説明

車載用電源装置

【課題】マイコン電圧配線に接続されるコンデンサを小型化する。
【解決手段】車載用電源装置は、車載電源であるバッテリ200と、リレー201と、入力側コンデンサ203と、シリーズレギュレータ回路10と、出力側コンデンサ300とを備え、マイコン900に接続されている。シリーズレギュレータ回路10は、Nチャネル型MOSFET100と、FETの出力制御回路であるゲート電圧調整回路101と、ゲート電圧保持コンデンサ102を備え、ゲート電圧調整回路101によりコンデンサ−GND電圧(ゲート電圧)102Bを調整することにより、入力側コンデンサ電圧203Bを出力側コンデンサ電圧300Bに変換し、マイコンにマイコン電流900Aを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電源装置および、それを搭載する車載用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用電源装置では、車載電源(バッテリ等)による電力供給が遮断された後に、車載用機器を制御するためのFlash−ROM搭載マイコン(マイクロコンピュータ)が次の起動の際に必要とする情報をFlash−ROMに書き込む期間マイコンへ電力を供給するために、大容量の電解コンデンサが必要であった。ここで、車載電源による電力供給が遮断される事象は、消費電力が大きい負荷の起動などによる車載電源の電圧の急低下や、断線、あるいはイグニッションスイッチ等の動作に応じて制御されるリレーが何らかの原因でオフする場合などに発生する。
【0003】
リレー遮断や断線等によりマイコンの動作電圧が低下したことを検出すると、マイコンはFlash−ROM書込みに要する期間の後、スタンバイ状態に移行する。そして、スタンバイ状態に移行するまでの期間、マイコンに所定の動作電圧にて所定の電流を供給し続ける必要がある。このため、マイコンの入力端子に接続されるコンデンサの容量を大きくすることで対策がとられてきた。
【0004】
マイコンの通常動作電圧3.3[V]からマイコンの動作電圧下限3.0[V]の電圧変化(ΔV=0.3[V])で、マイコンの動作電流400[mA]を、スタンバイ状態に移行するまでの140[us]期間、供給するには、C=400[mA]÷0.3[V]×40[us]=180[uF]以上の大容量が必要であった。この実現には、大型の電解コンデンサや、二次電池が必要であった。前者は小型化には不向きであり、後者はコストの増加が問題となる。
【0005】
この問題を解決する方法として提案されているものとしては、例えば特開2008−289254号公報に記載されたものがある。この公報に記載の方法は、外部電圧をモニタし電圧低下を検出することにより、マイコン電圧をモニタした場合に比較して、マイコンのリセット応答性を向上させ、コンデンサの容量増加を伴わずに、マイコンの不定動作を回避するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−289254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら低い外部電圧までマイコン動作の保証が必要とされる場合には、上記のように外部電圧をモニタしてリセット信号を出力する構成であっても、リセット信号出力の判定値を低く設定せざるを得ずリセット応答性の向上は困難となる。このため、結局はマイコンの入力端子に接続されるコンデンサの容量を大きくする必要があり、実装面積の増加やコストの増加を避けられず、課題である。
【0008】
本発明は、こうした課題を解決するため、マイコンに動作電力を供給する車載用電源装置において、バッテリ等の車載電源から供給される電圧がリレー遮断や断線等により低下した場合に、マイコンの入力端子に接続されるコンデンサの容量が小さい構成においてもマイコンが正常にスタンバイ状態に移行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、車載電源と接続され、マイコンの電圧を供給するための車載用電源装置において、前記車載用電源装置は、一方の端が前記車載電源の正極に接続され、他方の端が前記車載電源の負極に接続される第一のコンデンサと、一方の端が前記マイコンの入力端子に接続され、他方の端が前記車載電源の負極に接続される第二のコンデンサと、入力端子が前記第一のコンデンサの一方の端に接続され、出力端子が前記マイコンの入力端子に接続されるトランジスタと、一方の端が前記トランジスタの出力制御用端子に接続された抵抗素子と、一方の端が前記抵抗素子の他方の端に接続され、他方の端が前記車載電源の負極に接続された第三のコンデンサと、出力が前記トランジスタの出力制御用端子と前記抵抗素子との間に接続され、前記トランジスタの駆動を制御する出力制御回路と、を備え、前記マイコンは前記第一のコンデンサの両端にかかる電圧が所定の電圧を下回ったときに、次回起動時に必要な情報を記憶する停止処理手段を有することを特徴とする車載用電源装置を提供する。
