説明

車輌検知システム

【課題】センサ設置のためのコストがかからず、しかも車輌の誤検知も少なく、また保守管理のコストも低減できる車輌検知システムを提供することにある。
【解決手段】超音波センサ部4は、車輌ロック装置1の袖部11bのハウジング外面に形成された両側の上向き傾斜面13に超音波送受波器40a、40bの送受波部位を臨ませて取り付けて、超音波の送受波の向きを上斜め向きとし、また袖部11aの内側側面にた超音波送受波器40cの送受波部位を臨ませている。また、超音波送受波器40a〜40cの受波信号の波形形態及び出力の時間差に基づいて車輌を検知し、ロック板11の起立制御のための車輌検知信号を出力する信号処理部41を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン式の駐車場に設置される車輌ロック装置に用いる車輌検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂コイン式の駐車場では、駐車スペースに車輌が進入したことを駐車スペースに設けたセンサが検知すると、当該駐車スペースに設けたロック板が起き上がって、車輌の退出を遮断するようにした車輌ロック装置が用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
駐車スペースに設けられて、車輌の進入を検知するセンサとしては、特許文献1に開示されているようなループコイルを用いたセンサ以外に、超音波センサ(例えば特許文献2)が用いられており、この超音波センサは、特許文献2に開示されているように、駐車スペースに設けた穴に埋設される構成となっていた。
【特許文献1】特許第2961429号公報
【特許文献2】特開2000−338239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されているように上述のような超音波センサを埋設する穴は送受波するために上面が開口しており、そのため穴内に流れ込む雨水を排水するための排水溝を設ける等の必要があった。
【0005】
一方コイン式の駐車場は、遊休地の活用として一時的に設置される場合が多く、上述のような排水溝等の掘削工事を行うことは施工コスト面で問題があった。
【0006】
また、穴を用いる場合には雨水以外にゴミなどが貯まりやすく、そのため超音波センサが機能しなくなるという恐れがあり、そのためゴミ除去等の保守管理のコストも高くなるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、超音波センサ部を用いる車輌検知システムにおいて、センサ設置のためのコストがかからず、しかも車輌の誤検知も少なく、また保守管理のコストも低減できる車輌検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、駐車エリアに設けたロック板を起立させることで車輌の前記駐車エリアからの退出を阻止する車輌ロック装置に用いられる車輌検知システムであって、前記駐車エリアへの車輌進入方向側若しくは退出方向側の少なくとも何れか一方の前記車輌ロック装置のハウジング外面に形成された上向き傾斜面に送受波部位を臨ませて取り付けられ、超音波の送受波の向きを上斜め向きとした超音波送受波器と、超音波送受波器の受波信号の波形形態に基づいて車輌とその他の反射物とを弁別検知して、車輌検知時に前記ロック板の起立制御のための検知信号を出力する信号処理部とを有する超音波センサ部を前記車輌ロック装置に一体に備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、車輌ロック装置を駐車スペースに設置するだけで、超音波センサ部の設置施行ができ、駐車スペースに超音波センサ部を埋設する穴や排水溝を設ける必要がないため、施工コストも低減でき、しかも超音波送受波器は送受波部位を車輌ロック装置のハウジング外面に形成された上向き傾斜面に臨ませて取り付ける構成であるため、ゴミが送受波部位に蓄積しにくく、その結果、日常的にゴミ除去を行う必要がなくなり、その結果保守管理のコストを低減することができ、更に送受波部位の超音波の送受波の向きを上斜め向きとしているので、車輌の床下での反射波の受波時間を長くし、残響波或いは送受波器自体の回り込み波の受波時間との識別性を良くし、更に受波信号の波形形態に基づいて車輌とその他の反射物とを信号処理部が弁別検知するので、人や動物が近接している場合にも誤検知することがなく、誤検知によるロック板の