説明

車間距離制御装置

【課題】自車の停止保持制御中に先行車が発進した場合、先行車の発進状態に応じて追従走行制御の再開を可能とする。
【解決手段】自車の停止保持制御中に先行車が発進したとき、先行車車速推定部12で先行車の車速と加速度とに基づいて発進から所定時間後の先行車の車速を推定し、ACC目標車速設定部13で先行車と自車との車間距離及び先行車の推定車速に基づいて追従走行の目標車速を設定する。そして、ACC再セット可否判定部14で目標車速を判定閾値と比較し、目標車速が判定閾値を超えているとき、ドライバのスイッチ操作入力によるACCの再セット許可と判定し、目標車速が判定閾値以下のときには、ACC再セット禁止と判定する。これにより、自車の停止保持制御中に先行車が発進した場合、先行車の発進状態に応じて追従走行制御の再開を可能とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車に対する車間距離を維持して追従走行制御を行う車間距離制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、レーザレーダ等を用いて自車の外界環境を認識し、安全確保や走行制御等を行う技術が開発されている。特に、走行制御に関して、レーザレーダ等によって認識した道路状況等から自車の車速や先行車との車間距離を自動制御する車間距離自動維持制御(ACC;Adaptive Cruise Control)システムが代表的な技術として実用化されている。
【0003】
このようなACC制御システムでは、先行車への追従走行中に先行車が減速して停止したとき、自車も減速して停止する。このとき、追従走行制御が解除され、ブレーキの作動状態を車両停止可能な状態に保持する停止保持制御に移行する。この停止保持制御中、先行車が発進した場合、自車を自動的に発進させるには、ドライバがスイッチ等をマニュアル操作して追従走行制御を再セットする。この再セットにより、停止保持制御が解除され、先行車の発進に追従して自車を発進させることができる。
【0004】
この追従走行制御の再セットによる停止保持制御から追従走行制御の再開に関して、例えば、特許文献1には、停止保持制御を解除して追従走行制御へ切り換える操作レバーを操作する等して自車を発進させる際、停止保持制御の解除後所定の間、停止保持制御を禁止する技術が開示されている。この特許文献1の技術は、追従走行制御の再セットによる自車の発進時に、車速の増加が遅い場合、自車が停止していると誤判断され、自車が発進しているにも拘わらず追従走行制御から停止保持制御に切り換えられてしまうことを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−1337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
停止保持制御を解除して追従走行制御を再開させる場合、ドライバのマニュアル操作を受け付けて追従走行制御の再セットを可能とする条件として、通常、先行車の車速が所定の閾値を超えた条件、或いは先行車との車間距離が所定の閾値を超えた条件を採用することが多い。
【0007】
しかしながら、前者の車速による条件では、車間距離が短い状態でも再セット可能となるため、再セットによるブレーキ解除直後に先行車が車速を落としたとき、例えば登坂では十分にエンジントルクを出力できずに後方にずり下がってしまうことが懸念される。
【0008】
一方、後者の車間距離による条件では、車間距離が近い状態で先行車が勢い良く発進した場合、すぐには再セット可能とならずに再セットのタイミングが遅れ、ドライバに鈍重なレスポンス感を与えてしまい、運転フィーリングが悪化する。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車の停止保持制御中に先行車が発進した場合、先行車の発進状態に応じて追従走行制御の再開を可能とすることのできる車間距離制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による車間距離制御装置は、自車前方の先行車を捕捉し、この先行車に対する車間距離を維持して追従走行制御を行う車間距離制御装置であって、少なくとも上記先行車と自車との車間距離及び上記先行車の車速に基づいて、上記追従走行制御の目標車速を設定する目標車速設定部と、上記先行車の停止に伴って自車が停止したとき、上記追従走行制御を解除し、自車を停止状態に維持するようブレーキの作動状態を保持する停止保持制御へ移行させる停止保持制御部と、上記停止保持制御中に上記先行車が発進したとき、発進から所定時間後の上記先行車の車速を上記先行車の加速度に基づいて推定し、推定車速を上記目標車速設定部に出力する先行車車速推定部と、上記停止保持制御中に上記先行車が発進したとき、上記推定車速を用いて設定される目標車速を判定閾値と比較し、ドライバの操作による上記追従走行制御の再セットを許可するか否かを判