【0010】
また、前記トランジスタはNチャネル型MOSFETであり、入力端子がドレイン端子、出力端子がソース端子、出力制御用端子がゲート端子となるように接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリ等の車載電源から供給される電圧がリレー遮断や断線等により低下した場合に、マイコンの入力端子に接続されるコンデンサの容量が小さい構成においてもマイコンが正常にスタンバイ状態に移行できるため、車載用電子制御装置の小型化、コスト削減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施形態の車載用電源装置を示した図である。
【図2】第一の実施形態の電流・電圧波形を示した図である。
【図3】第二の実施形態の車載用電源装置を示した図である。
【図4】第二の実施形態の電流・電圧波形を示した図である。
【図5】第三の実施形態の車載用電源装置を示した図である。
【図6】第三の実施形態の電流・電圧波形を示した図である。
【図7】第四の実施形態の車載用電源装置を示した図である。
【図8】第四の実施形態の電流・電圧波形を示した図である。
【図9】第五の実施形態の車載用電源装置を示した図である。
【図10】第五の実施形態の電流・電圧波形を示した図である。
【図11】第六の実施形態の車載用電源装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車載用電源装置は、車載電源と、第一のコンデンサと、第二のコンデンサと、トランジスタと、マイコンと、前記トランジスタの駆動を制御する出力制御回路を備え、前記第一のコンデンサの一方の端を前記車載電源の正極に接続し、前記第一のコンデンサの他方の端を前記車載電源の負極に接続し、前記第二のコンデンサの一方の端を前記マイコンの入力端子に接続し、前記第二のコンデンサの他方の端を前記車載電源の負極に接続し、前記トランジスタの入力端子と前記車載電源の正極を接続し、前記トランジスタの出力端子を前記マイコンの入力端子に接続し、前記トランジスタの出力制御用端子と第三のコンデンサを接続し、前記第三のコンデンサの他方の端を前記車載電源の負極に接続し、前記出力制御回路の出力を前記トランジスタの前記出力制御用端子に接続することにより、前記車載電源遮断後も前記トランジスタの出力制御用端子の電圧および制御用の電流は長時間保持されることから、前記車載電源遮断後においても前記トランジスタは前記第一のコンデンサに蓄積された電圧をマイコン電圧に変換して供給し続けることが可能となり、マイコンの入力端子に接続された前記第二のコンデンサの容量を低減可能となる。
【0014】
また、前記車載電源の正極と前記第一のコンデンサの一方の端の間に直列に第一のダイオードを備え、前記第一のダイオードのアノードを前記車載電源の正極に接続し、前記第一のダイオードのカソードを前記第一のコンデンサの正極に接続することによって、車載電源がショートした場合や外部負荷による負電圧サージが発生した場合においても、マイコンを安定にスタンバイ状態に移行可能となる。
【0015】
また、前記トランジスタの出力制御用端子と前記第三のコンデンサの間に直列に第一の抵抗素子を備え、前記第一の抵抗素子の一方の端を前記トランジスタの出力制御用端子に接続し、前記抵抗素子の他方の端を前記第三のコンデンサの正極に接続することによって、前記出力制御回路の出力する電流・電圧が変化する際に前記第三のコンデンサに充放電される電流を抑制することが可能となり、前記トランジスタの出力制御用端子に流れる電流及びかかる電圧の応答性を向上させることが可能となる。
【0016】
