説明

車載装置、取付装置及び車載システム

【課題】複数台の車両にそれぞれ設置された車載治具に同一の携帯型ナビゲーション装置を着脱して使用でき、しかも、各車載治具を識別することにより、複数車両で情報が混在されることを防止して車両別の情報処理を実行可能としたナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】携帯型ナビゲーション装置1と、これを車両に着脱自在に取り付けるための複数の車載治具2a〜2cを3台の車両に取りつけ、各車載治具2a〜2cには、識別情報としての1本〜3本の金属ピンを設け、携帯型ナビゲーション装置1は、取り付けられた車載治具の各金属ピンP1〜P3の有無によって車載治具2を識別し、これにより、車両別に特定データを取り扱うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載装置と、これを着脱自在に車両に載置するための取付装置とを備える車載システムに関し、詳しくは、複数台の車両にそれぞれ設置された取付装置に同一の車載装置を取り付けて使用する際に、各取付装置を識別することにより、複数車両で情報が混在されることを防止して車両別の情報処理を実行可能とした車載システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地図データ、道路データを用いて、所望の出発地から目的地までの経路を探索して候補経路をユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション装置としては、自動車に搭載されて運転者を目的地まで誘導案内するカーナビゲーション装置が従来より広く知られている。昨今では、自動車から取り外してユーザが携行可能とし、車両道路のみならず歩行通路や鉄道路線等の候補経路の提示・誘導案内をできるようにした携帯型ナビゲーション装置がすでに実用化されている。
【0003】
このような携帯型ナビゲーション装置を利用する技術としては、例えば、下記の特許文献1(特開2008−191142号公報)に「電子装置、電子システム及び音声出力制御方法」として開示されている。上記特許文献1には、オーディオ機能等を備えた車載装置と、この車載装置とコネクタで電気的に着脱可能に接続され、車載装置の前面部に嵌め込み固定されて車載装置と一体化される携帯型ナビゲーション装置とで構成されるナビゲーションシステムが開示されている。
【0004】
また、クレードルと呼ばれる合成樹脂等からなる車載冶具を車両のダッシュボードに取り付け、この車載冶具を介して車両に着脱自在に簡易取り付けされるように構成されたものが、例えば、下記の特許文献2(特開2003−166848号公報)に「ナビゲーション装置」として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−191142号公報(段落[0023]、図5)
【特許文献2】特開2003−166848号公報(段落[0029]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このように車両から取り外しても使用可能な携帯型ナビゲーション装置の可搬性に着目して、1台の携帯型ナビゲーション装置を複数の車両で共用する場合、上記特許文献1のように、携帯型ナビゲーション装置を車載装置に直接嵌め込み固定するように構成されたものでは異なる車載装置を有する他の車両との間での共用性に欠ける。さらに、特許文献1に示す車載装置はダッシュボードに固設されているので容易に取り外しができないため、各車両に対して車載装置を設置しなければならずコストが高くなるという問題点がある。
【0007】
また、上記特許文献2に示すように、安価な車載治具を用いれば、この車載冶具を各車両にあらかじめ設置することにより、1台の携帯型ナビゲーション装置を任意の車両に着脱自在に取り付けて使用することのできるナビゲーションシステムを構築することができる。
【0008】
しかしながら、一般的な携帯型ナビゲーション装置にあっては、例えば大型・中型・普通といった車両種等の設定情報、自宅位置や帰宅経路等の頻繁に利用する登録情報、走行経路履歴やPOI検索履歴等の履歴情報等が記憶されるように構成されたものが多く、このような構成の携帯型ナビゲーション装置を複数の車両で共用すると、各車両の特定データが携帯型ナビゲーション装置の中で混在することになり、ユーザは、車両を変えるたびに車両種等の設定をやり直す必要が生じる、あるいは、各車両の履歴情報が混在して使い勝手の悪いものとなってしまうという問題点がある。
【0009】
本発明は、上述のように発明者が提案した新規なナビゲーションシステムの問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、複数台の車両にそれぞれ設置された車載治具に同一の携帯型ナビゲーション装置を着脱して使用でき、しかも、各車載治具を識別することにより、複数車両で情報が混在されることを防止して車両別の情報処理を実行可能としたナビゲーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本願の車載システムの発明は、
