説明

透明導電膜の製造方法

【課題】成膜中のストリーマの発生を抑制して、ストリーマ発生に起因する膜中へのパーティクルの混入を減少させ、抵抗率の劣化を好適に防止した低い抵抗率および良好な光学特性を有し、しかも、成膜面に適正な凹凸が無い場合でも、表面に好適なテクスチャ(凹凸)が形成された透明導電膜を、高い生産性で成膜することができる透明導電膜の製造方法を提供する。
【解決手段】電極対22にプラズマ生成用電力を供給する電源回路として、単一周波数の正弦波を発振する電源、および、パルス制御素子36を有する電源回路を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗が低く、かつ、光学特性に優れる透明導電膜を、安定して成膜することができる透明導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽電池の上部電極(光入射面側の電極)として、酸化亜鉛、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ等の透明導電膜が利用されている。特に、酸化亜鉛は、原料が豊富であり、顔料に使用されるほど安全性にも優れているという利点も有している。
このような透明導電膜の成膜方法としては、スパッタリングが広く用いられている。また、スパッタリングに代わる簡便な方法として、大気圧プラズマを用いたMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition(有機金属化学気相成膜))の研究開発が、各所で進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、誘電体バリア放電を用いる大気圧プラズマCVDによってIZO透明導電膜を成膜する際に、放電空間外の酸素濃度を2〜9vol%とし、かつ、誘電体バリア放電をするための電極対の一方に第1の周波数の電圧を、他方に第1の周波数よりも高い第2の周波数の電圧を印可するIZO透明導電膜の成膜方法(IZO透明導電膜形成方法)が記載されている。
この成膜方法によれば、誘電体バリア放電を開始するための第1の周波数の電圧に、第2の周波数の電圧を重畳することにより、プラズマ密度を高くして、緻密で良質なIZO透明導電膜を成膜することができる。
【0004】
また、特許文献2に記載されるように、スパッタリングによって透明導電膜を成膜することにより、表面に、適度な凹凸(テクスチャ構造)を有する透明導電膜を成膜することができる。このテクスチャ構造を有することによって、光散乱によって光の閉じ込め効果を得て、反射損失と吸収損失を低下させ、光利用効率の向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−235004号公報
【特許文献2】特開平11−284211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載される成膜方法も含め、従来の誘電体バリア放電による大気圧プラズマCVDでは、成膜する膜の膜質低下等の一因として、放電部で発生するストリーマ(微弱局所電流)が挙げられる。
透明導電膜の成膜中に、放電部でストリーマが発生すると、膜の結晶成長が不適性になってしまい、抵抗率が悪化してしまう。すなわち、ストリーマはパーティクルの発生を招き易い。パーティクルが膜中に混入すると、基板表面から結晶が垂直方向に成長するのを妨げ、その結果、膜の結晶成長が不適性になってしまう。そのため、成膜中にストリーマが発生すると、パーティクルが膜中に混入されてしまい、透明導電膜の光学特性を低下してしまう。
【0007】
さらに、特許文献2にも示されるように、透明導電膜は、表面にテクスチャ構造を有することが好ましい。前述のように、特許文献2に示されるような、低圧力でのスパッタリングであれば、適度なテクスチャ構造を有する透明導電膜を成膜できる。
しかしながら、このテクスチャ構造を有する透明導電膜は、低圧下で成膜を行う場合には、作製するのが困難であるとは考えられていないが、大面積のフィルムロールなどを大気圧下で処理して、透明導電膜を成膜した場合には、このようなテクスチャ構造を得ることは困難である。
現状では、大気圧プラズマによるMOCVDでは、この透明導電膜のテクスチャは、凹凸を有する基板からの結晶成長で形成することは可能であるが、平坦な基板に透明導電膜を堆積させて、表面に好適なテクスチャを有する透明導電膜を成膜することは、困難である。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、誘電体バリア放電を用いる大気圧プラズマでのMOCVDによって、透明導電膜を成膜するに際し、成膜中のストリーマの発生を抑制して、ストリーマ発生に起因する膜中へのパーティクルの混入を減少させ、抵抗率の劣化を好適に防止した低い抵抗率および良好な光学特性を有し、しかも、成膜面に適正な凹凸が無い場合でも、表面に好適なテクスチャ(凹凸)が形成された透明導電膜を、高い生産性で成膜することができる透明導電膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の透明導電膜の製造方法は、亜鉛有機化合物、スズ有機化合物、および、インジウム有機化合物から選択される有機化合物を気化してなる材料ガスと、酸素原子を含有するガスとを用い、誘電体バリア放電を大気圧近傍で生成して、プラズマCVDによって透明導電膜を成膜するに際し、電極対にプラズマ生成用電力を供給する電源回路として、単一周波数の正弦波を発振する電源、および、パルス制御素子を有する電源回路を用いることを特徴とする透明導電膜の製造方法を提供する。
