説明

転写ベルト及びその製造方法並びに転写ユニット及び画像形成装置

【課題】転写時の放電欠陥及びギャップ転写の発生が抑制されるとともに、使用自由度の高い転写ベルトを提供する。
【解決手段】転写ベルト100は、内周面112に離型剤110が付着しており、該内周面における表層部の表面抵抗値の常用対数値が、外周面122における表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高くなっている。好ましくは、離型剤は、ジメチルシリコーンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルト及びその製造方法並びに転写ユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、レーザープリンター、ファクシミリ、または、これらの複合機器等として、電子写真方式を利用した画像形成装置の開発が進んでいる。電子写真方式を用いた画像形成装置は、無機又は有機材料を用いた光導電性感光体である像保持体上に電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電濳像を形成した後、帯電したトナーで前記静電濳像を現像して可視化したトナー像とする。次いで、トナー像を、中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の被転写材に静電的に転写することにより再生画像が得られる。例えば、像保持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、更に中間転写体上のトナー像を記録紙等の記録媒体に二次転写する方式を採用した画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
中間転写体として無端形状のベルト(中間転写ベルト)を採用した画像形成装置では、中間転写ベルトの材質として、例えば、ポリカーボネート樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の熱可塑性樹脂の導電性材料では機械特性が劣るために、駆動時の応力に対するベルト変形が大きく、高品質の転写画質が安定して得られない。
また、ポリエステル等の織布と弾性部材を積層してなる補強材入り弾性ベルトが提案されているが、経時でベルト材料のクリープ変形等に起因する色ずれの問題が発生する場合がある。
一方、機械特性や耐熱性に優れたポリイミド樹脂に導電性フィラーを分散させた中間転写ベルトが提案されている(特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開昭62−206567号公報
【特許文献2】特開平5−77252号公報
【特許文献3】特開平10−63115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中間転写ベルト(以下、「転写ベルト」又は「ベルト」という場合がある。)を使用した画像形成装置では、一次転写を行う際の電荷が感光体の表面電位に影響を与え、斑点状の欠陥が発生する事がある。このような欠陥の主な発生原因は、転写ベルトと感光体の間で発生する放電によることが多い。放電は、転写ベルトの抵抗値、感光体誘電膜厚、感光体と転写ベルトの位置関係、転写電流などにより影響されるが、中でも転写ベルトの抵抗が大きく影響している。転写ベルトの抵抗を高くすると放電欠陥が発生しやすくなり、一方、転写ベルトの抵抗を低くすると、転写不良が発生し易くなるため、転写ベルトとして使用可能な抵抗領域は非常に狭い。
【0005】
抵抗が低い場合に発生する転写不良の原因は、ベルト沿面方向に電場が形成され、一次転写部の像担持体と中間転写ベルトとが接触部分(「ニップ部」と言う場合がある)を通過後に剥離する部分(「ポストニップ部」と言う場合がある)で不必要な転写(以下「ギャップ転写」と言う場合がある)が発生するためである。これにより、トナーの飛び散りやトナーの脱落が発生し、画質が劣化してしまう。
転写ベルトの外周面の表面抵抗を高くすれば、ギャップ転写が抑制されるが、感光体と転写ベルトの間で放電して放電欠陥が発生し易い。
【0006】
本発明は、転写時の放電欠陥及びギャップ転写の発生が抑制されるとともに、使用自由度の高い転写ベルトを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、以下の転写ベルト及びその製造方法並びに転写ユニット及び画像形成装置が提供される。
請求項1の発明は、内周面に離型剤が付着しており、該内周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、外周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高いことを特徴とする転写ベルトである。
請求項2の発明は、前記離型剤が、ジメチルシリコーンを含むことを特徴とする請求項1に記載の転写ベルトである。
請求項3の発明は、前記外周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、10LogΩ以上12LogΩ以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転写ベルトである。
請求項4の発明は、前記内周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、11.5LogΩ以上14LogΩ以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写ベルトである。
請求項5の発明は、外周面に離型剤を付与した後、該離型剤に紫外線を照射して表面改質を行なった芯体の外周面に樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を固化させて樹脂皮膜を形成する工程と、前記樹脂皮膜を前記芯体から抜き取る工程と、を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の転写ベルトを製造する方法である。
請求項6の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の転写ベルトと、該転写ベルトを張架する複数のロールと、を備えることを特徴とする転写ユニットである。
請求項7の発明は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が一次転写される請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の転写ベルトと、前記転写ベルトを張架し、該転写ベルトを回転させるロールと、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記転写ベルトに一次転写させる一次転写手段と、前記転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写させる二次転写手段と、前記記録媒体に二次転写された前記トナー像を定着させる定着手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、放電欠陥及びギャップ転写の発生が抑制されるとともに、使用自由度の高い転写ベルトが得られる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、放電欠陥及びギャップ転写の発生が一層抑制される転写ベルトが得られる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、放電欠陥及びギャップ転写の発生が一層抑制される転写ベルトが得られる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、放電欠陥及びギャップ転写の発生が一層抑制される転写ベルトが得られる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、放電欠陥及びギャップ転写の発生が抑制されるとともに、使用自由度の高い転写ベルトが容易に製造される。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、放電欠陥及びギャップ転写が発生し難い転写ユニットが得られる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、放電欠陥及びギャップ転写が発生し難い画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は対応する要素(部材)には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
