説明

転写用成形型

本発明は、転写パターン層とは異なる材料からなるベースによって支持された、ポリマー材料からなるポジ型突起パターン表面を備えた転写パターン層を有する転写用成形型に関する。転写パターン層は、周囲温度で硬化可能な組成物から形成される。本発明はまた、転写用成形型のポジ型又はネガ型複製品を製造する方法ならびに転写用成型型の成形後の複製品(レプリカ)から微細構造体(例えば、プラズマバリアリブ)を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
薄型で大画面のフラットパネルディスプレイとしてプラズマディスプレイパネル(PDP)が近年注目されている。このようなパネルは、業務用としてあるいは壁掛けテレビセットとして使用されつつある。
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、通常、多数個の微細な放電表示セルを含んでいる。それぞれの放電表示セルは、離隔対向した一対のガラス基板と、これらのガラス基板間に配置されたバリア隔壁(「バリアリブ」ともいう)とによって囲まれて画定されている。バリアリブは、一般的に、セラミック材料の微細構造体からなっている。単一組の平行なバリアリブを使用する場合には、バリアリブをもってストライプ状のパターンを形成している。このような態様において、放電表示セルは、バリアリブ間のトラフ凹部である。別法によれば、バリア隔壁は、格子パターンを有することができる。
【0003】
バリアリブを形成するいくつかの方法が公知である。例えば、特開平9−283017号公報及び特開平10−134705号公報を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形型の製造方法の途中に特開平10−134705号公報に記載されるようにシリコーンシートのヒートプレスを行った場合、寸法の変化が発生する。したがって、そのような成形型やそのような成形型の製造方法において改良された寸法精度が得られるようになれば、産業的に有利なものとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、その1つの面において、転写パターン層とは異なる材料からなるベースによって支持された、ポリマー材料からなるポジ型突起パターン表面を有する転写パターン層を含む転写用成形型に関する。
【0006】
本発明は、そのもう1つの面において、転写用成形型を製造する方法であって、ベース基材を用意することと、前記ベース基材とは異なる材料を含む硬化可能なポリマー組成物から、ポジ型突起パターンを備えた転写パターン層を形成することと、前記転写パターン層を硬化させることとを含む製造方法に関する。転写パターン層は、好ましくは、周囲温度で硬化せしめられる。転写パターン層は、好ましくは、ネガ型溝パターンをその表面に有するマスター金型から、そのマスター金型のネガ型溝パターンに硬化性組成物を適用しかつそのマスター金型上にベース基材を積層することにより形成される。
【0007】
また、本発明は、その別の面において、転写用成形型のポジ型又はネガ型の複製品を製造する方法ならびに、転写用成形型の成形後の複製品(レプリカ)から、微細構造体(例えば、プラズマバリアリブ)を製造する方法に関する。
【0008】
これらの面のそれぞれは、例えば以下に記載するようないろいろな特徴の任意の1つもしくは組み合わせを含んでもよい。ベースは、好ましくは、1〜250GPa、さらに好ましくは100〜250GPaのヤング率を有する材料を含む。金属材料、例えばステンレス鋼、銅及びその合金が有利なベース材料である。転写パターン層は、典型的には、0.005〜10mmの厚さを有し、一方、ベースの厚さは、0.1〜5mmである。転写パターン層の突起パターンは、プラズマディスプレイパネルに好適なパターン、例えば平行なリブパターンあるいは格子(グリッド)パターンを含むことができる。転写パターン層は、好ましくは、周囲温度で硬化可能な組成物、例えばシリコーンゴム及び(例えば、ポリエステル)ポリウレタンを含む。ベースと転写パターン層との間に下地層(プライマ層)を配置してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、転写用形型、その製造方法及び微細構造体の製造方法に関する。以下では、微細構造体の典型例であるPDPリブの製造を参照して本発明の態様を詳細に説明する。なお、本発明は、その他の構造体においても有用であると推測され、よって、PDPリブの製造にのみ限定されるわけではない。
【0010】
図1及び図2を参照すると、それぞれの放電表示セル56は、離隔対向した一対のガラス基板、すなわち、前面ガラス基板61及び背面ガラス基板51と、微細構造のリブ(バリアリブ、「隔壁」又は「障壁」ともいう)54とによって囲まれて画定されている。前面ガラス基板61は、走査電極及び維持電極からなる透明な表示電極63と、透明な誘電体層62と、透明な保護層64とをその上に備えている。背面ガラス基板51は、アドレス電極53と、誘電体層52とをその上に備えている。走査電極及び維持電極からなる表示電極63とアドレス電極53は、直交しており、かつ、それぞれ、一定の間隔をあけて配置されている。各放電表示セル56は、その内壁に蛍光体層55を有するとともに、希ガス(例えば、Ne−Xeガス)が封入されており、上記電極間のプラズマ放電により自発光表示をできるようになっている。
【0011】
PDPのリブ54は、背面ガラス基板51の上に設けられてPDP用背面板を構成している。リブ54の間隔(セルピッチ)Cは、画面サイズなどによって変動するけれども、一般的には少なくとも約150μmであり、典型的には約400μmを上回ることがない。
【0012】
一般的に、リブは、2つの要件、すなわち、「気泡の混入や変形などの欠陥のないこと」及び「ピッチ精度がよいこと」を満たさなければならない。ピッチ精度に関して言えば、リブは、その形成時、アドレス電極に対して最低の位置合わせ誤差で所定位置に設けられる。位置合わせ誤差は、平均ピッチの3分の一よりも大きくなることがない。位置合わせ誤差は、典型的には、平均ピッチの25%よりも少なく、好ましくは、平均ピッチの20%よりも少なく、最も好ましくは、15%よりも少なく、さらに好ましくは、平均ピッチの10%よりも少ない場合もある。
【0013】
画面サイズの大型化が進んでいるので、リブのピッチ精度の問題は深刻である。リブ54を全体として見た場合、リブ54のトータルピッチ(両端のリブ54の距離;図では5本のリブしか示されていないが、一般的に、約3000本のリブが存在する)Rは、一般的に、10〜30μm以内の寸法精度である。
【0014】
一般的には、支持体とそれによって支承された溝パターン付きの賦形層とからなる可とう性成形型を用いてリブを成形するのが有用である。このような成形方法の場合に、所望とする寸法精度を達成することができる。
【0015】
本発明の転写用成形型は、PDP用の格子状リブの形成においてとりわけ有用であるが、これには次のような理由がある。
【0016】
放電表示セルの数は、42インチ級の大型PDPの場合、2〜3百万個にも及んでいる。そのために、金型の加工工程において極めて長い時間が必要とされる。例えば、縦リブ3,000本×横リブ1,000本からなる格子状リブの場合、格子状突起パターンを有するマスター金型を作製しようとすると、3,000,000個(3,000×1,000)の放電セルを穴あけ加工する。実際、本発明に従いマスター金型に格子状溝パターンを加工するように設計変更した場合には、単に4,000個(3,000+1,000)の溝を線状に掘るだけで十分である。すなわち、本発明に従うと、マスター金型の加工時間を減らし、よってコストを低下させることができる。また、転写用成形型を微細構造体の製造のための型として使用することで、多数の母型を作製することが不必要となる。
【0017】
ここで説明しておくと、格子状リブの説明のために用いられている「格子状パターン」なる語は、図4及び図6を参照して以下に説明するような典型的な格子状パターンのみを意味するわけではなく、格子に近い構造をもった類似のパターンも包含する。本発明の実施に有効なパターンとしては、例えば、ミアンダパターン、ワッフル(井桁)パターン、ひし形パターンなどを挙げることができる。
【0018】
図示のPDPリブは、以下に詳細に説明するように、そのリブに対応する形状及び寸法を備えたマスター金型を成形型として使用して転写用成形型を作製する工程、そしてその転写用成形型から可とう性成形型を複製して、すなわち、転写用成形型を実質的な母型として使用して可とう性成形型を作製する工程によって有利に製造することができる。可とう性成形型を使用すると、目的とするPDPリブを容易にかつ高精度で製造することができる。
【0019】
本発明は、第1に、微細構造体の製造において微細構造パターンの転写に使用される転写用成形型(以下、「転写型」と略称する)にある。図3は、本発明による転写型の好ましい1態様を示した斜視図であり、また、図4は、図3の線分IV−IVに沿った断面図である。転写型10は、これらの図面に図示されるように、ベース11と、ベース11によって裏面を支持された、微細構造パターン(図では、格子状パターン)に対応する形状及び寸法を有するポジ型突起パターン14を表面に備えた転写パターン層12とを有している。
