転がり案内装置及びローラ連結体
【課題】 ローラのスキューを確実に防止し、しかも直線運動案内装置の剛性を上げることができる転がり案内装置を提供する。
【解決手段】 転がり案内装置は、ローラ転走面1b…を有する軌道レール1と、ローラ転走面1b…に対応する負荷ローラ転走面4d…を含むローラ循環路を有して、該軌道レール1に相対運動自在に組み付けられる移動ブロック2と、ローラ循環路内に配列・収容されて、軌道レール1に対する移動ブロック2の相対運動に併せて循環する複数のローラ3…とを備える。ローラ3…は、略1.5<L/Da<略3の比を持つ。略1.5<L/Daとすることにより、ボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなる。また、L/D<略3とすることにより、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。
【解決手段】 転がり案内装置は、ローラ転走面1b…を有する軌道レール1と、ローラ転走面1b…に対応する負荷ローラ転走面4d…を含むローラ循環路を有して、該軌道レール1に相対運動自在に組み付けられる移動ブロック2と、ローラ循環路内に配列・収容されて、軌道レール1に対する移動ブロック2の相対運動に併せて循環する複数のローラ3…とを備える。ローラ3…は、略1.5<L/Da<略3の比を持つ。略1.5<L/Daとすることにより、ボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなる。また、L/D<略3とすることにより、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軌道軸と移動部材との間に転がり運動するローラを組み込んだ転がり案内装置、及びローラを回転・摺動自在に保持するローラ連結体に関する。
【0002】
【従来の技術】転がり案内装置は、軌道レールと、多数の転動体を介して軌道レールに沿って移動自在に設けられた移動ブロックと、軌道レールと移動ブロックとの間に組み込まれる複数のローラを備える。図1はローラが組み込まれた転がり案内装置を示す。移動ブロック101が軌道レール104に対して移動すると、ローラ転走面102,102間の負荷域Aのローラ100…が転がり運動し、無負荷域Bのローラ100…を押し出す。無負荷域Bのローラ100…は反対側の負荷域Aに押し込まれ、これによりローラ100…が移動ブロック101に設けられたローラ循環路を循環する。
【0003】ボールは球体であるため回転軸が無限に存在する。よってあらゆる方向に臨機応変に移動することができる。しかし、ローラ100・・・は円筒形をしているため回転軸が1つしか存在しない。よって移動方向はたったの一方向に限られてしまい、回転軸と進行方向との直角が保たれていなければならない。ローラ100・・・を使用した直線運動案内装置では、移動ブロック101のローラ転走面102と軌道レール104のローラ転走面102との平行が狂っていたとき、または移動ブロック101に偏荷重が作用したときなど、図2に示すようにローラ100・・・の回転軸105と進行方向との直角が保たれなくなることがある。このようにローラ100・・・が正規の回転軸に対して傾く現象をスキューという。ローラ循環路にローラ100…のみを多数組み込んだ総ローラタイプの直線運動案内装置にあっては、ローラ100…がその回転軸方向の端面で移動ブロック101に形成したつば103と接触し、これによりローラ100…のスキューが防止されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この直線運動案内装置に荷重が作用すると、転動体、移動ブロック及び軌道レールが弾性変形する。荷重が作用したときの、転動体、移動ブロック及び軌道レールが変形しにくい程度は、直線運動案内装置の剛性と言われる。この直線運動案内装置の剛性は、一般に転動体としてボールを組み込んだ場合よりもローラ100・・・を組み込んだ場合の方が大きい。ローラを組み込んだ直線運動案内装置の剛性は、ローラ100・・・の数と回転軸方向の長さによって決定される。ローラの数が多く、ローラ100・・・の回転軸方向の長さが長ければ直線運動案内装置の剛性が上がる。すなわち、細長い細長ローラを多数組み込むのが剛性を上げるためには効果的である。
【0005】しかし、剛性を上げるために細長ローラを使用した場合、ローラの回転軸方向の長さに対してローラの端面とつばとの接触面積が大きくとれないので、ローラのスキューが生じ易く、この結果、ローラが自転しなくなる現象(ロック)、発熱、あるいはローラが負荷域の際に起こる振動によりテーブルが振動する現象(ウェービング)等の不具合が生じる。
【0006】そこで、本発明は、ローラのスキューを確実に防止し、しかも剛性を上げることができる転がり案内装置及びローラ連結体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものでない。
【0008】本発明者は、ローラの回転軸方向の長さとローラの直径の比を所定の範囲に設定することによって、ローラのスキューを確実に防止し、しかも転がり運動案内装置の剛性を上げることができることを知見した。
【0009】具体的には請求項1の発明は、ローラ転走面(1b…)を有する軌道軸(1)と、前記ローラ転走面(1b…)に対応する負荷ローラ転走面(4d…)を含むローラ循環路を有して、該軌道軸(1)に相対運動自在に組み付けられる移動部材(2)と、前記ローラ循環路内に配列・収容されて、前記軌道軸(1)に対する前記移動部材(2)の相対運動に併せて循環する複数のローラ(3…)とを備える転がり案内装置において、前記ローラ(3…)は、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とする転がり案内装置により上述した課題を解決した。
【0010】まず、略1.5<L/Daとした根拠について説明する。転動体としてローラを用いた転がり案内装置(ローラ仕様の転がり案内装置)と転動体としてボールを用いた転がり案内装置(ボール仕様の転がり案内装置)とで同等の型番同士について、L/Daを種々変化させながら基本静定格荷重を求めた。ここで、基本静定格荷重とは、転動体、移動部材及び軌道軸の変形量の和が許容限度になるときの荷重をいい、ローラ仕様及びボール仕様におけるそれぞれの基本静定格荷重の算定式を用いている。そのときの条件は以下のとおりである。
【0011】(条件1)ローラ仕様の転がり案内装置及びボール仕様の転がり案内装置において、図3に示すように、ローラの有効長Lをボールの直径Dbと略等しく設定した。これは概ね次の理由による。移動部材としての移動ブロックの寸法は、転動体の種類(ローラ、ボール)に拘らず形番ごとに所定値に決定される。そして、ボールの場合は直径Dbが、ローラの場合は長さLと直径Daが、移動ブロックの寸法の範囲内で方向転換等の動きが可能となる最大寸法に設定される。同一の形番の移動ブロックに最大寸法のボール及びローラを挿入しようとすると必然的にL≒Dbとなる。
【0012】(条件2)ローラ仕様の転がり案内装置としては、図8及び図9に示すような実施形態に記載の転がり案内装置を用いた。一方、比較すべきボール仕様の転がり案内装置としては、図4に示すような構造の転がり案内装置を用いた。この転がり案内装置は、ボール仕様でありながらローラ仕様と同等の剛性を発揮させるべく本出願人によって開発されたもの(本出願人の形番NRS)である。現在他社の製品も含め、市販されているボール仕様の転がり案内装置として最大の基本静定格荷重を有する。
【0013】ボール仕様の転がり案内装置の構造の概略構成を説明する。移動ブロック110の下面と軌道レール111の上面との間に2条のボール列112,112が設けられ、移動ブロック110の内側面と軌道レール111の外側面との間には、左右一列ずつ合計2条のボール列113,113が設けられる。この転がり案内装置の特徴として、移動ブロック110のボール転走溝110a及び軌道レール111のボール転走溝111aは、高荷重を受けられるように深溝に形成されている。また、ボール114と移動ブロック110のボール転走溝110aとの接点、及びボール114と軌道レール111のボール転走溝111aとの接点を結んだ接触各線116,117は、水平線に対してそれぞれ45°となり、ラジアル荷重、逆ラジアル荷重、水平方向荷重が均等に受けられるようになっている。
