説明

透明導電性積層体およびそれを用いた透明タッチパネル

【課題】透明タッチパネルを構成する2枚の透明電極基板間で発生するニュートンリングを防止できる透明導電性積層体、およびこのような透明導電性積層体を用いた透明タッチパネルを提供する。
【解決手段】透明有機高分子基板(16)の少なくとも一方の面上に、凹凸表面を有する硬化樹脂層(15)と透明導電層(14)とが順次積層された透明導電性積層体(14、15、16)であって、硬化樹脂層が、硬化樹脂成分、および硬化樹脂成分中に分散している少なくとも1種の平均一次粒子径100nm以下の金属酸化物超微粒子Aおよび金属フッ化物超微粒子Bを有し、硬化樹脂層におけるこれらの超微粒子AおよびBの含有量はそれぞれ、硬化樹脂成分100質量部あたり1質量部以上20質量部未満であり、かつこれらの超微粒子AおよびBの質量比(A/B)が、0.3よりも大きいことを特徴とする、透明導電性積層体とする。またこのような透明導電性積層体(14、15、16)を有する透明タッチパネル(20)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明タッチパネルおよびそれに好適な透明導電性積層体に関する。さらに詳しくは視認性に優れた透明タッチパネルおよびそれに用いる透明導電性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンマシンインターフェースの一つとして対話型入力方式を実現する透明タッチパネルが多く使用されるようになった。透明タッチパネルは位置検出方式によって、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。このうち抵抗膜方式は、構造が単純で価格/性能比も良いため、近年急速な普及を見せている。
【0003】
抵抗膜方式の透明タッチパネルは、対向する側に透明導電層を有する2枚のフィルムまたはシートを一定間隔に保持して構成される電子部品であり、可動電極基板(視認側の電極基板)をペンまたは指で押圧し、たわませ、固定電極基板(対向する側の電極基板)と接触、導通することによって検出回路が位置を検知し、所定の入力がなされるものである。この際、押圧部周辺にニュートンリングと呼ばれる干渉縞が現れることがある。また、押圧しない状態であっても可動電極基板の撓みにより可動電極基板と固定電極基板の間隔が狭くなった部分にニュートンリングが現れることがある。ニュートンリングの発生によりディスプレイの視認性が低下する。
【0004】
このような抵抗膜方式の透明タッチパネルを構成する2枚の透明電極基板間に発生するニュートンリングを軽減するためには、適切な形状、大きさの凹凸をフィルム表面に形成する方法が有効である。具体的には、平均一次粒子径1〜4μmのフィラーを所定量含むコーティング層と透明導電層を、プラスチックフィルムの上に形成する方法や(特許文献1参照)、平均二次粒子径1.0〜3.0μmとなるシリカ粒子を含む突起塗工層(突起を有する塗工層)をプラスチックフィルム上に形成する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
上記のように平均一次粒子径または二次粒子径が数ミクロン程度の粒子を含有するコーティング層と透明導電層をプラスチックフィルム上に形成した透明導電性積層体を用いた透明タッチパネルの場合、ニュートンリング発生は軽減される。しかし、近年の高精細ディスプレイ上に上記の透明タッチパネルを設置した場合、上記のコーティング層中の粒子周辺の樹脂がレンズ効果を果たすことによって、ディスプレイから来る光の色分離(チラツキ(sparkling))を起こし、ディスプレイの視認性を著しく劣化させる問題が発生していた。
【0006】
また、上記以外のニュートンリングを軽減するためのコーティング層として、平均一次粒子径が0.5μm以上5μm以下の無機微粒子を含有する硬化樹脂に、平均一次粒子径100nm以下の無機超微粒子を添加することで、凹凸形状を制御しニュートンリング発生とチラツキ発生による視認性劣化を同時に軽減する方法が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、この方法で形成されたアンチニュートンリング層は、タッチパネルに要求される摺動耐久性や端押し耐久性試験を行った場合、これら無機粒子によって形成されている突起部分から透明導電層が劣化・剥離し始め、最期にはタッチパネルとしての電気特性が劣化する問題がある。
【0007】
また打点耐久試験を行った場合、可動電極基板の透明導電層形成面に含有される無機微粒子によって形成された突起が、固定電極基板上に形成されたドットスペーサーを破壊し、破片がタッチパネル内に飛散する。このように飛散したドットスペーサーの破片が可動電極基板と固定電極基板間の導通を妨げ、タッチパネルの電気特性を劣化させる問題がある。更にこれら飛散したドットスペーサーの破片は、可動電極基板と固定電極基板の透明導電層を着傷し、タッチパネルの電気特性を劣化させる問題もある。
【0008】
さらにこのような無機微粒子を用いて形成されたアンチニュートンリング層を固定電極基板として用いた場合には、無機微粒子によって形成された突起が可動電極基板の透明導電層を着傷し、タッチパネルの電気特性が劣化する問題もある。また、数μm程度の微粒子を含む樹脂層を、グラビアコーター等を使用したウェットコーティングで形成する場合、塗工液中の微粒子が経時的に沈降するため、頻繁に塗工液交換が必要であり、生産性に問題があった。
【0009】
膜表面に凹凸形状を形成するために1μm以上の無機微粒子を使用しない方法として、熱可塑性樹脂および平均一次粒子径が0.001μm以上かつ1μm未満の無機微粒子を、活性化エネルギー線を照射することで重合可能な化合物またはそのオリゴマーと組み合わせている例があるが、このような手法で形成された層では、ヘーズが極端に高くなるため、ディスプレイの視認性を悪化させる問題がある(特許文献4参照)。
【0010】
また、平均一次粒子径100nm以下の超微粒子を1.0μm未満の凝集体としてまたは凝集体を形成しない状態で硬化樹脂層中に分散させることにより、凹凸形状を形成する方法も開示されているが、このような手法で形成されたアンチニュートンリング層は凹凸が小さいため、押圧が強い場合には、ニュートンリングが確認されるものであった(特許文献5、6、7、8参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平10−323931号公報
