説明

送水圧制御システムおよび送水圧制御方法

【課題】末端に位置する負荷機器の探索を不要とする。末端に位置する負荷機器への末端差圧を計測するための専用の差圧センサの設置を不要とする。
【解決手段】負荷機器12には冷水バルブCVが設けられている。冷水バルブCVは、そのバルブを流れる冷水の流量(負荷機器流量)を計測する手段と、そのバルブの入力側と出力側との間の差圧(バルブ差圧)を計測する手段を有している。これら手段が計測する負荷機器流量とバルブ差圧を制御装置11へ送る。制御装置11は、負荷機器12毎に、負荷機器流量からコイル差圧を推定し、推定したコイル差圧にバルブ差圧を加算して、負荷機器差圧を求める。この負荷機器12毎の負荷機器差圧中の最小値を末端差圧とみなして冷水の送水圧PSspを決定する。温水の場合も同様にして送水圧PSspを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱源機により生成された冷温水の負荷機器(ファンコイルユニットや空調機等)への送水圧を制御する送水圧制御システム及び送水圧制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱源機により生成された冷温水の負荷機器への送水圧を制御する送水圧制御の一つとして、例えば特許文献1に示されたシステムでは、熱源機からの冷温水の往水管路と還水管路との間に設けられた複数の負荷機器のうち、末端に位置する負荷機器の入力側と出力側との間の差圧を末端差圧として計測し、この計測した末端差圧に基づいて熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧を設定するようにしている。
【0003】
この特許文献1に示されたシステムによれば、末端に位置する負荷機器の入力側と出力側との間の差圧(末端差圧)に基づいて熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧が変更されるものとなり、末端差圧が小さい場合には冷温水の送水圧を高くし、末端差圧が大きい場合には冷温水の送水圧を低くするようにして、負荷機器への冷温水の搬送動力を削減することが可能となり、省エネルギー化を実現することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−299980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の送水圧制御システムによると、熱源機からの冷温水の往水管路と還水管路との間に設けられた複数の負荷機器のうちどの負荷機器が末端に位置するのかを探さなければならず、この末端に位置する負荷機器の探索に手間と時間がかかっていた。
【0006】
また、末端に位置する負荷機器に末端差圧を計測するための専用の差圧センサを設置する必要があり、既存の設備では差圧センサの追加設置が困難である場合がある。また、設備コスト、改修コスト、施工コストがかってしまう等、種々の問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、末端に位置する負荷機器の探索が不要で、かつ末端に位置する負荷機器に末端差圧を計測するための専用の差圧センサを設置することなく、熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧の設定を状況に応じて変更し、省エネルギーを図ることが可能な送水圧制御システム及び送水圧制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために本発明は、冷温水を生成する熱源機と、この熱源機からの冷温水の往水管路と還水管路との間に設けられた複数の負荷機器と、これら負荷機器への熱源機からの冷温水の送水圧を制御する制御装置とを備えた送水圧制御システムにおいて、各負荷機器に、自己の負荷機器に流れる冷温水の流量を負荷機器流量として計測する流量計測手段と、自己の負荷機器に流れる冷温水の流量を調整するバルブの入口側と出口側との間の差圧をバルブ差圧として計測する差圧計測手段とを設け、制御装置に、負荷機器毎に流量計測手段によって計測された負荷機器流量と差圧計測手段によって計測されたバルブ差圧とからその負荷機器の入力側と出力側との間に加わる差圧を負荷機器差圧として推定する負荷機器差圧推定手段と、この負荷機器差圧推定手段によって推定された負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値に基づいて熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧を設定する送水圧設定手段とを設けたものである。
