輝度情報取得方法、画質評価方法、表示装置の輝度情報取得装置および表示装置の画質評価装置
【課題】 輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出し、かつ定量的に評価することのできる手法を提供する。
【解決手段】 所定の注目画素10を取り囲む第1の画素群11aを構成する各画素の輝度値の総和と注目画素10の輝度値の差分を算出する処理を全ての画素を注目画素10として順次実行することにより第1の輝度情報を得る第1の輝度情報算出ステップと、第2の画素群12aを構成する各画素の輝度値の総和と注目画素10の輝度値の差分を算出する処理を全ての画素を注目画素10として順次実行することにより第2の輝度情報を得る第2の輝度情報算出ステップと、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することにより第3の輝度情報を得る加算ステップと、前記加算ステップにより得られた第3の輝度情報に基づいて撮像された画面の輝度を評価する評価ステップと、を備える画質評価方法。
【解決手段】 所定の注目画素10を取り囲む第1の画素群11aを構成する各画素の輝度値の総和と注目画素10の輝度値の差分を算出する処理を全ての画素を注目画素10として順次実行することにより第1の輝度情報を得る第1の輝度情報算出ステップと、第2の画素群12aを構成する各画素の輝度値の総和と注目画素10の輝度値の差分を算出する処理を全ての画素を注目画素10として順次実行することにより第2の輝度情報を得る第2の輝度情報算出ステップと、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することにより第3の輝度情報を得る加算ステップと、前記加算ステップにより得られた第3の輝度情報に基づいて撮像された画面の輝度を評価する評価ステップと、を備える画質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液晶表示ディスプレイをはじめとする表示装置の画質を検査する方法に関し、特に表示装置の輝度を評価、判定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示ディスプレイの製造工程において種々の品質検査が行なわれる。その中で、ディスプレイが表示する画像の画質を判定する検査が行なわれている。検査装置を用いて画質を判定することは容易でないため、従来から人間の目視による検査、つまり官能検査が行なわれている。官能検査は、画質の基準となるサンプルを作成し、このサンプルと検査対象となるディスプレイの画像とを見比べることにより画質の判定を行なうものである。ところが、人間の官能に依存する官能検査においては、検査を行なう検査員によって判定結果にばらつきが生ずることを回避できない。官能検査は基本的に画像に表れる輝度差と面積の情報に基づいて判定されるということができるが、局所的な輝度差が生ずる部位と緩やかなグラデーションのムラとの区別をすることが容易でなく、特に検査員ごとの判定ばらつきが生じやすい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の官能検査に代わる判定手法として、定量的に画質を評価する方法がこれまでも種々提案されている。例えば、特開平10−2800号公報、特開平10−96681号公報、特開2000−113188号公報等である。ところが、これまで提案された手法では、液晶表示ディスプレイに生ずる輝度ムラを適切に抽出することが困難であった。現在主流をなす液晶表示ディスプレイは、バック・ライトと称される光源から発せられる光を、液晶表示ディスプレイを構成するパネルに均一に照射することを理想としているが、現実にはパネル内で若干の輝度勾配を持っている。しかも、液晶表示ディスプレイは、このような全体的な輝度勾配を持ったなかで局所な輝度ムラを有していることがある。前記特開平10−2800号公報、特開平10−96681号公報に開示された手法は、CRTディスプレイを対象とするものであって、以上のような液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度むらを抽出することは困難であった。前記特開2000−113188号公報は、液晶表示ディスプレイに用いられるカラー・フィルタのムラを検出するものであるが、前記特開平10−2800号公報、特開平10−96681号公報と同様に、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出することは困難であった。そこで本発明は、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出し、かつ定量的に評価することのできる手法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を解決するための評価手法を種々検討した。その結果、ある特定のアルゴリズムを用いれば、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出できることを知見するに到った。この手順の概要は以下の通りである。
(a)評価対象となる画像を複数の画素に分割する。
(b)ある特定の画素(注目画素)からn画素分だけ離れた位置に存在しかつこの注目画素を取り囲む複数の画素の輝度値を積算し、この積算値から注目画素の輝度値を減ずる。この処理を分割された全画素について実行して、輝度情報を得る。
(c)注目画素からm(n<m)画素分だけ離れた位置に存在しかつこの注目画素を取り囲む複数の画素の輝度値を積算し、この積算値から注目画素の輝度値を減ずる。この処理を分割された全画素について実行して、輝度情報を得る。
(d)上記(b)(c)で得た2つの輝度情報に基づく輝度情報を用いることにより、官能検査に近い定量的な評価となる。
ここで、(b),(c)で得られる輝度情報は、注目画素とその周囲に存在する画素の差分値である。つまり、(b),(c)により得られる輝度情報は周囲差分値とでも呼ぶべき値であり、また(d)により得られる輝度情報は2つの周囲差分値に基づくことから2重周囲差分値と称される。そして、周囲差分値、2重周囲差分値を得る手法を、本発明者等は周囲差分法、2重周囲差分法と称することにした。つまり、本発明は、周囲差分法あるいは2重周囲差分法を用いて画質の評価を定量的に行なうことを特徴とする。
【0005】したがって本発明は、撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、所定の注目画素を取り囲む画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する処理を、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する差分算出ステップと、を備えることを特徴とする輝度情報取得方法を提供する。本発明の輝度情報取得方法により得られた輝度情報を用いることにより、画質の評価を定量的に行なうことを可能にする。しかも、本発明により2つの輝度情報を取得し、後述する2重周囲差分法を適用することにより、輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラをも評価、判定することを可能とする。本発明において、分割ステップは従来公知の方法を採用することができる。例えば、画像をCCDカメラで撮像した場合には、その画像データは当該CCDカメラの解像度(または画素数)に応じて分割することができる。また、差分算出ステップにおいて、各画素の輝度値を求める手法自体も従来公知の手法を採用することができる。
【0006】本発明の輝度情報取得方法において、前記画素群は、前記注目画素に対して方向性を持つことは望ましくない。例えば、注目画素から所定の画素数だけ離間した画素を含みかつ直線的に配列された複数の画素を前記画素群とする場合は、方向性を持つことになる。したがって本発明は、前記画素群は、前記注目画素に対して等方的な形態をなすことが望ましい。例えば、注目画素を矩形状に取り囲む形態あるいは注目画素を円形状に取り囲む形態が包含される。また本発明の輝度情報取得方法において、前記画素群を構成する画素を、前記注目画素に隣接する画素とすることもできるが、さらに前記注目画素から所定の画素数だけ離間しているものから選択することもできる。離間する画素数が小さい場合には局所的な輝度の変化を抽出するのに適し、一方、離間する画素数が大きい場合には画像全体に生ずる輝度の勾配、つまり輝度ムラを抽出するのに適している。つまり、注目画素を取り囲む画素群の位置を選択することによって判定したい輝度ムラの形態に対応することができる。さらに本発明の輝度情報取得方法において、注目画素を取り囲む前記画素群は、互いに隣接してもよいが、周方向に間欠的な位置に存在する複数の画素から構成することもできる。例えば、連続して配置される画素のうち1個おきに選択された画素をもって前記画素群とすることができる。前記画素群を構成する画素の数は、演算処理速度に影響を与えるので、その点をも考慮して前記画素群とすべき画素を選択するのが望ましい。
