説明

車載装置、車載用ナビゲーション装置及びプログラム

【課題】ハードディスクドライブ(HDD)の作動が保証されている高度を超える高高地で車載装置を起動させる場合において、不用意にHDDを作動させることによるHDDの破損を防止する。
【解決手段】車両側から供給される待機電源が一旦途切れた後の最初の起動時において、HDDの作動を開始する事前に、現在位置の高度に関する高度情報を取得し(S210)、この取得した高度情報が所定の高高度以上である旨を示す場合(S220:YES)、HDDの作動の許否を問い合わせる旨のメッセージをユーザに対して報知する(S230)。そして、このメッセージに対するユーザからの応答としてHDDの作動を許可する旨の操作指示を受け付けた場合(S240:YES)、HDDの作動を許可し(S250)、HDDからのデータの読み込みを開始する(S260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブを有する車載用ナビゲーション装置等の車載装置に関し、特に、標高の高い地域でのハードディスクドライブへのアクセス制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データに基づいて現在位置周辺の地図をディスプレイに表示したり、目的地までの最適な経路を計算して走行案内を行う車載用ナビゲーション装置等の車載装置において、地図データ等を記憶するための記憶媒体としてハードディスクドライブを用いたものが広く普及している。また、ハードディスクドライブの大量な記憶容量を利用して、地図データだけでなく、車載用ナビゲーション装置が作動するためのアプリケーションソフトウェアや、車載用ナビゲーション装置に一体化されたオーディオ機能で利用するための音楽データや映像データ等をハードディスクドライブに記憶させるものがある。
【0003】
ハードディスクドライブは、磁性体を塗布した記憶媒体であるディスクに磁気ヘッドを用いて情報を記録又は読み出す記憶装置である。ハードディスクドライブの作動時においては、高速で回転するディスクと共に回転する空気の圧力によってディスク上方に位置する磁気ヘッドがディスクから極わずかだけ浮き上がる構造となっている。よって、周辺の気圧が著しく低下している環境下でハードディスクドライブが作動すると、磁気ヘッドを浮上させる空気圧の低下によりディスクと磁気ヘッドとの間隔を適正な状態に維持できなくなる。その結果、ディスクと磁気ヘッドが衝突することでディスクを損傷してしまうおそれがある。そして、気圧は高度が上昇するにつれて低下するため、ハードディスクドライブには高度による使用限界がある。一般的には、ハードディスクドライブの高度に対する動作保証は、高度3000m(約0.7気圧)〜5000m(約0.5気圧)程度までとなっている。
【0004】
したがって、ハードディスクドライブを搭載した車載装置においては、ハードディスクドライブの作動が保証されている高度を超えるような高高地(例えば、3000m級、あるいは4000〜5000m級の道路)での使用が想定される場合、ハードディスクドライブの破損を防止するための対策が必要となる。
【0005】
そこで、車両が所定の高度(例えば3000m)以上に到達したときに、ハードディスクドライブに記憶されている地図データの一部を外部メモリに記憶した後、ハードディスクドライブを停止し、3000m以上の高高地を走行中には外部メモリに記憶されている地図データに基づいて経路案内を行う技術が案出されている(例えば、特許文献1参照)。このような技術により、高高地においてハードディスクドライブを停止させることでハードディスクドライブの破損を防止しながらも、経路案内を継続可能にすることを実現している。
【特許文献1】特開2004−317385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、車両の走行中に3000m以上の高高地に到達するような状況においてハードディスクドライブの保護を実現している。しかしながら、車載用ナビゲーション装置の高高地での起動時におけるハードディスクドライブの保護に関しては想定されていないため、以下のような問題については解決できない。
【0007】
従来のハードディスクドライブ搭載型の車載装置は、ハードディスクドライブから読み出したプログラム等のデータをRAM等のワークメモリに展開し、このワークメモリに展開したデータに基づいて作動する。また、前回の作動終了直前における作業データがこのワークメモリに記憶されていれば、このワークメモリに記憶されたデータに基づき、ハードディスクドライブからデータの読み込みを行わずに起動できる。このような用途に用いられるワークメモリには、アクセス速度等の要件により記憶の保持に電源が必要な揮発性メモリが用いられる。なお、車載装置の休止中においては、メモリ内容の保持に必要な電源(以下、待機電源とも称する)は、車載バッテリから供給される。
【0008】