【0009】
この発明において、各負荷機器は、自己の負荷機器に流れる冷温水の流量を負荷機器流量として計測し、自己の負荷機器に流れる冷温水の流量を調整するバルブの入口側と出口側との間の差圧をバルブ差圧として計測する。例えば、負荷機器を空調機とし、この空調機にその冷温水コイルへの冷温水の流量を調整するバルブが設けられ、このバルブに流量計測手段と差圧計測手段が既設の手段として設けられているものとすれば、流量計測手段によって計測される冷温水コイルへの冷温水の流量が負荷機器流量として、差圧計測手段によって計測されるバルブの入口側と出口側との間の差圧がバルブ差圧として、制御装置へ送られる。
【0010】
制御装置は、負荷機器毎に、その負荷機器から送られてくる負荷機器流量とバルブ差圧とから、その負荷機器の入力側と出力側との間に加わる差圧を負荷機器差圧として推定する。例えば、負荷機器毎に、冷温水コイルの入口側と出口側との間の差圧(コイル差圧)と負荷機器流量との関係を示すテーブルや所定の演算式から負荷機器流量(計測値)に応じたコイル差圧(推定値)を求め、このコイル差圧(推定値)にバルブ差圧(計測値)を加算して負荷機器差圧(推定値)を求める。そして、制御装置は、この推定した負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値に基づいて、熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧を設定する。
【0011】
この場合、負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値は、末端差圧とみなすことができる。したがって、本発明によれば、末端に位置する負荷機器の入力側と出力側との間の差圧(末端差圧)を差圧センサを用いて実際に計測することなく、負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値として推測される末端差圧に基づいて、熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧が設定される。
【0012】
なお、本発明は、送水圧制御システムとしてではなく、送水圧制御方法として実現することも可能である。送水圧制御方法とする場合、冷温水を生成する熱源機と、この熱源機からの冷温水の往水管路と還水管路との間に設けられた複数の負荷機器と、これら負荷機器への前記熱源機からの冷温水の送水圧を制御する制御装置とを備えたシステムにおいて、負荷機器毎にその負荷機器に流れる冷温水の流量を負荷機器流量として計測する流量計測ステップと、負荷機器毎にその負荷機器に流れる冷温水の流量を調整するバルブの入口側と出口側との間の差圧をバルブ差圧として計測する差圧計測ステップと、負荷機器毎に流量計測ステップによって計測された負荷機器流量と差圧計測ステップによって計測されたバルブ差圧とからその負荷機器の入力側と出力側との間に加わる差圧を負荷機器差圧として推定する負荷機器差圧推定ステップと、この負荷機器差圧推定ステップによって推定された負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値に基づいて熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧を設定する送水圧設定ステップとを設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、負荷機器毎に計測された負荷機器流量とバルブ差圧とからその負荷機器の入力側と出力側との間に加わる差圧を負荷機器差圧として推定し、この推定した負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値に基づいて熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧を設定するようにしたので、負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値として推測される末端差圧に基づいて、熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧が設定されるものとなり、末端に位置する負荷機器を探索する必要がなくなり、かつ末端に位置する負荷機器に末端差圧を計測するための専用の差圧センサを設置することなく、熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧を状況に応じて変更し、省エネルギーを図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る送水圧制御システムの一実施の形態の構成を示す計装図である。
【0015】
この送水圧制御システムは、冷温水発生器、ヒートポンプ、冷凍機、ボイラーなどの冷温水を生成する熱源機1−1〜1−3と、熱源機1−1〜1−3に対して補機として設けられた1次ポンプ2−1〜2−3と、往ヘッダ3−1,3−2と、還ヘッダ4と、往ヘッダ3−1と還ヘッダ4との間に設けられた第1のバイパス管路5と、往ヘッダ3−1と3−2との間に設けられた2次ポンプ6−1〜6−3と、往ヘッダ3−1と往ヘッダ3−2との間に設けられた第2のバイパス管路7と、バイパス管路7に設けられたバイパス弁8と、往水管路9と、還水管路10と、制御装置11とを備えており、往水管路9と還水管路10との間には並列にファンコイルユニットや空調機等の負荷機器12−1〜12−3が設けられている。
【0016】
この送水圧制御システムにおいて、1次ポンプ2−1〜2−3により圧送され熱源機1−1〜3により熱量が加えられた冷温水は、往ヘッダ3−1に送られ、2次ポンプ6−1〜6−3によりさらに圧送されて、往ヘッダ3−2を経て往水管路9に供給され、負荷機器12−1〜12−3を介し、還水管路10を通って還ヘッダ4に至り、再び1次ポンプ2−1〜2−3によって圧送され、以上の経路を循環する。
【0017】
この冷温水の循環経路中、往水管路9には、往ヘッダ3−2から吐出される冷温水の圧力を熱源機1−1〜1−3からの負荷機器12−1〜12−3への冷温水の送水圧PSpvとして計測する圧力センサ13と、往ヘッダ3−2から吐出される冷温水の温度を熱源機1−1〜1−3からの負荷機器12−1〜12−3への冷温水の送水温度をTSpvとして計測する温度センサ14が設けられている。
【0018】
また、2次ポンプ6−1〜6−3には、そのポンプの回転数を調整するためのインバータ6−1a〜6−3aが付設されており、負荷機器12−1〜12−3には、負荷機器12−1〜12−3に流れる冷水の流量を調整するためのバルブCV1〜CV3と、負荷機器12−1〜12−3に流れる温水の流量を調整するためのバルブHV1〜HV3が設けられている。
【0019】
図2に負荷機器12(12−1〜12−3)の内部構成の概略を示す。負荷機器12は、冷水コイル12Aと、温水コイル12Bと、ファン12Cとを備えており、冷水コイル12Aへの冷水の供給通路LCにはバルブCV(以下、冷水バルブと呼ぶ)が設けられ、温水コイル12Bへの温水の供給通路LHにはバルブHV(以下、温水バルブと呼ぶ)が設けられている。
【0020】
冷水バルブCVには、この冷水バルブCVの開度調整を行うために必要な物理量を計測する既設の手段として、冷水バルブCVを流れる冷水の流量を計測する流量計測手段SC1と、冷水バルブCVの入口側と出口側との間の差圧を計測する差圧計測手段SC2とが設けられている。本実施の形態では、この冷水バルブCVの流量計測手段SC1によって計測される冷水の流量を負荷機器流量QCとして、また差圧計測手段SC2によって計測される入口側と出口側との間の差圧をバルブ差圧ΔPCVとして、制御装置11へ送るようにしている。
【0021】
温水バルブHVには、この温水バルブHVの開度調整を行うために必要な物理量を計測する既設の手段として、温水バルブHVを流れる温水の流量を計測する流量計測手段SH1と、温水バルブHVの入口側と出口側との間の差圧を計測する差圧計測手段SH2とが設けられている。本実施の形態では、この温水バルブHVの流量計測手段SH1によって計測される温水の流量を負荷機器流量QHとして、また差圧計測手段SH2によって計測される入口側と出口側との間の差圧をバルブ差圧ΔPHVとして、制御装置11へ送るようにしている。