【0007】本発明は、前述した輝度情報取得方法に基づく以下の画質評価方法を提供する。すなわち本発明は、撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、所定の注目画素を取り囲む第1の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する処理を、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む第1の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第1の輝度情報を算出する第1の輝度情報算出ステップと、前記注目画素を取り囲みかつ前記第1の画素群よりも前記注目画素から遠方に存在する第2の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第2の輝度情報を算出する第2の輝度情報算出ステップと、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とに基づいて第3の輝度情報を得る第3の輝度情報算出ステップと、前記第3の輝度情報に基づいて撮像された画面の輝度を評価する評価ステップと、を備えることを特徴とする画質評価方法を提供する。本発明の画質評価方法において、第1の輝度情報算出ステップは局所的な輝度ムラを抽出することを目的として、また、第2の輝度情報算出ステップは画像全体に生ずる輝度ムラを抽出することを目的とする。第1の輝度情報算出ステップに用いられる第1の画素群は第2の輝度情報算出ステップに用いられる第2の画素群の内側に位置する。したがって、第1の輝度情報は内側差分値、第2の輝度情報は外側差分値と称することができる。そして、本発明の画質評価方法は、内側差分値および外側差分値に基づいて、例えば加・減算することにより第3の輝度情報を取得する。この第3の輝度情報は、2重周囲差分値と称することができる。本発明の画質評価方法は、局所的な輝度ムラを抽出することを目的とする内側差分値および画像全体に生ずる輝度ムラを抽出することを目的とする外側差分値に基づく2重周囲差分値により画質を評価するため、液晶表示ディスプレイの画像検査に十分に対応することができる。
【0008】本発明の画質評価方法において、前記評価ステップは、前記第3の輝度情報を所定の閾値を用いて2値化処理することにより特異値データを抽出する2値化処理ステップを含むことができる。また、前記2値化処理ステップで得られた特異値データに関するブロックの面積と当該ブロックに包含される画素の輝度値を掛け合わせることにより評価値を算出する評価値算出ステップを含むことができる。また本発明の画質評価方法において、前記第3の輝度情報算出ステップは、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することにより構成することができる。そしてこの加算の際に、第1の輝度情報と第2の輝度情報に重み付けを行なって、加算することができる。液晶表示ディスプレイに発生する輝度に関するムラは複数種類存在し、このムラは発生位置、大きさ、形態が異なる。そして、内側差分値および外側差分値の重み付けを設定することにより、検査したいムラを適切に抽出することが可能になる。つまり、本発明の画質評価方法は、評価しようとする画像の特徴に応じて重み付けを決定することができる。実際の画質検査では、重み付けを代えて前記加算ステップを複数回実施することにより、複数種類のムラを評価することができる。
【0009】本発明は前述した周囲差分法による輝度情報を取得する装置を提供する。すなわち本発明の表示装置の輝度情報取得装置は、表示装置に表示される画像の輝度情報を取得する装置であって、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された画像データについて、下記式(1)で示す演算処理を実行する演算手段と、
【式3】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値)を備えたことを特徴とする。本発明において、式(1)中の第1項前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値の総和であり、第2項はI(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値であるから、A(x,y)は、(x,y)で示される位置に存在する画素についての周囲差分値である。つまり、本発明の表示装置の輝度情報取得装置は、輝度情報として周囲差分値を取得することができる。
【0010】本発明の表示装置の輝度情報取得装置において、前記演算手段は、式(1)で示す演算処理を、分割された画素全てについて実行する。そうすることにより、撮像された画像全体についての周囲差分値を取得することができ、ひいては画像の品質評価に用いることができる。本発明の表示装置の輝度情報取得装置において、式(1)におけるpiは、(x,y)で示される位置に存在する画素から画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素の輝度情報である。そして、このnを適宜設定することにより、(x,y)で示される位置の画素近傍の局所的な輝度ムラを抽出することができるし、また画像全体の輝度勾配を抽出することもできる。つまり、本発明の表示装置の輝度情報取得装置によれば、種々の形態の輝度ムラに対応することのできる汎用性の高い検査装置を提供することを可能にする。
【0011】以上の輝度情報取得装置を適用した表示装置の画質評価装置を本発明は提供する。すなわち本発明は、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された全ての画像について、下記式(2)で示す演算処理を実行し、かつ前記演算処理により得られた輝度情報であるP(x,y)に基づいて撮像された画像を定量化する演算手段と、
【式4】
(ただし、pi,po,αおよびI(x,y)は以下の通り定義される。
pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線 対称をなす第1の画素群を構成する画素の輝度値po:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなすとともに前記第1の画素群よりも外側に位置する第2の画素群を構成する画素の輝度値I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値a,b,α:0および正の数)を備えることを特徴とする表示装置の画質評価装置である。本発明の表示装置の画質評価装置は、P(x,y)を算出する。ここで、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなす第1の画素群を構成する画素の輝度値、po:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなすとともに前記第1の画素群よりも外側に位置する第2の画素群を構成する画素の輝度値である。したがって、P(x,y)は前述した2重周囲差分値であり、本発明の表示装置の画質評価装置によれば、局所的な輝度ムラおよび画像全体の輝度勾配を抽出することができる。
【0012】本発明の表示装置の画質評価装置において、前記第1の画素群を(x,y)で示される位置に存在する画素から画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成し、かつ前記第2の画素群を(x,y)で示される位置に存在する画素から画素m個分(m>nの整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成することができる。そして、nおよびmを適宜設定することにより、種々の形態の輝度ムラを抽出することを可能にする。本発明の表示装置の画質評価装置において、係数a,bはそれぞれ、内側差分値および外側差分値を加算するときの重み付けを定義する。したがって、aおよびbはa+b=1.0を満足し、かつaおよびbは評価する画像の特徴に応じて決定されることになる。ここで、本発明は、aまたはbが0(ゼロ)となることを許容している。また本発明の画質評価装置において、前記αは、前記mの値に応じて決定することができる。例えば、mの値が大きくなれば、poの総和に対してI(x,y)は無視することもできる。その場合には、αを0(ゼロ)として演算処理することもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態による検査装置1のシステム構成を示す図である。本実施の形態は、被検査体としての液晶表示ディスプレイ5の輝度ムラを検査する検査装置1および検査方法に関するものである。液晶表示の検査装置1は、カラーCCDカメラ2、パーソナル・コンピュータ(PC)3およびモニタ4とから構成される。パーソナル・コンピュータ(PC)3は、画像処理手段3aと演算処理手段3bとを備えている。カラーCCDカメラ2は被検査体である液晶表示ディスプレイ5の表示面を撮像する。カラーCCDカメラ2は、従来公知の構成、つまりレンズ、カラーフィルタ、R,G,B信号を取り込むための電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)を主たる構成要素としている。カラーCCDカメラ2で撮像された画像についての画像データは、画像処理手段3aにおいて所定の画像処理が施される。また、演算処理手段3bは、画像処理手段3aで処理された画像データを用いて、後述する本実施の形態による周囲差分法のための演算を実行する。モニタ4は、カラーCCDカメラ2で撮像した画像、検査結果等を表示する。
