説明

透明バリアフィルムおよびその製造方法

【課題】
本発明の目的は、酸化珪素膜をバリア層に用いた透明性、バリア性に優れたバリアフィルム、およびこのバリアフィルムを効率的に製造可能な製造方法を提供することである。
【解決手段】
プラスチック基材の片面または両面に、酸化珪素膜(SiOx)をバリア層とするバリアフィルムであって、前記酸化珪素膜(SiOx)の、前記xの値を1.9〜2.1の範囲とし、かつ、酸化珪素膜の比抵抗値を1012Ωcm以上、絶縁破壊電圧を1MV/cm以上とすることで解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,透明バリアフィルム、特に、液晶素子(LCD),エレクトロルミネッセンス素子(EL)等に代表されるフラットパネルディスプレイに用いることが可能な透明バリアフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、前記自己発光体である有機ELディスプレイは、低消費電力,高い応答速度,高視野角等の多くの利点から,ブラウン管や液晶ディスプレイに変わるフラットパネルディスプレイとして注目されている。
この有機EL素子は、一般に透明基板上に陽極層、有機発光層、陰極層を積層し、有機EL素子が形成されている。そして、前記両電極間に電圧を印可することにより有機発光層が発光するのである。また、有機EL素子は、その構造からも薄型化,軽量化が可能であり、フレキシブルディスプレイへの応用の期待も高いディスプレイである。
【0003】
しかしながら、有機EL素子は、酸素や水分に弱い、特に、水分に非常に弱いことが知られている。そのため、有機EL素子は、大気中に暴露した状態で放置すると、酸素,水蒸気が、有機EL素子内への進入し、劣化が引き起こされることが知られている。
特に、陰極層に用いられる仕事関数の低いアルカリ金属、またはアルカリ土類金属から構成されているため、水分により酸化されやすく、この陰極層が酸化されることにより、電子の注入が阻害され、ダークスポットと呼ばれる非発光領域が発生し時間の経過と共に拡大する。このため現状では、有機EL素子は、基板にガラス上を用い、この基板上に必要な素子が形成され、乾燥剤、封止管を用いて封止して構造となっている。
【0004】
フレキシブルディスプレイとするためには、基板をフレキシブル性、透明性を有するプラスチック基材を用いるのが一般的である。このプラスチック基材は、基材単体では、水、酸素のバリア性に乏しく、有機EL素子の陰極層を保護のするために必要な水蒸気バリア性を確保することは困難である。
有機EL素子の陰極層を保護のするために必要な水蒸気バリア性は、1×10-6g/m2/dayともいわれており、フレキシブル有機ELディスプレイを実現するためにはプラスチック基材へのバリア層の付与が不可欠である(特許文献1、非特許文献1参照)。
また、このバリア層としては、主に透明性の高い珪素,アルミニウムなどの酸化物や窒化物があげられる。このバリア層を形成する手段としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、CVD法などが挙げられる。
さらに、前記バリア層は、ディスプレイ作製時におこる種々の工程中での、耐熱性、耐薬品性、耐アルカリ性、耐酸性等が要求され、かつ、様々な環境下での高いバリア性を維持することが要求される.