しかしながら、車両の停止中にバッテリが上がったりメンテナンスのために電源回路が遮断されたりすることでワークメモリへの待機電源の供給が途絶えると、メモリ内容が消失してしまう。この場合、車載装置の次の起動時においては、必ずハードディスクドライブからワークメモリへプログラム等を読み込む必要がある。このとき、車両が駐車している位置が高高地である場合、高高地でハードディスクドライブの作動を禁止するためのプログラムもワークメモリから消失してしまっており、たとえ現在位置が高高地であっても起動時にハードディスクドライブが作動することになる。その結果、高高地でハードディスクドライブを作動させることによるハードディスクドライブの破損を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされており、ハードディスクドライブの作動が保証されている高度を超える高高地で車載装置を起動させる場合において、不用意にハードディスクドライブ作動させることによるハードディスクドライブの破損を防止するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車載装置は、次のような特徴を有する。
外部記憶装置としてハードディスクドライブを備え、このハードディスクドライブから読み出したデータに基づいて所定の処理を行う車載装置であって、ユーザに対して情報を報知する報知手段と、ユーザからの操作指示を受け付ける受付手段と、報知制御手段と、起動制御手段とを備える。
【0011】
報知制御手段は、当該車載装置の休止中に車両側から供給されるメモリ内容保持のための待機電源が一旦途切れた後の最初の起動時において、ハードディスクドライブの作動を開始する事前に、現在位置の高度に関する高度情報を取得し、この取得した高度情報が所定の高高度以上である旨を示す場合、ハードディスクドライブの作動の許否を問い合わせる旨のメッセージを、報知手段を介してユーザに対して報知する。
【0012】
起動制御手段は、報知制御手段により報知されたメッセージに対する応答として、ハードディスクドライブの作動を許可する旨の操作指示を受付手段を介して受け付けた場合、ハードディスクドライブの作動を許可し、ハードディスクドライブからのデータの読み込みを開始する。
【0013】
なお、ここでいう所定の高高度とは、例えばハードディスクドライブの作動が保証されている高度の上限値、あるいは、ハードディスクドライブの作動が保証される気圧の下限値に到達する高度とすることが考えられる。
【0014】
このように構成された車載装置によれば、車両が高高地で停止している最中にバッテリ上がりやメンテナンスのために待機電源が途切れることでワークメモリの記憶内容が消失した場合、次の起動時ではユーザからハードディスクドライブの作動が許可されない限りハードディスクドライブを作動させない。これにより、高高地での起動時に不用意にハードディスクドライブを作動させてしまうことがなく、ユーザは、ハードディスクドライブを作動させるのに十分安全な高度の地域に移動してからハードディスクドライブの作動を許可することができる。よって、高高地での車載装置の起動時におけるハードディスクドライブの破損を防止できる。
【0015】
なお、車載装置の起動時に高度情報を取得する具体的な方法としては、走行中に検出した高度の情報を不揮発性メモリ等に記憶しておき、起動時にこの不揮発性メモリから取得する方法が挙げられる。
【0016】
そこで、請求項2に記載のように構成するとよい。すなわち、現在位置の高度が所定の高高度以上であるか否かを検知する高度検知手段と、電源を切っても記憶内容を保持する不揮発性を有する記憶手段と、車両の走行中において、高度検知手段によって現在位置の高度が所定の高高度以上であると検知された場合、その旨を示す高度情報を記憶手段に記録する高度情報記録手段とを更に備えるようにする。そして、待機電源が一旦途切れた後の最初の起動時において、記憶手段から高度情報を取得する。
【0017】
このようにすることで、現在位置が高高地であるかどうかを記憶する不揮発性の記憶手段を利用して、起動時に高度情報を速やかに取得することができる。
あるいは、請求項3に記載のように、待機電源が一旦途切れた後の最初の起動時において、現在位置の高度が所定の高高度以上であるか否かを検知する高度検知手段による検知結果を高度情報として取得するような構成であってもよい。
【0018】
ところで、ハードディスクドライブの作動の許否をユーザに対して問い合わせる際、ハードディスクドライブを作動させることができない事情をユーザに対して明示することで、ハードディスクドライブが作動しないことに対してユーザが不審感を抱くのを防ぐことができると考えられる。
【0019】
そこで、請求項4に記載のように、所定の高度以上の高高地でハードディスクドライブを作動させるとハードディスクドライブが破損する可能性があることを忠告する旨のメッセージと共に、ハードディスクドライブの作動の許否を問い合わせる旨のメッセージを報知するように構成するとよい。
【0020】
このようにすることで、ハードディスクドライブが作動しないことに対してユーザが不審感を抱くのを防ぐことができると共に、ユーザに対して適切な対応を促すことができ、好適である。
【0021】
ところで、上述した車載装置の一例としては、請求項5に記載のように、ハードディスクドライブから読み出した地図データに基づいて目的地までの経路案内を行う車載用ナビゲーション装置が挙げられる。このような車載用ナビゲーション装置に本発明の機能を適用することで、車載用ナビゲーション装置の信頼性が大いに向上する。
