説明

車載装置

【課題】車載装置において、利便性を向上させることにある。
【解決手段】イグニッションがオン状態とされたときから一定時間に亘って受付モードとされる。受付モードにおいては、受信モードがRKEモードと同様に、要求信号受信可能状態に切り替えられる。そして、受付モードにおいて、受信した施錠要求信号又は解錠要求信号に基づき電子キー30の解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37に対して特定の操作がされた旨判断されたときに登録モードに移行される。受付モードにおいては、受信した施錠要求信号又は解錠要求信号に基づく車両ドアの施解錠が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニット及び電子キーとの間で無線通信を行う車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が搭載される傾向にある。TPMSにおいては、車両の各タイヤには、タイヤ空気圧を検出するセンサユニットが設けられる。そして、各センサユニットからはタイヤの空気圧情報を含む情報信号が送信される。車両は、受信した情報信号を通じて各タイヤの空気圧を監視し、その空気圧が閾値以下となったタイヤが存在する場合、そのタイヤを運転者に通知する。
【0003】
近年、例えば、特許文献1に開示されるように、コンパクト化の観点から車両の受信機をTPMS及び電子キーシステムにおいて共有することが考えられている。ここで、電子キーシステムは、ユーザに所持される電子キーと、この電子キーからの要求信号を受信する受信機とを備える。電子キーから無線送信される要求信号には固有のIDコードが含まれている。そして、車両にて受信した要求信号に含まれるIDコードの妥当性が確認されると、車両ドアの施解錠等が可能となる。
【0004】
本構成においては、電子キー及びセンサユニットから送信される信号は、互いに異なる周波数に設定される。受信機は、自身の受信状態を、電子キーに対応した周波数の信号を受信可能な要求信号受信可能状態と、センサユニットに対応した周波数の信号を受信可能な情報信号受信可能状態との間で切り替える。
【0005】
ここで、TPMSにおける適切な閾値は、タイヤの種類やタイヤの温度によって変化する。このため、タイヤの空気圧を適正値に設定した後に、センサユニットからの情報信号に基づき閾値を設定し直す初期化処理が必要となる場合がある。例えば、特許文献1に記載のTPMS及び電子キーシステムを搭載した構成においては、電子キーに初期化の専用スイッチが設けられている。
【0006】
電子キーの初期化の専用スイッチが押し操作される。これにより、電子キーから初期化を要求する旨の要求信号が受信機に送信される。受信機は、要求信号受信可能状態において、当該要求信号を受信すると初期化モードに移行する。受信機は、初期化モードにおいては、情報信号受信可能状態に移行して、センサユニットからの情報信号を待つ。そして、受信した情報信号に含まれる空気圧情報に基づき閾値を設定する。
【0007】
また、電子キーに上記専用スイッチを設けない構成においては、電子キーにおける既存の施解錠スイッチに対して、長押しや同時押し等の通常と異なる特定の操作を行うことで、初期化モードに移行されることが考えられる。
【0008】
また、上記特許文献1に開示されるように、車両には、何れの取り付け位置(右前輪、右後輪、左後輪、左前輪)のタイヤに異常が発生したかを通知するために、事前に各センサユニットに対応するIDコードがタイヤの取り付け位置に関連付けられたうえで登録されている。タイヤをローテーションする場合や新しいタイヤに付け替える場合には、各センサユニットに対応するIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録し直すID登録が必要となる。
【0009】
この場合にも、上記と同様に、電子キーにID登録の専用スイッチを設けたり、施解錠スイッチに対して特定の操作を行ったりすることで、上記ID登録を行う登録モードに移行される。以下、初期化モードや登録モードを通常の処理とは異なる処理を実行する特殊モードとよぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−335276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ユーザの意図なく電子キーのスイッチ操作が行われることがある。これにより、施解錠スイッチに対する特定の操作又は専用スイッチの操作が行われて特殊モードに移行するおそれがある。ここで、特殊モードにおいては、受信状態が情報信号受信可能状態となっているため、電子キーからの要求信号を受信すること、ひいては、電子キーを通じた車両ドアの施解錠ができない。従って、ユーザの意図なく特殊モードに移行した場合には、電子キーを通じた車両ドアの施解錠が不可となって利便性が損なわれる。さらに、この場合には、特殊モードを解除するために、例えば、再び専用スイッチの操作又は特定の操作を行う必要がある。
【0012】
