追従制御装置及び追従制御方法
【課題】追従性を向上した追従制御を課題とする。
【解決手段】車両1に対する移動目標としての電波発信源8の位置を推定し、推定した電波発信源8の位置に向かうように車両1の移動を制御する追従制御する技術である。上記車両1に対し平面視で互いに重ならない位置に複数の無線通信手段を設定して、上記電波発信源8からの電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源8までの各相対距離を取得する。取得した複数の相対距離から、車両1に対する電波発信源8の相対位置情報を推定する。そして、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さなる領域に、車両1の移動すべき方向を設定する。
【解決手段】車両1に対する移動目標としての電波発信源8の位置を推定し、推定した電波発信源8の位置に向かうように車両1の移動を制御する追従制御する技術である。上記車両1に対し平面視で互いに重ならない位置に複数の無線通信手段を設定して、上記電波発信源8からの電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源8までの各相対距離を取得する。取得した複数の相対距離から、車両1に対する電波発信源8の相対位置情報を推定する。そして、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さなる領域に、車両1の移動すべき方向を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波発信源を有する移動目標物に向けて車両などの移動体を追従制御させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動目標物に車両を追従させる技術としては、例えば特許文献1に記載した技術がある。この技術は、指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナ(エスパアンテナ)の受信指向性を変化させて電波を受信する。その受信した電波信号の強度が最大となる方向を判定し、判定した電波信号の強度が最大となる方向を電波発信源からの電波到来方向とする。そして、その電波到来方向に向けて車両を自律移動させる。なお、電波信号の強度レベルに応じて、移動の停止、運転再開の判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−177820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各励振素子によって取得した電波信号の強度を用いて、車両に対する移動目標物の方位を判定する。しかしながら、電波信号の強度を精度良く検出する事は困難である為、この結果、電波信号の強度に含まれる誤差によって追従すべき方向に大きな誤差が発生する可能性がある。そして、その時点における電波信号の強度が最大となる方向に単に接近するといった追従方法であるため、車両の動きがギクシャクした追従移動となってしまうおそれがある。
本発明は、追従性を向上した追従制御を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、移動体に対する移動目標としての電波発信源の位置を推定し、推定した電波発信源の位置に向かうように移動体の移動を制御する追従制御する技術である。上記移動体に対し平面視で互いに重ならない位置に複数の無線通信手段を設定して、上記電波発信源からの電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源までの各相対距離を取得する。取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源の相対位置情報を推定する。そして、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域に、移動体の移動すべき方向を設定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、推定した相対位置情報に含まれる誤差を抑制するように、移動方向を決定する。これによって、追従すべき方向の誤差を抑えつつ、目標とする電波発信源に追従移動することが可能となる。すなわち、確からしさの高い相対位置に向けて追従制御を行うことが出来る。この結果、追従性を向上した追従制御となる。
ここで、相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる方向に連続的に移動させることで、確実に移動目標とする電波発信源に近づく。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る車両と電波発信源の関係を示す模式図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る追従制御装置を備えた車両構成を示す概要構成図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る各無線通信手段と電波発信源(ユーザ)との位置関係を示す平面図である。
【図4】電波発信源の存在位置による相対位置座標に含まれる誤差の分布を示す図である。
【図5】電波発信源の存在位置による相対位置座標に含まれる誤差の分布状態を示す図である。
【図6】本発明に基づく第1実施形態に係る移動制御コントローラの処理を示す図である。
【図7】本発明に基づく第1実施形態に係る車両の移動軌跡の例を説明する図である。
【図8】車両と次の移動目標との関係を示す図である。
【図9】速度ゲインについて説明する図である。
【図10】角速度ゲインについて説明する図である。
【図11】制御ブロックの例を示す図である。
【図12】移動パターンの例を説明する図である。
【図13】移動パターンの例を説明する図である。
【図14】本発明に基づく第2実施形態に係る追従制御装置を備えた車両構成を示す概要構成図である。
【図15】本発明に基づく第2実施形態に係る移動制御コントローラの処理を示す図である。
【図16】移動パターンの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、本実施形態では、図1に示すように、移動体として2輪の駆動輪を有する車両1を例示して説明する。但し、移動体は、3輪若しくは4輪以上の車輪を有する車両であっても良い。また、移動体は車両1に限定せず、二足歩行のロボットや地面から浮揚して移動する浮揚体(ホーバーなど)等であっても良い。要は、目標に向けて追従移動するように駆動制御可能な構造を備えた移動体であれば良い。
【0009】
(構成)
まず構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る追従制御装置を搭載した車両1を示す図である。
この図2に示すように、車両1には、駆動装置、複数の無線通信手段Q、及び移動制御コントローラ3を設ける。なお、移動制御コントローラ3は、車両1に搭載しなくても良い。本実施形態では、搭載する無線通信手段Qの数が3つ場合を例示する。
上記駆動装置は、左右の駆動輪を駆動するモータ5で構成する。このモータ5を、移動制御コントローラ3からの駆動指令に基づき駆動制御する。この結果、車両1は直進運動及び回転運動を行う。ここで、本実施形態の1は直進運動及び回転運動によって移動する構成である。このため、1の制御周期で車両が移動可能な領域Rは、図3に示すように、所定角度の回転と所定距離の前進とを組み合わせた領域となる。
【0010】
上記各無線通信手段Qは、図1に示すように、移動目標物(ユーザ7)が有する電波発信源8から発信された電波を受信する。各無線通信手段Qは、受信した電波を信号に変換して移動制御コントローラ3に出力する。本実施形態の各無線通信手段Qは、無指向性アンテナと、そのアンテナで受信した電波を信号に変換する通信制御部とを有する。
ここで、各無線通信手段Qをアンテナだけで構成し、各アンテナが受信した電波を信号に変換する通信制御部を別途設ける構成としても良い。この場合には、3つのアンテナに対して通信制御部を一つとしても良い。
【0011】
上記3つの無線通信手段Q(1)〜Q(3)は、平面視において、互いに重ならないように配置する。本実施形態では、図3に示すように、平面視において、車両1の重心を中心Gとした円上に、3つの無線通信手段Qを位置させている。更に、本実施形態では、円周方向で隣り合う無線通信手段Q間の距離が等しくなるように設定する。すなわち、平面視で、3つの無線通信手段Qが、正三角形の頂点位置にそれぞれ位置するように配置する。
【0012】
更に、本実施形態では、上記円の中心Gに対し車両1の進行方向後方に、1つの無線通信手段Q(1)を配置する。また、上記円の中心Gに対し車両1の進行方向前方且つ左右対称位置に、2つの無線通信手段Q(2)、Q(3)を配置する。
ここで、無線通信手段の個数に関しては、個数を増やすほど、車両に対するユーザの相対位置座標を正確に算出することが可能であり、結果として、ユーザに対する高精度な追従が可能となる。
【0013】
また、本実施形態では、電波の受信特性(受信エリア)として電波が指向なく伝搬する無指向性のアンテナを採用している。このため、1つの無線通信手段Qによる電波の受信によって、電波発信源8の向きは判定出来ないが、各無線通信手段Qから電波発信源8までの相対距離r1、r2、r3は推定可能である。
また、上記移動制御コントローラ3は、各無線通信手段Qが受信した信号に基づき、電波発信源8との相対距離r1、r2、r3を判定し、さらに相対距離r1、r2、r3から、電波発信源8の相対位置情報である相対位置座標(xu、yu)を推定する。その推定結果に応じて、車両1の移動方向を決定する。そして、電波発信源8を有する移動目標物に追従するための駆動指令を各モータ5に出力する。
【0014】
移動制御コントローラ3は、図2に示すように、相対距離取得手段3A、目標位置取得手段3B、移動方向決定手段3C、及び移動指令値生成手段3Dを備える。
相対距離取得手段3Aは、電波の受信に基づき、各無線通信手段Qから電波発信源8までの各相対距離r1、r2、r3を取得する。
目標位置取得手段3Bは、取得した複数の相対距離r1、r2、r3から、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)を推定する。
【0015】
移動方向決定手段3Cは、電波発信源8に接近する方向であって、目標位置取得手段3Bが推定した相対位置座標(xu、yu)に含まれる誤差が小さくなる領域に、車両1の移動すべき方向を設定する。
上記移動方向決定手段3Cは、図2に示すように、測位誤差記憶テーブル3Ca、誤差推定値算出比較手段3Cbを備える。
【0016】
測位誤差記憶テーブル3Caは、平面視における車両1周囲の測位誤差の分布情報を記憶する。測位誤差記憶テーブル3Caは、例えば、車両に対する電波発信源8の実際の相対距離と推定される相対距離の差分である距離誤差、若しくは、車両に対する電波発信源8の実際の相対角度と推定される相対角度の差分である角度誤差のうち、少なくとも角度誤差についての分布情報(後述の図5参照)を記憶している。
【0017】
誤差推定値算出比較手段3Cbは、車両周囲の測位誤差分布に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差と、次の制御周期で車両が移動可能な領域R内に設定した候補点での相対位置情報の誤差を比較する。
そして、上記移動方向決定手段3Cは、誤差推定値算出比較手段3Cbの比較に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が一番小さくなる領域内の候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定する。
【0018】
上記移動指令値生成手段3Dは、移動方向決定手段3Cが設定した移動方向に向けて車両1が移動するような駆動指令値を算出し、算出した駆動指令値をモータ5に出力する。
上記移動指令値生成手段3Dは、直進運転指令生成手段3Da、回転運動指令生成手段3Db、及び指令値バランス調整手段3Dcを備える。
直進運転指令生成手段3Daは、車両1を直進運動をさせるための第1の移動指令値を生成する。第1の移動指令値としては、速度指令値と加速度指令値とが考えられる。
回転運動指令生成手段3Dbは、車両1の回転運動をさせるための第2の移動指令値を生成する。第2の移動指令値としては、角速度指令値と角加速度指令値とが考えられる。
【0019】
指令値バランス調整手段3Dcは、車両1に対する電波発信源8の相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する。指令値バランス調整手段3Dcは、例えば、車両1の進行方向に対する電波発信源8の相対角度が大きいほど、相対的に、直進運動に関する制御の制御ゲインよりも回転運動に関する制御の制御ゲインを大きく設定する。すなわち、車両1の進行方向に対する電波発信源8の相対角度が大きいほど、回転(旋回)運動を優先する。
【0020】
次に、目標位置取得手段3Bによる、取得した複数の相対距離r1、r2、r3から、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)の取得について説明する。
上述の図3は、ユーザ7と車両1との位置関係、および、車両1上に設置した3つの無線通信手段Qとユーザ7との位置関係を示す図である。
なお、無線通信手段Qの個数Nに関しては、個数を増やすほど、車両1に対するユーザ7の相対位置座標(xu、yu)を正確に算出することが可能であり、結果として、ユーザ7に対する高精度な追従が可能となる。また、上述のように、各無線通信手段Qにおける電波の受信特性(受信エリア)として、電波が指向性なく伝播する無指向性アンテナを用いている。その3個以上の無線通信手段Qによって取得した相対距離r1、r2、r3の情報を用いることによって、車両1に対する移動目標物の相対位置座標(xu、yu)を算出することができる。