【0010】
このような本発明の透明導電膜の製造方法において、前記酸素原子を含有するガスが、オゾンを含有するのが好ましい。
また、前記パルス制御素子は、前記電源が電圧を電極間に印可した際に、その半周期中に、少なくとも1つの電圧パルスを生成し、この電圧パルスの生成によって電極間に変位電流パルスを生じさせるものであるのが好ましい。また、前記パルス制御素子が、少なくとも1つのチョークコイルを含むのが好ましく、この際において、前記チョークコイルは、前記電源が電圧を電極間に印可したパルス最大値の後のパルス中は、飽和された状態となるのが好ましい。
また、リモートプラズマによって前記透明導電膜の成膜を行うのが好ましく、前記電源として、20kHz〜3MHzで単一周波数の正弦波を発振する電源を用いるのが好ましく、また、基板の温度を150℃以上として成膜を行うのが好ましい。
また、前記有機化合物として亜鉛有機化合物を用いるのが好ましく、この際において、前記亜鉛有機化合物が、ZnとAlとを含有する錯体化合物、もしくは、Zn(Cxyzmで示される化合物であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する本発明によれば、誘電体バリア放電を用いる大気圧プラズマでのMOCVDによる透明導電膜の成膜において、放電中のストリーマの発生を好適に抑制して、ストリーマに起因する膜中へのパーティクルの混入、それに起因する不適性な結晶成長による抵抗率の悪化を防止することができ、さらに、良好な結晶成長による好適な表面テクスチャを有する、透明導電膜を成膜することができる。
従って、本発明によれば、低い抵抗率および高い光学特性を有し、かつ、良好な表面テクスチャによる高い光の閉じ込め効果を有する透明導電膜を、安定して製造することができる。しかも、本発明によれば、MOCVDを大気圧で利用するので、このような優れた特性を有する透明導電膜を、スパッタリング等による成膜に比して高い生産性で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の透明導電膜の製造方法を実施する成膜装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の透明導電膜の製造方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0014】
図1に、本発明の透明導電膜の製造方法を実施する成膜装置の一例を概念的に示す。
図1に示す成膜装置10は、誘電体バリア放電を用いる大気圧プラズマでのMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition(有機金属化学気相成膜))によって、基板Zの表面に酸化亜鉛透明導電膜等の透明導電膜を成膜する装置である。
【0015】
図1に示す成膜装置10は、一例として、ドラム12と、電源14と、マッチング回路16と、グランド側電極18および高電圧電極20と、ガス流路を形成する流路部材24および26と、絶縁板28aおよび28bを有して構成される。なお、以下の説明では、絶縁板28aおよび28bをまとめて、絶縁板28とも言う。
この成膜装置10は、プラズマの生成領域と成膜領域(材料ガスの供給領域)とが異なる領域である、いわゆるリモートプラズマによって基板Zに成膜を行う装置である。
【0016】
本発明の製造方法において、基板Zには、特に限定はなく、誘電体バリア放電を用いる大気圧プラズマCVDによって、酸化亜鉛透明導電膜、酸化インジウム透明導電膜、および酸化スズ透明導電膜が成膜可能な物であれば、各種の基板Zが利用可能である。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの有機物からなる高分子フィルム(プラスチックフィルム/樹脂フィルム)が、基板Zとして、好適に利用可能である。
また、本発明においては、このような高分子フィルム等を基材として、その上に、保護層、接着層、光反射層、遮光層、平坦化層、緩衝層、応力緩和層等の、各種の機能を得るための層(膜)が形成されているシート状物を基板Zとして用いてもよい。
【0017】
図示例の成膜装置10において、基板Zは、一例として、ロール状に巻回された基板ロールとして装填され(図示省略)、基板ロールから引き出されて、成膜装置10に供給される。また、成膜を終了した基板Zは、再度、ロール状に巻回されて(図示省略)、次の工程に供給される。
すなわち、図示例の成膜装置10は、基板ロールから基板Zを送り出し、長手方向に搬送しつつドラム12上の所定領域で成膜を行い、成膜済の基板Zをロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)による成膜を行なう装置である。
【0018】
ドラム12は、ステンレス等で形成される円筒状の部材で、基板Zを周面に巻き掛けて回転(図中矢印a方向)することにより、基板Zを所定の成膜位置に保持しつつ、長手方向に搬送(同矢印b方向)する。
