説明

軸受ユニット

【課題】静止輪と回転輪との間の相対的な傾きの影響を受けること無く、車輪の回転速度を高精度に計測することが可能な軸受ユニットを提供する。
【解決手段】常時非回転状態に維持される静止輪(外輪)2と、車輪と共に回転する回転輪(内輪)4と、静止輪と回転輪との間に回転可能に組み込まれた複数の転動体6,8と、車輪の回転速度を検出するための回転検出機構とを備え、回転検出機構には、回転輪に連結されて当該回転輪と共に回転するエンコーダ20と、エンコーダに記録された情報特性を検出するセンサ22とが設けられ、センサは、エンコーダに対向して位置決めされた状態でセンサ支持体26に支持されており、センサ支持体は、回転輪に対して軸受アセンブリ(軸受28)を介して連結されていると共に、当該センサ支持体と静止輪との間に構築された回り止め構造(凸部32、凹部34)により常時非回転状態に維持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪(例えば、ディスクホイール)を車体(例えば、懸架装置(サスペンション))に対して回転自在に支持すると共に、車輪の回転速度を検出することが可能な軸受ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車輪(例えば、ディスクホイール)を車体(例えば、懸架装置(サスペンション))に対して回転自在に支持するための各種の軸受ユニット(特許文献1)が知られている。その一例として図3には、従動輪用の軸受ユニットが示されており、当該軸受ユニットは、車体側に固定されて常時非回転状態に維持される静止輪(外輪)2と、静止輪2の内側に対向して設けられ且つ車輪側に接続されて車輪と共に回転する回転輪(内輪)4と、静止輪2と回転輪4との間に複列(例えば2列)で回転可能に組み込まれた複数の転動体6,8とを備えている。
【0003】
この場合、静止輪2は中空円筒状を成しており、回転輪4の外周を覆うように配置されており、静止輪2と回転輪4との間には、軸受ユニット内部を密封するためのシール部材(車輪側のリップシール10a、車体側のカバー(キャップ)10b)が設けられている。なお、リップシール10aは、静止輪2の車輪側の固定面2n-1に固定され、回転輪4の摺動面4n-1に対して摺動自在に位置決めされている。一方、カバー(キャップ)10bは、静止輪2の車体側全体を覆って密封することが可能な円板形状を成しており、その基端10cが静止輪2の車体側に形成された車体側端部2n-2に固定されている。また、転動体6,8として図面では、玉を例示しているが、軸受ユニットの構成や種類に応じて、コロが適用される場合もある。
【0004】
静止輪(外輪)2には、その外周側から外方に向って突出した固定フランジ2aが一体成形されており、固定フランジ2aの固定孔2bに固定用ボルト(図示しない)を挿入し、これを車体側に締結することで、静止輪2を図示しない懸架装置(ナックル)に固定することができる。また、回転輪(内輪)4には、例えば自動車のディスクホイール(図示しない)を支持しつつ共に回転する略円筒形状のハブ(スピンドル)12が設けられており、ハブ12には、ディスクホイールが固定されるハブフランジ12aが突設されている。
【0005】
ハブフランジ12aは、静止輪(外輪)2を越えて外方(ハブ12の半径方向外側)に向って延出しており、その延出縁付近には、周方向に沿って所定間隔で配置された複数のハブボルト14が設けられている。この場合、複数のハブボルト14をディスクホイールに形成されたボルト孔(図示しない)に差し込んでハブナット(図示しない)で締付けることにより、当該ディスクホイールをハブフランジ12aに対して位置決めして固定することができる。このとき、ハブ12の車輪側に突設されたパイロット部12dによって車輪の径方向の位置決めが成される。
【0006】
また、ハブ12(回転輪4)には、その車体側の嵌合面4n-2に環状の回転輪構成体16(ハブ12と共に回転輪4を構成する内輪)が嵌合(外嵌)されるようになっている。この場合、例えば静止輪2と回転輪4との間に各転動体6,8を保持器18で保持した状態で、回転輪構成体16を嵌合面4n-2に形成された段部12bまで嵌合(外嵌)した後、ハブ12の車体側端部の加締め領域12cを塑性変形させて、当該加締め領域12cを回転輪構成体16の周端部16sに沿って加締める(密着させる)ことで、当該回転輪構成体16を回転輪4(ハブ12)に固定することができる。
【0007】
このとき、軸受ユニットには所定の予圧が付与された状態となり、この状態において、各転動体6,8は、互いに所定の接触角を成して静止輪2と回転輪4の軌道面(静止軌道面2s、回転軌道面4s)にそれぞれ接触して回転可能に組み込まれる。この場合、2つの接触点を結んだ作用線(図示しない)は、各軌道面2s,4sに直交し且つ各転動体6,8の中心を通り、軸受ユニットの中心線上の1点(作用点)で交わる。これにより背面組合せ形(DB)軸受が構成される。
