説明

軸受構造

【課題】二つ割り外輪の合わせ面付近をころが転走する際に発生する騒音及び振動を大幅に抑制する。
【解決手段】クランクシャフト固定部10の支持孔13内に密接して配設される二つ一組の二つ割り外輪3a,3bと、両二つ割り外輪3a,3bの各内径面に形成された外輪軌道面6を転動し得るように配設される複数個のころ4と、各ころ4を円周方向略等間隔に配置するように保持する二つ一組の二つ割り保持器5a,5bとからなる軸受構造で、クランクシャフト固定部10は、支持孔13に繋がる給油路15を有し、潤滑油が二つ割り転がり軸受2に供給される。二つ割り外輪3a,3bは、それぞれ径方向に貫通する油孔8a,8bと給油路15とを連通させる周方向に沿って形成された油溝9とを有し、油孔8a,8bが、二つ割り外輪3a,3bの合わせ面60,61から、クランクシャフト16の回転方向と逆向き45°以内の角度の位置に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸受構造に関する。さらに詳しくは、分割型の転がり軸受と、この転がり軸受を支持するハウジングとからなる軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や船舶などのエンジンにおいて、ピストンの往復動を回転運動に変換するクランクシャフトを支持する軸受は、カウンターウェイト間又はカウンターウェイトとコンロッド大端部との間に配置されることから、円周方向に2分割された二つ割り軸受が使用されている。
【0003】
前記支持軸受としては、従来、滑り軸受が使用されてきたが、近年、より燃料消費量の少ないエンジンに対する要求が益々高まっていることから、回転損失を低減させるために、前記滑り軸受に代えて周方向に分割された転がり軸受を使用することが提案されている。
【0004】
この分割型の転がり軸受は、例えば、二つ一組の二つ割り外輪と、両二つ割り外輪の各内径面を転動し得るように配設される複数個のころと、各ころを円周方向略等間隔に配置するように保持する二つ一組の二つ割り保持器とを備えている。そして、クランクシャフトが内輪部材として前記転がり軸受に内嵌され、当該転がり軸受がコンロッド大端部に組み込まれる。
かかる転がり軸受は、コンロッド大端部に組み込む際、組立誤差に起因して両二つ割り外輪の合わせ面に径方向の位置ずれ(段差)が生じる場合がある。二つ割り外輪に位置ずれが生じると、この位置ずれが生じている外輪の合わせ面付近をころが転走するときに騒音や振動が発生する惧れがある。
【0005】
ところで、転がり軸受では、軌道面上を転動体が滑らかに転走し得るように、当該転動体が転走する空間に潤滑油を供給して前記軌道面に油膜を形成し、この油膜により転動体の転走時の衝撃を緩和することが行われている。図5は、かかる給油のための給油路を備えた従来の軸受構造を示している。
図5に示すように、この軸受構造は、ハウジングであるエンジンのクランクシャフト固定部40を備えている。クランクシャフト固定部40は、半円状の凹部41aを有するアッパーブロック41と、半円状の凹部42aを有しアッパーブロック41に一体結合されるロアブロック42とからなっており、両半円状の凹部41a,42aにより分割型転がり軸受50を密接して支持する支持孔43が形成される。前記アッパーブロック41とロアブロック42は、固定ボルト44によって一体に固定されている。
【0006】
アッパーブロック41には、分割型転がり軸受50に潤滑油を供給するための給油路45が形成されており、この給油路45は、斜め上方(図5において斜め上方)から当該アッパーブロック41内を延びて前記支持孔43に開口するように形成されている。そして、支持孔43内に分割型転がり軸受50が密接して配設され、この分割型転がり軸受50にクランクシャフト46が内嵌されている。
分割型転がり軸受50は、二つ一組の二つ割り外輪51a,51bと、二つ割り外輪51a,51bの各内径面に形成された外輪軌道面52を転動し得るように配設される複数個のころ53と、各ころ53を円周方向略等間隔に配置するように保持する二つ一組の二つ割り保持器54a,54bとを有している。
