説明

送信装置

【課題】工数や費用を抑えたまま冗長度を小さくすることのできる送信装置を提供する。
【解決手段】この実施形態の送信装置は、送信信号を増幅して第1の増幅信号を出力する励振増幅器と、第1の増幅信号を複数の分配信号に分配する分配器と、分配信号それぞれを増幅して第2の増幅信号を出力する複数の電力増幅器と、複数の電力増幅器が出力した第2の増幅信号を合成して合成信号を出力する合成器とを備えている。そして、複数の電力増幅器それぞれの出力電力を検出する複数の増幅信号検出器と、増幅信号検出器それぞれの検出結果に基づいて、それぞれの出力電力が同一レベルとなるように複数の電力増幅器を制御する増幅レベル制御器と、合成器の出力電力または合成信号の歪み成分の少なくとも一方を検出する送信信号検出器と、送信信号検出器の検出結果に基づいて、合成器の出力電力または合成信号の歪み成分が第1のレベルとなるように励振増幅器を制御する送信レベル制御器とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば放送用設備などに用いられる送信装置は、比較的大電力の送信信号を生成するため、複数の電力増幅器を並列接続して電力合成している。このとき、電力増幅器1台当りの出力電力は、互いに等しいことが望ましいが、実際には、電力増幅器それぞれの入力電力やゲインのバラツキにより、個々の電力増幅器の出力電力にはバラツキが生じる。そのため、電力増幅器を並列接続して運用する場合、その定格最大電力は、マージンをとって設計されている。
【0003】
電力増幅器の定格最大電力は、増幅素子などデバイスのディレーティングや、熱設計などの観点からコスト上昇に繋がる設計要素である。そのため、上記バラツキを極限まで抑えることが理想的である。
【0004】
しかし、入力電力のバラツキは、各電力増幅器へ信号を分配する分配器のポート間偏差を抑えることが必要であり、ゲインのバラツキは、各電力増幅器それぞれの調整作業が必要となり、いずれも工数・費用の増大を招いてしまう。一方で、各電力増幅器それぞれの性能のバラツキを許容した場合は、全体として冗長度が大きいシステム構成が必要となり、やはりコストがかさんでしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−259050
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の送信装置では、工数・費用が増大し、または冗長度が大きくなってしまうという問題がある。以下に説明する実施形態は、かかる課題を解決するためになされたもので、工数や費用を抑えたまま冗長度を小さくすることのできる送信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、実施形態に係る送信装置は、送信信号を増幅して第1の増幅信号を出力する励振増幅器と、第1の増幅信号を複数の分配信号に分配する分配器と、分配信号それぞれを増幅して第2の増幅信号を出力する複数の電力増幅器と、複数の電力増幅器が出力した第2の増幅信号を合成して合成信号を出力する合成器とを備えている。そして、複数の電力増幅器それぞれの出力電力を検出する複数の増幅信号検出器と、増幅信号検出器それぞれの検出結果に基づいて、それぞれの出力電力が同一レベルとなるように複数の電力増幅器を制御する増幅レベル制御器と、合成器の出力電力または合成信号の歪み成分の少なくとも一方を検出する送信信号検出器と、送信信号検出器の検出結果に基づいて、合成器の出力電力または合成信号の歪み成分が第1のレベルとなるように励振増幅器を制御する送信レベル制御器とを有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る送信装置の増幅レベル制御部および送信レベル制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る送信装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態の構成)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、この実施形態の送信装置1は、励振器10、分配器20、電力増幅ユニット30および合成器40を有している。
【0010】
励振器10は、所定の方式で変調され所定の送信周波数に変換された送信信号を生成する。図1に示す例では、励振器10は、信号生成部12、ローカル発振部14、ミキサ16および励振増幅器18を有している。信号生成部12は、音声やデータなどが所定の方式で変調されたベースバンド信号を生成する。ローカル発振部14は、信号生成部12が生成したベースバンド信号を所定の送信周波数に変換するためのローカル信号を生成する。ミキサ16は、ローカル発振部14が生成したローカル信号を用いて、ベースバンド信号を所定の送信周波数の送信信号に変換する。励振増幅器18は、電力増幅ユニット30の入力信号として適切なレベルに当該送信信号を増幅する。
【0011】
