説明

近接スイッチ

【課題】低周波近傍電磁界の接近により生じる近接スイッチの誤動作を抑制しつつ、遊技球の通過を検出する。
【解決手段】コイルL1は、遊技球の通過を検出する。高周波発振回路11は、検出コイルL1を含み、高周波を発振する。波高値設定回路13は、検出コイルL1に発生した発振波の波高を第1の所定値に設定する。比較回路15−1は、第1の所定値より低位に設定される、第2の所定値を弁別電位とし、高周波発振回路11により発振された波高値とを比較し、比較結果を出力する。比較回路15−2は、第1の所定値より高位に設定される、第3の所定値を弁別電位とし、高周波発振回路11により発振された波高値とを比較し、比較結果を出力する。出力回路16−1は、比較回路15−1の比較結果を外部に出力する。本発明は、遊技機に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接スイッチに関し、特に、遊技球の通過の検出に誤動作を生じさせる低周波近傍電磁界を、誤動作する前のタイミングで検出し、誤動作を防止できるようにした近接スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機では、遊技球を検出する遊技球検出スイッチが複数搭載されており、遊技球が主要な入賞口、およびゲートを通過した場合、検出信号を制御回路に出力する。
【0003】
この遊技球検出スイッチにおける主流は、直流2線式の近接スイッチである。直流2線式の近接スイッチは、2線式の開放、または閉塞動作の形態で動作することにより、有接点スイッチと同じイメージで使用することができ、さらに、金属球を非接触で検出するため、耐久性に優れるといった優位性が評価されていることから、他原理を用いた遊技球検出スイッチより多用されている。
【0004】
しかしながら、近接スイッチは、電子回路により構成されていることから、この電子回路であるという構成により生じる弱点を突く不正行為が発覚したことが過去にはあった。 例えば、遊技者が不正目的で、トランシーバや携帯電話をパチンコ遊技機に故意に接近させることにより、電波をパチンコ遊技機に対して照射し、遊技球検出スイッチが、電波により機能障害に陥り、賞球のカウントが不正に操作されてしまうことがあった。
【0005】
また、近接スイッチの原理に起因した弱点として、相互干渉現象が存在する。この相互干渉現象は、近接スイッチの検出コイル部に、共振周波数に等しい外乱波が飛来した場合、コイルの発振波と外乱波が合成し、検出不能となる現象である。尚、ケースとしては、別体の近接スイッチの発振振幅が低周波ノイズと化し、互いに影響し合う場合と、遊技者が不正目的で近接スイッチの検出コイルと同類の別体コイルを近接スイッチの近傍まで忍ばせ、これを発振駆動させる場合とが存在する。
【0006】
そこで、前述の機能障害発生以前に電波を検出する技術として、電波センサをパチンコ遊技機毎に設置し、プリント基板のパターンにてアンテナを形成し、フェライトコアで磁束集中を図ることで、所望感度を確保することにより、遊技盤面に向けて照射された不正電波を検出するが、携帯電話の発信電波などでは検出動作を停止させるべく、LC直列共振回路にて不感帯域を設定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
一方、相互干渉対策としては、通常発振波高より高位に閾値を持つ比較回路を増設し、相互干渉発生状況をモニターする技術も開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−222959号公報
【特許文献2】特開平5−221104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、最近の研究により、パチンコ遊技機の金属部分に重畳している、比較的低周波の交流ノイズにより、遊技球検出スイッチが、機能障害を起こす事象が認識されている。この交流ノイズは、遊技球検出スイッチに設けられたLC共振回路の共振周波数近傍の帯域で顕著となり、自然発生したノイズ帯域のマッチングの問題となる。一般的にLC共振回路の共振周波数は、500khz乃至1.2Mhzに設定されるが、この共振周波数の帯域は、電波帯域より低い低周波近傍電磁界領域の帯域に属する。実際、特許文献1で開示されている従来の電波センサの検出帯域は、50Mhz乃至2Ghzであり、帯域不一致による検出もれが生じる恐れがあった。
【0010】
これに加えて、従来の検出方式は、検出波を検波する方式であり、ノイズ波高値そのものを弁別しているため、感度不足となる恐れがあった。特に、共振周波数と、交流ノイズの周波数が完全に一致した場合、干渉波の悪影響は甚大であり、電波センサが反応する以前に、遊技球検出スイッチが誤動作する恐れがあった。この対策として、後段弁別回路の閾値を極限まで小さくし、微小ノイズも逃がさない手法も考えられるが、静電気放電など、他の外乱要因の耐力も同時に低下する恐れがあった。
【0011】
また、特許文献2で開示されている技術の場合、物体が離反している場合の発振波高が、固体ばらつきにより、一義的に定まらない欠点がある。つまり、物体接近を判定する低位側閾値と、相互干渉発生を判定する高位側閾値との間に、前述の物体離反時の発振波高が存在しない限り成り立たない。
【0012】