【0005】
前記バリア層を形成する材料として、酸化珪素膜が広く用いられており、バリア膜としてさまざまな組成、形成手法が検討され、バリアフィルムとして、食品包装分野では実用化されている(特許文献2参照)。
しかしながら、酸化珪素膜は、バリア性を向上させようとすると着色してしまい、また、透明性を向上しようとすると十分なバリア性が得られない問題があった。
【0006】
一方、近年高品質な酸化珪素膜を形成する手法として、PECVD法も挙げられる。しかし、バリア性の高い高品質な膜を得るためには、原料として、特ガス指定のシラン(SiH4)を用いなければならなかった。また、膜形成において、成膜温度が高温であり、プラスチック基材への応用が難しかった。
また、前記課題を改善し、有機シラン化合物を用いたPECVD法による酸化珪素膜も検討されているが、有機EL素子に用いるのに十分な物性を有するバリア基材は得られていいない(非特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−118674号公報
【特許文献2】特開平07-164591号公報
【非特許文献1】PIONEERR&D Vol.11 No.3「有機フィルムディスプレイの開発」
【非特許文献2】「NovelTransparent Gas Barrier Film Prepared by PECVD Method, 43rd AnnualTechnical Conference Proceedings, Society of Vacuum Coater, 1,(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,上記のような課題を解決するためのものであり、酸化珪素膜をバリア層に用いた透明性、バリア性に優れたバリアフィルム、およびこのバリアフィルムを効率的に製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、プラスチック基材の片面または両面に、酸化珪素膜(SiOx)をバリア層とするバリアフィルムであって、前記酸化珪素膜(SiOx)は、前記xの値が1.9〜2.1の範囲にあり、酸化珪素膜の比抵抗値が1012Ωcm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が1MV/cm以上であることを特徴とする透明バリアフィルムである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記酸化珪素膜は、さらに赤外吸収スペクトルによるとSi-O-Siの伸縮振動に帰属される吸収のピーク位置が、1055〜1075cm-1の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の透明バリアフィルムである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記酸化珪素膜は、さらに、屈折率が、1.45〜1.48の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の透明バリアフィルムである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記酸化珪素膜は、膜中の炭素原子の割合が10%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の透明バリアフィルムである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、プラスチック基材の片面または両面に、分子内に炭素を有するシラン化合物を出発原料に用い、プラズマCVD法によりバリア層を形成したことを特徴とする透明バリアフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバリア層を構成する酸化珪素膜は、前記酸化珪素膜(SiOx)は,前記xの値が1.9〜2.1の範囲にあるので、透明性が優れ、比抵抗値が1012Ωcm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が1MV/cm以上であるので、酸化珪素膜中に、ダングリングボンドや,欠陥の少ない緻密な膜となり、高いバリア性を得ることが可能となった。
【0014】
また、バリア層である酸化珪素膜の赤外吸収スペクトルによるとSi-O-Siの伸縮振動に帰属される吸収が、1055〜1075cm-1の範囲にあるので、酸化珪素膜が緻密な構造となりガスバリア性を向上することが可能となった。
【0015】
さらに、バリア層である酸化珪素膜の屈折率が1.45〜1.48の範囲であるので、高いバリア性を維持できるようになった。
ここで、熱CVD法により得られた酸化珪素膜の屈折率が、1.465よりも大きいと(1.465<)シリコンリッチな膜となり、逆に小さい場合(1.465>)は酸素リッチ、または密度の低い酸化珪素膜となり、高いバリア性得ることができない。
【0016】
また、分子内に炭素を有するシラン化合物を出発原料に用い、プラズマCVD法によりバリア層を形成したので、炭素の混入を防ぎSiO2に近い、透明でバリア性の高い酸化珪素膜の製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を詳細に説明する.
