説明

車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造

【課題】1故障で全ての電子制御を中止する故障モードが生じないような信号線の端子に対する接続をして電子制御回路の信頼性を向上させ得る車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造を得る。
【解決手段】車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造を、マイクロコンピュータ10A,10Bのそれぞれの接続端子A1 〜A7 に対して信号線(1)〜(7),(1’)〜(7’)を、図示のように、(1),(2),(3),(5),(6),(4),(7),及び(1’),(2’),(3’),(5’),(6’),(4’),(7’)の順序で互いに隣接する位置となるように接続し、いずれの位置でピン間ショートの1故障が生じても、ブレーキバイワイヤ制御による制御輪が2輪残るように接続配置し、フェールセーフによる安全性、ブレーキ制御の信頼性が向上するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のブレーキ装置を制御する車載電子制御装置内のマイクロコンピュータ端子へ周辺IC等からの信号線、制御線を含む接続線の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ装置は、平面視対角線上の車輪ブレーキを制動する、いわゆるX−配管系の液圧回路が広く採用されており、この2系統の液圧回路に対応してマイクロコンピュータと周辺ICを有する電子制御回路から成る車載電子制御装置(ECU)も互いに独立の2系統のECUを備えたものが知られている。このような装置では、2系統のECUのいずれか1系統に故障が発生しても他の系統の液圧回路、ECUにより対角輪のブレーキを作動させて最小限の制動力を得ることができる。
【0003】
上記2系統のX−配管系の液圧回路を対象とするECUを備えた例として、特許文献1に「液圧ブレーキシステム」が開示されている。この文献1に記載された液圧ブレーキシステムは、コンピュータを主体とするブレーキECUによって制御され、このブレーキECUには多くのセンサ,圧力スイッチからの信号線群,増圧用リニアバルブ,減圧用リニアバルブ等のコイルを制御する駆動部等への制御線群が接続されている。そして、制御線群はブレーキECUと第1マスタ遮断弁とを接続する制御線とブレーキECUと第1連通制御弁とを接続する制御線とが互いに異なる制御線群に属し、ブレーキECUと第2マスタ遮断弁とを接続する制御線とブレーキECUと第2連通制御弁とを接続する制御線とが互いに異なる制御線群に属するように接続されている。
【0004】
第1,第2マスタ遮断弁はX配管の2系統の配管系にマスタシリンダの加圧室を連通,遮断するように設けられ、第1,第2連通制御弁は各系統の2つのブレーキシリンダを互いに連通,遮断するように設けられており、上記制御線群を2つの制御線群に属するようにすることによりシステム全体に異常が生じても全てのブレーキシリンダをマスタシリンダの液圧で作動させることができるようにしている。異常の形態の1つとして、上記2つの制御線群をブレーキECUに接続する2つのコネクタの接続状態の異常について記載されている。2つのコネクタのうちのいずれかが異常でも、他方の接続状態が正常であれば、その正常側の制御線群からの制御によって一部のブレーキの制御を可能としている。
【0005】
しかし、上記文献1のECU及び制御線群を2つのコネクタで接続する際に生じるコネクタの接続状態の異常の具体的な対策として異なる制御線群に分けることについて記載されているだけであり、マイクロコンピュータの端子間のショートによる異常のような特定の異常状態についての対策まで考慮している訳ではない。さらに、信号線は種々の性質の信号が入,出力されるが、そのうち特に2系統のそれぞれの2輪の電子制御を監視信号により禁止する信号線をどのように配置接続すれば、ブレーキ制動の安全性,信頼性の向上になるかを具体的に提案した例もない。