【0021】
図3に示すように、複数の無線通信手段Qの中心(車両1重心)を原点とする相対座標系を考える。
この相対座標系において、電波発信源8が(xu、yu)に存在し、(xi、yi)に設置した各無線通信手段Q(i=1、2、3)と電波発信源8との相対距離を、それぞれr1、r2、r3とする。この場合、各無線通信手段Qと電波発信源8との関係は、以下のような連立方程式で示すことができる。
(xu−x1)2+(yu−y1)2 = r12
(xu−x2)2+(yu−y2)2 = r22
(xu−x3)2+(yu−y3)2 = r32
【0022】
そして、理論的には、この連立方程式を解くことによって、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)を一意に算出することが可能である。ただし、実際には、電波発信源8と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3には測定誤差が含まれている。このため、上記の連立方程式を満足する解がないことが多く、最小2乗法を用いて解を求めるのが一般的である。その場合に、電波発信源8の真の相対位置座標を求めることは困難であり、この結果が測位誤差として生じることになる。
【0023】
図4に測位誤差を含んだユーザ7の相対位置座標(xu、yu)の算出結果(分布)の一例を示す。ここで本実施形態では、車両1上に無線通信手段Qを前方に2個、後方に1個、正三角形をなすように設置している。この場合、図4(a)のようにユーザ7が車両1の側方にいる場合には、図4(b)のように車両1の前方にいる場合と比較して、角度方向(左右方向)の測位誤差が大きくなる傾向がある。一般には、2つの無線通信手段Qが一直線に並ぶような場合、すなわち、図4の場合には、進行方向を基準にして、30度、約90度、150度、210度、約270度、330度の方向に関して、誤差が大きくなる傾向にある。一方、車両1からの距離方向の測位誤差に関しては、同一距離であれば、ユーザ7の存在位置にかかわらず、誤差に変化が無いか小さいことが分かる。
【0024】
図5に、本実施形態における車両1の周囲における、ユーザの真の相対位置座標と算出した相対位置座標の差(誤差の最大値)を可視化した結果を示す。車両は、座標の原点(0,0)に存在しており、誤差は1m刻みで色分けしている。距離方向の誤差は距離が同じであれば一定であるため、この誤差は角度のみに依存する結果となっており、測位誤差は車両前方方向に縦長の分布となっている。
【0025】
そのため、ユーザ7に対して、どの方向で追従するかによって、誤差の生じ方が異なることになる。本実施形態においては、算出された相対位置座標に基づいて、その誤差成分の大きさを判定して、誤差の小さくなる方向に移動しながら、ユーザ7に追従する動作となるように車両1を走行制御する。
そして、図5に示す誤差分布に基づき、誤差の分布情報を測位誤差記憶テーブル3Caに設定する。誤差の分布情報は、図5に示す誤差分布そのものでなくても良い。たとえば車両1の前進方向を長軸とした楕円形状の等高線で近似させて記憶しておいても良い。
【0026】
また、図5の誤差分布は、距離誤差と角度誤差の両方の誤差を使用した分布情報を例示している。角度誤差だけを使用した分布情報を測位誤差記憶テーブル3Caに設定しても良い。
次に、上記移動制御コントローラ3の処理を、図6を参照しつつ説明する。
ここで、説明を分かり易くするたに、電磁キーなどからなる電波発信源8を有する移動目標物としてユーザ7(人間)を想定する。また、制御する左右2輪の駆動輪を持つ車両1としてショッピングカート(従動輪を別途備えてても構わない。)を想定する。そして、ショッピングセンター内において、ショッピングカートがユーザ7に追従移動するシーンを想定する。
【0027】
移動制御コントローラ3は、所定のサンプリング周期毎(制御周期毎)に作動する。
まず、ステップS10にて、各無線通信手段Qからの信号に基づき、ユーザ7が有する電波発信源8から発信された電波が、3つの無線通信手段Qに到達したか否かを確認する。そして、全ての無線通信手段Qに対して、ユーザ7が有する電波発信源8から発信された電波が到達している場合には、ステップS20に移行する。
ここで、電波発信源8は一定間隔等の予め設定した周期で電波を発信している。従って、電波の受信によって、無線通信手段Qから電波発信源8までの距離を取得することは可能である。
【0028】
ステップS20では、各無線通信手段Qでその電波を受信して、その受信信号を距離判定用に変換した信号を取得する。
ステップS30では、変数iに1を代入してステップS40に移行する。この変数iの値は、各無線通信手段Qの番号に対応する。なお、図6の処理では、無線通信手段Qの個数が3つに限定せず、無線通信手段Qの数をNとして、汎用性を持たせ場合で説明している。
【0029】
ステップS40では、無線通信手段Q(i)からの信号に基づき、各無線通信手段Qからユーザ7が有する電波発信源8までの相対距離r1、r2、r3を演算して取得する。ここで、取得した各相対距離r1、r2、r3には、測定する際に生じる測距誤差を含む。従って、複数回、取得した相対距離r1、r2、r3の値を平均化することによって、より確からしい電波発信源8と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3を取得することが好ましい。
【0030】
ここで、電波発信源8と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3を取得する方法としては、大きく分けて、2つの方法がある。1つの方法は電波の強度によって相対距離r1、r2、r3を推定する方法である。他の方法は、電波の到達時間を利用した方法である。前者(電波の強度)による方法は、比較的簡単な装置で電波発信源8と車両1との相対距離r1、r2、r3を測定できるものの、障害物の影響を受けやすい。この結果、大きな誤差を含む場合があり、高い精度の相対距離r1、r2、r3を求めることが困難である。それに対して、後者(電波の到達時間)による方法は、電波を受信することさえ可能であれば、相対距離r1、r2、r3を測定することが可能である。また、後者による方法は、比較的高い精度の相対距離r1、r2、r3を求めることが可能である。ここでは、そのどちらの方法を用いても良いものとする。
【0031】
次に、ステップS50にて、変数iを1カウントアップしてステップS60に移行する。
ステップS60では、変数iがNより大きくなったか否かを判定する。変数iがN以下の場合にはステップS40に戻る。一方、変数iがNより大きくなった場合には、ステップS70に移行する。
すなわち、上記ステップS40〜S60の処理を無線通信手段Qの個数分、すなわち、本実施形態では3回繰り返してステップS70に移行する。
ステップS70では、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)を算出する。その後、ステップS80に移行する。
【0032】
この算出方法としては、上述のように、2つの方法を例示できる。すなわち、第1の方法は、上述のように連立方程式を最小2乗法を用いて解く方法である。第2の方法は、人間と車両1のダイナミクス、および、誤差のモデル(誤差の形態、分散)を考慮して推定する方法(例えば、カルマンフィルタを利用する方法)である。ここで、使用する推定方向に応じて、車両1周囲の測位誤差の分布情報を予め求めて、測位誤差記憶テーブル3Caに記憶すれば良い。
【0033】
次に、ステップS80では、算出された電波発信源8の相対位置座標に関して、測位誤差記憶テーブル3Caを用いて、現時点の位置で誤差がどの程度含まれているのかを判定する。すなわち、図5で示したような測位誤差記憶テーブル3Ca(距離誤差が記憶されたもの)を参照して、算出された電波発信源8の相対位置座標に含まれる現時点の位置での誤差の大きさを判定する。なお、測位誤差記憶テーブル3Caは、角度誤差のみを記憶したものであっても良い。
【0034】
例えば、車両1上に無線通信手段を前方に2個、後方に1個、正三角形をなすように設置し、図7(a)のように、電波発信源8が車両1側方に位置している場合を考える。現在、電波発信源8(ユーザ)が存在する位置に関しては、算出された相対位置座標と測位誤差記憶テーブル3Caを比較した結果、相対位置座標に対して、誤差が4〜5[m]含まれていることが判定できる。
【0035】
次に、ステップS90にて、現時点における相対位置座標に含まれる誤差よりも、当該相対位置座標に含まれる誤差が小さくなるような候補点を、次の移動目標に決定する。
ここで、本実施形態で例示する車両1は、直進と回転、および、その組み合わせで移動する車両1の例である。このため、車両1は、側方に位置する電波発信源8に向けて、真横への移動が出来ない。
このため、車両1の動きとして1の制御周期で移動可能な範囲(直進と回転、および、その組み合わせ)で、相対位置座標に含まれる現在の誤差よりも小さくなり、かつ、電波発信源8と車両1との位置関係が近くなるような候補点を選択し、選択した候補点を、次の移動目標に設定する。
【0036】
また、図7の場合には、車両前方方向に長くなるように誤差分布が広がっており、車両前方で誤差が小さい傾向になる、このため、車両1を回転させることによって、電波発信源8の相対座標に含まれる誤差の大きさを小さくすることが可能である。従って、この場合には、車両1に対して電波発信源8が側方に位置する場合には、車両1の進行方向に電波発信源8の位置が近づくまで、回転運動を優先して車両1を移動させるような候補点を次の移動目標に設定する。このように候補点を設定することで、相対位置座標に含まれる誤差が小さくなる方向に車両1は移動することとなる。
【0037】
すなわち、図7(a)の場合には、図7(b)〜(d)のように、車両1は優先的に回転運動を行う移動を繰り返すこととなる。これによって、相対位置座標に含まれる誤差が連続的に小さくなる方向に、つまりユーザを誤差1〜2[m]の位置になるように、車両1が移動出来るようになる。
ステップS100では、車両1と電波発信源8との相対位置関係(相対距離、相対角度)から、直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを決定する。すなわち、指令値バランス調整手段3Dcが、車両1に対する電波発信源8の相対位置関係(特に相対角度)に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する。例えば、上記指令値バランス調整手段3Dcは、図8に示すように、車両1の進行方向に対する電波発信源8の角度差Δθが大きいほど、相対的に直進運動よりも回転運動が優先するように制御ゲインを変更する。図8中、符号Sは、次の移動目標を表す。
【0038】
具体的には、直進運動に関する制御ゲインである速度ゲインKvは、平面視における車両1の進行方向に対する電波発信源8の角度差Δθの絶対値に応じて変更し、角度差Δθの絶対値が大きいほど、速度ゲインKvを小さくなるように設定する。その関係の例を図9に例示する。この例では、段階的に角度差に対する速度ゲインKvを設定変更する場合の例である。連続的に変更するようにしても良い。
【0039】
また、回転運動に関する制御ゲインである角速度ゲインKγは、角度差などに関係なく一定の値であって、速度ゲインKvの最大値以上の値に設定する。その関係の例を図10に示す。
これによって、相対的に、角度差Δθが大きいほど、速度ゲインKvよりも角速度ゲインKγが大きくなる。すなわち、電波発信源8が車両1の進行方向以外に検出された場合には直進運動よりも回転運動が優先するように制御ゲインを変更することとなる。
ここで、通常、車両1と電波発信源8との相対位置関係を目標値に収束させる制御を行う。そして、電波発信源8に対して車両1が1mまで接近する位置であって、且つ車両1の進行方向に電波発信源8が位置する位置を、最終的な目標位置とする。
【0040】
ただし、速度と角速度によって車両1の移動制御を行う場合には、速度成分により、最小回転半径が大きくなる傾向があり、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差を小さくするような目標値への収束ができないことが予測される。そのため、本実施形態では、車両1側方に電波発信源8が位置する場合など、角度誤差が大きく、車両1の移動制御として、回転移動を優先して実施したい場合には、通常、定数として設定されている制御ゲインのうち、速度制御に関する制御ゲインである速度ゲインKvを相対的に小さく。この結果、回転移動を優先的に行うような所望の動作を行わせる。
【0041】
ステップS110では、調整した制御ゲインを用いて、車両1の移動に関する制御指令値を生成する。簡単な制御指令値の考え方としては、現時点における車両1の位置から見た目標値までの相対距離、相対角度をフィードバックして、制御目標値(追従移動の目標値と、車両1との相対位置関係をどの程度にしたいかの指標)との差異に対して、コントローラにおけるゲインを乗じたP制御(比例制御)がある。
【0042】
すなわち、車両1と電波発信源8との相対位置関係(相対距離、相対角度)から、直進運動及び回転運動に関する制御指令値(速度、角速度)を生成する。具体的には、下記式によって、直進運転指令生成手段3Daが、車両1を直進運動させるための第1の移動指令値を生成する。また、回転運動指令生成手段3Dbが、車両1を回転運動させるための第2の移動指令値を生成する。
v = −Kv・(dr* −dr)
γ = −Kγ・(dθ* −dθ)
ここで、
dr:現在の相対距離
dr*:目標相対距離
dθ:現在の相対角度
dθ*:目標相対角度
である。
そして、ステップS120で、上記制御指令値を駆動部に出力する。
車両1の移動に関する制御ブロックを図11に示す。
ここで、速度と角速度で移動の制御をする場合を例示しているが、適宜、加速度や角加速度も制御する。
【0043】
(動作作用)
