説明

透明導電膜、透明導電性フィルムおよび透明導電膜の製造方法、並びに透明導電膜を用いたフレキシブルディスプレイ装置

【課題】可撓性及び耐薬品性を具備して、フレキシブルディスプレイ装置に好適な透明導電膜を提案する。
【解決手段】可撓性の基板2上に設ける透明導電膜3であって、前記基板側に設けた非結晶性の第1透明導電層3−1と、該第1透明導電層上に設けた結晶性の第2透明導電層3−2とを含んで形成してある。第1透明導電層3−1はSnO含有割合が10質量%以上のITO層(インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO層(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)であり、第2透明導電層3−2はSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITO層とするのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓(かとう)性の基板上に設ける可撓性の透明導電膜、また透明かつ可撓性の基板上にこのような透明導電膜を有する透明導電性フィルムに関する。また、透明導電膜の製造方法に関する。さらに透明導電膜が好適に適用されるフレキシブルディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極として機能する透明な導電膜を備えた種々のディスプレイ装置が提供されるようになっている。銀行などのATMのディスプレイ部に透明な導電膜が採用されていることは広く知られている。
【0003】
そして、従来から透明導電膜を形成する技術については色々な観点からの提案がある。例えば、特許文献1は高分子基板上に透明導電膜を形成された電極基板の製造方法について、エッチング処理以前は透明導電膜を結晶化させず、エッチング処理後に透明導電膜を結晶化させる技術を開示している。そして、パターニング後に130〜200℃で熱処理して結晶化するのが好ましいことが開示されている。この製造方法を採用するとエッチング工程で高分子基板にダメージを与えず、使用に際して抵抗値の低い透明導電膜を形成できる。
【0004】
また、特許文献2は、高分子基材上に結晶粒子半径が異なる第1、第2の透明導電層からなる透明導電膜を備える透明導電性フィルムを開示する。この透明導電性フィルムは、適度な可視光透過率を維持したまま耐久性が向上するので、タッチパネルに適用されてペン入力をするときの筆記時に受ける撓みに対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−291445号公報
【特許文献2】特開2003−263925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、軽く可搬性があって情報の書き換えが可能なフレキシブルディスプレイ装置が注目されている。このようなフレキシブルディスプレイ装置としては電子粉流体方式、マイクロカプセル方式、電気泳動方式などがある電子ペーパーや、ジアミン類などの有機発光体を用いる有機ELディスプレイなどがある。このようなフレキシブルディスプレイ装置においても、透明な導電膜が電極として採用されている。そして、フレキシブルディスプレイ装置に適用される透明導電膜の場合には、透明性だけでなく可撓性(折り曲げ性)への要求もあり、適度な可撓性を備えてないとフレキシブルディスプレイ装置が湾曲されたときにクラックが発生してしまう。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2のいずれも、このようなフレキシブルディスプレイ装置に適用する状況を想定しておらず、透明導電膜の可撓性については検討されていない。また、一般に製造・加工の段階では加工性が良く、製品化された後にあっては可撓性だけでなく耐久性にも富む透明導電膜であることが望まれる。例えば、非晶質材料の場合は加工性が良いが、高湿熱環境や周辺に存在する汚染物質に基づく腐食に対抗する性能(以下、耐薬品性という)が劣るため、腐食が発生して断線などが発生し易くなる。その一方で、完全に結晶化してしまうと前述した可撓性が悪化してフレキシブルディスプレイ装置に不適合な透明導電膜になってしまう。このように、可撓性および耐薬品性を有する透明導電膜が得られていないというのが実情である。
【0008】
よって、本発明の目的は、可撓性及び耐薬品性を具備して、フレキシブルディスプレイ装置に好適な透明導電膜を提案すること、同様にこのような透明導電膜を備える透明導電性フィルムを提案すること、また透明導電膜の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、可撓性の基板上に設ける透明導電膜であって、
前記基板側に設けた非結晶性の第1透明導電層と、該第1透明導電層上に設けた結晶性の第2透明導電層とを含む、ことを特徴とする透明導電膜により達成される。
【0010】
また、前記第1透明導電層はSnO含有割合が10質量%以上のITO層(インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO層(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)であり、前記第2透明導電層はSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITO層とするのが望ましい。
