説明

透明蒸着フィルム

【課題】蒸着層形成工程での巻き取りジワがなく、寸法安定性の良いポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた透明蒸着フィルムを提供すること。
【解決手段】延伸された透明なプラスチックフィルム(11)の上に無機化合物の蒸着薄膜(12)が形成された透明蒸着フィルム(10)において、プラスチックフィルム(11)が、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5〜+0.5%の熱収縮特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装分野で用いられる包装用の透明蒸着フィルムに関し、特には、ロール状に巻き取っても巻きジワの発生しにくい透明蒸着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品,医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質,特に食品においてはたんぱく質や油脂等の酸化,変質を抑制し、さらに味,鮮度を保持するために、また無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品において有効成分の変質を抑制し、効能を維持させるために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
そのため、従来からポリビニルアルコール,エチレンビニルアルコール共重合体、あるいはポリ塩化ビニリデン樹脂など一般にガスバリア性が比較的高いといわれる高分子樹脂組成物をラミネートまたはコーティングにより設けたガスバリア性積層体が、包装フィルムとして一般的に使用されてきた。
【0004】
また、最近では、アルミニウムなどの金属または金属化合物の薄膜や、酸化硅素などの硅素酸化物薄膜、酸化マグネシウム薄膜などを、透明性を有する、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムのようなプラスチックフィルム上に蒸着などの形成手段により形成した蒸着フィルムが開発されている。これらは優れたガスバリア特性を有しており、高湿度下での劣化も少ないので、このガスバリア材を包装材料に用いた包装フィルムが一般的に使用され始めている。
【0005】
ところで、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とした蒸着フィルムを作製するに際して、ポリエチレンテレフタレートフィルムの熱収縮特性によっては、蒸着フィルムのアンダーコート加工、または、オーバーコート加工などのコーティングの乾燥工程で受ける熱負荷により、基材のポリエチレンテレフタレートフィルムが収縮、膨張し、弛み等の現象が生じる。
この弛みは巻き取りロール上で幅方向に不均一な張力を生じさせるため、蛇行や偏りを生じて巻きジワが入り易い。巻きジワが入るとガスバリア性を劣化させるという問題が起こる。
【0006】
ポリエチレンテレフタレートフィルムロールの蛇行や偏りの改良も試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平7−178810号公報。
【0008】
しかし、この発明は、100°C付近の熱履歴を受けるコートでは蛇行、偏り、シワ等発生しないかも知れないが、それ以上の高温度(200°Cレベルでの負荷)では対応できないため、200°C付近のコントロールが必要という問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、蒸着フィルム用ポリエチレンテレフタレートフィルムに関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、蒸着層形成工程での巻き取りジワがなく、寸法安定性の良いポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた透明蒸着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明は、延伸された透明なプラスチックフィルムの上に無機化合物の蒸着薄膜が形成された透明蒸着フィルムにおいて、前記プラスチックフィルムは、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%の熱収縮特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする、透明蒸着フィルムである。
【0011】
このように請求項1記載の発明によれば、プラスチックフィルムとして、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%で、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%の熱収縮特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いるので、蒸着フィルムを作製中に加熱工程を経たポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取っても巻き取りジワ等が発生せず、寸法安定性が良い。
【0012】
また、請求項2の発明は、延伸された透明なプラスチックフィルムの上に無機化合物の蒸着薄膜が形成された透明蒸着フィルムにおいて、前記プラスチックフィルムは、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする、透明蒸着フィルムである。
【0013】
このように請求項2記載の発明によれば、プラスチックフィルムとして、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いているので、蒸着フィルムを作製中に加熱工程を経たポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取っても巻き取りジワ等が発生せず、寸法安定性が良い。
【0014】
また、請求項3の発明は、延伸された透明なプラスチックフィルムの上に無機化合物の蒸着薄膜が形成された透明蒸着フィルムにおいて、前記プラスチックフィルムは、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%の熱収縮特性を有すると共に、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたことを特徴とする、透明蒸着フィルムである。
【0015】
このように請求項3記載の発明によれば、プラスチックフィルムとして、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%の熱収縮特性を有すると共に、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いているので、蒸着フィルムを作製中に加熱工程を経たポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取ってもその巻き取りに巻き取りジワ等が発生せず、寸法安定性が良い。
【0016】