車両に取付可能な車載装置と、前記車載装置を複数台の車両にそれぞれ着脱自在に取り付けるための少なくとも一つの取付装置とを備え、
前記少なくとも一つの取付装置には、前記車載装置が取り付けられる所定部位に他の取付装置と識別するための識別情報がそれぞれ付与されており、
前記車載装置には、
前記取付装置の識別情報を読み取る識別情報読み取り手段と、
車両別に利用されるものとされた特定データが新たに得られたときには当該特定データを前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に対応づけて格納するための特定データ記憶手段と、
前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に基づいて、前記特定データ記憶手段から対応する特定データを選択的に読み出して特定の情報処理を実行する情報処理手段と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の車載システムの一態様において、前記取付装置の識別情報が、取付装置の所定部位に設けられた部材の配置よって具現化されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車載システムの一態様において、前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザにより設定された車両区分の設定情報が含まれることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車載システムの一態様において、前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザが登録した特定地点又は特定経路の登録情報が含まれることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車載システムの一態様において、前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、前記車載装置を利用した結果として記憶される走行経路の履歴情報又はPOI検索の履歴情報が含まれることを特徴とする。
【0015】
また、本願の車載装置の発明は、
車両に取付可能な車載装置であって、
当該車載装置が着脱自在に取り付けられる複数台の取付装置にそれぞれに付与された識別情報を読み取る識別情報読み取り手段と、
車両別に利用されるものとされた特定データが新たに得られたときには当該特定データを前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に対応づけて格納するための特定データ記憶手段と、
前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に基づいて、前記特定データ記憶手段から対応する特定データを選択的に読み出して特定の情報処理を実行する情報処理手段と、が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車載装置の一態様において、前記取付装置の識別情報が、取付装置の所定部位に設けられた部材の配置よって具現化されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車載装置の一態様において、前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザにより設定された車両区分の設定情報が含まれることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の車載装置の一態様において、前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザが登録した特定地点又は特定経路の登録情報が含まれることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の車載装置の一態様において、前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、前記車載装置を利用した結果として記憶される走行経路の履歴情報又はPOI検索の履歴情報が含まれることを特徴とする。
【0020】
また、本願の取付装置の発明は、
車両に取付可能な車載装置が着脱自在に取り付けられる取付装置であって、