励振増幅器18は、外部から出力電力を制御可能に構成されている。出力電力の制御は、様々な方法を用いて実現することができる。例えば、増幅素子に対するバイアス電圧またはバイアス電流を増減する等により増幅利得を増減したり、励振増幅器18の入力端子に可変減衰器(可変アッテネータ)を設けて励振増幅器18への入力信号レベルを増減したりする方法が考えられる。
【0012】
分配器20は、励振器10が生成した送信信号を複数の送信信号(分配信号)に分配する。送信信号の分配数は、後述する電力増幅ユニット30をなす電力増幅器の数と対応する。図1に示す例では、電力増幅器の数に対応して3つに分配している。
【0013】
電力増幅ユニット30は、分配器20が分配した分配信号それぞれを別個に増幅する複数の電力増幅部30aないし30cを有している。図1に示す例では、電力増幅ユニット30は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33と、第1ないし第3電力検出部34ないし36とを備えている。
【0014】
第1ないし第3電力増幅器31ないし33は、分配器20が分配した分配信号それぞれを所定の増幅利得で増幅する。第1ないし第3電力増幅器31ないし33は、外部から出力電力を制御可能に構成されている。出力電力の制御は、励振増幅器18と同様に、増幅素子に対するバイアス電圧またはバイアス電流を増減する等により増幅利得を増減したり、励振増幅器18の入力端子に可変減衰器(可変アッテネータ)を設けて各電力増幅器への分配信号のレベルを増減したりすることにより実現できる。
【0015】
第1ないし第3電力検出部34ないし36は、それぞれ第1ないし第3電力増幅器31ないし33の出力端子に接続されている。第1ないし第3電力検出部34ないし36は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33が増幅した信号(出力信号)それぞれの電力を検出する。第1ないし第3電力増幅器31ないし33それぞれの出力端子は、第1ないし第3電力検出部34ないし36を介して合成器40の複数の入力端子と接続されている。
【0016】
合成器40は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33の増幅出力信号を合成する。その結果、合成器40は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33それぞれの出力電力が合成された所定の送信電力の信号を出力することになる。合成器40は、合成した送信信号(合成出力)を出力端子Outに出力する。
【0017】
励振器10が生成した送信信号は、分配器20により分配される。分配器20により分配された分配信号は、それぞれ第1ないし第3電力増幅器31ないし33の入力端子に与えられる。第1ないし第3電力増幅器31ないし33は、与えられた分配信号を所定の増幅利得で増幅して出力する。合成器40は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33が増幅した信号を合成して出力端子Outに出力する。このとき、第1ないし第3電力検出部34ないし36は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33の出力電力を検出する。
【0018】
また、図1に示すように、実施形態の送信装置1は、増幅レベル制御部50、出力電力検出部60、送信レベル制御部65および送信制御部70を具備している。すなわち、実施形態の送信装置1は、電力増幅ユニットを構成する電力増幅器それぞれの出力電力および送信装置全体の送信電力を調節する機構を有している。
【0019】
増幅レベル制御部50は、第1ないし第3電力検出部34ないし36が検出した第1ないし第3電力増幅器31ないし33それぞれの出力電力に基づき、第1ないし第3電力増幅器31ないし33それぞれを制御するフィードバック制御器である。出力電力検出部60は、合成器40が合成して出力した送信信号の電力を検出する。送信レベル制御部65は、出力電力検出部60が検出した送信電力に基づいて、励振器10の励振増幅器18を制御するフィードバック制御器である。送信制御部70は、増幅レベル制御部50および送信レベル制御部65を制御して送信装置1の各電力レベルを調整する。
【0020】
ここで、図2を参照して、実施形態の送信装置1における増幅レベル制御部50および送信レベル制御部65の構成を詳細に説明する。
【0021】
図2に示すように、この実施形態の増幅レベル制御部50は、電力測定部51、電力判定部52、記憶部53およびゲイン調整部54を有している。同様に、この実施形態の送信レベル制御部65は、電力測定部66、電力判定部67、記憶部68および励振器制御部69を有している。
【0022】
