近接センサ
【課題】検出面の肉厚を厚くし、かつ、鉄などの磁性金属により構成される取付金属に埋込んで設置しても検出感度の低下を防ぐことが可能な近接センサを提供する。
【解決手段】検出コイル6から側面部24への磁束FL1は取付金属の方向に誘導され、磁束FL1の一部が磁束FL3として取付金属51に達する。また、側面部24では磁束FL1により渦電流が生じ、その渦電流によって検出コイル6の方向に磁束FL2が発生するとともに、取付金属51に向けて磁束FL4が発生する。磁束FL2,FL4によって取付金属51では渦電流による損失が発生する。側面部24では磁束が通過しやすくなっているので側面部24での渦電流による損失は減少するものの取付金属51では損失が増加する。発振周波数ωを調整することで漏洩磁束による損失を取付金属51の有無に拘らず変化しないように調整することができる。
【解決手段】検出コイル6から側面部24への磁束FL1は取付金属の方向に誘導され、磁束FL1の一部が磁束FL3として取付金属51に達する。また、側面部24では磁束FL1により渦電流が生じ、その渦電流によって検出コイル6の方向に磁束FL2が発生するとともに、取付金属51に向けて磁束FL4が発生する。磁束FL2,FL4によって取付金属51では渦電流による損失が発生する。側面部24では磁束が通過しやすくなっているので側面部24での渦電流による損失は減少するものの取付金属51では損失が増加する。発振周波数ωを調整することで漏洩磁束による損失を取付金属51の有無に拘らず変化しないように調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属からなる被検出物の接近による磁界の損失を検出することによって、被検出物の接近を判別する近接センサに関する。特に、本発明はセンサを取付ける周囲金属体の影響による検出距離の変動を低減した近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近接センサ(または近接スイッチ)とは、検出対象の物体の移動や存在を検出して検出結果を電気信号として出力するセンサの総称である。近接センサの検出方式は各種あるが、たとえば電磁誘導によって金属の被検出物体に発生する渦電流を利用する方式がある。
【0003】
電磁誘導を利用した近接センサは、一般的にコイルを有する高周波発振回路を備えている。このような近接センサでは、被検出物体がない時に発振状態であり、被検出物体の到来に応じてコンダクタンスが増加して発振が弱まる(または停止する)方式と、被検出物体がない時に発振停止状態であり、被検出物体の到来に応じてコンダクタンスが低下して発振が開始する方式とが存在し、後段の回路処理により被検出物体の有無に応じたコンダクタンス変化を振幅(または周波数)検出して被検出物体の到来を検出することが可能になる。
【0004】
従来、近接センサのケースの検出面および側面は、SUS(Stainless Used Steel)材料の金属により構成されている。SUSは非磁性体であり、かつ、その導電率が低いため、発振回路の発振周波数を比較的低く設定することにより、検出面を磁束が通過することができる。よって近接センサは検出面の前方に存在する被検出物体(金属のワーク)を検出することができる。
【0005】
ケースの外径、すなわち検出面の直径によって、検出感度を最大にする(すなわち検出距離を長くする)発振周波数が異なる。検出面の直径が小さいほど高い発振周波数で検出感度が最大となり、逆に検出面の直径が大きいほど低い発振周波数で検出感度が最大となる。
【0006】
また、近接センサのケース強度を向上させるために検出面の肉厚を厚くすると、検出感度の低下、すなわち検出距離の低下が生じる。その理由は検出面の肉厚を厚くすることにより、磁束がケースの検出面を通過しにくくなるためである。
【0007】
図20は、近接センサの設置状態の一例を示す図である。
図20を参照して、近接センサ101の側面にはねじ山が設けられる。近接センサ101は、ねじ締めによって取付金属151に埋設した状態で取付けられる。また、検出面121と取付金属151の主表面とが同一平面になるように近接センサ101が取付けられる。多くの場合、取付金属151の材質としては強度やコストの点で鉄が採用されるのが一般的である。
【0008】
図21は、近接センサの設置状態の別の例を示す図である。
図21を参照して、検出面121が取付金属151の一方の主表面から突出している点で図20と異なっている。取付金属151より突出した部分に六角ナット152を取付けることで近接センサ101は固定される。
【0009】
図22は、近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
図22を参照して、図20と同様に、検出面121は取付金属151の一方の主表面と同一になるように近接センサ101が設けられる。ただし図22では、取付金属151に対して検出面121と反対側に近接センサ101を固定するための六角ナット152が設けられる。
【0010】
図23は、近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
図23を参照して、取付金属151の厚みは図22に示す取付金属151よりもさらに薄い。取付金属151を挟んで設けられる六角ナット152,153によって近接センサ101は固定される。
【0011】
上述のように、比較的低い発振周波数を選択することによって、非磁性体の金属からなる検出面を磁束が通過しやすくなる。つまりSUS材により構成されるケースは磁束を遮蔽する効果が弱い。このためケース側面から外に漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束が取付金属に磁性作用を与えることで、近接センサの検出距離が変化するという現象が発生する。
【0012】
検出距離に与える影響の大小は取付金属の材質により異なる。たとえば取付金属が真鍮やアルミのような非磁性体であり、かつ、導電率の高い材質であれば、検出距離が大きく低下する。
【0013】
取付金属がアルミや真鍮の場合、漏洩磁束に応じて発生した渦電流により、漏洩磁束に反発する磁束が発生する。この結果、ケース側面を鎖交する磁束が減少するためケース側面での損失が減少する。ケース側面での損失が減少することで検出コイルの損失も減少する。よって発振回路の出力(発振振幅)が大きくなる。この場合、被検出物体が近接センサに十分に接近しないと発振振幅は所定値まで低下しないため検出距離が大きく低下する。
【0014】
一方、取付金属が鉄等の磁性金属であれば、検出距離の低下を抑えることができる。この場合、漏洩磁束は取付金属の方向に誘導される。ケース側面での損失が減少しても、その損失は取付金属で発生する磁束によって補完されるので発振振幅の変動を抑えることができる。この結果、検出距離の低下を抑えることができる。
【0015】
しかしながら、被検出物体の材質は鉄であることが多い。よって、取付金属の材質として鉄を用いた場合には、被検出物体が実際に存在しなくても存在するかのようにセンサが反応するという問題が発生する。このような問題を防ぐための従来の方法について図を参照しながら説明する。
【0016】
図24は、検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の一例を示す図である。
図24を参照して、近接センサ101の断面を示す。ケース102の内部には、検出コイル106が巻かれたコア108、および、コア108を囲む遮蔽板154が設けられている。遮蔽板154は導電率の高い金属により構成される。遮蔽板154により検出コイル106からケース102への漏洩磁束を防ぐことで、取付金属による検出距離に対する影響を抑えることができ、これにより検出距離の低下を防ぐことができる。
【0017】
図25は、検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の別の例を示す図である。
【0018】
図25を参照して、ケース102の内面には格子状に溝が形成される。これによりケース102での渦電流を小さくすることができるので検出距離の低下を防ぐことができる。
【0019】
図26は、検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【0020】
図26を参照して、コア108の周囲には、たとえばフェライト等の高い透磁率を有し、かつ損失が少ない材料で構成されたリング155が設けられる。リング155によってコア108の側方の磁束がリング155に誘導される。これによって取付金属151への漏洩磁束を防ぐことができるので検出距離の低下を防ぐことができる。
【0021】
図27は、検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【0022】
図27を参照して、コア108の側方に補助コイル156が設けられる。この補助コイル156により発生する逆向きの磁束が検出コイル106より発生する漏洩磁束を取付金属からそれた方向に誘導することで検出距離の低下を防ぐことができる。
【0023】
図24の技術の採用例として、たとえば特許第3023311号明細書(特許文献1)はステンレスで形成されたケースと鉄で形成された取付部材とを備える近接センサを開示する。
【0024】
また、図27の技術の採用例として、たとえば特許第2603628号明細書(特許文献2)ではセンサコイルを配備したコアの検出両端部外周に補助コイルを設けた近接センサを開示する。
【特許文献1】特許第3023311号明細書
【特許文献2】特許第2603628号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上述のようにケースの検出面の肉厚を厚くすると検出距離が短くなる。つまり検出面の肉厚と検出距離とはトレードオフの関係にある。センサの最大感度付近の発振周波数を選択することによって、ある程度の長さの検出距離を確保できる。しかし、取付金属の材質が鉄の場合にはセンサの感度を高くするほど取付金属の影響が大きくなる。よって、選択する発振周波数によっては検出距離が極端に短くなったりあるいは極端に大きくなったりする。
【0026】
図21や図23に示すように、取付金属から検出面を突出させて近接センサを取付けることで取付金属の影響を低減できる。しかしながら取付金属から検出面を突出させるためにはある程度のスペースを確保する必要がある。さらにスペースを確保できない場合には近接センサを取付けることができなくなる。
【0027】
また、被検出物体が移動する際に軌道が不安定なため、被検出物体が上下する場合がある。よって近接センサの検出面を取付金属から突出させると、被検出物体が近接センサの検出面に接触したりあるいはケース側面に衝突したりする。これにより近接センサが故障しやすくなる。
【0028】
また、図24〜図27に示す従来技術の場合にはコストの点が問題となる。たとえば図24,26,27に示す従来技術の場合、部品の追加に伴うコスト上昇が生じる。また図25に示す従来技術の場合には、ケース内面の設計や加工に伴うコスト上昇が生じる。
