説明

転写装置、画像形成装置

【課題】作像部から転写ニップまでの像担持体ベルトの距離の変動を抑制する。
【解決手段】駆動ローラーに巻き掛けられた前記像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体ベルトに張力T1を付与する第1の張架ローラーと、比例係数K1を有し、第1の張架ローラーにより像担持体ベルトに付与する張力T1を発生させる第1の張力付与部と、第1の張架ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるローラーと、当該ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体ベルトに張力T2を付与する第2の張架ローラーと、第1の比例定数K1よりも小さい比例係数K2を有し、第2の張架ローラーにより像担持体ベルトに付与する前記張力T2を発生させる第2の張力付与部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、像担持体ベルトに形成した像を記録材に転写する転写装置および当該転写装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無端状の像担持体ベルト(転写ベルト)を複数のローラーに巻き掛けて回転駆動するとともに、この像担持体ベルト表面に一時的に形成した像を、紙等の記録材に転写して画像形成を行う画像形成装置が記載されている。より詳しくは、潜像担持体(感光体ドラム)表面に形成した潜像を現像することで像(トナー像)を形成する作像部(画像形成ステーション)が、像担持体ベルトに対向して配置されている。そして、作像部と像担持体ベルトが対向する位置で、作像部が像担持体ベルト表面に像を形成する。
【0003】
さらに、この像は、像担持体ベルト表面の回転に伴って、転写位置にまで搬送される。この転写位置では、像担持体ベルトと転写ローラーとが互いに当接して転写ニップを形成している。そして、像担持体ベルト表面の像が転写ニップに搬送されるタイミングに合わせて、この転写ニップに記録材が搬送される。こうして、転写ニップを通過する記録材に像が重ね合わせられて、像が記録材に転写される。
【0004】
このとき、像担持体から記録材への像転写を高い転写効率で行なうためには、転写ニップを通過する記録材に対して、大きな押圧力を加えることが望ましい。ただし、大きな押圧力を加えることによって、記録材が像担持体ベルトに貼り付いてしまうおそれがある。特に特許文献1の画像形成装置は、液体キャリアにトナーを分散させた液体現像剤により潜像を現像するため、像担持体ベルトに付着した液体キャリアによって記録材の貼り付きが生じやすい。
【0005】
このような問題を解消するために、例えば特許文献2に記載の技術を採用することが考えられる。特許文献2に記載の画像形成装置は、円筒状の押圧ローラー(転写ローラーに相当)の周面の一部に開閉自在のグリッパを把持部材として設け、このグリッパにより記録材の端を把持することによって、押圧ローラーと当接する像担持体への記録材の貼り付きを防止している。したがって、特許文献2の押圧ローラーの構成を特許文献1の転写ローラーに適用することで、像担持体ベルトへの記録材の貼り付きを防止できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−122815号公報
【特許文献2】特表2000−508280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、特許文献1および2の組み合わせるにあたっては、次のような問題が生じうる。つまり、転写ローラーは、転写ニップに供給される記録材の端を把持部材で掴みながら回転することで、転写ニップに記録材を通過させる。このとき、像担持体ベルトの像を記録材に適切に重ね合わせるためには、転写ローラーの回転に伴なって記録材が転写ニップを通過するタイミングに合わせて、転写ニップに像を搬送する必要がある。
【0008】
そこで、像担持体ベルトに像を形成するタイミングを、転写ローラーの回転に合わせて制御することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載のような把持部材が取り付けられた転写ローラーは、その周面が滑らかな円筒面ではない。そのため、転写ニップでの押圧力が転写ローラーの回転周期に同期して変動することになる。そして、このような変動は、作像部から転写ニップまでの像担持体ベルトの距離に影響する。その結果、像担持体ベルトへの像形成タイミングを転写ローラーの回転に合わせて制御したとしても、像担持体ベルト表面の像を転写ニップに搬送するタイミングがずれてしまい、この像を記録材に適切に転写できないおそれが考えられた。
【0009】
このような問題は、周面が完全な円筒面でない転写ローラーを用いる場合に共通するものであり、例えば、円筒周面の一部を切り欠いた凹部をその周面に有する転写ローラーを用いる場合でも生じうる。すなわち、像担持体ベルトが転写ローラーの円筒周面部と対向しその表面に当接しているときと、像担持体ベルトが転写ローラーの凹部と対向し転写ローラー表面から離間しているときとでは、像担持体ベルト表面に加わる押圧力が大きく異なるため、これらの切り替わり時において、作像部から転写ニップまでの像担持体ベルトの距離が変動し、その結果、像を記録材に適切に転写できないおそれがあった。
【0010】
この発明は、作像部が像担持体ベルトに形成した像を、周面に凹部を有する転写ローラーによって転写ニップで記録材に転写する転写装置および画像形成装置において、上記課題を解決して、作像部から転写ニップまでの像担持体ベルトの距離の変動を抑制する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明にかかる転写装置は、上記目的を達成するために、像を担持する像担持体ベルトと、像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体を移動させる駆動ローラーと、駆動ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体ベルトに張力T1を付与する第1の張架ローラーと、比例係数K1を有し、第1の張架ローラーにより像担持体ベルトに付与する張力T1を発生させる第1の張力付与部と、第1の張架ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるローラーと、ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体ベルトに張力T2を付与する第2の張架ローラーと、第1の比例定数K1よりも小さい比例係数K2を有し、第2の張架ローラーにより像担持体ベルトに付与する張力T2を発生させる第2の張力付与部と、周面に凹部を有するとともに像担持体ベルトを介してローラーと当接する転写ローラーと、を備えることを特徴としている。ここで、K1、K2は、
K1=T1/Δl1
Δl1:第1の張架ローラーに像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の第1の張架ローラーの位置から、像担持体ベルトから張力が掛けられた時に第1の張架ローラーが移動した位置までの像担持体ベルトから掛けられた張力により第1の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T1:第1の張架ローラーがΔl1移動した時に、第1の張架ローラーが像担持体ベルトに付与する張力
K2=T2/Δl2
Δl2:第2の張架ローラーに像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の第2の張架ローラーの位置から、像担持体ベルトから張力が掛けられた時に第2の張架ローラーが移動した位置までの像担持体ベルトから掛けられた張力により第2の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T2:第2の張架ローラーがΔl2移動した時に、第2の張架ローラーが像担持体ベルトに付与する張力
である。
【0012】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、像を形成する作像部と、作像部で形成された像が転写される像担持体ベルトと、像が転写された像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体を移動させる駆動ローラーと、駆動ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体ベルトに張力T1を付与する第1の張架ローラーと、比例係数K1を有し、第1の張架ローラーにより像担持体ベルトに付与する張力T1を発生させる第1の張力付与部と、第1の張架ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるローラーと、ローラーに巻き掛けられた像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、像担持体ベルトに張力T2を付与する第2の張架ローラーと、第1の比例定数K1よりも小さい比例係数K2を有し、第2の張架ローラーにより像担持体ベルトに付与する張力T2を発生させる第2の張力付与部と、周面に凹部を有するとともに像担持体ベルトを介してローラーと当接する転写ローラーと、作像部が像を形成するタイミングを、転写ローラーの回転に応じて制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。ここで、K1、K2は、
K1=T1/Δl1