【0020】
本発明の転写型10は、硬化した2液型組成物から形成された転写パターン層12を有している。転写パターン層は、好ましくは、例えばシリコーンゴム又はポリウレタンのような室温硬化可能な組成物から形成される。
【0021】
図示の転写型を使用して製造される微細構造体は、特に限定されるものではない。本発明の実施において好適な微細構造パターンは、前記したように、PDP用リブの微細構造パターンである。転写型のポジ型突起パターンは、通常、一定の間隔をあけて互いにほぼ平行に配置された複数本の突起部をもって構成されたストレートパターンであるか、さもなければ、図3に示すように、一定の間隔をあけて互いに交差しながらほぼ平行に配置された複数本の突起部をもって構成された格子状パターン14である。相隣りあった格子状パターン14は、例えばPDPパネルの放電表示セルに対応するキャビティ15を規定している。本発明の転写型は、典型的なことに、たとえ微細構造パターンが格子状パターンに代表される複雑なパターンであっても、転写型をマスター母型から剥離する時に比較的に弱い剥離力で十分である。本発明の転写型は、突起部の破損が少ない。
【0022】
本明細書に記載される転写用成形型において、ベースは、好ましくは、転写パターン層とは異なる材料から形成される。ベースは、好ましくは、そのヤング率が少なくとも1GPaであり、典型的には300GPaよりも大きくなることがない硬質材料から形成される。種々の材料のヤング率(すなわち、長手方向の弾性率)は、公知であり、例えばJSME Mechanical Engineers' Handbook, Japan Society of Mechanical Engineers, 1984のような文献に記載されている。好ましくは、ベースは、少なくとも約100GPaであり、典型的には約220GPaよりも大きくないヤング率を有している。このような硬質材料は、マスター母型から転写用成形型(転写型)を作製する際に、マスター母型に備わった高い寸法精度を維持することができる。すなわち、マスター母型上に転写パターン層の成形材料を塗布して硬化させる場合、その転写パターン層の成形料の硬化収縮があるため、得られる転写パターンの寸法精度を精確に維持することが一般的には困難であるけれども、本発明では、高い弾性率を有する硬質材料をベースに用いたことで、高い寸法精度をもたらすことができる。
【0023】
ベースに好適な硬質材料は、広範囲な金属材料及びプラスチック材料を包含する。とりわけ金属材料が有用である。適当な金属材料の例は、ステンレス鋼(例えば、ヤング率は約200GPa)、銅(例えば、ヤング率は約130GPa),そして真鍮(例えば、ヤング率は約100GPa)を包含する。これらの金属材料は、単体で使用してもよく、さもなければ、所望ならば、合金の形で使用してもよい。所望とするヤング率を有するプラスチック材料は、例えば、ナイロン(例えば、ヤング率は約1.2〜2.9GPa)、ポリスチレン(例えば、ヤング率は約2.7〜約4.2GPa)、そして特定のポリエチレン材料を包含する。
【0024】
ベースは、単一の硬質材料からなるシート又は板の形で使用するのが一般的であるけれども、所望ならば、複合体あるいはラミネート(積層された物品)の形で使用してもよい。ベースの厚さは、転写型の仕様に応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約0.1〜5mmの範囲であり、さらに好ましくは、約0.5〜3mmの範囲である。ベースの厚さが0.1mmよりも薄くなると、転写型の取り扱い性が低下し、また、母型の高い寸法精度の維持が困難になる。例えば、ベースとして、所定の厚さをもった金属板に代えてPETフィルムを使用した場合、転写型は軽くなるけれども、もはや高い寸法精度を維持することが難しくなる。反対に、転写型の厚さが5mmを上回ると、重量増加に原因して転写型の取り扱い性が低下する。
【0025】
ベースによって裏面を支持される転写パターン層は、好ましくは室温で硬化可能な硬化性の組成物から形成される。少なくともいくつかの態様において、硬化性の組成物は、好ましくは、(例えば2液型の)シリコーンゴム又はポリウレタンである。室温硬化性の組成物から転写パターン層を形成する場合、熱硬化性樹脂とは異なって基材やマスター金型を加熱処理する必要がない。そのために、加熱に原因した変形と、それによる寸法精度の低下を回避することができる。なお、光硬化性樹脂や湿気硬化性樹脂を使用して転写パターン層を形成することも考えられ。しかしながら、このような硬化性樹脂の場合、マスター金型と基材の間に挟んで使用されるので、十分に硬化させることがより困難である。
【0026】
転写パターン層は、好ましくは、表面エネルギーが低く、柔軟性を有している。結果として、マスター金型から転写用成形型(第1の転写型)を剥離する作業、そして第1の転写型から微細構造体用成形型(第2の転写型)を剥離する作業が比較的に楽になる。少なくともいくつかの好ましい態様において、24時間の除去コンディショニング後の180°剥離力は、5kgf/100mm未満であり、さらに好ましくは1kgf/100mm未満である(例えば、0.5kgf/100mm未満)。
【0027】
転写パターン層を形成するための(例えば室温で)硬化性の組成物は、一般的に数時間で硬化させることが可能である。そのため、数時間で転写型を製造することができる。さらに、転写パターン層は繰り返し使用に耐え得る強度を有しているので、このようにして製造された転写型を、(例えば、実質的な母型として)、常用のマスター金型に代えて使用することができる。よって、金型を機械加工により直接作製する場合に比較して加工時間を短縮することができる。
【0028】
室温硬化性シリコーンゴムは、周囲温度(約20〜25℃)で硬化可能であり、また、通常、空気中の湿気と反応して硬化可能な1液型の製品と、使用時に主成分と硬化剤を所定の割合で混合することにより反応して硬化可能な2液型の製品とに分類される。所期の転写パターン層を形成し得る限り、いろいろな硬化性シリコーンゴム組成物を使用することができる。一態様において、室温硬化性のシリコーンゴムは、少なくとも1種類の(例えば、2官能性の)オルガノポリシロキサンと、架橋剤と、触媒とを有している。
【0029】
オルガノポリシロキサンは、次式(I)によって表すことができる。
【0030】
【化1】

【0031】
上式において、R〜Rは、それぞれ互いに独立していて、水素原子を表すかもしくは有機基、好ましくは置換もしくは非置換のアルキル基、例えばメチル基又はエチル基を表し、X及びXは、それぞれ互いに独立していて、反応性基、好ましくは官能基、例えばヒドロキシル基を表し、そしてnは、約100〜1,000の整数である。
【0032】
架橋剤は、好ましくは、例えば、1分子当たり2個以上の官能基、例えばヒドロキシル基を有するシラン又はポリシロキサンである。
【0033】
常用の触媒、例えばスズ化合物、アミン、白金化合物等を触媒として使用することができる。
【0034】
これらの3成分をいろいろな比率で配合して使用することができる。例えば、オルガノポリシロキサンと架橋剤の配合比は、通常、約100:0.5〜100:10の範囲(縮合反応型シリコーンゴム)あるいは約100:3〜100:100の範囲(付加反応型シリコーンゴム)である。
【0035】
シリコーンゴムは、任意であるが、種々の添加剤を含有することができ、そうすることが望ましい。適当な添加剤の例は、反応抑制剤、離型剤、離型向上剤、流動調節剤などを包含する。特に、2液型の室温硬化性シリコーンゴムは、例えばGE東芝シリコーン社から、商品名「TSE3503」、「TSE350」、「TSE3504」、「TSE3502」、「XE12−246」、「TSE3508」、「XE12−A4001」、「TSE3562」、「TSE3453」、「TSE3453T」、「TSE3455T」、「TSE3456T」、「TSE3457T」及び「TSE3450」として商業的に入手可能である。その他の2液型の室温硬化性シリコーンゴムは、東レダウコーニングシリコーン社から、商品名「SH9550RTV」、「SH9551RTV」、「SH9552RTV」、「SH9555RTV」、「SH9556RTV」及び「SH9557RTV」として商業的に入手可能である。これらの製品に加えて、2液型の室温硬化性シリコーンゴムは、住友3M社から品番「6160」、「7322H」及び「0425H」として商業的に入手可能である。これらの2液型室温硬化性シリコーンゴムの詳細は、熊田及び和田監修「シリコーンの最新応用技術」、昭和57年2月26日発行、株式会社CMCに詳細に記載されている。
【0036】
転写パターン層のため、種々のポリウレタンが好適である。ポリウレタンは、通常、少なくともヒドロキシル基含有材料を少なくとも1種類のポリイソシアネートと反応させることによって調製される。ここで、「ポリイソシアネート」とは、例えばジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート等、あるいはその混合物のような、単一の分子中に2個もしくはそれ以上の反応性イソシアネート(−NCO)基を有している任意の有機化合物を意味する。環状及び(又は)線状のポリイソシナネート分子を有用に使用することができる。