【0029】
さらに、図27に示す従来技術の場合、個体間での調整が困難となる。また、コアの径が小さくなるため検出距離が短くなる。もともと検出面の直径が小さい近接センサにおいては補助コイルを入れること自体がスペースの面で困難となる。
【0030】
本発明の目的は、検出面の肉厚を厚くし、かつ、鉄などの磁性金属により構成される取付金属に埋込んで設置しても検出感度の低下を防ぐことが可能な近接センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は要約すれば、金属により構成される被検出物体の接近を検出する近接センサであって、コイルと、コイルに接続される発振回路と、発振回路の発振動作時におけるコイルのコンダクタンスの変化により、被検出物体がコイルに接近したことを検出する検出回路と、非磁性金属により構成され、少なくともコイルを収納するケースとを備える。発振回路の発振周波数は、ケースの周囲に磁性金属が存在する場合と磁性金属が存在しない場合とで、被検出物体とコイルとの距離の変化に対するコンダクタンスの変化率の差が、所定の範囲に収まるように設定される。
【0032】
好ましくは、ケースは、被検出物体とコイルとの間に設けられる検出面を含む。検出面は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される。
【0033】
より好ましくは、検出面の材質は、ステンレスである。
さらに好ましくは、ケースは、少なくとも検出面とコイルとを囲んで設けられる側面部をさらに含む。側面部は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される。
【0034】
さらに好ましくは、側面部の材質は、ステンレスである。
好ましくは、コンダクタンスの変化率は、以下の式により表わされる:
(g110%−g100%)/g100%×100
ただし、g100%は、被検出物体と近接センサとの検出距離が所定の距離のときのコンダクタンスの値であり、g110%は、検出距離が所定の距離の1.1倍のときのコンダクタンスの値である。
【0035】
より好ましくは、g100%の値は、10マイクロジーメンスと150マイクロジーメンスとの間の値である。
【0036】
さらに好ましくは、g100%の値は、30マイクロジーメンスと100マイクロジーメンスとの間の値である。
【0037】
より好ましくは、コイルの幅および高さは、コイルの幅に対するコイルの高さの比と、所定の距離との積が所定値以上になるように定められる。
【0038】
より好ましくは、発振周波数は、上記の式に従うコンダクタンスの変化率の絶対値が最大となるときの周波数よりも低くなるように設定される。
【発明の効果】
【0039】
本発明の近接センサによれば、取付金属が鉄などの磁性体の場合にも検出距離を低下させることなく検出面を取付金属の主表面と同一になるように取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0041】
図1は、本実施の形態の近接センサの外形図である。
図1を参照して、近接センサ1は本体を収納するケース2と、信号用ケーブル5とを備える。後述するように、ケース2において検出面21側には検出コイルが収納される。また、ケース2の外周には取付金属への設置のため、ねじ山23が形成される。信号用ケーブル5は、近接センサ1の検出結果、すなわち電気信号を出力するために設けられる。
【0042】
図2は、図1の近接センサ1の断面を示す模式図である。なお、断面方向は図1の紙面に平行である。
【0043】
図2を参照して、ケース2は取付金属51にねじ締めにより固定される。取付金属51は鉄等の磁性金属である。ケース2の内部には検出コイル6、コア8、および回路基板10が設けられる。なお、ケース2の内部に少なくとも検出コイル6が設けられていればよく回路基板10がケース2の外部に設けられていてもよい。
【0044】
ケース2は検出コイル6に対向して設けられる検出面21と、少なくとも検出面21と検出コイルとを囲むように設けられる側面部24とを含む。
【0045】
検出面21および側面部24はともに非磁性金属により構成される。検出面21を非磁性金属でかつ体積抵抗率が大きいものにより構成することで検出コイル6からの磁束が検出面21を通過しやすくなるので近接センサ1の感度を高くすることができる。また側面部24を非磁性金属により構成することで、取付金属51が鉄等の磁性金属の場合に近接センサ1の感度低下を防ぐことができる。
【0046】
なお、非磁性体は一般的にその比透磁率(同じ磁界強度における物質の透磁率と真空の透磁率の比)μが実質的に1である(たとえばSUS303の比透磁率は約1.03である)が、体積抵抗率は材質により異なる。本実施の形態では検出面21に用いられる非磁性金属として体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上であることが好ましい。このような特性を満たす材質としては、たとえばチタンやSUS303等の非磁性ステンレスなどが挙げられる。ただし強度およびコストの点で検出面21の材質にはステンレスが好ましい。
【0047】
また、側面部24に用いられる金属も比透磁率μが実質的に1であり、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上であることが好ましい。つまり、側面部24の材質は検出面21の材質と同じであることが好ましい。検出面21と側面部24に同じ材料を用いることで検出距離の低下を防ぐことができるとともに、コストを低減することができる。本実施の形態では検出面21および側面部24の材質にはSUS303が用いられる。
【0048】
検出コイル6はコア8に巻回される。コア8はたとえばE形のフェライトコアであり、検出コイル6に発生する磁束を前方(検出面21側)に誘導する。
【0049】
図3は、図2の回路基板10の構成を示す図である。
図3を参照して、回路基板10には、発振回路31、検出回路32、および出力回路(OUT)33が搭載される。検出回路32は検波回路34と比較回路35とを含む。
【0050】
発振回路31は検出コイル6に接続される。発振回路31は被検出物体の到来しない状態で発振している。検波回路34は発振回路31の発振信号を直流信号に変換する。比較回路35は検波回路34が出力する直流信号を予め設定された基準レベルと比較する。
【0051】
発振回路31の発振動作時に図2に示す被検出物体Aが検出面21(および検出コイル6)に接近すると、検出コイル6が発生する磁束が被検出物体Aにより生じる渦電流の影響を受ける。このため発振回路31の発振振幅が小さくなる。よって検波回路34の出力のレベルが基準レベル以下となる。この状態での比較回路35の出力信号が出力回路33を介して外部に出力されることで、被検出物体の接近が検出される。このときの検出面21と被検出物体Aとの距離を図2では検出距離Dと示す。
【0052】
なお実際の製品では、検出回路32は発振振幅の変化を検出コイル6のコンダクタンスgの変化として検出する。つまり、検出回路32は検出コイル6のコンダクタンスの変化により、被検出物体Aが検出コイル6に接近したことを検出する。コンダクタンスgの値は以下の式(1)により表わされる。
【0053】
g=R/{R2+(ωL)2} …(1)
ここでRは検出コイル6の抵抗値、Lは検出コイル6のインダクタンス値、ωは発振回路31の発振周波数である。
【0054】
図4は、図2の近接センサ1に発生する磁束を説明する図である。
図4を参照して、図3の発振回路31の発振時に検出コイル6から被検出物体Aに向けて磁束FL0が発生する。このとき被検出物体Aには表皮効果が生じており検出距離Dは表皮深さに等しくなる。ここで表皮深さとは、検出コイルから発生した磁束が金属体に鎖交する際、金属体内に磁束が浸透し渦電流が流れる深さであるから、表皮深さSは以下の式(2)のように示される。
【0055】
S={2/(ω×μ×σ)}1/2 …(2)
ここでσは検出面21の導電率であり、μは検出面21の比透磁率である。よって、表皮深さSを大きくする(すなわち、検出距離Dを長くする)には発振回路31の発振周波数ωを低くするか、比透磁率μを下げるか、導電率σを低くする(すなわち体積抵抗率を高くする)かのいずれかを行なうことが有効になる。本実施の形態では特に、発振周波数ωを低くすること、および体積抵抗率を高くすることが行なわれる。
【0056】
検出コイル6から側面部24への磁束FL1(すなわち漏洩磁束)は取付金属51の方向に誘導され、磁束FL1の一部が磁束FL3として取付金属51に達する。また、側面部24では磁束FL1により渦電流が生じ、その渦電流によって検出コイル6の方向に磁束FL2が発生するとともに、取付金属51に向けて磁束FL4が発生する。磁束FL2,FL4によって取付金属51では渦電流による損失が発生する。側面部24では磁束が通過しやすくなっているので側面部24での渦電流による損失は減少するものの取付金属51では損失が増加する。発振周波数ωを調整することで漏洩磁束による損失を取付金属51の有無に拘らず変化しないように調整することができる。よって近接センサ1は取付金属51による影響を防ぐことができる。
【0057】
このように近接センサ1はその発振周波数を適切に設定することで、検出面21の肉厚が厚く、かつ、磁性金属により構成される取付金属に埋込まれた状態で取付けられても検出感度の低下を防ぐことが可能である。以下、近接センサ1の特性について、より詳細に説明する。
【0058】
図5は、図2の近接センサ1の磁場解析モデルを示す図である。
図5を参照して、図1の近接センサ1をその中心軸に沿って1/4カットした磁場解析モデルを示す。この解析モデルでは検出面21,側面部24,検出コイル6,コア8が示される。また、解析の便宜上、図5において取付金属51は取付金属51A,51Bに分解される。
【0059】
次に、図5の磁場解析モデルを用いてCAE(Computer Aided Engineering)解析した結果を図6〜図13を参照しながら説明する。なお、図6〜図9において、グラフの指標METAL1,TARGET,COIL,CORE,KANAGU2,KANAGU1は、それぞれ図5の取付金属51A,被検出物体A,検出コイル6,コア8,側面部24,検出面21を示す。また、図6〜図9では被検出物体A(TARGET)を鉄、検出面21(KANAGU1)および側面部24(KANAGU2)をステンレス、取付金属51B(METAL2)を空気と設定している。また、検出面21の取付金属51Aからの突出距離は0mmに設定している。また、このモデルにおける近接センサのサイズ規格(外形の大きさ)はM18サイズとする。
【0060】
図6は、取付金属51A(METAL1)が鉄の場合の有効電力の変化を示す図である。
【0061】