【0022】
以上で説明したような車載装置における報知制御手段及び起動制御手段をコンピュータシステムで実現するには、請求項6に記載のようにコンピュータシステム上で稼動するプログラムとして備えればよい。このようなプログラムは、ハードディスクドライブ以外の記憶装置(例えば、磁気/光/光磁気ディスク、ROM、RAM等)に記録し、必要に応じてコンピュータにロードすることにより、報知制御手段及び起動制御手段としての機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[1.車載用ナビゲーション装置の構成の説明]
図1は、実施形態の車載用ナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、車載用ナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、地図データやプログラム等を記憶する大容量記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)23と、各種情報を記憶する外部メモリ24と、地図表示画面等の各種表示を行うための表示装置25と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力装置26と、制御部29とを備えている。
【0025】
位置検出器21は、GPS用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置座標を検出するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の角速度に応じた検出信号を出力するジャイロスコープ21bと、車両の速度に応じた検出信号を出力する車速センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cは、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。
【0026】
操作スイッチ群22は、表示装置25と一体に構成され表示面上に設置されるタッチパネル及び表示装置25の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等が用いられる。
ハードディスクドライブ23は、情報を記憶するハードディスク23aと、ハードディスクに対して情報を読み書きするための磁気ヘッド、駆動部、制御部等からなるコントローラ23bとが一体となった記憶装置である。ハードディスクドライブ23は、制御部29からの制御に基づいてハードディスク23aからデータを読み出し、これを制御部29へ入力する。ハードディスクドライブ23が記憶しているデータは、マップマッチング、経路探索、経路誘導等に用いる道路データ、地図表示に必要な各種データからなる描画データ等からなる地図データや、経路案内用データ、車載用ナビゲーション装置1の作動のためのプログラム等を含む各種データである。なお、このハードディスクドライブ23は、高度5000m以下、又は0.5気圧以上での使用環境において正常な作動が保証されているものと想定する。
【0027】
外部メモリ24は、車載用ナビゲーション装置1の作動用のプログラムや高高地判定エリアデータ(詳細は後述する)、車両の走行中に取得した高高地フラグ(本発明の高度情報の相当)等の各種データを記憶するためのものである。この外部メモリ24には、電気的又は磁気的に記憶内容を書き換え可能で、かつ、電源を切っても記憶内容を保持できる記憶装置(例えば、不揮発性半導体メモリ等)を用いる。
【0028】
表示装置25は、液晶ディスプレイ等の表示面を有するカラー表示装置である。表示装置25は、制御部29からの映像信号の入力に応じて各種画像を表示面に表示可能である。例えば、車両が走行中においては、ナビゲーション画面として位置検出器21にて検出した車両の現在位置とハードディスクドライブ23等から入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種ランドマークのシンボル等の付加データとが重ねて表示される。
【0029】
音声出力装置26は、各種情報を音声にてユーザに報知できるように構成されている。これによって、表示装置25による表示と音声出力装置26からの音声出力との両方でユーザに対してルート案内等の各種案内をすることができる。
【0030】
制御部29は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を制御する。この制御部29は、ROMやハードディスクドライブ23、外部メモリ24等から読み込んだプログラムや各種データに従って種々の処理を実行する。
【0031】
例えば、ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理は、位置検出器21からの各検出信号に基づいて車両の現在位置を算出し、ハードディスクドライブ23から読み込んだ現在位置付近の地図等を表示装置25に表示する処理である。また、経路案内処理は、ハードディスクドライブ23に格納された地点データと、操作スイッチ群22等の操作に従って設定された目的地とに基づいて、現在位置から目的地までの最適な経路である目的地経路を算出し、現在位置と目的地経路との関係を考慮して目的までの走行案内を行う処理である。このように自動的に最適な経路を設定する手法として、ダイクストラ法によるコスト計算等の手法が知られている。