また、図示例においては、ドラム12は、接地されている。
【0019】
ドラム12は、好ましい態様として、成膜中における基板Zの温度、すなわち成膜温度を調整するための温度調整手段を内蔵する。なお、温度調整手段には、特に限定はなく、温度調節した絶縁油や水等の温度調節媒体を循環する手段、各種のヒータ、ペルチェ素子等の冷却媒体等、公知の手段が、各種、利用可能である。
【0020】
グランド側電極18および高電圧電極20は、誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge: DBD)を生じるための電極対22を成すものである。
グランド側電極18および高電圧電極20は、誘電体バリア放電による大気圧プラズマCVDに利用される公知のもので、例えば、ステンレス製の板状の部材である。
【0021】
図示例においては、グランド側電極18および高電圧電極20は、基板Zの搬送方向に所定距離だけ離間して平行に配置される。また、グランド側電極18および高電圧電極20は、ドラム12の直径方向と平行に、下端部(ドラム側端部)がドラム12と距離d1だけ離間して配置される。
この距離d1(すなわち、成膜領域における基板Zと電極対との距離)には、特に限定はなく、リモートプラズマによるCVDを行う公知の装置と同様、成膜条件等に応じて、適宜、設定すればよいが、2〜10mmが好適に例示され、特に2〜6mmが好ましい。
【0022】
絶縁板28(28aおよび28b)は、共に、誘電体バリア放電に利用される公知の絶縁板(誘電体板)で、例えば、各種のガラス、各種のセラミック、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂材料等、各種の絶縁材料(誘電体)で形成される板状の部材である。
【0023】
成膜装置10において、絶縁板28aはグランド側電極18に、絶縁板28bは高電圧電極20に、それぞれ固定される。絶縁板28は、共に、グランド側電極18および高電圧電極20の対向面の全面を覆うように、配置される。
また、絶縁板28aおよび28bは、互いに基板Zの搬送方向に所定距離(間隙d2)だけ離間して配置される。さらに、絶縁板28aおよび28bは、共に、前記距離d1よりも短い距離、ドラム12と離間して配置される。
この絶縁板28aおよび28bの間が、有機化合物を気化してなる材料ガスを含むガスG2(以下、便宜的に、成膜ガスG2とも言う)の供給路となる。この絶縁板28の間は、誘電体バリア放電を行う空間であり、また、プラズマが生成される空間である。
【0024】
なお、誘電体バリア放電を行う空間となる、絶縁板28aと絶縁板28bとの間隙d2には、特に限定はなく、先の距離d1と同様、成膜条件等に応じて、適宜、設定すればよいが、0.1〜1mmが好適に例示され、特に0.3〜0.8mmが好ましい。
ここで、本発明においては、絶縁板28aと絶縁板28bとの間隙d2は、グランド側電極18および高電圧電極20とドラム12との距離d1よりも小さいのが好ましい(すなわち『d2<d1』であるのが好ましい)。
グランド側電極18および高電圧電極20とドラム12との距離d1が小さすぎると、成膜条件によっては高電圧電極20とドラム12との間で放電を行ってしまう場合が有るが、『d2<d1』とすることにより、高電圧電極20とドラム12との間での放電を防止して、確実に絶縁板28aと絶縁板28bとの間で放電を行うことができる。
【0025】
流路部材24は、グランド側電極18を間にして絶縁板28aと所定距離離間して配置される。他方、流路部材26は、高電圧電極20を間にして絶縁板28bと所定距離離間して配置される。
流路部材24と絶縁板28aとの間隙が、酸素原子を含有するガスG1(以下、便宜的に、酸素原子供給ガスG1とも言う)の供給路となる。また、流路部材26と絶縁板28bとの間隙が、酸素原子供給ガスG1および成膜ガスG2の排出路となる。これに対応して、流路部材24および26は、共に、下端部近傍を内側(絶縁板28側)に曲げて、ドラム12(基板Z)の近傍まで延在される。
なお、流路部材24および26の形成材料には、特に限定はないが、アルミナやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの、各種の硬質な絶縁材が好適に用いられる。
【0026】
成膜装置10においては、プラズマ生成用の電力(プラズマ励起電力)がグランド側電極18と高電圧電極20との間に印可されて、誘電体バリア放電が生じ、成膜ガスG2のガス流によってグランド側電極18と高電圧電極20との間から噴出して、基板Zに到達しているプラズマに、酸素原子供給ガスG1が供給されて、基板Z上で酸素ラジカル等が生成される。
また、成膜ガスG2は、絶縁板28aおよび28bの間に供給される。成膜ガスG2は、この絶縁板28の間でプラズマによって分解されて、基板Z上に吹き付けられ、酸素ラジカルと反応して、基板Zに透明導電膜の成膜が行われる。
【0027】
特許文献1に示されるような、通常の誘電体バリア放電を利用する大気圧プラズマCVDによる透明導電膜の成膜(いわゆる、ダイレクト方式のCVDによる成膜)では、プラズマが生成される領域である、電極を覆う絶縁体(誘電体)の間に成膜ガスが供給されるので、絶縁体の表面にも透明導電膜が成膜されてしまう。