図6を参照して、検出コイル6からの磁束により近接センサを構成する部品の生じる損失が、発振周波数によってどのように変化するかが示される。検出コイル6の磁束が構成部品に鎖交することで生じる損失は有効電力(実際に消費される電力)に比例する。このため損失の変化を有効電力の変化とみなすことができる。
【0062】
図6に示されるように、取付金属51Aが鉄(磁性金属)の場合、発振周波数が低い領域では、取付金属51A、ケース2(検出面21および側面部24)、被検出物体Aの有効電力が増加する。すなわち検出距離が増加する。一方、発振周波数が高い領域ではこれらの有効電力は減少する。すなわち検出距離が減少する。
【0063】
このように有効電力が変化する理由は以下のように考えられる。すなわち、高い発振周波数では検出コイル6からの漏洩磁束が鉄に誘導されにくくなるため側面部24に生じる損失は増加する。取付金属51Aに鎖交して発生する渦電流により側面部24に鎖交する磁束を打ち消す反磁束が生じるが、その反磁束も大きくなる。よって側面部24に鎖交する磁束と反磁束とが相殺することでケース2の損失が減少する。
【0064】
図7は、取付金属51A(METAL1)がアルミの場合の有効電力の変化を示す図である。
【0065】
図7を参照して、発振周波数が低いほど検出面21および側面部24(KANAGU1,KANAGU2)での有効電力が負方向に増加する。言い換えると発振周波数が低いほど損失が減少して検出距離が短くなる。この理由はアルミの導電率が高いため、取付金属51Aで生じた渦電流による反磁束が側面部24で発生していた損失を打ち消す方向に働らき、その結果有効電力が減少するためである。より低い周波数ほど磁束が側面部24を通過し、取付金属51Aで生じた渦電流が大きくなるから、その効果は大きくなる。
【0066】
図6および図7から、取付金属51Aが鉄(磁性体)の場合、取付金属の有無による損失の変化を0、または0付近に設定することが可能な発振周波数が5kHz〜100kHzの範囲に存在することが分かる。これらの結果は、発振周波数を5kHz〜100kHzの範囲に設定すればセンサを取付金属(鉄)に設置しても検出距離の低下(すなわちセンサの検出感度の低下)を防ぐことができることを示す。
【0067】
図8は、取付金属51Aが存在しない場合に被検出物体が接近したときの損失の変化を示す図である。なお、「取付金属51Aが存在しない場合」とは図5のモデルにおいて取付金属51A(METAL1)を空気と設定した場合である。
【0068】
図8を参照して、被検出物体A(TARGET)が接近する前と接近した状態とで損失の変化が最大になるときに近接センサの感度は最大となる。図8に示されるように20kHz以下の発振周波数では、被検出物体Aの接近にともなって被検出物体Aの有効電力が増加するとともにケース2の有効電力が増加する。また、このときには検出コイル6自身の有効電力は減少する(負方向に増加する)。既に述べたように有効電力の増加とは損失の増加を意味する。また全体の損失の変化が最大になるときの発振周波数がセンサの感度が最大のときの発振周波数に等しい。
【0069】
図9は、発振周波数に対する全体の有効電力の変化を示す図である。
図9を参照して、図8での各構成部品の有効電力の合計がグラフに示される。図9から10kHz前後の発振周波数で有効電力の合計が最大になることが分かる。すなわち、外形の大きさがM18であるときは、センサの感度が最大のときの発振周波数は約10kHzである。
【0070】
図10は、被検出物体Aの接近に伴う検出コイル6のコンダクタンスgの変化率を示す図である。
【0071】
上述のように、実際の近接センサでは有効電力の変化を検出コイル6のコンダクタンスgの変化としてとらえ、コイルの発振振幅の変化を回路処理して検出する。そのためCAE解析で得られた有効電力等のパラメータの変化をコンダクタンスgの変化に置換えることができる。
【0072】
図10を参照して、被検出物体A(鉄)を近接センサ1の定格検出距離(本発明における「所定の距離」)から、その定格検出距離の10%だけ遠ざけたときの検出コイル6のコンダクタンスgの変化率を示す。
【0073】
ここで「定格検出距離」とは、たとえば製品規格により定められた検出距離を示す。また、本実施の形態では、図2に示す検出距離Dが定格検出距離のときから定格検出距離の10%だけ長くなったときのコンダクタンスの変化率(単位:%)をΔgと示す。Δgは以下の式(3)により定義される。
【0074】
Δg=(g110%−g100%)/g100%×100 …(3)
式(3)においてg100%は検出距離Dが定格検出距離のときのコンダクタンスの値であり、g110%は検出距離Dが定格検出距離の1.1倍のときのコンダクタンス値を示す。
【0075】
図10は検出面21の厚みtが0.2mm,0.5mm,0.8mmの各場合におけるΔgの発振周波数に対する変化を示す。なお、検出面21の厚みが0.8mmの場合の曲線が2つある(図10においてt=0.8,t=0.8Cと示す)が、これらの曲線は検出コイル6の線径が互いに異なる場合のΔgの変化を示している。
【0076】
ある発振周波数(たとえば30kHz)では、検出面21の厚みが増すほどΔgが小さくなる傾向にある。これは検出面21が厚いほど磁束が通りにくくなるためである。
【0077】
各曲線上の黒点に対応する発振周波数は、Δgの絶対値が最大(検出感度が最大)となる発振周波数を示す。検出感度が最大となる発振周波数は検出面21の厚みが増すほど低くなる。また、t=0.8およびt=0.8Cのときの曲線から、コイルの線径は同一の体積内で巻かれた場合、検出感度に殆ど影響を与えないことが分かる。
【0078】
図11は、取付金属51の有無によるコンダクタンス変化を示す図である。
図11を参照して、近接センサ1を取付金属51に取付けていないときに得られるコンダクタンスgに対して、近接センサ1を取付金属51に取付けたときに得られるコンダクタンスgの値の変化率を示す。
【0079】
図11では検出面21の厚みを0.2mm,0.5mm,0.8mmにそれぞれ設定している。各曲線上に示す黒い丸印に対応する発振周波数はコンダクタンス変化が0になる(コンダクタンス変化が最小である)ときの発振周波数であり、近接センサを取付金属に設けても検出距離の低下が発生しない発振周波数である。
【0080】
図11から、検出面21の厚みが増すほどコンダクタンス変化が0となる発振周波数は低くなることが分かる。また、発振周波数を低くすればコンダクタンス変化は正方向に増加し、発振周波数を低くすればコンダクタンス変化は負方向に増加する。この傾向は検出面21の厚みによらず共通する。
【0081】
コンダクタンスの変化率の増加および減少は検出距離の増加および減少をそれぞれ意味する。よって、図11の黒点に示す発振周波数を基準として、ケース2の周囲に磁性金属(取付金属)が存在する場合と磁性金属が存在しない場合とで、被検出物体とコイルとの距離の変化に対するコンダクタンス変化が所定の範囲内(たとえば0±0.5%)になるように発振周波数の範囲を定めることによって、近接センサを磁性金属に取付けても検出距離の低下を防いだり、検出距離の低下を製品規格内に収めたりすることが可能になる。
【0082】
なお、上述のように、本実施の形態において検出面21は高い体積抵抗率を有する非磁性体(たとえばSUS材)により構成される必要がある。以下、図12,13を示しながら、その理由を補足して説明する。
【0083】
図12は、検出面21がSUS材の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。
【0084】
図12を参照して、抵抗値R,インダクタンス値Lおよびコンダクタンスgの発振周波数に対する変化率をそれぞれ示す。図12において抵抗値Rの変化率とは、近接センサを取付金属に設置しない場合の抵抗値に対し、近接センサを取付金属に設置した場合の抵抗値がどれだけ変化したかを示す割合である。インダクタンス値Lおよびコンダクタンスgの各々の変化率についても同様である。
【0085】
検出面21がSUS材の場合にはコンダクタンスgの変化率が0%になる発振周波数発振周波数が20kHz〜40kHzの間で存在する。この傾向は図11と同様である。
【0086】
図13は、検出面が樹脂の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。図13を参照して、コンダクタンスgの変化率が0%となる発振周波数が0〜100kHzの範囲に存在しない。
【0087】
図12,図13から、本実施の形態においては取付金属による検出感度への影響を防ぐため、非磁性体であり、かつ、高い体積抵抗率を有する金属を検出面に用いる必要があることが具体的に示される。
【0088】
図14は、本実施の形態の近接センサにおいてコンダクタンスgの最適な範囲を示す図である。
【0089】
図14を参照して、被検出物体Aが定格検出距離に位置する状態でのコンダクタンスgの値と発振周波数との関係を示す。図14のグラフでは、検出面21の厚みが0.2mm,0.5mm,0.8mmのときのコンダクタンスgの変化を示す。検出面21の厚みが0.8mmの場合の曲線が2つある(t=0.8,t=0.8C)が、これらの曲線は図10と同様に、検出コイル6の線径が異なる場合のコンダクタンスの変化を示している。
【0090】
定格検出距離でのコンダクタンスgの値(すなわちg100%の値)は、近接センサ1の検出距離を調整するために重要な値である。消費電流を抑えるためにはコンダクタンスgの値自体が小さい方が望ましい。本実施の形態ではコンダクタンスgの範囲は10μSと150μSとの間に設定される。なおコンダクタンスgの範囲は30μSと100μSとの間にあるほうがより好ましい。ここで単位μSは「マイクロジーメンス」を示す。
【0091】
図14に示されるようにコンダクタンスgの値は発振周波数に依存し、検出面21の厚みによる影響は小さい。発振周波数は検出コイル6の線径を変えてコンダクタンスを調整することにより決定できる。その理由は、検出コイル6の線径を変えることで検出コイル6の巻数が変化してインダクタンス値が変わるためである。なお、コイルの線径を小さくすることでコンダクタンスgを減少させ、線径を大きくすることでコンダクタンスgを増加させることができる。
【0092】
以上、図10で示す検出感度、図11で示す取付金属の影響、および図14で示すコンダクタンスgの範囲の各条件を満たす発振周波数(たとえば10〜50kHzの範囲の周波数)を選択することにより、本実施の形態の近接センサは検出距離の最大化、取付金属(鉄材)の影響の極小化(鉄材に取付けたときの影響を受けない)および消費電流の低減を実現できる。上述の解析により得られたパラメータを用いて作成した近接センサの特性を説明する。
【0093】
図15は、実際に作成した近接センサの測定値を示す図である。
図15を参照して、外形の大きさがM18サイズのSUSケース(ケース検出面の厚みを0.8mmとした)を使用した近接センサの測定値としてΔgの値(図15において「Δg」と示す)、取付金属(鉄)の有無によるΔgの差(図15において「0mmでのg変化率」と示す)、および、コンダクタンスgの値を示す。
【0094】