また、上記特定の操作は、施解錠スイッチが利用されるため、特殊モードに移行させるにあたって、不必要に車両ドアの施解錠が実行されるおそれがある。このため、初期化やID登録の完了後に、再び車両ドアを適切な施解錠状態に戻す必要があった。
【0013】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、利便性を向上させた車載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ユーザに携帯される電子キーのスイッチが操作されることで無線送信されるキーIDコードを含む制御対象機器の制御を要求する要求信号を受信可能となる要求信号受信可能状態と、複数のタイヤにそれぞれ設けられるセンサユニットから送信されるユニットIDコードと、タイヤの空気圧情報とを含む情報信号を受信可能となる情報信号受信可能状態と、の間で受信状態を切り替え、前記要求信号受信可能状態において、受信した前記要求信号に含まれるIDコードの妥当性に基づき前記制御対象機器の制御を許可する電子キーシステムモードと、前記情報信号受信可能状態において、受信した前記情報信号に含まれるタイヤの空気圧情報に基づきタイヤの空気圧が閾値以下となった旨判断したとき警告を行うタイヤ空気圧監視システムモードと、前記情報信号受信可能状態において、受信した前記情報信号に基づき、新たな閾値を設定する、若しくは前記ユニットIDコードをタイヤの各取り付け位置に関連付けて登録する特殊モードと、を有する車載装置において、イグニッションがオン状態とされたときから一定時間に亘って受信状態を前記要求信号受信可能状態とするとともに前記特殊モードに移行可能となる受付モードとなって、前記受付モードにおいては受信した前記要求信号に基づく前記制御対象機器の制御を規制し、受信した前記要求信号に基づき前記電子キーのスイッチに対して特定の操作がされた旨判断したとき前記特殊モードに移行することをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、イグニッションがオン状態とされたときから一定時間に亘って受付モードとされる。受付モードにおいては、受信状態が要求信号受信可能状態に切り替えられる。そして、受付モードにおいて、受信した要求信号に基づき電子キーのスイッチに対して特定の操作がされた旨判断されたときに特殊モードに移行される。受付モードにおいては、受信した要求信号に基づく制御対象機器の制御が規制される。従って、特殊モードに移行させるにあたって、不必要に制御対象機器の制御が実行されることが防止される。これにより、特殊モードにおいてIDコードの登録等が完了した後に、ユーザが電子キーのスイッチ操作を通じて制御対象機器をもとの状態に戻す手間がない。
【0016】
また、特殊モードに移行可能な期間を、イグニッションがオン状態とされたときから一定時間の受付モードに制限している。このため、同モードを除く期間において、ユーザの意図なく電子キーのスイッチに対して特定の操作がされた場合に特殊モードに移行されることが防止される。これにより、その後にユーザが特殊モードを解除する等の手間がない。
【0017】
以上により、利便性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明は、前記受付モードにおける前記一定時間が経過したとき、前記タイヤ空気圧監視システムモードに移行することをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、イグニッションがオン状態とされて、特殊モードに移行することなく、一定時間が経過したときタイヤ空気圧監視システムモードに移行される。これにより、イグニッションがオン状態とされた後に走行が開始されると、その走行中におけるタイヤの空気圧を監視して警告を行うことができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車載装置において、前記特殊モードにおいて、新たな閾値を設定した後、若しくはユニットIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録した後に同モードを終了して、前記タイヤ空気圧監視システムモードに移行することをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、特殊モードにおいて閾値の設定やユニットIDコードの登録が完了した後に、同モードが終了される。そして、タイヤ空気圧監視システムモードに移行される。これにより、閾値の設定等の完了後は、通常通りタイヤの空気圧の監視が可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車載装置において、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】TPMS及びRKEの構成図。
【図2】イグニッションの状態と、受信機のモードとの関係を示したタイミングチャート。