車両1に設置した各無線通信手段Qが、移動目標物が有する電波発信源8から発信された電波を受信し、ユーザ7と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3を取得する。そして、車両1に対する移動目標物の相対位置座標(xu、yu)を算出する。
車両1の可能な移動のうち、その相対位置座標に含まれる誤差が小さくなる候補点を選択して、その候補点を移動目標に向けて車両1を移動させる。これを繰り返すことで、車両1は電波発信源8を有するユーザに追随して移動する。
【0044】
ここで、本実施形態で例示する車両1は、直進と回転、および、その組み合わせで移動する車両1の例である。このため、車両1は、側方に位置する電波発信源8に向けて、真横への移動が出来ない。すなわち、本実施形態の車両1は、直進運動と回転運動で移動する構成である。このため、車両1の動きとして可能な範囲は、直進と回転、および、その組み合わせで移動可能な範囲となる。その移動可能な範囲で、相対位置座標に含まれる現在の誤差よりも小さくなり、かつ、電波発信源8と車両1との位置関係が近くなるような点を、次の移動目標に設定する。
【0045】
図7の場合には、車両前方方向に関して、誤差分布が広がっており、誤差が小さい傾向になるため、車両1を回転させることによって、電波発信源8の相対座標に含まれる誤差の大きさを小さくすることが可能である。そのため、図7(b)〜(d)のように、制御周期毎に車両1は回転を主体とした移動を繰り返すことで、相対位置座標に含まれる誤差が連続的に小さくなる方向に、例えばユーザを誤差1〜2[m]の位置になるように、車両1を移動させることができる。
【0046】
ただし、電波発信源8も移動しているため、単純に車両1を回転させれば良いわけではない。その都度、電波発信源8と車両1との位置関係を考慮して、電波発信源8の相対位置座標における誤差の小さい方向に移動させることになる。
また、車両1側方に電波発信源8が位置する場合など、角度誤差が大きい場合には、車両1の移動制御として、回転移動を優先して実施するように、速度制御に関する制御ゲインである速度ゲインKvを小さくすることで、回転移動を優先的に行うような所望の動作を行わせる。
【0047】
以上のように、電波発信源8に相対位置座標に含まれる誤差成分の小さくなり、かつ、電波発信源8に近づく方向を車両1の移動方向として決定することで、ユーザの相対位置座標を正確に判定することが可能である。その結果、相対位置座標に含まれる誤差の影響を受けづらくなり、ユーザに対して、滑らかな追従移動を行うことが可能となる。
ここで、車両1は移動体を構成する。相対位置座標は相対位置情報を構成する。
ステップS30〜S60は、相対距離取得手段3Aを構成する。ステップS70及びステップS80は、目標位置取得手段3Bを構成する。ステップS90は、移動方向決定手段を構成する。ステップS100〜S120は、移動指令値生成手段3Dを構成する。ステップS90は、誤差推定値算出比較手段3Cbを構成する。
【0048】
(本実施形態の効果)
(1)相対距離取得手段は、電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源8までの各相対距離を取得する。目標位置取得手段は、取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源8の相対位置情報を推定する。移動方向決定手段3Cは、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に基づき、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域に、移動体の移動すべき方向を設定する。移動指令値生成手段3Dは、上記設定した移動方向への移動のための移動指令値を生成する。
【0049】
推定した電波発信源8の相対位置情報に含まれる誤差成分を抑制するような領域に移動方向を選択する。これによって、電波発信源8に追従移動しながら、誤差成分を抑制することができる。
すなわち、推定した相対位置に含まれる誤差を抑制するように、移動方向を決定する。これによって、追従すべき方向の誤差を抑えつつ、目標とする電波発信源8に追従移動することが可能となる。この結果、確からしさの高い相対位置に向けて追従制御を行うことが出来ることで、追従性を向上した追従制御が可能となる。
【0050】
(2)上記移動方向決定手段3Cは、平面視における移動体周囲の測位誤差の分布情報を記憶する測位誤差記憶テーブル3Caを有し、その測位誤差記憶テーブル3Caを参照することで、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域を特定する。
車両周囲における測位誤差分布を記憶した測位誤差記憶テーブル3Caを有しているので、あらかじめ、推定された相対位置座標に含まれる誤差の度合いを知ることができる。これによって、誤差が小さくなる方向を選択可能となる。
【0051】
(3)上記測位誤差記憶テーブル3Caは、移動体に対する電波発信源8の実際の相対距離と推定される相対距離の差分である距離誤差、若しくは、移動体に対する電波発信源8の実際の相対角度と推定される相対角度の差分である角度誤差のうち、少なくとも角度誤差についての分布情報を記憶している。
少なくとも角度誤差に関する測位誤差記憶テーブル3Caを有しているので、特に方向間違いを起こりうる角度誤差に対応可能となる。
【0052】
(4)上記移動方向決定手段3Cは、移動体周囲の測位誤差分布に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差と、次の制御周期で移動体が移動可能な領域内に設定した候補点での相対位置情報の誤差を比較する誤差推定値算出比較手段3Cbを備える。そして、誤差推定値算出比較手段3Cbの比較に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さくなる候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定する。誤差が小さくなる候補点は、例えば、誤差が一番小さくなる候補点を選択すればよい。
現時点における誤差と、次の移動目標の候補点における誤差を算出して比較する。これによって、誤差が小さくなるような位置を次の移動目標点として決定することができる。
【0053】
(5)上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とする。
これによって、移動体の前方で誤差が小さくなる位置となる。この結果、誤差が小さくなる方向に移動体を移動制御することで、電波発信源8を車両前方に位置させやすくなる。
【0054】
(6)直進運転指令生成手段3Daは、移動体を直進運動させるための第1の移動指令値を生成する。回転運動指令生成手段3Dbは、移動体の回転運動をさせるための第2の移動指令値を生成する。指令値バランス調整手段3Dcは、移動体に対する電波発信源8の相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する。
車両1と電波発信源8との相対位置関係に応じて、現時点における誤差よりも誤差が小さくなるような候補点に移動する移動ルートとなるように、制御ゲインを変更する。この結果、誤差を抑制しつつ、滑らかな追従移動を行うことができる。
【0055】
(7)上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とする。上記指令値バランス調整手段3Dcは、移動体の進行方向に対する電波発信源8の相対角度が大きいほど、相対的に、直進運動に関する制御の制御ゲインよりも回転運動に関する制御の制御ゲインを大きくする。
これによって、電波発信源8が車両1の進行方向に検出された場合には、車両進行方向の距離を接近させて角度方向の距離誤差を抑制する。電波発信源8が車両1の進行方向以外に検出された場合には、電波発信源8に対して車両1の進行方向を一致させるべく、回転運動を優先して車両1を移動させる。この結果、相対位置座標の誤差を抑制しつつ、違和感のない追従移動を行うことができる。
【0056】
(変形例)
(1)上記移動方向決定手段3Cは、移動体周囲における測位誤差分布に基づき、移動体の移動可能な範囲内で現時点の位置から電波発信源8の位置に向けて、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さく且つ電波発信源8に近づくにつれて当該誤差が小さくなる移動目標の候補点の並びを設定し、その設定した移動目標の候補点の並びに基づき、今後の移動体の移動すべき方向を設定するようにしても良い。
現時点における誤差よりも誤差が連続的に小さくなるような候補点の列を、今後の移動目標として決定する。これによって、測位結果に含まれる誤差成分を抑制して、追従移動の精度を向上することができる。
【0057】
単に、現時点における電波発信源8の相対位置座標に含まれる誤差よりも、次の状態で、相対位置座標に含まれる誤差が小さくなるような位置へと車両1を移動させるだけではなく、さらに、その次の状態における誤差を考慮する。この結果、誤差を小さくし続けるような追従移動を可能にすることができる。これにより、ユーザに対して、車両1が正確な追従移動を行うだけでなく、本来、相対位置座標に含まれる誤差の影響によって、ギクシャクしていた追従移動動作を滑らかにすることができるといった効果も期待できる。
【0058】
ここで、上記移動方向決定手段3Cが、「現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さくなる候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定する」する場合(第1の移動方向決定方法)と、「移動体周囲における測位誤差分布に基づき、移動体の移動可能な範囲内で現時点の位置から電波発信源8の位置に向けて、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さく且つ電波発信源8に近づくにつれて当該誤差が小さくなる移動目標の候補点の並びを設定し、その設定した移動目標の候補点の並びに基づき、今後の移動体の移動すべき方向を設定する」する場合(第2の移動方向決定方法)について説明する。
【0059】
なお、車両1(移動体)に対して電波発信源8が側方に位置していた場合で説明する。
第1の移動方向決定方法では、図12に示すように、回転(旋回)移動に重点を置きつつ、ユーザ(電波発信源8)に接近する。
なお、図12及び図13において、□は、静止しているユーザ(電波発信源8)を表す。また、実際には車両1(移動体)が移動するが、分かりやすくするため、車両1(移動体)の位置を固定して図示している。
【0060】
すなわち、第1の移動方向決定方法では、1制御周期毎に移動可能範囲における誤差が小さくなる移動目標を選択する。このため、ユーザ(電波発信源8)の位置を、車両前方(測位誤差の小さい領域)に存在させるべく、車両1の回転移動を中心にして、ユーザ(電波発信源8)への接近を行う。この例では、次の制御周期で測位誤差の小さな領域に、ユーザ(電波発信源8)を位置させれば良いため、 相対距離と相対角度に基づく制御において、相対角度に基づく回転移動に重点を置いて制御する。
【0061】
ここで、本実施形態では、測位誤差のマップを見て分かるように、誤差分布は進行方向に縦長の楕円に近似可能な形状分布になっており、ユーザ(電波発信源8)が側方にいる場合には、回転移動をすれば、測位誤差が小さくなることになる。しかし、回転してから直進という形態を取ると移動量が大きくなるため、ユーザ(電波発信源8)に対して遠回りすることになる。このため、測位誤差の大きさを前回の制御周期よりは小さくし、遠回りしないことを目的にして移動する。
具体的には、測位誤差が前回の制御周期よりも大きくならない範囲で、回転しながら直進することで、測位誤差を抑制した移動を可能にする。
【0062】
一方、第2の移動方向決定方法では、図15に示すように、先に回転(旋回)移動を行い、その後に直進運動を行って、ユーザ(電波発信源8)に接近する。すなわち、第2の移動方向決定方法では、ユーザ(電波発信源8)が停止していれば、ユーザ(電波発信源8)に向かう複数の候補点列を設定して、順次、上記候補点列を移動目標として移動する。すなわち、ユーザ(電波発信源8)の位置を、車両前方(測位誤差の小さいエリア)に存在させるべく、最初に、車両1の回転移動を行って、車両前方にユーザ(電波発信源8)を存在させ、そこから直進することで、ユーザ(電波発信源8)への接近を行う。
【0063】
ここで、回転のみした場合、必然的に測位誤差が抑制されることになる。また、測位誤差としては、回転のみで1〜2m程度抑制できることになり、かつ、直進移動が残されているため、次のステップにおいては、必ず、測位誤差が抑制できることになる。
すなわち、第1の移動方向決定方法では、各制御周期において、それぞれ移動可能な範囲で誤差が小さくなる領域を選択して車両1を移動させることになる。このため、車両側方に電波発信源8が位置する場合には、回転運動が優先しつつも直進運動も行う事となる。
【0064】
これに対し、第2の移動方向決定方法では、現在の車両位置から連続して誤差が小さくなる走行経路(候補点の並び)を選択し、電波発信源8が停止していれば、その走行経路に沿って方向に車両1が移動するように走行制御する。また、電波発信源8が移動した場合には、 再度、走行経路となる候補点を設定することで、滑らかな移動を可能とする。但し、ユーザ(電波発信源8)への接近時間は、第1の移動方向決定方法の方が有利である。
【0065】
(2)上記無線通信手段Qは、電波発信源8が有する電波発信源8から発信された電波を受信するアンテナであり、これらで受信した電波を信号に変換するコントローラを別途実装している。
複数の場所にアンテナと無線機能とコントローラを有する無線通信手段Qを設置しなくても、複数の場所にアンテナを設置し、それを統括する形で無線機能とコントローラを設置する形態を取れる。この結果、システムの簡素化とコスト削減を図ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な装置等については同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。