【0037】
種々の適当なポリイソシアネートを三井武田化学社から商業的に入手可能である。これらのものには、「TakedaD100」シリーズのトルエンジイソシアネート(TDI)付加物(例えば、D−101A、D−102、D−103、D−103H、D−103M2、D−104)、「TakedaD200」シリーズのTDI高分子イソシアネート(例えば、D−204、D−204EA、D−212、D−212L、D−212M6、D−262、D−215、D−217、D−218、D−219、D−268、D−251D)ならびにキシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、「TakedaD110」シリーズのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)付加物(D−110N、D−120N、D−127N、D−140N、D−160N、D−165N、D−170N、D−170HN、D−172N、D−177N、D−178N)を包含する。
【0038】
ヒドロキシル基含有材料は、通常、2個もしくはそれ以上のヒドロキシル基を有するポリオールであるけれども、単一のヒドロキシル基を有する材料を単独で使用してもよく、さもなければ、ポリオールと組み合わせて使用してもよい。変性されたイソシアネート成分を調製するため、種々のポリオールを利用することができる。適当なポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリジエンポリオール、水素化ポリジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール及び炭化水素ポリオールを包含する。ポリオールは2個よりも多数のヒドロキシル基を有することができるが、ポリオールは、好ましくは、2官能性である。
【0039】
種々のポリエステルポリオールは、三井武田化学社から入手可能である。例えば、「TakelecU」シリーズのポリエステルポリオール(例えば、U−21、U−24、U−25、U−27、U−53、U253、U−502、U−118)、「TakelecUA」シリーズのアクリル系ポリオール(例えば、UA−702、UA−902、UA−906)及び「TakelecE」シリーズのポリウレタンポリオール(例えば、E−158、E−550、E−551T、E−553、E−900)がある。
【0040】
(例えば室温で)硬化性の組成物(「転写パターン層の前駆体」とも呼ぶ)からその硬化によって形成された転写パターン層は、十分な強度及びその他の性質を備えており、したがって、そのまま転写用成形型の賦形成形用の一員として使用することができる。硬化(キュアリング)は、種々の条件下で実施することができる。しかしながら、転写パターン層の組成物は、25〜100℃の周囲温度で硬化する。例えば、シリコーンゴムの転写パターン層は、25℃で約16時間にわたって、あるいは100℃で約2時間にわたって硬化させることができる。
【0041】
任意であるが、転写パターン層とベースの間に下地層を配置して、これらの層の互いの付着力を改善してもよい。この目的に使用するのに好適な種々の下地組成物がこの技術分野において公知である。シリコーンゴムの転写パターン層の場合には、ポリアルキルシロキサン、ポリアルコキシシラン及びその混合物をもって適当な下地層が与えられる。ポリウレタンの場合には、イソシナネート又はヒドロキシ官能性材料をもって適当な下地が与えられる。
【0042】
転写パターン層の厚さは、変更することができるが、一般的には、少なくとも約0.005mmであり、典型的には10mmよりも大きくはない。好ましくは、転写パターン層の厚さは、少なくとも約20μmであり、好ましくは200μmよりも大きくはない。転写パターン層の厚さが0.005mmを下回ると、ポジ型突起パターンをその層の表面に付与することが難しくなる。転写パターン層の厚さが10mmを上回ると、材料コストが増加する。
【0043】
ポジ型突起をもった転写用成形型は、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有するネガ型溝パターン(凹部パターン)を表面に備えたマスター金型を使用する。そのため、転写用成形型は、マスター金型の機械加工を容易に、かつ比較的に短時間で実施することができるという効果もある。マスター金型の格子状凸部パターンを金属ドラムに機械加工することができる。PDPの場合には、マスター金型は、通常、平滑な平坦基板に溝を機械加工することによった加工を実施する。マスター金型は、好ましくは、機械加工が可能な金属、例えば、真鍮、銅、アルミニウム、ベリリウム銅合金ならびに電解及び無電解ニッケルリン合金を含んでいる。従来のように、凹部パターンを表面に備えたマスター金型から直接に微細構造体(例えば、PDPリブ)を転写によって作製した場合には、例えば突起部(例えば、リブ)の破損のような問題が発生する。これとは対照的に、本発明では、特定構造の転写型を使用しているので、このような問題を回避することができる。要するに、格子状凹部パターンを備えたマスター金型を容易に加工することができ、また、リブ欠陥を生じることなく格子状リブを形成することができる。
【0044】
微細構造体は、好ましくは、以下に図7を参照して説明するように、下記の工程で(例えば、記載の順序で)製造される:
格子状凹部パターンを備えたマトリックス(マスター金型)の作製、
格子状凸部パターンを備えた転写用成形型(第1の転写型)の作製、
格子状凹部パターンを備えた微細構造体成形用成形型(第2の転写型)の作製、及び
微細構造体の作製。
【0045】
この製造プロセスでは、工程が多いので、寸法精度の誤差を生じる機会が増加する。しかし、本発明では、上記したように第1の転写型として特定の構造の転写型を採用しているので、寸法精度の維持が容易に可能である。また、この効果は、第2の転写型として、以下に説明するように可とう性の成形型を使用することで、さらに高めることができる。
【0046】
本発明による転写用成形型は、いろいろな手法を使用して製造することができるが、好ましくは、下記の工程:
目的とする微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有するポジパターン(ポジ型突起パターン)を表面に備えた転写パターン層を(例えば、2液型で室温硬化性の)硬化性組成物(例えば、シリコーンゴム又はポリウレタン)から形成する工程、及び
前記転写パターン層の裏面を、ベース、好ましくは高い弾性率を有する硬質材料からなるベースによって支持する工程
を含む方法によって製造することができる。
【0047】
また、本発明の製造方法の実施において、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有するネガ型溝パターンを表面に備えたマスター金型を母型として使用し、前記マスター金型の溝パターンを転写して前記転写パターン層のポジ型突起パターンを形成することが好ましい。
【0048】
具体的には、本発明の転写用成形型は、下記の工程:
マスター金型の表面に、2液型で(例えば、室温で)硬化性の組成物(例えば、シリコーンゴム又はポリウレタン)を所定の膜厚で適用して前記転写パターン層の前駆体層を形成する工程、
前記マスター金型の上に前記ベースを積層して前記マスター金型、前記転写パターン層の前駆体層及び前記ベースを含む積層体を形成する工程、
前記組成物を硬化させる工程、そして
前記組成物の硬化によって形成された前記転写パターン層を、前記ベースとともに、前記マスター金型から離型する工程、
を順次実施することによって製造することができる。
【0049】
図5は、本発明による転写用成形型の製造方法の典型例を示したものである。
【0050】
まず、図6に斜視図で示し、かつ図5Aに図6の線分V(A)−V(A)に沿った断面図で示すようなマスター金型1を用意する。マスター金型1は、図3及び図4に示した本発明の転写用成形型10を作製する際の母型として使用されるものであり、例えば真鍮製の平板からなる。マスター金型1は、その表面に、微細構造体の微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有するネガ型溝パターン4を備えている。なお、図示の例では、微細構造体として格子状PDPリブを製造することを想定しているので、ネガ型溝パターン4は、図6に示す通り、格子状溝パターンである。ネガ型溝パターン4は、ストライプパターンに比較して複雑な配置となっているけれども、金型の表面に突起パターンを加工する場合に比較して格段に容易にかつ短時間で加工することができる。溝パターンは、ミリングや放電加工によって金型の表面に微細な溝を穿つだけで形成することができる。ネガ型溝パターン4の形状や寸法は、すでに説明したPDPリブの説明から容易に理解できるであろう。
【0051】
