説明

転写シート、メラミン化粧板の製造方法及びメラミン化粧板

【課題】 化粧板表面のレザータッチのような触感があり、指紋が目立たないメラミン化粧板を得る。
【解決手段】 フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーにプラスチックビーズを分散させた樹脂液を、プラスチックフィルムに塗布、乾燥して転写シートを得る。次いで、樹脂含浸コア紙、樹脂含浸化粧パターン紙、必要に応じて樹脂含浸オーバーレイ紙、転写シート、賦型板を順次積層し、熱圧成形する。プラスチックビーズとして、平均粒子径が6〜14μmのウレタンビーズを用い、シロキサングラフト型ポリマー100重量部に対して10〜50重量部配合する。転写シートに塗布する際は、乾燥膜厚が5〜10μmとなるように塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写シート、メラミン化粧板の製造方法及びメラミン化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでよりメラミン化粧板が知られており、表面硬度、耐熱性、耐摩耗性等の諸物性に優れることからカウンター、机などの水平面用途に好適に用いられている。このメラミン化粧板には表面が平坦な化粧板と表面に凹凸を賦与したエンボス化粧板があり、エンボス化粧板は、金属製の型板やプラスティック製の型板とを用いて熱圧成形することにより得られる。
【0003】
エンボス化粧板は表面が平坦な化粧板に比べ立体感に富み印刷紙の模様と型板の形状を適宜選択して組み合わせることでデザインも豊富で、中でもレザーのようなシワ、手触り感を付与したいわゆるレザー調エンボス化粧板はリアル感がありより高級な印象を与え、高付加価値が追及される昨今では需要も多いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−34984号公報
【特許文献2】特開2004−262105号公報
【特許文献3】特開2000−95833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来のレザー調のメラミン化粧板は表面が高硬度であるためレザーと異なる触感が違和感を与えていた。また、濃色な表面柄の場合、指紋が目立ちやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑み検討されたもので、表面に、シロキサングラフト型ポリマーと、プラスチックビーズを分散させた樹脂液の硬化物による弾性層が5〜10μmの厚みで形成することにより前記の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0007】
従来のメラミン化粧板に比べ、表層が弾性に富み、手触りが柔らかく、指紋の付着が目立たないものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いるシロキサングラフト型ポリマーは、フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたもので、ブレンド系とは異なり,両方の特徴が相乗作用として発現する。具体的には、シロキサングラフトアクリル樹脂やシロキサングラフトフッ素樹脂を挙げられ、これらのシロキサングラフト樹脂はシリコーンマクロモノマーをフッ素系、アクリル系のモノマーと共重合させる方法や、ポリマーとシリコーンオリゴマーを反応させて、ポリマー側鎖にシリコーン基を導入する方法によって得られる。方法については特開2000−80135号公報、特開2000−119354号公報、特開2000−119355号公報、特開2000−136221号公報などに詳しく開示されている。
【0009】
シロキサングラフトアクリル樹脂の市販例としては、X−22−8004、X−22−8053、X−22−8095X(信越化学工業製)、サイマックUS−210、US−270(以上、東亞合成製)、ZX−028−R、ZX−036(以上、富士化成工業製)、シロキサングラフトフッ素樹脂の市販例としては、ZX−022−H、ZX−007C(以上、富士化成工業製)が挙げられる。
【0010】
本発明では、プラスチックビーズとして、例えば、ポリウレタンビーズ、エチレン・メチルメタクリレート共重合物(EMMA)ビーズ、低密度ポリエチレン(LDPE)ビーズ、ナイロンビーズ、シリコンビーズ等を用いることができる。プラスチックビーズの中でも軟質プラスチックビーズが望ましく、市販品としては、三洋化成社製のメルテックス(登録商標)、大日精化社製のダイミックビーズ(登録商標)、根上工業社製のアートパール(登録商標)等のポリウレタンビーズや、住友精化社製のソフトビーズA、ソフトビーズB等のEMMAビーズや、住友精化社製のフロービーズ(登録商標)等のLDPEビーズが挙げられる。
【0011】
