説明

農業機械

【課題】エンジン側への吸気を適切に行うとともに、放熱器側とエンジン側との空気を遮断する農業機械を提供する。
【解決手段】吸気口1から取り込んだ空気で作動するエンジンと、エンジンの前方に配置するラジエータ(放熱器)Rと、ラジエータRとエンジンとの間に配置してラジエータRを冷却する冷却ファンFと、冷却ファンFを覆うファンシュラウドFSとをボンネットB内に備えるとともに、ボンネットBを閉じた時に、ファンシュラウドFSの上端SUに圧接するようにボンネットBの裏面にウレタン(閉塞部材)Sを備え、エンジンとラジエータRとの間に冷却水を循環させてエンジンを冷却するトラクタ(農業機械)Tにおいて、ファンシュラウドFSの上端SUから下方に向かって板状に延出するファンシュラウド板部SBに、吸気パイプ2の外周と同一形状の嵌合孔3を設け、嵌合孔3に吸気パイプ2を嵌合させて吸気口1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気口から取り込んだ空気で作動するエンジンと、エンジンの前方に配置する放熱器と、放熱器とエンジンとの間に配置して放熱器を冷却する冷却ファンと、冷却ファンを覆うファンシュラウドとをボンネット内に備えるとともに、ボンネットを閉じた時に、ファンシュラウドの上端に圧接するようにボンネットの裏面に閉塞部材を備え、エンジンと放熱器との間に冷却水を循環させてエンジンを冷却する農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンを備える農業機械においては、エンジンの放熱によって熱せられた空気が、比較的低温の空気のあるラジエータ側に流入させないようにすることが課題となってきた。ラジエータ側の空気温の上昇がもたらす問題としては、(1)ラジエータの冷却効率を低下させてしまうこと、(2)、吸気パイプから取り込まれる空気の酸素濃度が薄くなり、エンジンの燃焼効率を低下させてしまうことであった。
この2つの課題を解決するため、従来より、図9に示すように、トラクタ(農業機械)101の上部ボンネット102U、下部ボンネット102Lの裏面に、ボンネットを閉じた状態でファンシュラウド103(内部には冷却ファン108を備える)の上端に圧接するように、それぞれウレタン(閉塞部材)105、シール材105Sを備える対策がとられてきた。すなわち、ウレタン105によって、ファンシュラウド103上端と上部ボンネット102Uとの隙間を閉塞するとともに、シール材105Sによって、ファンシュラウド103の側面と下部ボンネットとの隙間を閉塞し、ファンシュラウド103を境として、ラジエータ(放熱器)104側の空気にエンジン側の空気を混在させないように遮断するものである。
【0003】
しかし、ファンシュラウド103の上端には、エンジンへ吸気するための吸気パイプ106が配置されているため、ボンネット102を閉じると、この吸気パイプ106周辺では、ウレタン105が吸気パイプ106の形状に完全に追随することができず、ウレタン105とファンシュラウド103との間に隙間107を生じてしまう。このため、エンジン側の高温の空気がラジエータ104側に流入し、ラジエータ104側の空気の温度が上昇してしまうという課題は依然として十分には解決されていなかった。これに加えて、ウレタン105が吸気パイプ106を押しつぶし、吸気パイプ106の断面積を減少させてしまい、エンジンへの吸気量の減少を招いてしまうという問題が生じた。
【0004】
これらの課題に対して、ファンシュラウドの上端に円弧状の切り欠きを設けて、その切り欠きに吸気パイプを挿入する発明が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−93664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような構成のトラクタでは、切り欠きの形状が円弧状であるため、吸気パイプの円形の断面形状と合致せず、切り欠きと吸気パイプとの間の隙間を完全に埋めることができない。したがって、ラジエータ側とエンジン側との空気の遮断という課題は未だ、十分には達成されたとは言い難い。
【0007】
また、切り欠きと吸気パイプとの隙間をなくすために、切り欠きの形状に追随するように吸気パイプの断面積を変形させると、吸気パイプの断面積の減少を引き起こし、エンジンへの吸気量の減少を招いてしまうという問題を生じる。
【0008】