また、前記第一の抵抗素子に並列に第四のコンデンサを備え、前記第四のコンデンサの正極を前記第一の抵抗素子の一方の端に接続し、前記第四のコンデンサの負極を前記第一の抵抗素子の他方の端に接続することにより、前記出力制御回路の出力信号にサージが印加されても前記第四のコンデンサが吸収し、前記トランジスタの不要な動作を防止することが可能となる。
【0017】
また、電流制限用信号出力回路を備え、前記電流制限用信号出力回路の出力を前記トランジスタの出力制御用端子に接続することにより、マイコン側の配線がショートするなどして過大な電流が流れて、故障することを防止可能となる。
【0018】
また、前記車載電源はバッテリとリレースイッチからなり、前記車載電源と前記第一のコンデンサの間にスイッチングレギュレータを備え、前記リレースイッチを前記バッテリの正極に接続し、前記スイッチングレギュレータの入力端を前記車載電源の正極と接続し、前記スイッチングレギュレータの出力端を前記第一のコンデンサの正極と接続し、前記スイッチングレギュレータは、前記バッテリの出力する第一の電圧を第二の電圧に変換することにより、前記トランジスタの発熱を低減可能となるとともに、効率向上が可能となる。
【0019】
また、前記トランジスタとしてNチャネル型MOSFETを用い、前記入力端子として前記Nチャネル型MOSFETのドレイン端子を、前記出力端子として前記Nチャネル型MOSFETのソース端子を、前記出力制御用端子として前記Nチャネル型MOSFETのゲート端子を備えることにより、前記Nチャネル型MOSFETの入力端子にサージが印加された場合においても、ゲート端子とソース端子間の電圧変動は発生しないため、前記Nチャネル型MOSFETはターンオン等不要な動作をすることなく、マイコンへのサージ電圧印加を防止可能となる。また、MOSFETは電圧駆動型の半導体素子であるため、駆動時に電流を流し続ける必要が無く、ゲートドライブ損失を抑制可能である。
【0020】
また、少なくとも一部の回路を半導体集積回路に内蔵することにより、小型化が可能となる。
【0021】
また、本発明では、以下に説明する車載用電源装置を具備することにより、前記第二のコンデンサの容量を低減可能であり、小型な車載用電子制御装置を提供できる。
【0022】
また、車載用電子制御装置の少なくとも一部の部品を樹脂により封止することにより、車載用電子制御装置の高密度実装が可能となる。
【0023】
以下、具体的な本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0024】
以下に、図面により本発明の車載用電源装置の第1の実施形態について図1、図2を用いて詳細に説明する。図1は、第一の実施形態の車載用電源装置の回路構成図であり、一つの負荷に対する電源回路分を示している。
【0025】
車載用電源装置は、車載電源であるバッテリ200と、リレー201と、入力側コンデンサ203と、シリーズレギュレータ回路10と、出力側コンデンサ300とを備え、マイコン900に接続されている。
【0026】
シリーズレギュレータ回路10は、Nチャネル型MOSFET100と、FETの出力制御回路であるゲート電圧調整回路101と、ゲート電圧保持コンデンサ102を備え、ゲート電圧調整回路101によりコンデンサ−GND電圧(ゲート電圧)102Bを調整することにより、入力側コンデンサ電圧203Bを出力側コンデンサ電圧300Bに変換し、マイコンにマイコン電流900Aを供給する。
【0027】
なお、本実施例におけるマイコン900は、動作電圧をVmv、その動作可能電圧範囲をΔVmv、動作電流をIm、次回の起動に備えた停止処理を開始してからスタンバイ状態に移行するまでの期間をTsbyとする。また、バッテリ200の電圧はVB、入力側コンデンサ203の容量はCin、出力側コンデンサ300の容量はCout、ゲート電圧保持コンデンサ102の容量はCggとする。
【0028】
以下、第一の実施形態における動作を、図2に示す入力側コンデンサ電圧203B、出力側コンデンサ電圧300B、コンデンサ−GND間電圧102B、マイコン電流900Aの波形を用いて説明する。
【0029】
図2の時刻t1においてリレー201がオンし、入力側コンデンサ電圧203Bが増加を開始する。入力側コンデンサ電圧203Bが所定の電圧値Vth_regを超えた時刻t2から、ゲート電圧調整回路は動作を開始し、コンデンサ−GND電圧102Bが増加を開始する。出力側コンデンサ電圧300Bと、コンデンサ−GND電圧102Bの電圧差が、Nチャネル型MOSFET100のゲートしきい電圧Vth_sw以上となる時刻t3から、出力側コンデンサ電圧300Bは増加を開始する。なお、入力側コンデンサ電圧203Bがバッテリ電圧VBに到達した後、入力側コンデンサ電圧203BはVBを保持する。