本実施形態の移動指令値生成手段3Dは、図14に示すように、目標値変更手段3Ddを備える。その他は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
第1実施形態と共通する基本的構成についての重複した説明は避け、ここでは異なる点を中心に説明する。
本実施形態は、第1実施形態で示したユーザの相対位置座標に含まれる誤差を小さくして、かつ、ユーザと車両1との位置関係を接近させるような車両1の移動方向に対して、動的に制御目標値を変更しながら、車両1を移動させる制御する例である。ここで、制御目標値とは、追従移動の目標値と、車両1との相対位置関係をどの程度にしたいかの指標である。
【0068】
次に、本実施形態の上記移動制御コントローラ3の処理を、図15を参照しつつ説明する。
第1実施形態とは、ステップS90とステップS100との間にステップS210〜ステップS230の処理を設けた点が異なる。
このSステップS210〜ステップS230の処理は、車両1の移動に関して、制御目標値に収束している場合、もしくは、制御目標値への収束が遅い場合に、制御目標値を変更する処理を行う。
先ず、ステップS10〜S90での処理によって車両1の移動目標を決定した後に、ステップS210に移行する。
ステップS210では、車両1の移動に関して、制御目標値に収束していないかを判定する。制御目標値に収束している場合にはステップS230に移行する。一方、制御目標値に収束していない場合にはステップS220に移行する。
【0069】
ショッピングカートを想定した場合、制御目標値は以下のように設定する。
まず、相対距離に関する制御目標値は、ユーザに対して、どの程度の間隔を維持したいかを意味している。ユーザの歩きやすさ(ユーザとショッピングカートが干渉しないこと)を考慮すると、1[m]程度の間隔を設けておくことが得策である。ただし、一旦でも停止した後に再移動した場合には、車両1が急に移動するため、追従性が悪化する問題も考えられる。
【0070】
また、相対角度に関する制御目標値は、ユーザに対して、どの程度の角度で追従するかを意味している。ユーザの相対位置座標に関しては、角度誤差の影響が大きくなる傾向があることから、第1実施形態においては、相対角度に関する制御目標値をゼロにするような制御目標値を与えるのが得策である。ただし、車両1上における無線通信手段の設置要件によっては、相対角度に関する制御目標値を違う値に設定したほうが良い場合も多い。
【0071】
第1実施形態において、制御目標値に収束している状態としては、例えば相対距離が2[m]、相対角度が0度(車両1の前進方向に電波発信源8が位置する場合)になっている状態とする。ただし、ユーザの相対位置座標には誤差が含まれているため、相対距離と相対角度に対して、許容範囲を設けておき、その値以内に収まるような場合に、制御目標値に収束している状態として判定する。
【0072】
制御目標値に収束している場合には、これ以上、車両1が移動する必要がない状態ではある。ただし、上記にも示したように、例えば、電波発信源8と車両1との相対距離を小さくしておく方が、電波発信源8の相対位置座標に含まれる誤差を小さくできるといったメリットがある。図13(a)に、その場合の車両1の動きの例を示す。この例では、ユーザは車両1に対して2[m]前方、相対角度0度に存在しており、制御目標値に収束している状態である。しかし、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、1〜2[m]となっている。そこで、図13(b)のように、相対距離に関する制御目標値を1[m]として、ユーザに対して、車両1をさらに接近させると、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、0〜1[m]に抑制可能となる。
【0073】
このため、ステップS230では、制御目標値に収束している場合には、相対距離に関する制御目標値を変更して、ユーザと車両1との相対距離を小さくするような制御を行うようにする。そして、ステップS100に移行する。
一方、車両1の移動に関して、制御目標値に収束していない場合には、これまで通りの移動制御を行うことになる。ただし、ステップS220にて、制御目標値への収束の早さを判定する。収束が早い場合にはステップS100に移行する。
【0074】
一方、収束が遅いような場合には、ステップS230に移行して制御目標値の変更を行う。この場合、ユーザの動きと車両1の動きが一致していないような場合であり、具体的には、ユーザが停止している状態から突然走り出した場合や、誤差の影響により、ユーザの存在位置が定まらない場合などが考えられる。そのような場合、前者であれば、相対距離に関する制御目標値を小さくして、より近い距離で追従させるようにするとともに、結果として、その速度も向上することで、追従性を向上する。また、後者であれば、相対角度に関する制御目標値を大きくして、追従移動に関する角度の許容範囲を広くして、誤差に対して寛容にするといった制御が可能になる。
このように、適宜、制御目標値を変更する。その後、S110〜S112似て、第1実施形態と同様に、制御ゲインを変更して、車両1を移動させる。これによって、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差を小さくしつつ、ユーザに対して追従移動するような車両1の移動を実現することができる。
【0075】
(動作・作用)
車両1に対する電波発信源8の位置が、制御目標値に収束している場合(車両1の進行方向に電波発信源8が位置する場合)には、これ以上、車両1が移動する必要がない状態ではある。ただし、上記にも示したように、例えば、電波発信源8と車両1との相対距離を小さくしておく方が、電波発信源8の相対位置座標に含まれる誤差を小さくできるといったメリットがある。
【0076】
図16(a)に、その場合の車両1の動きの例を示す。この例では、ユーザは車両1に対して2[m]前方、相対角度0度に存在しており、制御目標値に収束している状態である。しかし、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、1〜2[m]となっている。そこで、図16(b)のように、相対距離に関する制御目標値を1[m]として、ユーザに対して、車両1をさらに接近させると、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、0〜1[m]に抑制可能となる。
【0077】
このように、制御目標値に収束している場合には、相対距離に関する制御目標値を変更して、ユーザと車両1との相対距離を小さくするような制御を行う。
また、車両1の移動に関して、制御目標値に収束していない場合であって、収束が遅いような場合にも、制御目標値の変更を行う。この場合、ユーザの動きと車両1の動きが一致していないような場合であり、具体的には、ユーザが停止している状態から突然走り出した場合や、誤差の影響により、ユーザの存在位置が定まらない場合などが考えられる。前者であれば、相対距離に関する制御目標値を小さくして、より近い距離で追従させるようにするとともに、結果として、その速度も向上することで、追従性を向上する。また、後者であれば、相対角度に関する制御目標値を大きくして、追従移動に関する角度の許容範囲を広くして、誤差に対して寛容にするといった制御が可能になる。
【0078】
すなわち、制御目標値(相対距離、相対角度)を変更することで、ユーザの相対座標に含まれる誤差を小さくする。これによって、正確にユーザの位置座標を検出しつつ、ユーザと車両1との相対距離と相対角度を小さくする。
また、ユーザが停止している状態においては、車両1とユーザとの相対距離を小さくすることで、ユーザに対する車両1の追従性を向上することができる。
さらに、ユーザの突然の挙動変化により、制御目標値への収束が悪い場合にも、収束の悪さを改善して、ユーザに対する車両1の追従性を向上して、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差の大きさを小さくすることができる。
【0079】
(本実施形態の効果)
(1)車両1と電波発信源8との相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、制御目標値を変更する。
これによって、相対位置情報に含まれる誤差を抑制しつつ、利用シーンにあった追従移動を行うことができる。
(2)電波発信源8が車両1の進行方向に検出された場合には、車両1進行方向の距離を接近させて角度方向の距離誤差を抑制するとともに、電波発信源8が車両1の進行方向以外に検出された場合には、電波発信源8に対して車両1の進行方向を一致させるべく、車両1を回転させる。
これによって、相対位置情報に含まれる誤差を抑制しつつ、利用シーンにあった違和感のない追従移動を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 車両
3 移動制御コントローラ
3A 相対距離取得手段
3B 目標位置取得手段
3C 移動方向決定手段
3Ca 測位誤差記憶テーブル
3Cb 誤差推定値算出比較手段
3D 移動指令値生成手段
3Da 直進運転指令生成手段
3Db 回転運動指令生成手段
3Dc 指令値バランス調整手段
7 ユーザ
8 電波発信源
Kv 速度ゲイン
Kγ 角速度ゲイン
Q 無線通信手段
R 移動可能な領域
Δθ 角度差
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波発信源を有する移動目標物に向けて車両などの移動体を追従制御させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動目標物に車両を追従させる技術としては、例えば特許文献1に記載した技術がある。この技術は、指向性を制御可能な電子制御式アレーアンテナ(エスパアンテナ)の受信指向性を変化させて電波を受信する。その受信した電波信号の強度が最大となる方向を判定し、判定した電波信号の強度が最大となる方向を電波発信源からの電波到来方向とする。そして、その電波到来方向に向けて車両を自律移動させる。なお、電波信号の強度レベルに応じて、移動の停止、運転再開の判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−177820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各励振素子によって取得した電波信号の強度を用いて、車両に対する移動目標物の方位を判定する。しかしながら、電波信号の強度を精度良く検出する事は困難である為、この結果、電波信号の強度に含まれる誤差によって追従すべき方向に大きな誤差が発生する可能性がある。そして、その時点における電波信号の強度が最大となる方向に単に接近するといった追従方法であるため、車両の動きがギクシャクした追従移動となってしまうおそれがある。
本発明は、追従性を向上した追従制御を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、移動体に対する移動目標としての電波発信源の位置を推定し、推定した電波発信源の位置に向かうように移動体の移動を制御する追従制御する技術である。上記移動体に対し平面視で互いに重ならない位置に複数の無線通信手段を設定して、上記電波発信源からの電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源までの各相対距離を取得する。取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源の相対位置情報を推定する。そして、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域に、移動体の移動すべき方向を設定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、推定した相対位置情報に含まれる誤差を抑制するように、移動方向を決定する。これによって、追従すべき方向の誤差を抑えつつ、目標とする電波発信源に追従移動することが可能となる。すなわち、確からしさの高い相対位置に向けて追従制御を行うことが出来る。この結果、追従性を向上した追従制御となる。
ここで、相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる方向に連続的に移動させることで、確実に移動目標とする電波発信源に近づく。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る車両と電波発信源の関係を示す模式図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る追従制御装置を備えた車両構成を示す概要構成図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る各無線通信手段と電波発信源(ユーザ)との位置関係を示す平面図である。
【図4】電波発信源の存在位置による相対位置座標に含まれる誤差の分布を示す図である。
【図5】電波発信源の存在位置による相対位置座標に含まれる誤差の分布状態を示す図である。
【図6】本発明に基づく第1実施形態に係る移動制御コントローラの処理を示す図である。
【図7】本発明に基づく第1実施形態に係る車両の移動軌跡の例を説明する図である。
【図8】車両と次の移動目標との関係を示す図である。
【図9】速度ゲインについて説明する図である。
【図10】角速度ゲインについて説明する図である。
【図11】制御ブロックの例を示す図である。
【図12】移動パターンの例を説明する図である。
【図13】移動パターンの例を説明する図である。
【図14】本発明に基づく第2実施形態に係る追従制御装置を備えた車両構成を示す概要構成図である。