図1は、本発明の透明バリアフィルムの一例を説明する断面説明図である。
図1において、基材1は、透明プラスチック材料からなり、この基材1上に、例えば、プラズマCVD法による酸化珪素膜からなるバリア層2を成膜形成した透明バリアフィルムである。
【0018】
本発明に用いられる基材は、バリア層の透明性を生かすために透明なフィルムが好ましい。
具体的には、例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、環状シクロオレフィンを含むシクロオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いることができる。これらフィルムは、一軸延伸、二軸延伸、または未延伸フィルムのどちらでもよく、また、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
また、前記基材1には、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤,紫外線防止剤,可塑剤,滑剤などが添加されていてもよい、また、バリア層2の密着性を向上するために、表面にプライマー層を設けたり、表面を前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施したり、または薬品処理,溶剤処理などを施してもよい。
【0019】
バリア層2の酸化珪素膜の製造の一例を以下に説明する。
まず、分子内に炭素を有するシラン化合物を出発原料に用い、プラズマCVD法により形成された酸化珪素膜(SiOx)からなるバリア層を形成する。このバリア層は、記基材の片面または両面に形成することができる。また、基材が連続状のプラスチックフィルムを用いることで、巻き取り式による連続蒸着によりバリア層2を形成することができる。このバリア層2の形成には、巻き取り式の真空成膜装置を用いることができる。
【0020】
次に、酸化珪素膜からなるバリア層を形成するための巻き取り式真空成膜機の一例を示す。
図2は、巻き取り式真空成膜機の概略図である。
図2に示した透明バリアフィルムを作成する真空成膜装置は、ウエブ状のプラスチックフィルムからなる基材1を巻出し・巻き取り室4に、トルクモータ等の一定の張力にて巻き取り可能な巻き取り手段をもつ巻き取り軸7、かつ、パウダークラッチ等のトルク制御手段により一定のバックテンションをかけつつ、ウエブ状のプラスチックフィルムからなる基材の巻出しを可能にする巻出し軸6、前記基材の走行を規制する複数のアイドルローラ(11,12)、適宣にフィードバックを行うための張力検出器を具備したテンションロール(13、14)、フィルム表面の温度を監視するための温度センサー(15、16)を備えている。
また、成膜室5には、成膜時のフィルム表面の温度をコントロールし、表面に膜を形成するための温調入り成膜ドラム17、プロセスガスまたは原料ガスを導入するシャワーヘッドをもつプラズマCVD用の電極18でなる成膜部を配置してなる真空成膜装置である。
図2に示した真空性まく装置は、巻き取り式の真空成膜装置の例であるが、その他のバッチ式の成膜装置でも製造可能である。ここで、前記プラズマ発生法としては直流(DC)プラズマ、低周波プラズマ、高周波(RF)プラズマ、パルス波プラズマ、3極構造プラズマ、マイクロ波プラズマ等の低温プラズマ発生装置を用いることができる。
【0021】
プラズマCVD法にて作成される酸化珪素膜からなるバリア層は、分子内に炭素を有するシラン化合物と酸素ガスを加えたもの、場合によってはそれに不活性ガスを加えたものを原料として用いて成膜形成される。
ここで、分子内に炭素を有するシラン化合物としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン、メチルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物を選択し、これらシラン化合物の一つまたは、複数を選択して使用することができる。
前記シラン化合物の中で成膜圧力と蒸気圧を考えると、TEOS,TMOS,TMS,HMDSO,テトラメチルシランが好ましい。
そして、バリア層の成膜形成には、前述の巻き取りこれらの有機珪素化合物を気化させ、酸素ガスと混合し、前記真空成膜装置の電極18へと導入し、温調ドラム17と電極18間にプラズマを発生させ、プラズマCVD法にて酸化珪素膜からなるバリア層をプラスチックフィルムからなる基材上に成膜形成する。
また、バリア層である酸化珪素膜の性質は、プラズマCVD法では様々な方法で変えることが可能である。例えば、有機珪素化合物やガス種の変更、有機珪素化合物と酸素ガスの混合比や、投入電力等の様々な条件で形成することができる。
【0022】
バリア層である酸化珪素膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、あまり薄すぎるとバリア性の発現が難しいため、10nm以上、500nm以下の範囲が好ましい。
このバリア層の膜厚は、透明性が損なわれない範囲において、必要なバリア性能に合わせて膜厚をコントロールすることが可能である。しかし、ある程度の膜厚となると柔軟性が失われるので、前記範囲の膜厚が好ましい。
また、バリア層の膜厚コントロールは、バッチ装置では成膜時間をコントロールすることにより可能であり、巻き取り式の装置の場合には、ラインスピード、または電極の個数を変化させることによりコントロールが可能である。また、一度成膜を行った後に、再度反転して成膜し、膜厚を増加させることも可能である.