【0030】
時刻t4に出力側コンデンサ電圧300Bがマイコンの動作電圧Vmvに到達すると、マイコン電流900Aは通電を開始し、ゲート電圧調整回路はコンデンサ−GND電圧が一定になるよう動作する。このときの出力側コンデンサ電圧300Bは、およそマイコンの動作電圧Vmvとゲートしきい電圧Vth_swの和となる。これにより、マイコンは所望の電流を得ながら、Vmvは一定に保持される。
【0031】
時刻t5にリレー201がオフし、入力側コンデンサ電圧203Bが低下を開始する。このとき、入力側コンデンサ203に蓄えられた電荷により、入力側コンデンサ電圧203Bは緩やかに減少し、所定の期間マイコンの動作電圧Vmv以上の電圧を出力できる。
【0032】
時刻t6に入力側コンデンサ203Bが所定の電圧値Vth_reg以下になると、ゲート電圧調整回路は動作を停止し、マイコン900は次回の起動に備えた停止処理を開始する。コンデンサ−GND電圧102Bは、ゲート電圧保持コンデンサ102に電荷が蓄えられているため、ゲート電圧保持コンデンサ102の容量Cggと、正極−GND間の絶縁抵抗成分Rcggにより決まる時定数(τ=Cgg×Rcgg)で緩やかに減少することとなる。このとき、時定数τは、適当なコンデンサ容量を選定することで、Tsbyに対して充分に大きい値であるものとする。ゲート電圧保持コンデンサ102により、バッテリ電圧VBが遮断した時にも、Nチャネル型MOSFET100を継続動作させることができる。
【0033】
時刻t6′にマイコンは次回の起動に備えた停止処理、具体的には次の起動の際に必要とする情報をFlash−ROMに書き込む処理を完了し、スタンバイ状態となり、マイコン電流900Aは0[A]に向けて低下する。マイコンがスタンバイ状態になると、入力側コンデンサ203からの放電は微小なリーク電流が主となるため、入力側コンデンサ電圧203Bの電圧降下は緩やかになる。
【0034】
時刻t7に、入力側コンデンサ電圧203Bが出力側コンデンサ電圧300Bと等しくなり、その後出力側コンデンサ電圧300Bは入力側コンデンサ電圧203Bと同じ傾斜で電圧降下を開始する。
【0035】
以下に、Vmv=3.3[V]、ΔVmv=0.3[V]、Im=400[mA]、Tsby=140[us]、VB=14[V]、Cin=20[uF]、Cout=20[uF]、Cgg=1[uF]、Rcgg=1[MΩ]、Vth_reg=6[V]とした場合の計算例を示す。
【0036】
時定数τは、τ=Cgg(1[uF])×Rcgg(1[MΩ])=1[s]となる。Tsby=140[us]であるので、時定数τはTsbyに対して充分に長い時間とみなすことができ、Tsby経過後のコンデンサ−GND間電圧102Bの減少は無視できる。このためNチャネル型MOSFET100は、時刻t6以降のゲート電圧調整回路の動作停止後も出力側コンデンサ電圧300BをVmvとするように動作する。
【0037】
時刻t6からマイコンがスタンバイ状態に移行するまでの期間Tsbyに必要とする電荷量Qm_sby=Im(400[mA])×Tsby(140[us])=56[uC]に対し、入力側コンデンサ電圧203BがVth_reg(6[V])からマイコンの動作電圧下限Vmv_min=Vmv(3.3[V])−ΔVmv(0.3[V])=3.0[V]に移行する間に供給可能な電荷量Qcin_sply=Cin(20[uF])×(Vth_reg(6.0[V])−Vmv_min(3.0[V]))=60[uC]であり、Qcin_sply≧Qm_sbyとなるので、Cin=20[uF]で供給可能であることがわかる。
【0038】
本実施例ではゲート電圧調整回路101の電源配線の記載は省略しているが、入力側コンデンサ203の正極、出力側コンデンサ300の正極のどちらか一方、または、両方から供給するように接続してもよい。
【0039】
また、バッテリ電圧VB到達後の時刻t8に、入力側コンデンサ電圧にサージ電圧が印加され、ゲート電圧調整回路101の電流経路や、Nチャネル型MOSFET100のドレイン−ゲート容量等の経路を経由してゲート端子に電流が流入した場合においても、ゲート電圧保持コンデンサ102により、ゲート端子の電圧増加は抑制される。これにより、出力側コンデンサ電圧の変動は極めて小さく抑えられる。