他の取付装置と識別するための識別情報が、前記車載装置が取り付けられると当該車載装置によって読み取られるように前記車載装置が取り付けられる所定部位に付与されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の取付装置の一態様において、前記識別情報は、前記取付装置の所定部位に設けられた部材の配置よって具現化されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の取付装置の一態様において、前記識別情報は、前記車載装置において車両別に利用されるものとされた特定データが新たに得られた際に当該特定データを前記車載装置に設けられた特定データ記憶手段に格納する場合や、前記車載装置において特定の情報処理を実行する際に対応する特定データを前記特定データ記憶手段から選択的に読み出す場合に、前記車載装置によって読み取られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の車載システムによれば、車両別に利用されるものとされた特定データが新たに得られたときには、この特定データは、車載装置に取り付けられた取付装置の識別情報と対応付けられて特定データ記憶手段に格納される。この『特定データ』としては、例えば車両種等の設定情報、自宅位置等の登録情報、走行経路履歴等の履歴情報が挙げられる。『新たに得られたとき』とあるが、これら特定データは、具体的には、車載装置が車両に取り付けられて識別情報読み取り手段により識別情報が既に読み取られている状態で取得される。
【0024】
例えば、車載装置が感知し得ない車両種等であればユーザ入力により取得されるものとでき、候補経路データ等のようにナビゲーション機能を備えた車載装置で自動生成されるデータであればユーザ操作を介さずに自動的に取得されるようにすることもできる。また、車載装置が車両から取り外された状態であっても、ユーザ操作により識別情報が指定することにより、特定データを識別情報と対応づけてユーザ入力により取得されるものとすることもできる。
【0025】
そして、車載装置が別の車両の取付装置に取り付けられたときには、識別情報読み取り手段によりその取付装置の識別情報が読み取られ、情報処理手段は、読み取られた識別情報を手がかりにして、特定データ記憶手段の中からその取付装置に対応する特定データを選択的に読み出し、この読み出された特定データを用いた特定の情報処理を実行する。なお、『特定の情報処理』とは、特定データが利用されるすべての情報処理をいう。
【0026】
そして、本発明の車載システムによれば、取付装置の識別情報に基づいていずれの車両に取り付けられているかを車載装置が自動的に判別してその車両に応じた情報処理を行うことができる。したがって、1台の車載装置を複数の車両で共用しても、ユーザは、いずれの車両に車載装置が取り付けられているかを意識する必要もなくなり、実質的には各車両に車載装置が取り付けられているのと同様の使い勝手を得ることができる。
【0027】
なお、本発明の車載システムは、一人のユーザが複数台の車両に対して1台の車載装置を共用するといった使用態様のみならず、複数のユーザが各人所有の車両に対して1台の車載装置を共用するといった使用態様にも適用でき、この場合にも同様の作用・効果を得ることができるものである。
【0028】
また、本発明の車載システムの一態様によれば、識別情報を付与するために取付装置側に高価乃至大型の装置を設けなくても本発明の車載システムを実現することができる。なお、『部材』は、取付装置に別途取り付けられる磁石や金属板等であってもよいが、取付装置と一体形成してもよく、例えば取付装置と同一の材料によりかかる部材を取付装置と一体形成すればより製造コストを抑えることも可能となる。
【0029】
また、本発明の車載システムの一態様によれば、ユーザが、例えば大型、普通、小型等の車両区分の設定情報を車両に対応づけて一度設定すれば、以降、ナビゲーション機能を備えた車載装置がその車両に取り付けられたときには、その車両の車両区分に応じて、例えば有料道路の利用料金の算出処理や、大型自動車通行禁止道路等を考慮した経路探索処理を自動的に実行させることができる。したがって、ユーザは、車載装置を別車両に載せ代えるたびにその車両がいずれの車両区分であるかを意識する必要もなくなる。
【0030】
また、本発明の車載システムの一態様によれば、ユーザがナビゲーション機能を備えた車載装置を特定地点や特定経路を登録したときの車両に再度取り付けられたときには、以前に登録した情報をそのまま利用することができる。例えば、登録済みの特定地点を選択するだけで経路探索処理における出発地又は目的地として指定したり、登録済みの特定経路を選択するだけでユーザの好みの経路による誘導案内処理を直ちに開始したりすることができるようになる。
【0031】
また、本発明の車載システムの一態様によれば、ユーザがナビゲーション機能を備えた車載装置を利用した車両に再度取り付けられたときには、その車両の過去の使用に基づく履歴情報を有効活用することができる。例えば、その車両で過去に探索された候補経路を参照しながら更に良い経路を探索したり、POI検索の履歴を表示画面に表示することでユーザがPOI検索をスムーズに行えるようにしたりすることができる。
【0032】