この近接センサにおいては最適な発振周波数は約12kHzに設定される。その理由は、検出感度すなわちΔgの絶対値(約1.0%)が検出回路による検出可能な値(最低限検出可能な感度以上)であり、取付金属(鉄)の有無によるコンダクタンス変化(約0.5%)が最小値である0%に近く、定格検出距離でのコンダクタンスgの値(約70μS)が望ましい範囲(30〜100μS)内に収まるためである。
【0095】
図16は、取付金属の影響を実際に測定した結果を示す図である。
図16を参照して、取付金属からの検出面21の突き出し距離が0mmの場合、取付金属による検出距離の変化率は+3%程度と小さくなる。また、検出面21を取付金属51から4mmだけ突き出して、その突き出し部分にSUS303の六角ナットを取付けた場合(図21に示す取付状態の場合)には検出距離の変化は0%になる。このように、発振周波数を最適に設定することで近接センサ1では取付金属による検出距離への影響を低減できる。
【0096】
図17は、発振周波数を最適値から変化させたときの、取付金属からの検出面21の突き出し距離によるコンダクタンス変化率を示す図である。ここで最適値とはコンダクタンス変化が突き出し距離0mmのとき最小で、コンダクタンス値が所定範囲内、検出感度(Δg)が検出可能な範囲内になるときの発振周波数である。
【0097】
図17を参照して、発振周波数が最適値(この例にあっては約12kHz)より低くなるとコンダクタンスgが増加して検出距離が増加する。一方、発振周波数が高くなるとコンダクタンスgが減少して検出距離が減少する。このように図17の結果は図11に示すCAE解析結果の傾向と等しいといえる。図17から、発振周波数をΔgの絶対値が最大のときの発振周波数(この例では約15kHz)よりも低く設定しておけば、近接センサを取付金属(鉄)に設置した場合に、センサの取付金属からの検出面21の突き出し距離に対して所定範囲内の変化に抑えることが可能であるから、検出距離が低下したとしても、ある程度の検出距離を確保することができる。
【0098】
なお検出コイル6の設計の具体例を示す。本実施の形態では検出コイルの幅および高さは以下の式(4)に従って定められる。
【0099】
(定格検出距離)×(検出コイル6の高さ)/(検出コイル6の幅)≧(所定値) …(4)
すなわち、検出距離と、検出コイル6の幅に対する検出コイル6の高さの比との積が所定値以上になるよう、検出コイル6の幅および高さが定められる。検出コイル6の「幅」および「高さ」とは図2の検出コイル6の寸法a,bをそれぞれ示す。すなわち式(4)は、D×(b/a)≧(所定値)と示される。
【0100】
図18は、検出コイル6の設計値を一覧表で示す表である。
図18を参照して、ケース外形の大きさ(サイズ規格)ごとに、検出距離(A)、検出コイル6の高さ(B)、検出コイル6の幅(C)、および式(4)により得られた結果を示す。図18では式(4)により得られた結果が7より大きいことを示す。ただし、この所定値は7以外の値でもよく、近接センサに求められる性能に応じて適切に設定できる。
【0101】
なお、本実施の形態の近接センサは図2に示す構成を有するものと限定されない。本実施の形態の近接センサは、たとえば以下に示すような構成を有していてもよい。
【0102】
図19は、本実施の形態の近接センサの別の構成例を示す断面図である。
図19を参照して、近接センサ1は、検出面21と側面部24とが一部材として構成される。
【0103】
以上のように、本実施の形態によれば発振回路の発振周波数を、磁性金属により構成される取付金属がケースの周囲に存在する場合と存在しない場合とで、被検出物体とコイルとの距離の変化に対するコンダクタンスの変化率の差が所定の範囲内になるように選択する。これにより近接センサを取付金属に設置してもセンサの感度低下を抑えることができるので、センサの検出面を取付金属の主表面と同一面上に配置することが可能になり、被検出物体が側方から接近した際に近接センサへの衝突を防ぐことができる。よって近接センサの故障によるセンサの交換頻度を大幅に低減できる。
【0104】
また、本実施の形態によれば、近接センサの側面および検出面を非磁性金属により構成する。また、その非磁性金属として比透磁率が実質的に1であり、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上である金属が用いられる。これにより、検出面を磁束が通過しやすくなるので、検出距離の低下(検出感度の低下)を防ぐことができる。なお、本実施の形態ではこのような非磁性金属としてステンレスを用いることで、ケースの強度を確保できるとともに、コスト低減が可能になる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、コンダクタンスgを10μSと150μSとの間(より好ましくは、30μSと100μSとの間)に設定する。これにより消費電力を低減できる。また、本実施の形態によれば、取付金属の有無によるコンダクタンス変化を所定の範囲(たとえば0±0.5%)に設定することで、性能の安定した近接センサを実現することができるとともに、近接センサの生産歩留を向上させることができる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、上述の発振周波数は、Δgの絶対値が最大となるときの発振周波数よりも低くなるように定められる。これにより近接センサを取付金属に設置して検出距離が低下したとしてもある程度の検出距離を確保することができる。
【0107】
また、本実施の形態によれば、検出コイルの幅および高さは、コイルの幅に対するコイルの高さの比と、検出距離との積が所定値以上になるように定められる。これにより上述の近接センサを具体的に実現可能とすることができる。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態の近接センサの外形図である。
【図2】図1の近接センサ1の断面を示す模式図である。
【図3】図2の回路基板10の構成を示す図である。
【図4】図2の近接センサ1に発生する磁束を説明する図である。
【図5】図2の近接センサ1の磁場解析モデルを示す図である。
【図6】取付金属51A(METAL1)が鉄の場合の有効電力の変化を示す図である。
【図7】取付金属51A(METAL1)がアルミの場合の有効電力の変化を示す図である。
【図8】取付金属51Aが存在しない場合に被検知物体が接近したときの損失の変化を示す図である。
【図9】発振周波数に対する全体の有効電力の変化を示す図である。
【図10】被検出物体Aの接近に伴う検出コイル6のコンダクタンスgの変化率を示す図である。
【図11】取付金属51の有無によるコンダクタンス変化を示す図である。
【図12】検出面21がSUS材の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。
【図13】検出面が樹脂の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。
【図14】本実施の形態の近接センサにおいて最適なコンダクタンスの範囲を示す図である。
【図15】実際に作成した近接センサの測定値を示す図である。
【図16】取付金属の影響を実際に測定した結果を示す図である。
【図17】発振周波数を最適値から変化させたときの、取付金属からの検出面21の突き出し距離によるコンダクタンス変化率を示す図である。
【図18】検出コイル6の設計値を一覧表で示す表である。
【図19】本実施の形態の近接センサの別の構成例を示す断面図である。
【図20】近接センサの設置状態の一例を示す図である。
【図21】近接センサの設置状態の別の例を示す図である。
【図22】近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
【図23】近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
【図24】検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の一例を示す図である。
【図25】検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の別の例を示す図である。
【図26】検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【図27】検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1,101 近接センサ、2,102 ケース、5 信号用ケーブル、6,106 検出コイル、8,108 コア、10 回路基板、21,121 検出面、23 ねじ山、24 側面部、31 発振回路、32 検出回路、33 出力回路、34 検波回路、35 比較回路、51,51A,51B,151 取付金属、152,153 六角ナット、154 遮蔽板、155 リング、156 補助コイル、A 被検出物体、FL0〜FL4 磁束。
【技術分野】
【0001】
本発明は金属からなる被検出物の接近による磁界の損失を検出することによって、被検出物の接近を判別する近接センサに関する。特に、本発明はセンサを取付ける周囲金属体の影響による検出距離の変動を低減した近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近接センサ(または近接スイッチ)とは、検出対象の物体の移動や存在を検出して検出結果を電気信号として出力するセンサの総称である。近接センサの検出方式は各種あるが、たとえば電磁誘導によって金属の被検出物体に発生する渦電流を利用する方式がある。
【0003】
電磁誘導を利用した近接センサは、一般的にコイルを有する高周波発振回路を備えている。このような近接センサでは、被検出物体がない時に発振状態であり、被検出物体の到来に応じてコンダクタンスが増加して発振が弱まる(または停止する)方式と、被検出物体がない時に発振停止状態であり、被検出物体の到来に応じてコンダクタンスが低下して発振が開始する方式とが存在し、後段の回路処理により被検出物体の有無に応じたコンダクタンス変化を振幅(または周波数)検出して被検出物体の到来を検出することが可能になる。
【0004】
従来、近接センサのケースの検出面および側面は、SUS(Stainless Used Steel)材料の金属により構成されている。SUSは非磁性体であり、かつ、その導電率が低いため、発振回路の発振周波数を比較的低く設定することにより、検出面を磁束が通過することができる。よって近接センサは検出面の前方に存在する被検出物体(金属のワーク)を検出することができる。
【0005】
ケースの外径、すなわち検出面の直径によって、検出感度を最大にする(すなわち検出距離を長くする)発振周波数が異なる。検出面の直径が小さいほど高い発振周波数で検出感度が最大となり、逆に検出面の直径が大きいほど低い発振周波数で検出感度が最大となる。
【0006】