【0023】
また,本発明のバリア層である酸化珪素膜(SiOx)の組成は、前記xの値を1.9〜2.1範囲とし、さらに、酸化珪素膜中の炭素原子の割合が10%以下と規定し,炭素の混入を防ぎSIO2に近い,酸化珪素膜とした。
このバリア層の酸化珪素膜の組成は、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定が可能である。
前記バリア層の酸化珪素膜(SiOx)のxの値を、1.9〜2.1範囲とすることで、化学量論であるSiO2の組成が得られる。ここで、SiOxのxの値が、1.9〜2.1の範囲を外れると、化学量論的を外れ、余剰なボンドが発生し、バリア性が発現しなくなる。
また、SiOxのxの値が、1.9を下回ると、珪素リッチな酸化珪素膜となり、膜の着色の恐れがあるため好ましくない。
さらに,原料に分子内に炭素を有するシラン化合物を用いた場合、成膜された酸化珪素膜中に炭素が混入してしまうことがある。ここで混入した炭素は、C-H結合を有する可能性が高く、酸化珪素膜中の欠陥となりやすいため、極力減らす必要がある。
【0024】
さらに、バリア層は、比抵抗値が1012Ωcm以上であり、絶縁破壊電圧が1MV/cm以上に制御することによって、酸化珪素膜中に、ダングリングボンドや,欠陥の少ない緻密な膜とすることができ、非常に高いガスバリア性が得られた。
ここで、前記抵抗値や絶縁破壊電圧等の電気的特性は、酸化珪素膜組成に非常に敏感な特性であり、比抵抗値が1012Ωcm以上であり、絶縁破壊電圧が1MV/cm以上とすることで、XPS等で測定した組成値よりもより最適化されるものと考えられる。
この絶縁破壊電圧、比抵抗値は、ガラス基板上にMIM(Metal-Insulator-Metal)構造を作製し、ピコアンメーターにより電流密度−電圧(J-E)特性を測定することにより決定した。なお、前記メタル電極には、スパッタリングによるCr膜を用い、測定面積は0.06cm2で測定した。
【0025】
また、バリア層である酸化珪素膜の赤外吸収スペクトルの測定は、フーリエ変換赤外吸収分光計FT-IRを用いて測定することが可能である。
この測定は、プラスチック基材上に成膜した酸化珪素膜を直接測定することも可能であるが、薄膜になると困難になるため、Siウエハー上に成膜形成したものを分析することが好ましい。
そして、酸化珪素膜の Si-O-Siの伸縮振動ピーク位置は、バリア性の低い膜では低波数側に位置し、条件を最適化していくことにより、高波数側へとシフトする。本発明のバリア層の酸化珪素膜はSi-O-Siの伸縮振動に帰属される、赤外吸収スペクトルの吸収のピーク位置が、1055〜1075cm-1の範囲になるようにすることにより、高いバリア性を得ることができた。
【0026】
また、バリア層である酸化珪素膜の屈折率は、エリプソメトリにより測定することが可能である。
この測定は、波長633nmのレーザー光を用い測定を行った。
前記波長に限らず他にも得られたガスバリアフィルムの透過光および、反射光を測定することによっても測定が可能である。
本発明のバリア層は、この酸化珪素膜の屈折率を1.45〜1.48の範囲とすることにより、組成、密度を制御することができ、高いバリア性を維持することが可能となった。
酸化珪素膜の屈折率は、酸化珪素に吸収のない範囲の屈折率で規定することが可能である。(酸化珪素膜の屈折率は主に密度と相関があるものとされている)例えば、熱CVD法により得られた化学量論にあるSiO2膜の屈折率は、1.465とされている。屈折率が、この値よりも大きい場合(1.465<)はシリコンリッチな膜となり、逆に小さい場合(1.465>)は、酸素リッチ、または密度の低い酸化珪素膜となる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを基材として、図2に示す巻き取り式プラズマCVD成膜装置の巻出し部にセットし、真空ポンプで排気し、巻き取り式プラズマCVD成膜装置内部を、5×10-5torrにまで減圧をした。
次に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO):酸素=10:100となるように混合した原料ガスを、成膜室の各電極表面のシャワーヘッドより導入し、成膜室内部を2×10-2torrとした。
続いて、各電極に13.56MHzの高周波を0.5kW印可し、プラズマを発生させた。
続いてPETフィルムを0.3m/minで走行させて成膜を行った。そのとき得られた酸化珪素膜の膜厚は100nmであった.このようにして本発明の目的である透明ガスバリアフィルム1を得た。
【0029】
(実施例2、3)
HMDSO:酸素比=5:100,15:100とし、また酸化珪素膜の膜厚が100nmとなるようにラインスピードを調節した以外は、実施例1と同様の条件で透明ガスバリアフィルム1を得た。