前記の軟質プラスチックビーズの中でも柔軟性、強靱性、耐傷性の機能を付与することができるポリウレタンビーズ、特に架橋タイプのもの(架橋ポリウレタンビーズ)が好ましい。ポリウレタンビーズはポリイソシアネートプレポリマーを懸濁安定剤を含む水中に粒子状に分散し、次いでこれを加温することにより反応させる、或いはポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを含有する有機相を、水と分散剤とを含有する水相中に粒子状に分散させて反応させることにより得られ、溶剤系へも水系へも容易に再分散可能な真球状の架橋ポリウレタン微粒子である。アクリルビーズでは柔軟性に乏しく、製品の表面の触感が余りよくない。
【0012】
ポリウレタンビーズは平均粒子径が6〜14μmが好適で、平均粒子径が下限に満たないとクッション性が低く、目的とする触感がなく、上限を超えると製品の表面がザラザラしたものになる。このポリウレタンビーズは前記シロキサングラフト型ポリマーの固形分100重量部に対して10〜50重量部配合される。配合割合が下限に満たないとクッション性が低く、目的とする触感(ソフト感)が得られにくく、上限を超えると製品の表面がザラザラしやすくなる。
【0013】
本発明のメラミン化粧板はシロキサングラフト型ポリマーと軟質ビーズとを有機溶剤に分散させた樹脂液を、プラスチックフィルムに塗布し、乾燥して転写シートを用いる方法(転写法)が採用される。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等を使用することができる。
【0014】
塗布する場合は公知の方法、例えば、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、カーテンコート法などを用いることができ、乾燥後の塗膜の厚みは5〜110μmとなるように塗布する。塗膜の厚みをこのような範囲とすることで、メラミン化粧板の表層の手触り感がよく、従来品よりソフト感があり、しかも水接触角が90°以上、オレイン酸接触角が45°以上、屈折率が1.55以下となり、極めて耐指紋性に優れたものとなる。乾燥後の塗膜の厚みが上限を超えると白化が起こり外観不良となる可能性があり、乾燥後の塗膜の厚みが下限に満たないと外観ムラを生じ易くなる。
【0015】
樹脂含浸パターン紙としては、耐摩耗性、耐熱性などの諸物性に優れるメラミン樹脂含浸パターン紙が好適で、パターン紙は坪量80〜140g/m程度の化粧板用化粧紙を用い、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を数1で示す算出方法で70〜160%の含浸率で含浸し、乾燥させて得る。
【0016】
【数1】

【0017】
樹脂含浸コア紙としては坪量150〜300g/m程度のクラフト紙が用いて、数1で示される算出方法でフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を30〜80%の含浸率で含浸し、乾燥させて得る。
【0018】
更に、表面の耐摩耗性を向上させる目的で、オーバーレイ原紙にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を含浸したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を用いてもよい。メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙は坪量20〜60g/m程度のオーバーレイ原紙に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を200〜400%の含浸率で含浸し、乾燥させて得る。
【0019】
本発明のメラミン化粧板は、樹脂含浸コア紙の上に、樹脂含浸パターン紙、あるいは更に樹脂含浸オーバーレイ紙、転写シート、賦型板或いはフララットなプレートを積層して、加熱加圧プレスを用いて、加熱温度110〜180℃、加圧条件5〜10MPaの成形条件で熱圧しすることにより得ることができる。
【0020】
以下、本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明は以下に示される例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
樹脂液
アクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフトアクリル樹脂として、ZX−036(水酸基価119,溶剤種 酢酸ブチル/2−プロパノール、富士化成工業株式会社製)を固形分値で50重量部、軟質プラスチックビーズとして架橋ポリウレタンビーズ(根上工業株式会社製、商品名アートパール(登録商標)、製品名C−800透明、不揮発分98.5%以上、吸油量85±10、平均粒子径6μm)を5重量部を、イソプロピルアルコールに総固形分が40重量%となるように希釈して樹脂液を得た。
転写シート
樹脂液を厚み30μmのOPPフィルムの表面に、バーコート法により乾燥膜厚が5μmとなるように塗布して転写シートを作成した。
メラミン樹脂含浸パターン紙
メラミン樹脂含浸パターン紙
は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を坪量100g/mの黒色の化粧板用原紙に数1で示される算出方法で、含浸率が100%となるように含浸、乾燥して得た。
樹脂含浸コア紙