【0014】上述のローラ仕様の転がり案内装置及びボール仕様の転がり案内装置において、L/Daを種々変化させながらローラ仕様及びボール仕様それぞれの算定式を用いて基本静定格荷重を求めた。その結果、ローラ仕様の基本静定格荷重がL/Da≒1.5を境としてボール仕様の基本静定格荷重を上回ることが判明した。図5はL/Da=1.5とした場合のローラ仕様の基本静定格荷重Coと、ボール仕様の基本静定格荷重Coとを比較したグラフを示す。この図5からL/Da=1.5とすると、すべての形番においてローラ仕様の基本静定格荷重Coがボール仕様の基本静定格荷重Coを上回ることがわかる。これに対し、L/Daの値が1.5以下であると、ボール仕様の基本静定格荷重よりもローラ仕様の基本静定格荷重が劣り、ローラを使用する意味がなくなることがわかった。
【0015】したがって、略1.5<L/Daとすることにより、ボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなり、ローラを使用することの妥当性、つまり剛性増大の効果が得られる。
【0016】次に、L/Da<略3としたことの根拠について説明する。ローラに面取りがあることを考慮するとローラが正規の回転軸に対して傾くスキュー角βは以下の式1で表される。
【0017】
【式1】
【0018】ここで、図6に示すように、Lはローラの長さ、L+ΔLは溝幅、bはローラをつばにぴったり押し付けた場合つばと接触する幅、ζ=ΔL/L≒0.01〜0.1である。この角度算出式を用い、L/Daの値を種々変化させ、横軸をΔL/L(=ζ)、縦軸をスキュー角βとするグラフを描くと図7のようになる(但しDa=2b)とした。また、L/Da値の変化は1.5,3及び4について行った。
【0019】この図7から明らかなように、ΔL/L−βの変化率がL/Da≒3を境にして急激に大きくなる。たとえばL/Da=4では、ΔL/Lの値が約0.02から約0.025まで、つまり僅かに0.005増加しただけでスキュー角が約6°から約10°まで大きく変化してしまう。よって、スキュー角を小さく抑えるためには、軸方向隙間ΔLの管理を極めて厳密に行わなければならず、コストが高くなる等の不都合がある。これに対してL/Daを略3以下に設定すると、ΔL/L−βの変化率が比較的緩やかで、ΔLの設定に若干の誤差が生じようとも、スキュー角にはそれ程大きな影響は与えない。すなわち、L/Daを略3以下とすることによって、軸方向隙間ΔLの寸法管理を緩めることができる。
【0020】したがって、L/Da<略3とすることで、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。また、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にする必要がないので、転がり案内装置の低コスト化を図ることができる。
【0021】また、請求項2の発明は、請求項1に記載の転がり案内装置において、前記複数のローラ(3…)は回転軸を互いに平行にした状態で配列され、前記複数のローラ(3…)を回転・摺動自在に保持するローラリテーナ(10)を備え、前記ローラリテーナ(10)は、前記ローラ(3,3)間に介在された複数の間座部(46…)と、前記間座部(46…)各々を連結する可撓な連結部(47,47)とを有することを特徴とする。
【0022】この発明によれば、ローラリテーナがローラを所定の姿勢に整列させるので、ローラにスキューが発生するのを防止できる。また、このローラリテーナは、たとえスキューが発生しても、連結部の弾性復元力によりローラが再び所定の自転軸を保つようにローラのスキューを修正する。このようにローラリテーナは、ローラを所定の姿勢に整列させる効果とローラのスキューを蓄積させない効果をもつ。ローラリテーナを設けることによって、ローラの直径と長さとの比をL/Da<略3とすることによる上述の効果と相俟って、ローラのスキューをより確実に防止することができる。
【0023】また、請求項3の発明は、請求項2に記載の転がり案内装置において、隣り合う前記ローラ(3,3)の外周面に形状を合わせた凹面(49,49)を両側に有することを特徴とする。
【0024】この発明によれば、上記凹面がローラを保持することにより、移動部材(2)を軌道軸(1)から外した際、ローラ(3,3)がローラリテーナ(10)から、したがって移動部材(2)から脱落することが防止されると共に、凹面とローラ間に充分な潤滑剤が溜り、潤滑作用上も好適である。
【0025】さらに、請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の転がり案内装置において、前記連結部(47,47)は、前記ローラ(3…)の回転軸方向の端面から外側に張り出していることを特徴とする。
【0026】さらに、請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の転がり案内装置において、前記移動部材(2)の前記ローラ循環路に沿って、前記連結部(47,47)を案内する案内部(11a,12a,13a,20a)が形成されることを特徴とする。
【0027】なお、ここで言う「案内」とは、好ましくは下記の状態を指す。
【0028】すなわち、ローラリテーナの上記連結部(47,47)と上記案内部(11a,12a,13a,20a)との間には寸法上で若干の隙間が設けられ、ローラリテーナが少しでも蛇行したり方向転換したりする場合に連結部が案内部の壁面に接触する状態である。つまり、連結部と案内部とが常に接触しているものではない。常に接触する構成とすることも可能であるが、上記のように両者の間に隙間を設けておくことで両者の接触による抵抗が小さく抑えられ、移動部材(2)の運動抵抗が小さくなる。
【0029】この発明によれば、ローラリテーナが案内部によってローラ循環路において所定の軌道を保つように案内される。これにより、ローラリテーナに保持されるローラも所定の軌道を保つので、より一層ローラのスキューを防止することができる。
【0030】また、本発明は、請求項6に記載のように、回転軸を互いに平行にして配列される複数のローラ(3…)と、前記ローラ(3…)間に介在され、隣り合う前記ローラ(3,3)の外周面に形状を合わせた凹面(49,49)を両側に有する複数の間座部(46…)、及び前記間座部(46…)各々を連結する可撓な連結部(47,47)とを有するローラリテーナ(10)とを備え、前記ローラ(3…)は、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とするローラ連結体としても構成できる。
【0031】また、請求項7の発明は、請求項6に記載のローラ連結体において、隣り合う前記ローラ(3,3)の外周面に形状を合わせた凹面(49,49)を両側に有することを特徴とする。
【0032】さらに、請求項8の発明は、請求項6又は7に記載のローラ連結体において、前記連結部は前記ローラの回転軸方向の端面から外側に張り出していることを
【0033】
【発明の実施の形態】図8および図9は、本発明の第1の実施形態における転がり案内装置としての直線運動案内装置を示す。図8は直線運動案内装置の分解斜視図を示し、図9は組立てた直線運動案内装置の側面図、及び軌道レールの長手方向と直交する方向の断面を示す。直線運動案内装置は、直線状に延びる軌道軸としての軌道レール1と、この軌道レール1に多数の転動体としてのローラ3…を介して移動自在に組付けられた移動部材としての移動ブロック2とを備えている。
【0034】軌道レール1は断面略四角形状で細長く延ばされる。軌道レール1の左右側面には、長手方向に沿って断面略V字状の溝1aが形成される。図9に示すように、溝1aは壁面1b,1bおよび底面1cを有する。溝1aの両壁面1b,1bは、90度の角度で交差する。そして、上側の壁面1bおよび下側の壁面1bそれぞれが、ローラ3…が転走するローラ転走面1b,1bとされる。軌道レール1の左右側面には、上下に2条ずつ、合計4条のローラ転走面1b,1bが設けられている。
【0035】移動ブロック2は、軌道レール1の上面に対向する水平部2aと、水平部2aの左右両側から下方に延び、軌道レール1の左右側面に対向する袖部2b,2bとを備える。左右袖部2b,2bには、それぞれ2つずつ合計4つのローラ循環路が形成されている(図9参照)。
【0036】まず、ローラ循環路について説明する。図9に示すように、移動ブロック2の袖部2b,2bには、上下2条の負荷ローラ転走面4d,4dが形成される。この負荷ローラ転走面4d,4dとローラ転走面1b,1bとの間がローラ循環路の負荷域を構成する。
【0037】また、袖部2b,2bには、負荷ローラ転走面4d,4dと所定間隔を隔てて平行に、上下2条のローラ逃げ通路7,7が設けられる。このローラ逃げ通路7,7がローラ循環路の無負荷域を構成する。