また、本発明の車載装置は、上記車載システムの発明の効果を奏することを可能とする好適な車載装置を提供できる。また、本発明の取付装置は、上記車載システムの発明と同様の効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかるナビゲーションシステムの全体構成の概略を示す図である。
【図2】本発明にかかる携帯型ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】特定データ記憶手段に格納される特定データの内容およびそのデータ構成を示す図である。
【図4】本発明を適用した車載ナビゲーションシステムの例を示す図である。
【図5】本発明を適用した車載ナビゲーションシステムのその他の例を示す図である。
【図6】本発明を適用した車載ナビゲーションシステムのその他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体例を実施例および図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するための車載装置及び車載システムとして携帯型ナビゲーション装置及びこれを利用したナビゲーションシステムを例示するものであって、本発明をこの携帯型ナビゲーション装置及びこれを利用したナビゲーションシステムに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の車載装置及び車載システムにも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0035】
図1に示されるように、本実施形態のナビゲーションシステムは、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行う1台の携帯型ナビゲーション装置1と、これを複数台の車両にそれぞれ着脱自在に取り付けるための複数の車載治具2(図1では、3台の車載治具2a、2b、2c)とからなる。携帯型ナビゲーション装置1は本発明の車載装置に相当し、車載治具2は本発明の取付装置に相当する。
【0036】
各車載治具2は、車両のダッシュボード上に粘着テープやネジ止め等によって取付固定される基台21と、携帯型ナビゲーション装置1を着脱自在に載置させて略固定状態にするための着脱構造(不図示)を有する載置台22とからなる。載置台22の載置面22aの端部(携帯型ナビゲーション装置が取り付けられる所定部位)には、1本〜3本の同一長の金属ピンP(P1〜P3)が突出するように設けられており、これら金属ピンP1〜P3の配置により、本発明の識別情報が具現化されている。
【0037】
すなわち、この実施形態では、P1〜P3のそれぞれの金属ピンの有無により、7通り(2×2×2(2の三乗)−1(金属ピンPが一本もない場合を除く))の識別情報を表現することができ、車載治具2を7台の車両にそれぞれ取り付けて1台の携帯型ナビゲーション装置1を共用することが可能とされている。尚、車載治具2はすべて同一構造、同一形状のものとしてもよいが、特に基台21に関しては別個の形状としてバリエーションを持たせることも当然に可能である。
【0038】
携帯型ナビゲーション装置1は、自動車から取り外してユーザが携行可能であり、携行時には歩行通路や鉄道路線等の候補経路の提示・誘導案内を行うことができる。車載治具2への取り付け時には、載置台22の載置面にその下端面が密着するように載置されるが、この際、車載治具2の1本〜3本の金属ピンが、勘合部19bの対応する挿入口H1〜H3に各々挿入される。
【0039】
携帯型ナビゲーション装置1の勘合部19bは、判別回路19aと共に本発明の識別情報読み取り手段19を構成するものであり、各挿入口H1〜H3の奥には金属板T1〜T3が各々配置されており、携帯型ナビゲーション装置1が車載治具2に取り付けられたときには、車載治具2の1本〜3本の金属ピンが対応する挿入口H1〜H3の金属板T1〜T3に接触されるようになっている。
【0040】
携帯型ナビゲーション装置1の電源がONされたときには、判別回路19aは、各金属板T1〜T3の導通有無に基づいて、いずれの挿入口H1〜H3に金属ピンが挿入されたかを判別して金属ピンP1〜P3の配置を検知し、これにより車載治具2の識別情報を読み取る。尚、読み取られた識別情報は、制御手段10のRAM等の一時記憶メモリに電源がOFFされるまで格納される。
【0041】
次に、図2を参照して携帯型ナビゲーション装置1の構成を説明する。携帯型ナビゲーション装置1は、図2に示すように、制御手段10、現在位置検出手段11、入力手段12、表示手段13、地図データ記憶手段14、経路探索用ネットワークデータ記憶手段15、POIデータ記憶手段16、通信手段17、音声報知手段18、識別情報読み取り手段19、特定データ記憶手段20などを備えて構成されている。
【0042】