【0011】
また、前記第1透明導電層の層厚は10〜200nmであって、前記第2透明導電層の層厚は10〜200nmとするのが望ましい。
【0012】
上記目的は、透明で可撓性の基板上に透明導電膜を設けた透明導電性フィルムであって、
前記透明導電膜が、前記基板側に設けた非結晶性の第1透明導電層と、該第1透明導電層上に設けた結晶性の第2透明導電層とを含む、ことを特徴とする透明導電性フィルムによっても達成される。
【0013】
前記第1透明導電層はSnO含有割合が10質量%以上のITO層(インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO層(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)であり、前記第2透明導電層はSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITO層とするのが望ましい。
【0014】
また、前記透明で可撓性の基板が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)及びポリエーテルスルホン(PES)の群から選択される1つとすることができる。
【0015】
さらに、上記目的は、可撓性の基板上に透明導電膜を製造する方法であって、
前記可撓性の基板上に、第1透明導電層を形成するための非結晶状態の第1透明導電層材料を成膜し、この上に第2透明導電層を形成するための非結晶状態の第2透明導電層材料を更に成膜して積層する成膜工程と、
前記第1透明導電層材料及び前記第2透明導電層材料を所定の形状とするパターニング工程と、
前記第1透明導電層材料の非結晶状態を維持して非結晶性の第1透明導電層と、前記第2透明導電層材料の非結晶状態から少なくとも一部を結晶化して結晶性の第2透明導電層とを形成する加熱処理工程とを含む、ことを特徴とする透明導電膜の製造方法によっても達成される。
【0016】
前記第1透明導電層材料はSnO含有割合が10質量%以上のITO(インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)であり、前記第2透明導電層材料はSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITOとするのが望ましい。
【0017】
前記加熱処理工程は、110℃以上130℃未満で加熱するのが望ましい。
【0018】
そして、上記に記載した透明導電膜を含むフレキシブルディスプレイ装置であれば、可撓性及び耐薬品性を具備しているので、クラック発生、腐食による劣化の少ない、信頼性のある表示装置となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による透明導電膜は、基板側に非結晶性の第1透明導電層、そしてその上に結晶性の第2透明導電層を備えた構造であるので、第1透明導電層に基づく可撓性、また、第2透明導電層に基づく耐薬品性を有する導電膜となる。このような透明導電膜またこの透明導電膜を透明可撓性の基板上に備える透明導電性フィルムは、電子ペーパーなどのフレキシブルディスプレイ装置に好適されて製品の信頼向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る透明導電性フィルムの断面構成を模式的に示した図である。
【図2】第1透明導電層および第2透明導電層を形成する材料として共に、ITOを用いて、基板上に透明導電膜を製造する工程を示した図で、(a)は成膜工程、(b)はパターニング工程、(c)は加熱処理工程について示して、透明導電膜を製造する工程について示した図である。
【図3】(a)〜(f)は熱処理条件と結晶化との関係をまとめて示した図である。
【図4】第1透明導電層を形成するための非結晶状態の第1透明導電層材料としてIZOを用い、第2透明導電層を形成する材料としてITOを用いて、透明導電膜を製造する工程を示した図であり、(a)は成膜工程、(b)はパターニング工程、(c)は加熱処理工程について示した図である。
【図5】透明導電膜を備えた透明導電性フィルムを少なくとも一方に採用しているフレキシブルディスプレイ装置について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、さらに本発明に係る好適な実施形態を、図を参照して説明する。まず、図を参照して、本発明に係る透明導電膜、及び、この透明導電膜を透明で可撓性の基板上に形成してある透明導電性フィルムについて説明する。
図1は、本発明に係る透明導電性フィルムの断面構成を模式的に示した図である。この透明導電性フィルム1は、可撓性の基板2上の所定位置に透明な導電膜3を有している。ここで、透明導電膜3は、基板上に配置される第1透明導電層3−1と、この第1透明導電層3−1上に配置される第2透明導電層3−2とによって構成された新規な構造である。
【0022】
可撓性の基板2は、透明な素材であって適度な可撓性を備えたシート材であればよく、特に限定はないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)といったポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子や、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート等の単一成分の高分子、或いは、これらの高分子に第二、第三成分を共重合した共重合高分子からなる可とう性基板を挙げることができる。より具体的には、例えば軟化点が130℃以下の高分子(PET等)からなる高分子基板を用いることができる。基板2は透明で適度な可撓性があり、また製造時の加工容易性などからPETを採用するのが好ましい。