【0038】さらに、袖部2b,2bには、負荷ローラ転走面4d,4dとローラ逃げ通路7,7の両端を接続し、ローラ3…を循環させるU字状の方向転換路8,8が設けられる。方向転換路8,8は、上側の負荷ローラ転走面4bと下側のローラ逃げ通路7間、および下側の負荷ローラ転走面4bと上側のローラ逃げ通路7間を立体交差するように接続している。この方向転換路8,8もローラ循環路の無負荷域を構成する。
【0039】これらの負荷ローラ転走面4d,4d、一対の方向転換路8,8、およびローラ逃げ通路7,7によって環状のローラ循環路が構成される。各ローラ循環路は一平面内に形成され、ローラ3…は各ローラ循環路内を2次元的に循環する。一方のローラ循環路が位置する平面と他方のローラ循環路が位置する平面とは直交する。また、一方のローラ循環路は他方のローラ循環路の内周側に配置されている。
【0040】図8に示すように、移動ブロック2は、鋼製のブロック本体4と、ブロック本体4に組み込まれる樹脂循環路成形体11,12,13,15a,15b,20と、樹脂循環路成形体11,12,13,15a,15b,20が組み込まれたブロック本体4の端面に装着される一対の側蓋5,5とを備える。ブロック本体4の袖部4b,4bには、軌道レール1の側面に設けた溝1aに形状を合わせた突出部4c,4cが形成される。この突出部4c,4cには、ローラ転走面1b,1bに対応する負荷転動体転走部としての2条の負荷ローラ転走面4d,4dが形成される(図9参照)。負荷ローラ転走面4d,4dは、ブロック本体4の左右袖部4b,4bの上下に2条ずつ合計4条設けられる。なお、この実施の形態においてローラ転走面1b,1b、負荷ローラ転走面4d,4dは、左右に2条ずつ合計4条形成されているが、その条数は直線運動案内装置の種類によって種々に設定することができる。
【0041】樹脂循環路成形体は、負荷ローラ転走面4d,4dの両側縁に沿って延びると共に軌道レール1から移動ブロック2を外した際に負荷ローラ転走面4d,4dからのローラ3…の脱落を防止する保持部材11,11,12,12,13,13、ローラ3…を戻す逃げ通路構成部材14,14、および方向転換路の内周案内部を構成する内周案内部構成部材15a,15a,15b,15bを備える。保持部材11,11,12,12,13,13、逃げ通路構成部材14,14、および一対の内周案内部構成部材15a,15a,15b,15bそれぞれは、ブロック本体4とは別体に樹脂で成形され、ブロック本体4に組み込まれる。
【0042】保持部材は、図9に示すように、下側のローラ3…の下方側を保持する第1保持部材11,11と、下側のローラ3…の上方側および上側のローラ3…の下方側を保持する第2保持部材12,12と、上側のローラ3…の上方側を保持する第3保持部材13,13とから構成される。これらの保持部材がローラ3・・・を軸方向に案内するつばとしての機能する。
【0043】図8に示すように、第1保持部材11,11は、薄肉かつ長尺の樹脂成形品からなる。第1保持部材11,11をブロック本体4に組み込むことによって、後述するローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝11a(図9参照)が形成される。この第1保持部材11,11は、一対の側蓋5,5間に挟まれることによって、両端が支持された状態で移動ブロック2に取り付けられている。
【0044】第2保持部材12,12は、薄肉かつ長尺の樹脂成形品からなる。第2の保持部材12,12には、ローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝12a,12a(図9参照)がその両側に形成されている。この第2保持部材12は、一対の内周案内部構成部材15a,15a間に挟まれることによって、両端が支持された状態で移動ブロック2に取り付けられている。
【0045】第3保持部材13,13は、薄肉かつ長尺の樹脂成形品からなる。第3の保持部材13,13を、ブロック本体4に組み込むことによってローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝13a(図9参照)が形成される。この第3保持部材13,13は、第1保持部材11,11と同様に、一対の側蓋5,5間に挟まれることによって、両端が支持された状態で移動ブロック2に取り付けられている。
【0046】逃げ通路構成部材14,14は、パイプを回転軸方向に2分割したパイプ半体14a,14bから構成される。これらのパイプ半体14a,14bそれぞれは、長手方向に沿ってローラ3…の形状に合わせた溝20と、ローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝20a(図9参照)と、溝の両側縁に沿って長手方向に延びるフランジ19とを備える。この逃げ通路構成部材14,14によってローラ逃げ通路7,7が形成される。
【0047】内周案内部構成部材15a,15bは、軌道レール1の長手方向に2分割されている。2つの内周案内部構成部材15a,15bを組み合わせると、立体交差したU字状の方向転換路が形成される。また、この方向転換路にはローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝が形成されている。移動ブロック2側(内側)の分割体15aには、内周側のローラ循環路の内周案内部21が形成される。この内周案内部21は、略半円の円弧状に形成される。側蓋側(外側)の分割体15bには、内周側のローラ循環路の外周案内部31および外周側のローラ循環路の内周案内部32が形成される。これらの内周案内部32および外周案内部31は、略半円の円弧状に形成される。
【0048】側蓋5,5は、ブロック本体4と断面形状を合せ、水平部5aと左右一対の袖部5b,5bとを備えている。袖部5b,5bには外周側のローラ循環路の外周案内部36,36が形成される。また、袖部5b,5bには組み合わせた内周案内部構成部材15a,15bが嵌め込まれる。
【0049】図8に示すように、側蓋5,5はブロック本体4の両端に取り付けられる。側蓋5,5に形成されたボルト挿入孔にボルトを挿入し、ブロック本体4の端面に形成されたねじ孔にボルトをねじ込むことによって、側蓋5,5がブロック本体4に締め付け固定される。また、これにより、内周案内部構成部材15a,15bがブロック本体4に固定される。なお、側蓋5,5の外側には、化粧プレート38,38が取り付けられる。
【0050】図10は、ローラ循環路を循環するローラ3を示す。図中(A)は軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック2の負荷ローラ転走面4dとの間の負荷域を転がるローラ3を示し、図中(B)は無負荷域となる逃げ通路7を移動するローラを示す。
【0051】図中(A)に示すように、負荷域のローラ循環路はローラ3の断面形状に合わせて断面四角形に形成される。移動ブロックには上記保持部材11,11,12,12,13,13によって、ローラ3の回転軸方向の端面を案内するつば41,41が形成される。両つば41,41間の距離L+ΔLは、軸方向すきまΔLが生じるようにローラ3の回転軸方向の長さLよりも僅かに長く設定される。ζ=ΔL/Lは、例えば0.02〜0.07の範囲に設定される。この両つば41,41には、後述するローラリテーナ10の一対の連結ベルトを案内する案内溝11a,12a,13aが形成される。
【0052】図中(B)に示すように、無負荷域のローラ循環路もローラ3の断面形状に合わせて断面四角形に形成される。移動ブロック2には、逃げ通路構成部材14,14によってローラ3の回転軸方向の端面を案内するつば43,43が形成される。両つば41,41間の距離L+ΔLは、上記負荷域のローラ循環路と同様に、軸方向すきまΔLが生じるようにローラ3の回転軸方向の長さよりも僅かに長く設定される。この両つば43,43には、後述するローラリテーナ10の一対の連結ベルトを案内する案内溝20a,20aが形成される。また、無負荷域のローラ循環路の内周案内面51と外周案内面52との間の寸法は、ローラ3の外周との間に僅かな隙間が生じるようにローラ3の直径よりも僅かに大きく設定される。
【0053】図11は、ローラ3の直径Daと長さLとの比を示す。図中(A)はL/Da=1.5としたローラ3を示し、図中(B)はL/Da=3としたローラ3を示す。ローラ3の直径Daと長さLとの比はこの範囲内で任意に設定される。