【0014】図2に本実施の形態による検査方法の手順を示すフローチャートである。本実施の形態による検査方法は、被検査画像の取り込み(ステップ(図中Sで示す。以下、Sと略記することがある)101)、取り込み画像データの分割処理(S103)、平滑化処理(S105)、2重周囲差分法の適用(S107)、特異値データ抽出処理(S109)、画像膨張・収縮処理(S111)、画質評価定量値算出(S113)および評価結果表示(S115)という一連のステップによって行なわれる。以下、各ステップの内容をステップ順に説明する。
【0015】S101:被検査画像取り込みはじめに、検査対象である液晶表示ディスプレイ5の表示画像をカラーCCDカメラ2にて撮像する。撮像された画像の画像データは、画像処理手段3aにおいてシェーディング補正が施される。このシェーディング補正により、主にカラーCCDカメラ2における周辺減光、撮像素子の不均一性によって生じる、被検査画像の本来の輝度と画像データとの間の変換特性の不整合を除去する。図3に検査対象となった液晶表示ディスプレイ5の表示画像を示す。図3に示すように、この表示画像は画面下方に白っぽいムラが発生している。
【0016】S103:取り込み画像データの分割S101により得られた画像データをマトリックス状に分割する。この画像データの分割は、S107における2重周囲差分法を実行するための予備的な処理である。ここでは、n×mの画素に分割されるものとする。分割された画素は、2次元座標(x,y)でその位置を特定することができる。なお、本実施の形態では、画像撮像手段としてカラーCCDカメラ2を用いているから、n×mはカラーCCDカメラ2の画素数(解像度)に対応する。もっとも、分割の数は最大でカラーCCDカメラ2の画素数(解像度)であるが、これ以下の分割数とすることを妨げるものではない。
【0017】S105:平滑化処理S103により分割された画像データについて、ノイズを除去するための平滑化処理を行なう。例えば、2×2のフィルタリングを行なう。
【0018】S107:2重周囲差分法の適用S105においてノイズが除去された画像データについて、各画素の輝度値を求めることを前提に、以下を内容とする2重周囲差分法を実行する。2重周囲差分法の処理手順を示すフローチャートを図4に示す。図4に示すように、S107では、下記式(3)で示される内側差分値を算出する(S201)。次いで、下記式(4)で示される外側差分値を算出する(S203)。次いで、S201で得られた内側差分値およびS203で得られた外側差分値とを加えることにより下記式(5)で示される2重周囲差分値を算出する(S205)。以下、S201〜S203の具体的内容を説明する。なお、内側差分値を算出するS201と外側差分値を算出するS203の順番は入れ替えても良い。この2重周囲差分法は、本発明者が新たに開発したアルゴリズムである。また、式(3)〜式(5)は、本発明者等が種々検討を重ねた結果としての経験式であり、式(3)の2n+1(第3項)、式(4)のα(第2項)および2m+1(第3項)、式(5)の係数a,bは経験的に導き出されるものである。
【0019】
【式5】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値、n:注目画像から第1の画素群までの画素の数)
【0020】
【式6】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値、n:注目画像から第2の画素群までの画素の数,α:0以上の正の数)
【0021】
【式7】
(ただし、a,b:a+b=1.0を満足する正の数)
【0022】S201:内側差分値の算出内側差分値は前述のように式(3)に基づく演算を行なう。図5を参照しつつ式(3)の内容を説明する。なお、図5は、S103により分割された画像データを示している。式(3)のうち、第1項は、注目画素10からn個だけ離れた位置に存在する画素の輝度の総和を意味している。図5において、黒塗りされた画素が注目画素10であり、またn個だけ離れた位置に存在する複数の画素からなる第1の画素群11aは濃い灰色に塗りつぶされている。なお、図5はn=3の例を示している。次に、式(3)の第2項は、注目画素10の輝度値を示している。さらに、式(3)の第3項は、注目画素10からn個だけ離れた位置に存在する画素列に含まれる画素の数である。なお、注目画素10の位置によっては、n個だけ離れた位置に画素が存在しない場合もあり得る。その場合には、ミラーリングによってn個だけ離れた位置に存在する画素の輝度値を用いて演算を行なえばよい。S203における外側差分値の算出についても同様である。
【0023】S203:外側差分値の算出外側差分値は前述のように式(4)に基づく演算により算出される。式(4)において、第1項は、注目画素10からm個だけ離れた位置に存在する画素の輝度の総和を意味している。なお、n<mであることから、式(3)についての演算処理を内側差分値の算出と、また式(4)についての演算処理を外側差分値の算出と称している。図5において、注目画素10からm個だけ離れた位置に存在する複数の画素からなる第2の画素群12aは薄いグレーに塗りつぶされている。なお、図5はm=5の例を示している。次に、式(4)の第2項は、注目画素10の輝度値を示している。この第2項は係数αがあることを除いて式(3)と共通する。さらに、式(2)の第3項は、注目画素10からm個だけ離れた位置に存在する画素群が構成する列に含まれる画素の数である。
【0024】本実施の形態では、内側差分値算出のための第1の画素群11a、外側差分値算出のための第2の画素群12a、図5に示す形態としたが、他の形態を採用することもできる。例えば、図10〜図12に示すような形態とすることもできる。図10に示す例は、第1の画素群11bおよび第2の画素群12bが、連続する画素のうち1個おきに選択された画素から構成される。つまり、図10に示す例は、間欠的な位置に配置された複数の画素から第1の画素群11bおよび第2の画素群12bを構成している。図5に示した本実施の形態によれば、1つの注目画素10についての演算は、nまたはm個だけ離れた位置の画素の輝度値を積算するにとどまるから、その負荷がそもそも小さい。さらに図10のように、間欠的な位置にある画素のみを対象とすれば、演算に要する負荷は一段と小さくなる。図11に示す例は、八角形状あるいは円状とでもいうべき位置に存在する複数の画素から第1の画素群11cおよび第2の画素群12cを構成している。図12に示す例は、図11の変形例であって、注目画素10を取り囲む全ての画素から第1の画素群11dを構成し、第1の画素群11dを取り囲む全ての画素から第2の画素群12dを構成している。図5、図10〜図12に示した第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dは以下の点で共通している。すなわち、第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dは、各々注目画素10に対して方向性を持たない等方的な形態をなしている。また、第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dは、注目画素10を基準として線対称(あるいは点対称)の形態をなしている。適切に輝度ムラを抽出するためには、第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dを以上のような形態とすることが重要である。
【0025】S205:2重周囲差分値の算出2重周囲差分値は式(5)に基づく演算処理を実行することにより算出できる。つまり、S201およびS203によりそれぞれ算出した内側差分値と外側差分値とを加えることにより2重周囲差分値を算出することができる。ここで、式(5)中のaおよびbは係数であり、0以上の正の数を採る。S201,S203,S205からなる一連の処理は、分割された画像データのすべての画素に対して実行される。2重周囲差分値は、結局、各画素の相対輝度を示している。
【0026】ここで、S201により求めた内側差分値、S203により求めた外側差分値およびS205により求めた2重周囲差分値を再変換することにより得られた画像をそれぞれ図6、図7および図8に示す。この画像は、モニタ4に表示することができる。なお、この画像は、前述のn,mをn=1,m=16とした場合のものである。また、式(4)中の係数α=1、式(5)中の係数a=0.15、b=0.85として演算処理した結果に基づいている。内側差分値に基づく図6によれば、局所的な輝度ムラの1形態である輝点13が抽出されていることが判る。一方、外側差分値に基づく図7によれば、画面全体に生ずる輝度の勾配が輝度ムラとして抽出されている。そして、内側差分値および外側差分値を加算した2重周囲差分値に基づく図8では、輝点13および輝度の傾斜の両者を抽出できることがわかる。なお、図6〜図8におけるグラフは、各画像中に描かれている直線による切断面の輝度値を示している。例えば、図6において2直線が交差する部分に存在する輝点13は、輝度値が周囲より高くなっていることを示している。本実施の形態においては、内側差分値および外側差分値を加えた2重周囲差分値を求めているが、内側差分値のみ、または外側差分値のみを用いて表示画像の画質評価を行なうこともできる。また、本実施の形態では、式(4)中の係数α=1、式(5)中の係数a=0.15、b=0.85としたが、他の値を採用することができる。係数aおよびbは、内側差分値と外側差分値との重み付けを決定する。本発明者等の検討によると、抽出したい輝度ムラの種別に応じて、内側差分値と外側差分値との重み付けを決定することにより、当該輝度ムラを適切に抽出することができる。本実施の形態も、種々検討のうえでa=0.15、b=0.85を決定し、その結果として図8に示すような画像を得ている。したがって、係数a,bは、抽出したい画像の特徴に応じて、実験的に定めることが必要である。また、係数αについては、外側差分値を算出するための第2の画素群11a(〜11d)によって、変動し得る。つまり、mが大きい値を採用するときには式(3)の第2項は第1項に比べて極めて小さな値をとることになる。例えば、m=20だとすると、第1項は160個の画素における輝度値の総和であり、1個の画素(注目画素10)の輝度値はこの総和に比べて極めて小さい。したがって、このような場合には、αを0(ゼロ)として第2項を無視することもできる。