そして、上側に配設された一方の二つ割り外輪51aには、前記給油路45に連通し径方向に貫通する油孔55が形成されている。
【0007】
また、両二つ割り外輪51a,51bの各周方向両端部は互いに当接されており、この当接面が合わせ面57,58を構成している。かかる合わせ面57,58には、前述したような段差が生じる場合がある。
そして、図5に示されるような給油路45を介して潤滑油をころ53又は軌道面に供給することによって、当該軌道面に油膜が形成され、この油膜によりころ53の転走時の衝撃が緩和される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
潤滑油を十分に供給することによって、前記合わせ面57,58の段差をころ53が通過する際の振動や騒音も緩和されることが期待されるが、従来の軸受構造では、以下の理由により、振動や騒音が発生していた。
すなわち、油孔55は、アッパーブロック41に形成された給油路45に対向する位置に形成されるので、合わせ面57,58、特に合わせ面58から離れた位置になる。この合わせ面58については、油孔55からクランクシャフト46の回転方向(図5の矢印Y参照)と逆方向の位置、言い換えると、油孔55からは、クランクシャフト46の回転方向の180°以上の角度だけ離れた位置となる。
このため、油孔55から供給される潤滑油を合わせ面57,58、特に合わせ面58付近の外輪軌道面52まで十分に供給することができない。その結果、合わせ面58付近の外輪軌道面52には、当該合わせ面58付近を転走するころ53の衝撃を緩和できる程度の厚さの油膜が形成されない。
【0009】
また、図5に示される分割型転がり軸受50においては、その上部及び下部が、軸受の負荷圏(荷重を受ける側)となっており、前記油孔55が、当該負荷圏に設けられていることから、以下のような問題があった。
すなわち、負荷圏を転走するころ53は、非負荷圏を転走するころ53に比べて大きな荷重を受けるが、この負荷圏に油孔55が形成されていると、油孔55を含む外輪軌道面52をころ53が通過する際に油孔55の周縁において応力集中が発生する。そして、周縁に応力が集中してかかることにより、軸受の寿命が低下する惧れがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、二つ割り外輪の合わせ面付近をころが転走する際に発生する騒音及び振動を大幅に抑制することができ、また、二つ割り外輪の油孔の周縁をころが転走する際に生じる応力集中を緩和することができる軸受構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の軸受構造は、断面略半円形状の凹部を有する第1ハウジング部と、この第1ハウジング部の凹部とで断面略円形の支持孔を形成する、断面略半円形状の凹部を有する第2ハウジング部とからなるハウジングと、
このハウジングの支持孔内に密接して配設される二つ一組の二つ割り外輪と、両二つ割り外輪の各内径面に形成された外輪軌道面を転動し得るように配設される複数個のころと、各ころを円周方向略等間隔に配置するように保持する二つ一組の二つ割り保持器とからなり、シャフトが内嵌される二つ割り転がり軸受と、を備え、
前記ハウジングは、前記支持孔に繋がる給油路を有し、この給油路を経て潤滑油が二つ割り転がり軸受に供給される軸受構造において、
前記二つ一組の二つ割り外輪は、それぞれ当該二つ割り外輪を径方向に貫通する油孔と、各油孔と前記給油路とを連通させる、二つ割り外輪外径面において周方向に沿って形成された油溝とを有し、且つ