【0054】本実施形態では、略1.5<L/Daとすることにより、上述のようにボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなり、ローラを使用することの妥当性、つまり剛性増大の効果が得られる。また、L/Da<略3とすることにより、図12(A)に示すように、ローラ3の回転軸方向の長さLに対してローラの直径Daが大きくなる。そして、上述のように軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。これに対して、L/Da>3とすると、図12(B)に示すようにローラ3が針状になり、軸方向隙間ΔLの寸法管理を厳密にしないとスキュー角αが大きくなってしまうのは避けられない。
【0055】図13は、ローラ3…が組み込まれたローラ連結体を示す。図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は正面図を示す。ローラ3…はローラリテーナ10によってチェーンのように一連に連鎖されている。4列のローラ循環路それぞれにこのローラ連結体が一つずつ収容されている。ローラリテーナ10は、多数のローラ3…間に介在される間座部46…と、間座部46…に連結ネック48…を介して連結される一対の連結部としての連結ベルト47,47とを備える。ローラリテーナ10は、間座部46…と連結ベルト47,47と連結ネック48…とを一体で樹脂成形した樹脂体であり、全体として有端帯状になっている。移動ブロック2への装着作業を簡単にするために、ローラリテーナ10の先端10aには丸みが付けられている。
【0056】間座部46は、略直方体形状に形成され、両側に隣り合うローラ3,3の外周面に形状を合わせた凹面49,49を有する。この凹面49,49はローラ3,3の外周面に摺動自在に接触する。間座部46…の横幅は、ローラ3の回転軸方向の長さよりも僅かに短くされる。
【0057】一対の連結ベルト47,47は、ローラ3の回転軸方向における間座部46…の両側面50,50に連結され、ローラ3の端面から外側に張り出している。連結ベルト47,47は各ローラ3の回転軸が含まれる平面上に位置している。また、連結ベルト47,47の厚みは、ローラ循環路に対応して可撓なように薄肉に形成されている。
【0058】図13に示すように連結ベルト47,47の長手方向における連結ネック48の厚さW2は、間座部46の両凹面49,49間の最も薄い厚さと一致している。また、ローラ3の回転軸方向における連結ネック48の長さW3は、間座部46が連結ベルト47,47に対して傾ける程度の長さに設定される。さらに、図中(C)に示すように、連結ネック48,48には、補強リブ53が形成される。この補強リブ53は、間座部46…に対して連結ベルト47,47が、ローラ3の回転軸を含む平面に対して直交する方向■に移動するのを防止する。逆に言えば、連結ベルト47,47に対して間座部46…、ひいてはローラ3…が、ローラ3…の回転軸及び移動方向■を含む平面内と直交する方向■に移動するのを防止する。連結ベルト47,47は所定の軌道に沿って移動するように案内溝によって案内されているので、連結ベルト47,47に対してローラが方向■に移動するのを防止することによって、ローラ3…を所定の軌道に沿って確実に移動させることができる。
【0059】ローラリテーナがローラを所定の姿勢に整列させるので、ローラにスキューが発生するのを防止できる。また、たとえスキューが発生しても、一対の連結ベルトの弾性復元力により、ローラが再び所定の自転軸を保つようにローラのスキューが修正される。このようにローラリテーナは、ローラを所定の姿勢に整列させる効果とローラのスキューを蓄積させない効果をもつ。さらにローラの直径と長さとの比をL/Da<略3とすることにより、上述のようにスキュー角を小さくすることができる。したがって、スキューを整列させ且つスキューを蓄積させない上記ローラリテーナの効果と相俟って、ローラのスキューを確実に防止することができる。また、ローラリテーナ10はローラ循環路において所定の軌道を保つように案内溝11a,12a,13a,20aに案内されているので、ローラリテーナ10に保持されるローラ3…も所定の軌道を保ち、より一層ローラ3…を整列させることができる。
【0060】なお、上記実施形態では、転がり案内装置を、直線運動を案内する直線運動案内装置として用いているが、もちろん直線運動に限られることはなく、曲線運動を案内する曲線運動案内装置に用いてもよい。また、リテーナを設けない所謂総ローラタイプの転がり案内装置も採用しうる。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、ローラの長さと直径との比を略1.5<L/Daとすることにより、ボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなり、ローラを使用することの妥当性、つまり剛性増大の効果が得られる。また、L/D<略3とすることにより、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。したがって、ローラのスキューを確実に防止し、しかも剛性を上げることができる。
【0062】また、ローラリテーナはローラを所定の姿勢に整列させ、ローラにスキューが発生するのを防止する。また、このローラリテーナはたとえスキューが発生しても、連結部の弾性復元力により、ローラが再び所定の自転軸を保つようにローラのスキューを修正する。このようにローラリテーナは、ローラを所定の姿勢に整列させる効果とローラのスキューを蓄積させない効果をもつ。ローラリテーナを設けることによって、ローラの直径と長さとの比をL/Da<略3とすることによる上述の効果と相俟って、ローラのスキューをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のローラを組み込んだ直線運動案内装置を示す断面図。
【図2】スキューが発生したローラを示す概略図。
【図3】条件1において、ローラの有効長Lをボールの直径Dbと略等しく設定した状態を示す図。
【図4】条件2において、比較対象のボール仕様の転がり案内装置を示す断面図。
【図5】L/D=1.5とした場合のローラ仕様の基本静定格荷重Coと、ボール仕様の基本静定格荷重Coとを比較したグラフ。
【図6】スキュー角の算定式における各値を示す図(図中(A)はローラの側面図、図中(B)はローラの平面図)。
【図7】横軸をΔL/L(=ζ)、縦軸をスキュー角βとするグラフ。
【図8】本発明の第1の実施形態の直線運動案内装置を示す分解斜視図。
【図9】上記直線運動装置の側面図(一部長手方向と直交する方向の断面図を含む)。
【図10】ローラ循環路を循環するローラを示す図(図中(A)は負荷域のローラ循環路を示し、図中(B)は無負荷域のローラ循環路を示す)。
【図11】ローラの直径と長さとの比を示す図(図中(A)L/Da=1.5のときを示し、図中(B)はL/Da=3のときを示す)。
【図12】ローラのスキュー角を示す図(図中(A)は本実施形態のローラを示し、図中(B)は針状ローラを示す)。
【図13】ローラリテーナを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は正面図を示す)。
【符号の説明】
1…軌道レール(軌道軸)
1b…ローラ転走面
2…移動ブロック(移動部材)
3…ローラ
4b…負荷ローラ転走面
10…ローラリテーナ
46…間座部
47…連結ベルト(連結部)
49…凹面
11a,12a,13a,20a・・・案内溝
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軌道軸と移動部材との間に転がり運動するローラを組み込んだ転がり案内装置、及びローラを回転・摺動自在に保持するローラ連結体に関する。
【0002】
【従来の技術】転がり案内装置は、軌道レールと、多数の転動体を介して軌道レールに沿って移動自在に設けられた移動ブロックと、軌道レールと移動ブロックとの間に組み込まれる複数のローラを備える。図1はローラが組み込まれた転がり案内装置を示す。移動ブロック101が軌道レール104に対して移動すると、ローラ転走面102,102間の負荷域Aのローラ100…が転がり運動し、無負荷域Bのローラ100…を押し出す。無負荷域Bのローラ100…は反対側の負荷域Aに押し込まれ、これによりローラ100…が移動ブロック101に設けられたローラ循環路を循環する。