【0008】
なお、このような構成において、自動車走行中に車輪に作用した力は、全てディスクホイールから軸受ユニットを通じて懸架装置に伝達されることになり、その際、軸受ユニットには、各種の荷重(ラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重など)が作用する。しかし、軸受ユニットは、上述したような背面組合せ形(DB)軸受となっているため、各種の荷重に対して高い剛性が維持される。
【0009】
また、上述した軸受ユニットには、車輪の回転速度を検出するための回転検出機構が設けられている。回転検出機構としては、光学的或いは磁気的に回転検出するものが知られているが、図3には一例として、磁気的に回転検出する回転検出機構が示されている。この場合、回転検出機構は、回転輪4と共に回転する環状のエンコーダ20と、エンコーダ20の磁気特性(情報特性)を検出するセンサ22とを備えている。ここで、エンコーダ20は、支持部材24を介して回転輪4(回転輪構成体16)に同心円状に取り付けられており、一方、センサ22は、エンコーダ20に対向して位置決めされた状態で、静止輪2に固定されたカバー(キャップ)10bに取り付けられている。
【0010】
この場合、エンコーダ20は、周方向に沿って磁気特性が交互に変化(例えば、S極とN極とを周方向に沿って交互に変化)して構成されており、自動車の走行時に回転輪4と共に回転するエンコーダ20の単位時間あたりの磁気変化がセンサ22で検出されるようになっている。このとき、センサ22から出力された検出信号は、例えばハーネス(図示しない)又は電波(ワイヤレス)などを介して車体側のECU(Electronic
Control Unit:図示しない)に送信され、ここで当該検出信号に所定の演算処理が施されることで、車輪の回転速度が計測される。
【0011】
ところで、車輪の回転速度を高精度に計測するためには、エンコーダ20とセンサ22との間のギャップ(間隙)Gが常に一定に維持されることが必要である。しかしながら、アクスル構造を成す軸受ユニットは、自動車走行時に常にモーメント荷重を受けることになるため、そのモーメント荷重の大きさによっては、当該ギャップ(間隙)Gが変化してしまう場合がある。具体例を挙げて説明すると、自動車走行時に車輪側から軸受ユニットに外力が作用すると、静止輪(外輪)2と回転輪(内輪)4との間には、相対的な傾きが生じることでモーメント荷重が発生する。そして、かかるモーメント荷重は自動車の走行状態に応じて変動を繰り返すため、静止輪(外輪)2と回転輪(内輪)4との間の相対的な傾き状態も変動し続けることになる。
【0012】
ここで、エンコーダ20とセンサ22は、静止輪(外輪)2と回転輪(内輪)4に固定された状態にあるため、これら静止輪(外輪)2と回転輪(内輪)4との間に相対的な傾きが生じると、これに伴って、エンコーダ20とセンサ22との間にも相対的な傾きが生じる。そして、自動車の走行状態に応じて静止輪(外輪)2と回転輪(内輪)4との間の相対的な傾き状態が変動し続けると、これに従って、エンコーダ20とセンサ22との間のギャップ(間隙)Gも変動を繰り返すことになり、これにより、当該ギャップ(間隙)Gを一定に維持し続けることが困難になってしまう場合がある。
【0013】
この場合、ギャップ(間隙)Gの変動の程度によっては、センサ22から出力される検出信号の出力値も不安定となる。また、エンコーダ20とセンサ22とが相対的に傾いても互いに干渉(接触)しないようにギャップ(間隙)Gを設定する必要があるが、そのときのギャップ(間隙)Gの大きさによっては、エンコーダ20の磁気変化をセンサ22で確実に検出することができなくなってしまう。そうなると、上記ECUにおいて精度良く演算処理を行うことができなくなり、その結果、車輪の回転速度を高精度に計測することができなくなってしまう虞がある。
【特許文献1】特開2005−214300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、静止輪と回転輪との間の相対的な傾きの影響を受けること無く、車輪の回転速度を高精度に計測することが可能な軸受ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するために、本発明は、車体側に固定されて常時非回転状態に維持される静止輪と、静止輪に対向して設けられ且つ車輪側に接続されて車輪と共に回転する回転輪と、静止輪と回転輪との間に回転可能に組み込まれた複数の転動体と、車輪の回転速度を検出するための回転検出機構とを備えた軸受ユニットであって、回転検出機構には、回転輪に連結されて当該回転輪と共に回転するエンコーダと、エンコーダに記録された情報特性を検出するセンサとが設けられ、センサは、エンコーダに対向して位置決めされた状態でセンサ支持体に支持されており、センサ支持体は、回転輪に対して軸受アセンブリを介して連結されていると共に、当該センサ支持体と静止輪との間に構築された回り止め構造により常時非回転状態に維持されている。