なお、この透明導電性フィルム1がフレキシブルディスプレイ装置に適用される形態としては、ディスプレイ装置本体に対して基板2が外付ける形態で採用されるものでもよいし、基板2がディスプレイ装置の一部を成すように組込まれる形態で採用されるものでもよい。
透明導電性フィルム1の基板2の厚さは例えば25〜200μm程度であり、特にPETを採用する場合には50〜150μm程度とするのが好ましい。
【0023】
上記第1透明導電層3−1は、基板側に配置される導電層で非結晶性の透明導電層として形成されている。そして、この上の第2透明導電層3−2は結晶性の透明導電層として形成されている。
なお、ここで非結晶性とは非晶状態であるものがその状態を維持する性質であり、結晶性とは少なくとも一部に結晶化された部分を含んで、その状態を維持する性質である。
【0024】
第1透明導電層3−1は、例えばSnO含有割合が10質量%以上のITO層(Indium Tin Oxide、インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO層(Indium Zinc Oxide、インジウム亜鉛酸化物の透明膜)で形成されている。また前記第2透明導電層はSnO含有割合が1質量%以上、10質量%未満のITO層で形成されている。
透明導電層としてITOを用いた場合にはSnO含有割合が増えるほど、すなわちSn濃度を上げるほど非結晶性の傾向が強くなる。SnO含有割合を10質量%以上にすると基板を構成する高分子材料の耐熱温度(例えば、200℃以上)に加熱しなければ結晶化しないITO層となる。また、IZO層は常に非晶性の材料である。よって、SnO含有割合が10質量%以上のITO層またはIZO層による第1透明導電層3−1を非晶状態が維持される。
その一方、SnO含有割合が低いITO層ほど熱処理により結晶化し易い。SnO含有割合を1質量%以上、10質量%未満、より好ましくは1〜5質量%にすることでその少なくとも一部を結晶化させた結晶性の第2透明導電層を形成できる。
第1透明導電層3−1及び第2透明導電層3−2を共に、ITO層とした場合、第2透明導電層のSnO含有割合を5質量%以下とすることで、両層をより確実に結晶性と非結晶性とに分けることができる。
【0025】
上記のような第1透明導電層3−1の好ましい層厚は例えば10〜200nmであり、このときの第2透明導電層3−2の好ましい層厚は10〜200nmである。この両層によって形成される透明導電膜3は、透明で適度な可撓性、耐薬品性、導電性が要求されるという総合的な配慮から、例えば非結晶性の第1透明導電層3−1は10−100nm程度となるべく薄くし、結晶性の第2透明導電層3−2は5−30nmと適度に厚くして導電性を確保するようにするのが好ましい。
【0026】
以上のように、透明導電性フィルム1は、可撓性の基板1上に、非結晶性の第1透明導電層3−1と結晶性の第2透明導電層3−2とを積層して透明導電膜3が形成されている。ここで可撓性である基板1が撓んだときに、この基板1上の第1透明導電層3−1が非晶状態にあり変形が可能であるので、この部分で応力を吸収してクラック発生を予防できる。また、第1透明導電層3−1の上には結晶性の第2透明導電層3−2が配置されている。一般に、結晶度が高いほど高湿熱環境や周辺に存在する汚染物質に基づく腐食に耐え得る性能(耐薬品性)が向上する。
よって、非結晶性の第1透明導電層3−1と結晶性の第2透明導電層3−2とによる透明導電膜3、またこの透明導電膜3を透明で可撓性の基板上に備える透明導電性フィルムは、フレキシブル表示装置などに採用するのが好適なものとなる。
【0027】
以下、さらに、図を参照して、上述した本発明に係る透明導電膜を製造する方法について説明する。
図2は、第1透明導電層3−1および第2透明導電層3−2を形成する材料として共に、ITOを用いて、基板1上に透明導電膜3を製造する工程を示した図であり、(a)は成膜工程、(b)はパターニング工程、(c)は加熱処理工程について示している。
【0028】
図2(a)に示す成膜工程では、予め準備した可撓性の基板1上に、第1透明導電層3−1を形成するための非結晶状態の第1透明導電層材料3−1aを成膜し、この上に第2透明導電層3−2を形成するための非結晶状態の第2透明導電層材料3−2aを更に成膜して積層する。その際には、スパッタ法や蒸着法、イオンプレートレーティング法など従来の成膜を用いることができる。ここでの第1透明導電層材料3−1aはSnO含有割合が10質量%以上のITOであり、第2透明導電層材料3−2aはSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITOである。
【0029】
図2(b)に示すパターニング工程では、第1透明導電層材料3−1a及び第2透明導電層材料3−2aを所定の形状とする。具体的には、要求に応じて設計した形状に第1透明導電層材料3−1a及び第2透明導電層材料3−2aをエッチング処理する。