【0040】
本実施例ではトランジスタとしてNチャネル型MOSFET100を例示したが、Pチャネル型MOSFETや、NPNトランジスタ、PNPトランジスタ或いはその他の半導体スイッチ素子であっても、トランジスタの出力制御回路であるゲート電圧調整回路101の出力する電圧値やゲート電圧保持コンデンサ102の容量設定を調整することにより、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、本実施例の車載電源装置において、半導体部品を含む一部の部品をカスタムIC等の集積回路に内蔵してもよいものとする。
【0042】
また、本実施例の車載用電源装置は、電源装置として単独の使用に限るものではなく、エンジンコントロールユニット(ECU)やオートマチックトランスミッション用コントロールユニット(ATCU)等の車載用電子制御装置に搭載されてもよいものとする。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。マイコンを次回の起動に備えた停止処理開始からスタンバイ状態に移行するまでの期間、マイコンに電力を供給するために従来必要であった出力側コンデンサ容量を、大幅に低減することが可能である。入力側コンデンサにサージ電圧が印加され、ゲート端子に電流が流入した場合においても、ゲート電圧の増加を抑制でき、マイコン電圧の変動を抑制可能である。
【実施例2】
【0044】
以下に、図面により本発明の車載用電源装置の第2の実施形態について図3、図4を用いて詳細に説明する。図3は実施例1における図1相当図であり、また、図4は実施例1における図2相当図であり、第一の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
【0045】
図3に示すシリーズレギュレータ回路10は、図1に示すシリーズレギュレータ回路10に対し、抵抗103が付与されている点が異なっている。抵抗103が付与されることにより、ゲート電圧保持コンデンサ102の容量充放電にかかる時間を短縮できる。また、逆流防止用ダイオード202が付与されている点が異なっている。また、図4に図3の抵抗103−GND電圧103Bの波形を追加している。
【0046】
図4の時刻t1においてリレー201がオンし、入力側コンデンサ電圧203Bが増加を開始する。入力側コンデンサ電圧203Bが所定の電圧値Vth_regを超えた時刻t2から、ゲート電圧調整回路は動作を開始し、コンデンサ−GND電圧102Bおよび抵抗−GND電圧103Bが増加を開始する。ゲート電圧保持コンデンサ102を充電する電流が抵抗103を流れる際、抵抗103の両端にはゲート端子側を正とする電圧が発生する。このため、抵抗−GND電圧103Bの方が、コンデンサ−GND電圧102Bに比し、短時間でVthおよびVmv+Vth_swに到達する。本実施例における図4の時刻t4′に、抵抗−GND電圧103Bは(Vmv+Vth_sw)に到達、出力側コンデンサ電圧300BはVmvに到達し、マイコン電流900Aは通電を開始することができる。即ち、マイコンの立上り時間を、実施例1における図2の時刻t4に比べ、本実施例における図4の時刻t4′に短縮可能となる。
【0047】
また、上述のようなマイコン立上げ時のみならず、ゲート電圧調整回路の指令に対する抵抗−GND電圧103Bの応答性およびそれに伴う出力側コンデンサ電圧300Bの応答性も高めることが可能となる。
【0048】
時刻t5以降に関しては、実施例1と同様の効果を得られる。
【0049】
また、バッテリ電圧VB到達後の時刻t8に、入力側コンデンサ電圧にサージ電圧が印加され、ゲート電圧調整回路101の電流経路や、Nチャネル型MOSFET100のドレイン−ゲート容量等の経路を経由してゲート端子に電流が流入した場合、抵抗103に発生する電圧により、抵抗−GND電圧103Bは、実施例1のコンデンサGND電圧に比べ増加が懸念される。しかし、出力側コンデンサ電圧がマイコン動作電圧の上限である3.6[V]以下であれば問題はなく、抵抗103の抵抗値の選択で調整可能である。さらに、ゲート電圧調整回路内にフィルタ等を設けることによってサージに対する応答性を緩和でき、サージ耐性を高めることができるため、この懸念に対しては容易に対策が可能である。