【特許文献2】特開2002−373056号公報
【特許文献3】特開2006−190512号公報
【特許文献4】特開2002−275391号公報
【特許文献5】特開2006−056136号公報
【特許文献6】特開2005−209431号公報
【特許文献7】特開2004−351744号公報
【特許文献8】特開2004−195898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、透明タッチパネルを高精細ディスプレイ上に設置しても、チラツキによる視認性劣化を起こさず、且つ透明タッチパネルを構成する2枚の透明電極基板間で発生するニュートンリングを防止できる透明タッチパネル用透明導電性積層体を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、上記視認性を維持し、かつ生産性の良好な透明導電性積層体を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、上記透明導電性積層体を用いた新規な透明タッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するために超微粒子を用いた粗面化技術を鋭意検討した結果、少なくとも1種の平均1次粒径100nm以下の金属酸化物超微粒子と、少なくとも1種の平均1次粒径100nm以下の金属フッ化物超微粒子とを、特定の比率で混合し、使用することで、硬化樹脂層中で弱い会合状態を形成し、所望の凹凸形状が形成されることを見出し、下記の本発明に想到した。
【0016】
〈1〉透明有機高分子基板の少なくとも一方の面上に、凹凸表面を有する硬化樹脂層と透明導電層とが順次積層された透明導電性積層体であって、
(1)上記硬化樹脂層が、硬化樹脂成分、ならびに上記硬化樹脂成分中に分散している少なくとも1種の平均一次粒子径100nm以下の金属酸化物超微粒子Aおよび少なくとも1種の平均一次粒子径100nm以下の金属フッ化物超微粒子Bを有し、
(2)上記硬化樹脂層における金属酸化物超微粒子Aの含有量は、硬化樹脂成分100質量部あたり1質量部以上20質量部未満であり、
(3)上記硬化樹脂層における金属フッ化物超微粒子Bの含有量は、硬化樹脂成分100質量部あたり1質量部以上20質量部未満であり、かつ
(4)上記硬化樹脂層における金属酸化物超微粒子Aの金属フッ化物超微粒子Bに対する質量比(A/B)が、0.3よりも大きいことを特徴とする、
透明導電性積層体。
〈2〉上記硬化樹脂層の十点平均粗さ(Rz)が、300nm以上1500nm未満であり、かつ上記硬化樹脂層の算術平均粗さ(Ra)が、50nm以上300nm未満であることを特徴とする、上記第〈1〉項記載の透明導電性積層体。
〈3〉上記硬化樹脂層の厚さが0.1〜4.5μmである、上記第〈1〉又は〈2〉項記載の透明導電性積層体。
〈4〉上記透明有機高分子基板と上記硬化樹脂層に基づくヘーズが、1%以上10%未満である、上記第〈1〉〜〈3〉項のいずれか記載の透明導電性積層体。
〈5〉上記透明導電層が酸化インジウムを主成分とした結晶質の層であり、かつ上記透明導電層の厚さが5〜50nmである、上記第〈1〉〜〈4〉項のいずれか記載の透明導電性積層体。
〈6〉上記透明導電層と接し且つ膜厚が上記透明導電層より薄く0.5nm以上5.0nm未満である金属化合物層を、上記硬化樹脂層と上記透明導電層との間に有する、上記第〈1〉〜〈5〉項のいずれか記載の透明導電性積層体。
〈7〉上記金属化合物層の金属が、上記金属酸化物超微粒子Aおよび/または金属フッ化物超微粒子Bの金属と同一である、請求項1〜6のいずれか記載の透明導電性積層体。
〈8〉少なくとも片面に透明導電層が設けられた2枚の透明電極基板が、互いの透明導電層同士が向き合うように配置されて構成された透明タッチパネルにおいて、少なくとも一方の透明電極基板として上記第〈1〉〜〈7〉のいずれか記載の透明導電性積層体を用いることを特徴とする、透明タッチパネル。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高精細ディスプレイ上に設置しても、チラツキによる視認性劣化を起こさない透明タッチパネルであって、透明タッチパネルを構成する2枚の透明電極基板間で発生するニュートンリングを防止できる透明タッチパネルのための透明導電性積層体が提供される。また、本発明によれば、このような本発明の透明導電性積層体を用いてなるディスプレイおよび光学電子部品が提供される。
【0018】
より具体的には、本発明の透明導電性積層体は、光学電子部品として用いる場合、ニュートンリングを軽減しつつ、高精細ディスプレイに適応しても画素の色分離(チラツキ)を生じさせにくいという光学特性のバランスを可能とせしめ、従来の技術では実現できなかった視認性に優れた光学特性を有する全く新機能なタッチパネル用基板として応用することができる。
【0019】
また、本発明の透明導電性積層体を使用した透明タッチパネルでは、可動電極基板と固定電極基板間に発生するニュートンリングを抑制しつつ、高精細表示体上での画素の色分離(チラツキ)を抑制することができる。
【0020】
さらに、本発明の透明導電性積層体では、生産時における塗工液の交換頻度を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0022】
本発明の透明導電性積層体は、透明有機高分子基板の少なくとも一方の面上に、凹凸表面を有する硬化樹脂層と透明導電層とが順次積層された透明導電性積層体である。この本発明の透明導電性積層体の1つの態様は、図4に示すように、透明有機高分子基板(16)の少なくとも一方の面上に、凹凸表面を有する硬化樹脂層(15)と透明導電層(14)とが順次積層された透明導電性積層体である。この図4で示す本発明の透明導電性積層体の1つの態様では、本発明の透明導電性積層体(14、15、16)は、透明導電層(12)を有するガラス板のような他の基板(11)と、互いの透明導電層(12、14)同士が向き合うように配置され、その間にスペーサー(13)が配置されて、透明タッチパネル(20)を形成することができる。
【0023】
〈透明有機高分子基板〉
