車に搭載される場合には、その自動車の走行のために使用される電気機器は、停止することが許されない負荷に相当する。
【0005】
本発明は、AC出力およびDC出力を提供する車載用電源装置において、未知の負荷が接続する場合であっても各負荷に適切に電力を供給できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車載用電源装置は、DC出力が自動車の走行のための電気機器に供給され、AC出力がコンセントプラグに導かれる構成であり、DC出力を提供するDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの出力を交流に変換してAC出力を提供するDC/ACコンバータと、前記DC出力の電力およびAC出力の電力の和を表す総電力と前記DC/DCコンバータの最大電力とを比較する比較手段と、前記総電力が前記最大電力よりも大きいときに前記AC出力を制限する制限手段、を有する。
【0007】
DC出力が供給される電気機器は、自動車の走行のために使用されるので、電力が不足することは許されない。他方、AC出力はコンセントプラグに導かれるので、どのような負荷が接続されるのかは未知である。そこで、制限手段は、総電力がDC/DCコンバータの最大電力よりも大きくなるときには、AC出力を制限する。これにより、自動車の走行に必要な優先度の高い負荷に確実に電力が供給される。
【0008】
上述の車載用電源装置において、DC出力の電力およびAC出力の電力を検出する検出手段をさらに備えるようにしてもよい。この構成によれば、実際に負荷に供給される電力が検出されるので、DC出力およびAC出力への電力の割当てを効率よく行うことができる。
【0009】
また、本発明の他の態様の車載用電源装置は、DC出力が自動車の走行のための電気機器に供給され、AC出力がコンセントプラグに導かれる構成であり、DC出力を提供するDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの出力を交流に変換してAC出力を提供するDC/ACコンバータと、DC負荷の要求電力を表す信号を受け付ける受付手段と、AC出力の電力を検出する検出手段と、前記要求電力および検出されたAC出力の電力の和を表す総電力と前記DC/DCコンバータの最大電力とを比較する比較手段と、前記総電力が前記最大電力よりも大きいときに前記AC出力を制限する制限手段、を有する車載用電源装置。この構成によれば、DC出力の電力を検出する必要がなくなる。
【0010】
さらに、制御手段は、当該電源装置を搭載する自動車が運転状態であるときに前記AC出力を制限するようにしてもよい。DC出力が供給される電気機器は、自動車の走行のために動作するので、自動車が運転状態でないときは、DC出力の電力を確保するためにAC出力を制限する必要がない。なお、「運転状態」とは、自動車が走行しているときだけでなく、自動車自体は停止しているもののその走行のためのエンジンまたは走行のためのモータの駆動装置が起動されている状態を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、AC出力およびDC出力を提供する車載用電源装置において、未知の負荷が接続する場合であっても各負荷に適切に電力を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態の電源装置の構成を示す図である。この電源装置1は、自動車等に搭載される車載用電源装置であり、AC出力およびDC出力を提供する。
図1において、DC/DCコンバータ11は、バッテリ21から出力されるDC電圧を所定のDC電圧に変換する。この実施例では、電源装置1が提供するAC出力が100V系であり、DC/DCコンバータ11は、100√2VのDC電圧を生成する。なお、電源装置1が提供するAC出力が200V系である場合には、DC/DCコンバータ11は200√2VのDC電圧を生成する。また、バッテリ21の出力電圧は12Vの場合や数百Vの場合があり、AC出力は100V系の場合や200V系の場合がある。よって、DC/DCコンバータ11は、バッテリ21の出力電圧とAC出力に必要なDC電圧との関係に応じて、適宜、昇圧コンバータまたは降圧コンバータが設けられる。さらに、バッテリ21の出力電圧がAC出力に必要なDC電圧を跨いで変動する場合には、DC/DCコンバータ11は昇降圧コンバータであってもよい。
【0013】
DC/ACコンバータ12は、DC/DCコンバータ11から出力されるDC電圧をAC電圧に変換する。この実施例では、100V系のAC出力が提供される。なお、AC出力の周波数は、商用電源と同じであり、例えば、50/60Hzである。
【0014】
AC出力は、コンセントプラグに導かれる。すなわち、この電源装置1には、所望のAC負荷を接続することができる。一方、DC出力は、電源装置1を搭載する自動車の走行に必要な電気機器に接続される。この実施例では、DC出力は、インバータを介して電動パワーステアリングシステム(以下、PSシステム)のためのモータに供給される。ここで、PSシステムは、自動車の走行に際して必要な機器であるのに対し、コンセントプラグに接続される機器(例えば、テレビ等)は、自動車の走行に際して必ずしも必要ではない。すなわち、DC負荷としてのPSシステムは、少なくとも自動車が運転状態であるときには、コンセントプラグに接続される機器よりも優先度の高い機器である。
【0015】
コントローラ(比較手段、制限手段)13は、DC出力の電力およびAC出力の電力を検出し、それらに応じてDC/ACコンバータ12によるAC出力を制限する。ここで、DC出力およびAC出力の電圧は既知である。したがって、DC出力およびAC出力の出力電流を検出すれば、それぞれ対応する電力を算出することができる。この実施例では、電流センサS1(検出手段)を利用してDC出力の出力電流が検出され、電流センサS2(検出手段)を利用してAC出力の出力電流が検出される。なお、コントローラ13は、例えば、マイコンにより実現される。
【0016】
図2は、図1に示す電源装置のコントローラ13の処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、電源装置1が動作している期間は継続して所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0017】
ステップS1では、DC出力の電力を読み取る。ステップS2では、AC出力の電力を読み取る。ステップS3(比較手段)では、「DC出力の電力+AC出力の電力」と「DC/DCコンバータ11の最大電力」とを比較する。ここで「DC/DCコンバータ11の最大電力」とは、例えば、DC/DCコンバータ11に過剰な負担がかからない範囲での上限値である最大定格電力を意味する。すなわち、DC/DCコンバータ11は、短時間であれば、その最大定格電力よりも大きな電力を供給することができる。なお、「DC/DCコンバータ11の最大電力」は、コントローラ13に予め設定されているものとする。