次いで、図5Bに示すように、用意したマスター金型1の表面に、転写パターンの前駆体として使用される(例えば、2液型室温)硬化性組成物(例えば、シリコーンゴム又はポリウレタン)2を所定の膜厚で適用する。図示の例では、硬化性組成物2をマスター金型1の表面に塗布し、溝パターン4を(例えば、順次)充填する方法を採用しているが、その他の方法を採用してもよい。もう1つの方法によると、マスター金型と、転写用成形型のベースを所定の間隔を開けて配置した後、その間隙に硬化性組成物を注入する。これらの方法のいずれによっても、転写パターン層の前駆体層2を所定の厚さで形成することができる。
【0052】
引き続いて、図5Cに示すように、マスター金型1の上に転写用成形型のベース11を積層して、マスター金型1、転写パターン層の前駆体層及びベース11を含む積層体を形成する。なお、図では、前駆体の硬化によって形成された転写パターン層12が示されている。すなわち、前駆体を硬化させると、ベース11とそれによって支持された転写パターン層12とからなる転写用成形型10が得られる。なお、硬化性組成物は、通常、数時間以内に硬化可能である。
【0053】
最後に、図示しないが、得られた転写用成形型をマスター金型から離型する。離型した後の成形型は、必要ならば、室温あるいは高められた温度でーキュアしてもよい。
【0054】
本発明は、もう1つの面において、微細構造体の製造方法にある。この製造方法は、本発明の転写用成形型を使用する限り、いかなる製造工程を経て実施してもよい。本発明の製造方法は、図7に示すような順序で特に有利に実施することができる。
【0055】
最初に、前記したようにして、ネガパターンをもったマスター金型を母型1として用意する。
【0056】
その後、同じく前記したようにして、母型1のネガパターンを転写(すなわち、反転画像で)することで、ポジパターンをもった転写用成形型(第1の転写型)10を作製する。
【0057】
作製した第1の転写型10のポジパターンを転写(すなわち、反転画像で)することで、ネガパターンをもった微細構造体用成形型(第2の転写型)20を作製する。なお、転写型20は、以下に説明するように、可とう性成形型として作製するのが有利である。本発明の実施において、1個の第1の転写型10から第2の転写型20を高精度で多数個取りすることができる。
【0058】
ポジパターンをもった微細構造体30の製造は、第2の転写型20の転写(すなわち、反転画像で)を含むいろいろな方法で実施することができる。
【0059】
1つの好ましい態様において、本発明による微細構造体の製造方法は、下記の工程:
前記転写用成形型のパターン形成面に硬化性樹脂組成物を所定の膜厚で適用して賦形層の前駆体層を形成する工程、
前記転写用成形型の上にプラスチック材料の可とう性フィルムからなる支持体をさらに積層して前記金型、前記賦形層の前駆体層及び前記支持体を含む積層体を形成する工程、
前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、
前記硬化性樹脂組成物の硬化によって形成された賦形層を、前記支持体とともに、前記転写用成形型から離型して、支持体と、その支持体によって裏面を支持された、前記微細構造パターンに対応する形状及び寸法を有するネガ型溝パターンを表面に備えた賦形層とを有する可とう性成形型(第2の転写型)を作製する工程、
前記基板と前記可とう性成形型の賦形層との間に硬化性の突起成形材料を配置して、前記突起成形材料を前記成形型の溝パターンに充填する工程、
前記突起成形材料を硬化させ、前記基板とそれに一体的に結合した突起パターンとからなる微細構造体を作製する工程、そして
前記微細構造体を前記可とう性成形型から取り去る工程、
を順次実施することによって有利に実施することができる。
【0060】
本発明による微細構造体の製造方法において、ネガ型溝パターンを備えた第2の転写型は、その形状や構成は、特に限定されないというものの、上記したように、可とう性成形型を有利に使用することができる。可とう性成形型は、一般的に、支持体と、その支持体によって支承された賦形層との2層構造を有している。ただし、もしも賦形層そのものが支持体としての機能を有することができるのであるならば、支持体の使用を省略してもよい。また、可とう性成形型は、基本的には2層構造体であるけれども、必要に応じて、追加の層やコーティングを有していてもよい。
【0061】
可とう性成形型において、支持体は、それによって賦形層を支承でき、かつ成形型の可とう性を確保するのに十分な柔軟性(フレキシビリティ)及び適度の硬さを有している限りにおいて、その形態、材料及び厚さが限定されることはない。しかしながら、一般的には、プラスチック材料のフレキシブルなフィルム(プラスチックフィルム)を支持体として有利に使用することができる。プラスチックフィルムは、好ましくは透明であり、賦形層の形成時に照射される紫外線を透過させるのに十分な透明度を少なくとも有している。得られた成形型を使用してPDPリブやその他の微細構造体を光硬化性成形材料から製造することを特に考慮に入れた場合、支持体及び賦形層のどちらも透明であることが好ましい。
【0062】
プラスチックフィルムにおいて、可とう性成形型の溝部のピッチ精度をコントロールするため、溝部の形成に関与する賦形層を構成する成形材料よりもはるかに硬いプラスチック材料をプラスチックフィルムに選択することが好ましい。1態様において、例えばUV硬化性組成物のような光硬化性材料がプラスチック材料として使用される。一般的に、光硬化性材料の硬化収縮率は数%である。プラスチックフィルムが硬いと、光硬化性材料が硬化収縮したとしても、支持体の寸法精度を維持することができる。よって、溝部のピッチ精度を高精度で維持することができる。また、プラスチックフィルムが硬いと、リブを形成する際のピッチ変動も小さく抑えることができるため、成形性及び寸法精度の両面で有利である。さらに、プラスチックフィルムが硬い場合、成形型の溝部のピッチ精度は、プラスチックフィルムの寸法変化にのみ依存することになる。そのため、安定的に所望のピッチ精度を有する成形型を提供するためには、そのプラスチックフィルムの寸法が予定通りであり、製造後の成形型において認めうる程度の変化がないように、後処理を行うことだけで十分である。
【0063】
プラスチックフィルムの硬さは、例えば引張りに対する剛性、すなわち、引張り強度で表すことができる。プラスチックフィルムの引張り強度は、通常、化学及び物理の便覧(Handbook of Chemistry and Physics), CRCプレス刊、において報告されているように、一般的に約5kg/mmである。引張り強度は、好ましくは、少なくとも約10kg/mmである。プラスチックフィルムの引張り強度が5kg/mmを下回った場合、得られた成形型を金型から取り出す時や成形型からPDPリブを取り出す時などに取り扱い性が低下し、破損や引裂けが生じることもある。
【0064】
プラスチックフィルムは、通常、プラスチック原料を成形によってシート化することによって得ることができ、また、シートの形態に裁断した状態あるいはロールに巻き取ったロールの状態で商業的に入手可能である。必要ならば、プラスチックフィルムに表面処理を施して、プラスチックフィルムに対する賦形層の密着強度を向上させてもよい。
【0065】
賦形層は、好ましくは樹脂の硬化物からなり、また、この樹脂硬化物は、主たる成分としてアクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーを含有するUV硬化性組成物の硬化によって形成される。賦形層をUV硬化性組成物から形成する方法は、賦形層の形成に長大な加熱炉を必要とすることなく、しかも比較的短時間に硬化させて樹脂硬化物を得ることが可能であるので、有用である。
【0066】
賦形層の形成に好適なアクリル系モノマーの例は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸及びアクリル酸エステルを包含する。また、賦形層の形成に好適なアクリル系オリゴマーの例は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びエポキシアクリレートオリゴマーを包含する。特に、アクリレート及びウレタンアクリレートオリゴマーは、硬化後に柔軟で強靭な硬化樹脂層を提供でき、また、アクリレート全般のなかでも硬化する速度が極めて速いので、成形型の生産性の向上にも寄与できる。さらに、これらのアクリル系モノマーやオリゴマーを使用すると、賦形層が光学的に透明になる。したがって、このような賦形層を備えた可とう性成形型は、PDPリブやその他の微細構造体を製造する時、光硬化性の成形材料を使用可能となす。
【0067】
上記したアクリル系のモノマー及びオリゴマーは、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。アクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーが、ウレタンアクリレートオリゴマーと、単官能性及び(又は)2官能性アクリルモノマーとの混合物である時に好ましい結果を得ることができる。このような混合物において、ウレタンアクリレートオリゴマーとアクリルモノマーとの混合比は広い範囲で変更することができるけれども、通常、オリゴマーとモノマーの合計量を基準にしてウレタンアクリレートオリゴマーを約20〜80重量%の量で使用するのが好ましい。可とう性成形型の賦形層形成のために好ましい樹脂組成物は、参照することでこの明細書に記載したものとする、2004年8月18日付けで出願されたPCT特許出願US04/26845に記載されている。