従って、固体ばらつきが大きく出た場合、相互干渉モニターは常時作動する状態となり、逆に固体ばらつきが小さく出た場合、相互干渉が発生しているにも係らず、相互干渉モニターが非作動の状態となるといった原理的な問題が発生する恐れがあった。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、パチンコ遊技機内部に発生する低周波近傍電磁界によって、遊技球の通過を検出する近接スイッチに機能障害が生じる前のタイミングで、低周波近傍電磁界を検出することにより、低周波近傍電磁界を適切に監視し、近接スイッチの機能障害を抑制できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面の近接スイッチは、パチンコ遊技機に搭載され、遊技球の通過を検出する近接スイッチであって、前記遊技球の通過を検出する検出コイルと、前記検出コイルと共に、高周波発振波を発振する高周波発振回路と、前記検出コイルに発生した発振波の波高を第1の所定値に設定する発振波高設定回路と、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より低位に設定される第2の所定値とを比較し弁別する第1の弁別回路と、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より高位に設定される第3の所定値とを比較し弁別する第2の弁別回路と、前記第1の弁別回路の弁別結果を出力する出力回路とを含む。
【0015】
前記発振波高設定回路は、前記検出コイルと直列に接続されたLC共振回路とすることができ、前記LC共振回路の共振周波数を、前記高周波発振回路にて発生する高周波発振波の周波数より低い値に設定し、かつ両者の差分量にて前記第1の所定値を設定させるようにすることができる。
【0016】
前記発振波高設定回路は、前記高周波発振回路に付加された直流電流源とすることができ、前記電流源の電流値設定により、前記第1の所定値を設定させるようにすることができる。
【0017】
前記第2の弁別回路の弁別結果を出力する異常警戒信号出力回路をさらに含ませるようにすることができる。
【0018】
本発明の一側面においては、検出コイルにより遊技球の通過が検出され、高周波発振回路により、前記検出コイルと共に、高周波発振波が発振され、発振波高設定回路により前記検出コイルに発生した発振波の波高が第1の所定値に設定され、第1の弁別回路により、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より低位に設定される第2の所定値とが比較されて弁別され、第2の弁別回路により、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より高位に設定される第3の所定値とが比較されて弁別され、前記第1の弁別回路の弁別結果が出力される。
【0019】
本発明の一側面の近接スイッチにおける、遊技球の通過を検出する検出コイルとは、例えば、遊技球が通過する貫通口の周辺に巻回されたコイルであり、前記検出コイルと共に、高周波発振波を発振する高周波発振回路とは、例えば、トランジスタ、定電流源、および電源より構成される高周波発振回路であり、前記検出コイルに発生した発振波の波高を第1の所定値に設定する発振波高設定回路とは、例えば、並列のLC共振回路からなる波高値設定回路であり、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より低位に設定される第2の所定値とを比較し弁別する第1の弁別回路とは、例えば、遊技球の通過を検出する弁別回路であり、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より高位に設定される第3の所定値とを比較し弁別する第2の弁別回路とは、例えば、低周波近傍電磁界の接近を検出する弁別回路であり、前記第1の弁別回路の弁別結果を出力する出力回路とは、例えば、遊技機の動作の全体を制御する制御部に遊技球の通過を示す信号を出力する出力回路である。
【0020】
また、高周波発振回路は、検出コイルに対して低周波近傍電磁界が非照射であって、かつ、遊技球が通過した場合、発振停止となる負性コンダクタンスに設定されている。また、検出コイルに対して低周波近傍電磁界が非照射であって、かつ、遊技球が通過しない場合、高周波発振回路は、発振波高設定回路により設定された第1の所定値の波高値での発振状態に変化する。さらに、前記検出コイルに対して前記低周波近傍電磁界が照射の場合、遊技球の通過の有無とは無関係に、高周波発振回路は、第3の波高値よりも高い波高値での発振状態に変化する。
【0021】
このような構成により、近接スイッチの動作に影響を与える低周波近傍電磁界が照射されると、高周波発振回路に供給される電位の振幅が、共振周波数帯域の近傍のみで第3の波高値よりも際立って大きくなり、低周波近傍電磁界の照射がなく、遊技球が通過しないとき第1の波高値となる。
【0022】
結果として、第1の所定値よりも低位の第2の所定値を弁別電位とする弁別回路により、低周波近傍電磁界の照射が無い場合、遊技球の通過があるときは高周波発振がなされず、遊技球の通過が検出され、遊技球の通過がないときは第2の所定値よりも高い第1の所定値の波高値となる信号により、遊技球の不通過を検出することが可能となる。また、第1の所定値よりも高位の第3の所定値を弁別電位とする比較回路により、低周波近傍電磁界が照射されると、高周波発振回路が第3の波高値よりも高い波高値で発振することにより、低周波近傍電磁界の照射を検出することが可能となり、低周波近傍電磁界が検出されているときの、遊技球の通過の検出結果を、例えば、無効にすることで、遊技球の通過の検出の誤動作を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、近接スイッチに到来する低周波近傍電磁界を適切に監視することが可能になると共に、低周波近傍電磁界の接近により生じる近接スイッチの誤動作を抑制することが可能となり、遊技機に対する不正を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した近接スイッチの構成例を説明する図である。
