説明

送液装置

【課題】微小量の液体を安定して送液することができるとともに、プロセスの追加や流路部品を使い捨て構造とすることが容易な送液装置を提供する。
【解決手段】送液装置は、基材12と、基材に形成され、検査器16を装着可能な検査部14と、基材に形成され検査部を通って延びた微小流路18であって、流入口18aと、流出口18bとを有する気密な微小流路と、伸縮自在な蛇腹構造を有し、流入口に気密に接続され、伸縮に応じて内部容積が変化して液体記微小流路に押し出しあるいは引き込みするマイクロポンプ22と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小量の液体を所望部位へ送液する送液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療分野においては、分析用の液体を微小量、例えば、μlオーダの量だけ検査器に送液する送液装置が用いられている。このような送液装置は、予め液体を収容したタンクと、タンクから検出部まで延びた微小流路と、検出部からタンクまで延びたリターン流と、このリターン流路内に設けられたマイクロポンプと、を備えている(例えば、特許文献1、特許文献2)。リターン流路において、マイクロポンプの上流側および下流側には、バッファータンクがそれぞれ設けられている。そして、マイクロポンプにより、タンク内の液体を吸い出して検出部に送るとともに、リターン流路を用いて、送液量相当の体積の空気等を循環させる。これにより、流路内の内容積を一定としている。液体が危険物等の場合には、流路部品が完全な密閉構造であることが必須となる。
【0003】
上記送液装置では、タンクから液体を送り出すためには、バッファータンクの位置により多少異なるが、マイクロポンプを作動させ、微小流路を介して液体を吸い上げる、もしくはタンク内に空気等を流入させ、タンク内の気圧を上昇させることにより、タンクから微小流路へ液体を押し出す方法が一般的である。
【特許文献1】特開2008−107245号公報
【特許文献2】特開2008−122179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した送液装置においては、送液を行う際、常に空気等の気体を介在せざるを得ないという問題がある。すなわち、気体は圧縮された場合に容易に体積が変化するため、どのような種類のマイクロポンプを用いても送液が不安定となり、定量的な管理が非常に困難となる。
【0005】
一般に、検出を行う前に、供給液体に対して、加熱等の前処理することが多いが、上記のような送液装置では、加熱されることにより密閉された微小流路内の気体が膨張し、タンク内の液体が微小流路内に溢れ出すような想定外の液の移動が発生する。また、タンク、微小流路の内圧が更に上昇した場合、微小流路の気密性が破られる可能性もあり、液体が危険物の場合には深刻な問題となる。
【0006】
送液装置の構成部品を検査毎に使い捨てとする場合には、特にマイクロポンプ等の要素部品については、可能な限り安価であることが望まれる。そこで、リターン流路をシリコーン等の軟質なチューブとし、マイクロポンプをチューブポンプ構造とする方法や、同じくシリコーン等の軟質の膜をポンプとして代用し、流路部品外の送液機構を用いて往復運動等を行わせ、送液を行う方法等が考えられている。しかしながら、いずれの方法も前述したような、送液量が不安定となる問題を抱えているため、実用的とは言えない。
【0007】
上記のように、従来の微少液送装置では、送液が不安定であり、特に加熱等のプロセスの追加や、使い捨てを想定すると実用化は非常に困難となる。
【0008】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、微小量の液体を安定して送液することができるとともに、プロセスの追加や流路部品を使い捨て構造とすることが容易な送液装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の態様によれば、送液装置は、基材と、前記基材に形成され、検査器を装着可能な検査部と、前記基材に形成された微小流路であって、前記検査部に連通した連通部と、流入口と、流出口とを有する気密な微小流路と、伸縮自在な蛇腹構造を有し、前記流入口に気密に接続され、伸縮に応じて内部容積が変化して液体を前記微小流路に押し出しあるいは引き込みするシリンジ構造のマイクロポンプと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、微小量の液体を安定して送液