【0068】
UV硬化性組成物は、必要に応じて、光重合開始剤やその他の添加剤を含有していてもよい。例えば、光重合開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを包含する。光重合開始剤は、いろいろな量で使用することができるが、通常、アクリル系モノマー及び(又は)オリゴマーの全量を基準にして約0.1〜約10重量%の量で使用するのが好ましい。光重合開始剤の量が0.1重量%を下回ると、硬化反応が著しく遅くなってしまうか、十分な硬化が得られない。反対に、光重合開始剤の量が10重量%よりも多くなると、硬化工程の完了後も未反応の光重合開始剤が残留した状態となり、樹脂の黄変や劣化、揮発による樹脂の収縮といった問題が発生する。硬化性組成物は、通常、200〜2000mJ/cmの範囲の線量でもって紫外線光の照射が行われる。その他の有用な添加剤の例は、帯電防止剤である。
【0069】
賦形層の形成において、UV硬化性組成物はいろいろな粘度(ブルックフィールド粘度、いわゆるB粘度)で使用することができるが、好ましい粘度は、通常、約10〜35,000cpsの範囲であり、好ましくは、約50〜10,000cpsの範囲である。UV硬化性組成物の粘度が上記の範囲を外れると、賦形層の形成において成膜が困難となる、硬化が十分に進行しない、などといった問題が発生するおそれがある。
【0070】
賦形層は、成形型及びPDPの構成に応じていろいろな厚さで使用することができるが、通常、約5〜1,000μmの範囲であり、好ましくは、約10〜800μmの範囲であり、さらに好ましくは、約50〜700μmの範囲である。賦形層の厚さが5μmを下回ると、通常、必要なリブ高さが得られない。賦形層の厚さが1,000μmを上回ると、UV硬化性組成物の硬化収縮によってストレスが大きくなり、成形型の反り、寸法精度の劣化といった問題が発生する。本発明の成形型では、リブの高さに対応して溝パターンの深さ、換言すると、賦形層の厚さを大きく設計したとしても、完成した成形型を金型から取り外す作業を容易に実施できるということ点で有利であり、重要である。
【0071】
賦形層の表面に形成される溝パターンについて説明する。溝パターンの深さ、ピッチ及び幅は、目的とするPDPリブのパターン(ストレートパターン又は格子状パターン)や賦形層自体の厚さによって広い範囲で変更することができる。図3及び図4に示した転写用成形型から作製された格子状PDPリブ用可とう性成形型の場合、その溝パターンの深さ(リブの高さに対応)は、通常、約100〜500μmの範囲であり、好ましくは、約150〜300μmの範囲である。溝パターンのピッチは、縦方向と横方向で異なっていてもよく、また、通常、約100〜600μmの範囲であり、好ましくは、約200〜400μmの範囲である。溝パターンの幅は、上面と下面で異なっていてもよく、また、通常、約10〜100μmの範囲であり、好ましくは、約50〜80μmの範囲である。
【0072】
第2の転写型として使用される可とう性成形型は、いろいろな技法に従って製造することができる。例えば、図8A〜図8Cに順を追って示すような手順によって有利に製造することができる。なお、図面において、製造対象の微細構造体をPDPリブとして説明する。
【0073】
まず、図8Aに示すように、PDPリブに対応する形状及び寸法を備えた転写用成形型(第1の転写型)10を、図5を参照して先に説明したようにして作製する。第1の転写型10は、ベース11及びベース11によって支持された転写パターン層12を包含する。第1の転写型10は、PDP用背面板のリブと同じパターン及び同じ形状の隔壁14をその表面に備える。したがって、相隣りあう隔壁14によって規定されるキャビティ(凹部)15が、PDPの放電表示セルとなる。隔壁14の上端部には、泡かみを防止するためのテーパーを取り付けてもよい。最終リブ形態と同じ転写型を用意することで、リブ作製後の端部処理が不要となり、端部処理によって発生する破片による欠陥発生をなくすることができる。また、本製造方法では、賦形層作製用の成形材料がすべて硬化されるので、転写型上における成形材料の残渣が非常に少なくなる。よって、転写型の再利用が容易にできる。また、この第1の転写型10とあわせて、透明なプラスチックフィルムからなる支持体(以下、「支持フィルム」と呼ぶ)21及びラミネートロール23を用意する。ラミネートロール23は、支持フィルム21を転写型10に押し付けるもので、ゴムロールからなる。必要ならば、ラミネートロールに代えて、その他の周知・慣用のラミネート手段を使用してもよい。支持フィルム21は、ポリエステルフィルムやその他の上記した転写プラスチックフィルムからなる。
【0074】
次いで、例えばナイフコータやバーコータのような周知又は慣用のコーティング手段(図示せず)の使用により、転写型10の端面にUV硬化性の成形材料3を所定の量で塗布する。充填後の成形型においてガス抜きを行うため、パターン形成領域の近傍に位置する転写用成形型に真空室を封止するのが有利である。次いで、真空を除き、過剰量の樹脂を例えばドクタブレードによって除去する。
【0075】
次いで、ラミネートロール23を転写型と、矢印の方向で接触させる。このラミネート処理の結果、成形材料3が所定の厚さで均一に分布せしめられ、隔壁14の間隙も成形材料3で充填される。
【0076】
ラミネート処理が完了した後、図8Bに矢印で示すように、支持フィルム21を転写型10に積層した状態で、支持フィルム21を介して、紫外線光(hν)を成形材料3に照射する。ここで、支持フィルム21が気泡等の光散乱要素を含むことなく、透明材料によって一様に形成されていれば、照射光は、ほとんど減衰することがなく、成形材料3に均等に到達可能である。その結果、成形材料は効率的に硬化して、支持フィルム21に接着した均一な賦形層22になる。なお、この工程では、例えば波長350〜450nmの紫外線を使用できるので、フュージョンランプなどの高圧水銀灯のように高熱を発生させる光源を使用しないで済むというメリットもある。さらに、紫外線硬化時に支持フィルムや賦形層を熱変形させることがないので、高度のピッチコントロールができるというメリットもある。
【0077】
その後、図8Cに示すように、可とう性成形型20をその一体性を保持したまま転写型から分離する。
【0078】
可とう性成形型は、いろいろな微細構造体の製造において有用である。例えば、可とう性成形型は、ストレートリブパターンあるいは格子状リブパターンをもったPDPのリブの成形に有用である。この可とう性成形型を使用すれば、真空設備及び(又は)複雑なプロセスの代わりにラミネートロールを用いただけで、放電表示セルから外部に紫外線が漏れ難いリブ構造を有する大画面のPDPを簡便に製造することができる。
【0079】
可とう性成形型は、複数本のリブが一定の間隔をあけて互いに交差しながらほぼ平行に配置された格子状PDPリブを製造する場合に特に有用である。この可とう性成形型は、それが大型で複雑な形状を有するリブ製造用の成形型であるにもかかわらず、転写用成形型からその成形型を取り外す作業を変形及び破壊の問題を生じることなく容易に実施することができる。
【0080】
上記の方法あるいはその他の方法を使用して作製した可とう性成形型を使用して、PDPリブを有利に製造することができる。以下、図8A〜図8Cの方法で作製した可とう性成形型20を使用して格子状リブパターンをもったPDPリブを製造する方法を、図9A〜図9Cを参照して順を追って説明する。なお、本方法の実施には、例えば特開2001−191345号公報の図1〜図3に示した製造装置を有利に使用できる。
【0081】
まず、図示しないが、ストライプ状の電極を予め定められたパターンで上面に配設したガラス平板を用意する。次いで、図9Aに示すように、溝パターンを表面に有する可とう性成形型20をガラス平板31上の所定の位置に設置し、ガラス平板31と成形型20との位置合わせ(アライメント)を行う。ここで、ガラス平板31は、図2に示したようにアドレス電極及び誘電体層を有しているが、説明の簡略化のために省略されている。成形型20は透明であるので、ガラス平板31上の電極との位置合わせは、容易に可能である。さらに説明すると、この位置合わせは、目視によって行ってもよく、さもなければ、例えばCCDカメラのようなセンサを用いて行ってもよい。このとき、必要により、温度及び湿度を調整して成形型20の溝部とガラス平板31上の相隣れる電極間の間隔を一致させてもよい。成形型20とガラス平板31は、通常、温度及び湿度に応じて異なる伸縮を被るからである。したがって、ガラス平板31と成形型20との位置合わせが完了した後は、そのときの温度及び湿度を一定に維持するよう制御する。かかる制御方法は、大面積のPDP用基板の製造に特に有用である。
【0082】
引き続いて、ラミネートロール23を成形型20の一端部に載置する。ラミネートロール23は、好ましくはゴムロールである。このとき、先に位置合わせが完了したガラス平板31と成形型20との位置ずれを防止できるので、成形型20の一端部をガラス平板31上に固定するのが好ましい。
【0083】
