説明

輾圧機及び輾圧機用の防振ゴム部材

【課題】従来の防振ゴムよりも振動や衝撃の伝達を低減する作用が良好であると同時に輾圧機の操縦性にも優れた輾圧機用の防振ゴムと該防振ゴムを使用した輾圧機を提供する。
【解決手段】ハンドル部材、駆動源、前記駆動源で駆動される起振機、起振機の駆動により振動する輾圧板を備えた輾圧機であって、ハンドル部材は駆動源又は駆動源を固定した基台と防振ゴム部材を介して接続固定されており、防振ゴム部材1は取付部2、3と防振ゴム4とからなり、防振ゴム4は、略柱状であり、柱状方向に配置される弾性ゴム部7と高減衰ゴム部8とを備えたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル部材と駆動源又は駆動源を固定した基台との間に防振ゴム部材を配設した輾圧機並びに輾圧機のハンドル部材と駆動源又は駆動源を固定した基台との間に配設する防振ゴム部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の舗装工事においては、基礎となる砂利や土の層、砂利や土の層の上に施工したアスファルト層などを締固めるために、プレートコンパクターやタンピングランマーなどの輾圧機が使用される。輾圧機は、ハンドル部材、駆動源、前記駆動源で駆動される起振機、前記起振機の駆動により振動する輾圧板を備えており、ハンドル部材は、これを操作する作業者に直接激しい振動が伝わらないように駆動源、駆動源を固定した基台、駆動源と直接接続された起振機などの振動部と防振ゴム部材を介して接続固定されていることは公知である(特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特許第2893440号公報
【特許文献2】特開平10−298913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような輾圧機用の防振ゴムとしては、作業者が把持するハンドル部材への駆動源や起振機の振動や輾圧板からの衝撃などの伝達を低減する防振性が良好であること、及びハンドル部を握って輾圧を行いながら輾圧機を操作移動させて所定の範囲の地面を輾圧する操縦性が良好であることの双方が求められる。
【0005】
しかし、駆動源等の振動部からの振動や衝撃の伝達を低減するために防振ゴムの剛性を低下させると、輾圧機を移動させるべくハンドル部材に加えた力が防振ゴムの変形によって吸収されるために輾圧機の操縦性が低下し、逆に輾圧機の操縦性を高めるために防振ゴムの剛性を高くすると作業者に不快な振動や衝撃が伝わるという相反する問題があり、改善が求められていた。
【0006】
本発明は、従来の防振ゴムよりも振動や衝撃の伝達を低減する作用が良好であると同時に輾圧機の操縦性にも優れた輾圧機用の防振ゴムと該防振ゴムを使用した輾圧機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ハンドル部材、駆動源、前記駆動源で駆動される起振機、前記起振機の駆動により振動する輾圧板を備えた輾圧機の前記ハンドル部材と前記駆動源を含む振動部との間に配設される防振ゴム部材であって、
前記防振ゴム部材は取付部と防振ゴムとからなり、前記防振ゴムは、略柱状であり、柱状方向に配置される弾性ゴム部と高減衰ゴム部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
係る構成の防振ゴムは、従来の防振ゴムよりも振動や衝撃の伝達が低減されており、かつ操縦性にも優れた輾圧機用の防振ゴムである。
【0009】
上記の輾圧機用の防振ゴム部材においては、前記防振ゴムは円柱状であり、前記弾性ゴム部と高減衰ゴム部とが同心円状に形成されていることが好ましい。
【0010】
輾圧機の振動部とハンドル部材の間に設置される防振ゴムは主としてせん断変形ないしねじり変形により振動や衝撃の伝達を防止するものであるため、係る構成の防振ゴム部材は取付の方向性がなく、どの方向の変位に関しても同等の剛性を有しており、安定して振動や衝撃の伝達が低減されており、かつ安定した操縦性を有する輾圧機用の防振ゴムである。
【0011】
本発明の輾圧機は、ハンドル部材、駆動源、前記駆動源で駆動される起振機、前記起振機の駆動により振動する輾圧板を備えた輾圧機であって、
前記ハンドル部材は前記駆動源を含む振動部と防振ゴム部材を介して接続固定されており、
前記防振ゴム部材は取付部と防振ゴムとからなり、前記防振ゴムは、略柱状であり、柱状方向に配置される弾性ゴム部と高減衰ゴム部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