【0022】
なお、負荷機器12からの負荷機器流量QC,QHおよびバルブ差圧ΔPCV,ΔPHVの制御装置11への送信は、無線であってもよいし、有線であってもよい。
【0023】
制御装置11は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して制御装置としての各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、本実施の形態特有の機能として送水圧制御機能を有している。以下、図4に示すフローチャートに従って、制御装置11が有する送水圧制御機能について説明する。
【0024】
制御装置11は、定期的に、温度センサ14からの送水温度TSpvをチェックし、負荷機器12−1〜12−3への送水が冷水であるのか温水であるのかを判断する(ステップS101)。ここで、負荷機器12−1〜12−3への送水が冷水であればステップS102以降の処理を実行し、温水であればステップ108以降の処理を実行する。
【0025】
〔冷水の場合〕
制御装置11は、負荷機器12−1〜12−3への送水を冷水と判断すると(ステップS101の「冷水」)、先ず、負荷機器12−1からの負荷機器流量QC1とバルブ差圧ΔPCV1を取得する(ステップS102)。
【0026】
そして、予め定められている負荷機器12−1における冷水コイルの入口側と出口側との間の差圧(コイル差圧)と負荷機器流量との関係を示すテーブルTBC1(図5参照)から、ステップS102で取得した負荷機器流量QC1に応じたコイル差圧ΔPCC1を求め、このコイル差圧ΔPCC1を負荷機器12−1における冷水コイル使用時のコイル差圧の推定値とする(ステップS103)。
【0027】
そして、ステップS102で取得したバルブ差圧ΔPCV1(計測値)にステップS103で求めたコイル差圧ΔPCC1(推定値)を加算し、このバルブ差圧ΔPCV1とコイル差圧ΔPCC1との加算値ΔPC1(ΔPC1=ΔPCV1+ΔPCC1、図3(a)参照)を、負荷機器12−1の入力側と出力側との間に加わる差圧(負荷機器差圧)の推定値とする(ステップS104)。
【0028】
以下同様にして、制御装置11は、ステップS105で全ての負荷機器12についてその処理が終了するまで、ステップS102〜S105の処理を繰り返す。これにより、負荷機器12−1と同様にして、負荷機器12−2の入力側と出力側との間に加わる差圧が負荷機器差圧ΔPC2(ΔPC2=ΔPCV2+ΔPCC2)として推定され、負荷機器12−3の入力側と出力側との間に加わる差圧が負荷機器差圧ΔPC3(ΔPC3=ΔPCV3+ΔPCC3)として推定される。
【0029】
制御装置11は、このようにして負荷機器12−1〜12−3の負荷機器差圧ΔPC1〜ΔPC3を推定した後(ステップS105のYES)、この推定した負荷機器差圧ΔPC1〜ΔPC3中の最小値を末端差圧とみなし、この末端差圧とみなした負荷機器差圧ΔPC1〜ΔPC3中の最小値に基づいて、負荷機器12−1〜12−3への送水圧の設定値PSspを決定する(ステップS106)。
【0030】
そして、制御装置11は、この決定した送水圧の設定値PSspに基づいて、圧力センサ13からの送水圧の計測値PSpvが設定値PSspとなるように、2次ポンプ6−1〜6−3の回転数を調整する。この際、2次ポンプ6−1〜6−3の回転数を下限値にしても送水圧PSpvが設定値PSspに達しない場合には、バイパス弁8の開度を調整することによって、送水圧PSpvが設定値PSspとなるようにする。
【0031】
〔温水の場合〕
制御装置11は、負荷機器12−1〜12−3への送水を温水と判断すると(ステップS101の「温水」)、先ず、負荷機器12−1からの負荷機器流量QH1とバルブ差圧ΔPHV1を取得する(ステップS108)。
【0032】
そして、予め定められている負荷機器12−1における温水コイルの入口側と出口側との間の差圧(コイル差圧)と負荷機器流量との関係を示すテーブルTBH1(図6参照)から、ステップS108で取得した負荷機器流量QH1に応じたコイル差圧ΔPHC1を求め、このコイル差圧ΔPHC1を負荷機器12−1における温水コイル使用時のコイル差圧の推定値とする(ステップS109)。