本発明の透明導電性積層体で用いられる透明有機高分子基板は、任意の透明有機高分子基板、特に光学分野で使用されている耐熱性、透明性等に優れた透明有機高分子基板であってよい。
【0024】
本発明の透明導電性積層体に用いる透明有機高分子基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなる基板があげられる。また、本発明の透明導電性積層体に用いる透明有機高分子基板としては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドに代表されるアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなる基板もあげられる。またさらに、本発明の透明導電性積層体に用いる透明有機高分子基板としては、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや上記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなる基板などもあげられる。
【0025】
本発明の透明導電性積層体における用途では、これら透明有機高分子基板のうち、光学的に複屈折の少ないもの、あるいは複屈折をλ/4やλ/2に制御したもの、さらには複屈折をまったく制御していないものを、用途に応じて適宜選択することができる。ここで言うように用途に応じて適宜選択を行う場合としては、例えば液晶ディスプレイに使用する偏光板や位相差フィルム、インナー型のタッチパネルのように、直線偏光、楕円偏光、円偏光などの偏光によって機能を発現するディスプレイ部材として、本発明の透明導電性積層体を用いる場合をあげることができる。
【0026】
透明高分子基板の膜厚は適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性などの点より10〜500μm程度であり、特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0027】
〈硬化樹脂層〉
本発明の透明導電性積層体に用いられる凹凸形状を有する硬化樹脂層は、硬化樹脂成分、ならびにこの硬化樹脂成分中に分散している少なくとも一種の平均1次粒子径100nm以下の金属酸化物超微粒子Aおよび平均1次粒子径100nm以下の金属フッ化物超微粒子Bを含有している。
【0028】
〈硬化樹脂層−硬化樹脂成分〉
硬化性樹脂成分としては、平均一次粒子径100nm以下の超微粒子の分散が可能で、硬化樹脂層形成後に皮膜として十分な強度を持ち、かつ透明性のあるものを特に制限なく使用でき、例えば電離放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂等が挙げられる。
【0029】
電離放射線硬化型樹脂を与えるモノマーとしては、例えばポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、上記以外の硬い層を与えるウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、変性スチレンアクリレート、メラミンアクリレート、シリコン含有アクリレート等の単官能および多官能アクリレートを挙げることができる。
【0030】
電離放射線硬化型樹脂を与える具体的なモノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールポロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールポロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エポキシ変性アクリレート、ウレタン変性アクリレート、エポキシ変性アクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
【0031】
電離放射線硬化型樹脂を与えるこれらのモノマーは、単独で用いても、数種類を混合して用いてよく、また場合によっては、各種アルコキシシランの加水分解物を適量添加してもよい。なお、電離放射線によって樹脂層の重合を行う場合、一般に光重合開始剤を適量添加し、また必要に応じ光増感剤を適量添加してもよい。この光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾイルベンゾエート、チオキサンソン類等が挙げられ、光増感剤としては、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0032】
熱硬化型樹脂としては、例えばメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のシラン化合物をモノマーとしたオルガノシラン系の熱硬化型樹脂、エーテル化メチロールメラミン等をモノマーとしたメラミン系熱硬化型樹脂、イソシアネート系熱硬化型樹脂、フェノール系熱硬化型樹脂、エポキシ硬化型樹脂等が挙げられる。これら熱硬化型樹脂を単独又は複数組合せて使用することも可能である。また必要に応じ、熱硬化型樹脂に、熱可塑性樹脂を混合することも可能である。
【0033】
なお、熱によって樹脂層の架橋を行う場合には、反応促進剤および/または硬化剤を適量配合することができる。反応促進剤としては、例えばトリエチレンジアミン、ジブチル錫ジラウレート、ベンジルメチルアミン、ピリジン等が挙げられる。また、硬化剤としては、例えばメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′―ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
【0034】
なお、硬化樹脂層は、レベリング剤や光増感剤などの第三成分を含んでいても良い。
【0035】
〈硬化樹脂層−超微粒子〉
(材料)
硬化樹脂に配合する平均一次粒子径100nm以下の金属酸化物超微粒子Aは、本質的には限定されるものではないが、Al、Bi、CeO、In、In・SnO、HfO、La、Sb、Sb・SnO、SiO、SnO、TiO、Y、ZnOおよびZrOからなる群から選ばれる少なくとも一種を好適に用いることができ、Al3、SiOを特に好適に用いることができる。
【0036】