本発明者の研究によると、転写ベルトの内周面側の表層部の表面抵抗を外周面側の表層部の表面抵抗よりも一定の範囲内で高くすると、ベルト沿面方向の電場形成が抑えられ、ギャップ転写が抑制されると共に、放電欠陥が発生し難いことが分かった。
例えば、内周面を含む内層と外周面を含む外層の2層構造とし、各層に含まれる導電剤の含有量を変えることで、外層よりも内層の抵抗が高い転写ベルトを作製することができる。しかし、高抵抗の材料を用いて高抵抗の内層を形成すると、成膜性等の観点から内層の厚みは15μm以上とする必要があり、この場合、放電が生じ易くなるなど、別の問題が生じてしまう。
【0010】
一方、図3は、内周面に離型剤が付着した単層の転写ベルトについて厚さ方向における抵抗のプロファイルを示している。抵抗のプロファイルは内周面から10μm程度の深さにおいて急激に変化し、全変化の6割以上の変化が表層の10μm以内で起きている。そこで、本発明者は、転写ベルトの製造に用いる芯体と離型剤との組み合わせによって特定の離型剤をベルト内周面に付着させることで、単層のベルトであっても内周面側の極めて薄い表層部で抵抗を大きく変化し、放電欠陥及びギャップ転写の発生が発生し難い転写ベルトが得られることを見出した。
【0011】
<転写ベルト>
図1は、本実施形態に係る転写ベルトを概略的に示している。図2は、本実施形態に係る転写ベルトの一部における厚さ方向の断面を概略的に示している。本実施形態に係る転写ベルト100の本体部分120は、導電剤を樹脂材料に分散させた材料で構成された単層構造であり、無端状(環状)となっている。そして、本実施形態に係る転写ベルト100の内周面112には離型剤110が付着しており、内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、外周面122側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高くなっている。
【0012】
−樹脂材料−
転写ベルトの基材となる樹脂材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂などが挙げられる。この中でも特に、高ヤング率であり、支持ロール(張架ロール)、クリーニングブレード等の応力による駆動時の変形が少なく、色ズレ等の画像欠陥が生じにくいポリイミド樹脂が好適である。
【0013】
転写ベルトの基材となるポリイミド樹脂は、通常、等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体と、ジアミンとを溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液として得られる。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記の一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(I)中、Rは4価の有機基であり、芳香族、脂肪族、環状脂肪族、芳香族と脂肪族を組み合わせたもの、またはそれらの置換された基である。
テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0016】
一方、ジアミンの具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、H2N(CH23O(CH22O(CH2)NH2、H2N(CH23S(CH23NH2、H2N(CH23N(CH32(CH23NH2等が挙げられる。
【0017】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点より極性溶媒(有機極性溶媒)が好適に挙げられる。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、具体的には、例えば、これの低分子量のものであるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単独で使用され、又は、複数種が併用される。
【0018】
−導電剤−
導電剤としては、導電性又は半導電性の微粉末が使用され、本実施形態に係る転写ベルト100として所望の電気抵抗が安定して得られれば導電性に制限はない。ここで、「導電性」とは、体積抵抗率が10Ωcm未満であることを意味する。また、「半導電性」とは、体積抵抗率が10以上1013Ωcm以下であることを意味する。
【0019】
このような導電剤として、例えば、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示される。これらを単独、あるいは併用して使用してもよいが、価格面からカーボンブラックが有利に使用される。特に、分散安定性が得られ、転写ベルトの抵抗バラツキが小さく、電界依存性も小さく、転写電圧による電界集中が起きづらくなって電気抵抗の経時安定性が得られる点から、pH5以下の酸化処理カーボンブラック(以下、適宜、酸性カーボンブラックと称する。)が特に望ましい。
【0020】
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等が付与されて製造される。この酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温下での空気酸化後、低い温度下でオゾン酸化する方法などにより行われる。
【0021】
また、酸性カーボンブラックは、コンタクト法により製造される。コンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造してもよい。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。
【0022】
酸性カーボンブラックは、コンタクト法により製造してもよいが、通常は、密閉式のファーネス法によって製造される。ファーネス法では、通常、高pHであり、低揮発分のカーボンブラックが製造されるが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整すればよい。このようにファーネス法により得られたカーボンブラックを後工程処理によってpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、本実施形態に係る転写ベルトの導電剤として使用してもよい。
【0023】
酸性カーボンブラックのpH値はpH5.0以下であるが、好ましくはpH4.5以下であり、より好ましくはpH4.0以下である。pH5.0以下の酸性カーボンブラックは、表面にカルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基などの酸素含有官能基が存在するため、樹脂中で良好な分散安定性が得られる。従って、このような酸性カーボンブラックを導電剤として用いることで、転写ベルトの抵抗バラツキが小さくなるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中がおきづらくなる。