【0016】
本発明において、センサ支持体は、静止輪の車体側に形成された中空円筒状の車体側端部の全体を覆って軸受内部を軸受外部から密封することが可能な円板形状を成している。また、回り止め構造は、センサ支持体から静止輪に向けて突出した少なくとも1つの凸部と、当該凸部を収容可能に静止輪に形成された凹部とを備えて構成されており、凸部を凹部に収容した状態において、回転輪の回転中にセンサ支持体は、常時非回転状態に維持される。更に、軸受アセンブリは、回転輪に対向してセンサ支持体に形成されたハウジング部と、ハウジング部と回転輪との間に介在された軸受とを備えており、センサ支持体と回転輪とは軸受を介して相対回転可能に構成されている。なお、センサ支持体と静止輪の車体側端部との隙間には、当該隙間を密封するための密封部材が介在されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の軸受ユニットによれば、静止輪と回転輪との間に相対的な傾きが生じても、エンコーダとセンサとの間のギャップ(間隙)を常に一定に維持することができるため、車輪の回転速度を高精度に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る軸受ユニットについて、添付図面を参照して説明する。本実施の形態は、上述したような軸受ユニット(図3)の回転検出機構の改良であるため、以下では改良部分の説明にとどめる。なお、改良部分の説明で用いた図面において、上述の軸受ユニット(図3)と同一の構成には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図1(a)〜(c)に示すように、本実施の形態の回転検出機構において、エンコーダ20は、上述した図3の回転検出機構と同様に、回転輪4(回転輪構成体16)に連結されて当該回転輪4と共に回転するように構成されている。一方、センサ22は、エンコーダ20に対向して位置決めされた状態でセンサ支持体26に支持されている。この場合、センサ支持体26は、回転輪4に対して軸受アセンブリを介して連結されていると共に、当該センサ支持体26と静止輪(外輪)2との間に構築された回り止め構造により常時非回転状態に維持されている。
【0020】
また、本実施の形態において、静止輪(外輪)2の車体側に形成された車体側端部2n-2は、中空円筒状を成しており、センサ支持体26は、当該車体側端部2n-2の全体を覆って軸受内部を軸受外部から密封することが可能な円板形状を成している。具体的には、センサ支持体26は、中空円筒状の車体側端部2n-2の内側に配置可能な円板形状を成しており、センサ支持体26と車体側端部2n-2とは、周方向に沿って互いに非接触状態に位置決めされている。
【0021】
この場合、センサ支持体26を車体側端部2n-2の内側に配置した状態において、センサ支持体26の外周と車体側端部2n-2の内周との間には、周方向に沿って連続した隙間Hが形成されるが、かかる隙間Hを小さくすることで、一種のラビリンスを構成することができる。これにより、当該隙間Hを通って軸受内部へ異物(例えば、水、塵埃など)が浸入したり、軸受外部へ潤滑剤(例えば、油、グリース)が漏洩したりすることは無い。
【0022】
また、センサ支持体26の材質としては、例えば金属材料や樹脂材料を適用することが可能であるが、当該センサ支持体26が用いられる軸受ユニットは、寒暖の差に直接晒される環境下で使用される。従って、かかる環境下において、長期に亘って軸受内部を軸受外部から密封することができるような耐久性及び耐熱性に優れた材料でセンサ支持体26を構成することが好ましい。なお、耐久性及び耐熱性に優れた材料としては、例えば軸受ユニットの使用目的や使用環境に応じて任意に選択することができるため、ここでは特に限定しない。
【0023】
ここで、軸受アセンブリは、回転輪4に対向してセンサ支持体26に形成されたハウジング部26hと、ハウジング部26hと回転輪4との間に介在された軸受28とを備えている。本実施の形態において、ハブ(スピンドル)12には、その回転中心に沿って延出した軸体30が固定されており、当該軸体30は、ハブ12及び回転輪構成体16と共に回転軸4を構成している。なお、軸体30は、軸受アセンブリの一構成品でもある。この場合、軸体30をハブ12に固定する方法は、例えばネジ止め、溶接、嵌合、接着などの方法を適用することができるが、ここでは一例として、軸体30の一端30tをハブ12に形成された固定穴12hに圧入することで、当該軸体30をハブ12に固定している。
【0024】