起立によって生じるトラブル発生を防ぐことができる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記車輌進入方向側及び退出方向側の車輌ロック装置の外面に夫々形成された上向き傾斜面に夫々に対応する前記超音波送受波器の送受波部位を臨ませ、前記信号処理部は、両超音波送受波器から出力される受波信号の波形形態及び出力される受波信号の時間差に基づいて車輌を検知することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、二つの超音波送受波器から出力される受波信号の波形形態及び時間差を用いて信号処理部が車輌検知を行うため、車輌検知の信頼性を向上させることができる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記ロック板側に向いた前記ハウジングの側面に送受波部位を臨ませた別の超音波送受波器を車輌ロック装置に設けていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、更に積雪時等における車輌検知の信頼性を向上させることができる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1乃至3の発明において、前記信号処理部は、前記超音波送受波器から出力される受波信号の波形形態から前記超音波送受波器の送受波部位への異物付着を判断して、異物付着検知信号を出力する検知機能を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、超音波センサ部自身で超音波送受波器の送受波部位への異物付着を検知でき、信号処理部からはその検知信号を出力するので、該検知信号に基づいて管理会社への通報等を行うことも可能となり、その結果、異物除去等の対処が迅速に行える。
【0016】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、前記信号処理部の検知機能は、前記超音波送受波器から地面反射の波形が出力されなくなった場合若しくは多重回反射波の波形が出力された場合に、異物付着と判断することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、吸音性の異物や、木の葉やシート類の付着を確実に検知できる。
【0018】
請求項6の発明では、請求項4又は5の発明において、前記車輌ロック装置には、前記信号処理部の異物付着検知信号の出力に応動して前記送受波部位の異物除去を行う異物除去手段を設けていることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明によれば、異物付着が検知された場合に、自動的にこの異物を除去することが可能となり、そのため人手を使わずに保守管理ができ、保守管理のコストを更に低減できる。
【0020】
請求項7の発明では、請求項1乃至6の何れかの発明において、前記超音波送受波器の送受波部位は、上向き傾斜面の表面よりもハウジング内側に位置していることを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明によれば、上向き傾斜面の表面にハンカチ等が乗った場合、超音波送受波器から送波される超音波が多重反射するため、スポンジのような吸音効果がなくなり、異物付着の識別が容易となる。
【0022】
請求項8の発明では、請求項7の発明において、前記ハウジング内側に位置する超音波送受波器の送受波部位が対向するハウジングの開口部位の大きさを前記送受波部位の外径よりも大きくしていることを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明によれば、超音波素受波器の指向性によって送波する超音波が広がっても、開口部位によって遮られることなく送波できる。
【0024】
請求項9の発明では、請求項4乃至8の発明において、前記ロック板上を車輌が通過するのを検出する通過検出用センサを設け、前記信号処理部は超音波送受波器の異物付着による車輌検知不可時に、通過検出用センサから出力される車輌の通過に対応する検知出力で車輌の有無を検知することを特徴とする。
【0025】