【0027】S109:特異値データの抽出S107で求めた2重周囲差分値、つまり各画素の相対輝度値を所定の閾値を使用して2値化する。この2値化により抽出された特異値データは、S111の画像データ膨張・収縮処理に供される。
S111:画像膨張・収縮S109で求めた特異値データについて、所定の回数だけ画像膨張、収縮を施す。画像膨張は、図形成分の境界にあるがその値を全て背景成分の画素の値に変換して1画素分膨らます処理をいう。また、逆に画像収縮は、図形成分を1画素分だけ縮める処理をいう。画像膨張と収縮を交互に繰り返すことにより、雑音部分を除去することができる。画像膨張・収縮処理された特異値データを接着してブロックを生成する。生成されたブロック14を示す画像を図9に示す。この画像はモニタ4に表示させることができる。
【0028】S113:画質評価定量値算出生成されたブロック14の面積、ブロック14における輝度値を用いて、画質評価定量値を算出する。例えば、プロック14の面積をA、ブロック14における平均輝度値をC1とすると、P=A×C1を算出する。そして、当該画像を具現する液晶表示ディスプレイ5の画質をPの値によって評価する。この値はモニタ4に表示する(S115)。平均輝度値C1を用いるほかに、最大輝度値、最小輝度値等他の輝度値を採用することも可能である。以上説明したように本実施の形態によれば、輝度ムラを定量的に評価することができる。しかも、2重周囲差分法を用いることにより、輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出することができる。そして、この2重周囲差分法によれば、演算処理の負荷が小さくて済むため、演算処理の時間をセーブすることができる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態による検査装置のシステム構成を示す図である。
【図2】 本実施の形態による検査方法手順を示すフローチャートである。
【図3】 本実施の形態において検査対象となった画像を示す図である。
【図4】 2重周囲差分法の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】 本実施の形態による2重周囲差分法を説明するための図である。
【図6】 図3に示す画像について、式(1)のnを1として求めた周囲差分値を再変換した後の画像データを示す図である。
【図7】 図3に示す画像について、式(2)のmを16として求めた周囲差分値を再変換した後の画像データを示す図である。
【図8】 図3に示す画像について、式(3)のnを1およびmを16として求めた2重周囲差値を再変換した後の画像データを示す図である。
【図9】 図6に示す画像データを処理することにより抽出したムラを示す画像である。
【図10】 第1の画素群および第2の画素群の例を示す図である。
【図11】 第1の画素群および第2の画素群の例を示す図である。
【図12】 第1の画素群および第2の画素群の例を示す図である。
【符号の説明】
1…検査装置、2…カラーCCDカメラ、3…パーソナル・コンピュータ(PC)、3a…画像処理手段、3b…演算処理手段、4…モニタ、5…液晶表示ディスプレイ、10…注目画素、11a,11b,11c,11d…第1の画素群、12a,12b,12c,12d…第2の画素群、13…輝点、14・・・ブロック
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液晶表示ディスプレイをはじめとする表示装置の画質を検査する方法に関し、特に表示装置の輝度を評価、判定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示ディスプレイの製造工程において種々の品質検査が行なわれる。その中で、ディスプレイが表示する画像の画質を判定する検査が行なわれている。検査装置を用いて画質を判定することは容易でないため、従来から人間の目視による検査、つまり官能検査が行なわれている。官能検査は、画質の基準となるサンプルを作成し、このサンプルと検査対象となるディスプレイの画像とを見比べることにより画質の判定を行なうものである。ところが、人間の官能に依存する官能検査においては、検査を行なう検査員によって判定結果にばらつきが生ずることを回避できない。官能検査は基本的に画像に表れる輝度差と面積の情報に基づいて判定されるということができるが、局所的な輝度差が生ずる部位と緩やかなグラデーションのムラとの区別をすることが容易でなく、特に検査員ごとの判定ばらつきが生じやすい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の官能検査に代わる判定手法として、定量的に画質を評価する方法がこれまでも種々提案されている。例えば、特開平10−2800号公報、特開平10−96681号公報、特開2000−113188号公報等である。ところが、これまで提案された手法では、液晶表示ディスプレイに生ずる輝度ムラを適切に抽出することが困難であった。現在主流をなす液晶表示ディスプレイは、バック・ライトと称される光源から発せられる光を、液晶表示ディスプレイを構成するパネルに均一に照射することを理想としているが、現実にはパネル内で若干の輝度勾配を持っている。しかも、液晶表示ディスプレイは、このような全体的な輝度勾配を持ったなかで局所な輝度ムラを有していることがある。前記特開平10−2800号公報、特開平10−96681号公報に開示された手法は、CRTディスプレイを対象とするものであって、以上のような液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度むらを抽出することは困難であった。前記特開2000−113188号公報は、液晶表示ディスプレイに用いられるカラー・フィルタのムラを検出するものであるが、前記特開平10−2800号公報、特開平10−96681号公報と同様に、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出することは困難であった。そこで本発明は、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出し、かつ定量的に評価することのできる手法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を解決するための評価手法を種々検討した。その結果、ある特定のアルゴリズムを用いれば、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出できることを知見するに到った。この手順の概要は以下の通りである。
(a)評価対象となる画像を複数の画素に分割する。
(b)ある特定の画素(注目画素)からn画素分だけ離れた位置に存在しかつこの注目画素を取り囲む複数の画素の輝度値を積算し、この積算値から注目画素の輝度値を減ずる。この処理を分割された全画素について実行して、輝度情報を得る。
(c)注目画素からm(n<m)画素分だけ離れた位置に存在しかつこの注目画素を取り囲む複数の画素の輝度値を積算し、この積算値から注目画素の輝度値を減ずる。この処理を分割された全画素について実行して、輝度情報を得る。
(d)上記(b)(c)で得た2つの輝度情報に基づく輝度情報を用いることにより、官能検査に近い定量的な評価となる。
ここで、(b),(c)で得られる輝度情報は、注目画素とその周囲に存在する画素の差分値である。つまり、(b),(c)により得られる輝度情報は周囲差分値とでも呼ぶべき値であり、また(d)により得られる輝度情報は2つの周囲差分値に基づくことから2重周囲差分値と称される。そして、周囲差分値、2重周囲差分値を得る手法を、本発明者等は周囲差分法、2重周囲差分法と称することにした。つまり、本発明は、周囲差分法あるいは2重周囲差分法を用いて画質の評価を定量的に行なうことを特徴とする。
【0005】したがって本発明は、撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、所定の注目画素を取り囲む画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する処理を、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する差分算出ステップと、を備えることを特徴とする輝度情報取得方法を提供する。本発明の輝度情報取得方法により得られた輝度情報を用いることにより、画質の評価を定量的に行なうことを可能にする。しかも、本発明により2つの輝度情報を取得し、後述する2重周囲差分法を適用することにより、輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラをも評価、判定することを可能とする。本発明において、分割ステップは従来公知の方法を採用することができる。例えば、画像をCCDカメラで撮像した場合には、その画像データは当該CCDカメラの解像度(または画素数)に応じて分割することができる。また、差分算出ステップにおいて、各画素の輝度値を求める手法自体も従来公知の手法を採用することができる。