【図3】受付モードにおける受信した施錠要求信号等を示したタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。車両には、タイヤの空気圧等を検出するとともに、タイヤ空気圧の異常を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)と、電子キーを通じた遠隔操作によって車両ドアの施解錠状態を切り替える電子キーシステムの一種であるリモートキーレスエントリ(RKE:Remote Keyless Entry)とが搭載されている。
【0024】
図1に示されるように、TPMSは、車両1の各タイヤに設けられるセンサユニットU1〜U4と、車両1に設けられる車載装置5とから構成されている。
また、RKEは、ユーザに携帯される電子キー30と、車載装置5とから構成されている。以下、センサユニットU1〜U4、電子キー30及び車載装置5の具体的構成について説明する。
(センサユニット)
図1の右上に拡大して示すように、センサユニットU1〜U4は、ユニット送信回路22と、送信アンテナ22aと、CPU(Central Processing Unit)21と、メモリ23と、空気圧センサ25とを備える。空気圧センサ25は、タイヤの空気圧を検出し、その検出結果をCPU21に出力する。メモリ23には、各センサユニットU1〜U4に固有のIDコードID1〜ID4が記憶されている。
【0025】
CPU21は、一定周期毎にメモリ23を通じて取得したIDコードID1〜ID4と、空気圧センサ25を通じて認識されたタイヤの空気圧情報とを含む情報信号を生成し、その生成した情報信号をユニット送信回路22に出力する。ユニット送信回路22は、情報信号をUHF(Ultra High Frequency)帯における周波数f1の電波に変調し、その信号を送信アンテナ22aを介して無線送信する。すなわち、各センサユニットU1〜U4からはそれぞれ異なるIDコードID1〜ID4を含む情報信号が送信される。
(電子キー)
図1に示すように、電子キー30は、電子キー制御部31と、キー送信回路32と、送信アンテナ32aと、解錠スイッチ36と、施錠スイッチ37とを備える。
【0026】
電子キー制御部31は、コンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ31aを備える。このメモリ31aには電子キー30に固有のIDコードが記憶されている。
【0027】
解錠スイッチ36及び施錠スイッチ37は、電子キー30の表面に押し操作可能に配置されている。
解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37は操作されると、それが操作された旨の操作信号を電子キー制御部31へ出力する。
【0028】
電子キー制御部31は、解錠スイッチ36が操作された旨の操作信号を受けると、自身のメモリ31aに記憶されるIDコードを含む車両ドアの解錠を要求する旨の解錠要求信号を生成し、それをキー送信回路32に出力する。キー送信回路32は、入力された施錠要求信号をUHF帯における周波数f2の電波に変調して、その変調した施錠要求信号を送信アンテナ32aを通じて無線送信する。
【0029】
電子キー制御部31は、施錠スイッチ37が操作された旨の操作信号を受けた場合も、上記と同様に、IDコードを含むドアの施錠を要求する旨の施錠要求信号を、キー送信回路32及び送信アンテナ32aを介して周波数f2の無線信号として送信する。
【0030】
このように、施錠要求信号及び解錠要求信号と、情報信号とはUHF帯において異なる周波数f1,f2で送信される。
(車載装置)
車載装置5は、受信機10と、インジケータ18と、ドアロック装置17と、イグニッションスイッチ16とを備える。
【0031】
受信機10は、受信回路12と、受信アンテナ12aと、CPU11と、メモリ13とを備える。
インジケータ18は、例えばLED(発光ダイオード)を備えるとともに、同LEDの点灯を通じて所定のタイヤの空気圧が低下した旨をユーザに通知する。
【0032】
メモリ13には、空気圧低下の警告に利用される閾値と、タイヤの取り付け位置に係るID登録情報と、が記憶されている。
ID登録情報は、各センサユニットU1〜U4に対応したIDコードID1〜ID4と、タイヤの取り付け位置とが関連付けられた情報である。例えば、IDコードID1には右前輪が関連付けられ、IDコードID2には右後輪が関連付けられたうえで登録されている。また、IDコードID3には左後輪が関連付けられ、IDコードID4には左前輪が関連付けられたうえで登録されている。
【0033】
CPU11は、イグニッションスイッチ16を通じてイグニッションの状態を検出する。
図2に示すように、受信機10は、車両の電源ポジションがイグニッションオフ状態のときRKEモードとなる。CPU11は、RKEモードにおいては、受信回路12を周波数f2の電波を受信可能な要求信号受信可能状態とする。
【0034】
RKEモードにおいて、受信回路12は、受信アンテナ12aを介して解錠要求信号又は施錠要求信号を受信するとともに、受信した解錠要求信号又は施錠要求信号を復調し、その復調した信号をCPU11に出力する。