【0032】
また、車載用ナビゲーション装置1は、ハードディスクドライブ23の正常な作動が保証されている高度の上限(5000m)を超える高高地での使用が想定されている。そのため、制御部29は、車両の走行中に高度5000m以上の高高地に到達した場合、ハードディスクドライブ23の作動を禁止し、高高地でハードディスクドライブ23を作動させることによる破損を防止する。
【0033】
なお、車両の走行中に高高地でのハードディスクドライブ23の作動を禁止するプログラムは、起動時にハードディスクドライブ23から制御部29のRAM等のワークメモリに展開され、制御部29は、このワークメモリに展開したデータに基づいて作動する。また、前回の作動終了直前における作業データがこのワークメモリに記憶されていれば、このワークメモリに記憶されたデータに基づき、ハードディスクドライブ23からデータの読み込みを行わずに処理を実行できる。
【0034】
このような用途に用いられるワークメモリには、アクセス速度等の要件により記憶の保持に電源が必要な揮発性メモリが用いられる。なお、車載用ナビゲーション装置1の休止中においては、メモリ内容の保持に必要な待機電源は車載バッテリから供給される。しかしながら、車両の停止中にバッテリが上がったりメンテナンスのために電源回路が遮断されたりすることでワークメモリへの待機電源の供給が停止すると、高高地でのハードディスクドライブの作動を禁止するプログラムがワークメモリから消失してしまう。したがって、次の起動時には、ハードディスクドライブ23からプログラムを読み込まない限り、このプログラムによる処理が機能しなくなってしまう。
【0035】
そこで、待機電源の供給が一旦停止した後の起動時において、高高地であるにもかかわらず不用意にハードディスクドライブ23を作動させてしまうのを防ぐため、制御部29は次のような「起動制御処理」を実行する。制御部29は、車両からの待機電源の供給が一旦停止した後の最初の起動時において、まず、現在位置が高高地に該当か否かを判定する。そして、現在位置が高高地に該当する場合、高高地でハードディスクドライブ23を作動させるとハードディスクドライブ23が破損する可能性があることを忠告する旨のメッセージをユーザに対して報知すると共に、ハードディスクドライブ23の作動の許否をユーザに問い合わせる。なお、この間のハードディスクドライブ23の作動は禁止する。そして、ユーザからハードディスクドライブ23の作動が許可されることで、初めてハードディスクドライブ23の作動を開始し、ハードディスクドライブ23からのデータの読み込みを開始する。なお、この「起動制御処理」の詳細な内容については後述する。
【0036】
以上、車載用ナビゲーション装置1の概略構成について説明したが、本実施形態における車載用ナビゲーション装置1の構成と特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態における車載用ナビゲーション装置1の表示装置25及び音声出力装置26が、特許請求の範囲における報知手段に相当する。また、操作スイッチ群22が受付手段に相当する。また、制御部29が、報知制御手段、起動制御手段及び高度情報記録手段に相当する。また、位置検出器21及び制御部29が、高度検知手段に相当する。また、外部メモリ24が記憶手段に相当する。
【0037】
[2−1.制御部29が実行する処理の説明(第1実施形態)]
以下、制御部29が実行する「高度情報記録処理」及び「起動制御処理(第1実施形態)」の詳細な内容について、図2,4のフローチャート及び図3,5の説明図に基づいて説明する。
【0038】
[2−1−1.「高度情報記録処理」の説明]
図2は、制御部29が実行する「高度情報記録処理」の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両の走行中において上述の地図表示処理や経路案内処理等と並行して、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0039】
制御部29は、まず、位置検出器21からの入力信号に基づいて車両の現在位置を検出する(S110)。そして、この検出した現在位置を、外部メモリ24に記憶されている高高地判定エリアデータに照合する(S120)。
【0040】
ここで、高高地判定エリアデータについて、図3に基づき説明する。図3は、高高地判定エリアデータの概要を模式的に示す説明図である。高高地判定エリアデータは、地図座標平面を所定の緯度・経度ごとに区切ったメッシュ状の分割エリアに対して、それぞれ高高地エリアであるか否かを識別するための符号を割り当てたデータである。
【0041】