そこでこの発明の目的は、エンジン側への吸気を適切に行うとともに、放熱器側とエンジン側との空気を遮断する農業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため請求項1に記載の発明は、吸気口から取り込んだ空気で作動するエンジンと、該エンジンの前方に配置する放熱器と、該放熱器と前記エンジンとの間に配置して前記放熱器を冷却する冷却ファンと、該冷却ファンを覆うファンシュラウドとをボンネット内に備えるとともに、該ボンネットを閉じた時に、前記ファンシュラウドの上端に圧接するように前記ボンネットの裏面に閉塞部材を備え、前記エンジンと前記放熱器との間に冷却水を循環させて前記エンジンを冷却する農業機械において、
前記ファンシュラウドの上端から下方に向かって板状に延出するファンシュラウド板部に、吸気パイプの外周と同一形状の嵌合孔を設け、該嵌合孔に前記吸気パイプを嵌合させて前記吸気口を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の農業機械において、前記嵌合孔の内周と前記吸気パイプとの隙間を閉塞する密閉部材を配設することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の農業機械において、前記ファンシュラウドを前記放熱器に隣接して備えるとともに、該放熱器の上に前記冷却水を保持する冷却水タンクを備え、前記吸気口を前記冷却水タンクと前記ファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、前記吸気口の上方に該吸気口を覆うように傘部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の農業機械において、前記ファンシュラウドを前記放熱器に隣接して備えるとともに、該放熱器の上に前記冷却水を保持する冷却水タンクを備え、前記吸気口を前記冷却水タンクと前記ファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、該冷却水タンクと前記ファンシュラウドとの間の構造的な隙間を塞ぐシール部材を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の農業機械において、前記シール部材は、前記放熱器の前方に向かって傾斜して備えられることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の農業機械において、前記ファンシュラウドの上端が前記ボンネットの裏面の形状に略沿うように形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の農業機械において、前記放熱器の上に前記冷却水を保持する冷却水タンクを備え、前記吸気口を前記冷却水タンクと前記ファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、前記冷却水タンクの上面に断熱部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、吸気口から取り込んだ空気で作動するエンジンと、エンジンの前方に配置する放熱器と、その放熱器とエンジンとの間に配置して放熱器を冷却する冷却ファンと、その冷却ファンを覆うファンシュラウドとをボンネット内に備えるとともに、ボンネットを閉じた時に、ファンシュラウドの上端に圧接するようにボンネットの裏面に閉塞部材を備える。そして、ファンシュラウドの上端から下方に向かって板状に延出するファンシュラウド板部に吸気パイプの外周と同一形状の嵌合孔を設け、その嵌合孔に吸気パイプを嵌合させて吸気口を形成するので、嵌合孔と吸気パイプとの間に隙間を生じることがない。これにより、ファンシュラウドを境として、エンジン側の熱い空気と放熱器側の比較的低温の空気とを効果的に遮断することができ、放熱器側にエンジン側の熱い空気が侵入することを防ぐ。したがって、この構成によって放熱器側の空気温度を比較的低温に保持することができ、放熱器の冷却効率を高めることができる。加えて、空気温度の上昇による酸素濃度の低下も防止することができ、吸気口よりエンジンへ適切な酸素濃度の空気を送ることができる。また、吸気パイプが嵌合する嵌合孔は、吸気パイプの外周と同一の形状にファンシュラウド板部をくり抜いて設けるので、吸気パイプの断面形状を維持することができる。これによって、エンジン側へ適量の吸気を行うことができる。以上より、エンジン側への吸気を適切に行うとともに、放熱器側とエンジン側との空気を遮断する農業機械を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、嵌合孔の内周と吸気パイプとの隙間を閉塞する密閉部材を配設するので、嵌合孔と吸気パイプとの間の隙間をいっそう防ぐことができる。