前記各油孔が、両二つ割り外輪の合わせ面から、前記シャフトの回転方向と逆向き45°以内の角度の位置に配設されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の軸受構造では、軸受内部に潤滑油を供給するための油孔が、両二つ割り外輪の合わせ面から、シャフトの回転方向と逆向き45°以内の角度の位置に配設されており、この油孔と、ハウジングに形成された給油路とを、二つ割り外輪外径面において周方向に沿って形成された油溝により連通させている。このように合わせ面の近傍であって、シャフトの回転方向を基準として上流側の位置に油孔を配設しているので、各油孔からの潤滑油を、シャフトの回転及びころの転走により、両二つ割り外輪の合わせ面付近に効率よく供給することができる。これにより、合わせ面付近の外輪軌道面に油膜を確実に形成することができ、ころが当該合わせ面を通過する際の衝撃を緩和して、振動や騒音が発生するのを抑制することができる。
また、各油孔は、軸受の負荷圏外、すなわち非負荷圏に配設されているので、ころが油孔上を通過する際に当該油孔の周縁に応力が集中するのを緩和することができる。これにより、軸受の寿命を延ばすことができる。
【0013】
前記各二つ割り外輪の内径面の軸方向両端には、径方向内方に突出する一対の環状つば部が形成されており、各つば部の内側面と前記外輪軌道面との境界部には、径方向外方に窪ませて一対の逃げ部が設けられており、前記各油孔が、前記一対の逃げ部に開口するよう形成されているのが好ましい。
この場合、各油孔が、各つば部の内側面と外輪軌道面との境界部に設けられた逃げ部に開口されているので、外輪軌道面を転走するころが各油孔の上を通過することがない。このため、ころが油孔上を通過することに伴う、前述した油孔周縁での応力集中を実質的になくすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の軸受構造によれば、両二つ割り外輪の合わせ面付近を転走するころの衝撃を緩和し、当該衝撃により発生する騒音及び振動を大幅に抑制するとともに、二つ割り外輪の油孔の周縁をころが転走する際に生じる応力の集中を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の軸受構造の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態(第一実施形態)に係る軸受構造1の断面説明図であり、図2は図1のA−A線断面図である。
図1に示される軸受構造1は、ハウジングであるエンジンのクランクシャフト固定部10を備えている。クランクシャフト固定部10は、断面略半円形状の凹部11aを有するアッパーブロック11(第1ハウジング部)と、断面略半円形状の凹部12aを有しアッパーブロック11に一体結合されるロアブロック12(第2ハウジング部)とからなっており、両断面略半円形状の凹部11a,12aにより二つ割り転がり軸受2を密接して支持する支持孔13が形成される。前記アッパーブロック11とロアブロック12は、固定ボルト14によって一体に固定されている。
【0016】
アッパーブロック11には、二つ割り転がり軸受2に潤滑油を供給するための給油路15が形成されており、この給油路15は、斜め上方(図1において斜め上方)から当該アッパーブロック11内を延びて前記支持孔13に開口するように形成されている。そして、支持孔13内に二つ割り転がり軸受2が密接して配設され、この二つ割り転がり軸受2にクランクシャフト16が内嵌されている。
【0017】
二つ割り転がり軸受2は、二つ一組の二つ割り外輪3a,3bと、二つ割り外輪3a,3bの各内径面に形成された外輪軌道面6を転動し得るように配設される複数個のころ4と、各ころ4を円周方向略等間隔に保持する複数のポケットを有する二つ一組の二つ割り保持器5a,5bとを有している。また、両二つ割り外輪3a,3bの各周方向両端部は互いに当接されており、この当接面が合わせ面60,61を構成している。
【0018】
両二つ割り外輪3a,3bには、それぞれ径方向に貫通して外輪軌道面6に開口する油孔8a,8bが形成されている。油孔8aは、合わせ面60からクランクシャフト16の回転方向(図1の矢印X参照)と逆向きの角度θの位置に配設され、油孔8bは、合わせ面61からクランクシャフト16の逆向きの角度θの位置に配設されている。この角度θは、45°以内の角度、例えば30°程度に設定されている。
【0019】