することができるとともに、プロセスの追加や流路部品を使い捨て構造とすることが容易な送液装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る送液装置について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る送液装置の送液ユニットの背面側を示す斜視図、図2は、駆動機構を含む送液装置全体を示す断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、送液装置は、送液ユニット10と、この送液ユニットを駆動する駆動機構30とを備え、送液ユニット10は、駆動機構に対して脱着自在に接続されている。
【0013】
送液ユニット10は、例えば、矩形板状に形成された基材12を備えている。基材12の下面は、平坦な装着面を形成している。基材12の中央部には、基材12の下面側に開口した矩形状の凹所からなる検査部14が形成されている。この検査部14を覆うように、検査器16、例えば、DNAチップが基材12の下面側に装着されている。
【0014】
基材12には、検査部14に気密に連通した微小流路18が形成されている。微小流路18の一端は、基材12の下面側に開口した流入口18aに連通し、他端は、基材12の下面側に開口した流出口18bに連通している。検査部14は、微小流路18の中途部に連通して形成されている。微小流路18は、例えば、0.3mm×0.3mmの径に形成されている。また、基材12には、基材の上面に開口した注入口20が形成されている。注入口20は、流入口18aと対向して位置しているとともに、脱着自在な封止栓21によって閉じられている。
【0015】
微小流路18の流入口18aには、マイクロポンプ22が接続され、流出口18bにはマイクロポンプ24が接続されている。これにより、基材12は密閉した流路構造を有している。マイクロポンプ22、24は、伸縮自在な蛇腹構造を有し、例えば、ポリプロピレンにより中空に形成され、伸縮に応じて内部容積が変化する。
【0016】
マイクロポンプ22は、流入口18aに気密に接続されている。マイクロポンプ22は、例えば、基材12の下面に対して垂直な方向に沿って伸縮自在に、基材12に取付けられている。マイクロポンプ22は、蛇腹が延びた状態で、その内部に検査液体23が充填される。
【0017】
マイクロポンプ24は、伸縮自在な可変部材として機能し、流出口18bに気密に接続されている。マイクロポンプ24は、例えば、基材12の下面に対して垂直な方向に沿って伸縮自在に、基材12に取付けられている。液体の供給時、マイクロポンプ24は、蛇腹が縮んだ状態となっている。
基材12の下面側の四隅には、基材12を支持する4本の支持脚26が立設されている。
【0018】
一方、マイクロポンプ22、24の下方には、これらのマイクロポンプを伸縮させる駆動機構30が設置されている。駆動機構30は、ベース32と、ベースに設けられ、マイクロポンプ22を伸縮させる昇降自在なプランジャ34、およびベースに設けられマイクロポンプ24を伸縮させる昇降自在なプランジャ36を有している。プランジャ36の先端部には、マイクロポンプ24の下端部を把持するチャック37が設けられている。また、図2に示すように、駆動機構30は、検査液体を加熱処理するためのヒータ38を備えている。ヒータ38は、例えば、円筒状に形成され、マイクロポンプ22の外周側に設置可能となっている。
【0019】
送液ユニット10は、支持脚26により駆動機構30のベース32上に載置され、マイクロポンプ22、24は、駆動機構30のプランジャ34、36の先端部とそれぞれ係合している。
【0020】
次に、上記のように構成された送液装置の送液動作について説明する。
まず、基材12の検査部14を覆うように、検査器16、例えば、DNAチップを基材12の下面側に装着し、保持する。また、封止栓21を取り外し、注入口20および流入口18aを通して、マイクロポンプ22内に所定量の検査液体23を注入する。この際、マイクロポンプ22は延びた状態に維持されている。また、他方のマイクロポンプ24は、縮んだ状態としておく。
【0021】
このような送液ユニット10を駆動機構30上に載置し、マイクロポンプ22、24をプランジャ34、36にそれぞれ係合させる。マイクロポンプ24については、プランジャ36のチャック37により、マイクロポンプ24の下端を把持する。
【0022】