係る構成の輾圧機は、従来の防振ゴムを備えた輾圧機よりも振動や衝撃の伝達が低減されており、かつ操縦性にも優れた輾圧機である。
【0013】
上述の輾圧機においては、前記防振ゴムは円柱状であり、前記弾性ゴム部と高減衰ゴム部とが同心円状に形成されていることが好ましい。
【0014】
係る構成の輾圧機は、安定して振動や衝撃の伝達が低減されており、かつ安定した操縦性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の輾圧機用の防振ゴム部材の防振ゴムは弾性ゴム部と高減衰ゴム部を有する。弾性ゴム部を構成するゴム材料は、天然ゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム等の公知の防振ゴム用のゴム材料を使用する。これらの中でも天然ゴムの使用が良好な特性が得られるので特に好ましい。
【0016】
上記のゴム材料には充填剤、プロセスオイル等の可塑剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤を添加、混練して成形用ゴム組成物とし、成形に供する。
【0017】
高減衰ゴム部を構成するゴムは、公知の高減衰性ゴムを使用することができる。具体的にはポリノルボルネンゴムを使用したゴム、アクリルゴムやスチレンブタジエンゴム等の極性側鎖を有するゴム材料にヒンダードフェノール系化合物などの減衰性付与剤と相溶化のためのクマロン樹脂やフェノール樹脂などの非結晶性樹脂を添加したゴム(特開2000−86900号公報)、天然ゴムを主成分とするゴム材料にオレフィン系樹脂とオイル変性フェノール樹脂を添加したゴム(特開平5−59216号公報)、ポリイソプレンゴムと天然ゴムを併用したゴム材料にアビエチン酸の重合ロジンのペンタエリスリトールエステルを添加したゴム(特開平5−59220号公報)等が例示される。また、天然ゴム、重合ロジンなどのいわゆる粘着付与剤、充填剤、プロセスオイルなどの可塑剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤を使用しても高減衰性ゴムを得ることができる。
【0018】
本発明の弾性ゴム部構成ゴム並びに高減衰ゴム部構成ゴムは、上記成分を通常の加工方法によって、成形することができる。具体的には、加硫剤と加硫促進剤を除く成分をバンバリーミキサーにより混練してマスターバッチを製造し、該マスターバッチを冷却した後にニーダー、混練ロールなどを使用して加硫剤と加硫促進剤とを混練して成形用ゴム組成物とする。成形用ゴム組成物を所定形状にて金型内に供給して加熱加硫することにより、防振ゴムが得られる。金具などの取付具は、必要に応じて接着剤を塗布して金型内に配設することによって加硫接着され、防振ゴム部材が形成される。
【実施例1】
【0019】
図1は、輾圧機用の防振ゴム部材を例示した斜視図である。防振ゴム部材1はそれぞれが取付具である第1取付金具2、第2取付金具3及び第1取付金具2と第2取付金具3とに接着固定された防振ゴム4とからなる。第1取付金具2と第2取付金具3には、それぞれ固定用ボルト5、6が立設されている。防振ゴム4は第1取付金具2と第2取付金具3とを結ぶ円柱状に構成されている。防振ゴム4は円柱状に限定されず、四角や六角の角柱状であってもよい。また取付具として金属板にボルトが立設された取付金具を例示したがこれに限定されるものではなく、他の公知の取付具であってもよい。
【0020】
図2は図1に示した防振ゴム部材1の防振ゴム4のX−X断面を示した図である。防振ゴム4は、弾性ゴム部7を外側に、高減衰ゴム部8を中心側にした同心円状に構成されており、弾性ゴム部7と高減衰ゴム部8は、それぞれ円柱状方向、即ち第1取付金具2と第2取付金具3の方向に略同一断面形状を維持して配設され、それぞれが第1取付金具2と第2取付金具3に接着している。弾性ゴム部7と高減衰ゴム部8の断面積を決定するD1,D2は、目的と用途並びに輾圧機の種類などに応じて適宜設定されるものであるが、D1は50〜150mmであることが好ましく、D2はD1の40〜90%であることが好ましい。D2がD1の90%を超えると輾圧機の操縦性が低下し、40%未満では防振性が低下する。
【0021】
図2では弾性ゴム部7を外側に、高減衰ゴム部8を中心側にした構成を例示したが、これに限定されるものではなく、外側に高減衰ゴム部を配設した構成としてもよい。図2に示した防振ゴムは、高減衰ゴム部を形成する成形用ゴム材料と弾性ゴム部を構成するゴム材料とを製品と同様な形状に成形して金型内に配設し、加圧下に加熱することによって製造可能である。
【実施例2】
【0022】