これによって、ファンシュラウドを境として、エンジン側の熱い空気と放熱器側の比較的低温の空気とをいっそう効果的に遮断することを可能とし、この構成によって放熱器側とエンジン側との空気をいっそう効果的に遮断する農業機械を提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ファンシュラウドを放熱器に隣接して備えるとともに、放熱器の上に冷却水を保持する冷却水タンクを備え、吸気口を冷却水タンクとファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、吸気口の上方に吸気口を覆うように傘部を備えるので、冷却水タンクに冷却水を補充する際に誤って冷却水をこぼした場合にも、傘部が吸気口とその周辺を保護し、こぼれた冷却水が吸気口に吸い込まれることを防止する。また、傘部は、吸気口近傍に冷却水が滞留することも防止することができる。したがって、吸気口が不本意に冷却水を吸い込んで、エンジンに水分を多量に含んだ空気を送り、エンジンの燃焼効率を低下させることを防ぐ。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、ファンシュラウドを放熱器に隣接して備えるとともに、放熱器の上に冷却水を保持する冷却水タンクを備え、吸気口を冷却水タンクとファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、冷却水タンクとファンシュラウドとの間の構造的な隙間を塞ぐシール部材を備えるので、冷却水タンクに冷却水を補充する際に誤って冷却水をこぼした場合にも、こぼれた冷却水が冷却水タンクとファンシュラウドとの間に滞留することを防止できる。これによって、吸気口が不本意に冷却水を吸い込んで、エンジンに水分を多量に含んだ空気を送り、エンジンの燃焼効率を低下させることを防ぐ。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、シール部材は、放熱器の前方に向かって傾斜して備えられるので、冷却水タンクに冷却水を補充する際に誤って冷却水をこぼした場合にも、傾斜に沿って流下し、こぼれた冷却水が冷却水タンク上に滞留することをいっそう防止することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、ファンシュラウドの上端がボンネットの裏面の形状に略沿うように形成されているので、ボンネットとファンシュラウドとの間の空気の遮断性の向上に寄与することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、放熱器の上に冷却水を保持する冷却水タンクを備え、吸気口を冷却水タンクとファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、冷却水タンクの上面に断熱部材を備えるので、吸気口近傍の空気が冷却水タンクの輻射熱で加熱されることを防止でき、空気を比較的低温に保持したままで、エンジン側に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の農業機械の一例としてのトラクタの斜視図である。
【図2】その要部拡大図である。
【図3】図1のX−X矢視断面図である。
【図4】図3のY−Y矢視断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】ウレタン(閉塞部材)とウェザーストリップの位置を説明するための概略側面図である。
【図7】ファンシュラウド周辺の概略側面図である。
【図8】この発明の別の実施例の要部拡大断面図である。
【図9】従来の農業機械としてのトラクタの要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。この発明のトラクタ(農業機械)Tは、図1,2に示すように、吸気口1から取り込んだ空気で作動する不図示のエンジンと、そのエンジンの前方に配置するラジエータ(放熱器)Rと、ラジエータRとエンジンとの間に配置してラジエータRを冷却する冷却ファンと、冷却ファンを覆うファンシュラウドFSなどをボンネットB内に格納してなる。ラジエータRの上下にはそれぞれ冷却水を保持するアッパータンク(冷却水タンク)UTとロワータンクとを備える。ラジエータRは、複数のチューブとチューブをはさんで備えられる多数のフィンとで構成される。チューブはアッパータンクUTとロワータンクとをつなぎ、鉛直方向に配置される。フィンは放熱効果を高めるため水平方向に突出した山型形状の連続で形成される。なお、ラジエータR、アッパータンクUT、ロワータンクはファンシュラウドFSに隣接して設けられる。アッパータンクUTとロワータンクにはそれぞれパイプが設けられ、それらのパイプはエンジンへと延出している。アッパータンクUTの上部中央には冷却水を供給するための供給口を備え、その上端にキャップCを嵌め付ける。