また、近接センサのケース強度を向上させるために検出面の肉厚を厚くすると、検出感度の低下、すなわち検出距離の低下が生じる。その理由は検出面の肉厚を厚くすることにより、磁束がケースの検出面を通過しにくくなるためである。
【0007】
図20は、近接センサの設置状態の一例を示す図である。
図20を参照して、近接センサ101の側面にはねじ山が設けられる。近接センサ101は、ねじ締めによって取付金属151に埋設した状態で取付けられる。また、検出面121と取付金属151の主表面とが同一平面になるように近接センサ101が取付けられる。多くの場合、取付金属151の材質としては強度やコストの点で鉄が採用されるのが一般的である。
【0008】
図21は、近接センサの設置状態の別の例を示す図である。
図21を参照して、検出面121が取付金属151の一方の主表面から突出している点で図20と異なっている。取付金属151より突出した部分に六角ナット152を取付けることで近接センサ101は固定される。
【0009】
図22は、近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
図22を参照して、図20と同様に、検出面121は取付金属151の一方の主表面と同一になるように近接センサ101が設けられる。ただし図22では、取付金属151に対して検出面121と反対側に近接センサ101を固定するための六角ナット152が設けられる。
【0010】
図23は、近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
図23を参照して、取付金属151の厚みは図22に示す取付金属151よりもさらに薄い。取付金属151を挟んで設けられる六角ナット152,153によって近接センサ101は固定される。
【0011】
上述のように、比較的低い発振周波数を選択することによって、非磁性体の金属からなる検出面を磁束が通過しやすくなる。つまりSUS材により構成されるケースは磁束を遮蔽する効果が弱い。このためケース側面から外に漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束が取付金属に磁性作用を与えることで、近接センサの検出距離が変化するという現象が発生する。
【0012】
検出距離に与える影響の大小は取付金属の材質により異なる。たとえば取付金属が真鍮やアルミのような非磁性体であり、かつ、導電率の高い材質であれば、検出距離が大きく低下する。
【0013】
取付金属がアルミや真鍮の場合、漏洩磁束に応じて発生した渦電流により、漏洩磁束に反発する磁束が発生する。この結果、ケース側面を鎖交する磁束が減少するためケース側面での損失が減少する。ケース側面での損失が減少することで検出コイルの損失も減少する。よって発振回路の出力(発振振幅)が大きくなる。この場合、被検出物体が近接センサに十分に接近しないと発振振幅は所定値まで低下しないため検出距離が大きく低下する。
【0014】
一方、取付金属が鉄等の磁性金属であれば、検出距離の低下を抑えることができる。この場合、漏洩磁束は取付金属の方向に誘導される。ケース側面での損失が減少しても、その損失は取付金属で発生する磁束によって補完されるので発振振幅の変動を抑えることができる。この結果、検出距離の低下を抑えることができる。
【0015】
しかしながら、被検出物体の材質は鉄であることが多い。よって、取付金属の材質として鉄を用いた場合には、被検出物体が実際に存在しなくても存在するかのようにセンサが反応するという問題が発生する。このような問題を防ぐための従来の方法について図を参照しながら説明する。
【0016】
図24は、検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の一例を示す図である。
図24を参照して、近接センサ101の断面を示す。ケース102の内部には、検出コイル106が巻かれたコア108、および、コア108を囲む遮蔽板154が設けられている。遮蔽板154は導電率の高い金属により構成される。遮蔽板154により検出コイル106からケース102への漏洩磁束を防ぐことで、取付金属による検出距離に対する影響を抑えることができ、これにより検出距離の低下を防ぐことができる。
【0017】
図25は、検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の別の例を示す図である。
【0018】
図25を参照して、ケース102の内面には格子状に溝が形成される。これによりケース102での渦電流を小さくすることができるので検出距離の低下を防ぐことができる。
【0019】
図26は、検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【0020】
図26を参照して、コア108の周囲には、たとえばフェライト等の高い透磁率を有し、かつ損失が少ない材料で構成されたリング155が設けられる。リング155によってコア108の側方の磁束がリング155に誘導される。これによって取付金属151への漏洩磁束を防ぐことができるので検出距離の低下を防ぐことができる。
【0021】
図27は、検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【0022】
図27を参照して、コア108の側方に補助コイル156が設けられる。この補助コイル156により発生する逆向きの磁束が検出コイル106より発生する漏洩磁束を取付金属からそれた方向に誘導することで検出距離の低下を防ぐことができる。
【0023】
図24の技術の採用例として、たとえば特許第3023311号明細書(特許文献1)はステンレスで形成されたケースと鉄で形成された取付部材とを備える近接センサを開示する。
【0024】
また、図27の技術の採用例として、たとえば特許第2603628号明細書(特許文献2)ではセンサコイルを配備したコアの検出両端部外周に補助コイルを設けた近接センサを開示する。
【特許文献1】特許第3023311号明細書
【特許文献2】特許第2603628号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上述のようにケースの検出面の肉厚を厚くすると検出距離が短くなる。つまり検出面の肉厚と検出距離とはトレードオフの関係にある。センサの最大感度付近の発振周波数を選択することによって、ある程度の長さの検出距離を確保できる。しかし、取付金属の材質が鉄の場合にはセンサの感度を高くするほど取付金属の影響が大きくなる。よって、選択する発振周波数によっては検出距離が極端に短くなったりあるいは極端に大きくなったりする。
【0026】
図21や図23に示すように、取付金属から検出面を突出させて近接センサを取付けることで取付金属の影響を低減できる。しかしながら取付金属から検出面を突出させるためにはある程度のスペースを確保する必要がある。さらにスペースを確保できない場合には近接センサを取付けることができなくなる。
【0027】
また、被検出物体が移動する際に軌道が不安定なため、被検出物体が上下する場合がある。よって近接センサの検出面を取付金属から突出させると、被検出物体が近接センサの検出面に接触したりあるいはケース側面に衝突したりする。これにより近接センサが故障しやすくなる。
【0028】
また、図24〜図27に示す従来技術の場合にはコストの点が問題となる。たとえば図24,26,27に示す従来技術の場合、部品の追加に伴うコスト上昇が生じる。また図25に示す従来技術の場合には、ケース内面の設計や加工に伴うコスト上昇が生じる。
【0029】
さらに、図27に示す従来技術の場合、個体間での調整が困難となる。また、コアの径が小さくなるため検出距離が短くなる。もともと検出面の直径が小さい近接センサにおいては補助コイルを入れること自体がスペースの面で困難となる。
【0030】
本発明の目的は、検出面の肉厚を厚くし、かつ、鉄などの磁性金属により構成される取付金属に埋込んで設置しても検出感度の低下を防ぐことが可能な近接センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は要約すれば、金属により構成される被検出物体の接近を検出する近接センサであって、コイルと、コイルに接続される発振回路と、発振回路の発振動作時におけるコイルのコンダクタンスの変化により、被検出物体がコイルに接近したことを検出する検出回路と、非磁性金属により構成され、少なくともコイルを収納するケースとを備える。発振回路の発振周波数は、ケースの周囲に磁性金属が存在する場合と磁性金属が存在しない場合とで、被検出物体とコイルとの距離の変化に対するコンダクタンスの変化率の差が、所定の範囲に収まるように設定される。
【0032】
好ましくは、ケースは、被検出物体とコイルとの間に設けられる検出面を含む。検出面は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される。
【0033】
より好ましくは、検出面の材質は、ステンレスである。
さらに好ましくは、ケースは、少なくとも検出面とコイルとを囲んで設けられる側面部をさらに含む。側面部は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される。
【0034】
さらに好ましくは、側面部の材質は、ステンレスである。
好ましくは、コンダクタンスの変化率は、以下の式により表わされる:
(g110%−g100%)/g100%×100
ただし、g100%は、被検出物体と近接センサとの検出距離が所定の距離のときのコンダクタンスの値であり、g110%は、検出距離が所定の距離の1.1倍のときのコンダクタンスの値である。
【0035】
より好ましくは、g100%の値は、10マイクロジーメンスと150マイクロジーメンスとの間の値である。
【0036】
さらに好ましくは、g100%の値は、30マイクロジーメンスと100マイクロジーメンスとの間の値である。
【0037】
より好ましくは、コイルの幅および高さは、コイルの幅に対するコイルの高さの比と、所定の距離との積が所定値以上になるように定められる。
【0038】
より好ましくは、発振周波数は、上記の式に従うコンダクタンスの変化率の絶対値が最大となるときの周波数よりも低くなるように設定される。
【発明の効果】
【0039】
本発明の近接センサによれば、取付金属が鉄などの磁性体の場合にも検出距離を低下させることなく検出面を取付金属の主表面と同一になるように取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0041】
図1は、本実施の形態の近接センサの外形図である。
図1を参照して、近接センサ1は本体を収納するケース2と、信号用ケーブル5とを備える。後述するように、ケース2において検出面21側には検出コイルが収納される。また、ケース2の外周には取付金属への設置のため、ねじ山23が形成される。信号用ケーブル5は、近接センサ1の検出結果、すなわち電気信号を出力するために設けられる。
【0042】
図2は、図1の近接センサ1の断面を示す模式図である。なお、断面方向は図1の紙面に平行である。