両二つ割り外輪3a,3bの外径面には、油孔8a,8bと給油路15とをそれぞれ連通させる油溝9が周方向に沿って形成されている。これにより、給油路15からの潤滑油が油溝9に供給され、この油溝9から油孔8a,8bに導かれる。そして、油孔8a,8bに流れ込んだ潤滑油が、二つ割り外輪3a,3bとクランクシャフト16との間に供給され、クランクシャフト16の外径面、外輪軌道面6及び各ころ4の周面が潤滑される。
【0020】
本実施の形態では、前記油孔8a,8bが、両二つ割り外輪3a,3bの合わせ面60,61からそれぞれクランクシャフト16の回転方向と逆向き45°以内の角度の位置に配設されている。すなわち、合わせ面60,61の近傍であって、クランクシャフト16の回転方向を基準として上流側の位置に油孔8a,8bが配設されているので、油孔8a,8bからの潤滑油を、クランクシャフト16の回転及びころ4の転走により、両二つ割り外輪3a,3bの合わせ面60,61付近に効率よく供給することができる。
【0021】
これにより、ころ4が合わせ面60,61を通過する際の衝撃を緩和できる厚さの油膜を合わせ面60,61付近の外輪軌道面6に確実に形成することができる。その結果、合わせ面60,61付近を通過するころ4の衝撃が緩和され、振動や騒音が発生するのを抑制することができる。
【0022】
また、油孔8a,8bは、合わせ面60,61から周方向に45°以内の角度の位置であり、軸受の負荷圏外に配設されているので、ころ4が油孔8a,8b上を通過する際に、油孔8a,8bの周縁に応力が集中するのを緩和することができる。これにより、軸受の寿命を延ばすことができる。
【0023】
図3は、本発明の他の実施の形態(第二実施形態)に係る軸受構造101の軸平行断面説明図である。なお、図3に示す実施の形態において、図1及び図2に示す実施の形態と同一の構成ないしは要素には、図1及び図2と同一の参照符号を付している。そして、簡単のため、それらの詳細な説明は省略する。
図3に示される二つ割り外輪23a,23bの各内径面の軸方向両端には、径方向内方に突出する一対の環状つば部20,20がそれぞれ形成されている。この一対のつば部20,20の互いに対向する内側の面と前記二つ割り外輪23a,23bの外輪軌道面26とのそれぞれの境界部には、径方向外方に窪ませた一対の環状逃げ部(研磨逃げ部)21,21が設けられている。
【0024】
二つ割り外輪23aには、径方向に貫通して各逃げ部21に開口する一対の油孔28a,28aが形成され、一方、二つ割り外輪23bには、径方向に貫通して各逃げ部21に開口する一対の油孔28b,28bが形成されている。
すなわち、図2に示す油孔8a,8bが、外輪軌道面6に開口するよう形成されているのに対し、図3に示す各油孔28a及び各油孔28bは、一対のつば部20,20と外輪軌道面26との境界部に設けられた一対の逃げ部21,21に開口するよう形成されている。
【0025】
そして、両二つ割り外輪23a,23bの各周方向両端部は、図示しないが、互いに当接されており、この当接面が合わせ面60,61(図1参照)を構成している。
各油孔28aは、合わせ面60からクランクシャフト16の回転方向と逆向きの角度θの位置に配設され、各油孔28bは、合わせ面61からクランクシャフト16の回転方向と逆向きの角度θの位置に配設されている。
【0026】
両二つ割り外輪23a,23bの外径面には、各油孔28a及び各油孔28bと給油路15とをそれぞれ連通させる油溝29が設けられている。この油溝29は、一方の油孔28aから軸方向に延びて他方の油孔28aを繋ぐ支線29aと、一方の油孔28bから軸方向に延びて他方の油孔28bを繋ぐ支線29bと、給油路15から周方向に延びて支線29a及び支線29bとを繋ぐ幹線(図示省略)とから構成されている。これにより、給油路15からの潤滑油は、まず油溝29の幹線に供給され、ついで支線29a,29bを経て油孔28a,28bに導かれる。各油孔28a及び各油孔28bに流れ込んだ潤滑油が、二つ割り外輪23a,23bとクランクシャフト16との間に供給され、クランクシャフト16の外径面、外輪軌道面26及び各ころ4の周面が潤滑される。
【0027】