【0025】
一方、ファンシュラウドFSの上部には吸気口1が設けられる。吸気口1には吸気パイプ2の一端が嵌合される。吸気パイプ2の他端は不図示のエアクリーナに接続している。そして、吸気口1から取り込んだ空気は、吸気パイプ2によってエアクリーナへ送られ、そこからエンジンへと供給される。また、吸気口1の上部には傘部4を設ける。傘部4は板状の部材を円弧状に湾曲して形成したものである。
【0026】
図3,4に、この実施例の要部を示す。ボンネットBは、上部ボンネットUBと下部ボンネットLBとから構成され、上部ボンネットUBの裏面には、ウレタン(閉塞部材)Sを備える。ウレタンSは、ボンネットBを閉じたときに、ファンシュラウドFSの上端SUに押圧しながら接するように設けられる。なお、ファンシュラウドFSの上端SUは、上部ボンネットUBの裏面の形状に略沿うように形成されている。一方、下部ボンネットLBの裏面には、ゴム製の封止部材であるウェザーストリップWSを備える。このウェザーストリップWSは、ウレタンSの下端に連続するように設けられる。なお、ファンシュラウドFS内には冷却ファンFを備える。
【0027】
そして、ファンシュラウドFSの上端SUから下方に向かって板状に鉛直に延出するファンシュラウド板部SBに吸気口1を形成する。詳しくは、吸気口1は、アッパータンクUT上端よりも上側で、かつ、ファンシュラウドFSの上端SUよりも下側に形成される。
【0028】
吸気口1は、丸孔(嵌合孔)3に吸気パイプ2を嵌め合わせることにより構成される。丸孔3は、ファンシュラウド板部SBの上部を吸気パイプ2の外周と同一形状、すなわち、吸気パイプ2の外径と同一寸法、同一形状にくり抜いて形成する。このとき、丸孔3や吸気パイプ2の製造誤差によって丸孔3と吸気パイプ2との間に隙間ができてしまう場合がある。このような場合には、丸孔3と吸気パイプ2とが気密性をもって嵌合するように、吸気パイプ2の外周に沿って薄いクッションシート(密閉部材)5を設ける。すなわち、クッションシート5によって、丸孔3の内周と吸気パイプ2との隙間を高度に密閉する。
【0029】
そして、吸気口1の上方に吸気口1を覆うように傘部4を備える。傘部4は吸気口1の外周のほぼ上半分を覆うように円弧状に設けられる。この傘部4はファンシュラウドFSに形成されたブラケットなどにボルトなどで取り付ける。
【0030】
また、図5に示すように、アッパータンクUTとファンシュラウドFSの前板S1との間に形成されている構造的な隙間をシール部材CEで塞ぐ。シール部材CEの上面UはラジエータRの前方に向かって水平からθの角度をもって下向きに傾斜して設けられる。なお、このシール部材CEは、アッパータンクUTとファンシュラウドFSとの隙間に充填するように形成する。
【0031】
ウレタンSとウェザーストリップWSとは、図6に示すように配置されている。すなわち、ウレタンSは、ボンネットBを閉じたときに、ファンシュラウドFSの上端SUおよび、ファンシュラウドFSの上部側面に押圧しながら接するように構成されている。また、ウェザーストリップWSは、ウレタンSの下端に連続するように、下部ボンネットLB内に設けられる。このウェザーストリップWSはファンシュラウドFSの側面を下方に向かって直線的に設けられ、ファンシュラウドFSの下部、すなわち、下部ボンネットLBの下端に沿うようにしてトラクタTの前方に向かって設けられている。ウェザーストリップWSは、ボンネットBを閉じたときに、ファンシュラウドFSの側面に押圧しながら接するように設けられる。そして、ウレタンSとウェザーストリップWSによってファンシュラウドFSの前後の空気を遮断する。すなわち、ウレタンSとウェザーストリップWSによってエンジン側からラジエータR側への空気の侵入を遮断する。
【0032】
このように構成されたトラクタTのエンジンを始動すると、吸気口1からエンジンに向けて空気を取り込む。このとき、吸気口1はファンシュラウドFSに丸孔3をくり抜いて形成するので、吸気パイプ2がボンネットBを閉じることによって変形されることがなく、吸気パイプ2の断面形状を最適な状態に保持することができ、エンジンに向けて適切な吸気をすることができる。