【0035】
CPU11は、受信回路12からの解錠要求信号を認識すると、解錠要求信号に含まれるIDコードと、メモリ13に記憶されるIDコードとの照合を行う。CPU11は、このIDコードの照合が成立した旨判断したとき、ドアロック装置17を通じて車両ドアを解錠する。これと同様に、CPU11は、受信した施錠要求信号に含まれるIDコードについての照合が成立した旨判断したとき、ドアロック装置17を通じて車両ドアを施錠する。
【0036】
また、図2の中段に示すように、受信機10は、車両の電源ポジションがイグニッションオフ状態からイグニッションオン状態に切り替えられたとき、一定時間T1に亘って受付モードとなった後にTPMSモードとなる。この一定時間T1は、イグニッションがオン状態とされたときから走行が開始されると予想されるときまでの時間未満に設定されている。これにより、車両が走行を開始したときにはTPMSモードとなって、タイヤの空気圧を監視することができる。
【0037】
CPU11は、TPMSモードにおいては、受信回路12を周波数f1の電波を受信可能な情報信号受信可能状態とする。
TPMSモードにおいては、受信回路12は、受信アンテナ12aを介して情報信号を受信するとともに、受信した情報信号を復調し、その復調した情報信号をCPU11に出力する。
【0038】
CPU11は、受信回路12からの情報信号を認識すると、同情報信号に含まれるIDコードID1〜ID4及びタイヤの空気圧情報を認識する。例えば、CPU11は、IDコードID1に対応する空気圧がメモリ13に記憶される閾値以下となったとき、右前輪の空気圧低下に係る警告をインジケータ18を通じて行う。その他、右後輪、左前輪、左後輪についても同様に警告が行われる。これにより、ユーザは何れのタイヤの空気圧が低下したかを認識することができる。また、CPU11は、図示しないボデー制御装置等を通じてハザードランプ19を点滅させることができる。
【0039】
CPU11は、受付モードにおいても、受信回路12を情報信号受信可能状態とする。すなわち、イグニッションがオン状態とされても受付モードにおいては、要求信号受信可能状態が維持される。よって、受付モードにおいては、電子キー30からの施錠要求信号等が受信可能となる。
【0040】
図3に示すように、CPU11は、受付モードにおいて、解錠要求信号又は施錠要求信号を一定時間T2内に、一定回数n以上に亘って受けると、特定の操作がされた旨を判断する。このとき、各解錠要求信号等についてIDコードの照合が成立する必要がある。
【0041】
図2の下段に示すように、CPU11は、特定の操作がされた旨を判断すると、センサユニットU1〜U4のIDコードID1〜ID4を登録する登録モードに移行する。なお、この登録モードは特殊モードに相当する。
【0042】
本例では特定の操作とは、電子キー30における施錠スイッチ37又は解錠スイッチ36が一定時間T2内に一定回数n以上押し操作されることである。一定時間T2は、施錠スイッチ37又は解錠スイッチ36が一定回数n以上押し操作可能とされる時間に設定される。ここでの一定回数nは、2回以上であれば何回であってもよい。
【0043】
また、CPU11は、受付モードにおいて受信した施錠要求信号等に応じて車両ドアを施解錠しない。よって、受付モードにおいて、上記特定の操作を通じて登録モードに移行させる際に車両ドアの施解錠状態が切り替えられることが防止される。よって、例えば、ID登録の完了後に、車両ドアの施解錠状態をもとの状態に戻す手間がない。
【0044】
ここで、上記のようにタイヤの各取り付け位置に関連付けてIDコードが登録されていても、タイヤがローテーションされる場合や新たなタイヤに履き替えられる場合がある。この場合には、新たに各センサユニットU1〜U4のIDコードID1〜ID4をタイヤの取り付け位置に関連付けて登録するID登録が必要となる。
【0045】
以下、ID登録方法について説明する。
まず、上記のように電子キー30に対する特定の操作を通じて、受信機10を登録モードとする。CPU11は、登録モードにおいては、受信回路12の受信状態を情報信号受信可能状態とする。そして、予め定められた取り付け位置の順番(例えば右前輪→右後輪→左後輪→左前輪)でタイヤの空気圧を減少させることで、各センサユニットU1〜U4のIDコードID1〜ID4を取り付け位置に関連付けてメモリ13に登録していく。
【0046】
具体的には、登録モードにおいて、CPU11によりID登録に係るタイヤとして右前輪が選択された状態において、ユーザはそのタイヤを減圧させる。これにより、一定周期毎に送信される情報信号に含まれるタイヤの空気圧情報に変化が生じる。CPU11は、タイヤの空気圧の変化値が一定値以上となった旨判断したとき、その空気圧の変化があった情報信号のIDコードを右前輪として登録する。CPU11は、その登録が完了したときハザードランプ19を点滅させる。そして、右前輪と同様にして残りの3つの取り付け位置(右後輪、左後輪及び左前輪)についても、タイヤの減圧を通じてIDコードの登録が行われる。CPU11は全てのIDコードID1〜ID4の登録が完了すると、登録モードからTPMSモードに移行する。