硬化樹脂に配合する平均一次粒子径100nm以下の金属フッ化物超微粒子Bは、MgFが特に好適に用いられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
(分散状態)
本発明の用途において凹凸の形状を形成する硬化樹脂層には、高精細ディスプレイ上に設置した場合にも、良好な視認性を保持する事が求められるが、金属酸化物超微粒子Aおよび/または金属フッ化物超微粒子Bが光学波長以上の明確な凝集体を形成する場合には、チラツキが大きくなり視認性が低下する。一方、金属酸化物超微粒子Aおよび金属フッ化物超微粒子Bが実質的に均質に分散する場合には、形成される凹凸の高さが低くなり、透明タッチパネルを構成する2枚の透明電極基板間で発生するニュートンリングを防止できず、実使用時の視認性が著しく低下する。
【0038】
したがって、本発明の透明導電性積層体では、金属酸化物超微粒子Aおよび金属フッ化物超微粒子Bが、1μm以上の二次凝集体もしくは二次粒子を形成していないことが好ましく、特に光学波長以上の二次凝集体もしくは二次粒子、例えば600nm以上の二次凝集体もしくは二次粒子を形成していないことが好ましい。ただし、平均一次粒子径100nm以下の金属酸化物超微粒子Aおよび/または金属フッ化物超微粒子Bが光学波長未満の二次凝集体を形成するような状態はあっても良い。
【0039】
また、本発明の透明導電性積層体では、金属酸化物超微粒子Aおよび金属フッ化物超微粒子Bが弱い会合状態をとることにより、適切な形状の凹凸を表面に形成することが望まれる。
【0040】
(配合比)
硬化樹脂に上記超微粒子を分散させる配合比は、硬化樹脂成分100質量部に対し、金属酸化物超微粒子Aと金属フッ化物超微粒子Bがそれぞれ、1質量部以上20質量部未満であることが必要であり、好ましくは1質量部以上15質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以上10質量部以下である。これは、金属酸化物超微粒子Aおよび/または金属フッ化物超微粒子Bが少なすぎる場合には、本発明の用途に必要な表面に凹凸を有する樹脂層を形成することは難しく、他方でこの割合が大きすぎる場合には、硬化樹脂成分の割合が少なくなるために、硬化樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持つことが難しくなるためである。
【0041】
また、硬化樹脂層の凹凸を充分に大きくするためには、金属酸化物超微粒子Aの金属フッ化物超微粒子Bに対する質量比(A/B(%))が、0.3よりも大きいことが必要であり、好ましくはこの比が0.3よりも大きく且つ10.0以下であり、より好ましくはこの比が0.3よりも大きく且つ5.0以下である。
【0042】
〈硬化樹脂層−膜厚〉
表面に凹凸を有する硬化樹脂層の膜厚は、0.1μm以上4.5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。膜厚が小さすぎる場合には、特に紫外線硬化樹脂が酸素による影響で硬化不足となりやすいため好ましくない。また一般的に膜厚が大きすぎる場合には、紫外線硬化樹脂の硬化収縮が高分子基板を撓ませ、カールが発生するので好ましくない。
【0043】
硬化樹脂層の表面の凹凸は、膜厚によっても影響を受けるので、膜厚を制御することは非常に重要である。特に本発明の場合、硬化樹脂成分に対し、加える金属酸化物超微粒子Aおよび金属フッ化物超微粒子Bを一定の量として膜厚だけを変化させた場合、膜厚を薄くするほど表面は平坦化する傾向にあり、逆に膜厚を厚くするほど表面は粗面化する傾向がある。
【0044】
〈硬化樹脂層−他の成分〉
また、本発明における硬化樹脂層の表面の凹凸は使用する超微粒子のチクソ性にも依存する。それ故、チクソ性を発現、あるいは制御する目的で、硬化樹脂層を形成する際に、溶媒や分散剤を適宜選択して用いることができる。溶媒としては例えば、アルコール系、芳香族系、ケトン系、ラクテート系、セルソルブ系、グリコール系などの各種が使用できる。分散剤としては例えば、脂肪酸アミン系、スルホン酸アミド系、ε−カプロラクトン系、ハイドロステアリン酸系、ポリカルボン酸系、ポリエステルアミンなど各種が使用できる。これらの溶媒や分散剤は、それぞれ単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
〈硬化樹脂層−表面の凹凸〉
(十点平均粗さ(Rz))
硬化樹脂層の表面の凹凸は、十点平均粗さ(Rz)が、300nm以上1500nm未満であることが望ましく、300nm以上1000nm未満であることがより望ましく、300nm以上800nm未満であることが特に望ましい。十点平均粗さ(Rz)が小さすぎる場合には、ガラスやフィルム基板を本発明の凹凸面に強く接触させた際に、ニュートンリングが生じる。一方で十点平均粗さ(Rz)が大きすぎる場合には、ヘーズが大きくなり、高精細の液晶ディスプレイに適応すると、画素の色分離が生じてチラツキを起こすなどの理由から特にディスプレイ用途の基板としては好ましくない。
【0046】
なお、本発明に関して、十点平均粗さ(Rz)は、JIS B0601−1982準拠で定義されるものである。具体的には、十点平均粗さ(Rz)は、アナログ式表面粗さ測定器によって求めた値であり、基準長さの断面曲線(測定したままのデータ)において、最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均との和として定義される値である。ここで、基準長さは0.25mmとする。
【0047】
(平均算術粗さ(Ra))
また本発明において生じる、硬化樹脂層の表面の凹凸は平均算術粗さ(Ra)は、50nm以上300nm未満であることが望ましく、50nm以上200nm未満であることがより望ましく、50nm以上150nm未満であることが特に望ましい。平均算術粗さ(Ra)が大きすぎると、ヘーズが大きくなり、高精細の液晶ディスプレイに適応すると、画素の色分離が生じてチラツキを起こすなどの理由から特にディスプレイ用途の基板としては好ましくない。一方、平均算術粗さ(Ra)が小さすぎる場合には、ガラスやフィルム基板を本発明の凹凸面に強く接触させた際に、ニュートンリングが生じる。
【0048】