【0030】
(実施例4〜7)
各電極に印加した高周波電力を1.0kWとし、HMDSO:酸素比=10:100、15:100、20:100、25:100とし、また、酸化珪素膜の膜厚が100nmとなるようにラインスピードを調節した以外は、実施例1と同様の条件で透明ガスバリアフィルム1を得た。
【0031】
(比較例1、2)
HMDSO:酸素比=20:100、30:100とし、また酸化珪素膜の膜厚が100nmとなるようにラインスピードを調節した以外は、実施例1と同様の条件で成膜した透明バリアフィルムを得た。
【0032】
(比較例3、4)
HMDSO:酸素比=30:100、40:100とし、また、酸化珪素膜の膜厚が100nmとなるようにラインスピードを調節した以外は、実施例2と同様の条件で透明ガスバリアフィルムを得た。
【0033】
前記実施例および比較例の透明バリアフィルムのバリア性の測定は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN-W 3/33)を用い、 40℃,相対湿度90%の条件下で測定を行った。その結果を表1に示す。なお、基材に用いたPETフィルム単体のバリア性は、5.0g/m2/dayであった。
なお、前記水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN-W 3/33)の測定限界は、0.01g/m2/dayである。
また、SiOxの組成比、炭素混入量(at%)、絶縁破壊電圧(MV/cm)、比抵抗値(Ωcm)、赤外線吸収スペクトルの吸収位置(cm-1)、および屈折率を前述の測定手段で測定した。
その結果を表1に示す。
【表1】

【0034】
表1に示すとおり、SiOxのxの範囲が、1.9〜2.1である組成比で、絶縁破壊電圧が、1MV/cm以上で、かつ、比抵抗値が、1012Ωcm以上である酸化珪素膜をバリア層とした実施例1〜7は、高いバリア性のバリアフィルムが得られた。
また、赤外線吸収スペクトルの吸収位置の範囲を1055〜1075cm-1とした実施例1〜7は、高いバリア性のバリアフィルムが得られた。
さらに、屈折率を1.45〜1.48の範囲とした、実施例1、3、4、5、は、さらに高いバリア性を有するバリアフィルムが得られた。
さらにまた、シラン化合物を原料として成膜したバリア層でも、炭素原子の割合を10%以下とした実施例1〜7は、高いバリア性のバリアフィルムが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の透明バリアフィルムの一例示した断面説明図。
【図2】本発明のフィルムを製造する巻き取り式真空成膜装置一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0036】
1・・・基材
2・・・バリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材の片面または両面に、酸化珪素膜(SiOx)をバリア層とするバリアフィルムであって、前記酸化珪素膜(SiOx)は、前記xの値が1.9〜2.1の範囲にあり、酸化珪素膜の比抵抗値が1012Ωcm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が1MV/cm以上であることを特徴とする透明バリアフィルム。
【請求項2】
前記酸化珪素膜は、さらに赤外吸収スペクトルによるとSi-O-Siの伸縮振動に帰属される吸収のピーク位置が、1055〜1075cm-1の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の透明バリアフィルム。
【請求項3】
前記酸化珪素膜は、さらに、屈折率が、1.45〜1.48の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の透明バリアフィルム。
【請求項4】
前記酸化珪素膜は、膜中の炭素原子の割合が10%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の透明バリアフィルム。
【請求項5】
プラスチック基材の片面または両面に、分子内に炭素を有するシラン化合物を出発原料に用い、プラズマCVD法によりバリア層を形成したことを特徴とする透明バリアフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−144977(P2007−144977A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56092(P2006−56092)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】