【0003】ボールは球体であるため回転軸が無限に存在する。よってあらゆる方向に臨機応変に移動することができる。しかし、ローラ100・・・は円筒形をしているため回転軸が1つしか存在しない。よって移動方向はたったの一方向に限られてしまい、回転軸と進行方向との直角が保たれていなければならない。ローラ100・・・を使用した直線運動案内装置では、移動ブロック101のローラ転走面102と軌道レール104のローラ転走面102との平行が狂っていたとき、または移動ブロック101に偏荷重が作用したときなど、図2に示すようにローラ100・・・の回転軸105と進行方向との直角が保たれなくなることがある。このようにローラ100・・・が正規の回転軸に対して傾く現象をスキューという。ローラ循環路にローラ100…のみを多数組み込んだ総ローラタイプの直線運動案内装置にあっては、ローラ100…がその回転軸方向の端面で移動ブロック101に形成したつば103と接触し、これによりローラ100…のスキューが防止されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この直線運動案内装置に荷重が作用すると、転動体、移動ブロック及び軌道レールが弾性変形する。荷重が作用したときの、転動体、移動ブロック及び軌道レールが変形しにくい程度は、直線運動案内装置の剛性と言われる。この直線運動案内装置の剛性は、一般に転動体としてボールを組み込んだ場合よりもローラ100・・・を組み込んだ場合の方が大きい。ローラを組み込んだ直線運動案内装置の剛性は、ローラ100・・・の数と回転軸方向の長さによって決定される。ローラの数が多く、ローラ100・・・の回転軸方向の長さが長ければ直線運動案内装置の剛性が上がる。すなわち、細長い細長ローラを多数組み込むのが剛性を上げるためには効果的である。
【0005】しかし、剛性を上げるために細長ローラを使用した場合、ローラの回転軸方向の長さに対してローラの端面とつばとの接触面積が大きくとれないので、ローラのスキューが生じ易く、この結果、ローラが自転しなくなる現象(ロック)、発熱、あるいはローラが負荷域の際に起こる振動によりテーブルが振動する現象(ウェービング)等の不具合が生じる。
【0006】そこで、本発明は、ローラのスキューを確実に防止し、しかも剛性を上げることができる転がり案内装置及びローラ連結体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものでない。
【0008】本発明者は、ローラの回転軸方向の長さとローラの直径の比を所定の範囲に設定することによって、ローラのスキューを確実に防止し、しかも転がり運動案内装置の剛性を上げることができることを知見した。
【0009】具体的には請求項1の発明は、ローラ転走面(1b…)を有する軌道軸(1)と、前記ローラ転走面(1b…)に対応する負荷ローラ転走面(4d…)を含むローラ循環路を有して、該軌道軸(1)に相対運動自在に組み付けられる移動部材(2)と、前記ローラ循環路内に配列・収容されて、前記軌道軸(1)に対する前記移動部材(2)の相対運動に併せて循環する複数のローラ(3…)とを備える転がり案内装置において、前記ローラ(3…)は、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とする転がり案内装置により上述した課題を解決した。
【0010】まず、略1.5<L/Daとした根拠について説明する。転動体としてローラを用いた転がり案内装置(ローラ仕様の転がり案内装置)と転動体としてボールを用いた転がり案内装置(ボール仕様の転がり案内装置)とで同等の型番同士について、L/Daを種々変化させながら基本静定格荷重を求めた。ここで、基本静定格荷重とは、転動体、移動部材及び軌道軸の変形量の和が許容限度になるときの荷重をいい、ローラ仕様及びボール仕様におけるそれぞれの基本静定格荷重の算定式を用いている。そのときの条件は以下のとおりである。
【0011】(条件1)ローラ仕様の転がり案内装置及びボール仕様の転がり案内装置において、図3に示すように、ローラの有効長Lをボールの直径Dbと略等しく設定した。これは概ね次の理由による。移動部材としての移動ブロックの寸法は、転動体の種類(ローラ、ボール)に拘らず形番ごとに所定値に決定される。そして、ボールの場合は直径Dbが、ローラの場合は長さLと直径Daが、移動ブロックの寸法の範囲内で方向転換等の動きが可能となる最大寸法に設定される。同一の形番の移動ブロックに最大寸法のボール及びローラを挿入しようとすると必然的にL≒Dbとなる。
【0012】(条件2)ローラ仕様の転がり案内装置としては、図8及び図9に示すような実施形態に記載の転がり案内装置を用いた。一方、比較すべきボール仕様の転がり案内装置としては、図4に示すような構造の転がり案内装置を用いた。この転がり案内装置は、ボール仕様でありながらローラ仕様と同等の剛性を発揮させるべく本出願人によって開発されたもの(本出願人の形番NRS)である。現在他社の製品も含め、市販されているボール仕様の転がり案内装置として最大の基本静定格荷重を有する。
【0013】ボール仕様の転がり案内装置の構造の概略構成を説明する。移動ブロック110の下面と軌道レール111の上面との間に2条のボール列112,112が設けられ、移動ブロック110の内側面と軌道レール111の外側面との間には、左右一列ずつ合計2条のボール列113,113が設けられる。この転がり案内装置の特徴として、移動ブロック110のボール転走溝110a及び軌道レール111のボール転走溝111aは、高荷重を受けられるように深溝に形成されている。また、ボール114と移動ブロック110のボール転走溝110aとの接点、及びボール114と軌道レール111のボール転走溝111aとの接点を結んだ接触各線116,117は、水平線に対してそれぞれ45°となり、ラジアル荷重、逆ラジアル荷重、水平方向荷重が均等に受けられるようになっている。
【0014】上述のローラ仕様の転がり案内装置及びボール仕様の転がり案内装置において、L/Daを種々変化させながらローラ仕様及びボール仕様それぞれの算定式を用いて基本静定格荷重を求めた。その結果、ローラ仕様の基本静定格荷重がL/Da≒1.5を境としてボール仕様の基本静定格荷重を上回ることが判明した。図5はL/Da=1.5とした場合のローラ仕様の基本静定格荷重Coと、ボール仕様の基本静定格荷重Coとを比較したグラフを示す。この図5からL/Da=1.5とすると、すべての形番においてローラ仕様の基本静定格荷重Coがボール仕様の基本静定格荷重Coを上回ることがわかる。これに対し、L/Daの値が1.5以下であると、ボール仕様の基本静定格荷重よりもローラ仕様の基本静定格荷重が劣り、ローラを使用する意味がなくなることがわかった。
【0015】したがって、略1.5<L/Daとすることにより、ボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなり、ローラを使用することの妥当性、つまり剛性増大の効果が得られる。
【0016】次に、L/Da<略3としたことの根拠について説明する。ローラに面取りがあることを考慮するとローラが正規の回転軸に対して傾くスキュー角βは以下の式1で表される。
【0017】
【式1】
【0018】ここで、図6に示すように、Lはローラの長さ、L+ΔLは溝幅、bはローラをつばにぴったり押し付けた場合つばと接触する幅、ζ=ΔL/L≒0.01〜0.1である。この角度算出式を用い、L/Daの値を種々変化させ、横軸をΔL/L(=ζ)、縦軸をスキュー角βとするグラフを描くと図7のようになる(但しDa=2b)とした。また、L/Da値の変化は1.5,3及び4について行った。
【0019】この図7から明らかなように、ΔL/L−βの変化率がL/Da≒3を境にして急激に大きくなる。たとえばL/Da=4では、ΔL/Lの値が約0.02から約0.025まで、つまり僅かに0.005増加しただけでスキュー角が約6°から約10°まで大きく変化してしまう。よって、スキュー角を小さく抑えるためには、軸方向隙間ΔLの管理を極めて厳密に行わなければならず、コストが高くなる等の不都合がある。これに対してL/Daを略3以下に設定すると、ΔL/L−βの変化率が比較的緩やかで、ΔLの設定に若干の誤差が生じようとも、スキュー角にはそれ程大きな影響は与えない。すなわち、L/Daを略3以下とすることによって、軸方向隙間ΔLの寸法管理を緩めることができる。
【0020】したがって、L/Da<略3とすることで、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。また、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にする必要がないので、転がり案内装置の低コスト化を図ることができる。
【0021】また、請求項2の発明は、請求項1に記載の転がり案内装置において、前記複数のローラ(3…)は回転軸を互いに平行にした状態で配列され、前記複数のローラ(3…)を回転・摺動自在に保持するローラリテーナ(10)を備え、前記ローラリテーナ(10)は、前記ローラ(3,3)間に介在された複数の間座部(46…)と、前記間座部(46…)各々を連結する可撓な連結部(47,47)とを有することを特徴とする。