なお、本発明に関して、平均算術粗さ(中心線平均粗さ)(Ra)は、JIS B0601−1994準拠で定義されるものである。具体的には、算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその中心線の方向に基準長さLの部分を抜き取り、その抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表した時、下記の式によって表されるものである:
【0049】
【数1】

【0050】
〈硬化樹脂層−ヘーズ〉
本発明の凹凸表面を有する硬化樹脂層は、溶媒、分散剤、金属酸化物超微粒子Aおよび/または金属フッ化物超微粒子Bの添加量、硬化樹脂層の膜厚などのパラメーターをかえることによって、Rz、Ra、さらにはヘーズを自由に制御することができる。
【0051】
視認性の観点からヘーズは、1%以上10%未満であることが望ましく、1%以上8%未満がより望ましく、1%以上7%未満が特に望ましい。
【0052】
なお、本発明に関して、ヘーズは、JIS K7136準拠で定義されるものである。具体的には、ヘーズは、全光線透過率τに対する拡散透過率τの比として定義される値であり、より具体的には下記の式から求めることができる:
ヘーズ(%)=[(τ/τ)−τ(τ/τ)]×100
τ: 入射光の光束
τ: 試験片を透過した全光束
τ: 装置で拡散した光束
τ: 装置及び試験片で拡散した光束
【0053】
〈硬化樹脂層−形成方法〉
本発明の凹凸表面を有する硬化樹脂層の形成方法としては、特に湿式法による形成が好適であり、例えばドクターナイフ、バーコーター、グラビアロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、スピンコータ−、スプレー法、浸漬法等、公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0054】
〈透明導電層〉
本発明において、透明導電層は、特に制限は無いが、例えば結晶質の金属層あるいは結晶質の金属化合物層を挙げることができる。透明導電層を構成する成分としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫等の金属酸化物の層が挙げられる。これらのうち酸化インジウムを主成分とした結晶質の層であることが好ましく、特に結晶質のITO(Indium Tin Oxide)からなる層が好ましく用いられる。
【0055】
また、透明導電層が結晶質の場合、結晶粒径は、特に上限を設ける必要はないが3000nm以下であることが好ましい。結晶粒径が3000nmを超えると筆記耐久性が悪くなるため好ましくない。ここで結晶粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)下で観察される多角形状または長円状の各領域における対角線または直径の中で最大のものと定義される。
【0056】
透明導電層が結晶質の膜でない場合には、タッチパネルに要求される摺動耐久性や環境信頼性が低下することがある。
【0057】
透明導電層は、公知の手法にて形成することが可能であり、例えばDCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、パルスレーザーデポジション法等の物理的形成法(Physical Vapor Deposition(以下では「PVD」とする))等を用いることができるが、大面積に対して均一な膜厚の金属化合物層を形成するという工業生産性に着目すると、DCマグネトロンスパッタリング法が望ましい。なお、上記物理的形成法(PVD)のほかに、化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition(以下では「CVD」とする))、ゾルゲル法などの化学的形成法を用いることもできるが、膜厚制御の観点からはやはりスパッタリング法が望ましい。
【0058】
透明導電層の膜厚は、透明性と導電性の点から5〜50nmであることが好ましい。更に好ましくは5〜30nmである。透明導電層の膜厚が5nm未満では抵抗値の経時安定性に劣る傾向が有り、また50nmを超えると表面抵抗値が低下するためタッチパネルとして好ましくない。
【0059】
本発明の透明導電性積層体をタッチパネルに用いる場合、タッチパネルの消費電力の低減と回路処理上の必要等から、膜厚10〜30nmにおいて透明導電層の表面抵抗値が100〜2000Ω/□(Ω/sq)、より好ましくは140〜1000Ω/□(Ω/sq)の範囲を示す透明導電層を用いることが好ましい。
【0060】
〈金属化合物層〉
本発明の透明導電性積層体は、凹凸表面を有する硬化樹脂層と透明導電層の間に、膜厚が0.5nm以上5.0nm未満の金属化合物層を更に有していてもよい。
【0061】
透明有機高分子基板、凹凸表面を有する硬化樹脂層、膜厚が制御された金属化合物層、透明導電層を順次積層することにより各層間の密着性が大幅に改善される。さらに、硬化樹脂層中の金属酸化物超微粒子Aおよび/または金属フッ化物超微粒子Bの金属と上記の金属化合物層の金属を同一にすることで、凹凸表面を有する硬化樹脂層と透明導電層の層間の密着性が更に改善される。
【0062】
このような金属化合物層を有する透明導電性積層体を用いた透明タッチパネルでは、金属化合物層がない場合と比較して、透明タッチパネルに要求される筆記耐久性が向上する。金属化合物層の膜厚が5.0nm以上では、金属化合物層が連続体としての機械物性を示し始めることにより、透明タッチパネルに要求される端押し耐久性の向上は望めない。一方、0.5nm未満の膜厚では膜厚の制御が困難なことに加え、凹凸表面を有する硬化樹脂層と透明導電層との密着性を十分発現させることが困難になり、透明タッチパネルに要求される筆記耐久性の向上は不十分となることがある。
【0063】
金属化合物層を構成する成分としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫等の金属酸化物の層が挙げられる。
【0064】
これらの金属化合物層は、公知の手法にて形成することが可能であり、例えばDCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、パルスレーザーデポジション法等の物理的形成法(PVD)等を用いることができるが、大面積に対して均一な膜厚の金属化合物層を形成するという工業生産性に着目すると、DCマグネトロンスパッタリング法が望ましい。なお、上記物理的形成法(PVD)のほかに、化学気相堆積法(CVD)、ゾルゲル法などの化学的形成法を用いることもできるが、膜厚制御の観点からはやはりスパッタリング法が望ましい。
