説明

送りねじ駆動装置

【課題】小形軽量で必要な推進力が得られ高精度の位置制御が可能であるとともに耐久性に優れた送りねじ駆動装置を提供する。
【解決手段】スクリュウシャフト4と、スクリュウシャフトの両端を回転自在かつ軸線方向に移動可能に保持するスタンド6と、スクリュウシャフトに螺合されスタンドに回転を規制して軸線方向に移動可能に装架された移動体10と、スクリュウシャフトをスタンドに対して軸線方向に移動させる伸長収縮変形を繰り返す伸縮部材12と、スクリュウシャフトを伸縮部材に押圧する弾性部材14と、伸縮部材に伸長収縮変形を行なわせる伸縮制御装置16と、を備え、伸縮制御装置により、伸縮部材を伸長時及び収縮時のいずれか一方の時にスクリュウシャフトが移動体に対して相対回転するように高速変形させ、いずれか他方の時にスクリュウシャフトが移動体に対して相対回転しないように低速変形させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルクを出力する回転駆動装置に関し、より詳細には、圧電体などの加振手段が発生する振動を利用して送りねじ機構を駆動させる送りねじ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を機械的動力に変換して出力する駆動装置として電磁力を利用するモータが一般的に用いられるが、電子機器や精密機械などに内蔵する駆動装置には特に小形化や位置制御の高精度化が必要とされる。このような小形化、高精度化への要求に応えて、電磁力によらず、超音波振動などを利用した別の駆動方式の駆動装置が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される超音波モータは、圧電体によって励振されて表面に進行波を発生する固定子と、固定子に当接されて相対的に可動する回転子とを有し、固定子および回転子の少なくとも一方を弾性変形する薄板円板で支持している。そして、圧電体に高周波電圧を印加すると固定子には屈曲振動によって進行波が発生し、加圧接触している回転子が回転するようになっている。
【0004】
また、特許文献2の超音波リードスクリューモータを含む機構には、ねじ付きシャフトおよびねじ付きナットを含み、ねじ付きナットを超音波振動に供し、それによってねじ付きシャフト回転させながら軸方向に移動させる光学アセンブリが開示されている。また、超音波振動を発生させる手段として圧電管が開示されている。この発明の目的は、従来技術よりも実質的に高い効率を有し、かつ高い精度、大きな力および速度を提供することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−77068号公報
【特許文献2】特表2008−510445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の2つの特許文献に開示された技術は、駆動力・推進力に制約が生じる点、および、摩擦面の摩耗による耐久性の低下の点で問題点があった。特許文献1では、固定子と回転子とが対向する面で加圧接触しているが、加圧方向における圧電体の変形力は小さく、したがって小さな駆動力しか得られない。また、加圧接触している面が荒れると、性能が低下してしまう。特許文献2では、ねじ付きシャフトおよびねじ付きナットが螺合面で擦れ合い摩擦力によりシャフトが回転するので、摩擦力以上の推進力は得られない。
【0007】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、小形軽量で必要な推進力が得られ高精度の位置制御が可能であるとともに耐久性に優れた送りねじ駆動装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に係る発明の構成上の特徴は、ねじ部が外周に螺設されたスクリュウシャフトと、前記スクリュウシャフトの両端を回転自在かつ回転軸線方向に移動可能に保持するスタンドと、前記スクリュウシャフトに螺合される雌ねじ部を有し前記スタンドに回転を規制して前記回転軸線方向に移動可能に装架された移動体と、前記スクリュウシャフトと前記スタンドとの間に設けられスクリュウシャフトを前記スタンドに対して前記回転軸線方向に移動させる伸長収縮変形を繰り返す伸縮部材と、前記スクリュウシャフトと前記スタンドと間に設けられ前記スクリュウシャフトを前記伸縮部材に押圧する弾性部材と、前記伸縮部材に高周波振動状態の前記伸長収縮変形を行なわせる伸縮制御装置と、を備え、前記伸縮制御装置により、前記伸縮部材を伸長時及び収縮時のいずれか一方の時に前記スクリュウシャフトが前記移動体に対して相対回転するように高速変形させ、いずれか他方の時に前記スクリュウシャフトが前記移動体に対して相対回転しないように低速変形させることである。