定する再セット可否判定部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自車の停止保持制御中に先行車が発進した場合、先行車の加速度、車速、車間距離による発進状態に応じてドライバの操作による追従走行制御の再セットを許可するか否かを判定するため、例えば、車間距離が近い状態から先行車がゆっくり発進した場合は、或る程度離れないと再セット可能とせず、近い状態から先行車が素早く発進した場合は、早期に再セット可能とすることができ、先行車の発進状態に応じて追従走行制御を再開させ、ドライバの意図に即した発進を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】クルーズコントロールシステムの全体構成図
【図2】ACC再セットに係る機能ブロック図
【図3】ACC再セット処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本実施の形態における車間距離制御装置は、先行車等の自車外部に存在する物体の検出デバイスとしてレーザーレーダを用いたクルーズコントロールシステムとして構成され、レーザレーダによる先行車の捕捉結果に応じて追従走行と定速走行とを自動的に切り換えるACC制御(Adaptive Cruise Control;車間距離自動維持制御)に係る各種機能を実現する。具体的には、図1に示すように、本実施の形態のクルーズコントロールシステム1は、CAN(Controller Area Network)通信バス100によるネットワークを介して接続された複数の制御ユニットで構成されている。
【0014】
システムの中心となるユニットは、レーザレーダ10aを一体的に備えたACC制御ユニット10であり、例えば、自車のフロントバンパ構造材に取り付けられている。レーザレーダ10aから出射されるレーザ光は、水平方向及び垂直方向の所定範囲で2次元走査され、送信波と外部のターゲットで反射されて受信された受信波との時間差に基づいて、2次元領域中の各点に対する距離情報が取得される。この距離情報からは、先行車と自車との車間距離、先行車の車速(相対車速)等が算出される。
【0015】
クルーズコントロールシステム1を形成する他の制御ユニットとしては、ブレーキ制御用のブレーキ制御ユニット20,EPB(ElectricalParkingBrake;電動パーキングブレーキ)の作動/解除を制御するEPB制御ユニット30,各種ディスプレイの表示制御を行うメータ制御ユニット40,パワーウインド、シートベルト、ドア等のボディ系制御用のボディ制御ユニット50,トランスミッション制御用の変速機制御ユニット60,エンジン制御用のエンジン制御ユニット70があり、これらの制御ユニットがACC制御ユニット10とネットワーク接続されている。
【0016】
また、ACC制御ユニット10には、ACC制御中の自動ブレーキ作動時にブレーキランプ2を点灯させるため、ブレーキランプリレー3のリレーコイルが接続されている。ブレーキランプリレー3は、その共通端子にブレーキランプ2が接続され、常閉接点端子がブレーキランプスイッチ4を介してバッテリ電源(+B)5に接続されると共に、常開接点端子がバッテリ電源5に接続されている。ブレーキランプスイッチ4は、図示しないブレーキペダルに連設され、ブレーキペダルの踏み込みによって接点が閉となるスイッチである。
【0017】
すなわち、ACC非作動状態では、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキランプスイッチ4がONし、ブレーキランプリレー3の常閉接点を介してバッテリ電源5からブレーキランプ2に電圧が印加され、ブレーキランプ2が点灯する。一方、ACC作動中は、ブレーキランプスイッチ4がOFFしたままでも、ブレーキランプ2の点灯/非点灯がACC制御ユニット10によって制御され、自動ブレーキ作動時には、ブレーキランプリレー3の常開接点が閉じられてバッテリ電源5からブレーキランプ2に電圧が印加されてブレーキランプ2が点灯する。
【0018】
尚、ブレーキペダルには、ブレーキランプスイッチ4に加え、ブレーキペダルの踏み込みによって接点が開となるブレーキランプスイッチ6が連設されている。このブレーキランプスイッチ6は、一方の端子がイグニッション(IGN)スイッチ7に接続され、他方の端子がエンジン制御ユニット70の入力側に接続されている。
【0019】
クルーズコントロールにおける車速や車間距離は、エンジン制御ユニット70に接続されるコマンドスイッチ80をユーザがマニュアル操作することで設定される。コマンドスイッチ80は、ステアリングに配置されたプッシュスイッチ及びトグルスイッチからなる操作スイッチであり、ACC制御システムの作動をON/OFFするメインスイッチであるクルーズスイッチ(図1中に「CRUISE」と表示)80a、ACC制御を解除するためのキャンセルスイッチ(図1中に「CANCEL」と表示)80b、その時の自車の速度でセットするためのセットスイッチ(図1中に「SET/−」と表示)80c、先行車と自車との車間距離を設定するための車間距離設定スイッチ80d、前回の記憶してあるセット車速で再セットするためのリジュームスイッチ(図1中に「RES/+」と表示)80eを有している。