【0024】
酸性カーボンブラックのpHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定することで求められる。酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって調整される。
酸性カーボンブラックは、その揮発成分が1%以上25%以下、好ましくは2%以上20%以下、より好ましくは3.5%以上15%以下含まれていることがよい。揮発分が1%以上であれば、表面に存在する酸素含有官能基による効果が確実に得られ、結着樹脂への分散性が高くなる。一方、揮発分が25%以下であれば、結着樹脂に分散させる際に、分解することが抑制され、また、表面の酸素含有官能基に吸着された水などが多くなることなどによって、得られる成形品(ベルト)の外観が悪くなるなどの問題が生じることが抑制される。従って、揮発分を上記範囲とすることで、樹脂中への分散性がより向上される。この揮発分は、カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときに出てくる有機揮発成分(カルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基等)の割合により求められる。
【0025】
導電剤としてカーボンブラックを2種類以上含有してもよい。添加する複数のカーボンブラックは実質的に互いに導電性の異なるものであることが好ましく、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法(吸着した窒素量から1g当たりの表面積を算出する方法)による比表面積等の物性が異なるものを用いる。ここで、DBP吸油量(cc/100g)とは、カーボンブラック100gに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の量を示すものであり、ASTM(アメリカ標準試験法)D2414−6TTに定義される値である。また、BET法は、JIS6217に定義される方法である。
【0026】
導電性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを先に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。このように2種類以上のカーボンブラックを含有させる場合も、少なくとも、そのうちの1種類に酸性カーボンブラックを使うことによって、両方のカーボンブラックの混合や分散が高められる。
【0027】
市販されているカーボンブラックとしては、具体的には、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、同「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、同「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
【0028】
カーボンブラックは、上記のような市販品以外に、精製して得てもよい。精製とは、カーボンブラックの製造工程で混入した不純物、例えば残余の酸化剤、処理剤や副生成物等の不純物、その他の無機不純物や有機不純物を除去することである。また、カーボンブラックの表面は活性が高く物質を非常に吸着しやすいため、カーボンブラックの精製は使用前に行う必要がある。好ましくは72時間前、より好ましくは48時間前である。72時間を越えるとカーボンブラック表面に不純物が再吸着することがあり、精製の効果が低下してしまうことがある。
【0029】
カーボンブラックを精製する方法として、例えば、不活性ガスや真空中で500℃以上1000℃以下程度にする加熱処理、二硫化炭素やトルエン等の有機溶媒処理、水スラリーのミキシングや有機酸水溶液中のミキシング処理等で不純物を除去する方法である。精製できれば如何なるものであってもよく、これらの処理に限定するものではないが、粉体の加熱処理は製造工程上ハンドリングが難しく、エネルギーを多大に使うという難点がある。有機溶媒処理や水を主体とした処理が精製方法として好ましい。特に水主体の処理方法が好ましい。用いる水は、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが好ましい。
【0030】
−酸化処理カーボンブラックの添加量−
酸性カーボンブラックは、一般的なカーボンブラックに比べ、前述したように表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂組成物中への分散性がよいため、導電剤としての添加量を高くすることが好ましい。これにより、転写ベルト中のカーボンブラックの量が多くなり、上記電気抵抗値の面内バラツキが抑えられる等、酸化処理カーボンブラックを用いることの効果が発揮される。
このため、酸性カーボンブラックの含有量は、樹脂材料に対して、10質量%以上30質量%以下とすることがよい。これにより、転写ベルトの表面抵抗率の面内バラツキを抑制するなど、酸性カーボンブラックの効果が発揮される。この含有量が10質量%未満であると電気抵抗の均一性が低下し、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性が大きくなることがある。一方、30質量%を超えると所望の抵抗値が得られ難くなることがある。さらに、酸性カーボンブラックの含有量を18質量%以上30質量%以下とすることで、その効果がより発揮され、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性が顕著に改善される。
【0031】
−離型剤−
転写ベルト100の内周面112に付着させる離型剤110としては、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフニレンスルファイド樹脂、メチルフェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、ジメチルシリコーン変性物(メチルスチリル変性、長鎖アルキル変性等)等及びこれらに粉末シリカを混合したものが使用されるが、転写ベルト100の内周面112側の抵抗を制御する観点からジメチルシリコーンが好ましい。
転写ベルト100の内周面112に付着させる離型剤110の付着量(厚み)は、内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、外周面122側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高くなるように、離型剤の種類、転写ベルト本体120を構成する樹脂や導電剤の種類等に応じて決めればよい。離型剤(離型層)110の厚みは、通常は、0.01μm以上1μm以下、好ましくは、0.01μm以上0.5μm以下である。
転写ベルト100の内周面112に付着した離型剤110の厚みは、市販蛍光X線分析装置により測定する事ができる。具体的には、理学電気工業(株)製の自動蛍光X線分析装置(RIX3000)を用いて、30mmφの測定面積でSi元素の強度を求め、検量線より、そのSi成分量から離型剤層の厚みとした。
【0032】
<転写ベルトの製造例>
次に、導電剤としてカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を用いて、本実施形態に係る中間転写ベルトを作製する例を以下に例示する。ただし、これに限定されず、他の方法を採用してもよい。
本実施形態に係る転写ベルトは、