【0047】
また、CPU11は、受付モード若しくは登録モードにおいて、イグニッションがオフ状態に切り替えられた旨判断したとき、同モードを終了してRKEモードに移行する。
上記ID登録により、新たなタイヤに履き替えられた場合であっても各取り付け位置に新たなIDコードが登録される。また、タイヤがローテーションされた場合であってもIDコードは適切に入れ替えられる。何れの場合であっても、上記登録作業を行うことで特定のタイヤの空気圧が低下したときには、そのタイヤを正しくインジケータ18を通じて通知することができる。
【0048】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)イグニッションがオン状態とされたときから一定時間T1に亘って受付モードとされる。受付モードにおいては、受信状態がRKEモードと同様に、要求信号受信可能状態となる。そして、受付モードにおいて、受信した施錠要求信号又は解錠要求信号に基づき電子キー30の解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37に対して特定の操作がされた旨判断されたときに登録モードに移行される。受付モードにおいては、受信した施錠要求信号又は解錠要求信号に基づく車両ドアの施解錠が規制される。従って、登録モードに移行させるにあたって、不必要に車両ドアの施解錠状態が切り替わることが防止される。これにより、登録モードにおいてID登録を完了した後に、ユーザが電子キー30の解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37の操作を通じて車両ドアの施解錠状態をもとの状態に戻す手間がない。
【0049】
また、登録モードに移行可能な期間を、イグニッションがオン状態とされたときから一定時間T1、すなわち受付モードの期間に限定している。このため、受付モードを除く期間において、ユーザの意図なく電子キー30の解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37に対して特定の操作がされた場合に登録モードに移行されることが防止される。これにより、誤って登録モードに移行した後に、ユーザが登録モードを解除する等の手間がない。
【0050】
以上により、利便性を向上させることができる。
(2)登録モードにおいてID登録が完了した後に、登録モードが終了される。そして、TPMSモードに移行される。これにより、ID登録の完了後は、タイヤの空気圧の監視及び警告が可能である。
【0051】
(3)受付モードにおいてイグニッションがオフ状態とされると、RKEモードに移行される。このため、イグニッションがオフ状態にあるとき、RKEを利用すること、すなわち電子キー30の解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37操作を通じて車両ドアの施解錠状態の切り替えが可能となる。
【0052】
(4)受付モードにおいては、電子キー30の解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37の操作を通じた車両ドアの施解錠状態の切り替えが規制されていた。この場合であっても、従来一般的にイグニッションがオン状態においては、電子キー30を通じた車両ドアの施解錠状態の切り替えはできない構成が多い。このため、従来の構成と比較しても、ユーザの利便性が低下することはない。
【0053】
また、受付モードはイグニッションがオン状態とされてから一定時間T1に限られているため、走行開始時にはTPMSモードとなって空気圧を監視することができる。換言すると、これが実現されるように一定時間T1は設定されている。
【0054】
(5)特定の操作の判断は、受信機10のCPU11において行われる。従って、電子キー30側で判断する必要がなく、より高い携帯性が要求される電子キー30をコンパクトに構成することができる。
【0055】
(6)一定時間T1以外では登録モードに移行することがない。よって、特定の操作を比較的に簡単にした場合であっても、誤って登録モードに移行することを抑制できる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0056】
・上記実施形態において、CPU11は、受付モードにおいて車速が一定速度以上となった旨判断したとき、同モードを終了させてTPMSモードとしてもよい。これにより、車両の走行中には空気圧を監視して警告することができる。
【0057】
・上記実施形態においては、受付モードにおける電子キー30(正確には、各スイッチ36,37)に対する特定の操作を通じて登録モードに移行されて、このモードにおいてタイヤの各取り付け位置に関連付けてIDコードが登録されていた。しかし、受付モードにおける電子キー30への特定の操作を通じて、タイヤ空気圧の閾値の初期化が行われてもよい。
【0058】