また、請求項4の発明は、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜が酸化アルミニウム蒸着膜又は酸化ケイ素蒸着膜であることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の透明蒸着フィルムである。
【0017】
このように請求項4記載の発明によれば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜が酸化アルミニウム蒸着膜又は酸化ケイ素蒸着膜であるので、透明性に優れた透明蒸着フィルムが得られる。
【0018】
また、請求項5の発明は、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の上に水溶性高分子と、(a)一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる被膜層が製膜されていることを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載の透明蒸着フィルムである。
【0019】
このように請求項5記載の発明によれば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の上に水溶性高分子と、(a)一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる被膜層が製膜されているので、可撓性に優れた蒸着膜を有する蒸着フィルムを得ることができる。
【0020】
また、請求項6の発明は、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の下に特定の3官能オルガノシロキサンあるいは前記オルガノシロキサンの加水分解物と、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との複合物となる透明プライマー層が製膜されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5記載の透明蒸着フィルムである。
【0021】
このように請求項6記載の発明によれば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の下に特定の3官能オルガノシロキサンあるいは前記オルガノシロキサンの加水分解物と、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との複合物となる透明プライマー層が製膜されているので、透明性、ガスバリア性に優れるとともに、耐ボイル性、耐レトルト性を有する透明蒸着フィルムを得ることができる。
【0022】
また、請求項7の発明は、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の下にポリエステル樹脂あるいは該樹脂と、(a)イソシアネート系樹脂、(b)エポキシ系樹脂、(c)メラミン系樹脂のうちから選ばれる1種以上の混合物からなる混入樹脂よの混合物からなる第2透明プライマー層が製膜されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6記載の透明蒸着フィルムである。
【0023】
このように請求項7記載の発明によれば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の下にポリエステル樹脂あるいは該樹脂と、(a)イソシアネート系樹脂、(b)エポキシ系樹脂、(c)メラミン系樹脂のうちから選ばれる1種以上の混合物からなる混入樹脂よの混合物からなる第2透明プライマー層が製膜されているので、透明性に優れ、かつ、高いガスバリア性を有すると共にエアミネート強度の劣化のない密着性を有する実用性の高い透明蒸着フィルムを得ることができる。
【0024】
また、請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明蒸着フィルムに印刷加工が施された包装材料である。
【0025】
また、請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明蒸着フィルムにラミネート加工が施された包装材料である。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明によれば、コーティング工程でフィルムを巻き取っても,巻き取ったロールに巻き取りシワがなく、寸法安定性の良い透明蒸着フィルムが供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の透明蒸着フィルムは、例えば、図1に示すように、延伸された透明なプラスチックフィルム(11)の上に無機化合物の蒸着薄膜(12)が形成された透明蒸着フィルムにおいて、前記プラスチックフィルム(11)が、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%、の熱収縮特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた透明蒸着フィルム(10)である。
【0028】
また、前記プラスチックフィルム(11)が、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた透明蒸着フィルム(10)である。
【0029】
また、前記プラスチックフィルム(11)が、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%、の熱収縮特性を有すると共に、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた透明蒸着フィルム(10)である。
【0030】
ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着薄膜(12)は、酸化アルミニウム蒸着膜又は酸化ケイ素蒸着膜である。
【0031】
さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着薄膜(12)の上に、水溶性高分子と、(a)一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる被膜層(13)が製膜されている構成とすることもできる(図2参照)。
【0032】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特にポリビニルアルコールを用いた場合にはガスバリア性が優れる。
【0033】
金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC2 5 4 〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C3 7 3 〕などの、一般式M(OR)n (M:Si,Ti,Ar,Zr等の金属、R:CH3 ,C2 5 等のアルキル基)で表せるものである。なかでもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後,水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0034】
さらに、塩化錫は塩化第一錫(SnCl2 )、塩化第二錫(SnCl4 )、あるいはそれらの混合物であっても良く、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0035】