【0033】
そして、ステップS108で取得したバルブ差圧ΔPHV1(計測値)にステップS109で求めたコイル差圧ΔPHC1(推定値)を加算し、このバルブ差圧ΔPHV1とコイル差圧ΔPHC1との加算値ΔPH1(ΔPH1=ΔPHV1+ΔPHC1、図3(b)参照)を、負荷機器12−1の入力側と出力側との間に加わる差圧(負荷機器差圧)の推定値とする(ステップS110)。
【0034】
以下同様にして、制御装置11は、ステップS111で全ての負荷機器12についてその処理が終了するまで、ステップS108〜S111の処理を繰り返す。これにより、負荷機器12−1と同様にして、負荷機器12−2の入力側と出力側との間に加わる差圧が負荷機器差圧ΔPH2(ΔPH2=ΔPHV2+ΔPHC2)として推定され、負荷機器12−3の入力側と出力側との間に加わる差圧が負荷機器差圧ΔPH3(ΔPH3=ΔPHV3+ΔPHC3)として推定される。
【0035】
制御装置11は、このようにして負荷機器12−1〜12−3の負荷機器差圧ΔPH1〜ΔPH3を推定した後(ステップS111のYES)、この推定した負荷機器差圧の推定値ΔPH1〜ΔPH3中の最小値を末端差圧とみなし、この末端差圧とみなした負荷機器差圧ΔPH1〜ΔPH3中の最小値に基づいて、負荷機器12−1〜12−3への送水圧の設定値Pspを決定する(ステップS106)。
【0036】
そして、制御装置11は、この決定した送水圧の設定値PSspに基づいて、圧力センサ13からの送水圧の計測値PSpvが設定値PSspとなるように、2次ポンプ6−1〜6−3の回転数を調整する。この際、2次ポンプ6−1〜6−3の回転数を下限値にしても送水圧PSpvが設定値PSspに達しない場合には、バイパス弁8の開度を調整することによって、送水圧PSpvが設定値Pspとなるようにする。
【0037】
以上の説明から分かるように、本実施の形態によれば、負荷機器12−1〜12−3に設けられているバルブ(CV,HV)が具備する流量計測手段(SC1,SH1)や差圧計測手段(SC2,SH2)を利用し、この流量計測手段や差圧計測手段から送られてくる負荷機器流量(QC,QH)やバルブ差圧(ΔPCV,ΔPHV)から負荷機器12−1〜12−3の負荷機器差圧(ΔPC,ΔPH)を推定し、この推定した負荷機器差圧の最小値を末端差圧とみなして送水圧の設定を行うようにしているので、末端に位置する負荷機器を探索する必要がなく、末端に位置する負荷機器に末端差圧を計測するための専用の差圧センサを設置する必要もなくなる。これにより、コストと手間をそれほどかけずに、熱源機からの負荷機器への冷温水の送水圧を状況に応じて変更し、省エネルギーを実現することができるようになる。
【0038】
参考として、図7に、制御装置11の要部の機能ブロック図を示す。制御装置11は、冷温水判断手段11Aと、バルブ差圧取得手段11Bと、負荷機器流量取得手段11Cと、コイル差圧推定手段11Dと、負荷機器差圧算出手段11Eと、送水圧設定手段11Fと、送水圧制御手段11Gとを備えている。
【0039】
冷温水判断手段11Aは、温度センサ14からの送水温度の計測値TSpvに基づいて熱源機1−1〜1−3からの負荷機器12−1〜12−3への送水が冷水であるのか温水であるのかを判断する。
【0040】
バルブ差圧取得手段11Bは、冷温水判断手段11Aが冷水であると判断した場合、負荷機器12−1〜12−3からのバルブ差圧ΔPCV1〜ΔPCV3を取得し、冷温水判断手段11Aが温水であると判断した場合、負荷機器12−1〜12−3からのバルブ差圧ΔPHV1〜ΔPHV3を取得する。
【0041】
負荷機器流量取得手段11Cは、冷温水判断手段11Aが冷水であると判断した場合、負荷機器12−1〜12−3からの負荷機器流量QC1〜QC3を取得し、冷温水判断手段11Aが温水であると判断した場合、負荷機器12−1〜12−3からの負荷機器流量QH1〜QH3を取得する。
【0042】
コイル差圧推定手段11Dは、負荷機器流量取得手段11Cが取得した負荷機器12−1〜12−3からの負荷機器流量QC1〜QC3から予め定められているテーブルTBC1〜TBC3に従って、負荷機器12−1〜12−3における冷水コイル12Aの入口側と出口側との間のコイル差圧ΔPCC1〜ΔPCC3を推定する。また、負荷機器流量取得手段11Cが取得した負荷機器12−1〜12−3からの負荷機器流量QH1〜QH3から予め定められているテーブルTHB1〜THB3に従って、負荷機器12−1〜12−3における温水コイル12の入口側と出口側との間のコイル差圧ΔPHC1〜ΔPHC3を推定する。