具体的には、CPU11は、受付モードにおいて電子キー30に対して特定の操作が行われた旨判断したとき、初期化モードに移行する。CPU11は、初期化モードにおいて、受信した情報信号に基づき閾値を設定する。すなわち、初期化モードにおいても、登録モードと同様に、情報信号受信可能状態とされる。例えば、閾値は、情報信号に含まれるタイヤの空気圧を20%減少させた値に設定される。
【0059】
これにより、タイヤ温度が変化した場合であっても、定期的に初期化を行うことで適切な閾値を設定することができる。
・上記実施形態においては、登録モードにおいて予め定められたタイヤの取り付け位置の順番でタイヤの空気圧を減少させることで、各センサユニットU1〜U4のIDコードID1〜ID4を取り付け位置に関連付けてメモリ13に登録していた。しかし、タイヤの空気圧を上昇させてもよい。また、ドライヤーや冷却スプレー等を通じてタイヤ(正確にはセンサユニット)の温度を変化させてもよい。この場合、各センサユニットU1〜U4は、タイヤの温度を検出する温度センサを備える。温度センサは、検出結果をセンサユニットのCPU21に出力する。CPU21は、温度センサを通じて検出された温度情報を情報信号に付加して無線送信する。受信機10のCPU11は、受信した情報信号に含まれる温度情報の変化に基づき、上記実施形態における空気圧の変化の場合と同様に、タイヤの取り付け位置に関連付けてIDコードの登録を行う。すなわち、例えば、CPU11によりIDコードの登録に係る取り付け位置として右前輪が選択されている状態においては、温度変化があった情報信号におけるIDコードが右前輪に関連付けられて登録される。
【0060】
さらに、専用のツールを利用してID登録を行ってもよい。例えば、専用のツールを通じて、センサユニットに対して順番に情報信号の送信を要求する要求信号を無線送信する。これにより、各センサユニットから順番に情報信号を送信させることができる。また、専用のツールは、各センサユニットから情報信号を受信して、そのIDコードを読み取って、その情報を受信機10に無線送信するものであってもよい。
【0061】
また、車両に各センサユニットに対して情報信号の送信を要求する要求信号を送信するイニシエータを設けてもよい。
また、タイヤを回転させることでID登録を行ってもよい。この場合、センサユニットに加速度センサを設け、同センサの検出結果は回転加速度情報として情報信号に付加される。登録モードにおいて予め定められた取り付け位置の順番でタイヤを回転させる。例えば、IDコードの登録に係る取り付け位置として右前輪が選択されている場合に、情報信号に含まれる回転加速度情報に変化があったとき、同信号のIDコードが右前輪に関連付けられて登録される。
【0062】
・上記実施形態における特定の操作は、一定時間T2内の一定回数n以上の解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37の操作であったが、それに限らず、例えば解錠スイッチ36及び施錠スイッチ37の同時押し、解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37の一定時間以上の長押し、解錠スイッチ36又は施錠スイッチ37の単押しであってもよい。特定の操作を単押し操作とした場合であっても、登録モードに移行するのは一定時間T1に限られるため、このように特定の操作を簡易なものとしても、ユーザの意図なく登録モードに移行することが抑制される。さらに、特定の操作は、これらの組み合わせであってもよい。
【0063】
また、登録モードに移行させる専用のスイッチを電子キー30に設けてもよい。この場合、専用のスイッチが単押し操作されることが特定の操作となる。このスイッチが操作されると、電子キーから登録モードに移行することを要求する旨の無線信号が送信される。
【0064】
また、解錠スイッチ36及び施錠スイッチ37の何れか一方のみを一定時間T2内に一定回数n以上操作することであってもよい。
・特定の操作の判断は、電子キー30において行われてもよい。この場合、電子キー制御部31は、解錠スイッチ36及び施錠スイッチ37からの操作信号を通じて、特定の操作が行われたか否かを判断する。そして、電子キー制御部31は、特定の操作が行われた旨判断したとき、キー送信回路32等を通じて、登録モードへの移行を要求する旨の要求信号を無線送信する。
【0065】
・上記実施形態においては、IDコードの登録が完了した後には自動でTPMSモードに移行されていた。しかし、登録モードからTPMSモードに移行させる際にも、電子キー30に特定の操作を要求してもよい。この特定の操作は、登録モードに移行させる際の特定の操作と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
・上記実施形態においては、電子キー30のスイッチ操作を通じて車両ドアの施解錠が可能であった。しかし、電子キー30の制御対象機器はこれに限らず、例えば、スライドドア開閉装置、エンジン始動装置又はトランク開閉装置であってもよい。電子キー30にこれら制御対象機器に対応したスイッチが設けられている場合には、それらスイッチに対して上記特定の操作を行ってもよい。
【0067】