【特許文献1】特開2003−205838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記の問題に留意して、X配管系の液圧ブレーキシステムに対応して2系統の電子制御回路で液圧制御する車載電子制御装置に用いられるマイクロコンピュータ端子に信号線を接続する際に、1故障で全ての電子制御を中止する故障モードが生じないような信号線の端子に対する接続をして電子制御回路の信頼性を向上させ得る車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決する手段として、対角線上の車輪ブレーキを制御する2系統のX配管系の液圧ブレーキシステムに対応して、液圧ブレーキシステムを制御するマイクロコンピュータ10A,10Bと各マイクロコンピュータ10A,10Bの入力側及び出力側の周辺IC20,30とを含む互いに独立の2系統の電子制御回路を設け、上記周辺IC20,30のいずれかに各系統の電子制御回路における故障による異常を検出する異常状態検出手段と、その検出手段からの異常検出信号により各系統の駆動部へ電源を供給する電源ラインにフェールセーフ手段を設け、フェールセーフ手段により各系統のブレーキバイワイヤ制御を遮断する車載電子制御装置において、各マイクロコンピュータ10A,10Bの入力側及び出力側の周辺IC20,30とのセンサ,モニタ,リレー,制御信号等の各種入,出力信号の接続端子に対する接続を1故障ではブレーキバイワイヤ制御により少なくとも1輪以上が制御を継続するように設定し、制動力を確保するようにしたことを特徴とする車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造としたのである。
【0008】
上記の構成としたこの発明の車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造によれば、マイクロコンピュータの2つの接続端子間がピンショートによる故障で短絡しても少なくとも1輪以上の車輪のブレーキバイワイヤ方式による制御が継続され、電子制御回路の信頼性が向上する。この場合、少なくとも1輪以上の車輪のブレーキバイワイヤ方式による電子制御が継続されるためには、マイクロコンピュータの接続端子に対して信号線を接続する際に、禁止信号によって各系統の2輪のブレーキバイワイヤ制御を禁止する信号線が隣接する位置となる接続配置構造とならないように接続する必要がある。
【0009】
又、自系統の制御禁止をする信号線には自系統の一輪の制御を禁止する信号線を隣接するように接続配置をし、他系統の信号線がその次に隣接する場合、まず一輪の制御を禁止する信号線を隣接させ、他系統の制御を禁止する信号線をできるだけ離れるように接続配置する接続構成とするのが好ましい。このような接続構成とすると、2つの接続端子間のピンショートがどの端子位置で生じても少なくとも1輪以上の制御輪が残り、ブレーキバイワイヤによる制御がより有効に行なわれることとなって、安全性、信頼性が一段と向上する。
【発明の効果】
【0010】
この発明の車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造は、互いに独立な2系統のマイクロコンピュータと周辺ICを含む電子制御回路により2系統の液圧ブレーキシステムをブレーキバイワイヤ方式で制御するようにし、マイクロコンピュータの端子へ接続する信号線は各系統のブレーキバイワイヤ制御を禁止する信号を入,出力する信号線を互いに隣接しない配置とすることにより、2端子間ショートのような1故障が原因で全車輪のブレーキバイワイヤ制御が中止されることのないようにしたから、1故障により全輪の制御が中止され、著しく制動力が低下するという不都合が回避され、電子制御回路の信頼性が向上し、不必要な電子回路の冗長化が防止されるためコストダウンが図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施例のマイクロコンピュータ端子接続構造を備えた車載電子制御装置の主要構成部の概略ブロック図である。図示の車載電子制御装置(ECU)は、車両のブレーキ装置を制御する液圧回路が平面視対角線上の車輪を液圧制御する、後述するいわゆるX−配管系の液圧回路を対象とし、この2系統の液圧回路に対応して、入力信号に基づいて各種の演算をし、かつ制御信号を出力するマイクロコンピュータ10と、その入力側の信号の処理、リレー等の監視、遮断及び/又は禁止をする周辺IC20と、出力側の制御信号を受けてソレノイド39を駆動するリニア駆動部36を含む周辺IC30とを有する1系統の電子制御回路、及びこれと同一構成で他系統の液圧回路に対応するもう1系統の電子制御回路(図示せず)の2系統の電子制御回路を備えている。