その結果、生成された透明導電膜から二次電子が放出されて、グロー状放電の均一なプラズマの生成が、困難になる(プラズマが不安定になる)。そのため、透明導電膜の成膜が不安定になり、欠陥の生成や膜厚の不均一などの不都合が生じる。
【0028】
これに対し、図示例の成膜装置10ような、リモートプラズマによる成膜では、プラズマの生成領域すなわち絶縁板28の間隙には酸素原子を含有する酸素原子供給ガスG1は供給されず、プラズマ生成領域下部の成膜領域に酸素原子供給ガスG1が供給される。また、前述のように、プラズマの生成領域で生成されたプラズマは、成膜ガスG2のガス流によって下方に移送されて、プラズマ生成領域外の基板Zの近傍において、酸素原子供給ガスG1とプラズマとが接触する。この酸素原子供給ガスG1とプラズマとの接触によって、酸素原子供給ガスG1がさらに活性化して、酸素原子と材料との反応が生じ、基板Zに透明導電膜の成膜が行われる。
従って、この成膜装置10では、活性化した材料ガスが、絶縁板28と接触することが無いので、絶縁板28への成膜を、好適に防止できる。そのため、絶縁板28の表面に成膜された透明導電膜に起因する前記不都合を好適に抑制して、基板Zに、欠陥等の発生が抑制された、適正な透明導電膜を安定して成膜できる。
【0029】
電源14は、大気圧での誘電体バリア放電によって大気圧でプラズマを生成するために、電極対22(グランド側電極18と高電圧電極20との間)に電圧を印可(プラズマ生成用の電力(プラズマ励起電力)を供給)する装置である。
本発明において、電源14には、特に限定はなく、誘電体バリア放電による大気圧プラズマでCVDによる成膜に利用される公知の電源が、各種、利用可能である。具体的には、単一周波数の正弦波の電力を発振する電源が例示され、その中でも、周波数が20kHz〜3MHzの電源が好ましく例示され、中でも特に、周波数が100kHz〜450kHzの電源が好ましく例示される。
【0030】
電源14は、マッチング回路16を介して、電極対22(グランド側電極18および高電圧電極20)に接続される。なお、成膜装置10においては、電源14とマッチング回路16とを有する電源回路は、グランド側電極18側のマッチング回路16と電源14との間で、接地されている。
マッチング回路16は、電極対22から電源14に戻る電力の反射を減少させるために、電源14と電極対22(間隙d2を含む)とのインピーダンス整合を取るものである。
【0031】
図示例において、マッチング回路16は、電極対22と直列に接続されるマッチングコイル32と、電極対22と並列に接続されるコンデンサ34と、マッチングコイル32と共に電極対22を挟むように直列に接続される、パルス制御素子36とを有して構成される。
パルス制御素子36は、本発明の特徴的な部位であって、成膜中に、ストリーマの発生を抑制することにより、透明導電膜の膜質を向上させ、さらに、c軸配向された結晶を成長させることにより、透明導電膜の表面に好適なテクスチャ構造を形成するものである。
【0032】
前述のように、誘電体バリア放電を利用する大気圧プラズマCVDによる成膜では、膜質低下等の一因として、放電部で発生するストリーマ(微弱局所電流)が知られている。
前述のように、透明導電膜の成膜中にストリーマが発生すると、膜の結晶成長が不適性になって抵抗率が低下し、さらに、ストリーマに起因してパーティクルが膜中に混入されてしまい、透明導電膜の光学特性を低下してしまう。
【0033】
これに対し、本発明の透明導電膜の製造方法によれば、誘電体バリア放電を利用する大気圧プラズマCVDにおいて、電極対にプラズマ生成用の電圧を印可する電源回路が、パルス制御素子を有することにより、透明導電膜の成膜中に放電部でのストリーマ発生を抑制することができる。
【0034】
その結果、グロー状の均一な放電を起して、基板Zに近い所で、キャリアガス、材料ガスや酸素原子を活性化することができ、これにより、好適にc軸配向された結晶を得て、抵抗率の低い透明導電膜を成膜することができる。また、ストリーマを抑制できるので、これに起因するパーティクルの生成も抑制でき、パーティクル混入が極めて少ない、優れた光学特性を有する透明導電膜を成膜できる。さらに、好適にc軸配向された結晶が成長することにより、平坦な基板表面であっても、表面に好適な凹凸が形成された、表面に良好なテクスチャを有する透明導電膜を成膜することができる。
また、パーティクルの混入が極めて少ないので、前述のような結晶成長の阻害が無く、適正に膜の結晶が成長するので、抵抗率が低い透明導電膜を成膜することができる。
さらに、安定化された放電により、大きな出力のプラズマ生成用電力を投入することができるので、材料ガスを好適に分解することができ、良質な透明導電膜を成膜することができる。例えば、酸化亜鉛透明導電膜を成膜する場合であれば、材料ガスとなる亜鉛有機化合物において、亜鉛と結合している炭素成分を、ほぼ完全に分解できるので、良質な酸化亜鉛透明導電膜を成膜することができる。
【0035】
すなわち、本発明によれば、抵抗率が低く、光学特性に優れ、しかも、表面に良好なテクスチャが形成された、光散乱による高い光閉じ込め効果を有する高効率な透明導電膜を、安定して製造することができる。