【0006】本発明の輝度情報取得方法において、前記画素群は、前記注目画素に対して方向性を持つことは望ましくない。例えば、注目画素から所定の画素数だけ離間した画素を含みかつ直線的に配列された複数の画素を前記画素群とする場合は、方向性を持つことになる。したがって本発明は、前記画素群は、前記注目画素に対して等方的な形態をなすことが望ましい。例えば、注目画素を矩形状に取り囲む形態あるいは注目画素を円形状に取り囲む形態が包含される。また本発明の輝度情報取得方法において、前記画素群を構成する画素を、前記注目画素に隣接する画素とすることもできるが、さらに前記注目画素から所定の画素数だけ離間しているものから選択することもできる。離間する画素数が小さい場合には局所的な輝度の変化を抽出するのに適し、一方、離間する画素数が大きい場合には画像全体に生ずる輝度の勾配、つまり輝度ムラを抽出するのに適している。つまり、注目画素を取り囲む画素群の位置を選択することによって判定したい輝度ムラの形態に対応することができる。さらに本発明の輝度情報取得方法において、注目画素を取り囲む前記画素群は、互いに隣接してもよいが、周方向に間欠的な位置に存在する複数の画素から構成することもできる。例えば、連続して配置される画素のうち1個おきに選択された画素をもって前記画素群とすることができる。前記画素群を構成する画素の数は、演算処理速度に影響を与えるので、その点をも考慮して前記画素群とすべき画素を選択するのが望ましい。
【0007】本発明は、前述した輝度情報取得方法に基づく以下の画質評価方法を提供する。すなわち本発明は、撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、所定の注目画素を取り囲む第1の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する処理を、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む第1の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第1の輝度情報を算出する第1の輝度情報算出ステップと、前記注目画素を取り囲みかつ前記第1の画素群よりも前記注目画素から遠方に存在する第2の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第2の輝度情報を算出する第2の輝度情報算出ステップと、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とに基づいて第3の輝度情報を得る第3の輝度情報算出ステップと、前記第3の輝度情報に基づいて撮像された画面の輝度を評価する評価ステップと、を備えることを特徴とする画質評価方法を提供する。本発明の画質評価方法において、第1の輝度情報算出ステップは局所的な輝度ムラを抽出することを目的として、また、第2の輝度情報算出ステップは画像全体に生ずる輝度ムラを抽出することを目的とする。第1の輝度情報算出ステップに用いられる第1の画素群は第2の輝度情報算出ステップに用いられる第2の画素群の内側に位置する。したがって、第1の輝度情報は内側差分値、第2の輝度情報は外側差分値と称することができる。そして、本発明の画質評価方法は、内側差分値および外側差分値に基づいて、例えば加・減算することにより第3の輝度情報を取得する。この第3の輝度情報は、2重周囲差分値と称することができる。本発明の画質評価方法は、局所的な輝度ムラを抽出することを目的とする内側差分値および画像全体に生ずる輝度ムラを抽出することを目的とする外側差分値に基づく2重周囲差分値により画質を評価するため、液晶表示ディスプレイの画像検査に十分に対応することができる。
【0008】本発明の画質評価方法において、前記評価ステップは、前記第3の輝度情報を所定の閾値を用いて2値化処理することにより特異値データを抽出する2値化処理ステップを含むことができる。また、前記2値化処理ステップで得られた特異値データに関するブロックの面積と当該ブロックに包含される画素の輝度値を掛け合わせることにより評価値を算出する評価値算出ステップを含むことができる。また本発明の画質評価方法において、前記第3の輝度情報算出ステップは、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することにより構成することができる。そしてこの加算の際に、第1の輝度情報と第2の輝度情報に重み付けを行なって、加算することができる。液晶表示ディスプレイに発生する輝度に関するムラは複数種類存在し、このムラは発生位置、大きさ、形態が異なる。そして、内側差分値および外側差分値の重み付けを設定することにより、検査したいムラを適切に抽出することが可能になる。つまり、本発明の画質評価方法は、評価しようとする画像の特徴に応じて重み付けを決定することができる。実際の画質検査では、重み付けを代えて前記加算ステップを複数回実施することにより、複数種類のムラを評価することができる。
【0009】本発明は前述した周囲差分法による輝度情報を取得する装置を提供する。すなわち本発明の表示装置の輝度情報取得装置は、表示装置に表示される画像の輝度情報を取得する装置であって、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された画像データについて、下記式(1)で示す演算処理を実行する演算手段と、
【式3】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値)を備えたことを特徴とする。本発明において、式(1)中の第1項前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値の総和であり、第2項はI(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値であるから、A(x,y)は、(x,y)で示される位置に存在する画素についての周囲差分値である。つまり、本発明の表示装置の輝度情報取得装置は、輝度情報として周囲差分値を取得することができる。
【0010】本発明の表示装置の輝度情報取得装置において、前記演算手段は、式(1)で示す演算処理を、分割された画素全てについて実行する。そうすることにより、撮像された画像全体についての周囲差分値を取得することができ、ひいては画像の品質評価に用いることができる。本発明の表示装置の輝度情報取得装置において、式(1)におけるpiは、(x,y)で示される位置に存在する画素から画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素の輝度情報である。そして、このnを適宜設定することにより、(x,y)で示される位置の画素近傍の局所的な輝度ムラを抽出することができるし、また画像全体の輝度勾配を抽出することもできる。つまり、本発明の表示装置の輝度情報取得装置によれば、種々の形態の輝度ムラに対応することのできる汎用性の高い検査装置を提供することを可能にする。
【0011】以上の輝度情報取得装置を適用した表示装置の画質評価装置を本発明は提供する。すなわち本発明は、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された全ての画像について、下記式(2)で示す演算処理を実行し、かつ前記演算処理により得られた輝度情報であるP(x,y)に基づいて撮像された画像を定量化する演算手段と、
【式4】
(ただし、pi,po,αおよびI(x,y)は以下の通り定義される。
pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線 対称をなす第1の画素群を構成する画素の輝度値po:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなすとともに前記第1の画素群よりも外側に位置する第2の画素群を構成する画素の輝度値I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値a,b,α:0および正の数)を備えることを特徴とする表示装置の画質評価装置である。本発明の表示装置の画質評価装置は、P(x,y)を算出する。ここで、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなす第1の画素群を構成する画素の輝度値、po:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなすとともに前記第1の画素群よりも外側に位置する第2の画素群を構成する画素の輝度値である。したがって、P(x,y)は前述した2重周囲差分値であり、本発明の表示装置の画質評価装置によれば、局所的な輝度ムラおよび画像全体の輝度勾配を抽出することができる。