【0012】
マイクロコンピュータ10は、入力側の周辺IC20に設けられた図示しない処理部へ車輪速信号や液圧等車両の走行状態を表すセンサからの信号が送られて、波形処理されたその信号を入力信号として入力部11で受信し、その信号に基づいてABS制御等の各種演算プログラムにしたがって演算部(CPU)12により必要な演算を行い、その演算結果を出力部13から出力するように構成されている。この演算されたデータはシリアル通信部14から周辺IC20,30の双方に送信され、周辺IC20ではシリアル通信バッファ21で受信し、図示しないシリアル通信監視部によりそのデータ通信の状態を監視し、通信状態に異常が生じていれば自系統禁止部22へ信号を出力する。
【0013】
周辺IC20の自系統禁止部22は、上記通信異常等の信号を受けると、リレー制御部23へ信号を出力し、ソレノイド等の電気的負荷への主電源ライン上に設けられているフェールセーフ手段(図示省略)のリレーを遮断するための信号を出力すると共に、周辺IC20の内部をリセットする信号を出力する。24は電源監視部である。又、自系統禁止部22へは、マイクロコンピュータ10内のCPU12による演算タイミングの周期等の異常を監視する信号が入力されるようになっている。Iwは他系統信号入力,センサ,CPU間監視信号のラインであり、入力部11へ送られて相互通信によって監視をするようにしている。なお、電源監視部24や図示しないシリアル通信監視部、温度監視部等の各種監視部は電子制御回路の異常状態を検出する検出手段である。
【0014】
出力側の周辺IC30にもシリアル通信バッファ31が設けられ、これに前述したマイクロコンピュータ10のシリアル通信部14からデータが送られて、データの監視が行われる。周辺IC30には周辺IC20と同様に自系統禁止部32,電源監視部34が設けられ、さらに他系統禁止部33,リニア駆動部36,モータリレー駆動部37等が設けられている。リニア駆動部36は、増圧型又は減圧型のリニア制御弁(電磁弁)のソレノイド39を出力部13からの制御信号により駆動する。リニア駆動部36は、マイクロコンピュータ10のシリアル通信部14からのデータ信号をシリアル通信バッファ31で受信し、その通信において異常が生じた場合、図示しないその監視部から通信異常の信号が送られ、リニア制御弁の作動が遮断される。
【0015】
自系統禁止部32は、入力側の周辺IC20と同様に、マイクロコンピュータ10からの監視信号が入力され、異常が検出されると禁止信号をモータリレー駆動部37等へ出力し、駆動を遮断すると共に周辺IC30内の各部の状態をリセットするリセット信号としても使用される。電源監視部34の監視信号は自系統禁止部32と入力側の周辺IC20のリレー制御部23へも送られている。
【0016】
他系統禁止部33は、他系統の電子制御回路のマイクロコンピュータ10,他系統の入力側周辺IC20からのそれぞれの監視信号が自系統側の周辺IC30のAND回路35Aに入力されて異常を検出すると、その出力信号を、ブレーキ操作部のマスタシリンダに接続されている2つの液圧回路中の自系統のマスタカット弁(電磁弁)VMC(図2参照、但し図中のVMC2,SL2の添字2は省略して説明する)のソレノイドSL に対し出力し、マスタカット弁VMCによる液圧回路の遮断を解除する。
【0017】
上記車載電子制御装置が制御する液圧ブレーキシステムの一例を図2に示す。図示の液圧ブレーキシステムは、いわゆるブレーキバイワイヤ方式のシステムであり、例えば特開2003−205838号公報に開示されたシステムと共通する部分が多く含まれているので、ここでは簡単に説明する。なお、ブレーキ輪は右前輪(FR),左後輪(RL)のみを示し、他は図示省略している。又、図示の液圧ブレーキシステムはX−配管系を採用しており、入力操作部50,パワー供給部60,調圧部70から成る。入力操作部50は、ブレーキペダル51,2つの加圧室を含むマスタシリンダ52,電磁弁53,ストロークシミュレータ54,ストロークセンサPSSを備えている。ストロークシミュレータ54はドライバによるブレーキ操作フィーリングを創生するために設けられている。
【0018】