一方、エンジンの始動後、一定時間すると、冷却ファンFが回転して、空気をエンジン側に送るとともに、ラジエータRの前面側より空気を吸引する。一方、比較的低温の冷却水がロワータンクからパイプを介してエンジン外周へと送られる。エンジン外周部では、冷却水がエンジンと熱交換を行う。そして、高温になった冷却水は別のパイプを介してアッパータンクUTへと送られる。そして、ラジエータRにて熱交換されて冷却され、ロワータンクに供給される。なお、冷却水がラジエータRを通過する際には、冷却ファンFがラジエータRの前面側から比較的低温の空気を吸引し、その空気がラジエータRを通過する際にラジエータRのフィンを冷却することで熱交換の効率を高めている。このとき、ファンシュラウドFSを境としてエンジン側とラジエータR側とは気密性をもって区切られているので、エンジン側の熱い空気はラジエータR側に流入することがなく、ラジエータR側を比較的低温に保つことができる。したがって、ラジエータRを効率的に冷却することができるし、吸気口1からエンジンへ取り込む空気も加熱されることがない。
【0033】
ところで、ラジエータRに冷却水を補充する際には、エンジン停止時にアッパータンクUPに設けられたキャップCを開けて供給口より補充する。このとき、供給口より冷却水を誤ってこぼしてしまったとしても、傘部4が設けられているので、吸気口1に冷却水が入り込むことがない。さらに、アッパータンクUTとファンシュラウドFSとの構造的隙間にはシール部材CEが設けられているので、こぼれた冷却水は、アッパータンクUTとファンシュラウドFSとの隙間に滞留することなく、アッパータンクUTの下方へと流れ落ちる。これによって、アッパータンクUT近傍にこぼれた冷却水が滞留して、それが、吸気口1から吸引されてエンジンに送られることを防止することができる。
【0034】
ところで、この例のトラクタTには、図7に示すように、ラジエータR、ファンシュラウドFS、バッテリー(蓄電池)BTを固定して載置する支持台10を備える。支持台10には段差Gが設けられ、前部が低くなっている。支持台10の低い位置にはバッテリーBTを取り付ける。そして、高い位置には、ラジエータRとファンシュラウドFSを取り付ける。なお、支持台10は車体フレームFRに取り付けられる。支持台10は後部において水平面からαの角度をもって下方に屈曲して、整流部10aを形成する。
【0035】
バッテリーBTを段差GをもってラジエータRよりも低く配置することで、バッテリーBTがラジエータR前面を覆う面積が減少し、ラジエータR前方からの吸気を効率よく行うことができるようになる。また、整流部10aを設けることで、冷却ファンFから送り出される空気の流れをスムーズにすることができる。そして、段差Gを設けることによって創出されたスペースSPには、トラクタTに常備するウエイトやドレインコックなどを収納することができる。
【0036】
なお、図8に示すように、アッパータンクUTの上面に断熱部材Iを備えるように構成してもよい。アッパータンクUTは、エンジンより送られてくる熱せられた冷却水が保持されるため熱を放射する。したがって、アッパータンクUT周辺の空気は暖められてしまうことになり、この温まった空気(酸素濃度の薄い空気)が吸気口1から取り入れられると、エンジンの燃焼効率低下させてしまう。断熱部材Iは、これを防止するために設けられるものである。この断熱部材Iは、吸気能力を低下させないように、吸気口1を覆い隠すことのないように設けられることが望ましい。
【0037】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されるものではない。たとえば、この実施例では、丸孔3と吸気パイプ2とが高い気密性をもって嵌合するように、吸気パイプ2の外周に沿ってクッションシート(密閉部材)5を設けたが、クッションシート(密閉部材)5は用いずに、丸孔3に吸気パイプ2を直接嵌合するように構成してもよい。
【0038】
また、上述の実施例では、吸気口1を、ファンシュラウド板部SBの、アッパータンクUT上端よりも上側で、かつ、ファンシュラウドFSの上端SUよりも下側に設けたが、これに限定されるものではなく、ファンシュラウドFSがラジエータRやアッパータンクUTなど他の装置と隣接しない部分であればどこに設けてもよい。たとえば、ラジエータRの横側に設けてもよいし、アッパータンクUTの横側に設けてもよい。また、吸気口1をアッパータンクUTの上側に設ける場合であっても、吸気口1の断面のすべてがアッパータンクUT上端よりも上側となるように設けられることに限定されず、少なくとも、吸気口1の上端部がアッパータンクUT上端よりも上側に設けられればよい。
【0039】