Δl1:第1の張架ローラーに像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の第1の張架ローラーの位置から、像担持体ベルトから張力が掛けられた時に第1の張架ローラーが移動した位置までの像担持体ベルトから掛けられた張力により第2の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T1:第1の張架ローラーがΔl1移動した時に、第1の張架ローラーが像担持体ベルトに付与する張力
K2=T2/Δl2
Δl2:第2の張架ローラーに像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の第2の張架ローラーの位置から、像担持体ベルトから張力が掛けられた時に第2の張架ローラーが移動した位置までの像担持体ベルトから掛けられた張力により第2の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T2:第2の張架ローラーがΔl2移動した時に、第2の張架ローラーが像担持体ベルトに付与する張力
である。
【0013】
このように構成された発明(転写装置、画像形成装置)では、像担持体ベルトと転写ローラーとが当接して転写ニップが形成される。そして、像担持体ベルトに担持される像は、駆動ローラーの巻き掛け位置を経由して、転写ニップにまで搬送される。また、駆動ローラーから転写ニップまでの間では、第1の張架ローラーが像担持体ベルトに当接するとともに、この第1の張架ローラーと転写ニップを挟む位置で第2の張架ローラーが像担持体ベルトに当接する。そして、第1および第2の張架ローラーそれぞれを介して像担持体ベルトに張力T1、T2を付与する第1および第2の張力付与部が設けられている。具体的には、第1の張力付与部は、第1の張架ローラーの変位量Δl1に比例係数K1を乗じた張力T1を像担持体ベルトに付与し、第2の張力付与部は、第2の張架ローラーの変位量Δl2に比例係数K2を乗じた張力T2を像担持体ベルトに付与する。こうして像担持体ベルトに張力T1、T2を付与することによって、像担持体ベルトの撓みを取って、作像部から転写ニップまでの距離の安定化が図られている。
【0014】
ただし、この発明では、転写ローラーは周面に凹部を有しているため、この凹部が像担持体ベルトに対向しているときと、それ以外のときとで、像担持体ベルトに加わる押圧力が変動する。そのため、像担持体ベルトから第1の張架ローラーに作用する力が変動して、第1の張架ローラーが大きく変位し、その結果、作像部から転写ニップまでの距離が大きく変動するおそれがあった。つまり、第1および第2の張架ローラーで像担持体ベルトに張力T1、T2を付与することで、作像部から転写ニップまでの距離の安定化を図ったにも拘わらず、周面に凹部を有した転写ローラーを用いたことによって、作像部から転写ニップまでの距離が結果的に安定しないおそれがあった。
【0015】
これに対して、この発明では、第1の張架ローラーの変位量Δl1に対する比例係数K1よりも第2の張架ローラーの変位量Δl2に対する比例係数K2を小さく設定している。この理由について説明すると次のとおりである。転写ローラーが像担持体ベルトに与える押圧力が変動した場合には、第1の張架ローラーおよび第2の張架ローラーそれぞれが変位して、像担持体ベルトに付与する張力を維持する。このとき、第1の張架ローラーの変位量Δl1に対する比例係数K1よりも第2の張架ローラーの変位量Δl2に対する比例係数K2を小さく設定しておけば、転写ローラーの押圧力の変動に対して、第2の張架ローラーは大きく変位するのに対して、第1の張架ローラーの変位は小さく抑えられる。こうして、この発明では、転写ローラーの押圧力の変動に拘わらず、第1の張架ローラーの変位を小さく抑えて、作像部から転写ニップまでの距離を安定化させることが可能となっている。
【0016】
このような張力を像担持体ベルトに付与する第1および第2の張力付与部の具体的な構成としては、種々のものが考えられる。そこで、例えば、第1の張力付与部は、第1の張架ローラーを支持するバネ定数k1の第1の弾性部材を有し、第2の張力付与部は、第2の張架ローラーを支持するバネ定数k2の第2の弾性部材を有し、第1の張架ローラーへの像担持体ベルトの巻き掛け角をθ1、第2の張架ローラーへの像担持体ベルトの巻き掛け角をθ2としたとき、次式
K1=k1/{2・sin(θ1/2)}
K2=k2/{2・sin(θ2/2)}
の関係を有するように構成しても良い。
【0017】
あるいは、第1の張力付与部は、一端で第1の張架ローラーを支持して回動する第1のレバーと、第1のレバーの一端と異なる他端で支持されたバネ定数k3の第1のバネを有し、第2の張力付与部は、一端で第2の張架ローラーを支持して回動する第2のレバーと、第2のレバーの一端と異なる他端で支持されたバネ定数k4の第2のバネを有し、第1の張架ローラーへの像担持体ベルトの巻き掛け角をθ1、第1のレバーの回動中心から、第1のレバーの一端が第1の張架ローラーにかける力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLa1、第1のレバーの回動中心から、第1のレバーの他端で支持された第1のバネの力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLb1、第2の張架ローラーへの像担持体ベルトの巻き掛け角をθ2、第2のレバーの回動中心から、第2のレバーの一端が第2の張架ローラーにかける力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLa2、第2のレバーの回動中心から、第2のレバーの他端で支持された第2のバネの力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLb2としたとき、次式
K1=(Lb1/La1)・k3/{2・sin(θ1/2)}
K2=(Lb2/La2)・k4/{2・sin(θ2/2)}
の関係を有するように構成しても良い。
【0018】
そして、このようなレバー構成は次のような利点を有する。つまり、第1および第2の張架ローラーが変位するのに伴って、第1および第2の張架ローラーが像担持体ベルトに対してスライドすることがある。このとき、第1および第2の張架ローラーと像担持体ベルトの間のスライド抵抗が大きいために、外力に対する第1および第2の張架ローラーの応答性が悪化して、第1および第2の張架ローラーの変位が安定せず、その結果、作像部から転写ニップまでの距離が若干不安定になることが考えられる。これに対して、上記のようなレバー構造では、第1および第2の張架ローラーが像担持体ベルトに対してスライドする際に発生する、第1および第2の張架ローラーと像担持体ベルトの間のスライド抵抗を小さく抑えることができる。その結果、作像部から転写ニップまでの距離をより安定化させることが可能となる。
【0019】
また、上記のとおりこの画像形成装置では、作像部が像を形成するタイミングを、転写ローラーの回転に応じて制御する。そこで、このような制御を実行するために、作像部は、潜像が形成される潜像担持体、潜像担持体を露光して潜像を形成する露光部、および潜像を現像する現像部を有し、制御部は、転写ローラーの回転に応じて、露光部による露光のタイミングを制御するように構成しても良い。このような構成では、露光器による露光のタイミングを調整するだけで、作像部が像を形成するタイミングを簡便に制御することができ、制御構成の簡素化を計ることができる。
【0020】
この際、転写ローラーの回転位置を検出する検出部を有し、制御部は、検出部で検出された情報に応じて、露光部による露光のタイミングを制御するように構成しても良い。
【0021】
また、現像部は、トナー及び液体キャリアを含む液体現像剤を用い、転写ローラーは、周面に凹部が形成されるとともに、凹部に記録材を把持する把持部材が配設されるように構成することができる。ただし、このような構成では、液体キャリアによって記録材が像担持体ベルトに貼り付くことが防止されるという利点を有する反面、転写ローラーの回転に伴なって像担持体ベルトの押圧力が変動して、作像部から転写ニップまでの距離が結果的に安定しないおそれがある。そこで、このような構成に対しては、本発明を適用して、作像部から転写ニップまでの距離の安定化を図ることが、極めて好適となる。
【0022】
また、作像部で形成される像とは異なる色の第2の像を形成する第2の作像部を備え、制御部は、第2の作像部が第2の像を形成するタイミングを、転写ローラーの回転に応じて制御する構成に対しては、本発明を適用することが特に好適である。つまり、このような構成では、レジストずれを抑制しつつ、異なる色の像を互いに重ね合わせることが求められる。そして、そのためには、像担持体ベルトの移動方向に転写ニップから作像部までの区間のベルトテンションを一定に保ことが好適となる。これに対して、この発明では、該当区間の像担持体ベルトに対しては、第2の張架ローラーが当接するとともに、この第2の張架ローラーの変位に比較的小さい比例係数K2を乗じた張力T2が付与される。したがって、該当区間のベルトテンションは略一定に保たれることとなり、その結果、レジストずれが抑制された良好なカラー画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の第1実施形態を示す図。
【図2】図1の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】二次転写ローラーの全体構成を示す斜視図。
【図4】テンションローラーの配置をより詳しく説明するための図。
【図5】テンションローラーとこれに力を付与するバネの作用を説明する図。
【図6】図1の画像形成装置の動作例を示すタイミングチャート。
【図7】テンションローラーの変位量と中間転写ベルトの長さの変動量を示す図。
【図8】中間転写ベルトのテンションの変動量とレジストずれの関係を示す図。
【図9】バネ定数とレジストずれの関係を示す図。
【図10】本発明にかかる画像形成装置の第2実施形態を示す図。
【図11】テンションローラーとこれに力を付与する機構の作用を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1実施形態