【0043】
図2を参照して、ケース2は取付金属51にねじ締めにより固定される。取付金属51は鉄等の磁性金属である。ケース2の内部には検出コイル6、コア8、および回路基板10が設けられる。なお、ケース2の内部に少なくとも検出コイル6が設けられていればよく回路基板10がケース2の外部に設けられていてもよい。
【0044】
ケース2は検出コイル6に対向して設けられる検出面21と、少なくとも検出面21と検出コイルとを囲むように設けられる側面部24とを含む。
【0045】
検出面21および側面部24はともに非磁性金属により構成される。検出面21を非磁性金属でかつ体積抵抗率が大きいものにより構成することで検出コイル6からの磁束が検出面21を通過しやすくなるので近接センサ1の感度を高くすることができる。また側面部24を非磁性金属により構成することで、取付金属51が鉄等の磁性金属の場合に近接センサ1の感度低下を防ぐことができる。
【0046】
なお、非磁性体は一般的にその比透磁率(同じ磁界強度における物質の透磁率と真空の透磁率の比)μが実質的に1である(たとえばSUS303の比透磁率は約1.03である)が、体積抵抗率は材質により異なる。本実施の形態では検出面21に用いられる非磁性金属として体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上であることが好ましい。このような特性を満たす材質としては、たとえばチタンやSUS303等の非磁性ステンレスなどが挙げられる。ただし強度およびコストの点で検出面21の材質にはステンレスが好ましい。
【0047】
また、側面部24に用いられる金属も比透磁率μが実質的に1であり、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上であることが好ましい。つまり、側面部24の材質は検出面21の材質と同じであることが好ましい。検出面21と側面部24に同じ材料を用いることで検出距離の低下を防ぐことができるとともに、コストを低減することができる。本実施の形態では検出面21および側面部24の材質にはSUS303が用いられる。
【0048】
検出コイル6はコア8に巻回される。コア8はたとえばE形のフェライトコアであり、検出コイル6に発生する磁束を前方(検出面21側)に誘導する。
【0049】
図3は、図2の回路基板10の構成を示す図である。
図3を参照して、回路基板10には、発振回路31、検出回路32、および出力回路(OUT)33が搭載される。検出回路32は検波回路34と比較回路35とを含む。
【0050】
発振回路31は検出コイル6に接続される。発振回路31は被検出物体の到来しない状態で発振している。検波回路34は発振回路31の発振信号を直流信号に変換する。比較回路35は検波回路34が出力する直流信号を予め設定された基準レベルと比較する。
【0051】
発振回路31の発振動作時に図2に示す被検出物体Aが検出面21(および検出コイル6)に接近すると、検出コイル6が発生する磁束が被検出物体Aにより生じる渦電流の影響を受ける。このため発振回路31の発振振幅が小さくなる。よって検波回路34の出力のレベルが基準レベル以下となる。この状態での比較回路35の出力信号が出力回路33を介して外部に出力されることで、被検出物体の接近が検出される。このときの検出面21と被検出物体Aとの距離を図2では検出距離Dと示す。
【0052】
なお実際の製品では、検出回路32は発振振幅の変化を検出コイル6のコンダクタンスgの変化として検出する。つまり、検出回路32は検出コイル6のコンダクタンスの変化により、被検出物体Aが検出コイル6に接近したことを検出する。コンダクタンスgの値は以下の式(1)により表わされる。
【0053】
g=R/{R2+(ωL)2} …(1)
ここでRは検出コイル6の抵抗値、Lは検出コイル6のインダクタンス値、ωは発振回路31の発振周波数である。
【0054】
図4は、図2の近接センサ1に発生する磁束を説明する図である。
図4を参照して、図3の発振回路31の発振時に検出コイル6から被検出物体Aに向けて磁束FL0が発生する。このとき被検出物体Aには表皮効果が生じており検出距離Dは表皮深さに等しくなる。ここで表皮深さとは、検出コイルから発生した磁束が金属体に鎖交する際、金属体内に磁束が浸透し渦電流が流れる深さであるから、表皮深さSは以下の式(2)のように示される。
【0055】
S={2/(ω×μ×σ)}1/2 …(2)
ここでσは検出面21の導電率であり、μは検出面21の比透磁率である。よって、表皮深さSを大きくする(すなわち、検出距離Dを長くする)には発振回路31の発振周波数ωを低くするか、比透磁率μを下げるか、導電率σを低くする(すなわち体積抵抗率を高くする)かのいずれかを行なうことが有効になる。本実施の形態では特に、発振周波数ωを低くすること、および体積抵抗率を高くすることが行なわれる。
【0056】
検出コイル6から側面部24への磁束FL1(すなわち漏洩磁束)は取付金属51の方向に誘導され、磁束FL1の一部が磁束FL3として取付金属51に達する。また、側面部24では磁束FL1により渦電流が生じ、その渦電流によって検出コイル6の方向に磁束FL2が発生するとともに、取付金属51に向けて磁束FL4が発生する。磁束FL2,FL4によって取付金属51では渦電流による損失が発生する。側面部24では磁束が通過しやすくなっているので側面部24での渦電流による損失は減少するものの取付金属51では損失が増加する。発振周波数ωを調整することで漏洩磁束による損失を取付金属51の有無に拘らず変化しないように調整することができる。よって近接センサ1は取付金属51による影響を防ぐことができる。
【0057】
このように近接センサ1はその発振周波数を適切に設定することで、検出面21の肉厚が厚く、かつ、磁性金属により構成される取付金属に埋込まれた状態で取付けられても検出感度の低下を防ぐことが可能である。以下、近接センサ1の特性について、より詳細に説明する。
【0058】
図5は、図2の近接センサ1の磁場解析モデルを示す図である。
図5を参照して、図1の近接センサ1をその中心軸に沿って1/4カットした磁場解析モデルを示す。この解析モデルでは検出面21,側面部24,検出コイル6,コア8が示される。また、解析の便宜上、図5において取付金属51は取付金属51A,51Bに分解される。
【0059】
次に、図5の磁場解析モデルを用いてCAE(Computer Aided Engineering)解析した結果を図6〜図13を参照しながら説明する。なお、図6〜図9において、グラフの指標METAL1,TARGET,COIL,CORE,KANAGU2,KANAGU1は、それぞれ図5の取付金属51A,被検出物体A,検出コイル6,コア8,側面部24,検出面21を示す。また、図6〜図9では被検出物体A(TARGET)を鉄、検出面21(KANAGU1)および側面部24(KANAGU2)をステンレス、取付金属51B(METAL2)を空気と設定している。また、検出面21の取付金属51Aからの突出距離は0mmに設定している。また、このモデルにおける近接センサのサイズ規格(外形の大きさ)はM18サイズとする。
【0060】
図6は、取付金属51A(METAL1)が鉄の場合の有効電力の変化を示す図である。
【0061】
図6を参照して、検出コイル6からの磁束により近接センサを構成する部品の生じる損失が、発振周波数によってどのように変化するかが示される。検出コイル6の磁束が構成部品に鎖交することで生じる損失は有効電力(実際に消費される電力)に比例する。このため損失の変化を有効電力の変化とみなすことができる。
【0062】
図6に示されるように、取付金属51Aが鉄(磁性金属)の場合、発振周波数が低い領域では、取付金属51A、ケース2(検出面21および側面部24)、被検出物体Aの有効電力が増加する。すなわち検出距離が増加する。一方、発振周波数が高い領域ではこれらの有効電力は減少する。すなわち検出距離が減少する。
【0063】
このように有効電力が変化する理由は以下のように考えられる。すなわち、高い発振周波数では検出コイル6からの漏洩磁束が鉄に誘導されにくくなるため側面部24に生じる損失は増加する。取付金属51Aに鎖交して発生する渦電流により側面部24に鎖交する磁束を打ち消す反磁束が生じるが、その反磁束も大きくなる。よって側面部24に鎖交する磁束と反磁束とが相殺することでケース2の損失が減少する。
【0064】
図7は、取付金属51A(METAL1)がアルミの場合の有効電力の変化を示す図である。
【0065】
図7を参照して、発振周波数が低いほど検出面21および側面部24(KANAGU1,KANAGU2)での有効電力が負方向に増加する。言い換えると発振周波数が低いほど損失が減少して検出距離が短くなる。この理由はアルミの導電率が高いため、取付金属51Aで生じた渦電流による反磁束が側面部24で発生していた損失を打ち消す方向に働らき、その結果有効電力が減少するためである。より低い周波数ほど磁束が側面部24を通過し、取付金属51Aで生じた渦電流が大きくなるから、その効果は大きくなる。
【0066】
図6および図7から、取付金属51Aが鉄(磁性体)の場合、取付金属の有無による損失の変化を0、または0付近に設定することが可能な発振周波数が5kHz〜100kHzの範囲に存在することが分かる。これらの結果は、発振周波数を5kHz〜100kHzの範囲に設定すればセンサを取付金属(鉄)に設置しても検出距離の低下(すなわちセンサの検出感度の低下)を防ぐことができることを示す。
【0067】
図8は、取付金属51Aが存在しない場合に被検出物体が接近したときの損失の変化を示す図である。なお、「取付金属51Aが存在しない場合」とは図5のモデルにおいて取付金属51A(METAL1)を空気と設定した場合である。
【0068】
図8を参照して、被検出物体A(TARGET)が接近する前と接近した状態とで損失の変化が最大になるときに近接センサの感度は最大となる。図8に示されるように20kHz以下の発振周波数では、被検出物体Aの接近にともなって被検出物体Aの有効電力が増加するとともにケース2の有効電力が増加する。また、このときには検出コイル6自身の有効電力は減少する(負方向に増加する)。既に述べたように有効電力の増加とは損失の増加を意味する。また全体の損失の変化が最大になるときの発振周波数がセンサの感度が最大のときの発振周波数に等しい。
【0069】
図9は、発振周波数に対する全体の有効電力の変化を示す図である。
図9を参照して、図8での各構成部品の有効電力の合計がグラフに示される。図9から10kHz前後の発振周波数で有効電力の合計が最大になることが分かる。すなわち、外形の大きさがM18であるときは、センサの感度が最大のときの発振周波数は約10kHzである。
【0070】
図10は、被検出物体Aの接近に伴う検出コイル6のコンダクタンスgの変化率を示す図である。
【0071】
上述のように、実際の近接センサでは有効電力の変化を検出コイル6のコンダクタンスgの変化としてとらえ、コイルの発振振幅の変化を回路処理して検出する。そのためCAE解析で得られた有効電力等のパラメータの変化をコンダクタンスgの変化に置換えることができる。