【図2】図1の近接スイッチにおける波高値調整回路の動作を説明する図である。
【図3】図1の近接スイッチにおける低周波近傍電磁界の接近に伴う波高値の変化を説明する図である。
【図4】図1の近接スイッチによる遊技球検出処理を説明するフローチャートである。
【図5】低周波近傍電磁界が照射されていない場合の図1の近接スイッチによる遊技球検出処理を説明する図である。
【図6】低周波近傍電磁界が照射された場合の図1の近接スイッチによる遊技球検出処理を説明する図である。
【図7】その他の近接スイッチの構成例を示す図である。
【図8】図7の近接スイッチにおける波高値調整回路の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、発明の詳細な説明に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、発明の詳細な説明に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の詳細な説明中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0026】
すなわち、本発明の一側面の近接スイッチは、パチンコ遊技機に搭載され、遊技球の通過を検出する近接スイッチ(例えば、図1または図7の近接スイッチ1)であって、前記遊技球の通過を検出する検出コイル(例えば、図1または図7のコイルL1)と、前記検出コイルと共に、高周波発振波を発振する高周波発振回路(例えば、図1または図7の高周波発振回路11)と、前記検出コイルに発生した発振波の波高を第1の所定値に設定する発振波高設定回路(例えば、図1または図7の波高値設定回路13)と、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より低位に設定される第2の所定値とを比較し弁別する第1の弁別回路(例えば、図1または図7の弁別回路15−1)と、前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より高位に設定される第3の所定値とを比較し弁別する第2の弁別回路(例えば、図1または図7の弁別回路15−2)と、前記第1の弁別回路の弁別結果を出力する出力回路(例えば、図1または図7の出力回路16−1)とを含む。
【0027】
前記第2の弁別回路の弁別結果を出力する異常警戒信号出力回路(例えば、図1または図7の出力回路16−2)をさらに含ませるようにすることができる。
【0028】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(並列共振回路からなる波高値設定回路を用いた例)
2.第2の実施の形態(NPNミラー回路からなる波高値設定回路を用いた例)
【0029】
<1.第1の実施の形態>
[本発明を適用した近接スイッチの一実施の形態の構成例]
図1は、本発明を適用した近接スイッチの構成例を示している。
【0030】
図1においては、低周波近傍電磁界および遊技球2の通過を検出する近接スイッチ1と、それらを制御する制御部3および発報出力部4とを含むパチンコ遊技機の一部を示している。
【0031】
近接スイッチ1は、コイルL1を通過する遊技球2の通過の有無を検出し、検出信号を制御部3に通知すると共に、低周波近傍電磁界の到来をコイルL1からの誘導電圧により検出し、低周波近傍電磁界の到来の有無を示す検出信号を制御部3に通知する。コイルL1は、遊技球2の径と略同径に構成されており、検出すべき遊技球2は、コイルL1の空洞内部を通過する構成となっている。
【0032】
制御部3は、遊技球2の通過を示す検出信号の通知に応じて遊技球2を計数する。また、制御部3は、低周波近傍電磁界の到来を示す通知に応じて、発報出力部4より低周波近傍電磁界の到来を発報すると共に、遊技球2の検出信号を、異常信号とみなして無効とする。このような動作により、近接スイッチ1は、低周波近傍電磁界により遊技球の検出を強制的に誤動作させるような不正行為を防止しつつ、遊技球2の通過を検出する。
【0033】
コイルL1は、遊技球2の通過に伴って誘起電圧を発生する共に、いわばアンテナとして機能し、低周波近傍電磁界に晒されるとき、やはり誘起電圧を発生する。近接スイッチ1は、このコイルL1が低周波近傍電磁界に晒されるとき、または遊技球が通過するとき発生する誘起電圧の波高値を検出し、遊技球の通過、または低周波近傍電磁界の到来を検出する。
【0034】
近接スイッチ1は、高周波発振回路11、共振回路12、波高値設定回路13、積分回路14、抵抗Re,R1乃至R3、弁別回路15−1,15−2、および出力回路16−1,16−2を備えている。
【0035】
高周波発振回路11は、定電流源I0、定電圧回路V0、NPN型のトランジスタTr1、PNP型トランジスタTr2乃至Tr3より構成されており、電流帰還ハートレイ発振回路である。高周波発振回路11は、共振回路12、および波高値設定回路13により生成される電位Vinの発振周波数に基づいて、高周波信号を発振し、後段の積分回路14を介して、弁別回路15−1,15−2に出力する。また、高周波発振回路11には、後述する高周波発振回路11のコンダクタンスを調整するための抵抗Reが接続されている。