【0050】
また、逆流防止用ダイオード202が付与されていることにより、リレー201がオン状態においてバッテリ200がショートした場合や外部負荷による負電圧サージが発生した場合においても、入力側コンデンサ203の電流がバッテリ200側に放電されることは無いため、シリーズレギュレータ回路10は安定動作可能であり、バッテリ電圧VBが遮断した時にもマイコンに電力を供給することができる。
【実施例3】
【0051】
以下に、図面により本発明の車載用電源装置の第三の実施形態について図5、図6を用いて詳細に説明する。図5は実施例2における図3相当図であり、また、図6は実施例2における図4相当図であり、第二の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
【0052】
図5に示すシリーズレギュレータ回路10は、図3に示すシリーズレギュレータ回路10に対し、電流検出抵抗104と、電流制限用信号出力回路105が付与されている点が異なっている。図5の電流制限用信号出力回路105は、電流検出抵抗104の両端に発生する電圧により電流値をモニタする。所定の電流上限値Im_lim(本実施例では430[mA])を検出すると、電流を制限するための信号をゲート電圧調整回路101に発信し、ゲート電圧調整回路101は、Nチャネル型MOSFET100に流れる電流を制限するべくゲート−GND電圧を調整する。
【0053】
図6の時刻t9にIm_limを検出すると、マイコン電流900Aを低減するために、電流制限用信号出力回路の信号に基づいて生成されるゲート電圧調整回路の出力電圧により抵抗−GND電圧103Bは、(Vmv+Vth_sw)より低下する。その後、マイコン電流900Aが所定の動作電流Imに戻ると、ゲート電圧は(Vmv+Vth_sw)となるよう制御され、Im_lim通電以前の動作状態となる。
【0054】
第三の実施形態によれば、マイコン側に異常などが発生し過電流が流れることを防止することができ、より信頼性の高い車載用電源装置を提供することが可能となる。
【実施例4】
【0055】
以下に、図面により本発明の車載用電源装置の第四の実施形態について図7、図8を用いて詳細に説明する。図7は実施例3における図5相当図であり、また、図8は実施例3における図6相当図であり、第三の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
【0056】
図7に示すシリーズレギュレータ回路10は、図5に示すシリーズレギュレータ回路10に対し、コンデンサ106が付与されている点が異なっている。本実施例において、コンデンサ106は10[nF]程度の容量であるとする。
【0057】
また、バッテリ電圧VB到達後の時刻t8に、入力側コンデンサ電圧にサージ電圧が印加され、ゲート電圧調整回路101の電流経路や、Nチャネル型MOSFET100のドレイン−ゲート容量等の経路を経由してゲート端子に電流が流入した場合においても、この電流による電荷量を吸収できる容量を持つコンデンサ106が付与されているため、抵抗103両端に発生する電圧は実施例3の図5抵抗103両端に発生する電圧より小さい。このため、サージに対する耐性を高めることが可能となる。
【0058】
本実施例のコンデンサ106の付与は、実施例3における抵抗103の抵抗値の調整およびゲート電圧調整回路内にフィルタ等を設ける対策によってもサージ対策が不十分であった場合などに、特に有効である。
【0059】
第四の実施形態によれば、入力側コンデンサへのサージ電圧に対する動作信頼性の高い車載用電源装置を提供することが可能となる。
【実施例5】
【0060】
以下に、図面により本発明の車載用電源装置の第五の実施形態について図9、図10を用いて詳細に説明する。図9は実施例4における図7相当図であり、また、図10は実施例4における図8相当図であり、第四の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。
【0061】
図7の回路構成に対し、図9では降圧電源50と、降圧電源入力側コンデンサ600が付与されている点が異なっている。降圧電源50は、メインFET501、インダクタ502、同期FET503、スイッチング降圧電源制御回路500を備え、降圧電源入力電圧600B(本実施例では14[V])から、入力側コンデンサ電圧203B(本実施例では6[V])に降圧する。本実施例では、同期FET503を設け同期整流を行う回路を記載しているが、同期FET503の代わりにダイオードを設けたダイオード整流の場合でも、同様の効果を得られるものである。