例えば、図3(a)に示すように、緯度・経度の座標(X1,Y1),(X2,Y1),(X1,Y2),(X2,Y2)を頂点とする地図座標領域の中央付近において、高度5000m以上の高高度地域が斑状に分布すると仮定する。この地図座標領域に対応する高高地判定エリアデータを作成する場合、この地図座標領域をさらに細かく分割した分割エリアを定義する。そして、図3(b)に示すように、高度5000m以上の高高度地域が一部でも含まれる分割エリアに対しては、当該分割エリアが高高地エリアである旨を示す「1」の符号を割り当てる。一方、高度5000m以上の高高度地域が含まれない分割エリアに対しては、当該分割エリアが高高地エリア以外である旨を示す「0」の符号を割り当てる。このようにして定義される高高地判定エリアデータは、ハードディスクドライブ23に格納されている地図データで示される地図座標領域の一部又は全部について、この地図座標領域を分割した個々の分割エリアごとに高高地エリアであるか否かを定義するテーブルデータとして外部メモリ24に予め格納されている。
【0042】
図2の説明に戻る。上述のS120においては、高高地判定エリアデータのテーブルから、S110で検出した現在位置の座標に該当する分割エリアの部分を参照し、この分割エリアに割り当てられた符号(「1」,「0」)を読み取る。そして、高高地判定エリアデータを参照した結果に基づき、現在位置が高高地エリアに該当するか否かを判定する(S130)。ここで、現在位置が高高地エリアに該当すると判定した場合(S130:YES)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「1」を示す場合、現在位置が高高地エリアであること示す高高地フラグをオンにした状態を外部メモリ24に記録する(S140)。一方、現在位置が高高地エリアに該当しないと判定した場合(S130:NO)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「0」を示す場合、高高地フラグをオフにした状態を外部メモリ24に記録する(S150)。
【0043】
なお、上述の高高地フラグについては、外部メモリ24に記録する以外にも、例えばハードディスクドライブ23のコントローラ23bが備える不揮発性メモリ(図示なし)等に記録するような構成であってもよい。この場合、この高高地フラグは、ハードディスクドライブ23内において自身の作動を禁止するための情報として用いることもできる。
【0044】
[2−1−2.「起動制御処理(第1実施形態)」の説明]
図4は、制御部29が実行する「起動制御処理(第1実施形態)」の手順を示すフローチャートである。なお、この処理を実行するためのプログラムは、制御部29内のROMや外部メモリ24等の、ハードディスクドライブ23以外の記憶装置に格納されている。そして、この処理は、車載用ナビゲーション装置1の休止中に待機電源の供給が一旦停止した後の最初の起動時に実行されるものであり、車両のアクセサリスイッチがオフの状態からオンにされることで開始される。
【0045】
制御部29は、アクセサリスイッチがオンにされると、まず、外部メモリ24に記憶されている高高地フラグを読み出す(S210)。なお、外部メモリ24には、上述の「高度情報記録処理」(図2参照)によって記録された、前回の作動終了直前までの高高地フラグの状態が保持されている。
【0046】
そして、この読み出した高高地フラグが「オン」であるか否かを判定する(S220)。ここで、高高地フラグが「オフ」であると判定した場合(S220:NO)、S250へ移行する。一方、読み出した高高地フラグが「オン」であると判定した場合(S220:YES)、高高地でハードディスクドライブ23を作動させると故障する可能性があることを忠告する旨のメッセージや、ハードディスクドライブ23の作動の許否をユーザに問い合わせるためのメッセージを表示装置25に表示する(S230)。なお、表示装置25に表示するメッセージと同等の音声メッセージを、音声出力装置26から出力してもよい。
【0047】
S230において表示される画面の一例を図5に示す。図5に示すように、表示装置25に表示される画面上には、「高度5000m以上の高高地でHDDを作動させると故障の原因となります。」といった忠告のためのメッセージや、「ナビゲーションを開始する場合は、高高地を脱出してから画面上の『HDDデータ読込開始ボタン』を押してください。」といったハードディスクドライブ23の作動の許否を問い合わせるメッセージが表示されている。
【0048】
さらに、画面の下部には、HDDデータ読込開始ボタン251が表示されている。このHDDデータ読込開始ボタン251は、表示装置25の表示面上に形成されたタッチパネルと連動したGUIであり、ユーザがこのボタンの画像を直接押下することで、ハードディスクドライブ23の作動を許可する旨の指示を入力できる。
【0049】
図4の説明に戻る。S230でハードディスクドライブ23の作動の許否を問い合わせるためのメッセージを表示した後、HDDデータ読込開始ボタンが押下されたか否かを判定する(S240)。ここで、HDDデータ読込開始ボタンが押下されていないと判定している間(S240:NO)、この処理を繰り返す。その後、HDDデータ読込開始ボタンが押下されたと判定した場合(S250)、S250の処理へ移行する。なお、「起動制御処理(第1実施形態)」を開始してからS250の処理へ移行するまでの間、ハードディスクドライブ23の作動は禁止されている。