外周面に離型剤を付与した後、該離型剤に紫外線を照射して表面改質を行なった芯体の外周面に樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を固化させて樹脂皮膜を形成する工程と、
前記樹脂皮膜を前記芯体から抜き取る工程と、を含む方法によって製造される。
【0033】
−芯体−
芯体を構成する材質として、種々の金属を用いることができるが、価格や加工性の観点からアルミニウム、ステンレス、ニッケル等の金属が好ましい。なお、芯体がアルミニウム製の場合、高温に加熱すると強度が低下して変形を起こし易い。このため、アルミニウム素材を400℃程度に加熱し、空気中で自然冷却する焼鈍(焼きなまし)をすることが好ましい。
また、芯体の表面に樹脂溶液を塗布して形成させる樹脂皮膜の接着性(付着力)を制御したり、芯体の傷防止の観点から、アルミニウム製の芯体の表面にクロムやニッケルをめっきしても良い。
【0034】
芯体の外周面に、樹脂皮膜の接着防止のほか、製造する転写ベルトの内周面側の抵抗(内面抵抗)を制御するために離型剤を塗布する。
離型剤としては、前記したように、例えば、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフニレンスルファイド樹脂、メチルフェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、ジメチルシリコーン変性物(メチルスチリル変性、長鎖アルキル変性等)等及びこれらに粉末シリカを混合したものが使用されるが、転写ベルトの内周面側の抵抗を制御する観点からジメチルシリコーンが好ましい。
【0035】
ジメチルシリコーンは、転写ベルトの本体の内周面との反応又は皮膜の形成により、転写ベルトの内周面側の表層部の表面抵抗に大きく影響する。すなわち、転写ベルトの内周面側のジメチルシリコーンの付着状態によって転写ベルトの内周面側の表層部の表面抵抗を制御することができる。
転写ベルトの内周面側のジメチルシリコーンの付着状態(付着量等)は、具体的には、芯体の種類(材質)、芯体の表面処理、ジメチルシリコーンの状態、転写ベルトを形成するときに使用する樹脂溶液中に含まれるカーボンブラック量等によって変えることができ、これらの要素を調整することで内周面の抵抗が制御される。
【0036】
例えば、ジメチルシリコーンの状態を変化させる手段としては、紫外線照射等がある。また、樹脂溶液中のカーボンブラックの含有量が高濃度であると、形成された樹脂皮膜に対するジメチルシリコーンの付着力が強くなり、転写ベルトの内周面側の表層部の表面抵抗がより高くなる。
【0037】
芯体に対する離型剤の付与方法は、特に限定されないが、例えば芯体表面を脱脂した後に、スプレー塗布後、300℃以上320℃以下で1時間以上2時間以下焼き付けする方法が一般的である。また、スプレーが容易に行えるようにヘプタンなどの溶媒で離型剤を希釈してもよい。
芯体に塗布する離型剤の厚みは、芯体の材質、離型剤の種類、樹脂皮膜(転写ベルト本体)の材質等にもよるが、通常は、0.01μm以上2μm以下、好ましくは0.01μm以上1μm以下である。
芯体上の膜厚は、市販光干渉式膜厚測定装置で測定する事ができる。例えば、C10178光干渉式膜厚測定装置(浜松フォトニクス社製)等で測定することができる。
【0038】
なお、転写ベルト(樹脂皮膜)を芯体から抜き取るときに、転写ベルトの内周面に離型剤を付着させ易くすること、ベルト内周面に付着した離型剤によって内周面側の表層部の表面抵抗を確実に高くする観点などから、外周面に離型剤を付与した後、該離型剤に紫外線を照射して表面改質を行なった芯体を用いることが好ましい。
【0039】
−樹脂溶液−
精製したカーボンブラックを用意し、有機極性溶媒に分散させる。分散方法は、予備攪拌を行った後に分散機、ホモジナイザーにより分散する方法が好ましい。カーボンブラックの精製方法と同様に微細メディアの混入がカーボンブラックの精製効果を低下させてしまうため、メディアを使用しないメディアフリーの分散方法が好ましく、特に高粘度溶液を均一に分散することが可能な対向衝突型分散が好ましい。
【0040】
得られたカーボンブラック分散液中にジアミン成分と酸二無水物成分を溶解して重合させることでカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を作製する。この際、モノマー濃度(溶媒中におけるジアミン成分と酸無水物成分の濃度)は種々の条件により設定されるが、5質量%以上30質量%以下が好ましい。また、反応温度は80℃以下に設定することが好ましく、特に好ましくは5℃以上50℃以下であり、反応時間は5時間以上10時間以下である。
カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液は高粘度溶液であるため、作製時に混入した気泡は自然に抜けることはなく、塗布により気泡に起因するベルトの突起、へこみ、穴等の欠陥が発生する。このため、脱泡することが望ましい。脱泡はできる限り塗布直前に行う。
【0041】
−樹脂塗膜の形成−
前記用意した芯体の外周面に、上記のようなカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を塗布して塗膜を形成する。
シームレスベルトを形成する場合、例えばポリアミド酸溶液を円筒状の芯体の外周面に付与した後、乾燥により成膜してベル卜形状に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型(芯体)から回収する方法など、公知の方法に準じた方法が適用される(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等参照)。
なお、イミドに転化するには200℃以上の高温処理が一般的である。200℃以下では十分なイミド転化が得られない可能性がある。一方、高温処理はイミド転化に有利であり、安定した特性が得られるが、熱処理温度が高いほど使用する熱エネルギーが多くなり、熱効率が悪く、コストが高くなる。従って、転写ベルトの特性と生産性を考慮して熱処理温度を決めればよい。
【0042】
図4は、本実施形態に係る転写ベルト100を製造する際に用いる装置の一例の主要部分を概略的に示している。
この装置は、円筒状の芯体40の両端が矢印Aの方向に回転可能な保持部材42A,42Bによって保持されている。また、芯体40の上方には、樹脂溶液52を芯体40に供給しながら芯体40の軸方向に水平に移動可能な塗布装置48が配置されている。塗布装置48は、樹脂溶液52を収容する容器46と、容器46内の樹脂溶液を芯体40に向けて吐出するノズル44を備えている。さらに、芯体40の周辺には、芯体40に付着した樹脂溶液52を平滑化する板状のへら50が配置されており、へら50は塗布装置48と連動して芯体40の軸方向(矢印Bの方向)に移動する。
なお、塗布装置48とへら50の位置を固定し、芯体40が回転するとともに軸方向に水平に移動する構成としてもよい。
【0043】
まず、表面に離型剤110が付与された芯体40の一端の表面に、転写ベルトを形成するための樹脂溶液52を塗布装置48から供給する。樹脂溶液52は、少なくともベルト本体120を構成する樹脂及び導電剤を含むものを用いる。
樹脂溶液52を供給する際、芯体40を矢印A方向に回転させるとともに、芯体40の回転毎に塗布装置とへら50を芯体40の他方の一端に向けて水平方向(矢印B方向)に徐々に移動させる。芯体表面に供給された樹脂材料はへら50と接触して平滑化される。
樹脂溶液52の供給速度、芯体40の回転速度、芯体40とへら50との間隔などの条件によって塗膜54の厚みが制御される。塗膜54の厚みは乾燥後に得られる層厚に関係しているので、形成すべきベルトの厚みに応じて上記条件を設定すればよい。なお、塗布速度Vは、芯体40の外径k、樹脂溶液の流下量f、濡れ膜厚tと関係があり、V=f/(t・k・π)の式で表わされる。πは円周率を示す。