【0065】
スパッタリングに用いるターゲットは金属ターゲットを用いることが望ましく、反応性スパッタリング法を用いることが広く採用されている。これは、金属化合物層として用いる元素の酸化物が絶縁体であることが多く、金属化合物ターゲットの場合DCマグネトロンスパッタリング法が適応できないことが多いからである。また、近年では、2つのカソードを同時に放電させ、ターゲットへの絶縁体の形成を抑制するような電源が開発されており、擬似的なRFマグネトロンスパッタリング法を適応できるようになってきている。
【0066】
〈光学干渉層およびハードコート層〉
本発明の透明導電性積層体には、用途に応じて光学干渉により反射率を制御する光学干渉層およびハードコート層を単独、あるいは複数を必要に応じて適切な順に、組み合わせて用いることができる。透明導電層、光学干渉層、およびハードコート層の積層順は、用途に応じて発現を期待される機能を果たしていれば特に限定するものではない。これらの積層順を例えばタッチパネル用基板として用いる場合、透明導電層をA、光学干渉層をB、凹凸表面を有する硬化樹脂層をC、透明有機高分子基板をD、ハードコートをEとすると、例えばA/B/C/D/E、A/B/C/D/C、A/B/B/C/D/E、A/B/B/C/D/C、A/C/D/E/B、A/C/D/C/B、A/C/D/E/B/B、A/C/D/C/B/Bなどとすることができる。
【0067】
光学干渉層は、高屈折率層と低屈折率層を適宜組み合わせることにより反射光を防止あるいは抑制する層を指す。光学干渉層は少なくとも一層の高屈折率層と少なくとも一層の低屈折率層より構成される。高屈折率層と低屈折率層の組み合わせ単位を二つ以上とすることも出来る。光学干渉層が一層の高屈折率層と一層の低屈折率層から構成される場合、光学干渉層の膜厚は30nm〜150nmが好ましく、更に好ましくは50nm〜150nmである。光学干渉層は、湿式法、乾式法のいずれの方法でも形成することができる。例えば湿式法ではドクターナイフ、バーコーター、グラビアロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、スピンコータ−等、スプレー法、浸漬法等、乾式法ではスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法あるいは印刷法、CVD法などを適応することが出来る。
【0068】
ハードコート層としては、熱硬化樹脂や活性エネルギー線硬化樹脂などが適応できる。なかでも、活性エネルギー線に紫外線を用いた、紫外線硬化型樹脂は生産性や経済性に優れており好適である。
【0069】
ハードコート層のための紫外線硬化型樹脂としては、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびビスフェノールAジメタクリレートの如きジアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレートの如きトリアクリレート類;ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレートの如きテトラアクリレート類;並びにジペンタエリトリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレートの如きペンタアクリレート類を挙げることができる。ハードコート層のための紫外線硬化型樹脂としては、この他にも、5官能以上の多官能アクリレートも用いることができる。これらの多官能アクリレートは1種単独、または2種以上混合して同時に用いてもよい。さらにこれらのアクリレート類には、光開始剤、光増感剤、レベリング剤、金属酸化物やアクリル成分などから成る微粒子や超微粒子などの第三成分を1種または2種以上を添加して用いることができる。
【0070】
〈用途〉
本発明の透明導電性積層体は、少なくとも片面に透明導電層が設けられた2枚の透明電極基板が互いの透明導電層同士が向き合うように配置されて構成された透明タッチパネルにおいて、可動および/または固定電極基板用の透明電極基板として使用できる。
【実施例】
【0071】
以下では実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例中における各種の測定は、下記のとおり行った。
【0072】
〈Ra(算術平均粗さ)〉
Sloan社製触針段差計DEKTAK3を用いて測定した。測定はJIS B0601−1994年版に準拠して行なった。
【0073】
〈Rz(十点平均粗さ)〉
(株)小坂研究所製SurfcorderSE−3400を用いて測定した。測定はJIS B0601−1982年版に準拠して行なった。
【0074】
〈厚さ〉
Anritsu Electric社製の触針式膜厚計アルファステックを使用し測定を行った。
【0075】
〈ヘーズ〉
日本電色(株)製ヘーズメーター(MDH2000)を用いて測定した。
【0076】
〈全光線透過率〉
日本電色(株)製ヘーズメーター(MDH2000)を用いてJIS K7316−1に準じて測定した。
【0077】
〈アンチニュートンリング性〉
3波長蛍光灯の下で、タッチパネルの表面(垂直方向0度)に対して斜め60度の方向から、可動電極基板と固定電極基板を接触させた領域でのニュートンリングの有無を目視で観察した。ニュートンリングが観測できないものを良好(○)、かすかに観測できるものをやや良好(△)、明確に観測できるものを不良(×)とした。
【0078】
〈チラツキ性〉
約123dpi(対角10.4インチ、XGA(1024×768ドット))の液晶ディスプレイ上にタッチパネルを設置しチラツキの有無を目視で確認した。チラツキが確認できないものを良好(○)、かすかに確認できるものをやや良好(△)、明確に確認できるものを不良(×)とした。
【0079】
〈像鮮明度(透過法)〉
スガ試験機社製 ICM−1Tを用いて測定を行った。測定は、JIS K7105(1999年版)に準拠し、0.5mmの光学くしで測定した透過の像鮮明度(%)を測定した。この値が大きいことは、ディスプレイ上に透明導電性フィルムを置いたときの透過像の歪みが小さいことを意味する。
【0080】
[実施例1]