【0043】
負荷機器差圧算出手段11Eは、バルブ差圧取得手段11Bが取得したバルブ差圧ΔPCV1〜ΔPCV3およびコイル差圧推定手段11Dにおいて推定された負荷機器12−1〜12−3のコイル差圧ΔPCC1〜ΔPCC3から、負荷機器12−1〜12−3の負荷機器差圧ΔPC1〜ΔPC3を算出する。また、バルブ差圧取得手段11Bが取得したバルブ差圧ΔPHV1〜ΔPHV3およびコイル差圧推定手段11Dにおいて推定された負荷機器12−1〜12−3のコイル差圧ΔPHC1〜ΔPHC3から、負荷機器12−1〜12−3の負荷機器差圧ΔPH1〜ΔPH3を算出する。
【0044】
送水圧設定手段11Fは、負荷機器差圧算出手段11Eによって算出された負荷機器差圧ΔPC1〜ΔPC3中の最小値に基づいて、送水が冷水である場合の送水圧の設定値PSspを決定する。また、負荷機器差圧算出手段11Eによって算出された負荷機器差圧ΔPH1〜ΔPH3中の最小値に基づいて、送水が温水である場合の送水圧の設定値PSspを決定する。
【0045】
送水圧制御手段11Gは、送水圧設定手段11Fによって決定された送水圧の設定値PSspに基づいて、圧力センサ13からの送水圧の計測値PSpvが設定値PSspとなるように、2次ポンプ6−1〜6−3の回転数を調整する。また、2次ポンプ6−1〜6−3の回転数を下限値にしても送水圧PSpvが設定値PSspに達しない場合には、バイパス弁8の開度を調整することによって、送水圧PSpvが設定値PSspとなるようにする。
【0046】
なお、上述した実施の形態では、ステップS103やステップS109でのコイル差圧の推定に際し、コイル差圧と負荷機器流量との関係を示すテーブルを使用するようにしたが、例えば下記の(1)式で示されるような演算式を用いて、コイル差圧を算出するようにしてもよい。
【0047】
コイル差圧=負荷機器流量の2乗×k ・・・・(1)
なお、この(1)式において、kは負荷機器流量が設計最大値のときにコイル差圧が設計値となるような値とし、コイル毎に決定する。
【0048】
また、上述した実施の形態では、負荷機器12に冷水コイルと温水コイルとが設けられている例で説明したが、冷水コイルおよび温水コイルの何れか一方のみが設けられた負荷機器であってもよい。すなわち、冷水だけを循環させるシステム、温水だけを循環させるシステムにおいても、同様にして適用することが可能である。
【0049】
また、上述した実施の形態では、説明を簡単とするために、熱源機を3台、負荷機器を3台とした例で説明したが、熱源機や負荷機器などの数量は、上述した数量に限定されるものではなく、適宜自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る送水圧制御システムの一実施の形態の構成を示す計装図である。
【図2】この送水圧制御システムにおける負荷機器の内部構成の概略を示す図である。
【図3】負荷機器の入力側と出力側との間に加わる差圧(負荷機器差圧)の算出を説明する図である。
【図4】この送水圧制御システムにおける制御装置が有する送水圧制御機能を説明するためのフローチャートである。
【図5】冷水コイルの入口側と出口側との間の差圧(コイル差圧)と負荷機器流量との関係を表すテーブルを例示する図である。
【図6】温水コイルの入口側と出口側との間の差圧(コイル差圧)と負荷機器流量との関係を表すテーブルを例示する図である。
【図7】この送水圧制御システムにおける制御装置の要部の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1(1−1〜1−3)…熱源機、2(2−1〜2−3)…1次ポンプ、3−1,3−2…往ヘッダ、4…還ヘッダ、5…バイパス管路、6(6−1〜6−3)…2次ポンプ、6−1a〜6−3a…インバータ、7…バイパス管路、8…バイパス弁、9…往水管路、10…還水管路、11…制御装置、12(12−1〜12−3)…負荷機器、12A…冷水コイル、12B…温水コイル、12C…ファン、LC…冷水の供給通路、LH…温水の供給通路、CV(CV1