【0044】
−樹脂塗膜の固化(樹脂皮膜の形成)−
芯体40の表面にベルトを形成する樹脂溶液52を塗布して塗膜54を形成した後、固化させる。芯体40を回転させながら熱風を吹き付けて乾燥させ、さらに必要に応じて回転を停止した状態で加熱することで塗膜54が固化し、樹脂皮膜が形成される。
【0045】
−樹脂皮膜の抜き取り−
次いで、樹脂皮膜を芯体40から抜き取る。このとき、芯体40と樹脂皮膜との間には離型剤110が介在しているため、樹脂皮膜は芯体40から容易に抜き取られる。芯体40から抜き取った無端の樹脂皮膜の内面には離型剤が付着しており、この無端形状の樹脂皮膜を、必要に応じて使用する転写ベルトの幅となるように切断することで、内周面112に離型剤110が付着した転写ベルト100が得られる。
【0046】
−表層部の表面抵抗値−
上記のような方法により、芯体40の表面に予め付与した離型剤110をベルトの内周面112に付着させることで、ベルトの内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、ベルトの外周面122側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高くなるようにする。なお、本実施形態に係る転写ベルト100の表層部とは、表面よりベルト深さ方向に約6μmの部分である。
【0047】
−表層部の表面抵抗の測定方法−
ここでベルト表層部における表面抵抗の測定方法について説明する。図5に示すように、ベルトBに対し、それぞれブロック形状の電圧印加電極32及び電流測定電極34、並びに、電極32,34よりも大きく両電極を含む広さを有するガード電極36を用い、電極部32,34の間隔Dは10mmとする。この電極部32,34の間隔Dが10mmより小さいと印加電場がベルト深さ方向に廻り込み、ベルト深さ6μm以上の深部の抵抗を測定することになる。一方、電極部32,34の間隔Dが10mmを超えると、更にベルトの表面に近い部分の抵抗が測定されるが、信号である電流値が小さくなり、測定誤差が大きくなる。これらの事情から、電極部32,34の間隔Dは10mmが最適である。
【0048】
測定には、電極32,34とガード電極36との間に転写ベルトBを挟み込み、電極32と電極34,36との間に電圧200Vを印加する。印加開始10秒後の電流Iを電流計Aで測定し、下記式により、転写ベルトBの表層部の表面抵抗Rs(Ω)を算出する。
Rs=200(V)/I
【0049】
このような方法によってベルトBの各面における表面抵抗を測定したときに、内周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が外周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より大きくても、その差が0.5LogΩ未満であると、ギャップ転写による画質劣化の抑制と、放電欠陥の抑制との両立が困難となる。
【0050】
一方、ベルトBの内周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が外周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より大きくても、その差が2.0LogΩを超えると、ギャップ転写による画質劣化の抑制と、放電欠陥の抑制との両立が困難となる。また、芯体表面の改質、UV照射時間の延長、カーボンブラック量の高濃度化などがさらに必要になり、過大なコスト負荷がかかる。
例えば、カーボンブラックの量を増やすと、ベルトの機械特性、例えば、ヤング率などが大きく変化してしまい、転写ベルトとしての機能低下につながるおそれがある。また、樹脂材料中のカーボンブラックの量を増やすと、離型剤の性能が著しく落ちるため、ベルトを金型から脱型する事が困難になったり、焼成時のガス抜けの悪化により膨れを生じ、実用に耐えられなくなるおそれがある。
【0051】
上記のような理由から、本実施形態に係る転写ベルト100は、ベルトの内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、ベルトの外周面122側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高くなるようにするが、ベルトの外周面122側の表層部の表面抵抗値の常用対数値は10LogΩ以上12LogΩ以下であることが好ましい。ベルトの外周面122側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が10LogΩ未満では、トナー付着力の低下からトナー飛び散りによる画質劣化が発生するおそれがあり、12LogΩを超えると放電欠陥が発生するおそれがある。
【0052】
一方、ベルトの内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値は11.5LogΩ以上14LogΩ以下であることが好ましい。ベルトの内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が11.5LogΩ未満であったり、ベルトの内周面112側の表層部の表面抵抗値がベルトの外周面122側の表層部の表面抵抗値より低いと、ギャップ転写が発生し易くなり、画質劣化を招いてしまう。また、ベルトの内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が14LogΩを超えると、体積抵抗も高くなり、転写ベルト使用中の電荷が蓄積するため、除電機能が必要になる。
【0053】
以上のような理由から、ベルトの内周面側の表層部の表面抵抗値がベルトの外周面側の表層部の表面抵抗値と同等である場合、11.5LogΩ未満ではギャップ転写が発生するため、ベルトの外周面側の表層部の表面抵抗値の使用領域が11.5LogΩ以上12LogΩ以下までと狭くなり、使用時の環境や電源のバラツキを考慮すると実質的に様々な環境で満足して使用することが難しい。しかし、ベルトの内周面側の表層部の表面抵抗値をベルトの外周面のそれよりも常用対数値で0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高くすることで、ベルトの外周面側の表層部の表面抵抗値の使用領域を10LogΩ以上12LogΩ以下まで広げることが可能となり、様々な使用条件や環境で満足して使用することが可能となる。
【0054】
−体積抵抗率−
本実施形態に係る転写ベルト100は、その体積抵抗率の常用対数値が8以上12以下(LogΩ・cm)であることが好ましい。体積抵抗率の常用対数値が8未満では十分な転写電場が得られなくなり、転写不良が発生することがある。一方、体積抵抗率の常用対数値が12を越えると転写ベルト使用中の電荷が蓄積するため、除電機能が必要になる。
【0055】
−体積抵抗の測定方法−
ここで体積抵抗率の測定方法について説明する。図6に示すように、ブロック状の電圧印加電極31と、電極31よりも大きい電流測定電極33を用意する。電極31と電極33との間に転写ベルトBを挟み、電極31と電極33との間に電圧100Vを印加する。印加開始10秒後の電流Iを電流計Aで測定し、下記式により、転写ベルトBの転写面の体積抵抗率ρv(Ω・cm)が算出される。下記式中、L(cm)は電極Aの長さ、W(cm)は電極部31の幅、t(cm)はベルトBの厚みを示す。
ρv=L×W×100/(t×I)
なお、体積抵抗の測定は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JIS K6911(1995)に従って測定してもよい。
【0056】
−転写ベルトの厚さ−