制御手段10は、本発明の情報処理手段として機能するものであり、CPU(不図示)およびRAM/ROM(不図示)からなるプロセッサで構成され、RAM、ROMに記録された制御プログラムにしたがって携帯型ナビゲーション装置1の各部の動作を制御するものである。主要動作として、地図データや路線データを参照して、道路や交通機関の候補経路探索処理を行い、それにより提示された候補経路に基づく出発地から目的地までの誘導案内処理を実行する。また、制御手段10は、後述するように特定データ記憶手段20に記憶されている特定データに基づく各種処理を実行する。
【0043】
現在位置検出手段11は、地球上空を周回している複数のGPS衛星から時刻情報を含む電波を受信するGPS受信機等で構成される。さらに、現在位置検出手段11としては、距離センサーや、方位センサー、蛇角センサーなどからなる自立航法装置を用いることもできる。
【0044】
入力手段12は、携帯型ナビゲーション装置1における操作入力や出発地、目的地の入力を行う各種キー、スイッチなどから構成される。特定データとしての車両種等の設定情報の入力や、自宅位置等の登録情報の入力、或いは走行経路等の履歴表示がされた際のユーザによる選択は、この入力手段12を介して行われる。
【0045】
表示手段13は、地図画像や候補経路画像、誘導案内画像を表示してユーザが視認できるようにするためのマンマシンインターフェースとしての役割を担うものであり、例えば液晶ディスプレイなどで構成される。なお、この表示手段13は、タッチセンサーを具備させて入力手段12の一部を担うように構成することもできる。この場合は画面上に表示される文字・図形・記号からなるアイコンをユーザが触れることで選択入力が行われるようにする。
【0046】
地図データ記憶手段14には、表示手段13に地図画像を表示するための地図データがベクタ形式で作成されて記憶されている。この地図データは所定の緯度範囲、経度範囲で区分されたメッシュ状の単位地図から構成されており、一般的には、携帯型ナビゲーション装置1の現在位置を中心に、上下、左右、斜め方向のメッシュに相当する単位地図9枚分の地図データが携帯型ナビゲーション装置1に配信されて表示手段13に表示される。
【0047】
経路探索用ネットワークデータ記憶手段15は、車や歩行者用の経路探索のための道路ネットワークデータを記憶した道路ネットワークデータ記憶手段15aと交通機関の経路探索のための交通ネットワークデータを記憶した交通ネットワークデータ記憶手段15bとから構成されている。
【0048】
道路ネットワークデータ記憶手段15aには、道路の交差点や分岐点などの結節点をノードとする道路ノードデータと、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路リンクデータとを含む道路ネットワークデータが記憶されている。より詳細には、道路ネットワークデータの道路(経路)をその結節点、屈曲点の位置を道路ノードとし、各道路ノードを結ぶ経路をリンクとし、全てのリンクのコスト情報(距離や所要時間)をデータベースとして備えている。
【0049】
道路ノードデータには、道路ノード番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称などが含まれるほか、交差点等の案内地点に対応する案内ポイントおよび右折や左折、直進などを案内する誘導案内用のデータも記憶されている。また、道路リンクデータには起点および終点となる道路ノード番号、リンク長(リンクコスト)といった情報の他、道路種別(高速道路や有料道路の別、車両種毎の通行可否、および国道や都道府県道などの別)、有料道路であれば車両種毎の通行料金、車線数、車道幅などの情報が含まれる。道路リンクデータには、さらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切などのデータが付与される。
【0050】
そして、制御手段10は、ユーザが指定する出発地、目的地等の経路探索条件に従って、この道路ネットワークデータ記憶手段15aの道路ネットワークデータを参照して、出発地のノードから目的地のノードに至るリンクを順次探索し、リンクのコスト情報が最小となるノード、リンクを辿る最短経路を候補経路として特定する候補経路探索処理を行い、特定された候補経路を経由した目的地までの誘導案内処理を実行する。尚、このような経路探索の手法としてはラベル確定法あるいはダイクストラ法と言われる公知の手法が用いられる。
【0051】
交通ネットワークデータ記憶手段15bには、定時交通機関(電車路線、バス路線)の運行時刻をデータベース化した運行時刻データと、これに基づいて路線データをデータベース化した路線ネットワークデータとを含む交通ネットワークデータが格納されている。そして、制御手段10は、ユーザが指定する出発希望日時、出発地、目的地、到着希望日時等の経路探索条件に従って、これらのデータベースを参照して、乗り継ぎ(乗換え)を含めて出発地と目的地を結ぶ利用可能な交通路線の経路を順次辿り、経路探索条件に合致する候補経路(出発地駅、目的地駅、利用する交通路線、特急・準急・普通等の列車種別)を特定する経路探索処理を行い、特定された候補経路を経由した目的地までの誘導案内処理を実行する。なお、経路探索条件としては、更に、所要時間、乗り継ぎ回数、運賃などを指定できるようにされているのが一般的である。