【図15】本発明に基づく第2実施形態に係る移動制御コントローラの処理を示す図である。
【図16】移動パターンの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、本実施形態では、図1に示すように、移動体として2輪の駆動輪を有する車両1を例示して説明する。但し、移動体は、3輪若しくは4輪以上の車輪を有する車両であっても良い。また、移動体は車両1に限定せず、二足歩行のロボットや地面から浮揚して移動する浮揚体(ホーバーなど)等であっても良い。要は、目標に向けて追従移動するように駆動制御可能な構造を備えた移動体であれば良い。
【0009】
(構成)
まず構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る追従制御装置を搭載した車両1を示す図である。
この図2に示すように、車両1には、駆動装置、複数の無線通信手段Q、及び移動制御コントローラ3を設ける。なお、移動制御コントローラ3は、車両1に搭載しなくても良い。本実施形態では、搭載する無線通信手段Qの数が3つ場合を例示する。
上記駆動装置は、左右の駆動輪を駆動するモータ5で構成する。このモータ5を、移動制御コントローラ3からの駆動指令に基づき駆動制御する。この結果、車両1は直進運動及び回転運動を行う。ここで、本実施形態の1は直進運動及び回転運動によって移動する構成である。このため、1の制御周期で車両が移動可能な領域Rは、図3に示すように、所定角度の回転と所定距離の前進とを組み合わせた領域となる。
【0010】
上記各無線通信手段Qは、図1に示すように、移動目標物(ユーザ7)が有する電波発信源8から発信された電波を受信する。各無線通信手段Qは、受信した電波を信号に変換して移動制御コントローラ3に出力する。本実施形態の各無線通信手段Qは、無指向性アンテナと、そのアンテナで受信した電波を信号に変換する通信制御部とを有する。
ここで、各無線通信手段Qをアンテナだけで構成し、各アンテナが受信した電波を信号に変換する通信制御部を別途設ける構成としても良い。この場合には、3つのアンテナに対して通信制御部を一つとしても良い。
【0011】
上記3つの無線通信手段Q(1)〜Q(3)は、平面視において、互いに重ならないように配置する。本実施形態では、図3に示すように、平面視において、車両1の重心を中心Gとした円上に、3つの無線通信手段Qを位置させている。更に、本実施形態では、円周方向で隣り合う無線通信手段Q間の距離が等しくなるように設定する。すなわち、平面視で、3つの無線通信手段Qが、正三角形の頂点位置にそれぞれ位置するように配置する。
【0012】
更に、本実施形態では、上記円の中心Gに対し車両1の進行方向後方に、1つの無線通信手段Q(1)を配置する。また、上記円の中心Gに対し車両1の進行方向前方且つ左右対称位置に、2つの無線通信手段Q(2)、Q(3)を配置する。
ここで、無線通信手段の個数に関しては、個数を増やすほど、車両に対するユーザの相対位置座標を正確に算出することが可能であり、結果として、ユーザに対する高精度な追従が可能となる。
【0013】
また、本実施形態では、電波の受信特性(受信エリア)として電波が指向なく伝搬する無指向性のアンテナを採用している。このため、1つの無線通信手段Qによる電波の受信によって、電波発信源8の向きは判定出来ないが、各無線通信手段Qから電波発信源8までの相対距離r1、r2、r3は推定可能である。
また、上記移動制御コントローラ3は、各無線通信手段Qが受信した信号に基づき、電波発信源8との相対距離r1、r2、r3を判定し、さらに相対距離r1、r2、r3から、電波発信源8の相対位置情報である相対位置座標(xu、yu)を推定する。その推定結果に応じて、車両1の移動方向を決定する。そして、電波発信源8を有する移動目標物に追従するための駆動指令を各モータ5に出力する。
【0014】
移動制御コントローラ3は、図2に示すように、相対距離取得手段3A、目標位置取得手段3B、移動方向決定手段3C、及び移動指令値生成手段3Dを備える。
相対距離取得手段3Aは、電波の受信に基づき、各無線通信手段Qから電波発信源8までの各相対距離r1、r2、r3を取得する。
目標位置取得手段3Bは、取得した複数の相対距離r1、r2、r3から、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)を推定する。
【0015】
移動方向決定手段3Cは、電波発信源8に接近する方向であって、目標位置取得手段3Bが推定した相対位置座標(xu、yu)に含まれる誤差が小さくなる領域に、車両1の移動すべき方向を設定する。
上記移動方向決定手段3Cは、図2に示すように、測位誤差記憶テーブル3Ca、誤差推定値算出比較手段3Cbを備える。
【0016】
測位誤差記憶テーブル3Caは、平面視における車両1周囲の測位誤差の分布情報を記憶する。測位誤差記憶テーブル3Caは、例えば、車両に対する電波発信源8の実際の相対距離と推定される相対距離の差分である距離誤差、若しくは、車両に対する電波発信源8の実際の相対角度と推定される相対角度の差分である角度誤差のうち、少なくとも角度誤差についての分布情報(後述の図5参照)を記憶している。
【0017】
誤差推定値算出比較手段3Cbは、車両周囲の測位誤差分布に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差と、次の制御周期で車両が移動可能な領域R内に設定した候補点での相対位置情報の誤差を比較する。
そして、上記移動方向決定手段3Cは、誤差推定値算出比較手段3Cbの比較に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が一番小さくなる領域内の候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定する。
【0018】
上記移動指令値生成手段3Dは、移動方向決定手段3Cが設定した移動方向に向けて車両1が移動するような駆動指令値を算出し、算出した駆動指令値をモータ5に出力する。
上記移動指令値生成手段3Dは、直進運転指令生成手段3Da、回転運動指令生成手段3Db、及び指令値バランス調整手段3Dcを備える。
直進運転指令生成手段3Daは、車両1を直進運動をさせるための第1の移動指令値を生成する。第1の移動指令値としては、速度指令値と加速度指令値とが考えられる。
回転運動指令生成手段3Dbは、車両1の回転運動をさせるための第2の移動指令値を生成する。第2の移動指令値としては、角速度指令値と角加速度指令値とが考えられる。
【0019】
指令値バランス調整手段3Dcは、車両1に対する電波発信源8の相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する。指令値バランス調整手段3Dcは、例えば、車両1の進行方向に対する電波発信源8の相対角度が大きいほど、相対的に、直進運動に関する制御の制御ゲインよりも回転運動に関する制御の制御ゲインを大きく設定する。すなわち、車両1の進行方向に対する電波発信源8の相対角度が大きいほど、回転(旋回)運動を優先する。
【0020】
次に、目標位置取得手段3Bによる、取得した複数の相対距離r1、r2、r3から、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)の取得について説明する。
上述の図3は、ユーザ7と車両1との位置関係、および、車両1上に設置した3つの無線通信手段Qとユーザ7との位置関係を示す図である。
なお、無線通信手段Qの個数Nに関しては、個数を増やすほど、車両1に対するユーザ7の相対位置座標(xu、yu)を正確に算出することが可能であり、結果として、ユーザ7に対する高精度な追従が可能となる。また、上述のように、各無線通信手段Qにおける電波の受信特性(受信エリア)として、電波が指向性なく伝播する無指向性アンテナを用いている。その3個以上の無線通信手段Qによって取得した相対距離r1、r2、r3の情報を用いることによって、車両1に対する移動目標物の相対位置座標(xu、yu)を算出することができる。
【0021】
図3に示すように、複数の無線通信手段Qの中心(車両1重心)を原点とする相対座標系を考える。
この相対座標系において、電波発信源8が(xu、yu)に存在し、(xi、yi)に設置した各無線通信手段Q(i=1、2、3)と電波発信源8との相対距離を、それぞれr1、r2、r3とする。この場合、各無線通信手段Qと電波発信源8との関係は、以下のような連立方程式で示すことができる。
(xu−x1)2+(yu−y1)2 = r12
(xu−x2)2+(yu−y2)2 = r22
(xu−x3)2+(yu−y3)2 = r32
【0022】
そして、理論的には、この連立方程式を解くことによって、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)を一意に算出することが可能である。ただし、実際には、電波発信源8と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3には測定誤差が含まれている。このため、上記の連立方程式を満足する解がないことが多く、最小2乗法を用いて解を求めるのが一般的である。その場合に、電波発信源8の真の相対位置座標を求めることは困難であり、この結果が測位誤差として生じることになる。
【0023】
図4に測位誤差を含んだユーザ7の相対位置座標(xu、yu)の算出結果(分布)の一例を示す。ここで本実施形態では、車両1上に無線通信手段Qを前方に2個、後方に1個、正三角形をなすように設置している。この場合、図4(a)のようにユーザ7が車両1の側方にいる場合には、図4(b)のように車両1の前方にいる場合と比較して、角度方向(左右方向)の測位誤差が大きくなる傾向がある。一般には、2つの無線通信手段Qが一直線に並ぶような場合、すなわち、図4の場合には、進行方向を基準にして、30度、約90度、150度、210度、約270度、330度の方向に関して、誤差が大きくなる傾向にある。一方、車両1からの距離方向の測位誤差に関しては、同一距離であれば、ユーザ7の存在位置にかかわらず、誤差に変化が無いか小さいことが分かる。
【0024】
図5に、本実施形態における車両1の周囲における、ユーザの真の相対位置座標と算出した相対位置座標の差(誤差の最大値)を可視化した結果を示す。車両は、座標の原点(0,0)に存在しており、誤差は1m刻みで色分けしている。距離方向の誤差は距離が同じであれば一定であるため、この誤差は角度のみに依存する結果となっており、測位誤差は車両前方方向に縦長の分布となっている。
【0025】
そのため、ユーザ7に対して、どの方向で追従するかによって、誤差の生じ方が異なることになる。本実施形態においては、算出された相対位置座標に基づいて、その誤差成分の大きさを判定して、誤差の小さくなる方向に移動しながら、ユーザ7に追従する動作となるように車両1を走行制御する。
そして、図5に示す誤差分布に基づき、誤差の分布情報を測位誤差記憶テーブル3Caに設定する。誤差の分布情報は、図5に示す誤差分布そのものでなくても良い。たとえば車両1の前進方向を長軸とした楕円形状の等高線で近似させて記憶しておいても良い。
【0026】
また、図5の誤差分布は、距離誤差と角度誤差の両方の誤差を使用した分布情報を例示している。角度誤差だけを使用した分布情報を測位誤差記憶テーブル3Caに設定しても良い。
次に、上記移動制御コントローラ3の処理を、図6を参照しつつ説明する。
ここで、説明を分かり易くするたに、電磁キーなどからなる電波発信源8を有する移動目標物としてユーザ7(人間)を想定する。また、制御する左右2輪の駆動輪を持つ車両1としてショッピングカート(従動輪を別途備えてても構わない。)を想定する。そして、ショッピングセンター内において、ショッピングカートがユーザ7に追従移動するシーンを想定する。
【0027】
移動制御コントローラ3は、所定のサンプリング周期毎(制御周期毎)に作動する。
まず、ステップS10にて、各無線通信手段Qからの信号に基づき、ユーザ7が有する電波発信源8から発信された電波が、3つの無線通信手段Qに到達したか否かを確認する。そして、全ての無線通信手段Qに対して、ユーザ7が有する電波発信源8から発信された電波が到達している場合には、ステップS20に移行する。
ここで、電波発信源8は一定間隔等の予め設定した周期で電波を発信している。従って、電波の受信によって、無線通信手段Qから電波発信源8までの距離を取得することは可能である。
【0028】
ステップS20では、各無線通信手段Qでその電波を受信して、その受信信号を距離判定用に変換した信号を取得する。
ステップS30では、変数iに1を代入してステップS40に移行する。この変数iの値は、各無線通信手段Qの番号に対応する。なお、図6の処理では、無線通信手段Qの個数が3つに限定せず、無線通信手段Qの数をNとして、汎用性を持たせ場合で説明している。
【0029】
ステップS40では、無線通信手段Q(i)からの信号に基づき、各無線通信手段Qからユーザ7が有する電波発信源8までの相対距離r1、r2、r3を演算して取得する。ここで、取得した各相対距離r1、r2、r3には、測定する際に生じる測距誤差を含む。従って、複数回、取得した相対距離r1、r2、r3の値を平均化することによって、より確からしい電波発信源8と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3を取得することが好ましい。
【0030】
ここで、電波発信源8と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3を取得する方法としては、大きく分けて、2つの方法がある。1つの方法は電波の強度によって相対距離r1、r2、r3を推定する方法である。他の方法は、電波の到達時間を利用した方法である。前者(電波の強度)による方法は、比較的簡単な装置で電波発信源8と車両1との相対距離r1、r2、r3を測定できるものの、障害物の影響を受けやすい。この結果、大きな誤差を含む場合があり、高い精度の相対距離r1、r2、r3を求めることが困難である。それに対して、後者(電波の到達時間)による方法は、電波を受信することさえ可能であれば、相対距離r1、r2、r3を測定することが可能である。また、後者による方法は、比較的高い精度の相対距離r1、r2、r3を求めることが可能である。ここでは、そのどちらの方法を用いても良いものとする。