本実施形態に係る転写ベルト100の厚さは、60μm以上200μm以下が好ましく、更に好ましくは70μm以上150μm以下である。ベルトの厚さが60μm未満ではベルトの強度が不足し、破断したり、折れが発生して画像欠陥につながることがある。また、ベルトの厚さが200μmを超えると、感光体への密着性が低下して画像が劣化することがある。
また、厚さムラはベルト内で20μm以内であることが好ましく、更に好ましくは10μmであり、特に好ましくは5μm以内である。ベルトの厚さムラが20μmを超えると、カラー画像を複数回の転写により形成した際に、色ずれが発生してしまうことがある。
なお、本実施形態に係る転写ベルトの厚さは、例えば渦電流方式のFisher社製イソスコープによって測定される。
【0057】
−転写ベルトのヤング率−
本実施形態に係る転写ベルト100のヤング率は3500MPa以上であることが好ましく、より好ましくは5000MPa以上である。ヤング率が3500MPa以上であれば、一次転写で斑点状の欠陥が発生することがより効果的に抑制される。なお、この欠陥は、転写ベルトで発生する放電により発生し、高速で中間転写ベルトを搬送する場合には、ベルトヤング率とのみ相関を示す、高速印刷特有の問題である。
ヤング率Eは、単位断面積にかかる力ΔSと単位長さでの伸びΔaを測定することにより下記式より算出する事ができる。
E=ΔS/Δa
【0058】
ここで、ΔSは、負荷Fとサンプルの膜厚t、サンプル幅wより、また、Δaは、サンプル基準長さL、負荷印加時のサンプル伸びΔLより、それぞれ下記のようにして算出される。
ΔS=F/(w×t)
Δa=ΔL/L
【0059】
ヤング率の測定には、市販の引張り試験機を使用する事ができる。例えば、アイコーエンジニアリング社製引張り試験機MODEL−1605Nが使用される。
【0060】
−表面微小硬度−
本実施形態に係る転写ベルト100は、転写面(外周面)の硬度が、表面微小硬度で30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましい。表面微小硬度とは、金属材料の硬さ測定等に広く用いられているビッカース硬さのように、くぼみの対角線長さを求めるという方法はとらず、圧子が試料にどれだけ侵入したかを測定する方法によって求められる。試験荷重をP(mN)、圧子の試料への侵入量(押し込み深さ)をD(μm)としたとき、表面微小硬度DHは下記式で定義される。
【0061】
DH≡αP/D
ここで、αは圧子形状による定数で、α=3.8584(使用圧子:三角錐圧子の場合)である。
この表面微小硬度は、圧子を押し込んで行く過程の荷重と押し込み深さから得られる硬さで、試料の塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での材料の強度特性を表すものである。なおかつ、その計測面積は微小であり、トナー粒径に近い範囲でより正確な硬度の測定が可能になる。ここで得られた表面微小硬度と、ホロキャラクターの発生レベルには相関があり、中間転写ベルトの転写面の表面微小硬度が30以下の場合には、二次転写部において、バイアスローラの押圧力によって転写ベルトの転写面の変形が起こり、これにより転写ベルト上のトナーに集中していた押圧力は分散される。このためトナーは凝集せず、ライン画像が中抜けするホロキャラクター等の画質欠陥の発生が抑制される。
【0062】
尚、転写ベルトの転写面における表面微小硬度は、下記の方法によって求められる。転写面を構成する材料(表面層)のシートを5mm角程度に切り、その小片を瞬間接着剤でガラス板に固定する。この試料の表面の表面微小硬度を超微小硬度計DUH−201S(株式会社島津製作所製)を用いて測定する。測定条件は、以下の通りである。
測定環境:22℃、55%RH
使用圧子:三角錐圧子
試験モード:3(軟質材料試験)
試験荷重:0.70gf
負荷速度:0.0145gf/sec
保持時間:5sec
【0063】
<転写ユニット>
図7は、前記実施形態に係る転写ベルト100を備えた転写ユニットの構成を概略的に示している。本実施形態に係る転写ユニット200では、転写ベルト100は対向配置された駆動ロール130及び従動ロール140に張架されている。また、図示されていないが、感光体(像保持体)表面のトナー像を転写ベルト100上に一次転写させるためのロールと、転写ベルト100上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に二次転写させるためのロールが配置される。なお、ベルト100を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。このような構成の転写ユニット200は画像形成装置に組み込まれて使用され、画像形成の際、ロール130,140の回転に伴って転写ベルト100も張架した状態で回転する。
【0064】
<画像形成装置>
前記実施形態に係る転写ベルト100を備えた画像形成装置は、中間転写体方式の画像形成装置であれば、特に限定されるものではなく、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像担持体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0065】
図8は、前記実施形態に係る転写ベルトを備えた画像形成装置の構成の一例を示している。本実施形態に係る画像形成装置300は、4色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)の現像器15を備えた色ごとの感光体(像保持体)9が中間転写ベルト100に沿って配置されたタンデム式カラー画像形成装置である。この画像形成装置300は、感光体9の表面を帯電する帯電ロール13(帯電手段)、感光体9の表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置8(潜像形成手段)、感光体9の表面に形成された潜像を、現像剤(トナー)を用いて現像し、トナー像を形成する現像器15(現像手段)、感光体9の表面に形成されたトナー像が一次転写される転写ベルト100、転写ベルト100を張架し、転写ベルト100を回転させるロール3,4,11、感光体9の表面に形成されたトナー像を転写ベルト100に一次転写させる一次転写ロール10(一次転写手段)、前記転写ベルト100に一次転写されたトナー像を記録媒体6に二次転写する二次転写ロール5(二次転写手段)、記録媒体6に転写されたトナー像を定着する定着ロール2(定着手段)、感光体9に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体クリーナー14(クリーニング装置)、トナーカートリッジ1等を備え、さらに必要に応じて、感光体9の表面に残留している静電潜像を除去する除電手段など他の部材が任意に備えられる。
【0066】
像担持体としては公知のものが用いられ、例えばその感光層としては、有機系、アモルファスシリコン等公知のものが用いられる。円筒状の像担持体の場合は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金を押出し成型後、表面加工する等の公知の製法により得られる。またベルト状の像担持体を用いてもよい。
帯電手段としては、特に制限はなく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などのそれ自体公知の帯電器が挙げられる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。帯電手段は、前記電子写真感光体に対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流をさらに重畳させて印加してもよい。
露光手段としては、特に制限はなく、例えば、感光体の表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。