【0018】
「DC出力の電力+AC出力の電力」が「DC/DCコンバータ11の最大電力」以下であれば、ステップS1に戻る。この場合、電源装置1に接続されているすべての負荷に十分な電力が供給される。一方、「DC出力の電力+AC出力の電力」が「DC/DCコンバータ11の最大電力」を超えていれば、ステップS4(制限手段)において、AC出力を制限する。具体的には、コントローラ13は、たとえば、DC/ACコンバータ12の出力を停止する。この場合、DC/ACコンバータ12のスイッチング動作が停止される。あるいは、コントローラ13は、AC出力を「DC/DCコンバータ11の最大電力−DC出力の電力」にまで低下させるようにしてもよい。この場合、例えば、DC/ACコンバータ12のスイッチング素子を駆動するPWM信号のデューティの上限値が「DC/DCコンバータ11の最大電力−DC出力の電力」に応じて設定される。
【0019】
このように、実施形態の電源装置1は、自動車の走行に必要な負荷に対して優先的に電力を供給する構成であり、DC出力およびAC出力の総電力がDC/DCコンバータ11の最大電力を超える場合には、AC出力を制限する。したがって、自動車の走行に必要な電気機器に対して確実に電力を供給できる。また、DC出力の電力が低いときは、余った電力をAC出力に供給することができるので、電源装置1を効率的に使用することができる。なお、DC負荷としてのPSシステムは、ステアリングの操舵時にのみ電力を必要とするので、基本的に、AC出力の制限は一時的なものである。
【0020】
なお、上述の実施例では、DC出力およびAC出力の電力をそれぞれ検出しているが、PSシステムが消費し得る最大電力は既知である。したがって、図2に示すフローチャートのステップS3(及びステップS4)において、検出したDC電力値を使用する代わりに所定の固定値(すなわち、PSシステムが消費し得る最大電力値)を使用してもよい。また、DC出力およびAC出力の電力をそれぞれ検出する代わりに、DC/DCコンバータ11の総出力およびDC/ACコンバータ12の入力を読み取るようにしてもよい。
【0021】
さらに、AC出力の制限は、自動車の走行時にのみ行うようにしてもよい。すなわち、コントローラ13は、エンジンのオン/オフを検出し、エンジンがオン状態である場合に限り図2に示すフローチャートを実行するようにしてもよい。
【0022】
図3は、他の実施形態の電源装置の構成を示す図である。図3に示す構成では、PSシステムの要求する電力を表す信号が車両側コントローラ31を介して電源装置2に通知される。そして、コントローラ13は、通知される要求電力および検出されるAC出力の電力に応じて、DC/ACコンバータ12によるAC出力を制限する。なお、PSシステムは、自動車の運転者によってステアリングが操舵されたときに、そのステアリングの角度および角速度に応じて決まる電力を車両側コントローラ21に要求する。
【0023】
図4は、図3に示す電源装置のコントローラ14の処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、基本的には、図2を参照しながら説明した手順と同じである。ただし、ステップS11(受付手段)では、DC出力の電力を検出する代わりに、車両側コントローラ31から要求電力を表す通知を受信する。また、ステップS13(比較手段)では、「DC出力の要求電力+AC出力の検出電力」と「DC/DCコンバータ11の最大電力」とを比較する。そして、「DC出力の要求電力+AC出力の検出電力」が「DC/DCコンバータ11の最大電力」を超えていた場合には、ステップS14(制限手段)においてAC出力を制限する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の電源装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す電源装置のコントローラの処理を示すフローチャートである。
【図3】他の実施形態の電源装置の構成を示す図である。
【図4】図3に示す電源装置のコントローラの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1、2 電源装置
11 DC/DCコンバータ
12 DC/ACコンバータ
13、14 コントローラ
31 車両側コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC出力が自動車の走行のための電気機器に供給され、AC出力がコンセントプラグに導かれる車載用電源装置であって、
DC出力を提供するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの出力を交流に変換してAC出力を提供するDC/ACコンバータと、
前記DC出力の電力およびAC出力の電力の和を表す総電力と、前記DC/DCコンバータの最大電力とを比較する比較手段と、
前記総電力が前記最大電力よりも大きいときに前記AC出力を制限する制限手段、
を有する車載用電源装置。
【請求項2】
DC出力の電力およびAC出力の電力を検出する検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車載用電源装置。
【請求項3】
DC出力が自動車の走行のための電気機器に供給され、AC出力がコンセントプラグに導かれる車載用電源装置であって、
DC出力を提供するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの出力を交流に変換してAC出力を提供するDC/ACコンバータと、
DC負荷の要求電力を表す信号を受け付ける受付手段と、
AC出力の電力を検出する検出手段と、
前記要求電力および検出されたAC出力の電力の和を表す総電力と、前記DC/DCコンバータの最大電力とを比較する比較手段と、
前記総電力が前記最大電力よりも大きいときに前記AC出力を制限する制限手段、
を有する車載用電源装置。
【請求項4】
前記制限手段は、当該電源装置を搭載する自動車が運転状態であるときに前記AC出力を制限する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−1316(P2008−1316A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175275(P2006−175275)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】