・上記実施形態におけるCPU11は受信機10と別に設けられていてもよい。また、TPMSにおけるCPUと、RKEにおけるCPUとが別に設けられていてもよい。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
【0068】
(イ)請求項1〜3の何れか一項に記載の車載装置において、前記受付モードにおいて前記イグニッションがオフ状態とされると、前記電子キーシステムモードに移行する車載装置。
【0069】
同構成によれば、受付モードにおいてイグニッションがオフ状態とされると、電子キーシステムモードに移行される。このため、イグニッションがオフ状態にあるとき、電子キーシステムモードを利用すること、すなわち電子キーのスイッチ操作を通じて制御対象機器を制御することが可能となる。
【0070】
(ロ)請求項1〜3、(イ)の何れか一項に記載の車載装置において、前記受付モードにおいて車速が一定速度以上となった旨判断したとき同モードを終了して、前記タイヤ空気圧監視システムモードに移行する車載装置。
【0071】
同構成によれば、受付モードにおいて車速が一定速度以上となったとき、同モードからタイヤ空気圧監視システムモードに移行される。よって、車両の走行中により確実に空気圧を監視することができる。
【0072】
(ハ)請求項1〜3、(イ)、(ロ)の何れか一項に記載の車載装置において、前記スイッチは、車両ドアの施解錠を要求する施解錠要求信号を送信する際に操作される施解錠スイッチであって、前記電子キーシステムモードにおいて、受信した前記施解錠要求信号に基づき前記施解錠スイッチに対して単押し操作された旨判断すると車両ドアの施解錠状態を切り替え、前記受付モードにおいては、受信した前記施解錠要求信号に基づき前記施解錠スイッチに対して特定の操作がされた旨判断すると前記特殊モードに移行する車載装置。
【0073】
(ニ)請求項2に記載の車載装置において、前記一定時間は、イグニッションがオン状態とされたときから走行が開始されると予想されるときまでの時間未満に設定される車載装置。
【0074】
同構成によれば、車両が走行を開始したときには、受付モードからタイヤ空気圧監視システムモードとなって、タイヤの空気圧を監視することができる。
【符号の説明】
【0075】
U1〜U4…センサユニット、1…車両、5…車載装置、10…受信機、11…CPU、12…受信回路、17…ドアロック装置(制御対象機器)、21…CPU、25…空気圧センサ、30…電子キー、31…電子キー制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯される電子キーのスイッチが操作されることで無線送信されるキーIDコードを含む制御対象機器の制御を要求する要求信号を受信可能となる要求信号受信可能状態と、複数のタイヤにそれぞれ設けられるセンサユニットから送信されるユニットIDコードと、タイヤの空気圧情報とを含む情報信号を受信可能となる情報信号受信可能状態と、の間で受信状態を切り替え、
前記要求信号受信可能状態において、受信した前記要求信号に含まれるIDコードの妥当性に基づき前記制御対象機器の制御を許可する電子キーシステムモードと、
前記情報信号受信可能状態において、受信した前記情報信号に含まれるタイヤの空気圧情報に基づきタイヤの空気圧が閾値以下となった旨判断したとき警告を行うタイヤ空気圧監視システムモードと、
前記情報信号受信可能状態において、受信した前記情報信号に基づき、新たな閾値を設定する、若しくは前記ユニットIDコードをタイヤの各取り付け位置に関連付けて登録する特殊モードと、を有する車載装置において、
イグニッションがオン状態とされたときから一定時間に亘って受信状態を前記要求信号受信可能状態とするとともに前記特殊モードに移行可能となる受付モードとなって、
前記受付モードにおいては受信した前記要求信号に基づく前記制御対象機器の制御を規制し、受信した前記要求信号に基づき前記電子キーのスイッチに対して特定の操作がされた旨判断したとき前記特殊モードに移行する車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
前記受付モードにおける前記一定時間が経過したとき、前記タイヤ空気圧監視システムモードに移行する車載装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載装置において、
前記特殊モードにおいて、新たな閾値を設定した後、若しくはユニットIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けて登録した後に同モードを終了して、前記タイヤ空気圧監視システムモードに移行する車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−232710(P2012−232710A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104209(P2011−104209)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】