また、ハウジング部26hは、回転軸4(即ち、軸体30)の外周に対向するように周方向に連続した中空円環状を成しており、当該ハウジング部26hと軸体30との間に複数(例えば、2つ)の軸受28が介在されている。この場合、各軸受28は、軸体30の外周に固定された内輪28aと、内輪28aに対向するようにハウジング部26hの内周に固定された外輪28bと、内外輪28a,28b間に転動自在に組み込まれた複数の転動体28cとを備えている。なお、転動体28cとしては、玉やコロを適用することができるが、図面には玉が例示されている。
【0025】
一方、回り止め構造は、センサ支持体26から静止輪(外輪)2に向けて突出した凸部32と、当該凸部32を収容可能に静止輪2に形成された凹部34とを備えて構成されている。この場合、凸部32を凹部34に収容した状態において、凸部32が凹部34から外れないようになっているため、回転軸4(軸体30)の回転中にセンサ支持体26は、常時非回転状態に維持されている。
【0026】
ここで、凸部32の個数や位置は、例えばセンサ支持体26の大きさや形状に応じて任意に設定することができるため、特に限定しないが、図面には一例として1つの凸部32がセンサ支持体26の外周から突出した構成が示されている。また、凸部32の形状は、例えばその断面が矩形状、三角形状、円錐台形状、円弧形状などを適用することができるが、ここでは一例として、断面が矩形状の凸部32を想定する。これに対して、凹部34は、凸部32の個数や位置、或いは、その形状に応じて任意に設定されるため、特に限定しないが、要するに凹部34から凸部32が容易に外れないような構成であれば良い。
【0027】
このような構成によれば、センサ支持体26と回転輪4(軸体30)とは、軸受アセンブリの各軸受28を介して相対回転可能に連結されるが、凸部32を凹部34に収容した回り止め構造により、回転軸4(軸体30)の回転中、各軸受28を介してセンサ支持体26に回転力が作用した場合でも、センサ支持体26を常時非回転状態に維持することができる。
【0028】
以上、本実施の形態によれば、エンコーダ20とセンサ22の双方を回転輪(内輪)4に連結させたことで、自動車走行時に車輪側から軸受ユニットに外力が作用して静止輪(外輪)2と回転輪(内輪)4との間に相対的な傾きが生じた場合でも、その影響を全く受けること無く、エンコーダ20とセンサ22との間のギャップ(間隙)Gを常に一定にすることができる。
【0029】
例えば回転輪(内輪)4が傾いたとき、支持部材24により回転輪4(回転輪構成体16)に固定されているエンコーダ20は、当該回転輪4の傾斜に伴って同一方向に同一角度で傾斜する。一方、センサ22は、センサ支持体26から軸受アセンブリを介して回転輪4に連結されているため、回転輪4の傾斜に伴ってエンコーダ20と同一方向に同一角度で傾斜する。この場合、エンコーダ20とセンサ22との間の位置関係は全く変化しないため、双方間のギャップ(間隙)Gを常に一定に維持することができる。これにより、維持車輪の回転速度を高精度に計測することが可能となる。
【0030】
また、本実施の形態によれば、センサ支持体26を上述した軸受ユニット(図3)のカバー(キャップ)10bとして兼用することができるため、部品点数を増やすこと無く軸受内部の密封性を一定に保持しつつ同時に、車輪の回転速度を高精度に計測することが可能な低価格な軸受ユニットを実現することができる。なお、回転軸4(軸体30)の回転中における環境下によっては、センサ支持体26の外周と静止輪(外輪)2の車体側端部2n-2との隙間Hから異物が浸入したり潤滑剤が漏洩する虞もある。その場合には、当該隙間Hを密封するための密封部材36を介在させることが好ましい。この場合、密封部材36としては、例えばOリング、Xリングなどの既存のシールを適用すれば良い。
【0031】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されることは無く、以下の各変形例としても同様の効果を実現することができる。
第1の変形例として、図2(a)に示された軸受ユニットは、センサ支持体26の外周と車体側端部2n-2の内周との隙間Hをダイヤフラム38で覆って構成されている。この場合、ダイヤフラム38は、伸縮自在で且つ弾性変形可能な例えばゴムや樹脂などを中空円筒状に連続させて形成されており、その一方側をセンサ支持体26の外周に連結し、その他方側を車体側端部2n-2の内周に連結させることで、隙間Hを完全に密封することができる。
【0032】
本変形例よれば、ダイヤフラム38を用いることで回り止め効果と共に、防水効果も同時に確保することができる。また、上述の実施の形態のような回り止め機構(凸部32、凹部34)を形成する必要が無いため、更に低価格な軸受ユニットを実現することが可能となる。なお、他の構成及び効果は、上述した実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0033】