【0036】
しかも、本発明の製造方法は、大気圧でのプラズマCVDであるので、100℃付近の低温での成膜が可能であり、PETやPEN等の耐熱性の低い高分子フィルムへの透明導電膜の成膜も可能である。
また、スパッタリング等と比較して、基板Zを痛めることなく透明導電膜を成膜することができ、さらに、成膜速度も早く、高い生産性で、前述のような優れた特性を有する透明導電膜を成膜することができる。
【0037】
本発明において、パルス制御素子36は、電極対22にプラズマを励起するための電圧(すなわち、誘電体バリア放電を発生させるための電圧)を印可した際に、その半周期中に少なくとも1つのパルス電圧を生成して、電極対22の間に変位電流パルスを生じさせることにより、ストリーマを抑制して、プラズマを安定させるものである。
パルス制御素子36としては、具体的には、電極対22に直列に接続されたチョークコイルが好適に例示される。特に、電源14が電極対22に印可した同一周波数の正弦波電圧において、パルス最大値(電圧最大値)の後のパルス中(正弦波の同一周期中)は、飽和された状態になるようなチョークコイルが好適に例示される。
【0038】
チョークコイルは、非線形応答をするので、或る電流において、電極対22の電極間の電圧を急激に変化させる。これによって、絶縁体28の間(放電ギャップ間)の変位電流を変化させて、ストリーマの発生を抑制することができる。
なお、変位電流は、実際に荷電粒子が絶縁体28aと絶縁体28bとの間に流れる訳ではなく、電圧の変化として観測される。
特に、パルス制御素子36としては、前述の電源14が電極対22に印可した同一周波数の正弦波電圧において、パルス最大値の後のパルス中は、飽和から非飽和に遷移するチョークコイルを用いるのが好ましい。このようなチョークコイルを用いることにより、素早くプラズマのカットオフを誘起し、残存ストリーマを好適に排除できる等の点で、好ましい結果を得ることができる。
【0039】
なお、パルス制御素子36としてのチョークコイルは、1個に限定はされず、複数のチョークコイルをパルス制御素子として利用してもよく、また、他のパルス制御素子と、パルス制御素子としてのチョークコイルとを併用してもよい。
ここで、後述するように、パルス制御素子として複数のチョークコイルを利用する場合には、少なくとも1つのチョークコイルが、前述のようにパルス最大値の後のパルス中は、飽和から非飽和に遷移するような物であるのが好ましく、特に、全てのチョークコイルが、同飽和から非飽和に遷移するような物であるのが好ましい。
【0040】
なお、本発明において、パルス制御素子36は、チョークコイルに限定はされず、上記作用を有する、各種のパルス制御素子(パルス制御回路)が利用可能である。
一例として、電極対22と直列に接続されたチョークコイルと、このチョークコイルに並列に接続されたコンデンサとからなるパルス制御素子36が、好適に、例示される。また、パルス制御素子36と同様に電極対22と直列に接続されたチョークコイルと、このチョークコイルに直列で接続された(共振器)コンデンサと、チョークコイルおよびコンデンサの直列回路に並列に接続された(パルス)コンデンサとからなるパルス制御素子36も、好適に、例示される。
【0041】
このようなパルス制御素子36(パルス制御素子を組み込んだマッチング回路、および、電源とマッチング回路とを有する電源回路)に関しては、特表2007−520878号公報および特表2009−506496号公報に詳述されている。本発明の製造方法は、両公報に記載されるパルス制御素子および電源回路が、全て利用可能である。
また、本発明の製造方法においては、マッチング回路内部のLC共振回路部分は、図示例や上記公報に記載される構成以外にも、公知の共振回路が、各種、利用可能である。例えばAppl. Phys. Lett., 91, 081504 (2007)に示されるような、キャパシタンスとインダクタンス並列の共振回路も、電極対に直列に、チョークコイル等のパルス制御素子を接続することで、好適に利用可能である。
さらに、電源14とマッチング回路16との間に、変圧器を配置した構成も利用可能であり、図1に示される例と、同様の効果を得ることができる。
【0042】
本発明の透明導電膜の製造方法は、透明導電膜として、酸化亜鉛透明導電膜、酸化スズ透明導電膜、および、酸化インジウム透明導電膜のいずれかを成膜するものである。
ここで、本発明の製造方法は、前述の膜表面のテクスチャ構造が好適に形成できる、前述のように、原料が豊富で安全性にも優れる等の点で、酸化亜鉛透明導電膜の成膜に、より好適に利用される。
【0043】
本発明の製造方法において、材料ガスとなる有機化合物には、特に限定はなく、成膜する透明導電膜に応じて、各種の亜鉛有機化合物、スズ有機化合物、および、インジウム有機化合物が利用可能である。
具体的には、亜鉛有機化合物としては、ジイソブチリルメタナート亜鉛−トリイソブチリルメタナートアルミニウム(Zn(DIBM)2)−Al(DIBM)3)、ジイソブチリルピバノイルメタナート亜鉛−トリイソブチリルピバノイルメタナートアルミニウム(Zn(IBPM)2−Al(IBPM)3)などのZnとAlとを含有する錯体化合物や、亜鉛アセチルアセトナート(Zn(C572)2)などの(Zn(Cxyz)m)で示される化合物、ジエチル亜鉛(Zn(C25)2)、ビス−2,4−オクタンジオネート亜鉛(Zn(OD)2)等が好適に例示される。