【0052】
POIデータ記憶手段16には、施設名称・施設種別・施設位置・施設アイコン等を含む施設データが格納されており、制御手段10は、この施設データを参照してユーザの指定する施設を検索して目的地選択肢として施設名称を表示し、或いはその所在地として施設アイコンを地図上に表示する。この際、検索条件や検索結果となった施設名称や施設種別は、特定データ(履歴情報)として特定データ記憶手段に格納される。
【0053】
通信手段17は、通信ネットワーク上の所定サーバと接続して、最新の地図データ、路線データ、各種料金データ(路線利用料金、有料道路の利用料金)を取得することができ、地図データ記憶手段14、経路探索用ネットワークデータ記憶手段15、POIデータ記憶手段16のデータ内容を更新するのに使用される。
【0054】
音声報知手段18は、誘導案内時の案内報知等、携帯型ナビゲーション装置1における各種音声報知を行うものでありスピーカ等で構成される。
【0055】
識別情報読み取り手段19は、図1で説明したように、判別回路19aと勘合部19bとからなり、車載治具2の識別情報を読み取る。
【0056】
特定データ記憶手段20は、本発明の特定データ記憶手段を担うものであり、各車両、すなわち各車載治具2の識別情報と対応づけて特定データが格納される。図3は、特定データ記憶手段20に格納される特定データの内容およびそのデータ構成を示す図である。
【0057】
図3を参照して、特定データ記憶手段に格納される特定データの内容およびそのデータ構成を説明する。本実施形態では、特定データとしては、大型・中型・普通といった車両種の設定情報、自宅位置・登録経路等の登録情報、携帯型ナビゲーション装置を利用した結果として記憶される走行経路履歴・POI検索履歴等の履歴情報が既定されている。
【0058】
設定情報としての車両種は、例えば制御手段10による有料道路の利用料金の算出処理や、大型自動車通行禁止道路等を考慮した経路探索処理を実行させる際に利用される。自宅位置や登録経路等の登録情報は、例えば登録済みの特定地点を選択するだけで制御手段10による経路探索処理における出発地又は目的地として指定したり、登録済みの特定経路を選択するだけで制御手段10によるユーザの好みの経路による誘導案内処理を直ちに開始したりする際に利用される。走行経路履歴やPOI検索履歴等の履歴情報は、その車両で過去に探索された候補経路を参照しながら更に良い探索条件を入力したり、POI検索の履歴を表示画面に表示したりすることでユーザが経路探索やPOI検索をスムーズに行えるように制御手段10が処理する際に利用される。
【0059】
そして、図3に示されるように、これら特定データは、設定情報、登録情報、履歴情報毎に、車載治具の識別情報2a〜2cと対応づけてそれぞれの格納エリアに記憶される。図3の例では、車載治具(識別情報)2aに対応づけて設定情報D1、登録情報D2、履歴情報D3が記憶されており、車載治具(識別情報)2bに対応づけて設定情報D4、登録情報D5、履歴情報D6が記憶されており、車載治具(識別情報)2cに対応づけて設定情報D7、登録情報D8、履歴情報D9が記憶されている。
【0060】
以上のような構成により、携帯型ナビゲーション装置1においては、携帯型ナビゲーション装置1がいずれからの車載治具2へ取り付けられると、あるいは既に車載治具2に取り付けられた状態で電源がONされると、識別情報読み取り手段19により車載治具2の識別情報が読み取られて制御手段10の一時記憶メモリに記憶される。そして、制御手段10は、上述の特定処理を実行するに際しては、かかる識別情報に基づいて、対応する特定データを特定データ記憶手段20から選択的に読み出して使用する。また、ユーザ操作や経路探索処理等を通じて特定データが新たに得られたときには、制御手段10は、特定データを識別情報に対応づけて特定データ記憶手段20に格納する。
【0061】
次に、図4を参照して、本発明を適用した車載ナビゲーションシステムの例を説明する。図4は、図1に示したように3台の車載治具2a〜2cを3台の車両α、β、γにそれぞれ個別に取り付けて、1台の携帯型ナビゲーション装置1を共用するように構築された本発明のナビゲーションシステムを例示するものである。
【0062】
図4に示すように、車両αに取り付けられた車載治具2aには、金属ピンP1,P2,P3の全てが突設されており、携帯型ナビゲーション装置1の識別情報読み取り手段19(判別回路19a)によって、車載治具2の金属ピンP1,P2,P3のすべてが検知されたときには、携帯型ナビゲーション装置1は、車載治具2aが取り付けられた車両αであることを判別することができる。そして、この車両αには、図3でも示したように、設定情報D1、登録情報D2、履歴情報D3が対応づけて記憶されているため、携帯型ナビゲーション装置1が車両αで利用される場合には、車両αに対応づけられたこれら特定データD1〜D3のみに基づく特定処理を行うことができる。