【0062】
また、図10に示す降圧電源入力電圧600Bの波形が付与されている点が異なっている。
【0063】
図10の時刻t1において、リレー201がオンし、降圧電源入力電圧600Bおよび入力コンデンサ電圧203Bが増加を開始する。入力側コンデンサ電圧203Bが6.15[V]に到達した時点から降圧電源50は動作を開始し、降圧電源入力電圧600Bが6.15[V]以上になった場合においても、入力側コンデンサ電圧205Bを6[V]に維持する。
【0064】
これにより、マイコン動作期間におけるシリーズレギュレータ回路10のNチャネル型MOSFET100にかかる電圧降下は2.85[V](=6.15−3.3[V])となる。第四の実施の形態における図8のNチャネル型MOSFET100にかかる電圧降下10.7[V](=14−3.3[V])と比較して約73%電圧降下が小さい。このため、マイコン電流が等しいとするとNチャネル型MOSFET100の損失を約73%低減可能である。即ち、高効率化が可能となる。
【実施例6】
【0065】
以下に、図面により本発明の車載用電源装置の第六の実施形態について図11を用いて詳細に説明する。一般的に電解コンデンサは温度上昇時の破裂を防止するため防爆弁を備えている。樹脂封止する実装形態とする場合には防爆弁を塞いでしまい、安全性の確保が困難となるため、電解コンデンサを使用することはできなかった。
【0066】
実施例1〜5によると、シリーズレギュレータの出力側コンデンサとして従来使用されていた電解コンデンサをセラミックコンデンサに置き換え可能である。このため、樹脂により封止する形態の実装が可能となる。樹脂による封止が可能になると、半導体部品をベアチップ実装でき小型化が可能となる。
【0067】
図11は、実施例1〜4の実装例を示したものである。配線パターンが形成された金属ベース基板1000に半導体部品1002と、面実装インダクタ1003、セラミックコンデンサ1004、チップ抵抗1005とコネクタ1001を搭載し、樹脂1006で封止されている。コネクタ1001を介して、バッテリ、センサ類、他の電子制御機器などに接続する。
【0068】
図11では、実施例1〜5に記載の各々の回路部品のうち抵抗素子、コンデンサ部品、インダクタ部品、半導体部品各々の代表として1部品ずつを記載しており、実際には複数の部品が実装されていても良い。
【0069】
また、セラミックコンデンサ1004は、防爆弁が不要なコンデンサであれば、置き換えてもよい。金属ベース基板1000はセラミック基板や多層プリント配線板等の基板であってもよい。
【0070】
このような実装構造とすることで、小型の車載用電源装置及び車載用電子制御装置を提供することが可能となる。
【0071】
以上、本発明によれば、下記のような効果が期待できる。
【0072】
(1)バッテリ遮断後のマイコン電圧保持可能
(2)マイコン電圧配線に接続されたコンデンサ容量を低減可能
(3)バッテリーショート時でもマイコン電圧保持可能
(4)マイコン立上げ時間や応答性を向上可能
(5)過電流保護を高速に実行可能
(6)サージ耐性を向上可能
(7)電解コンデンサ削減により車載電子制御装置を小型化可能
(8)車載用電源及び車載用電子制御装置を樹脂封止実装により小型化可能
【符号の説明】
【0073】
10 シリーズレギュレータ回路
50 降圧電源
100 Nチャネル型MOSFET(トランジスタ)
101 ゲート電圧調整回路(トランジスタの出力制御回路)
102 ゲート電圧保持コンデンサ
102B コンデンサ−GND電圧
103 抵抗
103B 抵抗−GND電圧
104 電流検出抵抗
105 電流制限用信号出力回路
106 コンデンサ
200 バッテリ(車載電源)
201 リレー
202 逆流防止用ダイオード
203 入力側コンデンサ
203B 入力側コンデンサ電圧
300 出力側コンデンサ
300B 出力側コンデンサ電圧
500 スイッチング降圧電源制御回路
501 メインFET
502 インダクタ
503 同期FET
600 降圧電源入力側コンデンサ
600B 降圧電源入力電圧
900 マイコン
900A マイコン電流
1000 金属ベース基板
1001 コネクタ