透明有機高分子基板にポリカーボネートフィルム(帝人化成株式会社製、C110−100)を用い、その一方の面に下記組成の塗布液Rをワイヤーバーで塗布し、40℃で1分間加熱乾燥した後、紫外線ランプで120mW/cm、400mJ/cmの紫外線を照射し、膜厚約1.5μmの凹凸表面を有する硬化樹脂層を形成させた。得られた硬化樹脂層中では、図1および図2に示す通り超微粒子が弱い会合状態を形成し、その粗密差により非常に微細な凹凸表面が形成されていることが確認された。
【0081】
塗布液Rの組成
4官能アクリレート: 100質量部「アロニックス」M−405(東亞合成株式会社製)
金属酸化物超微粒子分散液: 80質量部(固形分換算8質量部、シーアイ化成株式会社製SiO超微粒子10質量%イソプロピルアルコール分散液、超微粒子の一次平均粒子径は30nm品)
金属フッ化物超微粒子分散液: 20質量部(固形分換算4質量部、シーアイ化成株式会社製MgF超微粒子20質量%イソプロピルアルコール分散液、超微粒子の一次平均粒子径は50nm)
光反応開始剤: 5質量部「イルガキュア」184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
希釈液: 適宜の量(イソブチルアルコール)
【0082】
次いで硬化樹脂層を形成した面上に、酸化インジウムと酸化錫の質量比が95:5の組成で充填密度が98%の酸化インジウム−酸化錫ターゲットを用いて、スパッタリング法により非晶質の透明導電層(ITO層)を形成した。ITO層の厚さは約20nm、表面抵抗値は約370Ω/□(Ω/sq)であった。
【0083】
引き続いて130℃90分の熱処理を行い、透明導電層(ITO層)を結晶化させることにより透明導電性積層体を作製した。ITO層が結晶化した後の透明導電層の表面抵抗値は約450Ω/□(Ω/sq)であった。なお、TEMにより観察された透明導電層の結晶粒径は50nm〜200nmの範囲であった。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0084】
表1から明らかなように、本例の透明導電性積層体を使用したタッチパネルは、アンチニュートンリング性、耐チラツキ性、及び像鮮明度について優れたものであった。
【0085】
なお、超微粒子の分散状体について確認するために、実施例1でのようにして作成した凹凸表面を有する硬化樹脂層付き高分子基板を、エポキシ樹脂で包埋し、完全にエポキシ樹脂が硬化した後でミクロトームを用いて薄片試料を作製した。この試料を透過型電子顕微鏡で観察し、超微粒子が1μm以上の2次凝集粒子を形成しておらずかつ粗密の差により凹凸表面を形成していることを確認した(添付の図1および図2)。
【0086】
[実施例2]
実施例1の金属酸化物超微粒子分散液を20質量部(固形分換算2質量部)、金属フッ化物超微粒子分散液を30質量部(固形分換算6質量部)とした以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0087】
表1から明らかなように、本例の透明導電性積層体を使用したタッチパネルは、アンチニュートンリング性、耐チラツキ性、及び像鮮明度について優れたものであった。
【0088】
[実施例3]
実施例1の金属酸化物超微粒子分散液を40質量部(固形分換算4質量部)、金属フッ化物超微粒子分散液を5質量部(固形分換算1質量部)とした以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0089】
表1から明らかなように、本例の透明導電性積層体を使用したタッチパネルは、アンチニュートンリング性、耐チラツキ性、及び像鮮明度について優れたものであった。
【0090】
[実施例4]
実施例1の金属酸化物超微粒子分散液を120質量部(固形分換算12質量部)、金属フッ化物超微粒子分散液を10質量部(固形分換算2質量部)とした以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0091】
表1から明らかなように、本例の透明導電性積層体を使用したタッチパネルは、アンチニュートンリング性、耐チラツキ性、及び像鮮明度について優れたものであった。
【0092】
[実施例5]
実施例1の金属酸化物超微粒子分散液を80質量部(固形分換算8質量部)、金属フッ化物超微粒子分散液を20質量部(固形分換算4質量部)、硬化後膜厚を5μmとした以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0093】
表1から明らかなように、本例の透明導電性積層体を使用したタッチパネルは、アンチニュートンリング性、耐チラツキ性、及び像鮮明度について優れたものであった。
【0094】
[実施例6]
実施例1のポリカーボネートフィルムの代わりに厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製OFW)を用いた以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0095】
表1から明らかなように、本例の透明導電性積層体を使用したタッチパネルは、アンチニュートンリング性、耐チラツキ性、及び像鮮明度について優れたものであった。
【0096】
[比較例1]
実施例1の金属酸化物超微粒子分散液を10質量部(固形分換算1質量部)、金属フッ化物超微粒子分散液を20質量部(固形分換算4質量部)に変更した以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0097】
この比較例の透明導電性積層体の特性を、表1に示す。この比較例の透明導電性積層体は良好な耐チラツキ性を有していたが、アンチニュートンリング性に関して劣っていた。
【0098】
[比較例2]
実施例1の金属酸化物超微粒子分散液を150質量部(固形分換算15質量部)とし、且つ金属フッ化物超微粒子分散液を使用しないこと以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0099】
この比較例の透明導電性積層体の特性を、表1に示す。この比較例の透明導電性積層体は良好な耐チラツキ性を有していたが、アンチニュートンリング性に関して劣っていた。
【0100】
[比較例3]