続いて、プランジャ34によりマイクロポンプ22を下から押圧し、マイクロポンプ22を収縮させる。これにより、マイクロポンプ22内の検査液体23を所定量、例えば、150μl程度押し出し、微小流路18を通して検査部14に送液し、検査器16に供給する。検査を行いながら、検査液体23を、検査部14から微小流路18を通してマイクロポンプ24に移動させる。
【0023】
この際、微小流路18および検査部14は密閉構造であり、流路内部の体積を一定とする必要がある。そのため、マイクロポンプ24については、駆動機構30のプランジャ36により、マイクロポンプ22の収縮動作に同期して、蛇腹を伸ばす、すなわち、伸張動作を行う。これにより、マイクロポンプ22、24の内部容積を含む、流路内部の体積を一定に維持する。但し、流路内の圧力等に問題が無ければ、駆動機構30を用いずに、マイクロポンプ22の収縮作動により発生する圧力を用いて、マイクロポンプ24を伸ばしてもよい。
検査液体23を送液前に加熱処理する場合、マイクロポンプ22の周囲にヒータ38を配置し、このヒータによってマイクロポンプ22内の検査液体23を加熱する。検査終了後、送液ユニット10を駆動機構30のベース32から取り外し、更に、検査器16を基材12から取り外した後、必要であれば、送液ユニットを破棄する。
【0024】
上記のように構成された送液装置によれば、リターン流路やバッファータンクが不要なため、従来の装置と比較して流路内に閉じ込められた気体が非常に少ない。そのため、気体の膨張、収縮に起因する液体の移動が極めて少なない。また、検査液体が充填されているタンクは、伸縮自在の蛇腹構造を有するマイクロポンプであるため、密閉流路に多少気体が混入した場合でも、蛇腹が伸びることにより、流路内の圧力の上昇を吸収することが可能となる。従って、流路内の空気の膨張、収縮に影響されることなく、微小量の検査液体を安定して送液することができる。マイクロポンプの収縮量により送液量を決めることができ、正確な量の液体を安定して送ることが可能となる。
【0025】
同時に、検査液体に対して、加熱等の前処理した場合でも、流路内の空気の膨張に影響されることがなく、検査液体の微小流路内への漏洩や微小流路の気密性が破られるといった問題を防止することができる。
【0026】
流路部品を構成する送液ユニット10については、使用目的にもよるが、使い捨てが望まれる場合が多い。そのため、流路部品の価格は可能な限り安価が望ましい。本実施形態によれば、マイクロポンプを動作させるための駆動機構や加熱機構は、流路部品の一部ではなく、容易に切り離すことを可能としている。また、マイクロポンプ22、24は、合成樹脂等によって蛇腹構造に形成されたものであり、一般的に市販されているダイヤフラム構造を用いたマイクロポンプ等に比較して、非常に安価に形成することができる。そのため、送液ユニット10を安価に製造することができ、送液ユニットを駆動機構から取り外し、容易に使い捨てとすることが可能となる。
以上のことから、微小量の液体を安定して送液することができるとともに、プロセスの追加や流路部品を使い捨て構造とすることが可能な送液装置が得られる。
【0027】
次に、この発明の第2の実施形態に係る送液装置について説明する。
図3は、第2の実施形態に係る送液装置を示す断面図である。図3に示すように、送液装置は、複数、例えば、2つの送液ユニット10、40を備えている。送液ユニット10、40は、前述した第1の実施形態と同様に構成されている。すなわち、送液ユニット10は、矩形板状に形成された基材12を備え、基材12の中央部には、基材12の下面側に開口した矩形状の検査部14が形成されている。この検査部14を覆うように、検査器16、例えば、DNAチップが基材12の下面側に装着されている。
【0028】
基材12には、検査部14に気密に連通した微小流路18が形成されている。微小流路18の一端は、基材12の下面側に開口した流入口18aに連通し、他端は、基材12の下面側に開口した流出口18bに連通している。検査部14は、微小流路18の中途部に連通して形成されている。
【0029】
微小流路18の流入口18aには、マイクロポンプ22が接続され、流出口18bにはマイクロポンプ24が接続されている。これにより、基材12は密閉した流路構造を有している。マイクロポンプ22、24は、伸縮自在な蛇腹構造を有し、例えば、ポリプロピレンにより中空に形成され、伸縮に応じて内部容積が変化する。
【0030】
マイクロポンプ22は、流入口18aに気密に接続されている。マイクロポンプ22は、例えば、基材12の裏面に対して垂直な方向に沿って伸縮自在に、基材12に取付けられている。マイクロポンプ22は、マイクロポンプ22は、蛇腹が延びた状態で、その内部に検査液体23が充填される。