【0036】
次に、高周波発振回路11を構成する回路の接続について説明する。
【0037】
定電圧回路V0の負端子は、コンデンサC1の一方の端部、およびコイルL1の一方の端部に接続されており、正端子は、定電流源I0の他方の端部、およびトランジスタTr1,Tr4のベースに接続されている。定電流源I0は、一方の端部が電源Vccに接続されており、他方の端部がトランジスタTr1,Tr4のベース、および定電圧回路V0の正端子に接続されている。
【0038】
トランジスタTr1のベースは、定電流源I0の他方の端部、定電圧回路V0の正端子、およびトランジスタTr4のベースに接続され、コレクタは、トランジスタTr2,Tr3のベース、およびトランジスタTr2のコレクタに接続され、さらに、エミッタは、抵抗Reの一方の端部に接続されている。
【0039】
トランジスタTr2のベースとコレクタは結束されており、トランジスタTr3のベース、トランジスタTr1のコレクタに接続されており、エミッタは、電源Vccに接続されている。
【0040】
トランジスタTr3のベースは、トランジスタTr2のベース、およびコレクタ、並びに、トランジスタTr1のコレクタに接続され、エミッタは、電源Vccに接続され、さらに、コレクタは、コイルL1の他方の端部、コンデンサC2の一方の端部、およびコイルL2の一方の端部に接続されている。
【0041】
共振回路12は、波高値設定回路13と共に入力電位Vinを発生する。共振回路12のコイルL1の一方の端部は、コンデンサC1の一方の端部、定電圧回路V0の負端子に接続され、コイルL1の他方の端部は、コンデンサC2の一方の端部、コイルL2の一方の端部、およびトランジスタTr3のコレクタに接続されている。コンデンサC1の一方の端部は、コイルL1の一方の端部、および定電圧回路V0の負端子に接続されている。コンデンサC1の他方の端部は、接地電位GNDに接続されている。
【0042】
波高値設定回路13のコンデンサC2の一方の端部は、コイルL1の他方の端部、コイルL2の一方の端部、およびトランジスタTr3のコレクタに接続されている。コンデンサC2の他方の端部は、接地電位GNDに接続されている。
【0043】
コイルL2の一方の端部は、コイルL1の他方の端部、コンデンサC2の一方の端部、およびトランジスタTr3のコレクタに接続されている。コイルL2の他方の端部は、接地電位GNDに接続されている。
【0044】
積分回路14は、NPN型のトランジスタTr4、ダイオードD1、コンデンサC3、および抵抗R4から構成されている。積分回路14は、高周波発振回路11より出力された入力電位Vinの波高値を検波して弁別回路15−1の正端子、および弁別回路15−2の負端子に出力する。積分回路14のトランジスタTr4のベースは、定電流源I0の他方の端部、定電圧回路V0の正端子、およびトランジスタTr1のベースに接続されており、エミッタは、ダイオードD1のアノードに接続されており、コレクタは、電源Vccに接続されている。
【0045】
ダイオードD1のアノードは、トランジスタTr4のエミッタに接続され、カソードは、コンデンサC3の一方の端部、抵抗R4の一方の端部、弁別回路15−1の正端子、および弁別回路15−2の負端子に接続されている。
【0046】
コンデンサC3の一方の端部は、ダイオードD1のカソード、抵抗R4の一方の端部、弁別回路15−1の正端子、および弁別回路15−2の負端子に接続され、他方の端部は、接地電位GNDに接続されている。
【0047】
抵抗R4の一方の端部は、ダイオードD1のカソード、コンデンサC3の一方の端部、弁別回路15−1の正端子、および弁別回路15−2の負端子に接続され、他方の端部は、接地電位GNDに接続されている。
【0048】
抵抗R1乃至R3は、電源電圧Vccを分圧して、後述する波高値設定回路13により設定される電位Vthより低位の電位V1を弁別回路15−1の負端子に出力し、電位Vthより高位の電位V2を弁別回路15−2の正端子に出力する。抵抗R1の一方の端部は、電源Vccに接続されており、他方の端部は、抵抗R2の一方の端部、および弁別回路15−2の正端子に接続されている。抵抗R2の一方の端部は、抵抗R1の他方の端部、および弁別回路15−2の正端子に接続されており、他方の端部は、抵抗R3の一方の端部、および弁別回路15−1の負端子に接続されている。抵抗R3の一方の端部は、抵抗R2の他方の端部、および弁別回路15−1の負端子に接続されており、他方の端部は、接地電位GNDに接続されている。
【0049】
弁別回路15−1は、電源Vccより電力供給を受けると共に接地されており、積分回路14を介して高周波発振回路11より供給される発振出力と、電圧V1とを比較して、比較結果を出力回路16−1に供給する。出力回路16−1は、電源Vccより電力供給を受けると共に接地されており、弁別回路15−1の比較結果に基づいて、遊技球の通過を検出し、検出結果を信号Vout1として制御部3に出力する。
【0050】
弁別回路15−2は、電源Vccより電力供給を受けると共に接地されており、積分回路14を介して高周波発振回路11より供給される発振出力と、電圧V2とを比較して、比較結果を出力回路16−2に供給する。出力回路16−2は、電源Vccより電力供給を受けると共に接地されており、弁別回路15−2の比較結果に基づいて、低周波近傍電磁界を検出し、検出結果を信号Vout2として制御部3に出力する。
【0051】