上述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらにコーティング剤のバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0036】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング
法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。被膜層(13)の厚さは、コーティング剤の種類によって異なるが、乾燥後の厚さが約0.01〜50μm程度の範囲、より好ましくは0.1〜0.5μmの範囲であれば良い。
【0037】
さらにまた、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着薄膜(12)の下に、特定の3官能オルガノシロキサンあるいは前記オリガノシロキサンの加水分解物と、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との複合物となる透明プライマー層(14)が製膜されている構成とすることもできる(図3参照)。
【0038】
特定の3官能オルガノシロキサンは、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシランなど一般式R’Si(OR)3 (R’:アルキル基、ビニル基、グリシドオキシプロピル基など、R:アルキル基など)で表せるもの、あるいはその加水分解物である。なかでもR’中にエポキシ基が含まれているグリシドオキシトリメトキシシランやエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等が特に好ましい。加水分解物を得る方法は、3官能オルガノシランに直接酸やアルカリ等を添加して加水分解を行う方法など既知の方法で得ることができる。
【0039】
また、アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物もしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。また、イソシアネート化合物との反応性を考慮すると、ヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0040】
アクリルポリオールと3官能オルガノシランの配合比は、重量比で2/1〜50/1の範囲であることが好ましい。溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものはなく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。しかし、3官能オルガノシラン等を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることがより好ましい。
【0041】
透明プライマー層(14)の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.01〜5.0μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく、密着性が低下する場合がある。また、厚さが5.0μmを超える場合は厚いため塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂が生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.03〜0.3μmの範囲内にあることである。
【0042】
透明プライマー層(14)の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の公知の印刷方法や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの公知の塗布方法を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用されている条件で構わない。
【0043】
さらにまた、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着薄膜(12)の下に、ポリエステル樹脂あるいは該樹脂と、(a)イソシアネート系樹脂、(b)エポキシ
系樹脂、(c)メラミン系樹脂のうちから選ばれる1種以上の混合物からなる混入樹脂とその混合物からなる第2透明プライマー層(15)が製膜されている構成とすることもできる(図4参照)。
【0044】
ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびこれらの反応性誘導体等の酸材料と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンメタノール、ネオペンチルグリコール、イソペンチルグリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAAのアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール等のアルコール原料から周知の方法で製造されたものが用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0045】
また、ポリエステル樹脂に添加される混入樹脂は、さらに密着性を高めるために添加されるもので、主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するために混入樹脂としては、トリレンジイソシアネート(TDI)やキシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサレンジイソシアネート(MDI)などのイソシアネート系樹脂、ビスフェノールAジグリシンエーテル型エポキシや水添ビスフェノール型エポキシなどのエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂及びこれらの1種以上の混合物が用いることができる。中でもイソシアネート系樹脂(特にTDI)を用いる場合が、最も密着性に優れているので好ましい。
【0046】
ポリエステル樹脂と混入樹脂の混合割合は、ポリエステル樹脂のOH基やCOOH基に対して、イソシアネート基やエポキシ基、アミノ基等が当量以上含まれていれば良い。例えば、混入樹脂としてイソシアネート系樹脂単体を用いる場合、ポリエステル樹脂とイソシアネート系樹脂との配合比は(ポリエステルのOH基):(イソシアネートのNCO基)で1:0.5〜1:20の範囲であることが好ましい。当量以下であると硬化不良、架橋不足となり密着性に問題がある。しかし、あまり過剰に加えると、加えた樹脂が反応せずに残り膜に悪影響を与えるので好ましくない。混合の方法は公知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0047】
ポリエステル樹脂や混入樹脂を溶解する有機溶剤としては、樹脂を溶解することが可能であれば特に限定されることはなく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類のうち単独または任意に配合したものが使用できる。好ましくは塗膜加工及び臭気の面からトルエンとメチルエチルケトンを混合したものが良い。