【0063】
同様に、車両βに取り付けられた車載治具2bには、金属ピンP2,P3が突設されているが金属ピンP1は設けられていない。このため、携帯型ナビゲーション装置1の識別情報読み取り手段19(判別回路19a)によって、車載治具2の金属ピンP2とP3のみが検知されたときには、携帯型ナビゲーション装置1は、車載治具2bが取り付けられた車両βであることを判別することができる。そして、この車両βには、設定情報D4、登録情報D5、履歴情報D6が対応づけて記憶されているため、携帯型ナビゲーション装置1が車両βで利用される場合には、車両βに対応づけられたこれら特定データD4〜D6のみに基づく特定処理を行うことができる。
【0064】
更に同様に、車両γに取り付けられた車載治具2cには、金属ピンP3のみが突設されており、金属ピンP1、P2は設けられていない。このため、携帯型ナビゲーション装置1の識別情報読み取り手段19(判別回路19a)によって、車載治具2の金属ピンP3のみが検知されたときには、携帯型ナビゲーション装置1は、車載治具2cが取り付けられた車両γであることを判別することができる。尚、いずれの金属ピンも検知されないときには、車両から持ち出して使用可能な携帯モードとして動作することとなる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のナビゲーション装置によれば、1台の携帯型ナビゲーション装置1を3台の車両α,β,γで共用しても、ユーザは、いずれの車両に携帯型ナビゲーション装置が取り付けられているかを意識する必要もなくなり、実質的には各車両α,β,γに携帯型ナビゲーション装置1が取り付けられているのと同様の使い勝手を得ることができる。
【0066】
尚、図4に示した本発明の適用例は、各車種の車両α,β,γのオーナーであるユーザA、ユーザB、ユーザCが1台の携帯型ナビゲーション装置1を各人の車両で共用する場合に好適なものであり、これ以外の態様にも広く応用可能なものである。
【0067】
図5および図6は、本発明を適用した車載ナビゲーションシステムのその他の例を示す図である。例えば、図5に示すように、一人のユーザが複数台の車両を使用する場合にも適用可能である。上記実施形態では、特定データを車両の車種とユーザ毎に設定情報、登録情報、履歴情報として個別に既定したが、これら特定データはユーザ毎に共有化して指定するように構成することもできる。すなわち、図5のように一人のユーザが3台の車両α,β',γに1台の携帯型ナビゲーション装置を共用するような場合には、登録情報、履歴情報を特定データとして個別に指定しないことにより、これら登録情報D2と履歴情報D3については各車両において共有するようにすることができる。
【0068】
更に、車両指定を受け付けるように構成することで、特定データをユーザ情報と車種情報を考慮した車載治具の識別情報に基づいて格納して特定処理に利用するように構成することができる。例えば、図6に示すように、同一車種車両β,β'の各オーナーであるユーザA、ユーザBが1台の携帯型ナビゲーション装置を共用するような場合には、設定情報D4については各車両において共有するようにすることができる。なお、同じ中型車種であってもタイプが異なる車両βとδの各オーナーであるユーザB、ユーザDの設定情報はそれぞれD4、D10と異なるものとして設定する。
【0069】
このようにすれば、1台の携帯型ナビゲーション装置を用いて複数のユーザが複数の車両を任意に使用するといった利用態様がとられる場合にも本発明を適用することができる。この場合には、同種の車両であってもユーザ毎に異なる情報処理出力を得ることが可能となるため、実質的には、各車両に各ユーザの専有の携帯型ナビゲーション装置が取り付けられているのと同様の使い勝手が実現される。
【0070】
また、上記実施例では、車載治具の識別情報として金属ピンP1〜P3の配置を用いる構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車載治具に形成された切り欠き構造、車載治具に設けられた磁気タグや電気的スイッチ、またはこれらの組み合わせなどによって各車載治具を識別できる構成であれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 携帯型ナビゲーション装置
2a,2b,2c 車載治具
10 制御手段
11 現在位置検出手段
12 入力手段
13 表示手段
14 地図データ記憶手段
15 経路探索用ネットワークデータ記憶手段
16 データ記憶手段
17 通信手段
18 音声報知手段
19 識別情報読み取り手段
19a 判別回路
19b 勘合部
20 特定データ記憶手段
21 基台
22 載置台
22a 載置面
H1,H2,H3 挿入口
P1,P2,P3 金属ピン
T1,T2,T3 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取付可能な車載装置と、前記車載装置を複数台の車両にそれぞれ着脱自在に取り付けるための少なくとも一つの取付装置とを備え、