【0072】
図10を参照して、被検出物体A(鉄)を近接センサ1の定格検出距離(本発明における「所定の距離」)から、その定格検出距離の10%だけ遠ざけたときの検出コイル6のコンダクタンスgの変化率を示す。
【0073】
ここで「定格検出距離」とは、たとえば製品規格により定められた検出距離を示す。また、本実施の形態では、図2に示す検出距離Dが定格検出距離のときから定格検出距離の10%だけ長くなったときのコンダクタンスの変化率(単位:%)をΔgと示す。Δgは以下の式(3)により定義される。
【0074】
Δg=(g110%−g100%)/g100%×100 …(3)
式(3)においてg100%は検出距離Dが定格検出距離のときのコンダクタンスの値であり、g110%は検出距離Dが定格検出距離の1.1倍のときのコンダクタンス値を示す。
【0075】
図10は検出面21の厚みtが0.2mm,0.5mm,0.8mmの各場合におけるΔgの発振周波数に対する変化を示す。なお、検出面21の厚みが0.8mmの場合の曲線が2つある(図10においてt=0.8,t=0.8Cと示す)が、これらの曲線は検出コイル6の線径が互いに異なる場合のΔgの変化を示している。
【0076】
ある発振周波数(たとえば30kHz)では、検出面21の厚みが増すほどΔgが小さくなる傾向にある。これは検出面21が厚いほど磁束が通りにくくなるためである。
【0077】
各曲線上の黒点に対応する発振周波数は、Δgの絶対値が最大(検出感度が最大)となる発振周波数を示す。検出感度が最大となる発振周波数は検出面21の厚みが増すほど低くなる。また、t=0.8およびt=0.8Cのときの曲線から、コイルの線径は同一の体積内で巻かれた場合、検出感度に殆ど影響を与えないことが分かる。
【0078】
図11は、取付金属51の有無によるコンダクタンス変化を示す図である。
図11を参照して、近接センサ1を取付金属51に取付けていないときに得られるコンダクタンスgに対して、近接センサ1を取付金属51に取付けたときに得られるコンダクタンスgの値の変化率を示す。
【0079】
図11では検出面21の厚みを0.2mm,0.5mm,0.8mmにそれぞれ設定している。各曲線上に示す黒い丸印に対応する発振周波数はコンダクタンス変化が0になる(コンダクタンス変化が最小である)ときの発振周波数であり、近接センサを取付金属に設けても検出距離の低下が発生しない発振周波数である。
【0080】
図11から、検出面21の厚みが増すほどコンダクタンス変化が0となる発振周波数は低くなることが分かる。また、発振周波数を低くすればコンダクタンス変化は正方向に増加し、発振周波数を低くすればコンダクタンス変化は負方向に増加する。この傾向は検出面21の厚みによらず共通する。
【0081】
コンダクタンスの変化率の増加および減少は検出距離の増加および減少をそれぞれ意味する。よって、図11の黒点に示す発振周波数を基準として、ケース2の周囲に磁性金属(取付金属)が存在する場合と磁性金属が存在しない場合とで、被検出物体とコイルとの距離の変化に対するコンダクタンス変化が所定の範囲内(たとえば0±0.5%)になるように発振周波数の範囲を定めることによって、近接センサを磁性金属に取付けても検出距離の低下を防いだり、検出距離の低下を製品規格内に収めたりすることが可能になる。
【0082】
なお、上述のように、本実施の形態において検出面21は高い体積抵抗率を有する非磁性体(たとえばSUS材)により構成される必要がある。以下、図12,13を示しながら、その理由を補足して説明する。
【0083】
図12は、検出面21がSUS材の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。
【0084】
図12を参照して、抵抗値R,インダクタンス値Lおよびコンダクタンスgの発振周波数に対する変化率をそれぞれ示す。図12において抵抗値Rの変化率とは、近接センサを取付金属に設置しない場合の抵抗値に対し、近接センサを取付金属に設置した場合の抵抗値がどれだけ変化したかを示す割合である。インダクタンス値Lおよびコンダクタンスgの各々の変化率についても同様である。
【0085】
検出面21がSUS材の場合にはコンダクタンスgの変化率が0%になる発振周波数発振周波数が20kHz〜40kHzの間で存在する。この傾向は図11と同様である。
【0086】
図13は、検出面が樹脂の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。図13を参照して、コンダクタンスgの変化率が0%となる発振周波数が0〜100kHzの範囲に存在しない。
【0087】
図12,図13から、本実施の形態においては取付金属による検出感度への影響を防ぐため、非磁性体であり、かつ、高い体積抵抗率を有する金属を検出面に用いる必要があることが具体的に示される。
【0088】
図14は、本実施の形態の近接センサにおいてコンダクタンスgの最適な範囲を示す図である。
【0089】
図14を参照して、被検出物体Aが定格検出距離に位置する状態でのコンダクタンスgの値と発振周波数との関係を示す。図14のグラフでは、検出面21の厚みが0.2mm,0.5mm,0.8mmのときのコンダクタンスgの変化を示す。検出面21の厚みが0.8mmの場合の曲線が2つある(t=0.8,t=0.8C)が、これらの曲線は図10と同様に、検出コイル6の線径が異なる場合のコンダクタンスの変化を示している。
【0090】
定格検出距離でのコンダクタンスgの値(すなわちg100%の値)は、近接センサ1の検出距離を調整するために重要な値である。消費電流を抑えるためにはコンダクタンスgの値自体が小さい方が望ましい。本実施の形態ではコンダクタンスgの範囲は10μSと150μSとの間に設定される。なおコンダクタンスgの範囲は30μSと100μSとの間にあるほうがより好ましい。ここで単位μSは「マイクロジーメンス」を示す。
【0091】
図14に示されるようにコンダクタンスgの値は発振周波数に依存し、検出面21の厚みによる影響は小さい。発振周波数は検出コイル6の線径を変えてコンダクタンスを調整することにより決定できる。その理由は、検出コイル6の線径を変えることで検出コイル6の巻数が変化してインダクタンス値が変わるためである。なお、コイルの線径を小さくすることでコンダクタンスgを減少させ、線径を大きくすることでコンダクタンスgを増加させることができる。
【0092】
以上、図10で示す検出感度、図11で示す取付金属の影響、および図14で示すコンダクタンスgの範囲の各条件を満たす発振周波数(たとえば10〜50kHzの範囲の周波数)を選択することにより、本実施の形態の近接センサは検出距離の最大化、取付金属(鉄材)の影響の極小化(鉄材に取付けたときの影響を受けない)および消費電流の低減を実現できる。上述の解析により得られたパラメータを用いて作成した近接センサの特性を説明する。
【0093】
図15は、実際に作成した近接センサの測定値を示す図である。
図15を参照して、外形の大きさがM18サイズのSUSケース(ケース検出面の厚みを0.8mmとした)を使用した近接センサの測定値としてΔgの値(図15において「Δg」と示す)、取付金属(鉄)の有無によるΔgの差(図15において「0mmでのg変化率」と示す)、および、コンダクタンスgの値を示す。
【0094】
この近接センサにおいては最適な発振周波数は約12kHzに設定される。その理由は、検出感度すなわちΔgの絶対値(約1.0%)が検出回路による検出可能な値(最低限検出可能な感度以上)であり、取付金属(鉄)の有無によるコンダクタンス変化(約0.5%)が最小値である0%に近く、定格検出距離でのコンダクタンスgの値(約70μS)が望ましい範囲(30〜100μS)内に収まるためである。
【0095】
図16は、取付金属の影響を実際に測定した結果を示す図である。
図16を参照して、取付金属からの検出面21の突き出し距離が0mmの場合、取付金属による検出距離の変化率は+3%程度と小さくなる。また、検出面21を取付金属51から4mmだけ突き出して、その突き出し部分にSUS303の六角ナットを取付けた場合(図21に示す取付状態の場合)には検出距離の変化は0%になる。このように、発振周波数を最適に設定することで近接センサ1では取付金属による検出距離への影響を低減できる。
【0096】
図17は、発振周波数を最適値から変化させたときの、取付金属からの検出面21の突き出し距離によるコンダクタンス変化率を示す図である。ここで最適値とはコンダクタンス変化が突き出し距離0mmのとき最小で、コンダクタンス値が所定範囲内、検出感度(Δg)が検出可能な範囲内になるときの発振周波数である。
【0097】
図17を参照して、発振周波数が最適値(この例にあっては約12kHz)より低くなるとコンダクタンスgが増加して検出距離が増加する。一方、発振周波数が高くなるとコンダクタンスgが減少して検出距離が減少する。このように図17の結果は図11に示すCAE解析結果の傾向と等しいといえる。図17から、発振周波数をΔgの絶対値が最大のときの発振周波数(この例では約15kHz)よりも低く設定しておけば、近接センサを取付金属(鉄)に設置した場合に、センサの取付金属からの検出面21の突き出し距離に対して所定範囲内の変化に抑えることが可能であるから、検出距離が低下したとしても、ある程度の検出距離を確保することができる。
【0098】
なお検出コイル6の設計の具体例を示す。本実施の形態では検出コイルの幅および高さは以下の式(4)に従って定められる。
【0099】
(定格検出距離)×(検出コイル6の高さ)/(検出コイル6の幅)≧(所定値) …(4)
すなわち、検出距離と、検出コイル6の幅に対する検出コイル6の高さの比との積が所定値以上になるよう、検出コイル6の幅および高さが定められる。検出コイル6の「幅」および「高さ」とは図2の検出コイル6の寸法a,bをそれぞれ示す。すなわち式(4)は、D×(b/a)≧(所定値)と示される。
【0100】
図18は、検出コイル6の設計値を一覧表で示す表である。
図18を参照して、ケース外形の大きさ(サイズ規格)ごとに、検出距離(A)、検出コイル6の高さ(B)、検出コイル6の幅(C)、および式(4)により得られた結果を示す。図18では式(4)により得られた結果が7より大きいことを示す。ただし、この所定値は7以外の値でもよく、近接センサに求められる性能に応じて適切に設定できる。
【0101】
なお、本実施の形態の近接センサは図2に示す構成を有するものと限定されない。本実施の形態の近接センサは、たとえば以下に示すような構成を有していてもよい。
【0102】
図19は、本実施の形態の近接センサの別の構成例を示す断面図である。
図19を参照して、近接センサ1は、検出面21と側面部24とが一部材として構成される。
【0103】