【0031】
次に、ステップS50にて、変数iを1カウントアップしてステップS60に移行する。
ステップS60では、変数iがNより大きくなったか否かを判定する。変数iがN以下の場合にはステップS40に戻る。一方、変数iがNより大きくなった場合には、ステップS70に移行する。
すなわち、上記ステップS40〜S60の処理を無線通信手段Qの個数分、すなわち、本実施形態では3回繰り返してステップS70に移行する。
ステップS70では、車両1に対する電波発信源8の相対位置座標(xu、yu)を算出する。その後、ステップS80に移行する。
【0032】
この算出方法としては、上述のように、2つの方法を例示できる。すなわち、第1の方法は、上述のように連立方程式を最小2乗法を用いて解く方法である。第2の方法は、人間と車両1のダイナミクス、および、誤差のモデル(誤差の形態、分散)を考慮して推定する方法(例えば、カルマンフィルタを利用する方法)である。ここで、使用する推定方向に応じて、車両1周囲の測位誤差の分布情報を予め求めて、測位誤差記憶テーブル3Caに記憶すれば良い。
【0033】
次に、ステップS80では、算出された電波発信源8の相対位置座標に関して、測位誤差記憶テーブル3Caを用いて、現時点の位置で誤差がどの程度含まれているのかを判定する。すなわち、図5で示したような測位誤差記憶テーブル3Ca(距離誤差が記憶されたもの)を参照して、算出された電波発信源8の相対位置座標に含まれる現時点の位置での誤差の大きさを判定する。なお、測位誤差記憶テーブル3Caは、角度誤差のみを記憶したものであっても良い。
【0034】
例えば、車両1上に無線通信手段を前方に2個、後方に1個、正三角形をなすように設置し、図7(a)のように、電波発信源8が車両1側方に位置している場合を考える。現在、電波発信源8(ユーザ)が存在する位置に関しては、算出された相対位置座標と測位誤差記憶テーブル3Caを比較した結果、相対位置座標に対して、誤差が4〜5[m]含まれていることが判定できる。
【0035】
次に、ステップS90にて、現時点における相対位置座標に含まれる誤差よりも、当該相対位置座標に含まれる誤差が小さくなるような候補点を、次の移動目標に決定する。
ここで、本実施形態で例示する車両1は、直進と回転、および、その組み合わせで移動する車両1の例である。このため、車両1は、側方に位置する電波発信源8に向けて、真横への移動が出来ない。
このため、車両1の動きとして1の制御周期で移動可能な範囲(直進と回転、および、その組み合わせ)で、相対位置座標に含まれる現在の誤差よりも小さくなり、かつ、電波発信源8と車両1との位置関係が近くなるような候補点を選択し、選択した候補点を、次の移動目標に設定する。
【0036】
また、図7の場合には、車両前方方向に長くなるように誤差分布が広がっており、車両前方で誤差が小さい傾向になる、このため、車両1を回転させることによって、電波発信源8の相対座標に含まれる誤差の大きさを小さくすることが可能である。従って、この場合には、車両1に対して電波発信源8が側方に位置する場合には、車両1の進行方向に電波発信源8の位置が近づくまで、回転運動を優先して車両1を移動させるような候補点を次の移動目標に設定する。このように候補点を設定することで、相対位置座標に含まれる誤差が小さくなる方向に車両1は移動することとなる。
【0037】
すなわち、図7(a)の場合には、図7(b)〜(d)のように、車両1は優先的に回転運動を行う移動を繰り返すこととなる。これによって、相対位置座標に含まれる誤差が連続的に小さくなる方向に、つまりユーザを誤差1〜2[m]の位置になるように、車両1が移動出来るようになる。
ステップS100では、車両1と電波発信源8との相対位置関係(相対距離、相対角度)から、直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを決定する。すなわち、指令値バランス調整手段3Dcが、車両1に対する電波発信源8の相対位置関係(特に相対角度)に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する。例えば、上記指令値バランス調整手段3Dcは、図8に示すように、車両1の進行方向に対する電波発信源8の角度差Δθが大きいほど、相対的に直進運動よりも回転運動が優先するように制御ゲインを変更する。図8中、符号Sは、次の移動目標を表す。
【0038】
具体的には、直進運動に関する制御ゲインである速度ゲインKvは、平面視における車両1の進行方向に対する電波発信源8の角度差Δθの絶対値に応じて変更し、角度差Δθの絶対値が大きいほど、速度ゲインKvを小さくなるように設定する。その関係の例を図9に例示する。この例では、段階的に角度差に対する速度ゲインKvを設定変更する場合の例である。連続的に変更するようにしても良い。
【0039】
また、回転運動に関する制御ゲインである角速度ゲインKγは、角度差などに関係なく一定の値であって、速度ゲインKvの最大値以上の値に設定する。その関係の例を図10に示す。
これによって、相対的に、角度差Δθが大きいほど、速度ゲインKvよりも角速度ゲインKγが大きくなる。すなわち、電波発信源8が車両1の進行方向以外に検出された場合には直進運動よりも回転運動が優先するように制御ゲインを変更することとなる。
ここで、通常、車両1と電波発信源8との相対位置関係を目標値に収束させる制御を行う。そして、電波発信源8に対して車両1が1mまで接近する位置であって、且つ車両1の進行方向に電波発信源8が位置する位置を、最終的な目標位置とする。
【0040】
ただし、速度と角速度によって車両1の移動制御を行う場合には、速度成分により、最小回転半径が大きくなる傾向があり、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差を小さくするような目標値への収束ができないことが予測される。そのため、本実施形態では、車両1側方に電波発信源8が位置する場合など、角度誤差が大きく、車両1の移動制御として、回転移動を優先して実施したい場合には、通常、定数として設定されている制御ゲインのうち、速度制御に関する制御ゲインである速度ゲインKvを相対的に小さく。この結果、回転移動を優先的に行うような所望の動作を行わせる。
【0041】
ステップS110では、調整した制御ゲインを用いて、車両1の移動に関する制御指令値を生成する。簡単な制御指令値の考え方としては、現時点における車両1の位置から見た目標値までの相対距離、相対角度をフィードバックして、制御目標値(追従移動の目標値と、車両1との相対位置関係をどの程度にしたいかの指標)との差異に対して、コントローラにおけるゲインを乗じたP制御(比例制御)がある。
【0042】
すなわち、車両1と電波発信源8との相対位置関係(相対距離、相対角度)から、直進運動及び回転運動に関する制御指令値(速度、角速度)を生成する。具体的には、下記式によって、直進運転指令生成手段3Daが、車両1を直進運動させるための第1の移動指令値を生成する。また、回転運動指令生成手段3Dbが、車両1を回転運動させるための第2の移動指令値を生成する。
v = −Kv・(dr* −dr)
γ = −Kγ・(dθ* −dθ)
ここで、
dr:現在の相対距離
dr*:目標相対距離
dθ:現在の相対角度
dθ*:目標相対角度
である。
そして、ステップS120で、上記制御指令値を駆動部に出力する。
車両1の移動に関する制御ブロックを図11に示す。
ここで、速度と角速度で移動の制御をする場合を例示しているが、適宜、加速度や角加速度も制御する。
【0043】
(動作作用)
車両1に設置した各無線通信手段Qが、移動目標物が有する電波発信源8から発信された電波を受信し、ユーザ7と各無線通信手段Qとの相対距離r1、r2、r3を取得する。そして、車両1に対する移動目標物の相対位置座標(xu、yu)を算出する。
車両1の可能な移動のうち、その相対位置座標に含まれる誤差が小さくなる候補点を選択して、その候補点を移動目標に向けて車両1を移動させる。これを繰り返すことで、車両1は電波発信源8を有するユーザに追随して移動する。
【0044】
ここで、本実施形態で例示する車両1は、直進と回転、および、その組み合わせで移動する車両1の例である。このため、車両1は、側方に位置する電波発信源8に向けて、真横への移動が出来ない。すなわち、本実施形態の車両1は、直進運動と回転運動で移動する構成である。このため、車両1の動きとして可能な範囲は、直進と回転、および、その組み合わせで移動可能な範囲となる。その移動可能な範囲で、相対位置座標に含まれる現在の誤差よりも小さくなり、かつ、電波発信源8と車両1との位置関係が近くなるような点を、次の移動目標に設定する。
【0045】
図7の場合には、車両前方方向に関して、誤差分布が広がっており、誤差が小さい傾向になるため、車両1を回転させることによって、電波発信源8の相対座標に含まれる誤差の大きさを小さくすることが可能である。そのため、図7(b)〜(d)のように、制御周期毎に車両1は回転を主体とした移動を繰り返すことで、相対位置座標に含まれる誤差が連続的に小さくなる方向に、例えばユーザを誤差1〜2[m]の位置になるように、車両1を移動させることができる。
【0046】
ただし、電波発信源8も移動しているため、単純に車両1を回転させれば良いわけではない。その都度、電波発信源8と車両1との位置関係を考慮して、電波発信源8の相対位置座標における誤差の小さい方向に移動させることになる。
また、車両1側方に電波発信源8が位置する場合など、角度誤差が大きい場合には、車両1の移動制御として、回転移動を優先して実施するように、速度制御に関する制御ゲインである速度ゲインKvを小さくすることで、回転移動を優先的に行うような所望の動作を行わせる。
【0047】
以上のように、電波発信源8に相対位置座標に含まれる誤差成分の小さくなり、かつ、電波発信源8に近づく方向を車両1の移動方向として決定することで、ユーザの相対位置座標を正確に判定することが可能である。その結果、相対位置座標に含まれる誤差の影響を受けづらくなり、ユーザに対して、滑らかな追従移動を行うことが可能となる。
ここで、車両1は移動体を構成する。相対位置座標は相対位置情報を構成する。
ステップS30〜S60は、相対距離取得手段3Aを構成する。ステップS70及びステップS80は、目標位置取得手段3Bを構成する。ステップS90は、移動方向決定手段を構成する。ステップS100〜S120は、移動指令値生成手段3Dを構成する。ステップS90は、誤差推定値算出比較手段3Cbを構成する。
【0048】
(本実施形態の効果)
(1)相対距離取得手段は、電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源8までの各相対距離を取得する。目標位置取得手段は、取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源8の相対位置情報を推定する。移動方向決定手段3Cは、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に基づき、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域に、移動体の移動すべき方向を設定する。移動指令値生成手段3Dは、上記設定した移動方向への移動のための移動指令値を生成する。
【0049】
推定した電波発信源8の相対位置情報に含まれる誤差成分を抑制するような領域に移動方向を選択する。これによって、電波発信源8に追従移動しながら、誤差成分を抑制することができる。
すなわち、推定した相対位置に含まれる誤差を抑制するように、移動方向を決定する。これによって、追従すべき方向の誤差を抑えつつ、目標とする電波発信源8に追従移動することが可能となる。この結果、確からしさの高い相対位置に向けて追従制御を行うことが出来ることで、追従性を向上した追従制御が可能となる。
【0050】
(2)上記移動方向決定手段3Cは、平面視における移動体周囲の測位誤差の分布情報を記憶する測位誤差記憶テーブル3Caを有し、その測位誤差記憶テーブル3Caを参照することで、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域を特定する。
車両周囲における測位誤差分布を記憶した測位誤差記憶テーブル3Caを有しているので、あらかじめ、推定された相対位置座標に含まれる誤差の度合いを知ることができる。これによって、誤差が小さくなる方向を選択可能となる。
【0051】
(3)上記測位誤差記憶テーブル3Caは、移動体に対する電波発信源8の実際の相対距離と推定される相対距離の差分である距離誤差、若しくは、移動体に対する電波発信源8の実際の相対角度と推定される相対角度の差分である角度誤差のうち、少なくとも角度誤差についての分布情報を記憶している。
少なくとも角度誤差に関する測位誤差記憶テーブル3Caを有しているので、特に方向間違いを起こりうる角度誤差に対応可能となる。
【0052】
(4)上記移動方向決定手段3Cは、移動体周囲の測位誤差分布に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差と、次の制御周期で移動体が移動可能な領域内に設定した候補点での相対位置情報の誤差を比較する誤差推定値算出比較手段3Cbを備える。そして、誤差推定値算出比較手段3Cbの比較に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さくなる候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定する。誤差が小さくなる候補点は、例えば、誤差が一番小さくなる候補点を選択すればよい。
現時点における誤差と、次の移動目標の候補点における誤差を算出して比較する。これによって、誤差が小さくなるような位置を次の移動目標点として決定することができる。