電力測定部51は、電力検出部34ないし36の検出結果に基づいて、第1ないし第3電力増幅器31ないし33の出力端子に現れる信号の電力値を算出(測定)する。記憶部53は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33が出力すべき電力値(定格電力値)などを予め記憶したメモリである。電力判定部52は、電力測定部51が測定した電力値と記憶部53に記憶された定格電力値とを比較し、その大小を判定する。ゲイン調整部54は、電力判定部52の判定結果に基づいて、第1ないし第3電力増幅器31ないし33を制御してその出力電力を制御する。
【0023】
電力測定部66は、出力電力検出部60の検出結果に基づいて、合成器40の出力端子に現れる信号の電力値を算出(測定)する。すなわち、送信装置1の送信電力を測定する。記憶部68は、送信装置1が満たすべき送信電力値(定格送信電力値)などを予め記憶したメモリである。電力判定部67は、電力測定部66が測定した電力値と記憶部68に記憶された定格送信電力値とを比較し、その大小を判定する。励振器制御部69は、電力判定部67の判定結果に基づいて、励振器10の励振増幅器18を制御してその出力電力を制御する。
【0024】
このように、実施形態の送信装置1では、電力増幅ユニット30を構成する第1ないし第3電力増幅器31ないし33の出力電力を検出して当該電力増幅器それぞれを制御する制御ループと、合成器40の出力電力を検出して励振器10の励振増幅器18を制御する制御ループとが組み合わされている。
【0025】
(実施形態の動作)
続いて、図1ないし図3を参照して、実施形態に係る送信装置の動作、すなわち送信装置の電力調整動作を詳細に説明する。
【0026】
信号生成部12が所定の信号、例えば試験信号を生成すると、ミキサ16は、ローカル発振部14が生成したローカル信号を用いて、当該試験信号を所定の送信周波数の送信信号に変換する。励振増幅器18は、ミキサ16が変換した送信信号を所定のレベルに増幅して分配器20に出力する。
【0027】
分配器20は、励振器10から出力された送信信号を分配して電力増幅ユニット30に送る。電力増幅ユニット30の第1ないし第3電力増幅器31ないし33は、分配された送信信号をそれぞれ増幅して合成器40に送る。合成器40は、第1ないし第3電力増幅器31ないし33が増幅した信号を合成して出力端子Outに出力する。電力増幅ユニット30が動作を開始し出力端子Outに送信信号が出力されると、送信制御部70は、増幅レベル制御部50に電力増幅ユニット30の調節を指示する。
【0028】
送信制御部70から指示を受けると、増幅レベル制御部50は、電力増幅部30aの電力調節を開始する。電力測定部51は、電力検出部34の検出結果に基づいて、第1電力増幅器31の出力端子に現れる信号の電力を測定する(ステップ100。以下「S100」のように称する)。ここで測定された電力値Pは、第1電力増幅器31の出力電力となる。
【0029】
電力判定部52は、電力測定部51が測定した電力値Pと、記憶部53に予め格納された定格電力値Pとを比較する(S101)。
【0030】
比較の結果、第1電力増幅器31の出力電力値Pが定格電力値Pを超えている場合(S101のYes)、電力判定部52は、ゲイン調整部54に第1電力増幅器31の電力制御を指示し、ゲイン調整部54は、第1電力増幅器31を制御してその出力電力を下げる(S102)。この調整は、第1電力増幅器31の出力電力が定格電力以下になるまで繰り返される(S100・S101・S102)。このとき、第1電力増幅器31の出力電力の制御は、前述したとおり、バイアスの増減による増幅利得の増減や可変アッテネータの利用などにより実現することができる。
【0031】
比較の結果、第1電力増幅器31の出力電力値Pが定格電力値P以下の場合(S101のNo)、電力測定部51は、そのときの第1電力増幅器31の出力電力を参照電力値Prefとして記憶部53に格納し、増幅レベル制御部50は、電力増幅部30bの電力調節を開始する。このとき、直ちに参照電力値の保存をせず、第1電力増幅器31の出力電力値Pが定格電力値Pに達するまで、出力電力値Pの測定と出力電力の調節を繰り返すように構成しても構わない。すなわち、第1電力増幅器31の出力電力値Pを、定格電力値P以下とするのではなく、定格電力値Pと一致させてもよい。
【0032】
電力測定部51は、電力検出部35の検出結果に基づいて、第2電力増幅器32の出力端子に現れる信号の電力を測定する(S103)。ここで測定された電力値Pは、第2電力増幅器32の出力電力となる。
【0033】
電力判定部52は、電力測定部51が測定した電力値Pと、記憶部53に格納された参照電力値Prefとを比較する(S104)。
【0034】
比較の結果、第2電力増幅器32の出力電力値Pが参照電力値Prefと一致しない場合、あるいは所定の誤差範囲内に収まっていない場合(S104のYes)、電力判定部52は、ゲイン調整部54に第2電力増幅器32の電力制御を指示し、ゲイン調整部54は、第2電力増幅器32を制御してその出力電力を調節する(S105)。例えば、ゲイン調整部54は、第2電力増幅器32の出力電力値Pが参照電力値Prefよりも大きければ第2電力増幅器32の出力電力を下げ、第2電力増幅器32の出力電力値Pが参照電力値Prefよりも小さければ第2電力増幅器32の出力電力を上げて、両者が一致するように(あるいは所定の誤差範囲内となるように)調節する(S103・S104・S105)。このとき、第2電力増幅器32の出力電力の制御は、前述したとおり、バイアスの増減による増幅利得の増減や可変アッテネータの利用などにより実現することができる。