尚、高周波発振回路11は、遊技球通過状態において発振停止状態に設定されており、遊技球が通過しない状態のとき発振状態に移行するように設定されている。より詳細には、共振回路12のコンダクタンスgL1と、高周波発振回路11のコンダクタンスgi1とは、ナイキストの発振条件に基づいて、以下の式(1)の場合、高周波発振回路11が発振停止状態となり、式(2)の場合、高周波発振回路11が常時発振状態となる。
【0052】
gL1>gi1
・・・(1)
【0053】
gL1<gi1
・・・(2)
【0054】
ここで、gi1は、以下の式(3)で表される。
【0055】
gi1≒hfe×A0/((2+hfe)×Re)
・・・(3)
【0056】
式(3)において、A0は、トランジスタTr2,Tr3のコレクタ電流比を、hfeは、トランジスタTr2,Tr3の電流増幅率を、Reは、抵抗Reの抵抗値をそれぞれ表している。
【0057】
感度調整抵抗である抵抗Reの抵抗値の調整により、高周波発振回路11のコンダクタンスgi1が、共振回路12のコンダクタンスgL1よりも小さくなるように、すなわち、抵抗Reを大きめに設定し、高周波発振回路11のコンダクタンスgi1を小さめに設定する。
【0058】
この結果、上述した式(1)の関係が維持できるように構成されるので、遊技球が通過している状態、かつ、低周波近傍電磁界に検出電極1が晒されていない状態においては、高周波発振回路11が発振停止状態となる。このとき、高周波発振回路11は発振動作を行っていないため、弁別回路15−1,15−2には、閾値よりも小さな値が供給されることになるので、弁別回路15は、発振動作がなされていないことを示す信号を出力回路16−1,16−2に供給する。結果として、出力回路16−1,16−2は、それぞれ遊技球の通過を検出していることを示す信号、および低周波近傍電磁界に晒されていないことを示す信号を制御部3に出力する。
【0059】
一方、遊技球が通過しておらず、かつ、低周波近傍電磁界に晒されていない状態では、弁別回路15−1の弁別閾値V1よりも高位の波高値Vthの定常発振波が発生しているため、弁別回路15−1には、閾値よりも大きな値が供給されることにより、波高値Vthの発振動作がなされている信号を出力回路16−1に供給する。また、弁別回路15−2の弁別閾値V2は、波高値Vthより高位であり、弁別回路15−2では、弁別閾値V2よりも小さな波高値Vthの信号が引き続き供給されるため、出力回路16−2の状態変化はない。尚、波高値Vthの定常発振状態となる動作原理については詳細を後述する。
【0060】
また、コイルL1が、低周波近傍電磁界に晒されることにより、遊技球の通過の有無に関わらず、高周波発振回路11は、発振飽和状態に陥り、積分回路14には、電源電圧Vccの発振波が供給される。このため、弁別回路15−1,15−2は、いずれも発振動作がなされていることを示す信号を出力回路16−1,16−2に供給する。結果として、出力回路16−1は、遊技球が通過していないことを示す信号を、出力回路16−2は、低周波近傍電磁界に晒されていることを示す信号を、それぞれ制御部3に出力する。
【0061】
[共振回路12と波高値設定回路13との関係について]
次に、図2を参照して、共振回路12と波高値設定回路13との関係について説明する。共振回路12を構成するコンデンサC1およびコイルL1と、波高値設定回路13を構成するコンデンサC2およびコイルL2とは、それぞれの静電容量とインダクタンスとが調整されており、波高値設定回路13で発生する固有の発振波が、共振回路12で発生する固有の発振波よりも低周波で、かつ、振幅が小さくなるように設定されている。
【0062】
より具体的には、コンデンサC2の静電容量は、コンデンサC1の静電容量よりも大きく設定され、かつ、コイルL2のインダクタンスは、コイルL1のインダクタンスよりも小さく設定されている。
【0063】
このように設定されることにより、共振回路12により固有に発生される発振波が、例えば、図2の波形図aで示されるような波形Vxである場合、波高値設定回路13により固有に発生される発振波は、図2の波形図bで示されるような波形Vyとなる。尚、波形図a,bについては、横軸が時間軸であり、縦軸が波高値であり、相互に略同一スケールとしたイメージを示したものである。
【0064】
すなわち、図1の高周波発生回路11、共振回路12、および波高値設定回路13の等価回路は、図2の回路図cで示されるような構成であるので、発振入力波形Vinは、図2の波形図dで示されるように、波形Vx,Vyの合成波形となる。この合成波形である発振波形Vinは、1波形毎に僅かながら異なる波高値Vth’およびVth”を取るが、相互に略同一の波高値Vth(≒Vth’≒Vth”)であって、かつ、波形Vx,Vyの波高値の中間値となる。さらに、周波数は略同一の周波数となる。
【0065】
波高値設定回路13は、このような特性を利用して、コンデンサC2の静電容量とコイルL2のインダクタンスを調整することにより、発振入力波形Vinの波高値Vthを調整して、抵抗R1乃至R3により、電源Vccが分圧されることにより設定される電圧V1,V2の略中央値となるように設定している。
【0066】
[異常検出動作について]
次に、図3を参照して、図1の近接スイッチ1の異常検出動作について説明する。尚、図3においては、上部および下部共に、縦軸が入力電圧Vinの波高値(振幅値)であり、横軸が入力電圧Vinの周波数fである。
【0067】