中でも特に、ZnとAlとを含有する錯体化合物および(Zn(Cxyzm)で示される化合物は、好適に利用される。
【0044】
また、スズ有機化合物としては、ジブチルジエトキシ錫、テトラエトキシ錫、メチルメトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジブトキシ錫、ジエチル錫、ジアセトキシ錫、ジブトキジジアセトキシ錫、2,4−ペンタンジオネート−エトキシ錫、2,4−ペンタンジオネート−ジメチル錫等が例示される。
さらに、インジウム有機化合物としては、トリジピバロイルメタナートインジウム(In(DPM)3)、トリジイソブチリルメタナートインジウム(In(DIBM)3)、トリイソブチリルピバノイルメタナートインジウム(In(IBPM)3)、トリ−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオネートインジウム(In(TMOD)3)、トリメチルインジウム((CH3)3In)等が好適に例示される。
【0045】
このような有機化合物は、公知の方法で気化されて材料ガスとされ、搬送ガス(キャリアガス)である窒素ガス等と混合されて成膜ガスG2とされ、各種のCVD等で利用される公知の手段で絶縁板28aと絶縁板28bとの間に供給される。
なお、搬送ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等のプラズマCVDで搬送ガス(希釈ガス)として利用される各種のガスが利用可能である。
【0046】
また、本発明においては、亜鉛有機化合物、インジウム有機化合物、および、スズ有機化合物を材料ガスとして用いるMOCVDに利用されている各種のガスを、成膜ガスG2(あるいは、酸素原子供給ガスG1)に添加してもよい。
例えば、抵抗率の低下効果を目的として、トリメチルアルミニウム((CH33Al)やトリエチルアルミニウム(Al(C25)3)を成膜ガスG2に添加してもよい。また、ジボラン(B26)を成膜ガスG2に添加してもよい。
また、アルミニウムの化合物だけでなく、ガリウムやインジウムの化合物を用い、GZO膜やIGZO膜を形成してもよい。その材料としては、トリメチルインジウム(CH3)3In、トリメチルガリウム(CH3)3Ga、トリエチルガリウム(C25)3Ga等が例示される。
【0047】
酸素原子供給ガスG1は、酸素原子を含むガスであり、酸素原子を含むガスであれば、各種のガスが利用可能である。
具体的には、二酸化炭素と酸素の混合ガス、水蒸気と酸素の混合ガス等が好適に例示される。二酸化炭素と酸素の混合ガスは、二酸化炭素と酸素とのガス分率が1:1のガスが好ましく、特に、このガスにオゾンが含まれるガスが好ましく、中でも、オゾンが100〜1000ppm含まれるガスが、最も好適である。また、水蒸気と酸素の混合ガスは、水分に酸素が飽和した状態で含まれるガスが好ましく、特に、このガスにオゾンが含まれるガスが好ましく、中でも、オゾンが100〜1000ppm含まれるガスが、最も好適である。
【0048】
本発明の透明導電膜の製造方法において、成膜条件には、特に限定はなく、各種の誘電体バリア放電を利用する大気圧プラズマCVDでの透明導電膜の成膜と同様に、成膜する透明導電膜の種類、使用する成膜ガスG2や酸素原子供給ガスG1の種類、透明導電膜の膜厚、成膜レート等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0049】
ここで、本発明者の検討によれば、本発明の製造方法では、成膜温度(基板温度)が高いほど、好適なテクスチャ構造を形成できる等の点で、良質な透明導電膜が得られる。
そのため、本発明においては、成膜温度を150℃以上として、透明導電膜を成膜するのが、好ましい。
なお、成膜温度の調整方法は、公知の手段で行えばよく、例えば、図1に示す成膜装置10であれば、ドラム12が内蔵する温度調整手段によって、基板Zの温度を150℃以上として、透明導電膜の成膜を行えばよい。
【0050】
なお、本発明においては、低温での成膜でも、低抵抗率、高い光学特性、および、表面に良好なテクスチャが形成された透明導電膜が成膜可能である。
すなわち、前述のように、本発明の製造方法は、PETやPEN等の耐熱性の低い高分子フィルムへの透明導電膜の成膜にも、好適に利用可能である。
【0051】
また、成膜圧力にも、特に限定はなく、公知の大気圧プラズマCVDと同様でよいが、20kPa〜110kPaで成膜を行うのが好ましい。
【0052】
以上、本発明の透明導電膜の製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
例えば、図示例の成膜装置10は、ロール・ツー・ロールによって長尺な基板Zに連続的に成膜を行うものであるが、本発明は、これに限定はされず、シート状物等にバッチ式で成膜を行う装置にも、好適に利用可能である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明について、より詳細に説明する。
【0054】
[実施例1]