【0012】本発明の表示装置の画質評価装置において、前記第1の画素群を(x,y)で示される位置に存在する画素から画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成し、かつ前記第2の画素群を(x,y)で示される位置に存在する画素から画素m個分(m>nの整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成することができる。そして、nおよびmを適宜設定することにより、種々の形態の輝度ムラを抽出することを可能にする。本発明の表示装置の画質評価装置において、係数a,bはそれぞれ、内側差分値および外側差分値を加算するときの重み付けを定義する。したがって、aおよびbはa+b=1.0を満足し、かつaおよびbは評価する画像の特徴に応じて決定されることになる。ここで、本発明は、aまたはbが0(ゼロ)となることを許容している。また本発明の画質評価装置において、前記αは、前記mの値に応じて決定することができる。例えば、mの値が大きくなれば、poの総和に対してI(x,y)は無視することもできる。その場合には、αを0(ゼロ)として演算処理することもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態による検査装置1のシステム構成を示す図である。本実施の形態は、被検査体としての液晶表示ディスプレイ5の輝度ムラを検査する検査装置1および検査方法に関するものである。液晶表示の検査装置1は、カラーCCDカメラ2、パーソナル・コンピュータ(PC)3およびモニタ4とから構成される。パーソナル・コンピュータ(PC)3は、画像処理手段3aと演算処理手段3bとを備えている。カラーCCDカメラ2は被検査体である液晶表示ディスプレイ5の表示面を撮像する。カラーCCDカメラ2は、従来公知の構成、つまりレンズ、カラーフィルタ、R,G,B信号を取り込むための電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)を主たる構成要素としている。カラーCCDカメラ2で撮像された画像についての画像データは、画像処理手段3aにおいて所定の画像処理が施される。また、演算処理手段3bは、画像処理手段3aで処理された画像データを用いて、後述する本実施の形態による周囲差分法のための演算を実行する。モニタ4は、カラーCCDカメラ2で撮像した画像、検査結果等を表示する。
【0014】図2に本実施の形態による検査方法の手順を示すフローチャートである。本実施の形態による検査方法は、被検査画像の取り込み(ステップ(図中Sで示す。以下、Sと略記することがある)101)、取り込み画像データの分割処理(S103)、平滑化処理(S105)、2重周囲差分法の適用(S107)、特異値データ抽出処理(S109)、画像膨張・収縮処理(S111)、画質評価定量値算出(S113)および評価結果表示(S115)という一連のステップによって行なわれる。以下、各ステップの内容をステップ順に説明する。
【0015】S101:被検査画像取り込みはじめに、検査対象である液晶表示ディスプレイ5の表示画像をカラーCCDカメラ2にて撮像する。撮像された画像の画像データは、画像処理手段3aにおいてシェーディング補正が施される。このシェーディング補正により、主にカラーCCDカメラ2における周辺減光、撮像素子の不均一性によって生じる、被検査画像の本来の輝度と画像データとの間の変換特性の不整合を除去する。図3に検査対象となった液晶表示ディスプレイ5の表示画像を示す。図3に示すように、この表示画像は画面下方に白っぽいムラが発生している。
【0016】S103:取り込み画像データの分割S101により得られた画像データをマトリックス状に分割する。この画像データの分割は、S107における2重周囲差分法を実行するための予備的な処理である。ここでは、n×mの画素に分割されるものとする。分割された画素は、2次元座標(x,y)でその位置を特定することができる。なお、本実施の形態では、画像撮像手段としてカラーCCDカメラ2を用いているから、n×mはカラーCCDカメラ2の画素数(解像度)に対応する。もっとも、分割の数は最大でカラーCCDカメラ2の画素数(解像度)であるが、これ以下の分割数とすることを妨げるものではない。
【0017】S105:平滑化処理S103により分割された画像データについて、ノイズを除去するための平滑化処理を行なう。例えば、2×2のフィルタリングを行なう。
【0018】S107:2重周囲差分法の適用S105においてノイズが除去された画像データについて、各画素の輝度値を求めることを前提に、以下を内容とする2重周囲差分法を実行する。2重周囲差分法の処理手順を示すフローチャートを図4に示す。図4に示すように、S107では、下記式(3)で示される内側差分値を算出する(S201)。次いで、下記式(4)で示される外側差分値を算出する(S203)。次いで、S201で得られた内側差分値およびS203で得られた外側差分値とを加えることにより下記式(5)で示される2重周囲差分値を算出する(S205)。以下、S201〜S203の具体的内容を説明する。なお、内側差分値を算出するS201と外側差分値を算出するS203の順番は入れ替えても良い。この2重周囲差分法は、本発明者が新たに開発したアルゴリズムである。また、式(3)〜式(5)は、本発明者等が種々検討を重ねた結果としての経験式であり、式(3)の2n+1(第3項)、式(4)のα(第2項)および2m+1(第3項)、式(5)の係数a,bは経験的に導き出されるものである。
【0019】
【式5】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値、n:注目画像から第1の画素群までの画素の数)
【0020】
【式6】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値、n:注目画像から第2の画素群までの画素の数,α:0以上の正の数)
【0021】
【式7】
(ただし、a,b:a+b=1.0を満足する正の数)
【0022】S201:内側差分値の算出内側差分値は前述のように式(3)に基づく演算を行なう。図5を参照しつつ式(3)の内容を説明する。なお、図5は、S103により分割された画像データを示している。式(3)のうち、第1項は、注目画素10からn個だけ離れた位置に存在する画素の輝度の総和を意味している。図5において、黒塗りされた画素が注目画素10であり、またn個だけ離れた位置に存在する複数の画素からなる第1の画素群11aは濃い灰色に塗りつぶされている。なお、図5はn=3の例を示している。次に、式(3)の第2項は、注目画素10の輝度値を示している。さらに、式(3)の第3項は、注目画素10からn個だけ離れた位置に存在する画素列に含まれる画素の数である。なお、注目画素10の位置によっては、n個だけ離れた位置に画素が存在しない場合もあり得る。その場合には、ミラーリングによってn個だけ離れた位置に存在する画素の輝度値を用いて演算を行なえばよい。S203における外側差分値の算出についても同様である。
【0023】S203:外側差分値の算出外側差分値は前述のように式(4)に基づく演算により算出される。式(4)において、第1項は、注目画素10からm個だけ離れた位置に存在する画素の輝度の総和を意味している。なお、n<mであることから、式(3)についての演算処理を内側差分値の算出と、また式(4)についての演算処理を外側差分値の算出と称している。図5において、注目画素10からm個だけ離れた位置に存在する複数の画素からなる第2の画素群12aは薄いグレーに塗りつぶされている。なお、図5はm=5の例を示している。次に、式(4)の第2項は、注目画素10の輝度値を示している。この第2項は係数αがあることを除いて式(3)と共通する。さらに、式(2)の第3項は、注目画素10からm個だけ離れた位置に存在する画素群が構成する列に含まれる画素の数である。
【0024】本実施の形態では、内側差分値算出のための第1の画素群11a、外側差分値算出のための第2の画素群12a、図5に示す形態としたが、他の形態を採用することもできる。例えば、図10〜図12に示すような形態とすることもできる。図10に示す例は、第1の画素群11bおよび第2の画素群12bが、連続する画素のうち1個おきに選択された画素から構成される。つまり、図10に示す例は、間欠的な位置に配置された複数の画素から第1の画素群11bおよび第2の画素群12bを構成している。図5に示した本実施の形態によれば、1つの注目画素10についての演算は、nまたはm個だけ離れた位置の画素の輝度値を積算するにとどまるから、その負荷がそもそも小さい。さらに図10のように、間欠的な位置にある画素のみを対象とすれば、演算に要する負荷は一段と小さくなる。図11に示す例は、八角形状あるいは円状とでもいうべき位置に存在する複数の画素から第1の画素群11cおよび第2の画素群12cを構成している。図12に示す例は、図11の変形例であって、注目画素10を取り囲む全ての画素から第1の画素群11dを構成し、第1の画素群11dを取り囲む全ての画素から第2の画素群12dを構成している。図5、図10〜図12に示した第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dは以下の点で共通している。すなわち、第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dは、各々注目画素10に対して方向性を持たない等方的な形態をなしている。また、第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dは、注目画素10を基準として線対称(あるいは点対称)の形態をなしている。適切に輝度ムラを抽出するためには、第1の画素群11a〜11dおよび第2の画素群12a〜12dを以上のような形態とすることが重要である。