図1は本発明にかかる画像形成装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するコントローラー10に与えられると、このコントローラー10が装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート状の記録材RMに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0025】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図1では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図1に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造および動作も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0026】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。
【0027】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成する露光ユニット23と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像ユニット24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、該トナー像を転写ユニット3の中間転写ベルト31に一次転写する一次転写ユニットと、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットと、クリーナーブレードとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0028】
帯電器22は感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、この帯電器22には、従来周知慣用のコロナ帯電器を用いることができる。コロナ帯電器にスコロトロン帯電器を用いた場合には、スコロトロン帯電器のチャージワイヤには負のワイヤ電流が流されるとともに、グリッドには直流(DC)のグリッド帯電バイアスが印加される。帯電器22によるコロナ放電で感光体ドラム21が帯電されることで、感光体ドラム21の表面の電位が略均一の電位に設定される。
【0029】
露光ユニット23は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームにより感光体ドラム21表面を露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。この露光ユニット23としては、半導体レーザからの光ビームをポリゴンミラーにより主走査方向に走査させるもの、あるいは発光素子を主走査方向に配列したラインヘッド等により構成することができる。
【0030】
こうして形成された静電潜像に対して現像ユニット24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。なお、この画像形成装置1の現像ユニット24では、キャリア液内にトナーを概略重量比20%程度に分散させた液体現像剤を用いてトナー現像が行われる。この実施形態では、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)をキャリア液(液体キャリア)とした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性の樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形粒子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0031】
第1スクイーズ部25および第2スクイーズ部26にはスクイーズローラーがそれぞれ設けられている。そして、各スクイーズローラーが感光体ドラム21の表面と当接してトナー像の余剰キャリア液やカブリトナーを除去する。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26により余剰キャリア液やカブリトナーを除去しているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0032】
スクイーズ部25、26を通過してきたトナー像は一次転写ユニットにより中間転写ベルト31に一次転写される。この中間転写ベルト31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を一時的に担持可能な無端状の像担持体ベルトであり、複数のローラー32、33、34および35に掛け渡されている。このうちローラー32はベルト駆動モーターM3に機械的に接続されて、中間転写ベルト31を図1の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。図2に示すように、本実施形態ではベルト駆動モーターM3を駆動させるためにドライバー11が設けられており、ドライバー11は、コントローラー10から与えられる指令パルスに応じた駆動信号をベルト駆動モーターM3に出力する。これにより、ベルト駆動ローラー32は指令パルスに対応する周速度で回転し、中間転写ベルト31の表面は一定の速度で方向D31に周回移動する。なお、同図中の符号E3はベルト駆動モーターM3に取り付けられたエンコーダーであり、ベルト駆動モーターM3の回転に対応する信号をドライバー11に与え、これを受け取ったドライバー11は上記信号に基づきベルト駆動モーターM3をフィードバック制御する。
【0033】
詳しくは後述するが、中間転写ベルト31を掛け渡されたローラー32ないし35のうち、モーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33、34および35は駆動源を有しない従動ローラーである。
【0034】
一次転写ユニットは一次転写バックアップローラー271を有しており、一次転写バックアップローラー271は中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写ベルト31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写ベルト31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写ベルト31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写ベルト31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写ベルト31へのトナー像転写が行われる。
【0035】
こうして中間転写ベルト31に転写されたトナー像は二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写ベルト31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写ローラー4が中間転写ベルト31を挟んで対向配置されており、中間転写ベルト31表面と転写ローラー4表面とが互いに当接して転写ニップを形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。
【0036】
二次転写位置TR2においては、中間転写ベルト31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録材RMに転写される。なお、この実施形態では、液体現像剤を用いてトナー像を形成する湿式現像方式でトナー像を形成しているので、良好な転写特性を得るために、転写ニップにおいては中間転写ベルト31に対し記録材RMが高い押圧力で押圧されることが望まれる。また、液体現像剤を介在させるため、記録材RMが中間転写ベルト31に貼り付きジャムとなる可能性が高い。そこで、この実施形態では、後で詳述するように把持部を有する二次転写ローラー4が用いられている。
【0037】
トナー像が二次転写された記録材RMは、二次転写ローラー4から搬送経路PT上に設けられた搬送ローラー7により、図示を省略する定着ユニットへ送出される。定着ユニットでは、記録材RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録材RMへのトナー像の定着が行われる。
【0038】
図3は二次転写ローラーの全体構成を示す斜視図である。図1および図3に示すように、二次転写ローラー4は、円筒の外周面の一部を切り欠いてなる凹部41が設けられたローラー基材42を有している。このローラー基材42では、回転軸A4中心に方向D4に回転自在の回転シャフト421が二次転写バックアップローラー34の回転軸と平行または略平行に配置されるとともに、当該回転シャフト421の両端部に側板422、422がそれぞれ取り付けられている。より詳しくは、これらの側板422、422はいずれも円盤形状の金属プレートに対して切り欠き部422aを設けた形状を有している。そして、図3に示すように切欠部422a、422aが互いに対向しながら中間転写ベルト31の幅よりも少し長い距離だけ離間して回転シャフト421に取り付けられている。こうして、全体的にはドラム形状を有するものの、その外周面の一部に回転シャフト421と平行または略平行に延びる凹部41を有する、ローラー基材42が形成されている。
【0039】
また、ローラー基材42の外周面、つまり金属プレート表面のうち凹部41の内部に相当する領域を除く表面領域にゴムや樹脂などの弾性層43が形成されている。この弾性層43は駆動ローラー32に巻き掛けられた中間転写ベルト31と対向して転写ニップNPを形成する。
【0040】