次に、成形型20の自由な他端部をホルダー(図示せず)によって持ち上げてラミネートロール23の上方に移動させ、ガラス平板31を露出させる。このとき、成形型20には張力を与えないようにする。成形型20にしわが入るのを防止したり、成形型20とガラス平板31の位置合わせを維持したりするためである。但し、位置合わせを維持し得る限り、他の手段を使用してもよい。なお、本製造方法では成形型20に弾性があるので、成形型20を図示のようにめくりあげても、その後のラミネート時には、もとの位置合わせの状態に正確に戻すことができる。
【0084】
引き続いて、リブの形成に必要な量のリブ前駆体33をガラス平板31の上に供給する。リブ前駆体の供給には、例えば、ノズル付きのペースト用ホッパーを使用できる。
【0085】
ここで、「リブ前駆体」とは、最終的に目的とするリブ成形体を形成可能な任意の成形材料を意味し、リブ成形体を形成できる限り特に限定されるものではない。リブ前駆体は、熱硬化性でも光硬化性でもよい。特に、光硬化性のリブ前駆体は、上述した透明の可とう性成形型と組み合わせて極めて効果的に使用可能である。可とう性成形型は、上記したように、変形のような欠陥を伴わず、光の不均一な散乱等を抑制することができる。かくして、成形材料が均一に硬化され、一定かつ良好な品質をもったリブになる。
【0086】
リブ前駆体に好適な組成物の一例を挙げると、(1)リブの形状を与える、例えば酸化アルミニウムのようなセラミック成分、(2)セラミック成分間の隙間を埋めてリブに緻密性を付与する、例えば鉛ガラスやリン酸ガラスのようなガラス成分、及び(3)セラミック成分を収容及び保持して互いに結合するバインダ成分とその硬化剤又は重合開始剤を基本的に含む組成物である。バインダ成分の硬化は、加熱又は加湿によらず、光の照射によってなされることが望ましい。かかる場合、ガラス平板の熱変形を考慮する必要はなくなる。
【0087】
図示の製造方法の実施において、リブ前駆体33をガラス平板31の上面に全体的に供給する。リブ前駆体33は、通常約20,000cps以下、好適には約5,000cps以下の粘度を有している。リブ前駆体の粘度が約20,000cpsより高いと、ラミネートロールによってリブ前駆体を十分に広がらせ難くなり、その結果、成形型の溝部に空気が巻き込まれ、リブの欠陥の原因となるおそれがある。実際、リブ前駆体の粘度が約20,000cps以下であると、ラミネートロールをガラス平板の一端部から他端部に一回だけ移動させるだけで、ガラス平板と成形型の間にリブ前駆体が均一に広がり、全ての溝部に気泡を含むことなく均一に充填できる。
【0088】
次に、モータ(図示せず)を駆動させ、図9Aにおいて矢印で示すように、ラミネートロール23を成形型20上を所定の速度で移動させる。ラミネートロール23がこのようにして成形型20上を移動している間、成形型20にはその一端部から他端部に圧力が、ラミネートロール23の自重によって、順次印加される。その結果、ガラス平板31と成形型20の間にリブ前駆体33が広がり、成形型20の溝部にも充填される。すなわち、リブ前駆体33が順次溝部の空気と置換されて充填されていく。このとき、リブ前駆体の厚さは、リブ前駆体の粘度又はラミネートロールの直径、重量もしくは移動速度を適当に制御することにより、数μmから数十μmの範囲に設定することができる。
【0089】
また、図示の製造方法によれば、成形型の溝部は空気のチャネルにもなって、空気をそこに捕捉したとしても、上述した圧力を受けたときには空気を効率よく成形型の外部又は周囲に排除することができる。その結果、本製造方法は、リブ前駆体の充填を大気圧下で行っても、気泡の残存を防止することができるようになる。換言すれば、リブ前駆体の充填に当たって減圧を適用する必要はなくなる。もちろん、減圧を行って、気泡の除去を一層容易に行ってもよい。
【0090】
引き続いて、リブ前駆体を硬化させる。ガラス平板31上に広げたリブ前駆体33が光硬化可能である場合は、図9Bに示すように、ガラス平板31と成形型20の積層体を光照射装置(図示せず)に入れ、紫外線光等をガラス平板31及び成形型20を介してリブ前駆体33に照射して硬化させる。このようにして、リブ前駆体の成形体、すなわち、リブそのものが得られる。
【0091】
最後に、得られたリブ32をガラス平板31に接着させたまま、ガラス平板31及び成形型20を光照射装置から取り出し、図9Cに示すように成形型20を剥離除去する。ここで使用した可とう性成形型20は取り扱い性にも優れるので、ガラス平板31に接着したリブ32を破損させることなく、少ない力で成形型20を容易に剥離除去できる。もちろん、この剥離除去作業に大掛かりな装置は不要である。
【0092】
最終的に、障壁リブを例えば約550〜1600℃の温度で焼成することによって溶融もしくは焼結する。このガラス−又はセラミック−形成性の組成物は、有機バインダ中に分散せしめられたμmサイズのガラスフリットを有している。有機バインダを使用することで、障壁リブをグリーン(未完成)の状態で固化させ、よって、基板上の一部において焼成によってガラス粒子を溶融させることができる。しかしながら、例えばPDP基板のような用途では、高度に精確でありかつ均一な障壁リブが有望である。
【0093】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
実施例1
マスター金型の作製
格子状パターンのリブ(隔壁)をもったPDP用背面板を製造するため、母型として使用するマスター金型を作製した。なお、本例で作製したマスター金型は、図6を参照して先に説明したような、一定の間隔を開けて互いに交差しながらほぼ平行に配置された多数の細溝をもって構成された格子状溝パターンを表面に有している金型である。
【0095】
長さ400mm×幅700mm×厚さ5mmの真鍮板を用意し、その片面に、図6に示すように、1845本の縦溝(縦リブに対応)及び608本の横溝(横リブに対応)を切削加工した。縦溝は、約300μmのピッチ(隣接する縦溝の中心間の距離)、約210μmの深さ(リブの高さに相当)、約200μmの溝底部幅(リブの頂部幅に相当)及び約200μmの溝頂部幅(リブの底部幅に相当)であった。また、横溝は、約510μmのピッチ(隣接する横溝の中心間の距離)、約210μmの深さ(リブの高さに相当)、約40μmの溝底部幅(リブの頂部幅に相当)及び約200μmの溝頂部幅(リブの底部幅に相当)であった。作製したマスター金型について、そのトータルピッチ(両端のリブの中心間の距離)を縦リブ対応の縦溝及び横リブ対応の横溝のそれぞれについて5個所で測定したところ、下記の第1表に記載のような結果が得られた。
【0096】
シリコーンゴム転写層を有する(第1の)転写型の作製
上記のようにして作製したマスター金型を使用して、図5を参照して先に説明したような手法に従って第1の転写型を作製した。なお、この転写型の斜視図は図3に示され、図3の線分IV−IVに沿った断面図は図4に示される。
【0097】
転写型のベースとして、縦400mm×横700mm×厚さ1mmのステンレス鋼板を用意した。また、ステンレス鋼板の転写パターン形成面には、そのステンレス鋼板と転写パターン層(シリコーンゴム層)の接着性を高めるためにプライマ処理(商品名「ME121」としてGE東芝シリコーン社から商業的に入手可能なポリアルキルシロキサン及びテトラエトキシシラン)を施した。プライマ処理のためにプライマを適用した後、150℃で1時間にわたって乾燥させた。
【0098】
先の工程で作製したマスター金型の溝パターン面をベースのプライマ−処理面に向き合わせて配置し、その間(約100μmの間隙)に2液型室温硬化性シリコーンゴム(商品名「XE12−A4001」としてGE東芝シリコーン社から商業的に入手可能)を充填し、そのまま12時間にわたって放置して硬化させた。得られたシリコーンゴム製転写型は、図3及び図4に示したように格子状突起パターンを有しており、その突起部の形状及び寸法は、それぞれ、マスター金型の格子状溝パターンの形状及び寸法に対応していた。すなわち、得られた転写型の突起部は、縦突起部と横突起部とからなり、それぞれ等脚台形の断面を有し、かつ一定の間隔を開けて互いに交差しながらほぼ平行に配置されていた。それぞれの突起部は、高さ(縦突起部及び横突起部とも)210μm、縦突起部の頂部幅110μm及び底部幅200μm、横突起部の頂部幅40μm及び底部幅200μm、そして縦突起部のピッチ(隣接する縦突起部の中心間の距離)300μm及び横突起部のピッチ510μmであった。作製したシリコーンゴム製転写型のトータルピッチ(両端の突起部の中心間の距離)を縦リブ対応の縦突起部及び横リブ対応の横突起部のそれぞれについて5個所で測定したところ、下記の第1表に記載のような測定結果が得られた。さらに、得られた転写型の突起部の状態を光学顕微鏡を使用して観察したところ、微細な突起部において少しの欠陥も発生していないことが認められた。
【0099】
【表1】

【0100】
上記第1表の測定結果から理解されるように、PDPリブ用の転写型を作製するに当たって、本発明に従いネガ型溝パターンを表面にもったマスター金型を使用するとともに、高弾性率を有する硬質材料からなるベースの上にシリコーンゴムの成形によって転写パターン層を形成した場合、マスター金型の寸法精度をシリコーンゴム製転写型に対して極めて精度よく転写することができる。