異常として検出される低周波近傍電磁界に晒されていない場合、入力電圧Vinは、図3の上部で示される曲線W1のように、遊技球2が通過していない場合、上述したナイキスト発振条件が式(1)の状態から式(2)の状態に遷移することにより発生される誘起電圧の共振周波数f1近傍においてのみ、上述した波高値設定回路13のコイルL2のインダクタンスおよびコンデンサC2の静電容量に基づいて設定される波高値Vthで発振する。
【0068】
このような特性に基づいて、弁別回路15−1の弁別閾値が波高値Vthよりも低位の電圧V1に設定されているので、弁別回路15−1は、遊技球2の通過の有無を判定することが可能となっている。
【0069】
一方、異常として検出される低周波近傍電磁界に晒されている場合、入力電圧Vinの波高値は、図3の下部で示される曲線W2のように、低周波近傍電磁界により誘起される電圧の共振周波数f1近傍において、波高値Vthを超えて、電源電圧Vccにまで達する。
【0070】
すなわち、入力電圧VinがトランジスタTr1のベース−エミッタ間電圧Vbeから定電圧回路V0の電圧値を減算した電圧値(Vbe−V0)を超えると、トランジスタTr1がオンの状態となることにより、カレントミラー接続されたトランジスタTr2,Tr3がオンの状態となり、トランジスタTr2,Tr3のコレクタ−エミッタ間に両電流値が等しい電流が流れる。このとき、トランジスタTr3のコレクタ−エミッタ間の電流は、正帰還電流として流れるため、通常、定電流源I0による電流I0のみで駆動していた共振回路12に、トランジスタTr3のコレクターエミッタ間電流が重畳して流れる。
【0071】
このような動作により、入力電圧Vinの波高値は、図3の下部で示される曲線W2のように、入力電圧Vinが電圧値(Vbe−V0)を超える共振周波数f1付近の極近傍においては、曲線W1よりも極端に大きな値へと変化し、入力電圧Vinの波高値Vthを超え、さらに、電源Vccの電圧に達するまでに増大する。
【0072】
このような特性に基づいて、弁別回路15−2の弁別閾値が波高値Vthよりも高位の電圧V2に設定されているので、弁別回路15−2は、低周波近傍電磁界の到来を判定することが可能となっている。また、弁別回路15−2の弁別閾値が波高値Vthよりも高位の電圧V2に設定されることにより、低周波近傍電磁界に晒されていない場合、入力電圧Vinの波高値は、波高値Vthであるため、弁別回路15−2は、何も検出しない状態となる。
【0073】
[遊技球検出処理]
次に、図4のフローチャートを参照して、図1の近接スイッチ1による遊技球検出処理について説明する。尚、弁別回路15−1は、遊技球の通過を検出したとき(正端子の入力電圧が負端子の入力電圧よりも低いとき)Lowの信号を出力し、通過を検出していないとき(正端子の入力電圧が負端子の入力電圧よりも高いとき)Hiの信号を出力する。これに応じて、出力回路16−1は、遊技球の通過を検出したときHiの検出信号Vout1を出力し、検出していないときLowの検出信号Vout1を出力するものとする。
【0074】
また、弁別回路15−2は、低周波近傍電磁界を検出していないとき(正端子の入力電圧が負端子の入力電圧よりも高いとき)Hiの信号を出力し、低周波近傍電磁界を検出したとき(正端子の入力電圧が負端子の入力電圧よりも低いとき)Lowの信号を出力する。これに応じて、出力回路16−2は、検出していないときLowの検出信号Vout2を出力し、低周波近傍電磁界を検出したときHiの検出信号Vout2を出力する。
【0075】
ステップS1において、制御部3は、検出信号Vout2に基づいて、異常が検出されているか否かを判定する。例えば、検出信号Vout2がLowであり、低周波近傍電磁界の検出を示さない場合、処理は、ステップS2に進む。
【0076】
ステップS2において、制御部3は、Vout1の検出信号に基づいて、遊技球の通過が検出されたか否かを判定する。今の場合、低周波近傍電磁界が検出されていないので、入力電圧Vinは、例えば、図5で示されるような波形となる。尚、図5,図6においては、上段から、入力電圧Vin、検出信号Vout1、および検出信号Vout2のそれぞれの波形を示している。
【0077】
例えば、図5における時刻t0乃至t1,t2乃至t3,t4乃至t5(図示せず),・・・の場合、すなわち、遊技球が通過していない場合、上述した式(2)で示されるように、共振回路12のコンダクタンスgL1が小さく、高周波発振回路11のコンダクタンスgi1が大きいため、高周波発振回路11は、常時発振状態となる。このとき、波高値は、波高値設定回路13により電圧V1,V2の略中央値である電圧Vthに設定されているため、弁別回路15−1においては、遊技球の通過が検出されていないHiの信号が出力され、弁別回路15−2においては、低周波近傍電磁界が検出されていないHiの信号が出力される。この結果、出力回路16−1,16−2は、それぞれ遊技球の通過を検出していないことを示す検出信号Vout1としてLowの信号、および、低周波近傍電磁界を検出していないことを示す検出信号Vout2としてLowの信号を出力する。
【0078】
結果として、制御部3は、検出信号Vout1に基づいて、遊技球は通過していないものとみなし、処理は、ステップS1に戻る。
【0079】
一方、例えば、図5における時刻t1乃至t2,t3乃至t4・・・の場合、すなわち、遊技球が通過している場合、上述した式(1)で示されるように、共振回路12のコンダクタンスgL1が大きく、高周波発振回路11のコンダクタンスgi1が小さいため、高周波発振回路11は、発振停止状態となる。このため、弁別回路15−1においては、遊技球の通過を検出しているLowの信号が出力され、弁別回路15−2においては、低周波近傍電磁界が検出されていないHiの信号が出力される。この結果、出力回路16−1,16−2は、それぞれ遊技球の通過を検出していることを示す検出信号Vout1としてHiの信号、および、低周波近傍電磁界を検出していないことを示す検出信号Vout2としてLowの信号を出力する。