【0022】この発明によれば、ローラリテーナがローラを所定の姿勢に整列させるので、ローラにスキューが発生するのを防止できる。また、このローラリテーナは、たとえスキューが発生しても、連結部の弾性復元力によりローラが再び所定の自転軸を保つようにローラのスキューを修正する。このようにローラリテーナは、ローラを所定の姿勢に整列させる効果とローラのスキューを蓄積させない効果をもつ。ローラリテーナを設けることによって、ローラの直径と長さとの比をL/Da<略3とすることによる上述の効果と相俟って、ローラのスキューをより確実に防止することができる。
【0023】また、請求項3の発明は、請求項2に記載の転がり案内装置において、隣り合う前記ローラ(3,3)の外周面に形状を合わせた凹面(49,49)を両側に有することを特徴とする。
【0024】この発明によれば、上記凹面がローラを保持することにより、移動部材(2)を軌道軸(1)から外した際、ローラ(3,3)がローラリテーナ(10)から、したがって移動部材(2)から脱落することが防止されると共に、凹面とローラ間に充分な潤滑剤が溜り、潤滑作用上も好適である。
【0025】さらに、請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の転がり案内装置において、前記連結部(47,47)は、前記ローラ(3…)の回転軸方向の端面から外側に張り出していることを特徴とする。
【0026】さらに、請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の転がり案内装置において、前記移動部材(2)の前記ローラ循環路に沿って、前記連結部(47,47)を案内する案内部(11a,12a,13a,20a)が形成されることを特徴とする。
【0027】なお、ここで言う「案内」とは、好ましくは下記の状態を指す。
【0028】すなわち、ローラリテーナの上記連結部(47,47)と上記案内部(11a,12a,13a,20a)との間には寸法上で若干の隙間が設けられ、ローラリテーナが少しでも蛇行したり方向転換したりする場合に連結部が案内部の壁面に接触する状態である。つまり、連結部と案内部とが常に接触しているものではない。常に接触する構成とすることも可能であるが、上記のように両者の間に隙間を設けておくことで両者の接触による抵抗が小さく抑えられ、移動部材(2)の運動抵抗が小さくなる。
【0029】この発明によれば、ローラリテーナが案内部によってローラ循環路において所定の軌道を保つように案内される。これにより、ローラリテーナに保持されるローラも所定の軌道を保つので、より一層ローラのスキューを防止することができる。
【0030】また、本発明は、請求項6に記載のように、回転軸を互いに平行にして配列される複数のローラ(3…)と、前記ローラ(3…)間に介在され、隣り合う前記ローラ(3,3)の外周面に形状を合わせた凹面(49,49)を両側に有する複数の間座部(46…)、及び前記間座部(46…)各々を連結する可撓な連結部(47,47)とを有するローラリテーナ(10)とを備え、前記ローラ(3…)は、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とするローラ連結体としても構成できる。
【0031】また、請求項7の発明は、請求項6に記載のローラ連結体において、隣り合う前記ローラ(3,3)の外周面に形状を合わせた凹面(49,49)を両側に有することを特徴とする。
【0032】さらに、請求項8の発明は、請求項6又は7に記載のローラ連結体において、前記連結部は前記ローラの回転軸方向の端面から外側に張り出していることを
【0033】
【発明の実施の形態】図8および図9は、本発明の第1の実施形態における転がり案内装置としての直線運動案内装置を示す。図8は直線運動案内装置の分解斜視図を示し、図9は組立てた直線運動案内装置の側面図、及び軌道レールの長手方向と直交する方向の断面を示す。直線運動案内装置は、直線状に延びる軌道軸としての軌道レール1と、この軌道レール1に多数の転動体としてのローラ3…を介して移動自在に組付けられた移動部材としての移動ブロック2とを備えている。
【0034】軌道レール1は断面略四角形状で細長く延ばされる。軌道レール1の左右側面には、長手方向に沿って断面略V字状の溝1aが形成される。図9に示すように、溝1aは壁面1b,1bおよび底面1cを有する。溝1aの両壁面1b,1bは、90度の角度で交差する。そして、上側の壁面1bおよび下側の壁面1bそれぞれが、ローラ3…が転走するローラ転走面1b,1bとされる。軌道レール1の左右側面には、上下に2条ずつ、合計4条のローラ転走面1b,1bが設けられている。
【0035】移動ブロック2は、軌道レール1の上面に対向する水平部2aと、水平部2aの左右両側から下方に延び、軌道レール1の左右側面に対向する袖部2b,2bとを備える。左右袖部2b,2bには、それぞれ2つずつ合計4つのローラ循環路が形成されている(図9参照)。
【0036】まず、ローラ循環路について説明する。図9に示すように、移動ブロック2の袖部2b,2bには、上下2条の負荷ローラ転走面4d,4dが形成される。この負荷ローラ転走面4d,4dとローラ転走面1b,1bとの間がローラ循環路の負荷域を構成する。
【0037】また、袖部2b,2bには、負荷ローラ転走面4d,4dと所定間隔を隔てて平行に、上下2条のローラ逃げ通路7,7が設けられる。このローラ逃げ通路7,7がローラ循環路の無負荷域を構成する。
【0038】さらに、袖部2b,2bには、負荷ローラ転走面4d,4dとローラ逃げ通路7,7の両端を接続し、ローラ3…を循環させるU字状の方向転換路8,8が設けられる。方向転換路8,8は、上側の負荷ローラ転走面4bと下側のローラ逃げ通路7間、および下側の負荷ローラ転走面4bと上側のローラ逃げ通路7間を立体交差するように接続している。この方向転換路8,8もローラ循環路の無負荷域を構成する。
【0039】これらの負荷ローラ転走面4d,4d、一対の方向転換路8,8、およびローラ逃げ通路7,7によって環状のローラ循環路が構成される。各ローラ循環路は一平面内に形成され、ローラ3…は各ローラ循環路内を2次元的に循環する。一方のローラ循環路が位置する平面と他方のローラ循環路が位置する平面とは直交する。また、一方のローラ循環路は他方のローラ循環路の内周側に配置されている。
【0040】図8に示すように、移動ブロック2は、鋼製のブロック本体4と、ブロック本体4に組み込まれる樹脂循環路成形体11,12,13,15a,15b,20と、樹脂循環路成形体11,12,13,15a,15b,20が組み込まれたブロック本体4の端面に装着される一対の側蓋5,5とを備える。ブロック本体4の袖部4b,4bには、軌道レール1の側面に設けた溝1aに形状を合わせた突出部4c,4cが形成される。この突出部4c,4cには、ローラ転走面1b,1bに対応する負荷転動体転走部としての2条の負荷ローラ転走面4d,4dが形成される(図9参照)。負荷ローラ転走面4d,4dは、ブロック本体4の左右袖部4b,4bの上下に2条ずつ合計4条設けられる。なお、この実施の形態においてローラ転走面1b,1b、負荷ローラ転走面4d,4dは、左右に2条ずつ合計4条形成されているが、その条数は直線運動案内装置の種類によって種々に設定することができる。
【0041】樹脂循環路成形体は、負荷ローラ転走面4d,4dの両側縁に沿って延びると共に軌道レール1から移動ブロック2を外した際に負荷ローラ転走面4d,4dからのローラ3…の脱落を防止する保持部材11,11,12,12,13,13、ローラ3…を戻す逃げ通路構成部材14,14、および方向転換路の内周案内部を構成する内周案内部構成部材15a,15a,15b,15bを備える。保持部材11,11,12,12,13,13、逃げ通路構成部材14,14、および一対の内周案内部構成部材15a,15a,15b,15bそれぞれは、ブロック本体4とは別体に樹脂で成形され、ブロック本体4に組み込まれる。
【0042】保持部材は、図9に示すように、下側のローラ3…の下方側を保持する第1保持部材11,11と、下側のローラ3…の上方側および上側のローラ3…の下方側を保持する第2保持部材12,12と、上側のローラ3…の上方側を保持する第3保持部材13,13とから構成される。これらの保持部材がローラ3・・・を軸方向に案内するつばとしての機能する。