【0101】
可とう性成形型(第2の転写型)の作製
上記のようにして作製した第1の転写型を使用して、かつ先に説明したような手法に従って、可とう性成形型(第2の転写型)を作製した。
【0102】
成形型の賦形層を形成するため、下記のような組成の2種類のUV硬化性樹脂組成物を調製した。
【0103】
高粘度のUV硬化性樹脂組成物(A)
脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(「フォトマー6010」) 80重量%
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 20重量%
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン光重合開始剤(「ダロキュア1173」) 1重量%
【0104】
低粘度のUV硬化性樹脂組成物(B)
脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(「フォトマー6010」) 40重量%
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 60重量%
光重合開始剤(「ダロキュア1173」) 1重量%
【0105】
それぞれの樹脂組成物の粘度をブルックフィールド(B)型粘度計で測定したところ、樹脂組成物(A)の粘度は8,500cpsであり、樹脂組成物(B)の粘度は110cpsであった(シャフト#5、20rpm、22℃)。
【0106】
成形型の支持体として、縦700mm×横700mm×厚さ188μmのPETフィルム(商品名「HPE188」として帝人社から商業的に入手可能)を用意した。
【0107】
次いで、PETフィルムの片面に上記のようにして調製したUV硬化性樹脂組成物(A)を約200μmの厚さで塗布した。一方、先の工程で作製した転写型の転写パターン面にUV硬化性樹脂組成物(B)を注加し、ブレードの使用によって広げることによって適用した。その後、PETフィルムと転写型をそれぞれの樹脂コーティングが重なり合うように重ね合わせた。PETフィルムの長手方向は転写型の縦突起部と平行とし、PETフィルムと転写型にサンドイッチされたUV硬化性樹脂組成物の合計厚さは約250μmとなるように設定した。ラミネートロールを使用してPETフィルムを入念に押し付けたところ、転写型の凹部にUV硬化性樹脂組成物が完全に充填され、気泡の取り込みも認められなかった。
【0108】
この状態で、三菱電機オスラム社製の蛍光ランプを用い、300〜400nmに波長(ピーク波長:352nm)をもった紫外線光を、PETフィルムを介して、UV硬化性樹脂組成物層に30秒間照射した。紫外線光の照射量は、200〜300mJ/cmであった。2種類のUV硬化性樹脂組成物がそれぞれ硬化し、賦形層が得られた。引き続いて、PETフィルムを賦形層と共に転写型から剥離したところ、転写型の格子状突起パターンに対応する形状及び寸法を有する格子状溝パターンを備えた可とう性成形型が得られた。
【0109】
PDP用背面板の作製
上記のようにして作製した可とう性成形型を使用して、かつ図9A〜図9Cを参照して先に説明したような手法に従って、PDP用背面板(本発明でいう微細構造体)を作製した。
【0110】
可とう性成形型をPDP用ガラス基板の上に位置合わせして配置した。成形型の溝パターンをガラス基板に対向させた。次いで、成形型とガラス基板の間に感光性セラミックペーストを110μmの厚さで充填した。ここで使用したセラミックペーストは、次のような組成であった。
【0111】
光硬化性オリゴマー:商品名「3000M」として共栄社化学社から商業的に入手可能なビスフェノールAジグリシジルメタクリレート酸付加物 21.0g
光硬化性モノマー:和光純薬工業社から商業的に入手可能なトリエチレングリコールジメタクリレート 9.0g
希釈剤:和光純薬工業社から商業的に入手可能な1,3−ブタンジオール
30.0g
光重合開始剤:商品名「イルガキュア819」としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社から商業的に入手可能なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド 0.3g
界面活性剤:3M社製のホスフェートプロポキシアルキルポリオール 1.5g
スルホン酸系界面活性剤:商品名「ネオペレックスNо.25」として花王社から商業的に入手可能 1.5g
無機粒子:商品名「RFW−030」として旭硝子社から商業的に入手可能な鉛ガラスとセラミックの混合粉末 270.0g
【0112】
このセラミックペーストの粘度をブルックフィールド(B)型粘度計で測定したところ、7,300cps(シャフト#5、20rpm、22℃)であった。
【0113】
セラミックペーストをガラス基板上に全面塗布した後、ガラス基板の表面を覆うように成形型をラミネートした。直径200mm及び重量30kgのゴム製ラミネートロールを使用して成形型を入念に押し付けたところ、その成形型の溝部にセラミックペーストが完全に充填された。
【0114】
この状態で、フィリップス社製の蛍光ランプを用い、400〜500nmに波長をもった青色光(ピーク波長:450nm)を成形型とガラス基板の両面から照射した。紫外線光の照射量は、200〜300mJ/cmであった。セラミックペーストが硬化し、リブとなった。引き続いて、ガラス基板をその上のリブと共に成形型から剥離したところ、格子状リブ付きのガラス基板が得られた。得られたガラス基板において、リブの形状及び寸法は、転写用成形型の作製に使用されたマスター金型の溝部のそれに正確に一致した。最後に、ガラス基板を550℃で1時間にわたって焼成することで、ペースト中の有機成分を燃焼除去した。ガラス成分のみからなる格子状リブを備えたPDP用背面板が得られた。リブの欠陥を光学顕微鏡によって検査したけれども、欠陥は認められなかった。
【0115】
実施例2
プライマ(「ME121」)を100cm×100cm×1mm厚のステンレス鋼板(日本工業規格JIS SUS430)に塗布し、次いで周囲温度で30分間乾燥し、そして150℃で1時間にわたって熱処理した。
【0116】
室温硬化性シリコーンゴム(「XE12−A4001」)を熱処理後のステンレス鋼板とその表面に格子状溝を備えた金属製マスター金型の間に配置し、12時間にわたってコンディショニングした。次いで、シリコーンゴム付きのステンレス鋼板基板をマスター金型から剥がしたところ、第1の転写型が得られた。
【0117】
商品名「Ebecryl270」としてダイセルUCB社から商業的に入手可能な脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーの混合物と1%の光開始剤(「ダロキュア1173」)を、商品名「テトロン(登録商標)フィルム」として帝人社から商業的に入手可能なポリエチレンテレフタレートフィルムと第1の転写型との間に配置し、次いで蛍光ランプ(三菱電機オスラム社製)を使用することによって300〜400nmの紫外線光を30秒間にわたって照射した。次いで、硬化樹脂付きのプラスチックフィルムを第1の転写型から剥がしたところ、第2の転写型が得られた。
【0118】
1個の第1の転写型から10個の第2の転写型を作製した。10個の転写型をすべて入念に観察したけれども、第1の転写型のデラミネーションによって引き起こされた欠陥は存在しないということが判明した。また、第1の転写型はデラミネーションを示していないということも判明した。
【0119】
実施例3
ポリウレタン転写層を含む(第1の)転写型の作製
マスター金型とポリウレタンの間の接合を避けるため、フッ素系の離型剤(商品名「DAIFREE GA−6010」としてダイキン工業社から商業的に入手可能)をマスター金型の表面に噴霧した。
【0120】
ベース基板として使用するため、1mm厚のスレンレス鋼板を用意した。ポリウレタンとスレンレス鋼板の間の接合力を高めるため、イソシアネート化合物(商品名「N200」として3M社から商業的に入手可能)を含むプライマをステンレス鋼板に塗布し、100℃で1時間乾燥した。
【0121】
200gのポリエステルポリオール(「Takelec U−118A」)と240gのイソシアネート(Takenate D−103)を混合し、空気除去のために真空を適用し、マスター金型とステンレス鋼板の間に充填し、そして室温で硬化させたところ、ポリエステルタイプのポリウレタンとなった。構造体となったポリウレタンを基板と一緒にマスター金型から剥がしたところ、格子パターンを持った第1の転写型が得られた。トータルピッチのデータは、第1表にまとめてある。第1の転写型のトータルピッチは、マスター金型のそれに同じであり、マスター金型から第1の転写型に転写を行う間に寸法精度が維持されていることを示している。
【0122】
この第1の転写型から第2の転写型を繰り返し作製することによって第1の成形型の耐久性を評価した。アクリレート樹脂の組成は、以下に記載の通りである:45重量%の脂肪族ジアクリレートオリゴマー(ダイセルUCB)、45重量%の2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、9重量%の2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート及び1重量%のダロキュア1173。重合後の樹脂のTgは、−40℃であった。