請求項9の発明によれば、超音波送受波器が異物付着によって車輌検知ができなくなった場合に、通過検出用センサで車輌がロック板を通過するのを検知することができ、それにより異物付着が解消するまでの駐車場の稼働率低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、車輌ロック装置を駐車スペースに設置するだけで、超音波センサ部の設置施行ができ、駐車スペースに超音波センサ部を埋設する穴や排水溝を設ける必要がないため、施工コストも低減でき、しかも超音波送受波器は送受波部位を車輌ロック装置のハウジング外面に形成された上向き傾斜面に臨ませて取り付ける構成であるため、ゴミが送受波部位に蓄積しにくく、その結果、日常的にゴミ除去を行う必要がなくなり、その結果保守管理のコストを低減することができ、更に送受波部位の超音波の送受波の向きを上斜め向きとしているので、車輌の床下での反射波の受波時間を長くし、残響波或いは送受波器自体の回り込み波の受波時間との識別性を良くし、更に受波信号の波形形態に基づいて車輌とその他の反射物とを信号処理部が弁別検知するので、人や動物が近接している場合にも誤検知することがなく、誤検知によるロック板の起立によって生じるトラブル発生を防ぐことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明を実施形態より説明する。
(実施形態1)
図2は、コイン式の駐車場を俯瞰した図を示しており、車輌Mが駐車する各駐車スペースSには本実施形態の車輌検知システムを備えた車輌ロック装置1が設置され、これら車輌ロック装置1と駐車場に設置された管理装置2との間は、管理装置2から車輌ロック装置1への電源供給を行う電源線や後述するロック板3の起立駆動等のための制御信号を管理装置2側から送る信号線、車輌検知システムの検知信号を管理装置2へ送るための信号線からなるケーブル(図示せず)により接続されている。
【0028】
本実施形態の車輌検知システムは図1(a)に示すように超音波センサ部4、後述する異物除去手段としてのファン装置5や融雪(融氷)用のヒータ装置6、異物が氷結した氷、或いは雪と判断するために用いる補助センサとしての温度センサ7、更にロック板3上を通過する車輌を検出する通過検出用センサとして歪みセンサ8とを備え、これらを車輌センサ装置1に一体に組み込んである。尚歪みセンサ8の代わりに、ショックセンサ、ループコイル式センサ、電波式センサ等を通過検出用センサとして用いても良い。
【0029】
超音波センサ部4は、例えば圧電セラミックを用いた送波用マイクロフォンと受波用マイクロフォンとを備えた、例えば3つの超音波送受波器40a〜40cと、送受波器40a〜40cの圧電セラミックに電圧を加えて超音波を送波させ、その送波後に各送受波器40a〜41cから出力される受波信号を入力してその受波信号の波形形態から後述するように反射要因となった反射物が車輌M、人や動物、更に送受波器40の送受波部位の付着異物等を弁別検知する検知機能を備えた信号処理部41とで構成される。
【0030】
そして、本実施形態では送受波器40a、40bを、車輌ロック装置1のロック板10の両側を配置される袖部11a,11bの内の袖部11b内に収納して、袖部11bのハウジングにおいて車輌進行方向及び車輌退出方向に夫々面するように形成した上向き傾斜面13に形成した開口部12から外部に臨ませ、夫々の送受波方向を斜め上向きとしてある。この開口部12の開口径は送受波器40a,40bの送受波部位の外径よりも大きくし、また送受波部位の位置と開口部12の開口面との間の距離を10mm程度としている。
【0031】
また送受波器40cを、ロック板10の駆動モータ等を収納する袖部11aのハウジング内に収納して、送受波部位をハウジングの内側の側面(ロック板10側)に形成した開口部12から外部に臨ませてある。
【0032】
そして送受波器40a、40bの送受波部位が臨む開口部12を囲むようその周辺のハウジングに夫々の袖部11a、11bに内装したファン装置5によって送られるエアーの吹き出し孔14を穿設してある。
【0033】
図3(a)に示すように例えば送受波器40aは前面部周囲に突出形成した鍔部41aにねじ孔41bを穿孔しており、例えば図3(b)に示すように上向き傾斜面13の開口部12に対応するハウジングの内側面に取り付けられた支持金具16を介してネジ15を締め付けることで、支持金具16に固定され、その送受波部位(前面)を開口部12に対向させている。
【0034】
支持金具16の基部にはヒータ装置6のニクロム線6aが配設され、支持金具14を介して送受波器40aをニクロム線6aで加熱できるようになっている。
【0035】