【0031】
マイクロポンプ24は、流出口18bに気密に接続されている。マイクロポンプ24は、例えば、基材12の裏面に対して垂直な方向に沿って伸縮自在に、基材12に取付けられている。液体の供給時、マイクロポンプ24は、蛇腹が縮んだ状態となっている。
基材12の下面側の四隅には、基材を支持する4本の支持脚26が立設されている。
【0032】
他方の送液ユニット40は、矩形板状に形成された基材42を備え、基材42の中央部には、基材42の下面側に開口した矩形状の第2検査部44が形成されている。この第2検査部44を覆うように、検査器46、例えば、DNAチップが基材42の下面側に装着されている。
【0033】
基材42には、第2検査部44に気密に連通した第2微小流路48が形成されている。第2微小流路48の一端は、基材42の下面側に開口した流入口48aに連通し、他端は、基材42の下面側に開口した第2流出口48bに連通している。第2検査部44は、第2微小流路48の中途部に連通して形成されている。
【0034】
第2微小流路48の流入口48aは、連通管50を通して送液ユニット10の微小流路18に連通している。すなわち、第2微小流路48は、送液ユニット10の微小流路18から分岐して送液ユニット40内を延びている。第2微小流路48の第2流出口48bには、伸縮自在な可変部材として機能するマイクロポンプ52が接続されている。これにより、基材42は密閉した流路構造を有している。マイクロポンプ52は、伸縮自在な蛇腹構造を有し、例えば、ポリプロピレンにより中空に形成され、伸縮に応じて内部容積が変化する。マイクロポンプ52は、第2流出口48bに気密に接続されている。マイクロポンプ52は、例えば、基材42の裏面に対して垂直な方向に沿って伸縮自在に、基材42に取付けられている。液体の供給時、マイクロポンプ52は、蛇腹が縮んだ状態となっている。
【0035】
基材42には、基材42の上面に開口した注入口54が形成されている。注入口54は、流入口48aと対向して位置しているとともに、脱着自在な封止栓55によって閉じられている。
【0036】
基材42の下面側の四隅には、基材を支持する4本の支持脚56が立設されている。送液ユニット40は、支持脚56により送液ユニット10の基材12上にほぼ平行に載置されている。
【0037】
送液装置は、前述した第1の実施形態と同様の構成を有する駆動機構30を備えている。そして、送液ユニット10、40は、支持脚26により駆動機構30のベース32上に載置され、マイクロポンプ22、24、52は、駆動機構30のプランジャ34、36および図示しないプランジャの先端部とそれぞれ係合している。
【0038】
上記のように構成された送液装置によれば、マイクロポンプ22が微小流路18に接続され、微小流路18は2分岐され、送液ユニット10、40の検査部14、検査部44を通過し、それぞれ並列に配置されたマイクロポンプ24、52に接続されている。このように、2本の微小流路18、48に対して、検査液体をそれぞれ定量送液する場合、それぞれの送液量をマイクロポンプ22、24、52の動作量で決めることがき、極めて安定した送液が可能となる。その他、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
なお、第2の実施形態において、分岐させる微小流路数が増加した場合や、複数のマイクロポンプが直列に配置された場合においても同様の構成によって対応することできる。また、複数の送液ユニットは、垂直方向に限らず、水平方向に並んで、すなわち、基材同士が同一の平面内に並んだ状態で、配置してもよい。
【0040】
次に、この発明の第3の実施形態に係る送液装置について説明する。
図4は、第3の実施形態に係る送液装置を示す断面図である。送液装置は、検査液体の処理工程が増加する場合に対応した送液システムとして構成されている。図4に示すように、送液装置は、送液ユニット10を備えている。送液ユニット10は、流入口18aと検査部14との間で、微小流路18に連通した第2流入口18cを有し、この第2流入口18cは、基材12の下面に開口している。
【0041】
第2流入口18cには、マイクロポンプ60が接続され、基材12は密閉した流路構造を有している。マイクロポンプ60は、伸縮自在な蛇腹構造を有し、例えば、ポリプロピレンにより中空に形成され、伸縮に応じて内部容積が変化する。マイクロポンプ60は、例えば、基材12の裏面に対して垂直な方向に沿って伸縮自在に、基材12に取付けられている。
【0042】