【0020】
クルーズスイッチ80aがONされると、スイッチONの情報がエンジン制御ユニット70からCAN通信バス100を介して他の制御ユニットに送信され、システムが作動状態となる。このとき、メータ制御ユニット40により、インストルメントパネル内に設けられたディスプレイの「CRUISE」表示が点灯し、ACC制御システムの状態をドライバに提示する。
【0021】
このACC制御システムの状態を表示するディスプレイは、「CRUISE」の他、ACC制御への待機状態であることを示す「READY」、コマンドスイッチ80を介して車速等がセットされたことを示す「SET」の文字表示、先行車の捕捉状態やセットされた車間距離を示すグラフィック表示、セット車速の数値表示等を含むマルチファンクションディスプレイとして構成されている。
【0022】
ACC制御ユニット10と各制御ユニット20,30,40,50,70とは、CAN通信バス100を介して情報を送受信し、主として、エンジン制御ユニット70を介したスロットル制御、変速機制御ユニット60を介したシフト制御、ブレーキ制御ユニット20を介したブレーキ制御により、ドライバが設定した車速や車間距離を維持するよう制御する。
【0023】
すなわち、ACC制御ユニット10は、レーザレーダ10aによって検出する先行車の有無に応じて、ドライバによりセットされたセット車速での一定速走行と、セット車速を上限とする先行車への追従走行とを自動的に切り換える。先行車への追従走行では、自車と先行車との車間距離、車速(相対速度)、及び先行車の加速度に基づいて、ACC制御における目標車速を算出する。この目標車速は、例えば、少なくとも車間距離と車速とを軸とするマップ参照等によって算出され、エンジン制御ユニット70に送信される。エンジン制御ユニット70は、目標車速と現在の車速との偏差に応じたスロットル制御を実行し、自車の車速が目標車速となるよう制御する。
【0024】
また、勾配が下り坂で且つ現在のギヤ位置でのスロットルオフ制動力(エンジンブレーキ)では車間距離を維持できない(接近しすぎる)と判断した場合には、目標ギヤ位置をACC制御ユニット10から変速機制御ユニット60に送信する。変速機制御ユニット60は、目標ギヤ位置へのシフトダウン制御を実行し、車間距離を維持する。
【0025】
また、ACC制御ユニット10は、自車と先行車との車間距離、相対速度、及び先行車の減速度に基づいて、自車の要求減速度を算出し、この要求減速度を発生させるために必要なブレーキ液圧を算出してブレーキ制御ユニット20に要求液圧として送信する。ブレーキ制御ユニット20は、要求液圧に従ってブレーキ系の液圧を制御し、必要な減速度を発生させて自車を減速させる。
【0026】
このようなACC制御中、先行車の停止によって自車も停止(車速有→0)した場合には、自車を停止状態とするブレーキ液圧を保持する停止保持制御に移行し、先行車への追従制御が解除される。この停止保持制御の状態で先行車が発進し、先行車の発進に応じて自車を発進させる場合には、ドライバがアクセルを踏み込んで自車を発進させる、或いはセットスイッチ80cやリジュームスイッチ80eを操作してACC制御を再開させることによりブレーキを解除させる必要がある。
【0027】
本システムでは、ドライバのスイッチ操作(ACCの再セット)によるACC制御の再開は、従来のように一義的に先行車の車速或いは車間距離が閾値を超えただけではACC制御機能が有効にならないようにしている(ACCの再セット不可)。これは、単に先行車の車速のみで再セット可能とすると、車間距離が短い状態で再セットし、自車がブレーキ解除直後に先行車が車速を落とした場合、例えば登坂では十分にエンジントルクを出力できず、後方にずり下がってしまう虞があるからである。また、単に先行車との車間距離のみで再セット可能とすると、車間距離が近い状態で先行車が勢い良く発進した場合には、再セット可能となるまでに遅れが生じ、鈍重なレスポンス感となって運転フィーリングの悪化を招くからである。
【0028】
このため、本システムは、ACCの停止保持制御からのACC再セットに係る機能として、図2に示すように、停止保持制御部11、先行車車速推定部12、ACC目標車速設定部13、ACC再セット可否判定部14の各機能部を備えている。尚、本実施の形態では、これらの機能部は、ACC制御ユニット10に備えられるものとするが、ネットワークを介して接続される各制御ユニット、例えば、ACC制御ユニット10とエンジン制御ユニット70とで機能を分散するようにしても良い。
【0029】