前記少なくとも一つの取付装置には、前記車載装置が取り付けられる所定部位に他の取付装置と識別するための識別情報がそれぞれ付与されており、
前記車載装置には、
前記取付装置の識別情報を読み取る識別情報読み取り手段と、
車両別に利用されるものとされた特定データが新たに得られたときには当該特定データを前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に対応づけて格納するための特定データ記憶手段と、
前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に基づいて、前記特定データ記憶手段から対応する特定データを選択的に読み出して特定の情報処理を実行する情報処理手段と、が設けられていることを特徴とする車載システム。
【請求項2】
前記取付装置の識別情報が、取付装置の所定部位に設けられた部材の配置よって具現化されていることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザにより設定された車両区分の設定情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項4】
前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザが登録した特定地点又は特定経路の登録情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項5】
前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、前記車載装置を利用した結果として記憶される走行経路の履歴情報又はPOI検索の履歴情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項6】
車両に取付可能な車載装置であって、
当該車載装置が着脱自在に取り付けられる複数台の取付装置にそれぞれに付与された識別情報を読み取る識別情報読み取り手段と、
車両別に利用されるものとされた特定データが新たに得られたときには当該特定データを前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に対応づけて格納するための特定データ記憶手段と、
前記識別情報読み取り手段により読み取られた識別情報に基づいて、前記特定データ記憶手段から対応する特定データを選択的に読み出して特定の情報処理を実行する情報処理手段と、が設けられていることを特徴とする車載装置。
【請求項7】
前記取付装置の識別情報が、取付装置の所定部位に設けられた部材の配置よって具現化されていることを特徴とする請求項6に記載の車載装置。
【請求項8】
前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザにより設定された車両区分の設定情報が含まれることを特徴とする請求項6に記載の車載装置。
【請求項9】
前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、ユーザが登録した特定地点又は特定経路の登録情報が含まれることを特徴とする請求項6に記載の車載装置。
【請求項10】
前記車載装置は、所望の出発地から目的地までの候補経路を探索してユーザに提示するとともに目的地までの誘導案内を行うナビゲーション機能を備え、前記特定データには、前記車載装置を利用した結果として記憶される走行経路の履歴情報又はPOI検索の履歴情報が含まれることを特徴とする請求項6に記載の車載装置。
【請求項11】
車両に取付可能な車載装置が着脱自在に取り付けられる取付装置であって、
他の取付装置と識別するための識別情報が、前記車載装置が取り付けられると当該車載装置によって読み取られるように前記車載装置が取り付けられる所定部位に付与されていることを特徴とする取付装置。
【請求項12】
前記識別情報は、前記取付装置の所定部位に設けられた部材の配置よって具現化されていることを特徴とする請求項11に記載の取付装置。
【請求項13】
前記識別情報は、前記車載装置において車両別に利用されるものとされた特定データが新たに得られた際に当該特定データを前記車載装置に設けられた特定データ記憶手段に格納する場合や、前記車載装置において特定の情報処理を実行する際に対応する特定データを前記特定データ記憶手段から選択的に読み出す場合に、前記車載装置によって読み取られることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−13168(P2011−13168A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159472(P2009−159472)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】