マイクロポンプ22、24、60の下方には、それぞれの蛇腹構造を伸縮させるため、駆動機構30が設置されている。駆動機構30は、マイクロポンプ22を伸縮させる昇降自在なプランジャ34、マイクロポンプ24を伸縮させる昇降自在なプランジャ36、およびマイクロポンプ60を伸縮させる昇降自在なプランジャ62を有している。プランジャ62の先端部には、マイクロポンプ60の下端部を把持するチャック63が設けられている。
【0043】
第3の実施形態において、送液ユニット10および駆動機構30の他の構成は、前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
上記のように構成された送液装置によれば、例えば、マイクロポンプ22内に充填された検査液体23を加熱処理した後、プランジャ34によりマイクロポンプ22を下から押圧し、マイクロポンプ22を収縮させる。これにより、マイクロポンプ22内の検査液体23を所定量、例えば、150μl程度押し出し、微小流路18を通してマイクロポンプ60内に充填する。この際、流路内部の体積を一定とする必要がある。そのため、マイクロポンプ60については、駆動機構30のプランジャ62により、マイクロポンプ22の収縮動作に同期して、蛇腹を伸ばす、すなわち、伸張動作を行う。これにより、マイクロポンプ22、60の内部容積を含む、流路内部の体積を一定に維持する。但し、流路内の圧力等に問題が無ければ、駆動機構30を用いずに、マイクロポンプ22の収縮作動により発生する圧力を用いて、マイクロポンプ60を伸ばしてもよい。
【0045】
続いて、マイクロポンプ60内の検査液体23を例えば、再度、加熱処理、あるいは、冷却処理した後、プランジャ62によりマイクロポンプ60を下から押圧し、マイクロポンプ60を収縮させる。これにより、マイクロポンプ60内の検査液体23を所定量押し出し、微小流路18を通して検査部14に送液し、検査器16に供給する。検査を行いながら、検査液体23を、検査部14から微小流路18を通してマイクロポンプ24に移動させる。
【0046】
この際、微小流路18および検査部14は密閉構造であり、流路内部の体積を一定とする必要がある。そのため、マイクロポンプ24については、駆動機構30のプランジャ36により、マイクロポンプ60の収縮動作に同期して、蛇腹を伸ばす、すなわち、伸張動作を行う。これにより、マイクロポンプ60、24の内部容積を含む、流路内部の体積を一定に維持する。但し、流路内の圧力等に問題が無ければ、駆動機構30を用いずに、マイクロポンプ60の収縮作動により発生する圧力を用いて、マイクロポンプ24を伸ばしてもよい。なお、マイクロポンプ22は、プランジャ34により、収縮状態に保持する。
【0047】
上記のように構成された送液装置によれば、流路内の空気の膨張、収縮に影響されることなく、微小量の検査液体を安定して送液することができる。検査液体に対して、加熱等の前処理した場合でも、流路内の空気の膨張に影響されることがなく、検査液体の微小流路内への漏洩や微小流路の気密性が破られるといった問題を防止することができる。更に、本実施形態によれば、検査液体に対する複数の処理工程を順を追って実行することができる。その他、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
上述した第1、第2、第3の実施形態において、微小流路18の流出口18bに蛇腹構造のマイクロポンプ24を接続する構成としたが、これに限らず、微小流路18内の圧力変化に応じて伸縮可能な中空の弾性部材を接続してもよい。例えば、図5に示す第4の実施形態のように、風船状の弾性部材66を微小流路18の流出口18bに気密に接続し、微小流路18内の圧力変化に応じて弾性部材66を伸縮させる構成としてもよい。
【0049】
図6は、蛇腹構造を有するマイクロポンプが接続される接続部の変形例を示し、図7は、マイクロポンプの変形例を示している。
一般的な蛇腹は、使用材料や材質の厚みにもよるが、完全に収縮した状態においても、ある程度の内部容積が残る。検体量等の制約により、マイクロポンプ内の残検査液体を最小限とするため、図6に示すように、基材12の下面からマイクロポンプ22内に突出する突出部68を形成し、この突出部に微小流路18の流入口18aを設けてもよい。このように、マイクロポンプ22内に突出部68を挿入することにより、収縮時におけるマイクロポンプの内部容積を低減することが可能となる。
【0050】
図7に示すように、マイクロポンプ22自体に、マイクロポンプの底面側からマイクロポンプ内部に突出する突出部70を設け、収縮時におけるマイクロポンプの内部容積を低減するようにしてもよい。