パワー供給部60は、動力により作動する動力式液圧発生装置としてのポンプ61,モータ61M ,逆止弁62,アキュムレータ63,リリーフ弁64,スイッチSWを備えている。調圧部70は、増圧用リニア弁71(FR,RL),減圧用リニア弁72(FR,RL)を備えている。増圧用リニア弁71(FR,RL),減圧用リニア弁72(FR)は常閉弁、減圧用リニア弁72(RL)は常開弁であり、電磁コイルへの供給電流の制御によりホイールシリンダ液圧が制御され、ばね付勢力と弁圧の差圧で開閉される。上記増,減圧用リニア弁71,72によりドライバの要求制動力が得られるようにホイールシリンダ81(FR,RL)液圧の目標液圧が決定され、実際のホイールシリンダ液圧が目標液圧と同じになるようにコイルへの供給電流が決定される。
【0019】
上記ブレーキバイワイヤ方式の液圧ブレーキシステムでは、ドライバがブレーキペダル51を操作すると、マスタシリンダ52からホイールシリンダ81に至る液圧回路がマスタカット弁VMCによって遮断され、通常制動時には、パワー供給部60から供給される液圧が調圧部70の増圧用リニア弁71によって調圧されてホールシリンダ81に供給される。このときの増圧用リニア弁71による調圧は、ドライバによるブレーキペダル51の操作量がストロークセンサPSSによって、また、マスタシリンダ52によって発生させたブレーキ操作力に応じた液圧が圧力センサPMCによってそれぞれ検出され、 その検出信号に基づいてなされるので、通常制動時にホイールシリンダ81に供給される液圧はドライバによるブレーキ操作力に応じた値となる。
【0020】
この液圧ブレーキシステムは、パワー供給部60と、増圧用リニア弁71及び減圧用リニア弁72を有する調圧部70を備えているので、ホイールシリンダ81の液圧をECUの判断によりドライバの意思に基づかない任意の値に調圧することができ、アンチロック制御(ABS)や車両の安定性制御(VSC)、回生ブレーキとの協調制御などを行うことができる。なお、ポンプや電気系統などが失陥して調圧部70からの液圧供給が行えなくなったときには、マスタカット弁VMCが開弁したままになり、また、失陥の無いときに開弁する電磁弁53は閉じたままとなってマスタシリンダ52によって発生させた液圧がホイールシリンダ81に供給され、その液圧による制動がなされる。
【0021】
上記構成の車載電子制御装置(ECU)のマイクロコンピュータ10には周辺IC20,30との間に上述した多数、多種のセンサからの信号線,電磁弁のソレノイドへの制御線が接続され、これらの接続線を介してマイクロコンピュータ10の演算データや各電子部品の作動の監視が行なわれている。これら接続線は、例えば図3に示すマイクロコンピュータ10A(系統1−自系統),10B(系統2−他系統)の接続端子(ピン)A1 〜A7 の配置による接続構造とする。
【0022】
これらの接続端子A1 〜A7 には、図4に示す信号内容の欄のモニタ信号,データ信号、又は駆動出力が入,出力される。但し、接続端子A1 〜A7 に対応する同一番号の信号(1)〜(7),(1’)〜(7’)が入出力されるものとする。又、図3のマイクロコンピュータ10A,10Bの記号は、図1に示した1系統のマイクロコンピュータ10と図示しないもう1系統のマイクロコンピュータを区別するため、図3では改めてA,Bを付して示したものである(10Aは系統1,10Bは系統2)。以下では、図4に示す系統1の信号分類,信号内容,フェールセーフ手段による制御態様について表示する。この場合系統1のマイクロコンピュータ10Aで処理する信号についてのみ表示し、系統2の場合については図4に表示しているので省略している。以下では系統1の場合を主として説明する(系統2では系統1と対称に同様の制御輪が残る。これについては図5,図6の場合も同じ)。
【0023】
(自系統)
信号分類 信号内容 制御態様
(フェールセーフ手段)
信号(1) VMC1 油圧センサ電源電圧モニタ 系統1制御禁止
メインリレー1駆動モニタ
メインリレー1駆動出力
系統内IC通信線
信号(2) FR輪増圧リニアソレノイド電流モニタ FR輪制御禁止
FR輪増圧リニアソレノイドPWM出力
FR輪減圧リニアソレノイド電流モニタ
FR輪減圧リニアソレノイドPWM出力
FR輪W/C圧センサ信号モニタ
ACC アキュムレータ圧センサ信号モニタ
信号(3) RL輪増圧リニアソレノイド電流モニタ RL輪制御禁止
RL輪増圧リニアソレノイドPWM出力
RL輪減圧リニアソレノイド電流モニタ