【0035】
比較の結果、第2電力増幅器32の出力電力値Pが参照電力値Prefと一致した場合、あるいは所定の誤差範囲内に収まっていた場合(S104のNo)、増幅レベル制御部50は、電力増幅部30cの電力調節を開始する。電力測定部51は、電力検出部36の検出結果に基づいて、第3電力増幅器33の出力端子に現れる電力を測定する(S106)。ここで測定された電力値Pは、第3電力増幅器33の出力電力となる。
【0036】
電力判定部52は、電力測定部51が測定した電力値Pと、記憶部53に格納された参照電力値Prefとを比較する(S107)。
【0037】
比較の結果、第3電力増幅器33の出力電力値Pが参照電力値Prefと一致しない場合、あるいは所定の誤差範囲内に収まっていない場合(S107のYes)、電力判定部52は、ゲイン調整部54に第3電力増幅器33の電力制御を指示し、ゲイン調整部54は、第3電力増幅器33を制御してその出力電力を調節する(S108)。例えば、ゲイン調整部54は、第3電力増幅器33の出力電力値Pが参照電力値Prefよりも大きければ第3電力増幅器33の出力電力を下げ、第3電力増幅器33の出力電力値Pが参照電力値Prefよりも小さければ第3電力増幅器33の出力電力を上げて、両者が一致するように(あるいは所定の誤差範囲内となるように)調節する(S106・S107・S108)。このとき、第3電力増幅器33の出力電力の制御は、前述したとおり、バイアスの増減による増幅利得の増減や可変アッテネータの利用などにより実現することができる。
【0038】
比較の結果、第3電力増幅器33の出力電力値Pが参照電力値Prefと一致した場合、あるいは所定の誤差範囲内に収まっていた場合(S107のNo)、増幅レベル制御部50は、送信制御部70に調整完了を報告する。報告を受けた送信制御部70は、送信レベル制御部65に送信電力の調節を指示する。
【0039】
送信制御部70から指示を受けると、送信レベル制御部65は、送信装置1の電力調節を開始する。電力測定部66は、出力電力検出部60の検出結果に基づいて、合成器40の出力端子に現れる電力を測定する(S109)。ここで測定された電力値POUTは、送信装置1の送信電力となる。
【0040】
電力判定部67は、電力測定部66が測定した電力値POUTと、記憶部53に予め格納された所定の定格送信電力値PSTDとを比較する(S110)。
【0041】
比較の結果、合成器40の出力端子における送信電力値POUTが定格送信電力値PSTDと一致しない場合、あるいは所定の誤差範囲内に収まっていない場合(S110のYes)、電力判定部66は、励振器制御部69に励振増幅器18の電力制御を指示し、励振器制御部69は、励振増幅器18を制御してその出力電力を調節する(S111)。例えば、励振器制御部69は、合成器40の出力電力値POUTが定格送信電力値PSTDよりも大きければ励振増幅器18の出力電力を下げ、合成器40の出力電力値POUTが定格送信電力値PSTDよりも小さければ励振増幅器18の出力電力を上げて、両者が一致するように(あるいは所定の誤差範囲内となるように)調節する(S109・S110・S111)。このとき、励振増幅器18の出力電力の制御は、前述したとおり、バイアスの増減による増幅利得の増減や可変アッテネータの利用などにより実現することができる。
【0042】
比較の結果、合成器40の出力電力値が定格送信電力値と一致した場合、あるいは所定の誤差範囲内に収まっていた場合(S110のNo)、送信レベル制御部65は、送信制御部70に送信電力の調整完了を報告する。
【0043】
このように、実施形態の送信装置1では、まず電力増幅ユニット30を構成する電力増幅器のうちの1台について、所定の最大定格電力以内(望ましくは最大定格電力と一致)となるようゲインを調整し、そのときの当該電力増幅器の出力レベルを基準として、他の電力増幅器の出力レベルを一致(あるいは所定の誤差範囲内)に調整する。そして、全ての電力増幅器について出力レベルが概ね一致した後に、励振器10の出力レベルを調整して送信装置1の送信電力が定格値となるように調整する。このループを繰り返すことにより、各電力増幅器の出力電力が同一かつ所定の出力レベルに調整することが可能となる。
【0044】
なお、上記説明した例では、信号生成部12が試験信号を生成するものとして説明したが、これには限定されない。すなわち、送信装置1が通常の運用状態である時に、随時上記ステップにより電力調節してもよい。また、上記説明した例では、基準となる第1電力増幅器31を定格電力以下となるようにそのゲインを調整しているが、最大定格電力以下となるように調整しても構わない。すなわち、一の電力増幅器を先に調節して基準とし、次いで他の電力増幅器の出力レベルを当該基準の電力増幅器と一致させた後に、励振器10の出力レベルを調節することで所定の送信電力に調整すればよい。