停止保持制御部11は、ACC制御による追従走行中に先行車が減速して停止し、自車の減速によって停止したとき、ブレーキ液圧を自車を停止状態とする圧力に保持するよう指示し、停止保持制御を実行する。一方、停止保持制御中に、例えば、以下の(1)〜(6)に示すような状況になったときには、停止保持制御を解除する。
【0030】
(1)停止保持開始から所定時間が経過
このとき、EPBを作動させると同時にブレーキの液圧要求を解除する。
(2)変速レンジがパーキングレンジにシフトされた
(3)クルーズスイッチ80aがOFFされた
(4)EPB作動
停止保持開始から所定時間が経過していない場合であっても、ボディ制御ユニット50でドア開放やシートベルの開放を検知し、その情報がネットワークを介して通知されたときには、停止保持制御を解除し、安全確保のためにEPBを作動させる。
(5)キャンセルスイッチ80bが操作された
(6)変速レンジがDレンジ又はRレンジでドライバがアクセルを操作した
(7)ドライバがブレーキを操作した
(8)ACC(追従走行制御)がセットされたとき
セットスイッチ80cやリジュームスイッチ80eの操作入力によるACC制御(追従走行制御)の設定が有効となったとき、停止保持制御を解除する。
【0031】
先行車車速推定部12は、先行車への追従走行中、或いは先行車が停止状態から発進したとき、そのときの現在の先行車の車速及び加速度をレーザレーダ10aの測距データから算出し、算出した先行車の車速及び加速度に基づいて、所定時間後の先行車の車速を推定する。この先行車の車速推定結果は、ACC目標車速設定部13に送出され、以下に説明するように、先行車の停止による自車の停止保持制御中であっても、先行車が発進したときには、先行車の発進から所定時間後の車速が推定され、この推定車速を用いて目標車速が算出される。
【0032】
ACC目標車速設定部13は、先行車の有無に応じてACC制御の目標車速を設定する。レーザレーダ10aで先行車が検出されていない場合、ドライバがセットしたセット車速が目標車速として設定され、先行車が検出されている場合には、少なくとも、先行車と自車との車間距離、先行車の車速に基づいて、追従走行の目標車速が設定される。但し、追従走行中でなくとも、停止保持制御中に先行車が発進した場合には、先行車車速推定部12で推定した先行車の推定車速に基づいて、目標車速を設定する。また、追従走行の目標車速はセット車速を上限とする。
【0033】
ACC再セット可否判定部14は、停止保持制御部11による停止保持制御の実行中、ドライバによるセットスイッチ80cやリジュームスイッチ80eの操作入力を受け付けてACCの再セットを許可するか、スイッチ操作入力を無効としてACCの再セットを禁止するかを判定する。このACC再セットの許可/禁止は、ACC目標車速設定部13で設定された追従走行の目標車速を所定の判定閾値と比較することで判定し、目標車速が判定閾値を超えているとき、ACC再セット許可と判定し、目標車速が判定閾値以下のときには、ACC再セット禁止と判定する。
【0034】
このような本システムの再セット可否判定では、車間距離が近い状態から先行車がゆっくり発進した場合、或る程度離れないと再セット可能とならず、ブレーキ解除及びエンジンの出力トルクの不足によって坂道等で後方へずり下がってしまうこともない。また、先行車が自車に近い状態から素早く発進した場合には、先行車の加速度が目標車速に反映されているため、直ぐに再セット可能となり、自車を迅速に発進させることができる。また、先行車が離れている状態であれば、それだけで再セット可能となる。
【0035】
つまり、先行車の加速度と車間距離とを加味した目標車速を用いて再セットの可否を判定することにより、ドライバにとって「ブレーキを解除して発進したい場面」を忠実に判断することができる。また、ACCの目標車速そのものを用いるため、ブレーキを放したら必ず加速制御するので、坂道等で後方にずり下がることもない。
【0036】
尚、ACC再セット可否の判定条件として、目標車速に加え、舵角を判定条件に加えるようにしても良い。すなわち、停止保持制御中に、ドライバがステアリングを回転させて、そのステアリング操作を忘れてしまった場合、ACC再セットを許可すると、自動的にブレーキが解除されて車両が発進し、ドライバの予期しない進路に曲がる虞がある。従って、停止保持制御中に、目標車速が判定閾値を超えても、舵角が所定値より大きいときにはACCの再セットを許可しないことで、安全を確保することができる。
【0037】
また、ACC再セットによる発進時には、ブレーキを解除し終わった時点でエンジントルクを出力するのではなく、ブレーキを解除しながら、徐々にエンジントルクが増加するように制御することが望ましい。すなわち、坂道等では、後方にずり下がったり、下がらせないために、エンジントルクの出力が急峻になる傾向があり、車体が揺さぶられてしまい、ドライバに不快感を与える虞がある。
【0038】