そして送受波器40aの後方にはファン装置5が配置されている。ファン装置5は袖部11bの底部に固定された支持板50とこの支持体50の上端部に取り付けられたモータ51と、このモータ51の出力軸に固定されたファン52とで構成され、モータ51が回転することで、ファン52によりエアーを開口部12の周辺の吹き出し孔14より外部に送り出すようになっている。
【0036】
尚送受波器40bも同様に取り付けられるとともに、ファン装置5及びヒータ装置6が付設される。
【0037】
ここで、車輌ロック装置1のロック板10は車輌進入側に配置されるもので、図4(a)に示すように袖部11a内に設けられた駆動モータ(図示せず)によって回転駆動されるパイプ状軸17に一端が連結されており、被ロック時には図示するように倒れて他端が駐車スペースSの路面上に当接し、車輌Mの進入が容易できるように傾斜面を構成し、ロック時には駆動モータによってパイプ状軸17が図において矢印(I)方向に回転駆動され、これによりロック板10を起立させ、車輌Mの退出ができないようにロックするようになっている。
【0038】
またロック状態からパイプ状軸17が反転駆動するように駆動モータを回転させることで、ロック板10は図示する被ロック状態に戻るようになっている。尚車輌退出方向側には傾斜板18が設けられ、車輌進入時や退出時に車輪がパイプ状軸17を支障なく越えられるようにしている。
【0039】
そして車輌進入を検知するための歪みセンサ8はパイプ状軸17内に収納され、ロック板10上を車輌Mが通過する際にロック板10に加わる過重を、パイプ状軸17を介して検知できるようにしている。尚歪みセンサ8は図4(b)に示すようにパイプ状軸17の内面に沿うように外径寸法を適合させた断面半月状の部材8aを用いてパイプ状軸17内に接着固定される。図中8bは信号出力用リード線である。
【0040】
さて本実施形態の中枢となる超音波センサ部4の信号処理部41は、各送受波器40a,40bから出力される受波信号の波形形態及び時間差によって反射物が車輌か否かの弁別検知を後述のように行う検知機能を備えており、この検知機能により車輌M、人や動物、更に異物付着を後述するように弁別し、車輌検知時には車輌検知信号を、異物付着の検知時には異物検知信号を管理装置2に出力するようになっている。また送受波器40a,40bが共に異物付着で正常でないと判断される場合に歪みセンサ8の検知信号によって車輌検知を行う機能も備えている。
【0041】
管理装置2は、超音波センサ部4から送られてくる信号が車輌検知信号か異物検知信号かを判別する信号判別部20と、信号判別部20が車輌検知信号と判断して出力する入車検知信号を受け、この入車検知信号が所定時間継続するか否かを判断する駐車確認部21と、駐車確認部21から駐車確認信号が出力されると、駐車時間のカウントを開始する駐車時間計測部22と、この駐車時間計測部22の計測時間で駐車料金を算出する駐車料金算出部23と、該駐車料金算出部23で算出された料金を各駐車スペースSに対応して表示する機能と当該料金に対応する現金の受け取りと釣り銭の支払い機構を備えた駐車料金精算部24と、前記駐車時間計測部22が駐車時間の計測を開始した時に、当該駐車スペースの車輌ロック装置1のロック板10を起立させるように車輌ロック装置1内の駆動モータ制御部26に制御信号を出力し、当該駐車スペースの駐車料金精算が終了したときにロック解除の制御信号を駆動モータ制御部26に送るロック制御部25とで構成され、信号判別部20は異物検知信号の入力がある場合には所定の管理会社へ電話回線等を用いて異物付着を管理センター等に通報する自動通報機能を備えている。
【0042】
次に本実施形態の車両検知システムの動作を図5、図6のフローチャート及び図7、図8の波形図により説明する。
【0043】
まず、システムがスタートすると、各送受波器40a、40bが動作を開始して、信号処理部41は送受波器40a,40bを動作させ(S2)、超音波送波を一定周期T(例えば0.1sec〜1.0sec)で行わせるとともに各送受波器40a,40bからの送波に同期させて受波信号を取り込む動作を開始する。
【0044】
この場合送受波器40の送波用マイクロフォンに一定時間電圧を印加して超音波を送波し、その後電圧印加を止めて反射波を受波する期間を設定する送受波動作を一定間隔で行う。ここで送波用マイクロフォンは電圧印加によって振動して超音波を送波するが、電圧印加が無くなっても振動を継続するため送波波形には残響波形W1が図7(a)に示すように含まれることになる。尚図中t0は電圧印加期間に対応し、t1は残響波形W1を含んだ送波期間を示す。