本実施の形態では、各油孔28a及び各油孔28bが、一対のつば部20,20と外輪軌道面26との境界部に設けられた一対の逃げ部21に開口されているので、外輪軌道面26を転走するころ4が各油孔28a及び各油孔28bの上を通過することがない。このため、ころ4が各油孔28a及び各油孔28bの上を通過することに伴う、各油孔28a及び各油孔28bの周縁での応力集中を実質的になくすことができる。これにより、軸受の寿命をさらに延ばすことができる。
【0028】
また、二つ割り外輪23a,23bの各内径面の軸方向両端に一対の環状つば部20,20を設けることにより、二つ割り外輪23a,23bとクランクシャフト16との間に供給された潤滑油が外輪軌道面26から二つ割り転がり軸受2の外部に流出するのを抑制することができる。これによって、二つ割り転がり軸受2が、その内部に潤滑油を保持しやすくなり、潤滑油の無駄をなくすことができる。
【0029】
図4は、本発明のさらに他の実施の形態(第三実施形態)に係る軸受構造201の軸平行断面の要部拡大説明図である。なお、図4に示す実施の形態において、図1乃至図3に示す実施の形態と同一の構成ないしは要素には、図1乃至図3と同一の参照符号を付している。そして、簡単のため、それらの詳細な説明は省略する。
図4には、二つ一組の二つ割り外輪のうちの一方の二つ割り外輪33a及び二つ一組の二つ割り保持器のうちの一方の二つ割り保持器35aが示されており、また、二つ割り外輪33a及び二つ割り保持器35aにおけるそれぞれの軸方向一方側が示されているが、他方においても同様の構成である。
【0030】
図4に示される二つ割り外輪33aは、その内径面の軸方向端部に設けられた環状つば部30と、つば部30の内側の面と前記二つ割り外輪33aの外輪軌道面36との境界部に設けられ径方向外方に窪ませた環状逃げ部31とを有している。また、二つ割り外輪33aには、径方向に貫通して逃げ部31に開口する油孔38aが形成され、二つ割り外輪33aの外径面には、当該油孔38aと給油路(図1乃至図3参照)とを連通させる油溝39が設けられている。
【0031】
つば部30は、逃げ部31側の軸方向一方端の内径よりも、軸方向他方端(外輪側面側)の内径の方が小さくなるように形成されており、その内径面はテーパ面30aとされている。一方、二つ割り保持器35aの軸方向他方端の環状部35bの外径面には、前記つば部30のテーパ面30aの形状に合わせて、軸方向他方側が小径となるテーパ面37が形成されている。
すなわち、図3に示すつば部20の内径面及び二つ割り保持器5aの軸方向端部の環状部の外径面が、それぞれ軸方向にフラットな状態であるのに対し、図4に示すつば部30の内径面及び二つ割り保持器35aの軸方向端部の環状部35bの外径面には、それぞれテーパ面が形成されている。
【0032】
前記テーパ面30aの逃げ部31側の突出高さh1は、ころ4の直径dの1/3〜1/2となるように設定され、一方、外輪側面側の突出高さh2は、ころ4の直径dの1/2〜2/3となるように設定されている。また、つば部30のテーパ面30aと保持器35aの環状部35bの外径面をテーパ面37との間の隙間gは、同じくころ4の直径dの1/10〜2/10となるように設定されている。
つば部30を設けることにより、前述したように、潤滑油の軸受外部への流出を抑制することができるが、本実施の形態のように、つば部30の内径面及び保持器35aの環状部35bの外径面をテーパ面とすることにより、つば部と保持器の間から外部に流出しようとする潤滑油に、当該保持器の回転による遠心力を与え、軸受内部側に戻すことができる。したがって、潤滑油の軸受外部への流出をほとんど無くすことができる。
【0033】
また、テーパ面30aの外輪側面側の突出高さh2を、ころ4の直径dの1/2〜2/3と高くすることによって、軸受外部からの油分(他の摺動部で使用され、異物を含んでいる油分)が軸受内部へ侵入するのを防止することができる。
本実施の形態では、二つ割り保持器35aの隣接するポケット(図示せず)間に設けられた柱部35cの外径を、前記つば部30の内径よりも大径にしている。これにより、保持器35aの環状部35bのテーパ面37を軸受内部側に移動してきた潤滑油を外輪軌道面36に確実に導くことができる。また、保持器35aの強度を向上させ、その変形を防ぐという効果も得られる。