【0080】
結果として、制御部3は、検出信号Vout1に基づいて、遊技球は通過しているものとみなし、ステップS3において、遊技球を1個カウントし、処理は、ステップS1に戻る。
【0081】
一方、ステップS1において、低周波近傍電磁界の接近により、異常が検出された場合、ステップS4において、制御部3は、発報部3aを制御して、LCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示機能や、スピーカなどの音声出力機能などを備えた発報出力部4より低周波近傍電磁界の接近により異常が検出されたことを発報させる。
【0082】
例えば、図6の時刻t12以降で示されるように、低周波近傍電磁界が到来すると、上述したように入力電圧Vinは、電源電圧Vccにまで上昇することにより、電圧V2を超えた値となる。このとき、高周波発振回路11は、発振飽和状態となり、波高値が電圧V2を超えるため、弁別回路15−1においては、遊技球の通過を検出していないHiの信号が出力され、弁別回路15−2においては、低周波近傍電磁界が検出されているLowの信号が出力される。この結果、出力回路16−1,16−2は、それぞれ遊技球の通過を検出していないことを示す検出信号Vout1としてLowの信号、および、低周波近傍電磁界を検出していることを示す検出信号Vout2としてHiの信号を出力する。
【0083】
結果として、制御部3は、検出信号Vout2に基づいて、低周波近傍電磁界が検出されているものとみなし、ステップS4において、異常が検出されたことを示す発報動作を実行させる。
【0084】
すなわち、低周波近傍電磁界が検出されている状態における動作は、例えば、悪意を持った第三者により低周波近傍電磁界が発生されている異常動作であるものとみなし、その間に遊技球の検出信号として出力されてくる検出信号Vout1を無効な信号であるものとして扱う。
【0085】
尚、図6においては、時刻t14乃至t15において、遊技球2が通過している場合を示しているが、低周波近傍電磁界の接近により、入力電圧Vinの波高値がVccにまで達している。このため、低周波近傍電磁界が接近した場合、弁別回路15−1は、常に遊技球2の通過を検出しないHiの信号を出力し、対応して出力回路16−1は、出力信号Vout1として遊技球2を検出していないことを示すLowの信号を出力し続ける。すなわち、出力回路16−1のHi信号、またはLow信号が、この例のように設定されている場合、出力回路16−1は、低周波近傍電磁界に晒されているとき、遊技球2の通過とは無関係に、遊技球2を検出していないことを示すLowの出力信号Vout1を出力し続けることになるので、検出信号Vout1を有効に読み込んでも、誤検出を抑制することは可能である。
【0086】
以上の処理により、近接スイッチ1に対して影響する可能性の高い低周波近傍電磁界を、遊技球の検出に対して影響する前のタイミングにおいて検出することが可能となる。また、低周波近傍電磁界が検出されると、低周波近傍電磁界による異常が発生したことが報知されると共に、遊技球の検出結果を無効にするといった対策をとることが可能となり、低周波近傍電磁界を用いた不正行為を防止することが可能となる。
【0087】
<2.第2の実施の形態>
[本発明を適用した近接スイッチの他の実施の形態の構成例]
以上においては、コイルとコンデンサとを含む並列共振回路からなる波高値設定回路13により、低周波近傍電磁界の接近を検出する閾値となる所定の電圧V2と、遊技球の通過を検出する閾値となる所定の電圧V1との中間値となるように入力電圧の波高値を電圧Vthに調整する例について説明してきたが、電圧V1,V2の中間電圧として波高値が設定できればよいので、必ずしも並列共振回路からなるものでなくともよく、例えば、NPNミラー回路からなる波高値設定回路を用いるようにしても良い。
【0088】
図7は、NPNミラー回路からなる波高値設定回路を用いるようにした近接スイッチ1の構成例を示している。尚、図1と同様の機能を備えた構成については、同一の符号を付しており、その説明は適宜省略するものとする。
【0089】
図7の近接スイッチ1において、図1の近接スイッチ1と異なる点は、調整抵抗Re、および波高値設定回路13に代えて、波高値設定回路31を設けた点である。
【0090】
波高値設定回路31は、カレントミラー接続されたNPN型のトランジスタTr11,Tr12、および可変抵抗R11から構成されている。
【0091】
トランジスタTr11のベースは、可変抵抗R11の他方の端部、並びに、トランジスタTr12のベース、およびコレクタに接続され、エミッタは接地電位GNDに接続され、コレクタは、トランジスタTr1のエミッタに接続されている。
【0092】
トランジスタTr12のベースおよびコレクタは、相互に結束され、可変抵抗R11の他方の端部、およびトランジスタTr11のベースに接続され、エミッタは接地電位GNDに接続されている。
【0093】
可変抵抗R11は、一方の端部が電源電位Vccに接続され、他方の端部がトランジスタTr12のベースおよびエミッタ、並びに、トランジスタTr11のベースに接続されている。
【0094】
[波高値設定回路31について]