【0048】
第2透明プライマー層(15)の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.01〜1.0μmの範囲、特に好ましくは、0.1〜0.5μmの範囲内にあることである。
【0049】
第2透明プライマー層(15)の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の公知の印刷方法や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの公知の塗布方法を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用されている条件で構わない。
【0050】
透明蒸着フィルム(10)の一方の面に印刷層(20)を形成させることができる(図5参照)。印刷層(20)は、包装袋などとして実用的に用いるために形成されるもので
あり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の、従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。
形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等の公知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の公知の塗布方式を用いることができる。厚さは、0.1〜2.0μm程度が好適に使用される。
【0051】
また、透明蒸着フィルム(10)にはシーラント層(31)などをラミネート加工することもできる(図6参照)。シーラント層(31)は、包装袋などを形成する際の熱融着部に利用されるものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金庫架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μm程度の範囲である。
形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものをドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法により透明蒸着フィルム(10)と積層する方法、上記樹脂を加熱溶融させカーテン状に押し出し、透明蒸着フィルム(10)と貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等の公知の方法により積層することができる。
【0052】
本発明の透明蒸着フィルムを具体的な実施例を挙げてさらに詳細に説明する。
《実験1》
【実施例1】
【0053】
縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.85%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が+0.25%、縦方向の220°CのTMA収縮率が−2.15%、横方向の220°CのTMA収縮率が+5.8%の延伸された透明なポリエチレンテフタレートフィルム(11)を用いて、酸化アルミニウム蒸着薄膜を形成し、その上に水溶性高分子と、一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物を塗布し、加熱乾燥して被膜層を形成させ、実施例1のポリエチレンテフタレートフィルムとした。
【実施例2】
【0054】
縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+2.25%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.30%、縦方向の220°CのTMA収縮率が−2.8%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.7%の延伸された透明なポリエチレンテフタレートフィルム(11)を用いて、酸化ケイ素蒸着薄膜を形成し、その上に水溶性高分子と、一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物を塗布し、加熱乾燥して被膜層を形成させ、実施例2のポリエチレンテフタレートフィルムとした。
【実施例3】
【0055】
第1の比較例として、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+2.7%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.55%、縦方向の220°CのTMA収縮率が−3.7%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%の延伸された透明なポリエチレンテフタレートフィルム(11)を用いて、酸化アルミニウム蒸着薄膜を積層し、その上に水溶性高分子と、一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物を塗布し、加熱乾燥して被膜層を形成させ、実施例3のポリエチレンテフタレートフィルムとした。
【実施例4】
【0056】
第2の比較例として、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+2.85%、横方向
の200°C×10分加熱収縮率が−0.25%、縦方向の220°CのTMA収縮率が−2.7%、横方向の220°CのTMA収縮率が+1.7%の延伸された透明なポリエチレンテフタレートフィルム(11)を用いて、酸化硅素蒸着薄膜を積層し、その上に水溶性高分子と、一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物を塗布し、加熱乾燥して被膜層を形成させ、実施例4のポリエチレンテフタレートフィルムとした。
【0057】
出来上がった実施例と比較例となる4種類のポリエチレンレテフタレートフィルムの加熱収縮率とTMA収縮率を以下に述べる方法により測定した。その結果を表1に示す。
・加熱収縮率の測定方法 ‥ 100mm(MD)×100mm(TD)に切り取った各試料片を張力がかからない状態で200°Cの乾燥オーブンに10分間保管し、乾燥オーブンに入れる前に対して、乾燥オーブンから取り出した後のMD、TDそれぞれの収縮膨張率を測定した。
・TMA収縮率の測定方法 ‥ 5mm幅の短冊状に切り取った各試料片の両端をチャック幅200mm間隔で挟み、荷重が常に10グラムかかる状態で環境雰囲気が1分間で4°C上昇するように昇温し、220°Cに到達した時点の収縮膨張率を測定した。
【0058】
【表1】

《実験2》
実施例1と実施例3のポリエチレンテレフタレートフィルムには、真空蒸着法により酸化アルミニウムの蒸着薄膜を15nmの厚さに形成させて透明蒸着フィルムを作製した。また、実施例2と実施例4のポリエチレンテレフタレートフィルムには、真空蒸着法により酸化ケイ素の蒸着薄膜を15nmの厚さに形成させて透明蒸着フィルムを作製した。
【0059】
そのガスバリア性となる酸素透過度、水蒸気透過度ならびに蒸着薄膜塗工時の巻きジワの発生状況を以下の方法により測定、観察した。その結果を表2に示す。
【0060】
酸素透過度測定方法 ‥単位;cc/m2 /day/atm.