【0045】
そして信号処理部41は、各送受波器40a,40bの受波信号を順次チェックする動作を繰り返して行う。
【0046】
また信号処理部41は、温度センサ7の検知温度のチェックを開始し、所定温度以下となったことを検知した場合に、ヒータ装置6を通電して降雪や結氷に対して予め対処するようなっている。この動作は車輌検知とは無関係に常時行われる。
【0047】
一方信号処理部41の車輌検知の動作は次のように行われる。
【0048】
まず車輌進入時に先に車輌Mの床下からの反射波を受波する側の送受波器40aから出力される受波信号が出力されない(無信号状態)か否かを図5に示すようにチェックし(S1)、無信号状態、つまり地面以外の反射物体が無く、しかも地面反射による反射波(波形レベルが小さい)を含まない状態である場合には、当該送受波器40aの送受波部位に吸音性物質若しくは振動阻害物質が付着していると判断し管理装置2に異物付着検知信号を送出する(S2)後、次の送受波器40bの受波信号のチェック(S3)へ移行する。
【0049】
一方受波信号が出力されている場合にはステップS4の処理へ移行する。このステップS4では、信号処理部41は受波信号波形の継続時間txが、予め車輌検知時の受波信号波形W2の形態(図7(b)参照)の継続時間として設定した基準となる時間t2(例えば20ms)以上か否かをチェックする。尚図7(b)では車輌Mの反射波形を包絡線で示している。
【0050】
このチェックでt2未満と判定した場合には、信号処理部41は、残響波形を含めた基準となる時間t1より長く且つ一定レベル以上の波形形態が一定時間t3(例えば5ms)から一定幅±a(例えば±2ms)の範囲内に時間txが含まれるか否かをチェックし(S5)、範囲内であれば多重回反射と判定する。また一定レベル以下の受波信号波形が継続する(地面反射のみ)場合にはステップS3の送受波器40bの受波信号チェック(S3)へ移行する。
【0051】
さてステップS5において信号処理部41は多重回反射と判定した場合、当該送受波器40aに対応するファン装置5を例えば3分程度動作させ(S6)、吹き出し孔14から吹き出すエアーにより、多重回反射の原因となる木の葉やシート材を除去する処理を行う。図7(c)はこの多重回反射により受波信号波形W3の一例を示す。この図7(c)は受波信号波形を全て包絡線で示している。
【0052】
そしてファン装置5の運転停止後、受波信号の継続時間txが、時間t2(例えば20ms)以上か否かをチェックする(S7)。このチェックで時間txが時間t2未満であれば、ファン装置5による異物が除去されたなかったと判断し、信号処理部41は異物付着検知信号を管理装置2に送出し(S2)、送受波器40bの受波信号のチェック(S3)へ移行する。
【0053】
一方、時間txが時間t2以上であると判定した場合には、信号処理部41は、当該送受波器40aから受波信号の波形形態から車輌Mが検知されたと判断し、送受波器40aに対して送受波器40bにおける受波信号のチェック(S3)へ移行する。
【0054】
図8(a)は送受波器40aでの受波信号の波形(包絡波形)例を、また同図(b)は送受波器40bでの受波信号の波形(包絡波形)例を示している。これら波形例は車輌Mの床下からの反射波を受波している場合を示す。つまり、送受波器40aでは1回目の送波に対応する受波信号には残響波形(W1)のみであるが、2回目以降の送波に対応する受波信号には車輌Mの床下からの反射波形W2が含まれている。一方、送受波器40aでは1〜3回の送波に対応する受波信号には残響波形(W1)のみであるが、4回目以降の送波に対応する受波信号には車輌Mの床下からの反射波形W2が含まれている。つまり、送受波器40aで車輌Mによる反射波を受波してから例えば2周期遅れて送受波器40bでも車輌Mによる反射波を受波することになり、この遅れtsが車輌Mの進入移動に対応する。尚図では地面反射の反射波成分は省略している。
【0055】
さて、送受波器40bに対する受波信号のチェック以後の処理は、上述のS2,S4〜S7と同様な処理(S2’,S4〜S7’)を行う。
【0056】
この送受波器40bに対する処理において、送受波器40bのS5’で時間txがt3±a範囲外と判断された場合や、S7’’で当該送受波器40bの受波信号の波形形態から車輌Mが検知されたと判断された場合、更に異物付着検知信号送出(S2’)があると信号処理部41は最終判定処理S8へ移行する。
【0057】