また、凹部41の内部には、記録材RMを把持するための把持部44が配設されている。この把持部44は、凹部41の内底部からローラー基材42の外周面に立設されたグリッパ支持部材441と、グリッパ支持部材441の先端部に対して接離自在に支持されたグリッパ部材442とを有している。また、グリッパ部材442はグリッパ駆動部(図示省略)と接続されている。そして、コントローラー10からのアングリップ指令を受けてグリッパ駆動部が作動することでグリッパ部材442の先端部がグリッパ支持部材441の先端部から離間して記録材RMの把持準備や把持開放を行う。一方、コントローラー10からのグリップ指令を受けてグリッパ駆動部が作動することでグリッパ部材442の先端部がグリッパ支持部材441の先端部に移動して記録材RMを把持する。なお、把持部44の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば特許文献2などに記載されている公知の把持機構を採用することができる。
【0041】
二次転写ローラー4の両端部では、各側板422の外側面に支持部材46が取り付けられており、ローラー基材42と一体的に回転可能となっている。また、支持部材46には凹部41に対応して平面領域が形成されている。そして、平面領域に転写ローラー側度当て部材47がそれぞれ取り付けられている。度当て部材47では、基台部位471が支持部材46に取り付けられるとともに、基台部位471から度当て部位472が平面領域461の法線方向に延設されており、度当て部位472の先端部は凹部41の開口側端部の近傍まで延びている。つまり、回転シャフト421の端部からローラー基材42を見ると、度当て部材47が凹部41を塞ぐように配置されている。したがって、二次転写ローラー4の回転によって凹部41が中間転写ベルト31と対向する位置に到達した場合には、度当て部材47が二次転写バックアップローラー34の端部表面に当接する。これにより、二次転写ローラー4を回転駆動するモーターから見た負荷トルクの変動を軽減することができる。
【0042】
なお、この実施形態では、ローラー基材42の回転方向D4に沿った凹部41の開口部長さ(開口幅)W41は約105mmである。二次転写ローラー4の外周面のうち凹部41を除く領域に形成された弾性層43が中間転写ベルト31に対向する位置にあるとき、弾性層43が中間転写ベルト31に押し付けられて転写ニップNPが形成される。ローラー基材42の回転方向D4に沿った転写ニップNPの長さ(転写ニップ幅)Wnpは11mm程度であり、
(凹部41の開口幅W41)>(転写ニップNPでの転写ニップ幅Wnp)
の関係を有している。したがって、二次転写ローラー4の凹部41が中間転写ベルト31と対向した状態では、一時的に転写ニップが消失することになる。
【0043】
また、ローラー基材42の回転方向D4に沿った弾性層43の長さは約495mmに設定されており、これは、この装置1において使用可能な記録材RMのうち最も大きなサイズのものを巻き付けることができるようにしたものである。すなわち、弾性層43の長さは、使用可能な記録材のうちローラー基材42の回転方向D4に沿った長さが最大であるものの長さよりも長くなるように定められている。
【0044】
二次転写ローラー4の回転シャフト421に対して転写ローラー駆動モーターM4が機械的に接続されている。また、本実施形態では、転写ローラー駆動モーターM4を駆動させるためにドライバー12が設けられている。ドライバー12は、コントローラー10から与えられる指令に応じてモーターM4を駆動して二次転写ローラー4を図1紙面において時計回りの方向D4、つまりベルト移動方向D31に対しウィズ方向に回転駆動する。二次転写バックアップローラー34は、それ自身は駆動源を有しない従動ローラーである。モーター駆動される二次転写ローラー4に対向する二次転写バックアップローラー34を従動ローラーとすることで、転写ニップNPにおける二次転写ローラー4と中間転写ベルト31との間、あるいは中間転写ベルト31と二次転写バックアップローラー34との間での滑りを防止することができる。
【0045】
本実施形態では、モーターM4としてACサーボーモーターを用いるとともに、当該ACサーボーモーターをドライバー12により位置制御したり、トルク制御したりすることができるように構成されている。すなわち、ドライバー12は位置制御回路およびトルク制御回路を有しており、位置制御およびトルク制御を選択的に実行可能となっている。このドライバー12に対し、コントローラー10は位置情報に関連する指令パルス、トルク情報に関連する指令トルクおよび制御切替信号を入力可能となっている。
【0046】
なお、図2中の符号E4は転写ローラー駆動モーターM4に取り付けられたエンコーダーであり、転写ローラー駆動モーターM4の回転に対応する信号をドライバー12に与え、これを受け取ったドライバー12は上記信号に基づき当該モーターM4をフィードバック制御する。また、センサー8は、二次転写ローラー4の回転シャフト421の一方端部に連結されたホームポジションマーク81(図1)を検出する光学式のセンサーである。つまり、センサー8は、二次転写ローラー4に伴って回転するホームポジションマーク81を検出して、コントローラー10にホームポジション信号を出力する。そして、コントローラー10は、このホームポジション信号を検出して、二次転写ローラー4のホームポジションや回転位相を把握することができる。
【0047】
中間転写ベルト31を掛け渡されたローラーのうち、転写ニップNPを挟む位置に設けられたローラー33、35は、その回転軸がそれぞれバネ331、351によって弾性的に支持されて中間転写ベルト31の張力を調整するテンションローラーである。より詳しくは、テンションローラー33の回転軸は、略水平方向に伸縮自在のバネ331(第2の弾性部材)によって弾性的に支持されており、これにより、テンションローラー33は、中間転写ベルト31を巻き掛けられた状態で略水平方向に所定量移動自在となっている。
【0048】
また、テンションローラー35の回転軸は、駆動ローラー32の外周面と二次転写バックアップローラー34の外周面との双方に接する仮想的な平面に略直交する方向に伸縮自在のバネ351(第1の弾性部材)によって弾性的に支持されており、これにより、テンションローラー35は、中間転写ベルト31を巻き掛けられた状態で同方向に所定量移動自在となっている。そして、定常状態では、ベルト駆動ローラー32と二次転写バックアップローラー34との間に張架された中間転写ベルト31を外側に向けて押し広げるように、テンションローラー35はバネ351によって付勢されている。
【0049】
二次転写位置TR2においては、二次転写ローラー4の回転に伴って中間転写ベルト31と対向する二次転写ローラー4の表面が弾性層43から凹部41に切り替わるときや、これとは逆に凹部41から弾性層43に切り替わるときに、ベルト駆動ローラー32を駆動するベルト駆動モーターM3の負荷トルクが大きく変動する。弾性層43と中間転写ベルト31との間に高い押圧力が印加されている場合には特に変動が大きい。これに起因して中間転写ベルト31の速度変動や振動が生じ、ベルト31の張力が一時的に変化することが考えられる。
【0050】
しかしながら、この実施形態では、中間転写ベルト31の張架方向に沿って二次転写位置TR2を挟むように設けられた1対のテンションローラー33、35がその回転軸を移動させることによって張力の変動を打ち消すように作用する。このため、二次転写位置TR2における中間転写ベルト31の速度変動や振動が各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kに対応する一次転写位置TR1に及ぶのが防止される。一次転写位置TR1における中間転写ベルト31の速度変動や振動は、画像形成ステーションから転写されるトナー像を乱し画像品質を低下させてしまうが、この実施形態ではこのような像形成への影響が未然に防止されている。
【0051】
テンションローラー33、35はいずれも、中間転写ベルト31の内側、つまり中間転写ベルト31の像担持面である表面とは反対側の裏面側から中間転写ベルト31に当接している。その理由は以下の通りである。まず、像担持面の反対側に当接することにより、テンションローラー33、35が中間転写ベルト31に担持されるトナー像を乱したり、逆に中間転写ベルト31に残留付着するトナー等によって汚されたりすることがない。また、テンションローラーによる張力の調整効果を大きくするためには中間転写ベルト31の巻き掛け角を大きく取ることが有効であるが、テンションローラーを像担持面に当接させ、しかも巻き掛け角を大きくしようとすると、中間転写ベルト31の表面に負の大きな曲率を持たせる必要があり、トナー像への影響が懸念され、構造的にも問題がある。これらの理由から、テンションローラー33、35は中間転写ベルト31の裏面に当接するようにしている。
【0052】
また、この実施形態では、ベルト移動方向D31においてテンションローラー33の下流からベルト駆動ローラー32の上流までの間で中間転写ベルト31の表面が略水平姿勢となるように、ベルト駆動ローラー32およびテンションローラー33を配置している。そして、各画像形成ステーションについての一次転写位置TR1が、いずれも中間転写ベルト31表面(より詳しくはトナー像が転写される下面)により形成される同一平面上に配置されるようにしている。さらに、テンションローラー33の回転軸の移動方向についても略水平方向となるようにしている。このため、速度変動や振動を吸収するためにテンションローラー33が動いたとしても中間転写ベルト31表面の水平は保たれており、像形成への影響を最小限に抑えることができる。なお、画像形成ステーションの近傍で中間転写ベルト31表面が水平であることは必須でないが、少なくとも、ベルト31表面の移動方向とテンションローラー33の移動方向とが同一または略同一であることが望ましい。
【0053】