現像手段としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。
【0067】
一次転写手段としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本実施形態においては、前記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
二次転写手段としては、前記一次転写手段として例示した転写ローラ等の接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等が挙げられる。これらの中でも、前記一次転写手段と同様に接触型転写帯電器が好ましい。転写ローラ等の接触型転写帯電器により強く押圧するようにすると、画像の転写状態を良好な状態に維持させることができる。また、中間転写ベルトを案内するローラの位置で転写ローラ等の接触型転写帯電器を押圧すると、中間転写ベルトから被転写体に対してトナー像を移転させる作用を良好な状態で行うことが可能になる。
【0068】
光除電手段としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
定着手段としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
クリーニング手段としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。
【0069】
次に、この画像形成装置を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール13により反時計方向に回転する感光体9表面を一様に帯電した後に、レーザー発生装置8(露光装置)により帯電された感光体9表面に潜像を形成し、次に、この潜像を現像器15から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、一次転写ロール(バイアスロール)10と感光体9との圧接部に運ばれたトナー像を時計回りに回転する中間転写ベルト100の外周面122に転写する。トナー像を中間転写ベルト100に転写した後の感光体9は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体クリーナー14によりクリーニングされ、次のトナー像の形成に備える。
【0070】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト100の外周面122上に順次重ね合わされた状態で、二次転写部に運ばれ二次転写ロール5により、用紙トレイ7から用紙経路を経由して搬送されてきた記録用紙6表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着部を構成する1対の定着ロール2の圧接部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置300の外へと排出される。
【0071】
二次転写部を通過した中間転写ベルト100は、転写クリーナー12により外周面122がクリーニングされた後に次のトナー像の転写に備える。
【0072】
本実施形態に係る画像形成装置300における中間転写ベルト100は、ベルト100の内周面112に離型剤が付着しており、該ベルトの内周面112側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、ベルト外周面122側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5以上2.0LogΩ高くなっている。このような中間転写ベルト100を備えていることで、ギャップ転写と放電欠陥が抑制された画像形成が行われる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<芯体の準備>
まず、外径366mm、肉厚10mm、長さ450mmのアルミニウム製円筒を用意し、球形アルミナ粒子によるブラスト処理により、表面をRa1.0μmに粗面化した。
また、保持板として、厚さが15mm、外径が上記円筒に嵌る大きさであり、20mm径の中央孔と、その周囲に100mm径の4つの通風孔を設けたものを、アルミニウム材で作製した。この保持板を上記円筒に嵌めてTIG溶接によって接合させて芯体を得た。
【0074】
芯体1:上記芯体の表面に、ジメチルシリコーン系離型剤(信越化学工業社製「SEPA−COAT」)100質量部に対し、n−ヘプタン400質量部で希釈した溶液をスプレーガン(アネスト岩田(株)製、商品名:SPRAI GUN LHP−50)で厚さ1μmに塗布し、300℃、20分で焼付けた。更に、芯体表面からの距離20mmの位置から光強度10mW/cmの紫外線ランプで、芯体を600rpmで回転しながら180秒間紫外線照射したものを芯体1とした。
【0075】
芯体2:芯体1と同様の処理を施した後、芯体1と同様な条件で紫外線照射を360秒行なったものを芯体2とした。
芯体3:芯体1と同様の処理を施した後、芯体1と同様な条件で紫外線照射を600秒行なったものを芯体3とした。
芯体4:芯体1の作製で使用したジメチルシリコーン系離型剤に代えて、フッ素系離型剤(ダイキン社製ダイフリーGF3130)を2,2,4−トリメチルペンタンで5倍希釈した溶液を、芯体の表面にスプレーガン(アネスト岩田(株)製、商品名:SPRAI GUN LHP−50)で厚さ1μmに塗布し、50℃、30分で乾燥したものを芯体4とした。
芯体5:芯体4と同様な処理を施した後、芯体1と同様な条件で紫外線照射を180秒行なったものを芯体5とした。
【0076】
<樹脂溶液の調製>
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とP−フェニレンジアミン(PDA)とをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で等モル反応させたポリイミド前駆体溶液(宇部興産社製:ユーワニスS、固形分18質量%)に酸化カーボンブラック(Degussa社製:SPECIAL BLACK4)を添加した。この混合物を、対向衝突型分散機(ジーナス社製:Geanus PY)を用いて、圧力200N/mmとして最小面積が1.4mmで2分割後衝突させ、再度2分割させる経路を5回通過(5Pass)させることによりカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を得た。これをステンレス製フィルタ(メッシュ径:20μm)に通過させて、異物及びカーボンブラック凝集物を取り除いた。更に、これを真空脱泡装置へ移し、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な塗布用溶液を作製した。
塗布液1:上記カーボンブラック量をポリイミド前躯体溶液100重量部に対し、27重量部となる量を添加した液を塗布液1とした。
塗布液2:上記カーボンブラック量をポリイミド前躯体100重量部に対し、25.5重量部となる量を添加した液を塗布液2とした。
【0077】
<塗膜の形成>
次に、得られたカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を上記芯体1〜7にそれぞれ塗布液1、2を以下の方法で塗布した。
芯体を100rpmで回転させながら、芯体の一端部から10mmの位置を基点として、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を充填したディスペンサーとスクレーパーとを移動速度150mm/minで芯体の軸方向に移動させた。これにより、芯体の外周面の軸方向の400mmの範囲に、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液の厚みが0.5mmとなるように塗布した。