この最終判定処理S8では図6に示すような処理が為される。
【0058】
つまり、両送受波器40a、40bの受波信号の波形形態とも車輌Mの床下からの反射波を含み且つ送受波器40aの車輌検知の受波信号の出力時から送受波器40bの車輌検知の受波信号の出力時までの時間差が検知エリア差によって生じる時間差(例えば1〜5sec)があると、つまり両送受信器40a、40bの受波信号による波形形態と時間差によって車輌検知されたか否かをチェックし(S81)、車輌検知されている場合には更に予め内蔵記憶部に記憶している人・犬等動物の反射波の波形形態と両送受波器40a、40bの受波信号の波形形態とのパターンを比較して人・動物か否かの判定し(S82)、人・動物でないと判定された場合には車輌検知信号を管理装置2へ送出する(S9)。一方、ステップS81で車輌検知されていないと判定された場合には、両送受波器40a、40bが共に異物付着による異常状態か否かをチェックし(S83)し、共に異常状態であれば、歪みセンサ8が車輌通過の検知信号を出力したか否かのチェックを行い(S84)、車輌通過の検知信号があれば車輌検知信号を出力する(S9)。歪みセンサ8の検知信号が出力されない場合には、ステップS1へ戻る。
【0059】
また両送受波器40a,40bの何れかが正常であれば、歪みセンサ8の検知信号による車輌検知判定は行わず、何れか送受波器40a,40bの一方の受波信号が車輌検知を示しているか否かのチェックし(S85)、受波信号が車輌検知信号が有れば、ステップS82による人・動物の判定を行い、人・動物でない場合に車輌検知信号を管理装置2へ送出する(S9)。これにより一方の送受波器40a又は40bの異常時にあっても駐車場の稼働率を高めることができる。
【0060】
ステップS82によって人・動物と判定された場合にはステップS1に戻る。尚両送受波器40a,40bによる受波信号の波形形態と時間差によって車輌検知と判定された場合でも、一方が人・動物と判定された場合には安全性を考慮して車輌検知信号を出力しない。
【0061】
さてステップS9の車輌検知信号出力後はステップS1に戻って上述の動作を繰り返すことになるが、管理装置2では車輌検知信号に基づいて、駆動モータ制御部26にロック板10を起立させるための制御信号を送ってロック板10を起立させる動作を行い、駐車料金が精算されるまで起立状態を維持させる。そして駐車料金が精算されロック板10が元の状態に戻り、車輌Mが駐車スペースSから退出するのに要する一定時間経過後から、車輌検知システムから送られてくる車輌検知信号を受け付ける状態に入る。
【0062】
以上のように本実施形態では、車輌ロック装置1と別に設置工事を行う必要がなく、施行コストの低減が図れ、その上送受波器40の送受波方向を上向き斜めとするため、車輌Mの床下からの反射波とその他の反射波との識別性を高めることができ、複数の送受波器40の受波信号の波形形態に基づいて車輌Mの検知を行うことで検知確度を高めることができ、しかも人や動物と車輌Mとを識別することで、人や動物が駐車スペースSに入り込んでいる場合におけるラッチ板1の起立によるトラブルを防ぐことができる。また異物付着時に除去できるものに対しては自動的に除去することで、保守管理を容易とし、また除去できない場合にも管理装置2を通じて管理センター等へ通報することができ、その結果、異物処理についての迅速な対処も可能となる。
【0063】
尚上述の構成では、歪みセンサ8を設けてあるが、歪みセンサ8を設けなくても良い。
【0064】
また積雪などの対策として、路面より高く位置する袖部11aの内側面に送受波器40cを図1,図4に示すように設けても良い。
【0065】
(実施形態2)
本実施形態は、送受波器40aを1つのみとし、例えば進入する車輌Mに対向する側のロック装置1の袖部11bの上向き傾斜面13に図9に示すように臨ませるように設けてあり、車輌検知をこの送受波器40のみとすることで、コストの低減が図れ、判断処理などもより簡単となる。尚本実施形態でも歪みセンサ8を設けても良いし、設けなくても良い。また積雪対策用の送受波器40cを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(a)は実施形態1の車輌検知システム及び管理装置の構成図、(b)は車輌ロック装置の斜視図である。
【図2】コイン式駐車場の一例を示す俯瞰図である。
【図3】(a)は実施形態1に用いる超音波送受波器の斜視図、(b)は実施形態1に用いる超音波送受波器の取り付け状態を示す車輌ロック装置の一部省略且つ破断せる断面図である、