1002 半導体部品
1003 面実装インダクタ
1004 セラミックコンデンサ
1005 チップ抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載電源と接続され、マイコンの電圧を供給するための車載用電源装置において、
前記車載用電源装置は、一方の端が前記車載電源の正極に接続され、他方の端が前記車載電源の負極に接続される第一のコンデンサと、
一方の端が前記マイコンの入力端子に接続され、他方の端が前記車載電源の負極に接続される第二のコンデンサと、
入力端子が前記第一のコンデンサの一方の端に接続され、出力端子が前記マイコンの入力端子に接続されるトランジスタと、
一方の端が前記トランジスタの出力制御用端子に接続された抵抗素子と、
一方の端が前記抵抗素子の他方の端に接続され、他方の端が前記車載電源の負極に接続された第三のコンデンサと、
出力が前記トランジスタの出力制御用端子と前記抵抗素子との間に接続され、前記トランジスタの駆動を制御する出力制御回路と、を備え、
前記マイコンは前記第一のコンデンサの両端にかかる電圧が所定の電圧を下回ったときに、次回起動時に必要な情報を記憶する停止処理手段を有することを特徴とする車載用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用電源装置であって、前記トランジスタはNチャネル型MOSFETであり、入力端子がドレイン端子、出力端子がソース端子、出力制御用端子がゲート端子となるように接続されることを特徴とする車載用電源装置。
【請求項3】
請求項1、2に記載の車載用電源装置において、前記車載電源の正極と前記第一のコンデンサの一方の端の間に直列にダイオードを備え、前記ダイオードのアノードを前記車載電源の正極に接続し、前記ダイオードのカソードを前記第一のコンデンサの正極に接続することを特徴とする車載用電源装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか一項に記載の車載用電源装置において、前記抵抗素子に並列に第四のコンデンサを備え、前記第四のコンデンサの正極を前記抵抗素子の一方の端に接続し、前記第四のコンデンサの負極を前記抵抗素子の他方の端に接続することを特徴とする車載用電源装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか一項に記載の車載用電源装置において、電流制限用信号出力回路を備え、前記電流制限用信号出力回路の出力を前記トランジスタの出力制御用端子に接続することを特徴とする車載用電源装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか一項に記載の車載用電源装置において、前記車載電源はバッテリとリレースイッチからなり、前記車載電源と前記第一のコンデンサの間にスイッチングレギュレータを備え、前記リレースイッチを前記バッテリの正極に接続し、前記スイッチングレギュレータの入力端を前記車載電源の正極と接続し、前記スイッチングレギュレータの出力端を前記第一のコンデンサの正極と接続し、前記スイッチングレギュレータは、前記バッテリの出力するバッテリ電圧を降下して中間電圧に変換することを特徴とする車載用電源装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか一項に記載の車載用電源装置において、少なくとも一部の回路を半導体集積回路に内蔵することを特徴とする車載用電源装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれか一項に記載の車載用電源装置と、前記マイコンとを具備することを特徴とする車載用電子制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車載用電子制御装置において、少なくとも一部の部品を樹脂により封止することを特徴とする車載用電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−50748(P2013−50748A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186722(P2011−186722)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】