【0050】
S250では、ハードディスクドライブ23の作動を許可する。つづいて、ハードディスクドライブ23から、車載用ナビゲーション装置1の作動に必要なデータの読み込みを行う(S260)。
【0051】
[2−2.制御部29が実行する処理の説明(第2実施形態)]
以下、制御部29が実行する「起動制御処理」の第2実施形態の詳細な内容について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
[2−2−1.「起動制御処理(第2実施形態)」の説明]
図6は、制御部29が実行する「起動制御処理(第2実施形態)」の手順を示すフローチャートである。なお、この処理を実行するためのプログラムは、制御部29内のROMや外部メモリ24等の、ハードディスクドライブ23以外の記憶装置に格納されている。そして、この処理は、車載用ナビゲーション装置1の休止中に待機電源の供給が一旦停止した後の最初の起動時に実行されるものであり、車両のアクセサリスイッチがオフの状態からオンにされることで開始される。
【0053】
第2実施形態の「起動制御処理は」、第1実施形態の「起動制御処置」(図4参照)と比較して、現在位置が高高地エリアに該当するか否かを判定するための手順が異なる。第1実施形態の「起動制御処理」では、走行中に高高地エリアの判定を行うことで記録した高高地フラグに基づいて、現在位置が高高地エリアであるか否かを判定していた(S210,S220)。これ対して、第2実施形態の「起動制御処理」では、待機電源カット後の起動時において、その都度現在位置を検出し、この検出した現在位置を高高地判定エリアデータに照合することで高高地エリアに該当するか否かを判定する。よって、車載用ナビゲーション装置1に対して第2実施形態の「起動制御処理」を採用する場合、上述の「高度情報記録処理」(図2参照)は不要となる。
【0054】
制御部29は、アクセサリスイッチがオンにされると、まず、位置検出器21からの入力信号に基づいて車両の現在位置を検出する(S300)。そして、この検出した現在位置を、外部メモリ24に記憶されている高高地判定エリアデータに照合する(S310)。この高高地判定エリアデータは、上述の「高度情報記録処理」(図2)の説明において記載したものと同様のものである(図3参照)。
【0055】
すなわち、S310においては、高高地判定エリアデータのテーブルから、S300で検出した現在位置の座標に該当する分割エリアの部分を参照し、この分割エリアに割り当てられた符号(「1」,「0」)を読み取る。そして、高高地判定エリアデータを参照した結果に基づき、現在位置が高高地エリアに該当するか否かを判定する(S320)。ここで、現在位置が高高地エリアに該当すると判定した場合(S320:YES)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「1」を示す場合、S330の処理へ移行する。一方、現在位置が高高地エリアに該当しないと判定した場合(S320:NO)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「0」を示す場合、S350の処理へ移行する。
【0056】
なお、S330〜S360の各処理については、上述の「起動制御処理(第1実施形態」(図4参照)におけるS230〜S260の処理と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0057】
[3.効果]
実施形態の車載用ナビゲーション装置1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)車両が停止している最中に、バッテリ上がりやメンテナンスのためにメモリ内容を保持するための待機電源の供給が停止した場合、次の起動時に現在位置が高高地エリアであると判定されれば、ハードディスクドライブ23の作動がユーザから許可されない限りハードディスクドライブ23を作動させない。これにより、高高地での起動時に不用意にハードディスクドライブ23を作動させてしまうことがなく、ユーザは、ハードディスクドライブ23を作動させるのに十分安全な高度の地域に移動してからハードディスクドライブ23の作動を許可することができる。よって、高高地での車載用ナビゲーション装置1の起動時におけるハードディスクドライブ23の破損を防止でき、車載用ナビゲーション装置1の信頼性が向上する。
【0058】
(2)ハードディスクドライブ23の作動の許否をユーザに対して問い合わせる際、高高地でハードディスクドライブ23を作動させると故障する可能性があることを明示することで、ハードディスクドライブ23を作動させることができない事情をユーザに対して説明することできる。これにより、ハードディスクドライブ23が作動しないことに対してユーザが不審感を抱くのを防ぐことができると共に、ユーザに対して適切な対応を促すことができ、好適である。
【0059】
[4.別実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
【0060】