【図4】実施形態1に用いる車輌ロック装置の一部者雨緑せる斜視図、実施形態1に用いる歪みセンサの拡大斜視図である。
【図5】実施形態1の動作説明用フローチャートである。
【図6】実施形態1の最終判定処理の動作説明用フローチャートである。
【図7】実施形態1の動作説明用波形図である。
【図8】実施形態1に動作説明用波形図である。
【図9】実施形態2の車輌ロック装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1 車輌ロック装置
11a、11b 袖部
12 開口部
13 上向き傾斜面
14 エアー吹き出し孔
2 管理装置
20 信号判定部
21 駐車確認部
22 駐車時間計測部
23 駐車料金算出部
24 駐車料金精算部
25 ロック制御装置
26 駆動モータ制御部
4 超音波センサ部
40a〜40c 超音波送受波器
41 信号処理部
5 ファン装置
6 ヒータ装置
7 温度センサ
8 歪みセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車エリアに設けたロック板を起立させることで車輌の前記駐車エリアからの退出を阻止する車輌ロック装置に用いられる車輌検知システムであって、
前記駐車エリアへの車輌進入方向側若しくは退出方向側の少なくとも何れか一方の前記車輌ロック装置のハウジング外面に形成された上向き傾斜面に送受波部位を臨ませて取り付けられ、超音波の送受波の向きを上斜め向きとした超音波送受波器と、
超音波送受波器の受波信号の波形形態に基づいて車輌とその他の反射物とを弁別検知して、車輌検知時に前記ロック板の起立制御のための検知信号を出力する信号処理部とを有する超音波センサ部を前記車輌ロック装置に一体に備えていることを特徴とする車輌検知システム。
【請求項2】
前記車輌進入方向側及び退出方向側の車輌ロック装置の外面に夫々形成された上向き傾斜面に夫々に対応する前記超音波送受波器の送受波部位を臨ませ、前記信号処理部は、両超音波送受波器から出力される受波信号の波形形態及び出力される受波信号の時間差に基づいて車輌を検知することを特徴とする請求項1記載の車輌検知システム。
【請求項3】
前記ロック板側に向いた前記ハウジングの側面に送受波部位を臨ませた別の超音波送受波器を車輌ロック装置に設けていることを特徴とする請求項1又は2記載の車輌検知システム。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記超音波送受波器から出力される受波信号の波形形態から前記超音波送受波器の送受波部位への異物付着を判断して、異物付着検知信号を出力する検知機能を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの1項に記載の車輌検知システム。
【請求項5】
前記信号処理部の検知機能は、前記超音波送受波器から地面反射の波形が出力されなくなった場合若しくは多重回反射波の波形が出力された場合に、異物付着と判断することを特徴とする請求項4記載の車輌検知システム。
【請求項6】
前記車輌ロック装置には、前記信号処理部の異物付着検知信号の出力に応動して前記送受波部位の異物除去を行う異物除去手段を設けていることを特徴とする請求項4又は5記載の車輌検知システム。
【請求項7】
前記超音波送受波器の送受波部位は、上向き傾斜面の表面よりもハウジング内側に位置していることを特徴とする請求項1乃至6の何れかの1項に記載の車輌検知システム。
【請求項8】
前記ハウジング内側に位置する超音波送受波器の送受波部位が対向するハウジングの開口部位の大きさを前記送受波部位の外径よりも大きくしていることを特徴とする請求項7記載の車輌検知システム。
【請求項9】
前記ロック板上を車輌が通過するのを検出する通過検出用センサを設け、前記信号処理部は超音波送受波器の異物付着による車輌検知不可時に、通過検出用センサから出力される車輌の通過に対応する検知出力で車輌の有無を検知することを特徴とする請求項4乃至8の何れかの1項に記載の車輌検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−151713(P2008−151713A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341861(P2006−341861)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】