【0045】
また、上記説明した例では、第1ないし第3電力増幅器31ないし33や励振増幅器18の出力電力の制御を、これらの出力電力に基づいて行っているが、これにも限定されない。例えば、電力検出部や出力電力検出部に替えて信号の歪み成分を検出する検出器を設けてもよい。この場合、第1ないし第3電力増幅器31ないし33や励振増幅器18の出力電力は、これらの出力信号に含まれる歪み成分の量が所定レベル以下であるか否かに基づいて制御することができる。すなわち、出力信号に歪み成分が所定レベルを超えて含まれている場合に、第1ないし第3電力増幅器31ないし33や励振増幅器18の出力電力を下げる(増幅利得を下げる)ことで、図3に示す出力電力と定格電力とを比較した動作と同様の効果を得ることができる。
【0046】
この実施形態の送信装置によれば、電力合成に用いる電力増幅器の各出力レベルを均一にすることができる。また、送信電力の調節を電力増幅器ではなく励振器(励振増幅器)で行うので、電力増幅器の出力レベルの調節と送信電力の調節とを分離独立して行うことができる。すなわち、送信電力に関わらず各電力増幅器を所定の定格で動作させることを可能とし、電力増幅器の設計において見込むべきマージン量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…送信装置、10…励振器、20…分配器、30…電力増幅ユニット、40…合成器、50…増幅レベル制御部、60…電力検出部、65…送信レベル制御部、70…送信制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を増幅して第1の増幅信号を出力する励振増幅器と、
前記第1の増幅信号を複数の分配信号に分配する分配器と、
前記分配信号それぞれを増幅して第2の増幅信号を出力する複数の電力増幅器と、
前記複数の電力増幅器が出力した第2の増幅信号を合成して合成信号を出力する合成器と、
前記複数の電力増幅器それぞれの出力電力を検出する複数の増幅信号検出器と、
前記増幅信号検出器それぞれの検出結果に基づいて、それぞれの出力電力が同一レベルとなるように前記複数の電力増幅器を制御する増幅レベル制御器と、
前記合成器の出力電力または前記合成信号の歪み成分の少なくとも一方を検出する送信信号検出器と、
前記送信信号検出器の検出結果に基づいて、前記合成器の出力電力または前記合成信号の歪み成分が第1のレベルとなるように前記励振増幅器を制御する送信レベル制御器と、
を具備したことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記増幅レベル制御器は、
前記複数の電力増幅器のうち、一の電力増幅器を制御してその出力電力が第2のレベルとなるように調整するとともに、
他の電力増幅器の出力電力が前記一の電力増幅器の出力電力と同一レベルとなるように該他の電力増幅器を制御すること
を特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項3】
前記送信レベル制御器は、前記増幅レベル制御器が前記複数の電力増幅器の出力電力を同一レベルとなるよう制御した後に、前記励振増幅器を制御することを特徴とする請求項1または2記載の送信装置。
【請求項4】
前記一の電力増幅器は、前記複数の電力増幅器のうち、前記第2のレベルと最も差の大きい出力電力をもつ電力増幅器であることを特徴とする請求項2または3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記増幅レベル制御器は、
前記電力増幅器が出力すべき電力値を前記第2のレベルとして含む出力電力情報を格納した第1の記憶部と、
前記一の電力増幅器に対応する前記増幅出力検出器の検出結果が、前記第1の記憶部に格納された出力電力情報が示す電力値を超えた場合に前記一の電力増幅器の増幅利得を下げ、前記出力電力情報が示す電力値に満たない場合に前記一の電力増幅利得を上げる制御を行うゲイン調整部と、
を備えたことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項6】
前記送信レベル制御器は、
前記合成信号が満たすべき出力電力値または歪み成分を前記第1のレベルとして含む送信信号情報を格納した第2の記憶部と、
前記送信出力検出器の検出結果が、前記第2の記憶部に格納された送信信号情報が示す出力電力値または歪み成分を満たすよう前記励振増幅器の増幅利得を制御する励振制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−138814(P2012−138814A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290514(P2010−290514)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】