【0043】図8に示すように、第1保持部材11,11は、薄肉かつ長尺の樹脂成形品からなる。第1保持部材11,11をブロック本体4に組み込むことによって、後述するローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝11a(図9参照)が形成される。この第1保持部材11,11は、一対の側蓋5,5間に挟まれることによって、両端が支持された状態で移動ブロック2に取り付けられている。
【0044】第2保持部材12,12は、薄肉かつ長尺の樹脂成形品からなる。第2の保持部材12,12には、ローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝12a,12a(図9参照)がその両側に形成されている。この第2保持部材12は、一対の内周案内部構成部材15a,15a間に挟まれることによって、両端が支持された状態で移動ブロック2に取り付けられている。
【0045】第3保持部材13,13は、薄肉かつ長尺の樹脂成形品からなる。第3の保持部材13,13を、ブロック本体4に組み込むことによってローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝13a(図9参照)が形成される。この第3保持部材13,13は、第1保持部材11,11と同様に、一対の側蓋5,5間に挟まれることによって、両端が支持された状態で移動ブロック2に取り付けられている。
【0046】逃げ通路構成部材14,14は、パイプを回転軸方向に2分割したパイプ半体14a,14bから構成される。これらのパイプ半体14a,14bそれぞれは、長手方向に沿ってローラ3…の形状に合わせた溝20と、ローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝20a(図9参照)と、溝の両側縁に沿って長手方向に延びるフランジ19とを備える。この逃げ通路構成部材14,14によってローラ逃げ通路7,7が形成される。
【0047】内周案内部構成部材15a,15bは、軌道レール1の長手方向に2分割されている。2つの内周案内部構成部材15a,15bを組み合わせると、立体交差したU字状の方向転換路が形成される。また、この方向転換路にはローラリテーナ10の連結ベルトを案内する案内部としての案内溝が形成されている。移動ブロック2側(内側)の分割体15aには、内周側のローラ循環路の内周案内部21が形成される。この内周案内部21は、略半円の円弧状に形成される。側蓋側(外側)の分割体15bには、内周側のローラ循環路の外周案内部31および外周側のローラ循環路の内周案内部32が形成される。これらの内周案内部32および外周案内部31は、略半円の円弧状に形成される。
【0048】側蓋5,5は、ブロック本体4と断面形状を合せ、水平部5aと左右一対の袖部5b,5bとを備えている。袖部5b,5bには外周側のローラ循環路の外周案内部36,36が形成される。また、袖部5b,5bには組み合わせた内周案内部構成部材15a,15bが嵌め込まれる。
【0049】図8に示すように、側蓋5,5はブロック本体4の両端に取り付けられる。側蓋5,5に形成されたボルト挿入孔にボルトを挿入し、ブロック本体4の端面に形成されたねじ孔にボルトをねじ込むことによって、側蓋5,5がブロック本体4に締め付け固定される。また、これにより、内周案内部構成部材15a,15bがブロック本体4に固定される。なお、側蓋5,5の外側には、化粧プレート38,38が取り付けられる。
【0050】図10は、ローラ循環路を循環するローラ3を示す。図中(A)は軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック2の負荷ローラ転走面4dとの間の負荷域を転がるローラ3を示し、図中(B)は無負荷域となる逃げ通路7を移動するローラを示す。
【0051】図中(A)に示すように、負荷域のローラ循環路はローラ3の断面形状に合わせて断面四角形に形成される。移動ブロックには上記保持部材11,11,12,12,13,13によって、ローラ3の回転軸方向の端面を案内するつば41,41が形成される。両つば41,41間の距離L+ΔLは、軸方向すきまΔLが生じるようにローラ3の回転軸方向の長さLよりも僅かに長く設定される。ζ=ΔL/Lは、例えば0.02〜0.07の範囲に設定される。この両つば41,41には、後述するローラリテーナ10の一対の連結ベルトを案内する案内溝11a,12a,13aが形成される。
【0052】図中(B)に示すように、無負荷域のローラ循環路もローラ3の断面形状に合わせて断面四角形に形成される。移動ブロック2には、逃げ通路構成部材14,14によってローラ3の回転軸方向の端面を案内するつば43,43が形成される。両つば41,41間の距離L+ΔLは、上記負荷域のローラ循環路と同様に、軸方向すきまΔLが生じるようにローラ3の回転軸方向の長さよりも僅かに長く設定される。この両つば43,43には、後述するローラリテーナ10の一対の連結ベルトを案内する案内溝20a,20aが形成される。また、無負荷域のローラ循環路の内周案内面51と外周案内面52との間の寸法は、ローラ3の外周との間に僅かな隙間が生じるようにローラ3の直径よりも僅かに大きく設定される。
【0053】図11は、ローラ3の直径Daと長さLとの比を示す。図中(A)はL/Da=1.5としたローラ3を示し、図中(B)はL/Da=3としたローラ3を示す。ローラ3の直径Daと長さLとの比はこの範囲内で任意に設定される。
【0054】本実施形態では、略1.5<L/Daとすることにより、上述のようにボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなり、ローラを使用することの妥当性、つまり剛性増大の効果が得られる。また、L/Da<略3とすることにより、図12(A)に示すように、ローラ3の回転軸方向の長さLに対してローラの直径Daが大きくなる。そして、上述のように軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。これに対して、L/Da>3とすると、図12(B)に示すようにローラ3が針状になり、軸方向隙間ΔLの寸法管理を厳密にしないとスキュー角αが大きくなってしまうのは避けられない。
【0055】図13は、ローラ3…が組み込まれたローラ連結体を示す。図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は正面図を示す。ローラ3…はローラリテーナ10によってチェーンのように一連に連鎖されている。4列のローラ循環路それぞれにこのローラ連結体が一つずつ収容されている。ローラリテーナ10は、多数のローラ3…間に介在される間座部46…と、間座部46…に連結ネック48…を介して連結される一対の連結部としての連結ベルト47,47とを備える。ローラリテーナ10は、間座部46…と連結ベルト47,47と連結ネック48…とを一体で樹脂成形した樹脂体であり、全体として有端帯状になっている。移動ブロック2への装着作業を簡単にするために、ローラリテーナ10の先端10aには丸みが付けられている。
【0056】間座部46は、略直方体形状に形成され、両側に隣り合うローラ3,3の外周面に形状を合わせた凹面49,49を有する。この凹面49,49はローラ3,3の外周面に摺動自在に接触する。間座部46…の横幅は、ローラ3の回転軸方向の長さよりも僅かに短くされる。
【0057】一対の連結ベルト47,47は、ローラ3の回転軸方向における間座部46…の両側面50,50に連結され、ローラ3の端面から外側に張り出している。連結ベルト47,47は各ローラ3の回転軸が含まれる平面上に位置している。また、連結ベルト47,47の厚みは、ローラ循環路に対応して可撓なように薄肉に形成されている。
【0058】図13に示すように連結ベルト47,47の長手方向における連結ネック48の厚さW2は、間座部46の両凹面49,49間の最も薄い厚さと一致している。また、ローラ3の回転軸方向における連結ネック48の長さW3は、間座部46が連結ベルト47,47に対して傾ける程度の長さに設定される。さらに、図中(C)に示すように、連結ネック48,48には、補強リブ53が形成される。この補強リブ53は、間座部46…に対して連結ベルト47,47が、ローラ3の回転軸を含む平面に対して直交する方向
【0059】ローラリテーナがローラを所定の姿勢に整列させるので、ローラにスキューが発生するのを防止できる。また、たとえスキューが発生しても、一対の連結ベルトの弾性復元力により、ローラが再び所定の自転軸を保つようにローラのスキューが修正される。このようにローラリテーナは、ローラを所定の姿勢に整列させる効果とローラのスキューを蓄積させない効果をもつ。さらにローラの直径と長さとの比をL/Da<略3とすることにより、上述のようにスキュー角を小さくすることができる。したがって、スキューを整列させ且つスキューを蓄積させない上記ローラリテーナの効果と相俟って、ローラのスキューを確実に防止することができる。また、ローラリテーナ10はローラ循環路において所定の軌道を保つように案内溝11a,12a,13a,20aに案内されているので、ローラリテーナ10に保持されるローラ3…も所定の軌道を保ち、より一層ローラ3…を整列させることができる。