ここでは、例えば水溶液エッチャントを用いてエッチング処理を実行できる。このようなエッチャント成分としては、王水、ハロゲン化水素、リン酸、硫酸、硝酸、塩素酸、酢酸や蓚酸等の有機酸、ヨウ素、塩化第二鉄(FeCl)、或いは、これらの組み合わせなどとすることができる。この図2(b)で示すパターニング工程では、第1透明導電層材料3−1a及び第2透明導電層材料3−2aが共に、非晶状態であるので、加工精度良くかつ効率的にパターニングを実行できる。
【0030】
そして、図2(c)に示す加熱処理工程では、第1透明導電層材料3−1aの非結晶状態を維持して非結晶性の第1透明導電層3−1が形成され、第2透明導電層材料3−2aの非結晶状態から少なくとも一部を結晶化して結晶性の第2透明導電層3−2を形成する。
この加熱処理工程では、Sn濃度が相対的に高い(ここでは、SnO含有割合が10質量%以上である)基板1側の第1透明導電層材料3−1a(ITO)と、Sn濃度が相対的に低い(ここではSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満である)第2透明導電層材料3−2a(ITO)とを、加熱処理温度を制御することにより、第1透明導電層材料3−1aの非結晶状態を維持して非結晶性の第1透明導電層3−1を得ると共に、第2透明導電層材料3−2aについて非結晶状態から少なくとも一部を結晶化して結晶性の第2透明導電層3−2を得ている。
【0031】
前述したように、例えば基板としてPETなどの高分子材料を採用したときには、加熱温度に上限がある。この近傍でも結晶化しないSnO含有割合は10質量%以上であるので第1透明導電層材料3−1aの非晶性は維持される。一方、第2透明導電層材料3−2aのSnO含有割合は1質量%以上10質量%未満、好ましくは1〜5質量%であって加熱処理温度に応じて結晶化させることができる。よって、この加熱処理工程で、基板1上に非結晶性の第1透明導電層3−1と結晶性の第2透明導電層3−2とによる透明導電膜3を形成できる。よって、透明で可撓性の基板にこの透明導電膜3を設けた透明導電性フィルムを得ることができる。
【0032】
なお、図3(a)〜(f)は熱処理条件と結晶化との関係をまとめて示した図であり、SnO含有割合で5質量%のITO試料を成膜したPET基板を用いて110℃〜150℃にて60分加熱したときのITOが結晶化する様子を示したデータである。
この図3では結晶化の指標としてX線反射強度を採用している。30°〜31°の間に見られるピークがITO結晶の(222)面に相当し、X線反射強度が600cps以上であれば結晶化していると判断できる。この図3では100℃で60分の加熱処理では結晶化しておらず、110℃で60分での処理から結晶化することが確認され、120℃以上ではITOの結晶性に変化はない。一方、加熱温度が130℃を超えると基板として採用している高分子の熱劣化が懸念される。そこで、加熱処理工程では110℃以上130℃未満の加熱により、第2透明導電層材料3−2a側だけを結晶化して第2透明導電層3−2を得るのが望ましい。
【0033】
図3で示す工程により製造される透明導電膜3の上面に位置している結晶性の第2透明導電層3−2は、より高い耐薬品性を得るという観点からは、完全に結晶化されている状態が好ましいものであるが、少なくも、その一部が結晶化されており非晶状態から完全な結晶状態への移行途中であっても一定の耐薬品効果を期待できる。
なお、透明導電性フィルム1の耐薬品性は例えば次のようにして測定できる。製造した透明導電性フィルム1を所定温度(例えば、120℃)で60分熱風オーブンを用いて熱処理する。その後、試薬として、関東化学製ITO−06Nを用い、23℃で所定時間浸漬し、水洗した後の表面抵抗値を特定する。
【0034】
図4は、透明導電膜3の他の製造工程について示した図である。図4は、第1透明導電層3−1を形成するための非結晶状態の第1透明導電層材料として、図2のITOに替えてIZO(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)を用い、第2透明導電層3−2については同様にITOを用いて、透明導電膜3を製造する工程を示した図であり、(a)は成膜工程、(b)はパターニング工程、(c)は加熱処理工程について示している。
【0035】
この図4の製造工程で採用している第1透明導電層3−1を形成するための非結晶状態の第1透明導電層材料3−2bは、IZOである。このIZOは常に非結晶状態である透明導電性材料である。よって、図4の(c)では、図2で説明した製造方法の場合の様に共にITOを採用したときに非晶、結晶の状態を加熱温度で調整して形成させるという点に配慮する必要がなく、第2透明導電層材料3−2aを非結晶状態から結晶化させる温度にすればよいので、図4の製造工程は加工管理を簡略化できる。
【0036】
図5は、上述した可撓性および耐薬品性に富む本発明の透明導電膜3を備えた透明導電性フィルム1を少なくとも一方に採用しているフレキシブルディスプレイ装置10について示した図である。このフレキシブルディスプレイ装置10は、例えば一方側に透明導電性フィルム1を採用すると共に、他方側には他方には透明であることを要しない可撓性の導電膜12を備えた不透明な可撓性基板11を対向配置し、その間の空間には情報表示を行うための要素を含む種々の形態で表示構成部13が設けられる。このような表示構成部13としては、電子粉流体方式、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、ツイストボール方式などがある電子ペーパーの表示構成部や、ジアミン類などの有機発光体を用いて電気駆動する有機ELなどの表示構成部を採用でき、これらはブレキシブル性のある表示部を形成するものである。