従って、停止保持制御中に、路面の勾配を推定し、推定した路面勾配が所定値以上の登坂である場合には、ACC再セットによる発進時、路面勾配の推定結果に応じた時間変化率でブレーキ液圧を徐々に低下させると同時に、エンジンからは、ブレーキがかかっていないものとして制動力と対抗するように駆動トルクを出力させる。その結果、ブレーキを解除しながら同時に加速制御を行うことになり、徐々にエンジンの駆動トルクが増加しながらブレーキの制動力がぬけてゆき、車両発進時の挙動をマイルドなものすることができる。
【0039】
次に、以上のACC再セット可否判定に係るプログラム処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
このACC再セット可否判定処理では、先ず、最初のステップS1において、先行車の停止によって自車が停止し、停止保持制御を実行中か否かを判定する。そして、停止保持制御中でない場合には、本処理を抜け、ACC停止保持制御中であるとき、ステップS2へ進んで、先行車の発進を検出した場合、発進から所定時間後の先行車の車速を推定する。
【0041】
次に、ステップS3へ進み、先行車と自車との車間距離、及び発進から所定時間後の先行車の推定車速に基づいて、ACC制御(ACC制御再開時)の目標車速VTGTaccを設定する。そして、ステップS4で目標車速VTGTaccと所定の判定閾値Vholdとを比較し、目標車速VTGTaccが判定閾値Vholdを超えているか否かを調べる。
【0042】
その結果、VTGTacc>Vholdである場合、ステップS4からステップS5へ進んでACCの再セットを許可して本処理を抜ける。このACC再セット許可により、セットスイッチ80cやリジュームスイッチ80eからの操作入力が受け付け可能状態となる。例えば、インストルメントパネル内のACC用のディスプレイが「READY」の表示状態で、リジュームスイッチ80eを押すと、前回設定したセット車速がセットされ、先行車の発進に応じて自車をスムーズに発進させることができる。
【0043】
一方、ステップS4において、VTGTacc≦Vholdである場合には、ステップS4からステップS6へ分岐し、ACCの再セットを禁止して本処理を抜ける。この場合には、セットスイッチ80cやリジュームスイッチ80eを押圧操作しても、その操作入力が無効となり、車間距離が近い状態から先行車がゆっくり発進してもブレーキが解除されず、勾配路でのエンジントルク不足による車両のずり下がり等を確実に防止することができる。
【0044】
尚、ACC再セットの可否を判定するための判定閾値Vholdは、例えば、車両特性とドライバの感性評価試験結果等を考慮して決定される。
【0045】
このように本実施の形態においては、自車の停止保持制御中に先行車が発進した場合、先行車の加速度と車間距離とを加味した目標車速を用いて再セットの可否を判定する。このため、先行車の発進状態に応じて追従走行制御を再開させ、ドライバの意図に即した発進を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 クルーズコントロールシステム
10 ACC制御ユニット
10a レーザレーダ
11 停止保持制御部
12 先行車車速推定部
13 目標車速設定部
14 再セット可否判定部
80 コマンドスイッチ
Vhold 判定閾値
VTGTacc 目標車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車前方の先行車を捕捉し、この先行車に対する車間距離を維持して追従走行制御を行う車間距離制御装置であって、
少なくとも上記先行車と自車との車間距離及び上記先行車の車速に基づいて、上記追従走行制御の目標車速を設定する目標車速設定部と、
上記先行車の停止に伴って自車が停止したとき、上記追従走行制御を解除し、自車を停止状態に維持するようブレーキの作動状態を保持する停止保持制御へ移行させる停止保持制御部と、
上記停止保持制御中に上記先行車が発進したとき、発進から所定時間後の上記先行車の車速を上記先行車の加速度に基づいて推定し、推定車速を上記目標車速設定部に出力する先行車車速推定部と、
上記停止保持制御中に上記先行車が発進したとき、上記推定車速を用いて設定される目標車速を判定閾値と比較し、ドライバの操作による上記追従走行制御の再セットを許可するか否かを判定する再セット可否判定部と、
を備えることを特徴とする車間距離制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−240927(P2011−240927A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160224(P2011−160224)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【分割の表示】特願2010−106410(P2010−106410)の分割
【原出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】