〜CV3)…冷水バルブ、HV(HV1〜HV3)…温水バルブ、SC1,SH1…流量計測手段、SC2,SH2…差圧計測手段、TBC(TBC1〜TBC3),TBH(TBH1〜TBH3)…テーブル、13…圧力センサ、14…温度センサ、11A…冷温水判断手段、11B…バルブ差圧取得手段、11C…負荷機器流量取得手段、11D…コイル差圧推定手段、11E…負荷機器差圧算出手段、11F…送水圧設定手段、11G…送水圧制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷温水を生成する熱源機と、この熱源機からの冷温水の往水管路と還水管路との間に設けられた複数の負荷機器と、これら負荷機器への前記熱源機からの冷温水の送水圧を制御する制御装置とを備えた送水圧制御システムにおいて、
前記負荷機器の各々は、
自己の負荷機器に流れる冷温水の流量を負荷機器流量として計測する流量計測手段と、
自己の負荷機器に流れる冷温水の流量を調整するバルブの入口側と出口側との間の差圧をバルブ差圧として計測する差圧計測手段とを備え、
前記制御装置は、
前記負荷機器毎に前記流量計測手段によって計測された負荷機器流量と前記差圧計測手段によって計測されたバルブ差圧とからその負荷機器の入力側と出力側との間に加わる差圧を負荷機器差圧として推定する負荷機器差圧推定手段と、
この負荷機器差圧推定手段によって推定された前記負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値に基づいて前記熱源機からの前記負荷機器への冷温水の送水圧を設定する送水圧設定手段と
を備えることを特徴とする送水圧制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載された送水圧制御システムにおいて、
前記負荷機器は、冷温水コイルを備えた空調機とされ、
前記負荷機器推定手段は、前記負荷機器毎に、前記流量計測手段によって計測された負荷機器流量からその負荷機器の冷温水コイルの入口側と出口側との間の差圧をコイル差圧として推定し、この推定したコイル差圧と前記差圧計測手段によって計測されたバルブ差圧とからその負荷機器の負荷機器差圧を推定する
ことを特徴とする送水圧制御システム。
【請求項3】
冷温水を生成する熱源機と、この熱源機からの冷温水の往水管路と還水管路との間に設けられた複数の負荷機器と、これら負荷機器への前記熱源機からの冷温水の送水圧を制御する制御装置とを備えたシステムに適用される送水圧制御方法において、
前記負荷機器毎にその負荷機器に流れる冷温水の流量を負荷機器流量として計測する流量計測ステップと、
前記負荷機器毎にその負荷機器に流れる冷温水の流量を調整するバルブの入口側と出口側との間の差圧をバルブ差圧として計測する差圧計測ステップと、
前記負荷機器毎に前記流量計測ステップによって計測された負荷機器流量と前記差圧計測ステップによって計測されたバルブ差圧とからその負荷機器の入力側と出力側との間に加わる差圧を負荷機器差圧として推定する負荷機器差圧推定ステップと、
この負荷機器差圧推定ステップによって推定された前記負荷機器毎の負荷機器差圧中の最小値に基づいて前記熱源機からの前記負荷機器への冷温水の送水圧を設定する送水圧設定ステップと
を備えることを特徴とする送水圧制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載された送水圧制御方法において、
前記負荷機器は、冷温水コイルを備えた空調機とされ、
前記負荷機器推定ステップは、前記負荷機器毎に、前記流量計測ステップによって計測された負荷機器流量からその負荷機器の冷温水コイルの入口側と出口側との間の差圧をコイル差圧として推定し、この推定したコイル差圧と前記差圧計測ステップによって計測されたバルブ差圧とからその負荷機器の負荷機器差圧を推定する
ことを特徴とする送水圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−121722(P2009−121722A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294069(P2007−294069)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】