例えば、本発明は、上記実施形態の車載用ナビゲーション装置1に限らず、ハードディスクドライブを外部記憶装置として用いるカーオーディオ等の車載装置にも適用可能である。
【0061】
また、現在地の高度を取得する手順として、GPS受信機21aが4基以上のGPS衛星から電波信号を捉えられるような状況であれば、この受信した電波信号に基づく三次元測位により高度を特定して、現在位置が高高地であるか否かを判定するような構成であってもよい。また、気圧センサ等により計測した気圧によって高度を特定するような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】車載用ナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】「高度情報記録処理」の手順を示すフローチャートである。
【図3】高高地判定エリアデータの概要を模式的に示す説明図である。
【図4】「起動制御処理(第1実施形態)」の手順を示すフローチャートである。
【図5】ハードディスクドライブ23の作動の許否を問い合わせるための表示の一例を示す説明図である。
【図6】「起動制御処理(第2実施形態)」の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1…車載用ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…車速センサ、22…操作スイッチ群、23…ハードディスクドライブ、23a…ハードディスク、23b…コントローラ、24…外部メモリ、25…表示装置、26…音声出力装置、29…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部記憶装置としてハードディスクドライブを備え、このハードディスクドライブから読み出したデータに基づいて所定の処理を行う車載装置であって、
ユーザに対して情報を報知する報知手段と、
ユーザからの操作指示を受け付ける受付手段と、
当該車載装置の休止中に車両側から供給されるメモリ内容保持のための待機電源が一旦途切れた後の最初の起動時において、前記ハードディスクドライブの作動を開始する事前に、現在位置の高度に関する高度情報を取得し、この取得した高度情報が所定の高高度以上である旨を示す場合、前記ハードディスクドライブの作動の許否を問い合わせる旨のメッセージを、前記報知手段を介してユーザに対して報知する報知制御手段と、
前記報知制御手段により報知されたメッセージに対する応答として、前記ハードディスクドライブの作動を許可する旨の操作指示を前記受付手段を介して受け付けた場合、前記ハードディスクドライブの作動を許可し、前記ハードディスクドライブからのデータの読み込みを開始する起動制御手段とを備えること
を特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
現在位置の高度が所定の高高度以上であるか否かを検知する高度検知手段と、
電源を切っても記憶内容を保持する不揮発性を有する記憶手段と、
車両の走行中において、前記高度検知手段によって現在位置の高度が所定の高高度以上であると検知された場合、その旨を示す高度情報を前記記憶手段に記録する高度情報記録手段とを更に備え、
前記報知制御手段は、待機電源が一旦途切れた後の最初の起動時において、前記記憶手段から前記高度情報を取得すること
を特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載装置において、
現在位置の高度が所定の高高度以上であるか否かを検知する高度検知手段を更に備え、
前記報知制御手段は、待機電源が一旦途切れた後の最初の起動時において、前記高度検知手段による検知結果を前記高度情報として取得すること
を特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の車載装置において、
前記報知制御手段は、前記所定の高度以上の高高地でハードディスクドライブを作動させるとハードディスクドライブが破損する可能性があることを忠告する旨のメッセージと共に、前記ハードディスクドライブの作動の許否を問い合わせる旨のメッセージを報知すること
を特徴とする車載装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の車載装置であって、
前記ハードディスクドライブは地図データを記憶しており、このハードディスクドライブから読み出した地図データに基づいて目的地までの経路案内を行う車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の車載装置に用いられるコンピュータを制御するためのプログラムであって、当該コンピュータを前記報知制御手段及び前記起動制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−74843(P2009−74843A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242273(P2007−242273)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】