【0025】S205:2重周囲差分値の算出2重周囲差分値は式(5)に基づく演算処理を実行することにより算出できる。つまり、S201およびS203によりそれぞれ算出した内側差分値と外側差分値とを加えることにより2重周囲差分値を算出することができる。ここで、式(5)中のaおよびbは係数であり、0以上の正の数を採る。S201,S203,S205からなる一連の処理は、分割された画像データのすべての画素に対して実行される。2重周囲差分値は、結局、各画素の相対輝度を示している。
【0026】ここで、S201により求めた内側差分値、S203により求めた外側差分値およびS205により求めた2重周囲差分値を再変換することにより得られた画像をそれぞれ図6、図7および図8に示す。この画像は、モニタ4に表示することができる。なお、この画像は、前述のn,mをn=1,m=16とした場合のものである。また、式(4)中の係数α=1、式(5)中の係数a=0.15、b=0.85として演算処理した結果に基づいている。内側差分値に基づく図6によれば、局所的な輝度ムラの1形態である輝点13が抽出されていることが判る。一方、外側差分値に基づく図7によれば、画面全体に生ずる輝度の勾配が輝度ムラとして抽出されている。そして、内側差分値および外側差分値を加算した2重周囲差分値に基づく図8では、輝点13および輝度の傾斜の両者を抽出できることがわかる。なお、図6〜図8におけるグラフは、各画像中に描かれている直線による切断面の輝度値を示している。例えば、図6において2直線が交差する部分に存在する輝点13は、輝度値が周囲より高くなっていることを示している。本実施の形態においては、内側差分値および外側差分値を加えた2重周囲差分値を求めているが、内側差分値のみ、または外側差分値のみを用いて表示画像の画質評価を行なうこともできる。また、本実施の形態では、式(4)中の係数α=1、式(5)中の係数a=0.15、b=0.85としたが、他の値を採用することができる。係数aおよびbは、内側差分値と外側差分値との重み付けを決定する。本発明者等の検討によると、抽出したい輝度ムラの種別に応じて、内側差分値と外側差分値との重み付けを決定することにより、当該輝度ムラを適切に抽出することができる。本実施の形態も、種々検討のうえでa=0.15、b=0.85を決定し、その結果として図8に示すような画像を得ている。したがって、係数a,bは、抽出したい画像の特徴に応じて、実験的に定めることが必要である。また、係数αについては、外側差分値を算出するための第2の画素群11a(〜11d)によって、変動し得る。つまり、mが大きい値を採用するときには式(3)の第2項は第1項に比べて極めて小さな値をとることになる。例えば、m=20だとすると、第1項は160個の画素における輝度値の総和であり、1個の画素(注目画素10)の輝度値はこの総和に比べて極めて小さい。したがって、このような場合には、αを0(ゼロ)として第2項を無視することもできる。
【0027】S109:特異値データの抽出S107で求めた2重周囲差分値、つまり各画素の相対輝度値を所定の閾値を使用して2値化する。この2値化により抽出された特異値データは、S111の画像データ膨張・収縮処理に供される。
S111:画像膨張・収縮S109で求めた特異値データについて、所定の回数だけ画像膨張、収縮を施す。画像膨張は、図形成分の境界にあるがその値を全て背景成分の画素の値に変換して1画素分膨らます処理をいう。また、逆に画像収縮は、図形成分を1画素分だけ縮める処理をいう。画像膨張と収縮を交互に繰り返すことにより、雑音部分を除去することができる。画像膨張・収縮処理された特異値データを接着してブロックを生成する。生成されたブロック14を示す画像を図9に示す。この画像はモニタ4に表示させることができる。
【0028】S113:画質評価定量値算出生成されたブロック14の面積、ブロック14における輝度値を用いて、画質評価定量値を算出する。例えば、プロック14の面積をA、ブロック14における平均輝度値をC1とすると、P=A×C1を算出する。そして、当該画像を具現する液晶表示ディスプレイ5の画質をPの値によって評価する。この値はモニタ4に表示する(S115)。平均輝度値C1を用いるほかに、最大輝度値、最小輝度値等他の輝度値を採用することも可能である。以上説明したように本実施の形態によれば、輝度ムラを定量的に評価することができる。しかも、2重周囲差分法を用いることにより、輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出することができる。そして、この2重周囲差分法によれば、演算処理の負荷が小さくて済むため、演算処理の時間をセーブすることができる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、液晶表示ディスプレイに表示される輝度勾配およびその中で生ずる局所的な輝度ムラを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態による検査装置のシステム構成を示す図である。
【図2】 本実施の形態による検査方法手順を示すフローチャートである。
【図3】 本実施の形態において検査対象となった画像を示す図である。
【図4】 2重周囲差分法の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】 本実施の形態による2重周囲差分法を説明するための図である。
【図6】 図3に示す画像について、式(1)のnを1として求めた周囲差分値を再変換した後の画像データを示す図である。
【図7】 図3に示す画像について、式(2)のmを16として求めた周囲差分値を再変換した後の画像データを示す図である。
【図8】 図3に示す画像について、式(3)のnを1およびmを16として求めた2重周囲差値を再変換した後の画像データを示す図である。
【図9】 図6に示す画像データを処理することにより抽出したムラを示す画像である。
【図10】 第1の画素群および第2の画素群の例を示す図である。
【図11】 第1の画素群および第2の画素群の例を示す図である。
【図12】 第1の画素群および第2の画素群の例を示す図である。
【符号の説明】
1…検査装置、2…カラーCCDカメラ、3…パーソナル・コンピュータ(PC)、3a…画像処理手段、3b…演算処理手段、4…モニタ、5…液晶表示ディスプレイ、10…注目画素、11a,11b,11c,11d…第1の画素群、12a,12b,12c,12d…第2の画素群、13…輝点、14・・・ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する差分算出ステップと、を備えることを特徴とする輝度情報取得方法。
【請求項2】 前記画素群は、前記注目画素に対して等方的な形態をなしていることを特徴とする請求項1に記載の輝度情報取得方法。
【請求項3】 前記画素群を構成する画素は、前記注目画素から所定の画素数だけ離間していることを特徴とする請求項1に記載の輝度情報取得方法。
【請求項4】 前記画素群は、周方向に間欠的な位置に存在する複数の画素から構成されることを特徴とする請求項1に記載の輝度情報取得方法。
【請求項5】 撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む第1の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第1の輝度情報を算出する第1の輝度情報算出ステップと、前記注目画素を取り囲みかつ前記第1の画素群よりも前記注目画素から遠方に存在する第2の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第2の輝度情報を算出する第2の輝度情報算出ステップと、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報に基づいて第3の輝度情報を得る第3の輝度情報算出ステップと、前記第3の輝度情報に基づいて撮像された画面の輝度を評価する評価ステップと、を備えることを特徴とする画質評価方法。
【請求項6】 前記評価ステップは、前記第3の輝度情報を所定の閾値を用いて2値化処理することにより特異値データを抽出する2値化処理ステップを備えることを特徴とする請求項5に記載の画質評価方法。
【請求項7】 前記評価ステップは、前記2値化処理ステップで得られた特異値データに関するブロックの面積と当該ブロックに包含される画素の輝度値を掛け合わせることにより評価値を算出する評価値算出ステップを備えることを特徴とする請求項6に記載の画質評価方法。
【請求項8】 前記第3の輝度情報算出ステップは、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することを特徴とする請求項5に記載の画質評価方法。
【請求項9】 前記第3の輝度情報算出ステップは、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報に重み付けを行なって、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することを特徴とする請求項8に記載の画質評価方法。
【請求項10】 前記重み付けは、評価しようとする画像の特徴に応じて決定されることを特徴とする請求項9に記載の画質評価方法。
【請求項11】 表示装置に表示される画像の輝度情報を取得する装置であって、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された画像データについて、下記式(1)で示す演算処理を実行する演算手段と、