【0034】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。例えば、前述した実施の形態では、各油孔が合わせ面からそれぞれ同じ角度θの位置に配設される構成を示したが、各油孔が異なる角度の位置に配設された構成でもよい。各油孔が、合わせ面からクランクシャフト16の回転方向と逆向き45°以内の角度の位置にそれぞれ配設されているかぎり、角度θを適宜選定することができる。
また、図4に示す実施の形態では、テーパ面30a及びテーパ面37が、それぞれ漸次縮径した形状で示されているが、部分的に同径部分が含まれた形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軸受構造の断面説明図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る軸受構造の軸平行断面説明図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態に係る軸受構造の軸平行断面の要部拡大説明図である。
【図5】従来の軸受構造が適用されるハウジングの断面説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 軸受構造
2 二つ割り転がり軸受
3a 二つ割り外輪
3b 二つ割り外輪
4 ころ
5a 二つ割り保持器
5b 二つ割り保持器
6 外輪軌道面
8a 油孔
8b 油孔
9 油溝
10 クランクシャフト固定部
15 給油路
16 クランクシャフト
20 つば部
21 逃げ部
23a 二つ割り外輪
23b 二つ割り外輪
25a 二つ割り保持器
25b 二つ割り保持器
28a 油孔
28b 油孔
29 油溝
30 つば部
30a テーパ面
33a 二つ割り外輪
35a 二つ割り保持器
35b 環状部
35c 柱部
37 テーパ面
38a 油孔
39 油溝
60 合わせ面
61 合わせ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略半円形状の凹部を有する第1ハウジング部と、この第1ハウジング部の凹部とで断面略円形の支持孔を形成する、断面略半円形状の凹部を有する第2ハウジング部とからなるハウジングと、
このハウジングの支持孔内に密接して配設される二つ一組の二つ割り外輪と、両二つ割り外輪の各内径面に形成された外輪軌道面を転動し得るように配設される複数個のころと、各ころを円周方向略等間隔に配置するように保持する二つ一組の二つ割り保持器とからなり、シャフトが内嵌される二つ割り転がり軸受と、を備え、
前記ハウジングは、前記支持孔に繋がる給油路を有し、この給油路を経て潤滑油が二つ割り転がり軸受に供給される軸受構造において、
前記二つ一組の二つ割り外輪は、それぞれ当該二つ割り外輪を径方向に貫通する油孔と、各油孔と前記給油路とを連通させる、二つ割り外輪外径面において周方向に沿って形成された油溝とを有し、且つ
前記各油孔が、両二つ割り外輪の合わせ面から、前記シャフトの回転方向と逆向き45°以内の角度の位置に配設されていることを特徴とする軸受構造。
【請求項2】
前記各二つ割り外輪の内径面の軸方向両端には、径方向内方に突出する一対の環状つば部が形成されており、各つば部の内側面と前記外輪軌道面との境界部には、径方向外方に窪ませて一対の逃げ部が設けられており、前記各油孔が、前記一対の逃げ部に開口するよう形成されている請求項1に記載の軸受構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−162348(P2009−162348A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2303(P2008−2303)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】