なお、テンションローラー35については、一次転写位置TR1との間にベルト駆動ローラー32が介在していることからその移動方向については像形成上の制約を受けない。そこで、駆動ローラー32の外周面と二次転写バックアップローラー34の外周面との双方に接する仮想的な平面に略直交する方向に移動するようにして、中間転写ベルト31の速度変動や振動を最も効果的に低減することができるようにしている。
【0054】
また、テンションローラー33との間に中間転写ベルト31を挟むようにして、中間転写ベルト31に当接するキャリア塗布ローラー381が設けられている。さらに、キャリア塗布ローラー381の鉛直上方には、液体キャリアをキャリア塗布ローラー381に供給する液体キャリア貯留部382が配置されている。そして、キャリア塗布ローラー381は、液体キャリア貯留部382から供給された液体キャリアを、中間転写ベルト31に塗布する。なお、キャリア塗布ローラー381および液体キャリア貯留部382は、テンションローラー33と一体的に移動自在に支持されている。
【0055】
また、テンションローラー33に巻き掛けられた中間転写ベルト31の近傍には、中間転写ベルト31表面に対して離当接自在に構成されたクリーナーユニット39が設けられている。クリーナーユニット39は中間転写ベルト31表面に残留するトナーを掻き落とすことで、中間転写ベルト31をクリーニングする。このクリーナーユニット39は、バネ331によって支持されたテンションローラー33の回転軸と一体的に支持されており、テンションローラー33の変位にしたがって変位する。このため、クリーナーユニット39と中間転写ベルト31との相対位置は変動しない。
【0056】
図4はテンションローラーの配置をより詳しく説明するための図である。この実施形態では、中間転写ベルト31の移動方向D31における上流側のテンションローラー35から二次転写位置TR2を経由して下流側のテンションローラー33に至る経路の外に、ベルト駆動ローラー32を設けている。これにより、転写ローラー駆動モーターM4から二次転写ローラー4を介して中間転写ベルト31に与えられる駆動力と、ベルト駆動モーターM3からベルト駆動ローラー32を介して中間転写ベルト31に与えられる駆動力とをテンションローラーにより分離して、両者の相互干渉を防止することができる。
【0057】
ここで、中間転写ベルト31の移動方向D31に沿って、二次転写位置TR2から、画像形成ステーションのうち中間転写ベルト31の移動方向D31において最も下流側にある画像形成ステーション2Kに対応する一次転写位置TR1kまでの中間転写ベルト31の周長を符号L1により表す。また、二次転写位置TR2から、画像形成ステーションのうち中間転写ベルト31の移動方向D31において最も上流側にある画像形成ステーション2Yに対応する一次転写位置TR1yまでの中間転写ベルト31の周長を符号L2により表す。このとき、
L1<L2 … (式1)
の関係が成立するように、各ローラー32ないし35の配置を定める。
【0058】
このような配置によれば次のような作用効果が得られる。まず、二次転写位置TR2と一次転写位置TR1kとの間には、二次転写位置TR2で生じる中間転写ベルト31の速度変動や振動を吸収することができる要素として、テンションローラー35とベルト駆動ローラー32とが設けられている。このうち、テンションローラー35はその位置を変化させることで変動を吸収する。また、ベルト駆動ローラー32は、ベルト駆動モーターM3の駆動トルクによって変動を押さえ込む。このように、二次転写位置TR2から一次転写位置TR1kへの変動の伝播はテンションローラー35とベルト駆動ローラー32との2段階で阻止されているので、この部分の中間転写ベルト31の周長L1が短くても、一次転写位置TR1kへの影響はほぼ確実に抑えられる。
【0059】
一方、二次転写位置TR2と一次転写位置TR1yとの間には、テンションローラー33が介在するのみである。そこで、この部分における中間転写ベルト31の周長L2を長くすることで、ベルト自体が有する塑性や弾性によって、二次転写位置TR2から一次転写位置TR1yへの変動の伝播をより低減させることが可能となる。
【0060】
また、このような構成では、画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kが一次転写位置TR1で中間転写ベルト31表面に形成した画像を、二次転写位置TR2の転写ニップNPで記録材RMに重ね合わせる。したがって、転写ニップNPを記録材RMが通過するタイミングに合わせて、画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kから転写ニップNPまで画像を搬送することが求められる。したがって、画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kから転写ニップNPまでの距離(例えば、距離L1)を安定させることが重要となり、換言すれば、テンションローラー35の変位をできるだけ小さく抑えることが好適となる。そこで、この実施形態では、テンションローラー33、35にテンション力を付与する各機構が次のように構成されている。
【0061】
図5はテンションローラーとこれに力を付与するバネの作用を説明するための図である。テンションローラー35が中間転写ベルト31に与える力は、
F1=k1・x1 … (式2)
により表される。ここで、k1はバネ351のバネ定数である。また、x1は、中間転写ベルト31が巻き掛けられておらず当該中間転写ローラー31からの力が作用していない状態(フリーな状態)でのテンションローラー35の位置(図5の破線)から、中間転写ベルト31が巻き掛けられた状態でのテンションローラー35の位置(図5の実線)までのテンションローラー35の変位量を、バネ351の変形によってテンションローラー35に作用する力F1の方向に求めたもの(テンションローラーの変位量)である。すなわち、変位量x1は、本発明における「第1の張架ローラーに像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の第1の張架ローラーの位置から、像担持体ベルトから張力が掛けられた時に第1の張架ローラーが移動した位置までの像担持体ベルトから掛けられた張力により第1の張架ローラーに作用する力の方向の変位量Δl1」に相当する。ここで、テンションローラー35への中間転写ベルト31の巻き掛け角をθ1とすると、上記力F1と、中間転写ベルト31の表面に沿って巻き掛け位置の上流側および下流側にそれぞれ作用する張力T1の合力とがつり合うので、図5に示す関係から、次式、
2T1・sin(θ1)=F1 … (式3)
が成立する。したがって、(式2)、(式3)より、次式、
T1=(1/2)・k1・x1/{sin(θ1/2)} … (式4)
が導かれる。換言すれば、バネ351は、テンションローラー35の変位量x1(=Δl1)に、次式で表される比例係数K1
K1=k1/{2・sin(θ1/2)} … (式5)
を乗じた張力T1を中間転写ベルト31に付与する。
【0062】
同様に、テンションローラー33を支持するバネ331のバネ定数をk2、テンションローラー33の変位量をx2(=Δl2)、テンションローラー33への中間転写ベルト31の巻き掛け角をθ2とすると、テンションローラー33の変位による中間転写ベルト31の張力T2は、次式、
T2=(1/2)・k2・x2/{sin(θ2/2)} … (式6)
により表される。換言すれば、バネ331は、テンションローラー33の変位量x2(=Δl2)に、次式で表される比例係数K2
K2=k2/{2・sin(θ2/2)} … (式7)
を乗じた張力T2を中間転写ベルト31に付与する。
【0063】
2つのテンションローラーによる中間転写ベルト31の張力の変化が互いに打ち消し合うための条件はT1=T2である。さらに、テンションローラー35の変位は、二次転写位置TR2での二次転写に大きく影響するため、その影響を小さくするには、テンションローラー35の変位x1が、テンションローラー33の変位x2より小さいことが望ましい。そこで、この実施形態では、次式、
k1/sin(θ1/2)>k2/sin(θ2/2) … (式8)
の関係が満足されている。
【0064】
これらの代表的な数値例を示すと、
θ1:42.7度、
θ2:168.9度、
k1:1.0N/mm、
k2:1.0N/mm、
である。このとき、
k1/sin(θ1/2)≒2.7N/mm、
k2/sin(θ2/2)≒1.0N/mm、
であり、(式8)の関係が満たされる。
【0065】
次に、上記のように構成された画像形成装置1の動作について図6を参照しつつ説明する。図6は図1の画像形成装置の動作例を示すタイミングチャートである。センサー8は、二次転写ローラー4のホームポジションを検出すると、ホームポジション検出信号をコントローラー10に出力する。そして、コントローラー10は、ホームポジション検出信号から時間Taが経った時点で、イエロー(Y)の露光ユニット23に感光体ドラム21の露光を開始させる。この露光によって形成された潜像はイエロー(Y)の現像ユニット24により現像されて、イエロー(Y)の画像が形成される。そして、このイエロー(Y)の画像は、一次転写位置TR1で中間転写ベルト31に一次転写されて、二次転写位置TR2に向けて搬送される。
【0066】
また、コントローラー10は、ホームポジション検出信号から時間Tb(>Ta)が経った時点で、マゼンタ(M)の露光ユニット23に感光体ドラム21の露光を開始させる。この露光によって形成された潜像はマゼンタ(M)の現像ユニット24により現像されて、マゼンタ(M)の画像が形成される。そして、このマゼンタ(M)の画像は、一次転写位置TR1で中間転写ベルト31に一次転写される。しかも、この一次転写は、中間転写ベルト31の移動に伴って一次転写位置TR1を通過するイエロー(Y)の画像に、マゼンタ(M)の画像を重ね合わせるようにして実行される。こうして互いに重ね合わされたイエロー(Y)およびマゼンタ(M)の画像は、二次転写位置TR2に向けて搬送される。
【0067】