【式1】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値)を備えたことを特徴とする表示装置の輝度情報取得装置。
【請求項12】 前記演算手段は、前記式(1)で示す演算処理を、分割された画素全てについて実行することを特徴とする請求項11に記載の表示装置の輝度情報取得装置。
【請求項13】 前記式(1)におけるpiは、(x,y)で示される位置に存在する画素から、画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素の輝度情報であることを特徴とする請求項11に記載の表示装置の輝度情報取得装置。
【請求項14】 表示装置に表示される画像の画質を評価する装置であって、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された全ての画像について、下記式(2)で示す演算処理を実行し、かつ前記演算処理により得られた輝度情報であるP(x,y)に基づいて撮像された画像を定量化する演算手段と、
【式2】
(ただし、pi,po,αおよびI(x,y)は以下の通り定義される。
pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線 対称をなす第1の画素群を構成する画素の輝度値po:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなすとともに前記第1の画素群よりも外側に位置する第2の画素群を構成する画素の輝度値I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値a,b,c:0および正の数)を備えることを特徴とする表示装置の画質評価装置。
【請求項15】 前記第1の画素群は、(x,y)で示される位置に存在する画素から画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成され、前記第2の画素群は、(x,y)で示される位置に存在する画素から画素m個分(m>nの整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成されることを特徴とする請求項14に記載の表示装置の画質評価装置。
【請求項16】 前記aおよびbはa+b=1.0を満足し、かつaおよびbは評価する画像の特徴に応じて決定されることを特徴とする請求項14に記載の表示装置の画質評価装置。
【請求項17】 前記αは、前記mの値に応じて決定されることを特徴とする請求項15に記載の表示装置の画質評価装置。
【請求項1】 撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分を算出する差分算出ステップと、を備えることを特徴とする輝度情報取得方法。
【請求項2】 前記画素群は、前記注目画素に対して等方的な形態をなしていることを特徴とする請求項1に記載の輝度情報取得方法。
【請求項3】 前記画素群を構成する画素は、前記注目画素から所定の画素数だけ離間していることを特徴とする請求項1に記載の輝度情報取得方法。
【請求項4】 前記画素群は、周方向に間欠的な位置に存在する複数の画素から構成されることを特徴とする請求項1に記載の輝度情報取得方法。
【請求項5】 撮像された画像の画像データを複数の画素に分割する分割ステップと、前記複数の画素のうち所定の注目画素を取り囲む第1の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第1の輝度情報を算出する第1の輝度情報算出ステップと、前記注目画素を取り囲みかつ前記第1の画素群よりも前記注目画素から遠方に存在する第2の画素群を構成する各画素の輝度値の総和と前記注目画素の輝度値の差分である第2の輝度情報を算出する第2の輝度情報算出ステップと、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報に基づいて第3の輝度情報を得る第3の輝度情報算出ステップと、前記第3の輝度情報に基づいて撮像された画面の輝度を評価する評価ステップと、を備えることを特徴とする画質評価方法。
【請求項6】 前記評価ステップは、前記第3の輝度情報を所定の閾値を用いて2値化処理することにより特異値データを抽出する2値化処理ステップを備えることを特徴とする請求項5に記載の画質評価方法。
【請求項7】 前記評価ステップは、前記2値化処理ステップで得られた特異値データに関するブロックの面積と当該ブロックに包含される画素の輝度値を掛け合わせることにより評価値を算出する評価値算出ステップを備えることを特徴とする請求項6に記載の画質評価方法。
【請求項8】 前記第3の輝度情報算出ステップは、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することを特徴とする請求項5に記載の画質評価方法。
【請求項9】 前記第3の輝度情報算出ステップは、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報に重み付けを行なって、前記第1の輝度情報と前記第2の輝度情報とを加算することを特徴とする請求項8に記載の画質評価方法。
【請求項10】 前記重み付けは、評価しようとする画像の特徴に応じて決定されることを特徴とする請求項9に記載の画質評価方法。
【請求項11】 表示装置に表示される画像の輝度情報を取得する装置であって、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された画像データについて、下記式(1)で示す演算処理を実行する演算手段と、
【式1】
(ただし、pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置に存在する画素を取り囲む画素群を構成する画素の輝度値、I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値)を備えたことを特徴とする表示装置の輝度情報取得装置。
【請求項12】 前記演算手段は、前記式(1)で示す演算処理を、分割された画素全てについて実行することを特徴とする請求項11に記載の表示装置の輝度情報取得装置。
【請求項13】 前記式(1)におけるpiは、(x,y)で示される位置に存在する画素から、画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素の輝度情報であることを特徴とする請求項11に記載の表示装置の輝度情報取得装置。
【請求項14】 表示装置に表示される画像の画質を評価する装置であって、前記表示装置に表示される画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像に関する画像データを分割する画像処理手段と、前記画像処理手段により分割された全ての画像について、下記式(2)で示す演算処理を実行し、かつ前記演算処理により得られた輝度情報であるP(x,y)に基づいて撮像された画像を定量化する演算手段と、
【式2】
(ただし、pi,po,αおよびI(x,y)は以下の通り定義される。
pi:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線 対称をなす第1の画素群を構成する画素の輝度値po:前記画像データのうち、(x,y)で示される位置を基準として線対称をなすとともに前記第1の画素群よりも外側に位置する第2の画素群を構成する画素の輝度値I(x,y):(x,y)で示される位置の画素の輝度値a,b,c:0および正の数)を備えることを特徴とする表示装置の画質評価装置。
【請求項15】 前記第1の画素群は、(x,y)で示される位置に存在する画素から画素n個分(nは1以上の整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成され、前記第2の画素群は、(x,y)で示される位置に存在する画素から画素m個分(m>nの整数)だけ離れた位置に存在する画素によって構成されることを特徴とする請求項14に記載の表示装置の画質評価装置。
【請求項16】 前記aおよびbはa+b=1.0を満足し、かつaおよびbは評価する画像の特徴に応じて決定されることを特徴とする請求項14に記載の表示装置の画質評価装置。
【請求項17】 前記αは、前記mの値に応じて決定されることを特徴とする請求項15に記載の表示装置の画質評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2002−257679(P2002−257679A)
【公開日】平成14年9月11日(2002.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−49242(P2001−49242)
【出願日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【出願人】(501075475)有限会社ハイランド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年9月11日(2002.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【出願人】(501075475)有限会社ハイランド (2)
【Fターム(参考)】
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