【0009】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記伸縮部材は、圧電体であることである。
【0010】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記弾性部材は、前記スタンドと前記スクリュウシャフトとの間に設けられたコイルバネであることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、伸縮制御装置により伸縮部材が高周波振動状態の伸長収縮変形を行なう。そして、例えば伸縮部材が伸長時に高速変形した場合は、伸縮部材は大きな加速度でスクリュウシャフトをその回転軸線上の伸長方向(回転軸線方向)に移動させる。この時、スクリュウシャフトの外周面と移動体の雌ねじ部の内周面との間は、スクリュウシャフトに働く大きな加速力によって滑りやすい動摩擦力が働く状態となり、また、移動体は慣性力により同位置に止まろうとするので、スクリュウシャフトの外周面と移動体の内周面とは滑り状態で相対移動しようとする。そして、スクリュウシャフトの相対移動は、ねじ相互の噛合によりねじのリード角に沿った方向に規制され、スクリュウシャフトはリード角に沿った方向に相対回転を伴って前記伸長した方向(回転軸線方向)に微小変動する。このスクリュウシャフトの微小変動により、移動体はスクリュウシャフトに対する相対的位置を前記伸長した方向の逆方向に移す。また、弾性部材は前記伸縮部材が伸長した方向に圧縮される。このとき移動体の絶対的位置は慣性力の同位置に止めようとする力によって大きく変わることはない。
【0012】
次に、伸縮部材が収縮時に低速変形した場合は、伸縮部材は圧縮した弾性部材の弾発力によってスクリュウシャフトをその回転軸線上の収縮方向(回転軸線方向)に移動させる。この時、低速変形であるためスクリュウシャフトには小さな加速力が働き、スクリュウシャフトの外周面と移動体の雌ねじ部の内周面との間は、滑りにくい静摩擦力が働く状態となる。そのため、スクリュウシャフトは相対回転することなく、スクリュウシャフトと移動体とは相対移動しない。そして、伸縮部材の収縮によるスクリュウシャフトの収縮方向への移動に伴って移動体も移動する。このとき、移動体の絶対的位置も収縮方向に移動する。
【0013】
このような伸長収縮変形を高周波振動状態で繰り返すことにより、移動体をスクリュウシャフトの回転軸線方向に移動させる。
【0014】
なお、伸縮部材が伸長時に低速変形し、収縮時に高速変形するときは、収縮時に高速変形した場合に、上述と同様にスクリュウシャフトの外周面と移動体の雌ねじ部の内周面とが滑ってスクリュウシャフトが回転し、伸長時に低速変形した場合にスクリュウシャフトと移動体とは相対移動せず、移動体はスクリュウシャフトの伸長方向への移動に伴って回転軸線方向の伸長方向へ移動する。
【0015】
このように、移動体の慣性力を利用した滑りやすい動摩擦力が生じる状態と、滑りにくい静摩擦力が生じる状態とを交互に作り出し、スクリュウシャフトに対して移動体をスクリュウシャフトの回転軸線方向に移動させる。そして、従来の電磁モータに比べ磁石やコイルを使用しないので、小形軽量化が可能であり、また、従来技術のようにスクリュウシャフトと移動体との間で擦れ合うような大きな力を生じさせないので、耐久性に優れた送りねじ駆動装置とすることができる。また、伸縮部材の1回の伸長収縮で移動させる量が小さいので、移動体の移動を高精度で位置決めすることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、伸縮部材を圧電体とすることで、圧電体では、比較的周波数の低い領域から高い超音波領域までの振動を発生でき、移動体の位置制御の高精度化を図ることができる。また、圧電体の1回の伸長収縮変形量が少なくても、伸長収縮変形を繰り返すことで少しずつ確実に移動体を移動させることができるので、圧電体への供給電圧を小さくでき軽量化や設備の小型化をいっそう促進することができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、弾性部材をコイルばねとすることで、弾性強度の設計変更が容易であり、一般的な汎用の部材であるためコストも低廉になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における送りねじ駆動装置の概要を示す斜視図である。