さらに、コントローラー10の制御によって、シアン(C)およびブラック(K)についても同様の動作が実行されて、4色(Y)、(M)、(C)、(K)の画像を互いに重ね合わせたカラー画像が中間転写ベルト31の表面に形成されて、二次転写位置TR2へ搬送される。また、コントローラー10は、ホームポジション検出信号から時間Teが経った時点で、ゲートローラー51の駆動を開始して、記録材RMの二次転写位置TR2への搬送を開始する。そして、記録材RMの搬送開始から時刻ΔTeが経った時点から、記録材RMが二次転写位置TR2を通過し始める。また、記録材RMの先端が二次転写位置TR2に到着するのと同時に、中間転写ベルト31表面のカラー画像の先端も二次転写位置TR2に到着する。そして、記録材RMとカラー画像が二次転写位置TR2を通過し始めたタイミングで、二次転写位置TR2に二次転写バイアスが印加される。こうして、記録材RMにカラー画像が重ね合わされる。
【0068】
このように、この実施形態では、各色(Y)、(M)、(C)、(K)の露光ユニット23による露光の開始タイミング、ゲートローラー51による記録材RMの搬送開始タイミング、および二次転写バイアスの印加開始のタイミングが、二次転写ローラー4のホームポジションに基づいて制御される。
【0069】
以上のように、この実施形態では、中間転写ベルト31と二次転写ローラー4とが当接して転写ニップNPが形成される。そして、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cによって中間転写ベルト31に形成されたカラー画像は、駆動ローラー32の巻き掛け位置を経由して、転写ニップNPにまで搬送される。また、駆動ローラー32から転写ニップNPまでの間では、テンションローラー35が中間転写ベルト31に当接するとともに、このテンションローラー35と転写ニップNPを挟む位置でテンションローラー33が中間転写ベルト31に当接する。そして、これらテンションローラー33、35それぞれを介して中間転写ベルト31に張力T1、T2を付与するバネ331、351が設けられている。具体的には、バネ351は、テンションローラー35の変位に対して比例係数K1を乗じた張力T1を中間転写ベルト31に付与し、バネ331は、テンションローラー33の変位に対して比例係数K2を乗じた張力T2を中間転写ベルト31に付与する。こうして中間転写ベルト31に張力T1、T2を付与することによって、中間転写ベルト31の撓みを取って、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離(中間転写ベルト31の長さ)の安定化が図られている。
【0070】
ただし、二次転写ローラー4は周面に凹部41を有しているため、この凹部41が中間転写ベルト31に対向しているときと、それ以外のときとで、中間転写ベルト31に加わる押圧力が変動する。そのため、中間転写ベルト31からテンションローラー35に作用する力が変動して、テンションローラー35が大きく変位し、その結果、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離が大きく変動するおそれがあった(図7)。
【0071】
ここで、図7は、テンションローラーの変位量と、画像形成ステーションから転写ニップまでの中間転写ベルトの長さの変動量との関係をグラフで示した図である。同図では、テンションローラー35の変位量が横軸に取られ、画像形成ステーションから転写ニップNPまでの中間転写ベルト31の長さの誤差が縦軸に取られている。また、バネ351のバネ定数k1が0.5(N/mm)、1.0(N/mm)、1.5(N/mm)それぞれの場合についてグラフが示されている。同図から、テンションローラー35が変位することで、画像形成ステーションから転写ニップNPまでの距離(中間転写ベルト31までの長さ)が変動することが判る。
【0072】
つまり、テンションローラー33、35で中間転写ベルト31に張力T1、T2を付与することで、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離の安定化を図ったにも拘わらず、周面に凹部41を有した転写ローラー4を用いたことによって、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離が結果的に安定しないおそれがあった。
【0073】
これに対して、この実施形態では、テンションローラー35の変位量x1(=Δl1)に対する比例係数K1よりもテンションローラー33の変位量x2(=Δl2)に対する比例係数K2を小さく設定している。この理由について説明すると次のとおりである。二次転写ローラー4が中間転写ベルト31に与える押圧力が変動した場合には、テンションローラー35およびテンションローラー33それぞれが変位して、中間転写ベルト31に付与する張力を維持する。このとき、テンションローラー35の変位に対する比例係数K1よりもテンションローラー33の変位に対する比例係数K2を小さく設定しておけば、二次転写ローラー4の押圧力の変動に対して、テンションローラー33は大きく変位するのに対して、テンションローラー35の変位は小さく抑えられる。こうして、この実施形態では、二次転写ローラー4の押圧力の変動に拘わらず、テンションローラー35の変位を小さく抑えて、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離(中間転写ベルト31の長さ)を安定化させることが可能となっている。
【0074】
また、上記実施形態では、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cが中間転写ベルト31に画像を形成(一次転写)するタイミングを、二次転写ローラー4の回転に応じて制御している。より具体的には、コントローラー10が、二次転写ローラー4の回転に応じて露光ユニット23による露光の開始を調整し、これによって、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cが中間転写ベルト31に画像を形成するタイミングを制御している。このような構成では、露光ユニット23による露光の開始を調整するだけで、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cが中間転写ベルト31に画像を形成するタイミングを簡便に制御することができ、制御構成の簡素化を計ることができる。
【0075】
また、上記実施形態では、トナーと液体キャリアを有する液体現像剤によって潜像を現像して得られるトナー像を、中間転写ベルト31に形成し、二次転写ローラー4周面の凹部41に配された把持部44に把持された記録材RMに、中間転写ベルト31の画像が転写される。このような構成では、液体キャリアによって記録材RMが中間転写ベルト31に貼り付くことが防止されるという利点を有する反面、二次転写ローラー4の回転に伴なって中間転写ベルト31の押圧力が変動して、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離が結果的に安定しないおそれがある。そこで、このような構成に対しては、本発明を適用して、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離の安定化を図ることが、極めて好適となる。
【0076】
また、上記実施形態のように、複数の画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cそれぞれが形成した画像を、中間転写ベルト31で重ね合わせる構成に対しては、本発明を適用することが特に好適となる。つまり、このような構成では、レジストずれを抑制しつつ、異なる色の像を互いに重ね合わせることが求められる。そして、そのためには、中間転写ベルト31の移動方向D31に転写ニップNPから画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cまでの区間のベルトテンションを一定に保ことが好適となる(図8)。
【0077】
ここで、図8は、中間転写ベルトのテンションの変動量とレジストずれの関係を示す図である。同図では、中間転写ベルト31の移動方向D31に転写ニップNPから画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cまでの区間における中間転写ベルト31のテンションの変動量(縦軸)に対するレジストずれ(横軸)の関係がグラフで示されている。このグラフから、中間転写ベルト31のテンションの変動量が大きいと、レジストずれも大きくなることが判る。
【0078】
これに対して、この実施形態では、該当区間の中間転写ベルト31に対しては、テンションローラー33が当接するとともに、このテンションローラー33の変位量x2(=Δl2)に比較的小さい比例係数K2を乗じた張力T2が付与される。したがって、該当区間のベルトテンションは略一定に保たれることとなり、その結果、レジストずれが抑制された良好なカラー画像を形成することができる(図9)。
【0079】
ここで、図9は、テンションローラー33を支持するバネ331のバネ定数とレジストずれの関係を示す図である。同図では、横軸にテンションローラー33の変位量が取られ、縦軸にレジストずれが取られている。また、バネ331のバネ定数k2が0.5(N/mm)、1.0(N/mm)、1.5(N/mm)それぞれの場合についてグラフが示されている。同図から、テンションローラー33の変位量が同じであっても、バネ定数k2の値が小さいほど、レジストずれが抑制されていることが判る。
【0080】