【0053】
(5)上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とする。
これによって、移動体の前方で誤差が小さくなる位置となる。この結果、誤差が小さくなる方向に移動体を移動制御することで、電波発信源8を車両前方に位置させやすくなる。
【0054】
(6)直進運転指令生成手段3Daは、移動体を直進運動させるための第1の移動指令値を生成する。回転運動指令生成手段3Dbは、移動体の回転運動をさせるための第2の移動指令値を生成する。指令値バランス調整手段3Dcは、移動体に対する電波発信源8の相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する。
車両1と電波発信源8との相対位置関係に応じて、現時点における誤差よりも誤差が小さくなるような候補点に移動する移動ルートとなるように、制御ゲインを変更する。この結果、誤差を抑制しつつ、滑らかな追従移動を行うことができる。
【0055】
(7)上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とする。上記指令値バランス調整手段3Dcは、移動体の進行方向に対する電波発信源8の相対角度が大きいほど、相対的に、直進運動に関する制御の制御ゲインよりも回転運動に関する制御の制御ゲインを大きくする。
これによって、電波発信源8が車両1の進行方向に検出された場合には、車両進行方向の距離を接近させて角度方向の距離誤差を抑制する。電波発信源8が車両1の進行方向以外に検出された場合には、電波発信源8に対して車両1の進行方向を一致させるべく、回転運動を優先して車両1を移動させる。この結果、相対位置座標の誤差を抑制しつつ、違和感のない追従移動を行うことができる。
【0056】
(変形例)
(1)上記移動方向決定手段3Cは、移動体周囲における測位誤差分布に基づき、移動体の移動可能な範囲内で現時点の位置から電波発信源8の位置に向けて、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さく且つ電波発信源8に近づくにつれて当該誤差が小さくなる移動目標の候補点の並びを設定し、その設定した移動目標の候補点の並びに基づき、今後の移動体の移動すべき方向を設定するようにしても良い。
現時点における誤差よりも誤差が連続的に小さくなるような候補点の列を、今後の移動目標として決定する。これによって、測位結果に含まれる誤差成分を抑制して、追従移動の精度を向上することができる。
【0057】
単に、現時点における電波発信源8の相対位置座標に含まれる誤差よりも、次の状態で、相対位置座標に含まれる誤差が小さくなるような位置へと車両1を移動させるだけではなく、さらに、その次の状態における誤差を考慮する。この結果、誤差を小さくし続けるような追従移動を可能にすることができる。これにより、ユーザに対して、車両1が正確な追従移動を行うだけでなく、本来、相対位置座標に含まれる誤差の影響によって、ギクシャクしていた追従移動動作を滑らかにすることができるといった効果も期待できる。
【0058】
ここで、上記移動方向決定手段3Cが、「現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さくなる候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定する」する場合(第1の移動方向決定方法)と、「移動体周囲における測位誤差分布に基づき、移動体の移動可能な範囲内で現時点の位置から電波発信源8の位置に向けて、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さく且つ電波発信源8に近づくにつれて当該誤差が小さくなる移動目標の候補点の並びを設定し、その設定した移動目標の候補点の並びに基づき、今後の移動体の移動すべき方向を設定する」する場合(第2の移動方向決定方法)について説明する。
【0059】
なお、車両1(移動体)に対して電波発信源8が側方に位置していた場合で説明する。
第1の移動方向決定方法では、図12に示すように、回転(旋回)移動に重点を置きつつ、ユーザ(電波発信源8)に接近する。
なお、図12及び図13において、□は、静止しているユーザ(電波発信源8)を表す。また、実際には車両1(移動体)が移動するが、分かりやすくするため、車両1(移動体)の位置を固定して図示している。
【0060】
すなわち、第1の移動方向決定方法では、1制御周期毎に移動可能範囲における誤差が小さくなる移動目標を選択する。このため、ユーザ(電波発信源8)の位置を、車両前方(測位誤差の小さい領域)に存在させるべく、車両1の回転移動を中心にして、ユーザ(電波発信源8)への接近を行う。この例では、次の制御周期で測位誤差の小さな領域に、ユーザ(電波発信源8)を位置させれば良いため、 相対距離と相対角度に基づく制御において、相対角度に基づく回転移動に重点を置いて制御する。
【0061】
ここで、本実施形態では、測位誤差のマップを見て分かるように、誤差分布は進行方向に縦長の楕円に近似可能な形状分布になっており、ユーザ(電波発信源8)が側方にいる場合には、回転移動をすれば、測位誤差が小さくなることになる。しかし、回転してから直進という形態を取ると移動量が大きくなるため、ユーザ(電波発信源8)に対して遠回りすることになる。このため、測位誤差の大きさを前回の制御周期よりは小さくし、遠回りしないことを目的にして移動する。
具体的には、測位誤差が前回の制御周期よりも大きくならない範囲で、回転しながら直進することで、測位誤差を抑制した移動を可能にする。
【0062】
一方、第2の移動方向決定方法では、図15に示すように、先に回転(旋回)移動を行い、その後に直進運動を行って、ユーザ(電波発信源8)に接近する。すなわち、第2の移動方向決定方法では、ユーザ(電波発信源8)が停止していれば、ユーザ(電波発信源8)に向かう複数の候補点列を設定して、順次、上記候補点列を移動目標として移動する。すなわち、ユーザ(電波発信源8)の位置を、車両前方(測位誤差の小さいエリア)に存在させるべく、最初に、車両1の回転移動を行って、車両前方にユーザ(電波発信源8)を存在させ、そこから直進することで、ユーザ(電波発信源8)への接近を行う。
【0063】
ここで、回転のみした場合、必然的に測位誤差が抑制されることになる。また、測位誤差としては、回転のみで1〜2m程度抑制できることになり、かつ、直進移動が残されているため、次のステップにおいては、必ず、測位誤差が抑制できることになる。
すなわち、第1の移動方向決定方法では、各制御周期において、それぞれ移動可能な範囲で誤差が小さくなる領域を選択して車両1を移動させることになる。このため、車両側方に電波発信源8が位置する場合には、回転運動が優先しつつも直進運動も行う事となる。
【0064】
これに対し、第2の移動方向決定方法では、現在の車両位置から連続して誤差が小さくなる走行経路(候補点の並び)を選択し、電波発信源8が停止していれば、その走行経路に沿って方向に車両1が移動するように走行制御する。また、電波発信源8が移動した場合には、 再度、走行経路となる候補点を設定することで、滑らかな移動を可能とする。但し、ユーザ(電波発信源8)への接近時間は、第1の移動方向決定方法の方が有利である。
【0065】
(2)上記無線通信手段Qは、電波発信源8が有する電波発信源8から発信された電波を受信するアンテナであり、これらで受信した電波を信号に変換するコントローラを別途実装している。
複数の場所にアンテナと無線機能とコントローラを有する無線通信手段Qを設置しなくても、複数の場所にアンテナを設置し、それを統括する形で無線機能とコントローラを設置する形態を取れる。この結果、システムの簡素化とコスト削減を図ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な装置等については同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。
本実施形態の移動指令値生成手段3Dは、図14に示すように、目標値変更手段3Ddを備える。その他は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
第1実施形態と共通する基本的構成についての重複した説明は避け、ここでは異なる点を中心に説明する。
本実施形態は、第1実施形態で示したユーザの相対位置座標に含まれる誤差を小さくして、かつ、ユーザと車両1との位置関係を接近させるような車両1の移動方向に対して、動的に制御目標値を変更しながら、車両1を移動させる制御する例である。ここで、制御目標値とは、追従移動の目標値と、車両1との相対位置関係をどの程度にしたいかの指標である。
【0068】
次に、本実施形態の上記移動制御コントローラ3の処理を、図15を参照しつつ説明する。
第1実施形態とは、ステップS90とステップS100との間にステップS210〜ステップS230の処理を設けた点が異なる。
このSステップS210〜ステップS230の処理は、車両1の移動に関して、制御目標値に収束している場合、もしくは、制御目標値への収束が遅い場合に、制御目標値を変更する処理を行う。
先ず、ステップS10〜S90での処理によって車両1の移動目標を決定した後に、ステップS210に移行する。
ステップS210では、車両1の移動に関して、制御目標値に収束していないかを判定する。制御目標値に収束している場合にはステップS230に移行する。一方、制御目標値に収束していない場合にはステップS220に移行する。
【0069】
ショッピングカートを想定した場合、制御目標値は以下のように設定する。
まず、相対距離に関する制御目標値は、ユーザに対して、どの程度の間隔を維持したいかを意味している。ユーザの歩きやすさ(ユーザとショッピングカートが干渉しないこと)を考慮すると、1[m]程度の間隔を設けておくことが得策である。ただし、一旦でも停止した後に再移動した場合には、車両1が急に移動するため、追従性が悪化する問題も考えられる。
【0070】
また、相対角度に関する制御目標値は、ユーザに対して、どの程度の角度で追従するかを意味している。ユーザの相対位置座標に関しては、角度誤差の影響が大きくなる傾向があることから、第1実施形態においては、相対角度に関する制御目標値をゼロにするような制御目標値を与えるのが得策である。ただし、車両1上における無線通信手段の設置要件によっては、相対角度に関する制御目標値を違う値に設定したほうが良い場合も多い。
【0071】
第1実施形態において、制御目標値に収束している状態としては、例えば相対距離が2[m]、相対角度が0度(車両1の前進方向に電波発信源8が位置する場合)になっている状態とする。ただし、ユーザの相対位置座標には誤差が含まれているため、相対距離と相対角度に対して、許容範囲を設けておき、その値以内に収まるような場合に、制御目標値に収束している状態として判定する。
【0072】
制御目標値に収束している場合には、これ以上、車両1が移動する必要がない状態ではある。ただし、上記にも示したように、例えば、電波発信源8と車両1との相対距離を小さくしておく方が、電波発信源8の相対位置座標に含まれる誤差を小さくできるといったメリットがある。図13(a)に、その場合の車両1の動きの例を示す。この例では、ユーザは車両1に対して2[m]前方、相対角度0度に存在しており、制御目標値に収束している状態である。しかし、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、1〜2[m]となっている。そこで、図13(b)のように、相対距離に関する制御目標値を1[m]として、ユーザに対して、車両1をさらに接近させると、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、0〜1[m]に抑制可能となる。
【0073】
このため、ステップS230では、制御目標値に収束している場合には、相対距離に関する制御目標値を変更して、ユーザと車両1との相対距離を小さくするような制御を行うようにする。そして、ステップS100に移行する。
一方、車両1の移動に関して、制御目標値に収束していない場合には、これまで通りの移動制御を行うことになる。ただし、ステップS220にて、制御目標値への収束の早さを判定する。収束が早い場合にはステップS100に移行する。
【0074】
一方、収束が遅いような場合には、ステップS230に移行して制御目標値の変更を行う。この場合、ユーザの動きと車両1の動きが一致していないような場合であり、具体的には、ユーザが停止している状態から突然走り出した場合や、誤差の影響により、ユーザの存在位置が定まらない場合などが考えられる。そのような場合、前者であれば、相対距離に関する制御目標値を小さくして、より近い距離で追従させるようにするとともに、結果として、その速度も向上することで、追従性を向上する。また、後者であれば、相対角度に関する制御目標値を大きくして、追従移動に関する角度の許容範囲を広くして、誤差に対して寛容にするといった制御が可能になる。
このように、適宜、制御目標値を変更する。その後、S110〜S112似て、第1実施形態と同様に、制御ゲインを変更して、車両1を移動させる。これによって、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差を小さくしつつ、ユーザに対して追従移動するような車両1の移動を実現することができる。
【0075】
(動作・作用)
車両1に対する電波発信源8の位置が、制御目標値に収束している場合(車両1の進行方向に電波発信源8が位置する場合)には、これ以上、車両1が移動する必要がない状態ではある。ただし、上記にも示したように、例えば、電波発信源8と車両1との相対距離を小さくしておく方が、電波発信源8の相対位置座標に含まれる誤差を小さくできるといったメリットがある。
【0076】