【0051】
この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
送液装置の各構成部材の形状、寸法、材質等は、前述した実施形態に限定されることなく、必要に応じて、変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態に係る送液装置の送液ユニットを示す斜視図。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る送液装置を示す断面図。
【図3】図3は、この発明の第2の実施形態に係る送液装置を示す断面図。
【図4】図4は、この発明の第3の実施形態に係る送液装置を示す断面図。
【図5】図5は、この発明の第4の実施形態に係る送液装置の一部を示す断面図。
【図6】図6は、送液装置におけるマイクロポンプの変形例を示す断面図。
【図7】図7は、送液装置におけるマイクロポンプの他の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0053】
10…送液ユニット、12…基材、14…検査部、16…検査器、18…微小流路、
18a…流入口、18b…流出口、18c…第2流入口、20…注入口、
21、55…封止栓、22、24、52、60…マイクロポンプ、23…検査液体、
30…駆動機構、34、36、62…プランジャ、38…ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に形成され、検査器を装着可能な検査部と、
前記基材に形成され、前記検査部を通って延びた微小流路であって、流入口と、流出口とを有する気密な微小流路と、
伸縮自在な蛇腹構造を有し、前記流入口に気密に接続され、伸縮に応じて内部容積が変化して液体を前記微小流路に押し出しあるいは引き込みするマイクロポンプと、
を備えた送液装置。
【請求項2】
前記流出口に気密に接続され、前記マイクロポンプの伸縮動作に応じて伸縮し、前記微小流路内の総容積を一定に維持する伸縮自在な可変部材を備えている請求項1に記載の送液装置。
【請求項3】
前記可変部材は、蛇腹構造を有するマイクロポンプで形成されている請求項2に記載の送液装置。
【請求項4】
前記可変部材は、弾性変形可能な中空の弾性部材で形成されている請求項2に記載の送液装置。
【請求項5】
前記マイクロポンプを伸縮させる駆動機構を備えている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の送液装置。
【請求項6】
前記基材およびマイクロポンプは、前記駆動機構に対して、取り外し自在に接続されている請求項5に記載の送液装置。
【請求項7】
前記基材は、平坦な装着面を有し、前記マイクロポンプは、前記装着面と交差する方向に沿って伸縮自在に設けられている請求項1に記載の送液装置。
【請求項8】
前記基材は、前記装着面から前記マイクロポンプ内に突出した突出部を有し、前記流入口は前記突出部に開口し、前記マイクロポンプ内に連通している請求項7に記載の送液装置。
【請求項9】
前記マイクロポンプは、前記蛇腹の底面側からマイクロポンプ内部に突出した突出部を有している請求項7に記載の送液装置。
【請求項10】
前記流入口と検査部との間で前記微小流路に連通した第2流入口と、
伸縮自在な蛇腹構造を有し、前記第2流入口に気密に接続され、伸縮に応じて内部容積が変化して液体を前記微小流路に押し出しあるいは引き込みするマイクロポンプと、を備えている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の送液装置。
【請求項11】
前記流入口から分岐して延びる第2微小流路と、第2微小流路の中途部に形成され、検査器を装着可能な第2検査部と、前記第2微小流路に連通した第2流出口と、前記流出口に気密に接続され、前記マイクロポンプの伸縮動作に応じて伸縮し、前記第2微小流路内の総容積を一定に維持する伸縮自在な可変部材と、を備えている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の送液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−78508(P2010−78508A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248661(P2008−248661)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】