さらに、シール部材CEは、アッパータンクUTとファンシュラウドFSとの隙間を充填するタイプに限定されず、アッパータンクUTとファンシュラウドFSとの隙間を板状の部材で覆うように構成してもよい。
【0040】
また、ファンシュラウドFSの上端SUの形状は、上部ボンネットUBの裏面の形状に略沿うように形成されることに限定されない。
【0041】
さらに、傘部4はボルトでファンシュラウドFSに固定することに限定されるものではなく、ファンシュラウドFSに他の方法で固定するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
なお、この発明の農業機械は、トラクタに限定されるものではなく、エンジンを有するあらゆる農業機械(たとえば、田植機、コンバインなど)に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 吸気口
2 吸気パイプ
3 丸孔(嵌合孔)
4 傘部
5 クッションシート(密閉部材)
10 支持台
10a 整流部
B ボンネット
BT バッテリー
C キャップ
CE シール部材
F 冷却ファン
FR 車体フレーム
FS ファンシュラウド
G 段差
I 断熱部材
LB 下部ボンネット
R ラジエータ(放熱器)
S ウレタン(閉塞部材)
SB ファンシュラウド板部
SP スペース
SU 上端
S1 前板
T トラクタ(農業機械)
UB 上部ボンネット
UT アッパータンク(冷却水タンク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口から取り込んだ空気で作動するエンジンと、該エンジンの前方に配置する放熱器と、該放熱器と前記エンジンとの間に配置して前記放熱器を冷却する冷却ファンと、該冷却ファンを覆うファンシュラウドとをボンネット内に備えるとともに、該ボンネットを閉じた時に、前記ファンシュラウドの上端に圧接するように前記ボンネットの裏面に閉塞部材を備え、前記エンジンと前記放熱器との間に冷却水を循環させて前記エンジンを冷却する農業機械において、
前記ファンシュラウドの上端から下方に向かって板状に延出するファンシュラウド板部に、吸気パイプの外周と同一形状の嵌合孔を設け、該嵌合孔に前記吸気パイプを嵌合させて前記吸気口を形成することを特徴とする、農業機械。
【請求項2】
前記嵌合孔の内周と前記吸気パイプとの隙間を閉塞する密閉部材を配設することを特徴とする、請求項1に記載の農業機械。
【請求項3】
前記ファンシュラウドを前記放熱器に隣接して備えるとともに、該放熱器の上に前記冷却水を保持する冷却水タンクを備え、前記吸気口を前記冷却水タンクと前記ファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、前記吸気口の上方に該吸気口を覆うように傘部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の農業機械。
【請求項4】
前記ファンシュラウドを前記放熱器に隣接して備えるとともに、該放熱器の上に前記冷却水を保持する冷却水タンクを備え、前記吸気口を前記冷却水タンクと前記ファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、該冷却水タンクと前記ファンシュラウドとの間の構造的な隙間を塞ぐシール部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載の農業機械。
【請求項5】
前記シール部材は、前記放熱器の前方に向かって傾斜して備えられることを特徴とする、請求項4に記載の農業機械。
【請求項6】
前記ファンシュラウドの上端が前記ボンネットの裏面の形状に略沿うように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の農業機械。
【請求項7】
前記放熱器の上に前記冷却水を保持する冷却水タンクを備え、前記吸気口を前記冷却水タンクと前記ファンシュラウドの上端との間に設けた農業機械であって、前記冷却水タンクの上面に断熱部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載の農業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−260444(P2010−260444A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112897(P2009−112897)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】