図16(a)に、その場合の車両1の動きの例を示す。この例では、ユーザは車両1に対して2[m]前方、相対角度0度に存在しており、制御目標値に収束している状態である。しかし、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、1〜2[m]となっている。そこで、図16(b)のように、相対距離に関する制御目標値を1[m]として、ユーザに対して、車両1をさらに接近させると、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差としては、0〜1[m]に抑制可能となる。
【0077】
このように、制御目標値に収束している場合には、相対距離に関する制御目標値を変更して、ユーザと車両1との相対距離を小さくするような制御を行う。
また、車両1の移動に関して、制御目標値に収束していない場合であって、収束が遅いような場合にも、制御目標値の変更を行う。この場合、ユーザの動きと車両1の動きが一致していないような場合であり、具体的には、ユーザが停止している状態から突然走り出した場合や、誤差の影響により、ユーザの存在位置が定まらない場合などが考えられる。前者であれば、相対距離に関する制御目標値を小さくして、より近い距離で追従させるようにするとともに、結果として、その速度も向上することで、追従性を向上する。また、後者であれば、相対角度に関する制御目標値を大きくして、追従移動に関する角度の許容範囲を広くして、誤差に対して寛容にするといった制御が可能になる。
【0078】
すなわち、制御目標値(相対距離、相対角度)を変更することで、ユーザの相対座標に含まれる誤差を小さくする。これによって、正確にユーザの位置座標を検出しつつ、ユーザと車両1との相対距離と相対角度を小さくする。
また、ユーザが停止している状態においては、車両1とユーザとの相対距離を小さくすることで、ユーザに対する車両1の追従性を向上することができる。
さらに、ユーザの突然の挙動変化により、制御目標値への収束が悪い場合にも、収束の悪さを改善して、ユーザに対する車両1の追従性を向上して、ユーザの相対位置座標に含まれる誤差の大きさを小さくすることができる。
【0079】
(本実施形態の効果)
(1)車両1と電波発信源8との相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、制御目標値を変更する。
これによって、相対位置情報に含まれる誤差を抑制しつつ、利用シーンにあった追従移動を行うことができる。
(2)電波発信源8が車両1の進行方向に検出された場合には、車両1進行方向の距離を接近させて角度方向の距離誤差を抑制するとともに、電波発信源8が車両1の進行方向以外に検出された場合には、電波発信源8に対して車両1の進行方向を一致させるべく、車両1を回転させる。
これによって、相対位置情報に含まれる誤差を抑制しつつ、利用シーンにあった違和感のない追従移動を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 車両
3 移動制御コントローラ
3A 相対距離取得手段
3B 目標位置取得手段
3C 移動方向決定手段
3Ca 測位誤差記憶テーブル
3Cb 誤差推定値算出比較手段
3D 移動指令値生成手段
3Da 直進運転指令生成手段
3Db 回転運動指令生成手段
3Dc 指令値バランス調整手段
7 ユーザ
8 電波発信源
Kv 速度ゲイン
Kγ 角速度ゲイン
Q 無線通信手段
R 移動可能な領域
Δθ 角度差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に対する電波発信源の位置を推定する目標位置推定手段と、その目標位置推定手段が推定した電波発信源の位置に基づき当該電波発進源に追従するように移動体の移動を制御する移動制御手段と、を備える追従制御装置であって、
上記目標位置推定手段は、
上記移動体に対し平面視で互いに重ならない位置に設定され、それぞれ上記電波発信源からの電波を受信可能な複数の無線通信手段と、
電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源までの各相対距離を取得する相対距離取得手段と、
取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源の相対位置情報を推定する目標位置取得手段と、
を備え、
上記移動制御手段は、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に基づき、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域に、移動体の移動すべき方向を設定する移動方向決定手段と、
上記設定した移動方向への移動のための移動指令値を生成する移動指令値生成手段と、
を備えることを特徴とする追従制御装置。
【請求項2】
上記移動方向決定手段は、
平面視における移動体周囲の測位誤差の分布情報を記憶する測位誤差記憶テーブルを有し、その測位誤差記憶テーブルを参照することで、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域を特定することを特徴とする請求項1に記載した追従制御装置。
【請求項3】
上記測位誤差記憶テーブルは、
移動体に対する電波発信源の実際の相対距離と推定される相対距離の差分である距離誤差、若しくは、移動体に対する電波発信源の実際の相対角度と推定される相対角度の差分である角度誤差のうち、少なくとも角度誤差についての分布情報を記憶していることを特徴とする請求項2に記載した追従制御装置。
【請求項4】
上記移動方向決定手段は、
移動体周囲の測位誤差分布に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差と、次の制御周期で移動体が移動可能な領域内に設定した候補点での相対位置情報の誤差とを比較する誤差推定値算出比較手段を備え、
誤差推定値算出比較手段の比較に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さくなる候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項5】
上記移動方向決定手段は、
移動体周囲における測位誤差分布に基づき、移動体の移動可能な範囲内で現時点の位置から電波発信源の位置に向けて、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さく且つ電波発信源に近づくにつれて当該誤差が小さくなる移動目標の候補点の並びを設定し、その設定した移動目標の候補点の並びに基づき、今後の移動体の移動すべき方向を設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項6】
上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項7】
上記移動指令値生成手段は、
移動体を直進運動をさせるための第1の移動指令値を生成する直進運動指令生成手段と、
移動体の回転運動をさせるための第2の移動指令値を生成する回転運動指令生成手段と、
移動体に対する電波発信源の相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する指令値バランス調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項8】
上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とし、
上記指令値バランス調整手段は、移動体の進行方向に対する電波発信源の相対角度が大きいほど、相対的に、直進運動に関する制御の制御ゲインよりも回転運動に関する制御の制御ゲインを大きくすることを特徴とする請求項請求項7に記載した追従制御装置。
【請求項9】
移動体に対する移動目標としての電波発信源の位置を推定し、推定した電波発信源の位置に向かうように移動体の移動を制御する追従制御方法であって、
上記移動体に対し平面視で互いに重ならない位置に複数の無線通信手段を設定し、上記電波発信源からの電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源までの各相対距離を取得し、取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源の相対位置情報を推定し、
推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる方向に、移動体の移動すべき方向を設定することを特徴とする追従制御方法。
【請求項1】
移動体に対する電波発信源の位置を推定する目標位置推定手段と、その目標位置推定手段が推定した電波発信源の位置に基づき当該電波発進源に追従するように移動体の移動を制御する移動制御手段と、を備える追従制御装置であって、
上記目標位置推定手段は、
上記移動体に対し平面視で互いに重ならない位置に設定され、それぞれ上記電波発信源からの電波を受信可能な複数の無線通信手段と、
電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源までの各相対距離を取得する相対距離取得手段と、
取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源の相対位置情報を推定する目標位置取得手段と、
を備え、
上記移動制御手段は、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に基づき、目標位置取得手段が推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域に、移動体の移動すべき方向を設定する移動方向決定手段と、
上記設定した移動方向への移動のための移動指令値を生成する移動指令値生成手段と、
を備えることを特徴とする追従制御装置。
【請求項2】
上記移動方向決定手段は、
平面視における移動体周囲の測位誤差の分布情報を記憶する測位誤差記憶テーブルを有し、その測位誤差記憶テーブルを参照することで、推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる領域を特定することを特徴とする請求項1に記載した追従制御装置。
【請求項3】
上記測位誤差記憶テーブルは、
移動体に対する電波発信源の実際の相対距離と推定される相対距離の差分である距離誤差、若しくは、移動体に対する電波発信源の実際の相対角度と推定される相対角度の差分である角度誤差のうち、少なくとも角度誤差についての分布情報を記憶していることを特徴とする請求項2に記載した追従制御装置。
【請求項4】
上記移動方向決定手段は、
移動体周囲の測位誤差分布に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差と、次の制御周期で移動体が移動可能な領域内に設定した候補点での相対位置情報の誤差とを比較する誤差推定値算出比較手段を備え、
誤差推定値算出比較手段の比較に基づき、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さくなる候補点を、次の移動目標として決定し、その決定した移動目標を、移動体の移動すべき方向として設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項5】
上記移動方向決定手段は、
移動体周囲における測位誤差分布に基づき、移動体の移動可能な範囲内で現時点の位置から電波発信源の位置に向けて、現時点の位置での相対位置情報の誤差よりも誤差が小さく且つ電波発信源に近づくにつれて当該誤差が小さくなる移動目標の候補点の並びを設定し、その設定した移動目標の候補点の並びに基づき、今後の移動体の移動すべき方向を設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項6】
上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項7】
上記移動指令値生成手段は、
移動体を直進運動をさせるための第1の移動指令値を生成する直進運動指令生成手段と、
移動体の回転運動をさせるための第2の移動指令値を生成する回転運動指令生成手段と、
移動体に対する電波発信源の相対位置関係に応じて、現時点における誤差の推定値よりも誤差の推定値が小さくなるような候補点に移動するように、上記直進運動及び回転運動に関する制御の制御ゲインを調整する指令値バランス調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した追従制御装置。
【請求項8】
上記複数の無線通信手段を、移動体周囲の測位誤差の分布が、移動体側方に対し移動体前方の測位誤差が小さくなる配置とし、
上記指令値バランス調整手段は、移動体の進行方向に対する電波発信源の相対角度が大きいほど、相対的に、直進運動に関する制御の制御ゲインよりも回転運動に関する制御の制御ゲインを大きくすることを特徴とする請求項請求項7に記載した追従制御装置。
【請求項9】
移動体に対する移動目標としての電波発信源の位置を推定し、推定した電波発信源の位置に向かうように移動体の移動を制御する追従制御方法であって、
上記移動体に対し平面視で互いに重ならない位置に複数の無線通信手段を設定し、上記電波発信源からの電波の受信に基づき、各無線通信手段から電波発信源までの各相対距離を取得し、取得した複数の相対距離から、移動体に対する電波発信源の相対位置情報を推定し、
推定した相対位置情報に含まれる誤差が小さくなる方向に、移動体の移動すべき方向を設定することを特徴とする追従制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−186393(P2010−186393A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31209(P2009−31209)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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