誘電体バリア放電(DBD)による大気圧プラズマCVDでの成膜を行う、図1に示す成膜装置10を用いて、基板Zの表面に、厚さ150nmの酸化亜鉛透明導電膜を成膜した。
【0055】
基板Zは、厚さ0.1mmのポリイミドフィルムを用いた。
酸素原子供給ガスG1は、99.999%の酸素を用いた。この酸素原子供給ガスG1を、流量10L(リットル)/minで流し、UV照射機の中を通過させることによってオゾンを発生させた後、流路板24と絶縁板28aとの間に供給した。なお、UV照射機は、ヘレウス社製のオゾンランプNIQ120/44Uを使用して、185nmと254nmの紫外光を照射した。照射強度は0.06W/cm2とした。
ジエチル亜鉛(Zn(C25)2)を液体のまま気化器に供給(4g/hr)して、100℃に熱しながら気化させて、材料ガスとした。気化したジエチル亜鉛は、搬送ガスとして窒素ガス(流量2L/min)を用い、気化器内の圧力を大気圧よりも0.01MPaだけ高く保つようにして、絶縁板28aおよび28bの間に供給した。
さらに、Al(DIBM)3の濃度が0.05mol/Lのトルエン溶液を用意した。この溶液を、0.1g/hrの流量で気化器に導入し、200℃に熱することにより、Al(DIBM)3を気化した材料ガスを得た。この材料ガスを、搬送ガスとして窒素ガス(流量2L/min)を用い、気化器内の圧力を大気圧よりも0.01MPaだけ高く保つようにして、絶縁板28aおよび28bの間に供給し、先のジエチル亜鉛と混合して、成膜ガスG2とした。
【0056】
電源14は、グランド側電極18および高電圧電極20間に振幅が4kVの電圧を印可する、150kHzの正弦波電源を用いた。プラズマ励起電力は、1000Wとした。
マッチング回路16のパルス制御素子36は、飽和磁束Bsat=350mTのトロイダルインダクタを用いた。このパルス制御素子36のインダクタンスは、100kHzにおいて1mHであった。
基板Zの搬送速度は、0.3m/minとした。なお、成膜中は、絶縁油の循環によってドラム12の温度を150℃に保つことにより、成膜温度を150℃に制御した。
成膜レートは、1200nm/minであった。
【0057】
[実施例2]
材料ガス(成膜材料)として、Al(DIBM)3に代えてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いた以外は、実施例1と同様にして、基板Zの表面に厚さ150nmの酸化亜鉛透明導電膜を成膜した。
なお、TMAlは、液体のまま100℃に保った気化器に供給(0.1g/hr)し、噴霧させながら気化して材料ガスとした。気化したTMAlは、搬送ガスとして窒素ガス(流量2L/min)を用い、絶縁板28aおよび28bの間に供給し、ジエチル亜鉛と混合して、成膜ガスG2とした。
成膜レートは1200nm/minであった。
【0058】
[実施例3]
材料ガス(成膜材料)として、ジエチル亜鉛に代えてZn(OD)2を用いた以外は、実施例1と同様にして、基板Zの表面に厚さ150nmの酸化亜鉛透明導電膜を成膜した。
なお、Zn(OD)2の供給には、Zn(OD)2の濃度が0.05mol/Lのトルエン溶液を用いた。この溶液を、0.1g/hrの流量で気化器に導入し、200℃に熱することにより、Zn(OD)2を気化した材料ガスを得た。この材料ガスを、搬送ガスとして窒素ガス(流量2L/min)を用い、気化器内の圧力を大気圧よりも0.01MPaだけ高く保つようにして、絶縁板28aおよび28bの間に供給し、Al(DIBM)3と混合して、成膜ガスG2とした。
成膜レートは1100nm/minであった。
【0059】
[実施例4]
入力電力を600Wとし、気化器に投入するZn(OD)2のトルエン溶液の流量を2g/hrとし、気化器に投入するAl(DIBM)3のトルエン溶液の流量を0.05g/hrとすることにより、成膜レートを500nm/minとした以外には、実施例3と同様にして、基板Zの表面に厚さ150nmの酸化亜鉛透明導電膜を成膜した。
【0060】
[比較例1]
成膜装置10において、マッチング回路16にパルス制御素子36を用いず、さらに、プラズマ生成用電力として、誘電体バリア放電(DBD)と、13.56MHzの高周波電力との重畳電力(700Wと300Wの重畳)を供給した以外は、実施例3と同様にして、基板Zの表面に厚さ150nmの酸化亜鉛透明導電膜を成膜した。
成膜レートは1100nm/minであった。
【0061】
[比較例2]
成膜装置10において、マッチング回路16にパルス制御素子36を用いない以外は、実施例1と全く同様にして、酸化亜鉛導電膜を成膜した。
成膜レートは、1200nm/minであった。
【0062】
得られた7種の酸化亜鉛透明導電膜について、抵抗率、および、光閉じ込め効果を確認した。また、両者の結果から酸化亜鉛透明導電膜としての評価を行った。
[抵抗率]
基板Zを剥がして、酸化亜鉛透明導電膜の表面にアルミニウムを蒸着し、四探針法によって酸化亜鉛透明導電膜の抵抗率[Ωcm]を測定した。
その結果、実施例1は2×10-4Ωcm、実施例2は4×10-4Ωcm、実施例3および実施例4は3×10-4Ωcm、比較例1は8×10-2Ωcm、比較例2は6×10-3であった。また、抵抗率は、以下のように評価した。
◎:抵抗率が4×10-4Ωcm未満
○:抵抗率が4×10-4Ωcm以上1×10-3Ωcm未満
△:抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×10-2Ωcm未満
×:抵抗率が1×10-2Ωcm以上
【0063】
[光閉じ込め効果]
基板Zを剥がして、酸化亜鉛透明導電膜の表面をAFM(原子間力顕微鏡)で観察して、中心線平均粗さRa(計測長=10μm)を計測することにより、酸化亜鉛透明導電膜の光閉じ込め効果を評価した。Raが大きい程、テクスチャ構造が効率的に生成されているものと判断し、光閉じ込め効果が大きいとみなす。評価は以下のとおりである。
◎:Raが200nm超
○:Raが50nm超200nm以下
△:Raが10nm超50nm以下
×:Raが10nm以下
【0064】
[評価]
抵抗率および光閉じ込め効果共に、◎を3点: ○を2点: △を1点: ×を0点: として、合計し、
◎:合計が5点以上
○:合計が4点
△:合計が3点
×:合計が2点以下
と評価した。
結果を、下記表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
上記表1に示されるように、本発明の製造方法によって成膜した酸化亜鉛透明導電膜は、非常に低い抵抗率を有し、さらに、光閉じ込め効果も良好であった。特に、実施例1の酸化亜鉛透明導電膜は、2×10-4Ωcmと、Zn系の透明導電膜としては良質の抵抗率が得られている。
これに対し、マッチング回路16がパルス制御素子36を有さない比較例1および比較例2は、それ以外は同条件の実施例3および実施例1に比して、抵抗率が低く、光閉じ込め効果も低い。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
太陽電池の透明電極や、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示装置、タッチパネルにおける透明電極層などの成膜に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 成膜装置
12 ドラム
14 電源
16 マッチング回路
18 グランド電極
20 高電圧電極
22 電極対
24,26 流路部材
28a,28b 絶縁板
32 マッチングコイル
34 コンデンサ
36 パルス制御素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛有機化合物、スズ有機化合物、および、インジウム有機化合物から選択される有機化合物を気化してなる材料ガスと、酸素原子を含有するガスとを用い、誘電体バリア放電を大気圧近傍で生成して、プラズマCVDによって透明導電膜を成膜するに際し、
電極対にプラズマ生成用電力を供給する電源回路として、単一周波数の正弦波を発振する電源、および、パルス制御素子を有する電源回路を用いることを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記酸素原子を含有するガスが、オゾンを含有する請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記パルス制御素子は、前記電源が電圧を電極間に印可した際に、その半周期中に、少なくとも1つの電圧パルスを生成し、この電圧パルスの生成によって電極間に変位電流パルスを生じさせるものである請求項1または2に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記パルス制御素子が、少なくとも1つのチョークコイルを含む請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項5】
前記チョークコイルは、前記電源が電圧を電極間に印可したパルス最大値の後のパルス中は、飽和された状態となる請求項4に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項6】
リモートプラズマによって前記透明導電膜の成膜を行う請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項7】
前記電源として、20kHz〜3MHzで単一周波数の正弦波を発振する電源を用いる請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項8】
基板の温度を150℃以上として成膜を行う請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項9】
前記有機化合物として亜鉛有機化合物を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項10】
前記亜鉛有機化合物が、ZnとAlとを含有する錯体化合物、もしくは、Zn(Cxyzmで示される化合物である請求項9に記載の透明導電膜の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−214062(P2011−214062A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83085(P2010−83085)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】