測定方法;MOCON法、25°C−65%RH.
水蒸気透過度透過度測定方法‥単位;g/m2 /day
測定方法;MOCON法、40°C−90%RH.
巻きジワ発生状況 ‥加工した巻き取りを目視観察
【0061】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の透明蒸着フィルムの一実施例を示す、断面で表した説明図である。
【図2】本発明の透明蒸着フィルムの別の実施例を示す、断面で表した説明図である。
【図3】本発明の透明蒸着フィルムのさらに別の実施例を示す、断面で表した説明図である。
【図4】本発明の透明蒸着フィルムのさらに別の実施例を示す、断面で表した説明図である。
【図5】本発明の透明蒸着フィルムのさらに別の実施例を示す、断面で表した説明図である。
【図6】本発明の透明蒸着フィルムにシーラント層を積層した包装材料の一実施例を示す、断面で表した説明図である。
【符号の説明】
【0063】
10‥‥透明蒸着フィルム
11‥‥プラスチックフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム
12‥‥蒸着薄膜
13‥‥被膜層
14‥‥透明プライマー層
15‥‥第2透明プライマー層
20‥‥印刷層
30‥‥包装材料
31‥‥シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸された透明なプラスチックフィルムの上に無機化合物の蒸着薄膜が形成された透明蒸着フィルムにおいて、
前記プラスチックフィルムは、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%、の熱収縮特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする、透明蒸着フィルム。
【請求項2】
延伸された透明なプラスチックフィルムの上に無機化合物の蒸着薄膜が形成された透明蒸着フィルムにおいて、
前記プラスチックフィルムは、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたことを特徴とする、透明蒸着フィルム。
【請求項3】
延伸された透明なプラスチックフィルムの上に無機化合物の蒸着薄膜が形成された透明蒸着フィルムにおいて、
前記プラスチックフィルムは、縦方向の200°C×10分加熱収縮率が+1.5%〜+2.5%、横方向の200°C×10分加熱収縮率が−0.5%〜+0.5%、の熱収縮特性を有すると共に、縦方向の220°CのTMA収縮率が−1.5%〜−3.0%、横方向の220°CのTMA収縮率が+3.0%〜+6.0%のTMA特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたことを特徴とする、透明蒸着フィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜が酸化アルミニウム蒸着膜又は酸化ケイ素蒸着膜であることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の透明蒸着フィルム。
【請求項5】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の上に水溶性高分子と、(a)一種以上の金属アルコキシドあるいはその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる被膜層が製膜されていることを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載の透明蒸着フィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の下に特定の3官能オルガノシロキサンあるいは前記オルガノシロキサンの加水分解物と、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との複合物となる透明プライマー層が製膜されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5記載の透明蒸着フィルム。
【請求項7】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成させる蒸着膜の下にポリエステル樹脂あるいは該樹脂と、(a)イソシアネート系樹脂、(b)エポキシ系樹脂、(c)メラミン系樹脂のうちから選ばれる1種以上の混合物からなる混入樹脂との混合物からなる第2透明プライマー層が製膜されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6記載の透明蒸着フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明蒸着フィルムに印刷加工が施された包装材料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明蒸着フィルムにラミネート加工が施された包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−123294(P2006−123294A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313503(P2004−313503)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】