【図2】伸縮部材を伸長時に高速変形させる電圧波形を示す図。
【図3】伸縮部材を収縮時に高速変形させる電圧波形を示す図。
【図4】伸縮部材の伸長時の圧力がスクリュウシャフトの回転力へ変換されることを示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
本発明の実施形態の送りねじ駆動装置について、図に基づいて以下に説明する。送りねじ駆動装置2は、スクリュウシャフト4と、スクリュウシャフト4の両端を支持する一対のスタンド6と、スクリュウシャフト4に螺合する雌ねじ部8を有する移動体10と、スクリュウシャフト4の一方の端部に設けられた伸縮部材としての積層圧電体12と、スクリュウシャフト4の他方の端部に設けられた弾性部材としてのコイルばね14と、積層圧電体12に印加する電圧を制御する伸縮制御装置16とを主に備える。
【0020】
スクリュウシャフト4は、円柱状のシャフト本体部18と、シャフト本体部18の両端部より夫々回転軸線TLに沿った方向(回転軸線方向)に突出するシャフト本体部18よりも小径のシャフト支持部20とを備えている。シャフト本体部18の外周には、例えばリード角45°の二条ねじで構成される台形ねじが設けられている。シャフト支持部20にはシャフト支持部20の軸に相対回転自在に支承され、シャフト本体部18の段部面に接触する短円柱状のアダプタ(滑部材)22が夫々配設されている。アダプタ22は、例えば表面が低摩擦の硬質樹脂製でシャフト本体部18及びシャフト支持部20の回転に対して連れ回りしないよう構成される。
【0021】
スタンド6には図略の軸受が設けられ、軸受にはシャフト支持部20が回動自在かつスクリュウシャフト4の回転軸線方向に相対移動可能に支承される。一方のスタンド(図1において右側)6の軸受の下方内側には積層圧電体12が突設され、積層圧電体12の先端部はアダプタ(図1において右側のアダプタ)22の右端に当接する。積層圧電体12は、PZT等の圧電材料により矩形薄板状に形成された圧電板が複数枚積層された構造となっている。積層圧電体12は電圧を印加することによって積層方向に伸長するようになっている。本実施形態では、積層圧電体12は、スクリュウシャフト4の回転軸線方向に積層され、印加される電圧に応じて伸長収縮変形する。この積層圧電体12は、例えば3000N(ニュートン)の力を発生させ、10μmの変位量を生じるように設定される。他方のスタンド(図1において左側)6のシャフト支持部20にはアダプタ22とスタンド6の内側壁面との間にコイルばね14が配設され、コイルばね14によってスクリュウシャフト4は積層圧電体12側に押圧されている。このコイルばね14は、例えば金属製で1000Nの力を発生させ、10μmの変位量を生じるものが使用させる。このコイルばね14のばね力は、積層圧電体12の変形による押圧力の3分の1程度が望ましい。
【0022】
スクリュウシャフト4には移動体10の雌ねじ部8が相対回転自在に螺合されている。一対のスタンド6には移動体10をガイドする図略のガイド部材が平行に併設され、移動体10はこのガイド部材によりスクリュウシャフト4による回転が規制されかつスクリュウシャフト4の回転軸線方向に移動可能になっている。
伸縮制御装置16は、公知の電圧/周波数制御装置を使用することができ、図略の電源より任意波形の電圧を積層圧電体12に印加する。
【0023】
次に、上記のように構成された送りねじ駆動装置の作動を説明する。
図1の第1実施形態において、伸縮制御装置16により積層圧電体12に図2に示す波形の電圧を印加することにより積層電圧体12は変形し、スクリュウシャフト4を回転軸線方向に加振する。詳しくは、電圧波形のA〜Bの範囲においては電圧0より所定電圧Eまで10μsの間に上昇させる。すると、積層圧電体12は高速変形してスクリュウシャフト4を回転軸線方向の一方(図1において左方)に移動させる。この時、スクリュウシャフトの4の外周面と移動体10の雌ねじ部8の内周面との間は、スクリュウシャフト4に働く大きな加速力によって滑りやすい動摩擦力が働く状態となる。一方、移動体10は慣性力により同位置に止まろうとするので、スクリュウシャフト4の外周面と雌ねじ部8の内周面とは滑り状態で回転軸線方向に相対移動しようとする。しかし、スクリュウシャフト4の相対移動は、移動体10の雌ねじ部8によりねじのリード角である45°に沿った方向に規制されるので、スクリュウシャフト4はリード角に沿った方向に相対回転を伴って回転軸線方向の伸長方向(図1において左方)に微小変動する。このときの回転力は、図4に示す模式図より、