ところで、中間転写ベルト31そのものが伸縮して、その結果、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cが画像を形成(転写)する一次転写位置TR1において、中間転写ベルト31の速度が変動する場合がある。そして、この速度変動は、中間転写ベルト31に画像を適切に形成できない原因となりうる。これに対して、上記実施形態では、ベルトの移動方向D31に二次転写位置TR2から一次転写位置TR1までの間には、中間転写ベルト31に液体キャリアを付与するキャリア塗布ローラー381が設けられている。これによって、中間転写ベルト31が伸縮した場合であっても、キャリア塗布ローラー381で塗布された液体キャリアの粘性抵抗によって、中間転写ベルト31の伸縮の影響を緩和して、中間転写ベルト31の速度変動を抑制することができる。その結果、中間転写ベルト31に画像を適切に形成(転写)することが可能となっている。
【0081】
第2実施形態
図10は本発明にかかる画像形成装置の第2実施形態を示す図である。第1実施形態と第2実施形態との違いは、テンションローラー33、35の配置と、これらのローラー33、35に力を付与する機構にあるため、以下では、この差異点について主に説明し、共通点については相当符号を付して説明を省略する。
【0082】
第1実施形態においてテンションローラー33が配置されていた位置には、テンションローラー33は配置されておらず、その代わりに従動ローラー36が配置されている。そして、テンションローラー33は、このローラー36と二次転写位置TR2の間に配置されて、中間転写ベルト31に当接している。また、テンションローラー33に力を付与する機構は、バネ331の他にレバー332を具備している。このレバー332は、その一端と他端の間にある回動中心C33に対して回動自在に構成されている。そして、レバー332の一端にテンションローラー33が回転自在に支持されるとともに、レバー332の他端がバネ331により支持されている。したがって、バネ331が発生する力は、レバー332の回動中心C33を支点としてテンションローラー33に作用する。
【0083】
テンションローラー35の配置は第1実施形態と同様であるが、このローラー35に力を付与する機構が第1実施形態と異なる。つまり、この機構は、バネ351の他にレバー352を具備している。このレバー352は、その一端と他端の間にある回動中心C35に対して回動自在に構成されている。そして、レバー352の一端にテンションローラー35が回転自在に支持されるとともに、レバー352の他端がバネ351により支持されている。したがって、バネ351が発生する力は、レバー352の回動中心C35を支点としてテンションローラー35に作用する。
【0084】
そして、テンションローラー33、35に力を付与する機構のそれぞれは、テンションローラー33、35を介して中間転写ベルト31に張力を付与する。これについて、図11を用いて詳述する。図11はテンションローラーとこれに力を付与する機構の作用を説明するための図である。ここで、
T1:中間転写ベルト31の張力
k3:バネ351のバネ定数
x1:中間転写ベルト31が巻き掛けられておらず当該中間転写ローラー31からの力が作用していない状態(フリーな状態)でのテンションローラー35の位置(図11の破線)から、中間転写ベルト31が巻き掛けられた状態でのテンションローラー35の位置(図11の実線)までのテンションローラー35の変位量を、バネ351の変形によってテンションローラー35に作用する力の方向に求めたもの(テンションローラーの変位量)、換言すれば、本発明における「第1の張架ローラーに像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の第1の張架ローラーの位置から、像担持体ベルトから張力が掛けられた時に第1の張架ローラーが移動した位置までの像担持体ベルトから掛けられた張力により第1の張架ローラーに作用する力の方向の変位量Δl1」
θ1:テンションローラー35への中間転写ベルト31の巻き掛け角
とする。さらに、レバー352の回動中心C35からレバー352の一端がテンションローラー35にかける力の(仮想)作用線に下ろした(仮想)垂線の長さをLa1、レバー352の回動中心C35からバネ351の力の(仮想)作用線に下ろした(仮想)垂線の長さをLb1としたとき、張力T1は、次式
T1=(1/2)・(Lb1/La1)・k3・x1/sin(θ1/2) … (式9)
で表される。換言すれば、バネ351およびレバー352は、テンションローラー35の変位量x1(=Δl1)に、次式で表される比例係数K1
K1=(Lb1/La1)・k3/{2・sin(θ1/2)} … (式10)
を乗じた張力T1を中間転写ベルト31に付与する。
【0085】
同様に、バネ331のバネ定数をk4、テンションローラー33への中間転写ベルト31の巻き掛け角をθ2、レバー332の回動中心C33からレバー332の一端がテンションローラー33にかける力の(仮想)作用線に下ろした(仮想)垂線の長さをLa2、レバー332の回動中心C33からバネ331の力の(仮想)作用線に下ろした(仮想)垂線の長さをLb2としたとき、張力T2は、次式
T2=(1/2)・(Lb2/La2)・k4・x2/sin(θ2/2) … (式11)
で表される。換言すれば、バネ331およびレバー332は、テンションローラー33の変位量x2(=Δl2)に、次式で表される比例係数K2
K2=(Lb2/La2)・k4/{2・sin(θ2/2)} … (式12)
を乗じた張力T2を中間転写ベルト31に付与する。
【0086】
2つのテンションローラーによる中間転写ベルト31の張力の変化が互いに打ち消し合うための条件はT1=T2である。さらに、テンションローラー35の変位は、二次転写位置TR2での二次転写に大きく影響するため、その影響を小さくするには、テンションローラー35の変位x1が、テンションローラー33の変位x2より小さいことが望ましい。そこで、この実施形態では、次式、
(Lb1/La1)・k3/sin(θ1/2)>(Lb2/La2)・k4/sin(θ2/2) … (式13)
の関係が満足されている。
【0087】
これらの代表的な数値例を示すと、
θ1:39.7度、
θ2:21.6度、
k3:1.0N/mm、
k4:0.5N/mm、
La1=25mm
La2=30mm
Lb1=30mm
Lb2=30mm
である。このとき、
(Lb1/La1)・k3/sin(θ1/2)≒4.2N/mm、
(Lb2/La2)・k4/sin(θ2/2)≒2.7N/mm、
であり、(式13)の関係が満たされる。
【0088】
以上のように、第2実施形態においても、テンションローラー35の変位量x1(=Δl1)に対する比例係数K1よりもテンションローラー33の変位量x2(=Δl2)に対する比例係数K2を小さく設定している。したがって、二次転写ローラー4の押圧力の変動に対して、テンションローラー33は大きく変位するのに対して、テンションローラー35の変位は小さく抑えられる。こうして、二次転写ローラー4の押圧力の変動に拘わらず、テンションローラー35の変位を小さく抑えて、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離を安定化させることが可能となっている。
【0089】
また、この実施形態のように、レバーによって、テンションローラー33、35に力を付与する構成は、次のような利点を有する。つまり、テンションローラー33、35が変位するのに伴って、テンションローラー33、35が中間転写ベルト31に対してスライドすることがある。このとき、テンションローラー33、35と中間転写ベルト31の間のスライド抵抗が大きいために、外力に対するテンションローラー33、35の応答性が悪化して、テンションローラー33、35の変位が安定せず、その結果、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離が若干不安定になることが考えられる。これに対して、上記のようなレバー構造では、テンションローラー33、35が中間転写ベルト31に対してスライドする際に発生する、テンションローラー33、35と中間転写ベルト31の間のスライド抵抗を小さく抑えることができる。その結果、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cから転写ニップNPまでの距離をより安定化させることが可能となる。
【0090】
その他
以上説明したように、これらの実施形態では、中間転写ベルト31が本発明の「像担持体ベルト」に相当し、画像形成ステーション2Y、2M、2K、2Cが本発明の「作像部」に相当し、ベルト駆動ローラー32が本発明の「駆動ローラー」に相当し、バックアップローラー34が本発明の「ローラー」に相当し、テンションローラー35が本発明の「第1の張架ローラー」に相当し、テンションローラー33が本発明の「第2の張架ローラー」に相当し、二次転写ローラー4が本発明の「転写ローラー」に相当し、コントローラー10が本発明の「制御部」に相当している。また、第1実施形態では、バネ351が本発明の「第1の張力付与部」に相当し、バネ331が本発明の「第2の張力付与部」に相当している。また、第2実施形態では、バネ351およびレバー352が協働して本発明の「第1の張力付与部」として機能し、バネ331およびレバー332が協働して本発明の「第2の張力付与部」として機能している。
【0091】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記各実施形態では、中間転写ベルト31の張架方向に沿って4個の画像形成ステーションを一列に並べているが、画像形成ステーションの数や配置はこれに限定されるものではない。
【0092】
また、上記各実施形態では、液体キャリア中にトナーを分散させた現像剤を用いる、いわゆる液体現像方式の画像形成装置であるが、本発明の適用対象は当該方式のものに限定されない。すなわち、現像方式に関わらず、図1に例示したように、円筒周面の一部が切り欠かれた表面形状を有する転写ローラーを中間転写ベルトに当接させる構造を有する画像形成装置全般に対して、本発明を適用することが可能である。
【0093】