RL輪減圧リニアソレノイドPWM出力
RL輪W/C圧センサ信号モニタ
【0024】
(他系統)
信号分類 信号内容 制御態様
(フェールセーフ手段)
信号(4) VMC2 油圧センサ電源電圧モニタ 系統2制御禁止
信号(5) FL輪W/C圧センサ信号モニタ FL輪制御禁止
信号(6) RR輪W/C圧センサ信号モニタ RR輪制御禁止
信号(7) PMC1 M/C圧センサ信号モニタ ブレーキ制御可
MC2 M/C圧センサ信号モニタ (ABS,VSC等の
KSストロークセンサ信号モニタ サービスブレーキ禁止)
【0025】
上記各種モニタ信号,出力,通信信号が正常に動作する限り、全輪がパワー供給部60からの液圧でブレーキバイワイヤ方式によりブレーキ制動される。しかし、マイクロコンピュータ10A,10Bの各接続端子A1 〜A7 のそれぞれに単独で故障又は接続不良が生じた場合、図4の表中に示すフェールセーフ手段の欄に示す禁止作動が行なわれ、1系統の2輪又は2系統のうちの1輪が制御禁止とされる。但し、図中のフェールセーフ手段の欄に示すように、信号(1)は系統1の制御禁止を必要とする性質の信号、信号(2)はFR輪制御禁止、信号(3)はRL輪制御禁止、信号(4)は系統2の制御禁止、信号(5)はFL輪制御禁止、信号(6)はRR輪制御禁止をそれぞれ必要とする性質の信号、又は信号群である。信号(7)は、単独の故障では、制御禁止せず4輪制御を継続する。但し、同じ信号群の中で複数の異常が検出された場合は、パワー供給部60の液圧が遮断され、ブレーキペダルの踏込によるマスタシリンダ圧で駆動前2輪が駆動される性質の信号である。
【0026】
図3から分かるように、信号(1)〜(7)を、例えば図3に示すマイクロコンピュータ10A,10Bの端子番号A1 〜A7 に一致する状態で入、出力させる端子割当とすると、この場合に例えば端子(3)〜(4)間でピン間ショートが生じたときは最小限1輪(FR)((3’)〜(4’)ではFL)が制御輪として残り、端子(1)〜(2)間でピン間ショートが生じたときは、フェールセーフ手段の作用により2つの制御輪が残り(他系統による制御輪)((1’)〜(2’)のときは自系統)、他の場合も必ず2輪(対角輪)が制御輪として残る。従って、図3のような信号の端子に対する入,出力割当による接続構造とすれば、隣接ピン間ショートの故障で2つの端子への入,出力信号が正しく作用しなくても、最小限1輪の制御輪を確保することができる。
【0027】
他の例として、図5に示すように、接続端子A1 〜A7 に対し信号線(1),(6),(3),(2),(5),(4),(7)をこの順序で割当てるように接続した場合に、隣接する端子間ピンショートが生じたとすると、図示のように、制御輪は少なくとも1輪、他の場合も必ず2輪(対角輪、又は前2輪,後2輪)が残る。従って、図5のような接続構造としても最小限1輪の制御輪を確保することができる。
【0028】
さらに他の例として、図6に示すように、接続端子A1 〜A7 に対し、信号線(1),(2),(3),(5),(6),(4),(7)をこの順序で割当てるように接続した場合に、隣接する端子間ピンショートが生じたとすると、図示のように、制御輪は少なくとも2輪が残る。従って、図6のような接続構造とすれば端子間ピンショートがいずれの端子間で生じても2輪以上の制御輪を確保することができる。このように、信号線の接続端子A1 〜A7 に対する接続状態を、信号線(4)が少なくとも信号線(1)に隣接せず、出来るだけ離れた位置に置く程、制御輪として残る可能性が高くなり、信頼性が向上することとなる。図6は信号線(4)を(1)から最も離れた位置とした場合である。
【0029】
上記の接続構造に対し、図7に示す接続構造とすると、ピン間ショートが接続端子A1 〜A2 で生じた場合、全輪の制御ができない場合が生じて不利となる。これは信号線(1),(4)が故障で正しく入,出力されないため、系統1,系統2のそれぞれの2輪の制御を禁止するからである。このようなピン間ショートが生じると、1故障で4輪全てのブレーキバイワイヤ制御が中止され、著しく制動力が低下してしまう。従って、このようなピン間ショートを予想すると、信号(1),(4)を隣接する端子へ入,出力することを回避する必要があることが分かる。
【0030】