回転力=(圧電体の押圧力)×cosΘ−{(移動体の重量)×(摩擦係数)}
と考えられる。なお、リード角Β(ベータ)は90°−Θとなる。
【0024】
このスクリュウシャフト4の微小変動によりコイルばね14は押圧されて弾発力を蓄積させる。また、移動体10は、スクリュウシャフト4に対する相対的位置を回転軸線方向の伸長方向とは逆方向(図1において右方)へ移動させる。しかし、移動体10の絶対的位置は、前述の慣性力の同位置に止まろうとする力により大きくは変わることがない。
【0025】
次に、積層圧電体12には図2におけるC〜Dの範囲の波形が印加されると、積層圧電体12は収縮し、蓄積されていたコイルばね14の弾発力によりスクリュウシャフト4は積層電圧体12の収縮方向(伸長方向の逆方向)に移動する。C〜Dの範囲では所定電圧Eは10msの間に0まで降下される。このときの積圧電体12の収縮は低速変形であるため、スクリュウシャフト4の外周面と移動体10の雌ねじ部8の内周面との間には、滑りにくい静摩擦力が生じた状態である。そのため、スクリュウシャフト4と移動体10とは相対移動せずに、スクリュウシャフト4の前記収縮方向への移動に伴って移動体10も収縮方向(図1において右方向)に絶対的位置が移動する。したがって、移動体10の1波形分の移動量は、積層圧電体12の変形量にほぼ等しいと考えられる。
【0026】
このような電圧波形を積層圧電体12に印加して伸長収縮変形を繰り返すことにより、移動体10をスクリュウシャフト4の回転軸線TLに沿って移動させる。
【0027】
なお、本実施形態においては、図2に示すように、積層圧電体12が伸長するときに高速変形し、収縮するときに低速変形するものとしたが、これに限定されず、例えば、図3に示すような波形を印加してもよい。この場合K〜Lの範囲において0から所定電圧Eまで10msの間に上昇し、M〜Nの範囲において所定電圧Eから0まで10μsの間に降下する。したがって、積層圧電体12は、伸長時に低速変形し、収縮時に高速変形する。これによって、移動体10を逆方向(図1において左方向)に移動させることができる。
【0028】
上記のように構成された送りねじ駆動装置2によると、伸縮制御装置16により積層圧電体12が高周波振動状態の伸長収縮変形を行なう。そして、例えば積層圧電体12が伸長時に高速変形した場合は、積層圧電体12は大きな加速度でスクリュウシャフト4をその回転軸線TL上の伸長方向に移動させる。この時、スクリュウシャフト4の外周面と移動体10の雌ねじ部8の内周面との間は、スクリュウシャフト4に働く大きな加速力によって滑りやすい動摩擦力が働く状態となり、また、移動体10は慣性力により同位置に止まろうとするので、スクリュウシャフト4の外周面と移動体10の雌ねじ部8の内周面とは滑り状態で相対移動しようとする。そして、スクリュウシャフト4の相対移動は、ねじ部相互の噛合によりねじのリード角に沿った方向に規制され、スクリュウシャフト4はリード角に沿った方向への相対回転を伴って前記伸長した方向に微小変動する。このスクリュウシャフト4の微小変動により移動体10はスクリュウシャフト4に対する相対的位置を前記伸長した方向の逆方向へ移動する。また、コイルばね14は前記伸長した方向に圧縮される。このとき移動体10の絶対的位置は慣性力の同位置に止めようとする力によって大きく変わることはない。
【0029】
次に、積層圧電体12が収縮時に低速変形した場合は、積層圧電体12は押圧したコイルばね14の弾発力によってスクリュウシャフト4をその回転軸線上の収縮方向に移動させる。この時、低速変形であるためスクリュウシャフト4には小さな加速力が働き、スクリュウシャフト4の外周面と移動体10の雌ねじ部8の内周面との間は、滑りにくい静摩擦力が働く状態となる。そのため、スクリュウシャフト4は回転することなく、スクリュウシャフト4と移動体10とは相対回転しない。そして、積層圧電体12の収縮によるスクリュウシャフト4の収縮方向(回転軸線方向)への移動に伴って移動体10も移動する。このとき、移動体10の絶対的位置も収縮方向に移動する。
【0030】
このような伸長収縮変形を高周波振動状態で繰り返すことにより、移動体10をスクリュウシャフト4の回転軸線方向に移動させる。
【0031】
なお、積層圧電体12が伸長時に低速変形し、収縮時に高速変形する場合を説明すると、収縮時に高速変形した場合に、上述と同様にスクリュウシャフト4の外周面と移動体10の雌ねじ部8の内周面とが滑ってスクリュウシャフト4が相対回転し、伸長時に低速変形した場合にスクリュウシャフト4と移動体10とは相対回転せず、移動体10はスクリュウシャフト10の伸長方向への移動に伴って回転軸線方向に沿って伸長方向へ移動する。