【0078】
<樹脂皮膜の形成>
塗布後、芯体の保持板の中央孔に20mm径のステンレス製シャフトを通し、水平状態となるように回転台に載せ、回転速度6rpm、120℃、30分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、芯体を垂直にし、シャフトを外して台に載せ、加熱装置により200℃で30分間及び340℃で30分間の加熱を行い、ポリイミド樹脂皮膜を形成した。
【0079】
<転写ベルトの抜き取り>
芯体が室温まで冷えた後、加熱装置から芯体を取り出した。次いで、芯体と樹脂皮膜の隙間に加圧空気(圧力:0.3MPa)を吹き込み、皮膜と芯体との密着を解除して芯体から皮膜を抜き取ることにより無端形状のベルトを得た。
得られたベルトの両端を切り落とし、長さ(幅)360mmの無端の転写ベルトを得た。
【0080】
各転写ベルトの厚さは約80μmであった。膜厚は、渦電流方式のFisher社製イソスコープで測定した値(測定条件は、22℃/55%RH環境下で5回測定した平均値)である。
転写ベルト内周面の離型剤付着膜厚は、理学電気工業(株)製の自動蛍光X線分析装置(RIX3000)を用いて、30mmφの測定面積でSi元素の強度を求め、検量線より、そのSi成分量より求めた。
【0081】
実施例1:芯体1に塗布液1を用いて作製した転写ベルト
実施例2:芯体1に塗布液2を用いて作製した転写ベルト
実施例3:芯体2に塗布液1を用いて作製した転写ベルト
実施例4:芯体2に塗布液2を用いて作製したベルト
【0082】
比較例1:芯体4に塗布液1を用いて作製した転写ベルト
比較例2:芯体4に塗布液2を用いて作製したベルト
比較例3:芯体5に塗布液1を用いて作製した転写ベルト
比較例4:芯体5に塗布液2を用いて作製したベルト
比較例5:芯体3に塗布液1を用いて作製した転写ベルト
比較例6:芯体3に塗布液2を用いて作製した転写ベルト
比較例5、6は膨れが発生し、転写ベルトとして使えないものであった。また、樹脂皮膜が芯体に強く貼り付いて脱型(抜き取り)が困難であった。
【0083】
<表面抵抗値の測定>
それぞれの転写ベルトの内周面及び外周面のそれぞれの表層部における表面抵抗値を、前記図5に示した構成のブロック電極を使用して測定した。測定条件は22℃55%RH環境下で、印加電圧200V、電圧印加10秒後の電流値より表面抵抗値を求めた。電流測定には、アドバンテスト社製微小電流計R8340Aを使用した。
使用した芯体及び転写ベルトの各面の表層部表面抵抗値(常用対数値)を下記表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
<コピー画質の評価>
富士ゼロックス社製DocuCentre-II C6500を使用して、シアン、マゼンタの30%ハーフトーン及び12ポイント漢字を富士ゼロックス社製C2紙に出力して画質確認を行い、ハーフトーン画像中の白抜け、文字周りのトナー飛び散りの有無を目視判定した。結果を下記表2に示す。表2中、○はハーフトーン画像中の白抜け又は文字周りのトナー飛び散りが無いことを示す。
【0086】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施形態に係る中間転写ベルトを示す概略図である。
【図2】実施形態に係る中間転写ベルトの厚さ方向の断面を示す概略図である。
【図3】単層のベルトの厚さ方向と抵抗値の変化との関係を示す図である。
【図4】実施形態に係る転写ベルトの製造に使用する装置の一例の主要構成を示す概略図である。
【図5】表面抵抗値を測定する方法を示す概略図である。
【図6】体積抵抗率を測定する方法を示す概略図である。
【図7】実施形態に係る転写ユニットの構成を示す概略図である。
【図8】実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0088】
1 トナーカートリッジ
2 定着ロール
3,4,11 張架ロール
5 二次転写ロール
6 記録媒体
7 用紙トレイ
8 レーザー発生装置
9 感光体
10 一次転写ロール
12 転写クリーナー
13 帯電ロール
14 感光体クリーナー
15 現像器
31 電圧印加電極
32,33,36 電極
34 電流測定電極
40 芯体
42A,42B 保持部材
44 ノズル
46 容器
48 塗布装置
52 樹脂溶液
54 塗膜
100 中間転写ベルト
110 離型剤
112 内周面
120 ベルト本体
122 外周面
130 駆動ロール
140 従動ロール
200 転写ユニット
300 画像形成装置
A 電流計
B 転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に離型剤が付着しており、該内周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、外周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値より0.5LogΩ以上2.0LogΩ以下高いことを特徴とする転写ベルト。
【請求項2】
前記離型剤が、ジメチルシリコーンを含むことを特徴とする請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項3】
前記外周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、10LogΩ以上12LogΩ以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転写ベルト。
【請求項4】
前記内周面側の表層部の表面抵抗値の常用対数値が、11.5LogΩ以上14LogΩ以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転写ベルト。
【請求項5】
外周面に離型剤を付与した後、該離型剤に紫外線を照射して表面改質を行なった芯体の外周面に樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を固化させて樹脂皮膜を形成する工程と、
前記樹脂皮膜を前記芯体から抜き取る工程と、
を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の転写ベルトを製造する方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の転写ベルトと、該転写ベルトを張架する複数のロールと、を備えることを特徴とする転写ユニット。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が一次転写される請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の転写ベルトと、
前記転写ベルトを張架し、該転写ベルトを回転させるロールと、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記転写ベルトに一次転写させる一次転写手段と、
前記転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写させる二次転写手段と、
前記記録媒体に二次転写された前記トナー像を定着させる定着手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−66411(P2010−66411A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231435(P2008−231435)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】