このようなフレキシブルディスプレイ装置10は、矢印のような力を作用させて撓ませたときに、本発明の透明導電膜3は可撓性に富むのでクラックなどの発生を予防できる。そして、耐薬品性にも富むので、信頼性の高いフレキシブルディスプレイ装置として提供できる。
【0037】
ところで、前述した実施例では、透明で可撓性を備えたPETなどの基板上に2層からなる透明導電膜3を設ける場合について説明したが、本発明に係る透明導電膜3は透明性の基板に適用する場合に限らず、可撓性の不透明基板に形成してもよい。すなわち、図5の可撓性基板11の導電膜12を本発明に係る透明導電膜として、フレキシブルディスプレイ装置10を構成できる。
【符号の説明】
【0038】
1 透明導電性フィルム
2 基板
3 透明導電膜
3−1 第1透明導電層
3−2 第2透明導電層
3−1a 第1透明導電層材料
3−1b 第1透明導電層材料
3−2a 第2透明導電層材料
10 フレキシブルディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の基板上に設ける透明導電膜であって、
前記基板側に設けた非結晶性の第1透明導電層と、該第1透明導電層上に設けた結晶性の第2透明導電層とを含む、ことを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
前記第1透明導電層はSnO含有割合が10質量%以上のITO層(インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO層(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)であり、
前記第2透明導電層はSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITO層である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項3】
透明で可撓性の基板上に透明導電膜を設けた透明導電性フィルムであって、
前記透明導電膜が、前記基板側に設けた非結晶性の第1透明導電層と、該第1透明導電層上に設けた結晶性の第2透明導電層とを含む、ことを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記第1透明導電層はSnO含有割合が10質量%以上のITO層(インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO層(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)であり、
前記第2透明導電層はSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITO層である、ことを特徴とする請求項3に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記透明で可撓性の基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート及びポリエーテルスルホンの群から選択される1つである、ことを特徴とする請求項3または4に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
可撓性の基板上に透明導電膜を製造する方法であって、
前記可撓性の基板上に、第1透明導電層を形成するための非結晶状態の第1透明導電層材料を成膜し、この上に第2透明導電層を形成するための非結晶状態の第2透明導電層材料を更に成膜して積層する成膜工程と、
前記第1透明導電層材料及び前記第2透明導電層材料を所定の形状とするパターニング工程と、
前記第1透明導電層材料の非結晶状態を維持して非結晶性の第1透明導電層と、前記第2透明導電層材料の非結晶状態から少なくとも一部を結晶化して結晶性の第2透明導電層とを形成する加熱処理工程とを含む、ことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【請求項7】
前記第1透明導電層材料はSnO含有割合が10質量%以上のITO(インジウムスズ酸化物の透明膜)またはIZO(インジウム亜鉛酸化物の透明膜)であり、
前記第2透明導電層材料はSnO含有割合が1質量%以上10質量%未満のITOである、ことを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項8】
前記加熱処理工程は、110℃以上130℃未満で加熱する、ことを特徴とする請求項6または7に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の透明導電膜を含む、ことを特徴とするフレキシブルディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−3446(P2011−3446A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146523(P2009−146523)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】