波高値設定回路31は、トランジスタTr11,Tr12がカレントミラー接続されているため、可変抵抗R11の抵抗値と、トランジスタTr12のベースエミッタ間電圧Vbeに応じて、トランジスタTr12のコレクタ−エミッタ間の電流I1が決定され、さらに、トランジスタTr11のコレクタ−エミッタ間の電流I2が電流I1と同一となるように動作する。この結果、可変抵抗R11の抵抗値の調整によりトランジスタTr11,Tr12のコレクタ−エミッタ間の電流値が同一の値で制御されることになる。
【0095】
ところで、図1の近接スイッチ1の場合、図8の側面図aで示される、コイルL1の空洞部分の貫通面Fと遊技球2との距離uと波高値との関係は、図8のグラフbで示される関係となる。すなわち、距離uを横軸とし、入力電圧Vinの波高値Vinを縦軸にしたとき、調整抵抗Reの抵抗値で設定される高周波発振回路11のコンダクタンスgi1=1/Reとなる距離u1までは、発振停止条件となるため、波高値が略0の状態となり、距離u1より離れると、急激に所定の波高値Vsまで上昇する関係となっていた。
【0096】
一方、図7の近接スイッチ1の場合、コイルL1の貫通面Fと遊技球2との距離uと波高値Vinの関係は、図8のグラフcにおける、例えば、曲線Tの関係となる。この場合、距離uに対して高周波発振回路11の完全な発振停止条件がなくなり、かつ、波高値の変化が距離uに対して緩やかな曲線となる。このため、遊技球2がコイルL1の貫通面Fに達しても、波高値は、ゼロとならず、距離uが大きくなるに従って緩やかに上昇し、所定距離を越えると波高値は所定値となる。
【0097】
このとき、波高値設定回路31の可変抵抗R11の抵抗値を調整し、トランジスタTr12のコレクタ−エミッタ間の電流I1の値を増加させると、曲線Tは、図8のグラフcで示される曲線Tbのように変化する。すなわち、距離uに対する波高値Vinの変化を示す曲線は、より急峻な上昇波形となり、波高値の最大値が上昇すると共に、最大値に飽和するまでの距離が小さくなる。
【0098】
逆に、電流I1の値を減少させると、曲線Tは、図8のグラフcで示される曲線Tsのように変化する。すなわち、距離uに対する波高値Vinの変化を示す曲線は、距離uに対して、よりな緩やかな上昇波形となり、波高値の最大値が下降すると共に、最大値に飽和するまでの距離が大きくなる。
【0099】
このため、波高値設定回路31においては、可変抵抗R11の抵抗値を調整することにより、図8のグラフcで示されるように、曲線Tの波高値の最大値が、電圧V1,V2の略中央値となる電圧Vthとなるように設定することで、図1の近接スイッチ1と同様に、遊技球の通過と、低周波近傍電磁界の接近とを検出することが可能となる。
【0100】
尚、異常検出動作および遊技球検出処理については、図1の近接スイッチ1と同様の動作であるので、その説明は省略するものとする。
【0101】
以上の如く、本発明によれば、パチンコ遊技機に発生する低周波近傍電磁界によって、遊技球の検出に機能障害が生じる前のタイミングで、低周波近傍電磁界を検出することができるので、低周波近傍電磁界の適切な監視を可能にすると共に、近接スイッチの機能障害を適切に抑制することが可能となる。
【0102】
尚、本明細書において、フローチャートを構成する各ステップの処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【符号の説明】
【0103】
1 近接スイッチ
2 遊技球
3 制御部
4 発報出力部
11 高周波発振回路
12 共振回路
13 波高値設定回路
14 積分回路
15−1,15−2 弁別回路
16−1,16−2 出力回路
L1,L2 コイル
C1,C2 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチンコ遊技機に搭載され、遊技球の通過を検出する近接スイッチであって、
前記遊技球の通過を検出する検出コイルと、
前記検出コイルと共に、高周波発振波を発振する高周波発振回路と、
前記検出コイルに発生した発振波の波高を第1の所定値に設定する発振波高設定回路と、
前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より低位に設定される第2の所定値とを比較し弁別する第1の弁別回路と、
前記検出コイルと共に前記高周波発振回路により発振された高周波発振波の波高値と、前記第1の所定値より高位に設定される第3の所定値とを比較し弁別する第2の弁別回路と、
前記第1の弁別回路の弁別結果を出力する出力回路と
を含む近接スイッチ。
【請求項2】
前記発振波高設定回路は、前記検出コイルと直列に接続されたLC共振回路であり、前記LC共振回路の共振周波数を、前記高周波発振回路にて発生する高周波発振波の周波数より低い値に設定し、かつ両者の差分量にて前記第1の所定値を設定する
請求項1に記載の近接スイッチ。
【請求項3】
前記発振波高設定回路は、前記高周波発振回路に付加された直流電流源であり、前記電流源の電流値設定により、前記第1の所定値を設定する
請求項1に記載の近接スイッチ。
【請求項4】
前記第2の弁別回路の弁別結果を出力する異常警戒信号出力回路をさらに含む
請求項1乃至3のいずれかに記載の近接スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−49886(P2011−49886A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197276(P2009−197276)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】