ところで、上述した実施の形態及び第1の変形例では、エンコーダ20とセンサ22とをアキシアル方向で対向させているが、これに代えて、第2の変形例として図2(b)に示された軸受ユニットでは、エンコーダ20とセンサ22とをラジアル方向で対向させている。この場合、エンコーダ20とセンサ22とを対向させる構成は、任意に設定することができるため、特に限定しないが、図面には一例として、エンコーダ20を周方向に沿って外向に配置し、これに対向するようにセンサ22をセンサ支持体26の側周に位置決めしている。
【0034】
また、本変形例の軸受アセンブリにおいて、上述した軸体30(図1(a)、図2(a))が不要となり、ハウジング部26hを回転輪4の回転輪構成体16に対向して形成し、当該ハウジング部26hと回転輪構成体16との間に複数(例えば、2つ)の軸受28が介在されている。この場合、特に図示しないが、各軸受28は、回転輪構成体16の外周に固定された内輪と、内輪に対向するようにハウジング部26hの内周に固定された外輪と、内外輪間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えている。なお、転動体としては、玉やコロを適用することができる。本変形例によれば、軸体30を不要としたことで、部品点数を削減できると共に、ハブ(スピンドル)12に軸体30を固定する手間も不要となるため、更に低価格な軸受ユニットを実現することが可能となる。なお、他の構成及び効果は、上述した実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る軸受ユニットの構成を示す断面図、(b)は、同図(a)の軸受ユニットを車体側から見た平面図、(c)は、エンコーダとセンサとの位置関係を拡大して示す断面図。
【図2】(a)は、本発明の第1の変形例に係る軸受ユニットの構成を示す断面図、(b)は、本発明の第2の変形例に係る軸受ユニットの構成を示す断面図。
【図3】従来の軸受ユニットの構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
2 静止輪(外輪)
4 回転輪(内輪)
6,8 転動体
20 エンコーダ
22 センサ
26 センサ支持体
28 軸受(軸受アセンブリ)
32 凸部(回り止め構造)
34 凹部(回り止め構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に固定されて常時非回転状態に維持される静止輪と、静止輪に対向して設けられ且つ車輪側に接続されて車輪と共に回転する回転輪と、静止輪と回転輪との間に回転可能に組み込まれた複数の転動体と、車輪の回転速度を検出するための回転検出機構とを備えた軸受ユニットであって、
回転検出機構には、回転輪に連結されて当該回転輪と共に回転するエンコーダと、エンコーダに記録された情報特性を検出するセンサとが設けられ、センサは、エンコーダに対向して位置決めされた状態でセンサ支持体に支持されており、
センサ支持体は、回転輪に対して軸受アセンブリを介して連結されていると共に、当該センサ支持体と静止輪との間に構築された回り止め構造により常時非回転状態に維持されていることを特徴とする軸受ユニット。
【請求項2】
センサ支持体は、静止輪の車体側に形成された中空円筒状の車体側端部の全体を覆って軸受内部を軸受外部から密封することが可能な円板形状を成していることを特徴とする請求項1に記載の軸受ユニット。
【請求項3】
回り止め構造は、センサ支持体から静止輪に向けて突出した少なくとも1つの凸部と、当該凸部を収容可能に静止輪に形成された凹部とを備えて構成されており、凸部を凹部に収容した状態において、回転輪の回転中にセンサ支持体は、常時非回転状態に維持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受ユニット。
【請求項4】
軸受アセンブリは、回転輪に対向してセンサ支持体に形成されたハウジング部と、ハウジング部と回転輪との間に介在された軸受とを備えており、センサ支持体と回転輪とは軸受を介して相対回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の軸受ユニット。
【請求項5】
センサ支持体と静止輪の車体側端部との隙間には、当該隙間を密封するための密封部材が介在されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1に記載の軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−144861(P2008−144861A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332791(P2006−332791)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】