【0032】
このように、移動体10の慣性力を利用した滑りやすい動摩擦力が生じる状態と、滑りにくい静摩擦力が生じる状態とを交互に作り出し、スクリュウシャフト4に対して移動体10をスクリュウシャフト4の回転軸線に沿って移動させる。このように、従来の電磁モータに比べ磁石やコイルを使用しないので、小形軽量化が可能であり、また、従来技術のようにスクリュウシャフトと移動体との間で擦れ合うような大きな力を生じさせないので、耐久性に優れた送りねじ駆動装置とすることができる。また、積層圧電体12の1回の伸長収縮で移動させる量が小さいので、移動体10の移動を高精度で位置決めすることができる。
【0033】
また、伸縮部材を圧電体とすることで、圧電体では、比較的周波数の低い領域から高い超音波領域までの振動を発生でき、移動体の位置制御の高精度化を図ることができる。また、圧電体の1回の伸長収縮変形量が少なくても、伸長収縮変形を繰り返すことで少しずつ確実に移動体を移動させることができるので、圧電体への供給電圧を小さくでき軽量化や設備の小型化をいっそう促進することができる。また、圧電体を積層圧電体とすることで、圧電体の変形量を増加させて確実な駆動を確保することができる。
【0034】
また、弾性部材をコイルばねとすることで、弾性強度の設計変更が容易であり、一般的な汎用の部材であるためコストも低廉になる。
【0035】
なお、伸縮部材を積層圧電体としたが、これに限定されず、例えば、電圧を印加すると内部電子が移動して歪みが発生する高分子樹脂、電流を流すことで歪が発生する磁歪体、形状記憶合金などの材料で形成することができる。
【0036】
また、弾性部材を、コイルばねとしたが、これに限定されず、例えばゴム材でもよい。
【0037】
また、スクリュウシャフトをリード角が45°の二条ねじで構成された台形ねじとしたが、これに限定されず、スクリュウシャフトと雌ねじ部との螺合条件、材質、移動体の重量等によって最適なものを設定することができる。例えばリード角が30°〜60°の範囲のいずれかで設定された三条ねじで構成された並目ねじ等を適宜使用することができる。
【0038】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。
【符号の説明】
【0039】
2…送りねじ駆動装置、4…スクリュウシャフト、6…スタンド、8…雌ねじ部、10…移動体、12…伸縮部材(積層圧電体)、14…弾性部材(コイルばね)、16…伸縮制御装置、TL…回転軸線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部が外周に螺設されたスクリュウシャフトと、
前記スクリュウシャフトの両端を回転自在かつ回転軸線方向に移動可能に保持するスタンドと、
前記スクリュウシャフトに螺合される雌ねじ部を有し前記スタンドに回転を規制して前記回転軸線方向に移動可能に装架された移動体と、
前記スクリュウシャフトと前記スタンドとの間に設けられスクリュウシャフトを前記スタンドに対して前記回転軸線方向に移動させる伸長収縮変形を繰り返す伸縮部材と、
前記スクリュウシャフトと前記スタンドと間に設けられ前記スクリュウシャフトを前記伸縮部材に押圧する弾性部材と、
前記伸縮部材に高周波振動状態の前記伸長収縮変形を行なわせる伸縮制御装置と、を備え、
前記伸縮制御装置により、前記伸縮部材を伸長時及び収縮時のいずれか一方の時に前記スクリュウシャフトが前記移動体に対して相対回転するように高速変形させ、いずれか他方の時に前記スクリュウシャフトが前記移動体に対して相対回転しないように低速変形させることを特徴とする送りねじ駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記伸縮部材は、圧電体であることを特徴とする送りねじ駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記弾性部材は、前記スタンドと前記スクリュウシャフトとの間に設けられたコイルバネであることを特徴とする送りねじ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−75225(P2012−75225A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216657(P2010−216657)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】