樹脂含浸コア紙としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を坪量195g/mのクラフト紙に数1で示される算出方法で、含浸率が50%となるように含浸、乾燥して得たフェノール樹脂含浸コア紙を用いた。
メラミン化粧板
フェノール樹脂含浸コア紙を5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙を1枚、転写シート、レザー調の賦型板を積層した。次いで、温度130℃、圧力7MPa、時間80分で熱圧成形し、成形後OPPフィルムを除去してメラミン化粧板を得た。
【実施例2】
【0022】
実施例1において架橋ポリウレタンビーズC−800透明の配合量を15重量部に変更した以外は同様に実施した。
【実施例3】
【0023】
実施例1において架橋ポリウレタンビーズC−800透明の配合量を25重量部に変更した以外は同様に実施した。
【実施例4】
【0024】
実施例2において樹脂液の乾燥膜厚を10μmに変更した以外は同様に実施した。
【実施例5】
【0025】
実施例2において架橋ポリウレタンビーズC−800透明を、架橋ポリウレタンビーズC−400透明(根上株式会社、商品名アートパール、不揮発分98.5%以上、吸油量65±10、平均粒子径14μm)に変更した以外は同様に実施した。
【実施例6】
【0026】
実施例2において、ZX−036の代わりに、フッ素樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型フッ素樹脂として、ZX−022−H(水酸基価120、溶剤種;キシレン/酢酸ブチル/イソプロピルアルコール、富士化成工業株式会社製)を用いた以外は同様に実施した。
【0027】
比較例1
実施例1において、架橋ポリウレタンビーズC−800透明を用いなかった以外は同様に実施した。
【0028】
比較例2
実施例2において、樹脂液の乾燥膜厚を15μmに変更した以外は同様に実施した。
【0029】
比較例3
実施例1において架橋ポリウレタンビーズC−800透明の配合量を30重量部に変更した以外は同様に実施した。
【0030】
比較例4
実施例2においてウレタンビーズC−800透明を、C−100透明(根上株式会社、商品名アートパール、不揮発分98.5%以上、吸油量60±10、平均粒子径45μm)に変更した以外は同様に実施した。
【0031】
比較例5
実施例2において架橋ウレタンビーズC−800透明を、アクリルビーズGR−800透明(根上株式会社、商品名アートパール、不揮発分98.0%以上、吸油量40±10、平均粒子径6μm)に変更した以外は同様に実施した。
【0032】
比較例6
実施例2において架橋ポリウレタンビーズC−800透明を、ヒュームドシリカ(商品名レオロシールDM−30 平均粒径7nm 株式会社トクヤマ製)に変更した以外は同様に実施した。
【0033】
比較例7
フェノール樹脂含浸コア紙を5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙を1枚、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を1枚積層し、レザー調の賦型板を積層した。次いで、温度130℃、圧力7MPa、時間80分で熱圧成形してメラミン化粧板を得た。このメラミン化粧板では、実施例、他の比較例に比べ耐指紋性、触感が良好でなかった。
【0034】
評価結果を表1、表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
試験方法、評価方法は以下の通りとした。
【0038】
耐指紋性
メラミン化粧板の表面に実際に指紋を付着させ目視にて確認する。
○:指紋が目立たない。
×:指紋が目立つ。
【0039】
外観
メラミン化粧板の表面を目視にて確認する。
○:異常なし。
×:艶ムラ。
【0040】
触感:塗膜を手で触り、その触感を以下の基準で評価した。
○:従来の触感塗料以上のみずみずしいしっとりとした触感。
△:従来の触感塗料と同等のしっとりとした触感。
×:従来の触感塗料以下のザラザラとした触感。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマー100重量部に対して、プラスチックビーズが10〜50重量部分散された樹脂液が、プラスチックフィルムに塗布、乾燥されてなる転写シート。
【請求項2】
樹脂含浸コア紙、樹脂含浸化粧パターン紙、請求項1記載の転写シート、賦型板を順次積層し、熱圧成形することを特徴とするメラミン化粧板の製造方法。
【請求項3】
樹脂含浸コア紙、樹脂含浸化粧パターン紙、樹脂含浸オーバーレイ紙、請求項1記載の転写シート、賦型板を順次積層し、熱圧成形することを特徴とするメラミン化粧板の製造方法。
【請求項4】
表面に、シロキサングラフト型ポリマーと、プラスチックビーズを分散させた樹脂液の硬化物による弾性層が5〜10μmの厚みで形成されてなることを特徴とするメラミン化粧板。


【公開番号】特開2010−228116(P2010−228116A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75285(P2009−75285)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】