【0123】
第1の転写型とPETフィルムの間にアクリレートを充填し、300〜400nmの波長の光に30秒間にわたって露光することによった硬化させ、PETフィルムと一緒に第1の転写型から剥がしたところ、可とう性のプラスチック型(第2の転写型)が得られた。方を製造する工程を40回繰り返した。第1の転写型のパターン頂部幅に相当するところの、型の溝底部幅を測定することによってパターン化ポリウレタンの変形を調査した。第2表に記載されるように、溝底部幅における変動は観察されなかった。さらに加えて、ウレタン製の第1の転写型そのものは、40回の使用後においてパターンの変形を示さなかった。この実験は、ポリウレタン製の第1の転写型は高度の耐久性をもっているということを示している。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】PDPの一例を示した断面図である。
【図2】図1のPDPに用いられたPDP用背面板を示した斜視図である。
【図3】本発明による転写用成形型を示した斜視図である。
【図4】図3の成形型の線分IV−IVに沿った断面図である。
【図5A】本発明による転写用成形型の1製造方法を順に示した断面図である。
【図5B】本発明による転写用成形型の1製造方法を順に示した断面図である。
【図5C】本発明による転写用成形型の1製造方法を順に示した断面図である。
【図6】図5の製造方法で母型として使用したマスター金型の斜視図である。
【図7】本発明による微細構造体の製造方法の基本概念を説明したフローチャートである。
【図8A】本発明の転写用成形型を第1転写型として使用して、微細構造体の製造において第2転写型として使用される可とう性成形型の1製造方法を順に示した断面図である。
【図8B】本発明の転写用成形型を第1転写型として使用して、微細構造体の製造において第2転写型として使用される可とう性成形型の1製造方法を順に示した断面図である。
【図8C】本発明の転写用成形型を第1転写型として使用して、微細構造体の製造において第2転写型として使用される可とう性成形型の1製造方法を順に示した断面図である。
【図9A】図8の方法で作製した可とう性成形型を使用して微細構造体を製造する1方法を順に示した断面図である。
【図9B】図8の方法で作製した可とう性成形型を使用して微細構造体を製造する1方法を順に示した断面図である。
【図9C】図8の方法で作製した可とう性成形型を使用して微細構造体を製造する1方法を順に示した断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写パターン層とは異なる材料からなるベースによって支持された、ポリマー材料からなるポジ型突起パターン表面を備えた転写パターン層を有する転写用成形型。
【請求項2】
前記ベースが、1〜250GPaのヤング率を有する材料を含む、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項3】
前記ベースが、100〜250GPaのヤング率を有する材料を含む、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項4】
前記ベースが、ステンレス鋼、銅及びその合金からなる群から選ばれた金属材料である、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項5】
前記転写パターン層の厚さが、0.005〜10mmの範囲である、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項6】
前記ベースの厚さが、0.1〜5mmの範囲である、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項7】
前記転写パターン層の突起パターンは、互いにほぼ平行に配列された複数個のリブを含む、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項8】
前記転写パターン層の突起パターンの表面は、格子状のパターンである、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項9】
前記ポジ型突起パターンは、プラズマディスプレイパネルに適したバリアリブパターンに相当する、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項10】
前記転写パターン層は、周囲温度で硬化可能な組成物を含む、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項11】
前記転写パターン層は、シリコーンゴム及びポリウレタンからなる群から選ばれた硬化組成物を含む、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項12】
前記ポリウレタンはポリエステルポリウレタンである、請求項11に記載の転写用成形型。
【請求項13】
前記ベースと前記転写パターン層の間に下地層が配置される、請求項1に記載の転写用成形型。
【請求項14】
前記転写パターン層はシリコーンゴムを含み、かつ前記下地層は、ポリアルキルシラン、ポリアルキルシロキサン及びその混合物からなる群から選ばれる、請求項13に記載の転写用成形型。
【請求項15】
前記転写パターン層はポリウレタンを含み、かつ前記下地層は、ポリイソシアネート及びヒドロキシル官能性材料からなる群から選ばれる、請求項13に記載の転写用成形型。
【請求項16】
転写用成形型を製造する方法であって、下記の工程:
ベース基材を用意すること、
前記ベース基材とは異なる材料を含む硬化可能なポリマー組成物から、ポジ型突起パターン表面を備えた転写パターン層を形成すること、及び
前記転写パターン層を硬化させること
を含む、転写用成形型の製造方法。
【請求項17】
前記転写パターン層を周囲温度で硬化させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記転写パターン層を、ネガ型溝パターンを表面に備えたマスター金型から形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記転写パターン層を、前記マスター金型のネガ型溝パターンの表面に硬化性組成物を適用しかつそのマスター金型上に前記ベース基材を積層することにより形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ネガ型溝パターンをもった転写用成形型を製造する方法であって、下記の工程:
請求項1に記載の転写用成形型を用意すること、
前記転写用成形型の転写パターン層に硬化性樹脂組成物を適用すること、
前記転写用成形型に、プラスチック材料の可とう性フィルムを含む支持体を積層すること、
前記硬化性樹脂組成物を硬化させること、及び
前記転写用成形型から、前記硬化樹脂組成物を前記支持体と一緒に剥離し、よって、支持体と、ネガ型溝パターンを有する賦形層とを含む可とう性成形型を形成すること
を含む、転写用成形型の製造方法。
【請求項21】
前記硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光硬化性樹脂組成物は、アクリルモノマー及びアクリルオリゴマーからなる群から選ばれた少なくとも1種類の硬化性成分を含むUV硬化性樹脂組成物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記支持体は透明である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
微細構造体を製造する方法であって、下記の工程:
請求項20に記載の可とう性成型型を用意すること、
基板と前記賦形層との間に、硬化性の成形材料を適用すること、
前記成形材料を硬化させ、よって、前記基板と、その基板に一体的に接合された突起パターンとを含む微細構造体を作製すること、及び
前記微細構造体を前記可とう性成形型から剥離すること
を含む、微細構造体の製造方法。
【請求項25】
前記硬化性の成形材料は光硬化性である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記微細構造体の突起パターンは、プラズマディスプレイパネル用背面板のリブである、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2007−521985(P2007−521985A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547423(P2006−547423)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/043471
【国際公開番号】WO2005/068148
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】