なお、図3,5,6にマイクロコンピュータ10A,10Bの接続端子A1 〜A7 に接続される信号線(1)〜(7),(1’)〜(7’)の好ましい接続構造の例を示したが、この他にも上記信号線は種々の態様で接続可能である。但し、信号線(4),(4’)を(1),(1’)と少なくとも隣接しない配置とすることが最小限必要な条件である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造は、マイクロコンピュータの端子に各系統の制御を禁止する信号線を隣接させないように端子への割当て配置をして接続するようにしたものであり、2系統の電子制御回路を有する車載電子制御装置に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態のマイクロコンピュータ端子接続構造を備えた車載電子制御装置の要部概略ブロック図
【図2】同上の電子制御装置を適用する液圧ブレーキシステムの一例の要部概略系統図
【図3】マイクロコンピュータの端子への信号線接続構造の一例の説明図
【図4】信号線と信号内容とフェールセーフ手段による制御輪の関係の説明図
【図5】マイクロコンピュータの端子への信号線接続構造の他の例の説明図
【図6】マイクロコンピュータの端子への信号線接続構造の他の例の説明図
【図7】マイクロコンピュータの端子への信号線接続構造の不利な例の説明図
【符号の説明】
【0033】
10 マイクロコンピュータ
11 入力部
12 演算部
13 出力部
14 シリアル通信部
20 周辺IC(入力側)
21 シリアル通信バッファ
22 自系統禁止部
23 リレー制御部
24 電源監視部
30 周辺IC(出力側)
31 シリアル通信バッファ
32 自系統禁止部
33 他系統禁止部
34 電源監視部
35A AND回路
36 リニア駆動部
37 モータリレー駆動部
38 マスタカット弁駆動部
39 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対角線上の車輪ブレーキを制御する2系統のX配管系の液圧ブレーキシステムに対応して、液圧ブレーキシステムを制御するマイクロコンピュータ(10A,10B)と各マイクロコンピュータ(10A,10B)の入力側及び出力側の周辺IC(20,30)とを含む互いに独立の2系統の電子制御回路を設け、上記周辺IC(20,30)のいずれかに各系統の電子制御回路における故障による異常を検出する異常状態検出手段と、その検出手段からの異常検出信号により各系統の駆動部へ電源を供給する電源ラインにフェールセーフ手段を設け、フェールセーフ手段により各系統のブレーキバイワイヤ制御を遮断する車載電子制御装置において、各マイクロコンピュータ(10A,10B)の入力側及び出力側の周辺IC(20,30)とのセンサ,モニタ,リレー,制御信号等の各種入,出力信号の接続端子に対する接続を1故障ではブレーキバイワイヤ制御により少なくとも1輪以上が制御を継続するように設定し、制動力を確保するようにしたことを特徴とする車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造。
【請求項2】
前記マイクロコンピュータの接続端子に対し、禁止及び/又は遮断信号により各系統のブレーキバイワイヤによる制御を禁止する信号を入,出力する信号線を互いに隣接しない端子に接続するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造。
【請求項3】
前記車載電子制御装置により制御される液圧ブレーキシステムのブレーキ操作部がブレーキ踏込の所定以上のストローク及び液圧以上ではマスタシリンダの液圧を遮断し、パワー供給部の液圧によってブレーキバイワイヤ方式でブレーキ制動し、電子制御装置の電気的故障時にはマスタシリンダの液圧でブレーキ制動する液圧ブレーキシステムを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載電子制御装置のマイクロコンピュータ端子接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−335186(P2006−335186A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161250(P2005−161250)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】