以上のように、本実施の形態によれば発振回路の発振周波数を、磁性金属により構成される取付金属がケースの周囲に存在する場合と存在しない場合とで、被検出物体とコイルとの距離の変化に対するコンダクタンスの変化率の差が所定の範囲内になるように選択する。これにより近接センサを取付金属に設置してもセンサの感度低下を抑えることができるので、センサの検出面を取付金属の主表面と同一面上に配置することが可能になり、被検出物体が側方から接近した際に近接センサへの衝突を防ぐことができる。よって近接センサの故障によるセンサの交換頻度を大幅に低減できる。
【0104】
また、本実施の形態によれば、近接センサの側面および検出面を非磁性金属により構成する。また、その非磁性金属として比透磁率が実質的に1であり、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上である金属が用いられる。これにより、検出面を磁束が通過しやすくなるので、検出距離の低下(検出感度の低下)を防ぐことができる。なお、本実施の形態ではこのような非磁性金属としてステンレスを用いることで、ケースの強度を確保できるとともに、コスト低減が可能になる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、コンダクタンスgを10μSと150μSとの間(より好ましくは、30μSと100μSとの間)に設定する。これにより消費電力を低減できる。また、本実施の形態によれば、取付金属の有無によるコンダクタンス変化を所定の範囲(たとえば0±0.5%)に設定することで、性能の安定した近接センサを実現することができるとともに、近接センサの生産歩留を向上させることができる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、上述の発振周波数は、Δgの絶対値が最大となるときの発振周波数よりも低くなるように定められる。これにより近接センサを取付金属に設置して検出距離が低下したとしてもある程度の検出距離を確保することができる。
【0107】
また、本実施の形態によれば、検出コイルの幅および高さは、コイルの幅に対するコイルの高さの比と、検出距離との積が所定値以上になるように定められる。これにより上述の近接センサを具体的に実現可能とすることができる。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態の近接センサの外形図である。
【図2】図1の近接センサ1の断面を示す模式図である。
【図3】図2の回路基板10の構成を示す図である。
【図4】図2の近接センサ1に発生する磁束を説明する図である。
【図5】図2の近接センサ1の磁場解析モデルを示す図である。
【図6】取付金属51A(METAL1)が鉄の場合の有効電力の変化を示す図である。
【図7】取付金属51A(METAL1)がアルミの場合の有効電力の変化を示す図である。
【図8】取付金属51Aが存在しない場合に被検知物体が接近したときの損失の変化を示す図である。
【図9】発振周波数に対する全体の有効電力の変化を示す図である。
【図10】被検出物体Aの接近に伴う検出コイル6のコンダクタンスgの変化率を示す図である。
【図11】取付金属51の有無によるコンダクタンス変化を示す図である。
【図12】検出面21がSUS材の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。
【図13】検出面が樹脂の場合において取付金属の有無に応じた回路定数の変化率を示す図である。
【図14】本実施の形態の近接センサにおいて最適なコンダクタンスの範囲を示す図である。
【図15】実際に作成した近接センサの測定値を示す図である。
【図16】取付金属の影響を実際に測定した結果を示す図である。
【図17】発振周波数を最適値から変化させたときの、取付金属からの検出面21の突き出し距離によるコンダクタンス変化率を示す図である。
【図18】検出コイル6の設計値を一覧表で示す表である。
【図19】本実施の形態の近接センサの別の構成例を示す断面図である。
【図20】近接センサの設置状態の一例を示す図である。
【図21】近接センサの設置状態の別の例を示す図である。
【図22】近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
【図23】近接センサの設置状態のさらに別の例を示す図である。
【図24】検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の一例を示す図である。
【図25】検出距離の低下を防ぐことを可能にする従来の方法の別の例を示す図である。
【図26】検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【図27】検出距離の低下を防ぐことが可能な従来の方法のさらに別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1,101 近接センサ、2,102 ケース、5 信号用ケーブル、6,106 検出コイル、8,108 コア、10 回路基板、21,121 検出面、23 ねじ山、24 側面部、31 発振回路、32 検出回路、33 出力回路、34 検波回路、35 比較回路、51,51A,51B,151 取付金属、152,153 六角ナット、154 遮蔽板、155 リング、156 補助コイル、A 被検出物体、FL0〜FL4 磁束。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属により構成される被検出物体の接近を検出する近接センサであって、
コイルと、
前記コイルに接続される発振回路と、
前記発振回路の発振動作時における前記コイルのコンダクタンスの変化により、前記被検出物体が前記コイルに接近したことを検出する検出回路と、
非磁性金属により構成され、少なくとも前記コイルを収納するケースとを備え、
前記発振回路の発振周波数は、前記ケースの周囲に磁性金属が存在する場合と前記磁性金属が存在しない場合とで、前記被検出物体と前記コイルとの距離の変化に対する前記コンダクタンスの変化率の差が、所定の範囲に収まるように設定される、近接センサ。
【請求項2】
前記ケースは、
前記被検出物体と前記コイルとの間に設けられる検出面を含み、
前記検出面は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記検出面の材質は、ステンレスである、請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記ケースは、
少なくとも前記検出面と前記コイルとを囲んで設けられる側面部をさらに含み、
前記側面部は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される、請求項2または3に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記側面部の材質は、ステンレスである、請求項4に記載の近接センサ。
【請求項6】
前記コンダクタンスの変化率は、以下の式により表わされる、請求項1に記載の近接センサ:
(g110%−g100%)/g100%×100
ただし、g100%は、前記被検出物体と前記近接センサとの検出距離が所定の距離のときの前記コンダクタンスの値であり、g110%は、前記検出距離が前記所定の距離の1.1倍のときの前記コンダクタンスの値である。
【請求項7】
前記g100%の値は、10マイクロジーメンスと150マイクロジーメンスとの間の値である、請求項6に記載の近接センサ。
【請求項8】
前記g100%の値は、30マイクロジーメンスと100マイクロジーメンスとの間の値である、請求項7に記載の近接センサ。
【請求項9】
前記コイルの幅および高さは、前記コイルの幅に対する前記コイルの高さの比と、前記所定の距離との積が所定値以上になるように定められる、請求項6に記載の近接センサ。
【請求項10】
前記発振周波数は、前記式に従う前記コンダクタンスの変化率の絶対値が最大となるときの周波数よりも低くなるように設定される、請求項6に記載の近接センサ。
【請求項1】
金属により構成される被検出物体の接近を検出する近接センサであって、
コイルと、
前記コイルに接続される発振回路と、
前記発振回路の発振動作時における前記コイルのコンダクタンスの変化により、前記被検出物体が前記コイルに接近したことを検出する検出回路と、
非磁性金属により構成され、少なくとも前記コイルを収納するケースとを備え、
前記発振回路の発振周波数は、前記ケースの周囲に磁性金属が存在する場合と前記磁性金属が存在しない場合とで、前記被検出物体と前記コイルとの距離の変化に対する前記コンダクタンスの変化率の差が、所定の範囲に収まるように設定される、近接センサ。
【請求項2】
前記ケースは、
前記被検出物体と前記コイルとの間に設けられる検出面を含み、
前記検出面は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記検出面の材質は、ステンレスである、請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記ケースは、
少なくとも前記検出面と前記コイルとを囲んで設けられる側面部をさらに含み、
前記側面部は、比透磁率が実質的に1であり、かつ、体積抵抗率が72×10-8(Ω・m)以上の金属により構成される、請求項2または3に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記側面部の材質は、ステンレスである、請求項4に記載の近接センサ。
【請求項6】
前記コンダクタンスの変化率は、以下の式により表わされる、請求項1に記載の近接センサ:
(g110%−g100%)/g100%×100
ただし、g100%は、前記被検出物体と前記近接センサとの検出距離が所定の距離のときの前記コンダクタンスの値であり、g110%は、前記検出距離が前記所定の距離の1.1倍のときの前記コンダクタンスの値である。
【請求項7】
前記g100%の値は、10マイクロジーメンスと150マイクロジーメンスとの間の値である、請求項6に記載の近接センサ。
【請求項8】
前記g100%の値は、30マイクロジーメンスと100マイクロジーメンスとの間の値である、請求項7に記載の近接センサ。
【請求項9】
前記コイルの幅および高さは、前記コイルの幅に対する前記コイルの高さの比と、前記所定の距離との積が所定値以上になるように定められる、請求項6に記載の近接センサ。
【請求項10】
前記発振周波数は、前記式に従う前記コンダクタンスの変化率の絶対値が最大となるときの周波数よりも低くなるように設定される、請求項6に記載の近接センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2007−141762(P2007−141762A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336963(P2005−336963)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]