【0060】なお、上記実施形態では、転がり案内装置を、直線運動を案内する直線運動案内装置として用いているが、もちろん直線運動に限られることはなく、曲線運動を案内する曲線運動案内装置に用いてもよい。また、リテーナを設けない所謂総ローラタイプの転がり案内装置も採用しうる。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、ローラの長さと直径との比を略1.5<L/Daとすることにより、ボール仕様の同一形番のものに比較して基本静定格荷重Coが大きくなり、ローラを使用することの妥当性、つまり剛性増大の効果が得られる。また、L/D<略3とすることにより、軸方向隙間ΔLの寸法管理をそれ程厳密にせず、スキューの発生を確実に防止できる。したがって、ローラのスキューを確実に防止し、しかも剛性を上げることができる。
【0062】また、ローラリテーナはローラを所定の姿勢に整列させ、ローラにスキューが発生するのを防止する。また、このローラリテーナはたとえスキューが発生しても、連結部の弾性復元力により、ローラが再び所定の自転軸を保つようにローラのスキューを修正する。このようにローラリテーナは、ローラを所定の姿勢に整列させる効果とローラのスキューを蓄積させない効果をもつ。ローラリテーナを設けることによって、ローラの直径と長さとの比をL/Da<略3とすることによる上述の効果と相俟って、ローラのスキューをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のローラを組み込んだ直線運動案内装置を示す断面図。
【図2】スキューが発生したローラを示す概略図。
【図3】条件1において、ローラの有効長Lをボールの直径Dbと略等しく設定した状態を示す図。
【図4】条件2において、比較対象のボール仕様の転がり案内装置を示す断面図。
【図5】L/D=1.5とした場合のローラ仕様の基本静定格荷重Coと、ボール仕様の基本静定格荷重Coとを比較したグラフ。
【図6】スキュー角の算定式における各値を示す図(図中(A)はローラの側面図、図中(B)はローラの平面図)。
【図7】横軸をΔL/L(=ζ)、縦軸をスキュー角βとするグラフ。
【図8】本発明の第1の実施形態の直線運動案内装置を示す分解斜視図。
【図9】上記直線運動装置の側面図(一部長手方向と直交する方向の断面図を含む)。
【図10】ローラ循環路を循環するローラを示す図(図中(A)は負荷域のローラ循環路を示し、図中(B)は無負荷域のローラ循環路を示す)。
【図11】ローラの直径と長さとの比を示す図(図中(A)L/Da=1.5のときを示し、図中(B)はL/Da=3のときを示す)。
【図12】ローラのスキュー角を示す図(図中(A)は本実施形態のローラを示し、図中(B)は針状ローラを示す)。
【図13】ローラリテーナを示す図(図中(A)は平面図を示し、図中(B)は側面図を示し、図中(C)は正面図を示す)。
【符号の説明】
1…軌道レール(軌道軸)
1b…ローラ転走面
2…移動ブロック(移動部材)
3…ローラ
4b…負荷ローラ転走面
10…ローラリテーナ
46…間座部
47…連結ベルト(連結部)
49…凹面
11a,12a,13a,20a・・・案内溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ローラ転走面を有する軌道軸と、前記ローラ転走面に対応する負荷ローラ転走面を含むローラ循環路を有して、該軌道軸に相対運動自在に組み付けられる移動部材と、前記ローラ循環路内に配列・収容されて、前記軌道軸に対する前記移動部材の相対運動に併せて循環する複数のローラとを備える転がり案内装置において、前記ローラは、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とする転がり案内装置。
【請求項2】 前記複数のローラは回転軸を互いに平行にした状態で配列され、前記複数のローラを回転・摺動自在に保持するローラリテーナを備え、前記ローラリテーナは、前記ローラ間に介在された複数の間座部と、前記間座部各々を連結する可撓な連結部とを有することを特徴とする請求項1に記載の転がり案内装置。
【請求項3】 前記間座部は、隣り合う前記ローラの外周面に形状を合わせた凹面を両側に有することを特徴とする請求項2に記載の転がり案内装置。
【請求項4】 前記連結部は、前記ローラの回転軸方向の端面から外側に張り出していることを特徴とする請求項2又は3に記載の転がり案内装置。
【請求項5】 前記移動部材の前記ローラ循環路に沿って、前記連結部を案内する案内部が形成されることを特徴とする請求項2ないし4いずれかに記載の転がり案内装置。
【請求項6】 回転軸を互いに平行にして配列される複数のローラと、前記ローラ間に介在された複数の間座部、及び前記間座部各々を連結する可撓な連結部とを有するローラリテーナとを備え、前記ローラは、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とするローラ連結体。
【請求項7】 前記間座部は、隣り合う前記ローラの外周面に形状を合わせた凹面を両側に有することを特徴とする請求項6に記載のローラ連結体。
【請求項8】 前記連結部は、前記ローラの回転軸方向の端面から外側に張り出していることを特徴とする請求項6又は7に記載のローラ連結体。
【請求項1】 ローラ転走面を有する軌道軸と、前記ローラ転走面に対応する負荷ローラ転走面を含むローラ循環路を有して、該軌道軸に相対運動自在に組み付けられる移動部材と、前記ローラ循環路内に配列・収容されて、前記軌道軸に対する前記移動部材の相対運動に併せて循環する複数のローラとを備える転がり案内装置において、前記ローラは、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とする転がり案内装置。
【請求項2】 前記複数のローラは回転軸を互いに平行にした状態で配列され、前記複数のローラを回転・摺動自在に保持するローラリテーナを備え、前記ローラリテーナは、前記ローラ間に介在された複数の間座部と、前記間座部各々を連結する可撓な連結部とを有することを特徴とする請求項1に記載の転がり案内装置。
【請求項3】 前記間座部は、隣り合う前記ローラの外周面に形状を合わせた凹面を両側に有することを特徴とする請求項2に記載の転がり案内装置。
【請求項4】 前記連結部は、前記ローラの回転軸方向の端面から外側に張り出していることを特徴とする請求項2又は3に記載の転がり案内装置。
【請求項5】 前記移動部材の前記ローラ循環路に沿って、前記連結部を案内する案内部が形成されることを特徴とする請求項2ないし4いずれかに記載の転がり案内装置。
【請求項6】 回転軸を互いに平行にして配列される複数のローラと、前記ローラ間に介在された複数の間座部、及び前記間座部各々を連結する可撓な連結部とを有するローラリテーナとを備え、前記ローラは、その直径をDa、回転軸方向の長さをLとすると、略1.5<L/Da<略3を満足するように形成されていることを特徴とするローラ連結体。
【請求項7】 前記間座部は、隣り合う前記ローラの外周面に形状を合わせた凹面を両側に有することを特徴とする請求項6に記載のローラ連結体。
【請求項8】 前記連結部は、前記ローラの回転軸方向の端面から外側に張り出していることを特徴とする請求項6又は7に記載のローラ連結体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【図13】
【公開番号】特開2002−310151(P2002−310151A)
【公開日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−113120(P2001−113120)
【出願日】平成13年4月11日(2001.4.11)
【出願人】(390029805)テイエチケー株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年4月11日(2001.4.11)
【出願人】(390029805)テイエチケー株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
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