図3には輾圧機の1種であるプレートコンパクターを例示した。プレートコンパクター10はエンジンや電動機などの駆動源12、駆動源12を固定する基台35、輾圧板16、輾圧板16の取付部材26、及びハンドル部材24とを備えており、駆動源を含む振動部である基台35とハンドル部材24は第1防振ゴム34を介して固定されており、輾圧板16の取付部材26と基台35は第2防振ゴム32を介して接続固定されている。プーリー18は駆動源12の動力を起振機(図示せず)に伝達するものである。本発明の防振ゴム部材は、第1防振ゴム、第2防振ゴムのいずれにも使用可能であるが、特に第1防振ゴムに使用することが好ましい。
【実施例3】
【0023】
図4には輾圧機の1種であるタンピングランマーを例示した。タンピングランマー40は駆動源42、駆動源42にて駆動される起振機43、起振機43により振動、輾圧する輾圧板44並びにハンドル部材41を備えており、ハンドル部材41は防振ゴム45を介して起振機43に固定されている。本発明の防振ゴム部材を防振ゴム45として使用すると、防振性と操縦性との双方が優れた輾圧機となる。
【実施例4】
【0024】
(実施例)
天然ゴム100重量部にカーボンブラック50重量部、ナフテン系プロセスオイルを10重量部、加硫剤としてイオウを2重量部、加硫促進剤を2重量部、を常法により添加混練して弾性ゴム部成形用の原料ゴム組成物とした。また天然ゴム100重量部にカーボンブラック60重量部、ナフテン系プロセスオイルを10重量部、加硫剤としてイオウを2重量部、加硫促進剤を2重量部、を常法により添加混練して高減衰ゴム部成形用の原料ゴム組成物とした。
【0025】
上記の弾性ゴム部成形用の原料ゴム組成物と高減衰ゴム部成形用の原料ゴム組成物を使用して図1、2に示した防振ゴム部材を作製した。D1=100mm,D2=80mm、円柱の高さは45mmとした。この防振ゴム部材を図4に示したタンピングランマーに装着し、硬質路盤(締め固まった状態の路盤)上での振動における加速度低減効果を評価したところ、加速度は10.6m/secであり、操縦性は良好であった。
【0026】
(比較例)
実施例と同じ形状の防振ゴム部材を弾性ゴムのみで作製し、実施例と同じ評価を行ったところ、操縦性は良好であったが加速度は13.2m/secであり、防振性は十分ではなかった。
【0027】
以上の結果から、本発明の防振ゴム部材を使用した輾圧機は、操縦性が良好であると同時に防振性にも優れたものであった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の防振ゴム部材の好適な実施態様の斜視図
【図2】本発明の防振ゴムの好適な実施態様の断面図
【図3】プレートコンパクターの構成を示した図
【図4】タンピングランマーの構成を示した図
【符号の説明】
【0029】
1 防振ゴム部材
2 取付部(第1取付金具)
3 取付部(第2取付金具)
4 防振ゴム
7 弾性ゴム部
8 高減衰ゴム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部材、駆動源、前記駆動源で駆動される起振機、前記起振機の駆動により振動する輾圧板を備えた輾圧機の前記ハンドル部材と前記駆動源を含む振動部との間に配設される防振ゴム部材であって、
前記防振ゴム部材は取付部と防振ゴムとからなり、前記防振ゴムは、略柱状であり、柱状方向に配置される弾性ゴム部と高減衰ゴム部とを備えていることを特徴とする輾圧機用の防振ゴム部材。
【請求項2】
前記防振ゴムは円柱状であり、前記弾性ゴム部と高減衰ゴム部とが同心円状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の輾圧機用の防振ゴム部材。
【請求項3】
ハンドル部材、駆動源、前記駆動源で駆動される起振機、前記起振機の駆動により振動する輾圧板を備えた輾圧機であって、
前記ハンドル部材は前記駆動源を含む振動部と防振ゴム部材を介して接続固定されており、
前記防振ゴム部材は取付部と防振ゴムとからなり、前記防振ゴムは、略柱状であり、柱状方向に配置される弾性ゴム部と高減衰ゴム部とを備えていることを特徴とする輾圧機。
【請求項4】
前記防振ゴムは円柱状であり、前記弾性ゴム部と高減衰ゴム部とが同心円状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の輾圧機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−336232(P2006−336232A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159758(P2005−159758)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】