金属酸化物超微粒子分散液を使用しない以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0101】
この比較例の透明導電性積層体の特性を、表1に示す。この比較例の透明導電性積層体は良好な耐チラツキ性を有していたが、アンチニュートンリング性に関して劣っていた。
【0102】
[比較例4]
実施例1の金属フッ化物超微粒子成分の代わりに酸化亜鉛ナノ微粒子40質量部(固形分換算4質量部、シーアイ化成株式会社製ZnO超微粒子10質量%イソプロピルアルコール分散液、超微粒子の一次平均粒子径は30nm品)を用いた事以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0103】
この比較例の透明導電性積層体の特性を、表1に示す。この比較例の透明導電性積層体は良好なアンチニュートンリング性を有していたが、耐チラツキ性に関して劣っていた。
【0104】
[比較例5]
実施例1の金属フッ化物超微粒子成分の代わりに酸化チタンナノ微粒子27質量部(固形分換算4質量部、シーアイ化成株式会社製TiO超微粒子15質量%イソプロピルアルコール分散液、超微粒子の一次平均粒子径は30nm品)を用いた事以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0105】
この比較例の透明導電性積層体の特性を、表1に示す。この比較例の透明導電性積層体は良好なアンチニュートンリング性を有していたが、耐チラツキ性に関して劣っていた。
【0106】
[比較例6]
実施例1の金属酸化物超微粒子成分を、一次平均粒子径が3.0μmのシリカ粒子に変更し、金属フッ化物超微粒子成分を使用せず、膜厚を2μmに変更した以外は実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。作製した透明導電性積層体の特性を表1に示す。
【0107】
この比較例の透明導電性積層体の特性を、表1に示す。この比較例の透明導電性積層体は良好なアンチニュートンリング性を有していたが、高解像度液晶ディスプレイに乗せると画素に色分離が生じ、耐チラツキ性に関して劣っていた。
【0108】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】実施例1で形成した凹凸表面を有する硬化樹脂層付き高分子基板を、硬化樹脂で包埋後、ミクロトームで薄片試料とし、透過電子顕微鏡で撮影した断面写真である。
【図2】図1の超微粒子を含有した凹凸表面を有する硬化樹脂層をさらに拡大撮影した断面写真である。
【図3】本発明の透明導電性積層体を有する透明タッチパネルの例を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1 包埋樹脂
2 超微粒子を含有した凹凸表面を有する硬化樹脂層
3 透明有機高分子基板
11 基板(ガラス板)
12、14 透明導電層
13 スペーサー
15 凹凸表面を有する硬化樹脂層
16 透明有機高分子基板
20 透明タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明有機高分子基板の少なくとも一方の面上に、凹凸表面を有する硬化樹脂層と透明導電層とが順次積層された透明導電性積層体であって、
(1)前記硬化樹脂層が、硬化樹脂成分、ならびに前記硬化樹脂成分中に分散している少なくとも1種の平均一次粒子径100nm以下の金属酸化物超微粒子Aおよび少なくとも1種の平均一次粒子径100nm以下の金属フッ化物超微粒子Bを有し、
(2)前記硬化樹脂層における金属酸化物超微粒子Aの含有量は、硬化樹脂成分100質量部あたり1質量部以上20質量部未満であり、
(3)前記硬化樹脂層における金属フッ化物超微粒子Bの含有量は、硬化樹脂成分100質量部あたり1質量部以上20質量部未満であり、かつ
(4)前記硬化樹脂層における金属酸化物超微粒子Aの金属フッ化物超微粒子Bに対する質量比(A/B)が、0.3よりも大きいことを特徴とする、
透明導電性積層体。
【請求項2】
前記硬化樹脂層の十点平均粗さ(Rz)が、300nm以上1500nm未満であり、かつ前記硬化樹脂層の算術平均粗さ(Ra)が、50nm以上300nm未満であることを特徴とする、請求項1記載の透明導電性積層体。
【請求項3】
前記硬化樹脂層の厚さが0.1〜4.5μmである、請求項1又は2記載の透明導電性積層体。
【請求項4】
前記透明有機高分子基板と前記硬化樹脂層に基づくヘーズが、1%以上10%未満である、請求項1〜3のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項5】
前記透明導電層が酸化インジウムを主成分とした結晶質の層であり、かつ前記透明導電層の厚さが5〜50nmである、請求項1〜4のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項6】
前記透明導電層と接し且つ膜厚が前記透明導電層より薄く0.5nm以上5.0nm未満である金属化合物層を、前記硬化樹脂層と前記透明導電層との間に有する、請求項1〜5のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項7】
前記金属化合物層の金属が、前記金属酸化物超微粒子Aおよび/または金属フッ化物超微粒子Bの金属と同一である、請求項1〜6のいずれか記載の透明導電性積層体。
【請求項8】
少なくとも片面に透明導電層が設けられた2枚の透明電極基板が、互いの透明導電層同士が向き合うように配置されて構成された透明タッチパネルにおいて、少なくとも一方の透明電極基板として請求項1〜7のいずれか記載の透明導電性積層体を用いることを特徴とする、透明タッチパネル。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−157438(P2010−157438A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335212(P2008−335212)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【特許番号】特許第4393573号(P4393573)
【特許公報発行日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】