さらに、把持機構を有しない転写ローラーを備えた装置にも本発明を適用可能である。例えばシート状の弾性体を転写ローラー表面に巻き付けることによって弾性表面層を構成している装置では、シートの端部を固定するために転写ローラー外周面に切り欠き部を設ける必要があるが、このような構成を有し把持機構を有していない装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…コントローラー、 2Y,2M,2C,2K…画像形成ステーション、 31…中間転写ベルト、 32…ベルト駆動ローラー、 34…二次転写バックアップローラー、 35…テンションローラー、 351…バネ、 33,37…テンションローラー、 331,371…バネ、 4…二次転写ローラー、 41…凹部、 43…弾性層、 44…把持部、 M3…ベルト駆動モーター、 M4…転写ローラー駆動モーター、 TR1…一次転写位置、 TR2…二次転写位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を担持する像担持体ベルトと、
前記像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、前記像担持体を移動させる駆動ローラーと、
前記駆動ローラーに巻き掛けられた前記像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、前記像担持体ベルトに張力T1を付与する第1の張架ローラーと、
比例係数K1を有し、前記第1の張架ローラーにより前記像担持体ベルトに付与する前記張力T1を発生させる第1の張力付与部と、
前記第1の張架ローラーに巻き掛けられた前記像担持体ベルトを巻き掛けるローラーと、
前記ローラーに巻き掛けられた前記像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、前記像担持体ベルトに張力T2を付与する第2の張架ローラーと、
前記第1の比例定数K1よりも小さい比例係数K2を有し、前記第2の張架ローラーにより前記像担持体ベルトに付与する前記張力T2を発生させる第2の張力付与部と、
周面に凹部を有するとともに前記像担持体ベルトを介して前記ローラーと当接する転写ローラーと、
を備えることを特徴とする転写装置。
ここで、K1、K2は、
K1=T1/Δl1
Δl1:前記第1の張架ローラーに前記像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の前記第1の張架ローラーの位置から、前記像担持体ベルトから張力が掛けられた時に前記第1の張架ローラーが移動した位置までの前記像担持体ベルトから掛けられた張力により第1の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T1:前記第1の張架ローラーが前記Δl1移動した時に、前記第1の張架ローラーが前記像担持体ベルトに付与する張力
K2=T2/Δl2
Δl2:前記第2の張架ローラーに前記像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の前記第2の張架ローラーの位置から、前記像担持体ベルトから張力が掛けられた時に前記第2の張架ローラーが移動した位置までの前記像担持体ベルトから掛けられた張力により第2の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T2:前記第2の張架ローラーが前記Δl2移動した時に、前記第2の張架ローラーが前記像担持体ベルトに付与する張力
である。
【請求項2】
像を形成する作像部と、
前記作像部で形成された前記像が転写される像担持体ベルトと、
前記像が転写された前記像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、前記像担持体を移動させる駆動ローラーと、
前記駆動ローラーに巻き掛けられた前記像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、前記像担持体ベルトに張力T1を付与する第1の張架ローラーと、
比例係数K1を有し、前記第1の張架ローラーにより前記像担持体ベルトに付与する前記張力T1を発生させる第1の張力付与部と、
前記第1の張架ローラーに巻き掛けられた前記像担持体ベルトを巻き掛けるローラーと、
前記ローラーに巻き掛けられた前記像担持体ベルトを巻き掛けるとともに、前記像担持体ベルトに張力T2を付与する第2の張架ローラーと、
前記第1の比例定数K1よりも小さい比例係数K2を有し、前記第2の張架ローラーにより前記像担持体ベルトに付与する前記張力T2を発生させる第2の張力付与部と、
周面に凹部を有するとともに前記像担持体ベルトを介して前記ローラーと当接する転写ローラーと、
前記作像部が前記像を形成するタイミングを、前記転写ローラーの回転に応じて制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
ここで、K1、K2は、
K1=T1/Δl1
Δl1:前記第1の張架ローラーに前記像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の前記第1の張架ローラーの位置から、前記像担持体ベルトから張力が掛けられた時に前記第1の張架ローラーが移動した位置までの前記像担持体ベルトから掛けられた張力により第2の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T1:前記第1の張架ローラーが前記Δl1移動した時に、前記第1の張架ローラーが前記像担持体ベルトに付与する張力
K2=T2/Δl2
Δl2:前記第2の張架ローラーに前記像担持体ベルトから張力が掛けられていない時の前記第2の張架ローラーの位置から、前記像担持体ベルトから張力が掛けられた時に前記第2の張架ローラーが移動した位置までの前記像担持体ベルトから掛けられた張力により第2の張架ローラーに作用する力の方向の変位量
T2:前記第2の張架ローラーが前記Δl2移動した時に、前記第2の張架ローラーが前記像担持体ベルトに付与する張力
である。
【請求項3】
前記第1の張力付与部は、前記第1の張架ローラーを支持するバネ定数k1の第1の弾性部材を有し、
前記第2の張力付与部は、前記第2の張架ローラーを支持するバネ定数k2の第2の弾性部材を有し、
前記第1の張架ローラーへの前記像担持体ベルトの巻き掛け角をθ1、前記第2の張架ローラーへの前記像担持体ベルトの巻き掛け角をθ2としたとき、次式
K1=k1/{2・sin(θ1/2)}
K2=k2/{2・sin(θ2/2)}
の関係を有する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の張力付与部は、一端で前記第1の張架ローラーを支持して回動する第1のレバーと、前記第1のレバーの前記一端と異なる他端で支持されたバネ定数k3の第1のバネを有し、
前記第2の張力付与部は、一端で前記第2の張架ローラーを支持して回動する第2のレバーと、前記第2のレバーの前記一端と異なる他端で支持されたバネ定数k4の第2のバネを有し、
前記第1の張架ローラーへの前記像担持体ベルトの巻き掛け角をθ1、
前記第1のレバーの回動中心から、前記第1のレバーの前記一端が前記第1の張架ローラーにかける力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLa1、
前記第1のレバーの回動中心から、前記第1のレバーの前記他端で支持された前記第1のバネの力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLb1、
前記第2の張架ローラーへの前記像担持体ベルトの巻き掛け角をθ2、
前記第2のレバーの回動中心から、前記第2のレバーの前記一端が前記第2の張架ローラーにかける力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLa2、
前記第2のレバーの回動中心から、前記第2のレバーの前記他端で支持された前記第2のバネの力の仮想作用線に下ろした仮想垂線の長さをLb2としたとき、次式
K1=(Lb1/La1)・k3/{2・sin(θ1/2)}
K2=(Lb2/La2)・k4/{2・sin(θ2/2)}
の関係を有する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記作像部は、潜像が形成される潜像担持体、前記潜像担持体を露光して前記潜像を形成する露光部、および前記潜像を現像する現像部を有し、
前記制御部は、前記転写ローラーの回転に応じて、前記露光部による露光のタイミングを制御する請求項2ないし4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写ローラーの回転位置を検出する検出部を有し、
前記制御部は、前記検出部で検出された情報に応じて、前記露光部による露光のタイミングを制御する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像部は、トナー及び液体キャリアを含む液体現像剤を用い、
前記転写ローラーは、周面に凹部が形成されるとともに、前記凹部に記録材を把持する把持部材が配設される請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記作像部で形成される前記像とは異なる色の第2の像を形成する第2の作像部を備え、
前記制御部は、前記第2の作像部が前記第2の像を形成するタイミングを、前記転写ローラーの回転に応じて制御する請求項2ないし6のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−68556(P2012−68556A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214845(P2010−214845)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】