説明

通信システム、移動機、着信制御方法

【課題】CSFBに対応した通信システムにおいて、無駄な信号のやりとりをすることなく、特定のCSサービスによるCS着信の拒否を可能とする通信システム、移動機、着信制御方法を提供する。
【解決手段】移動機10の着信可否判定部111は、CS着信があった時にNWから受信したページング信号に含まれるCSの通信サービス種別に基づいてCS着信の可否を判定する。着信可と判定された場合、CSFB処理部112は、着信許容を示すMT−TAメッセージを送信し、LTE−PS13にService Request(CSFB)をNWに向けて送信させる。着信不可と判定された場合、着信拒否部113は着信拒否を示すMT−TAメッセージを送信し、LTE−PS13にPagingに対するRejectメッセージをNWに向けて送信させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LTE(Long Term Evolution)におけるCS(Circuit Switched)呼の着信制御を行う通信システム、移動機、着信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の移動通信ネットワークにおいては、様々な種類の通信ネットワークを介して様々な種類の通信サービスが提供されている。例えば、回線交換網を介して音声通話、テレビ電話通信、SMS(Short Message Service)等が提供され、パケット交換網を介してインターネットサービス、電子メールサービス等が提供されている。
【0003】
パケット交換網と回線交換網との両方の通信網を連携させた通信サービス提供の技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1では、パケット通信中の移動機が回線交換網を利用できるように、サーバからの発呼により回線交換網における通信回線を確立する。しかしながら、当該回線交換網における通信回線を介して提供されるサービスが音声通話であるにもかかわらず、移動機が音声着信を受け付けることができない公共モードに設定されていたり音声通話をサポートしていない端末であったりする場合には、通信回線の確立は無駄になる。また、移動機への着信ができない場合に、当該移動機に対して発信側の電話番号や通信サービスの種類を含む着信通知を行う技術も存在し(例えば、特許文献2参照)、これにより、着信者は特定の相手から特定の種類のサービスによる着信があったことを知ることができる。
【0004】
さらに、近年では、LTE(Long Term Evolution)による通信サービスの提供が検討されているが、上記と同様の問題点があると考えられる。以下、その問題点について詳述する。LTEとは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)にて標準化が進められている次世代の通信規格であり、現在移動機の通信規格として広く使われているUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)と同じ周波数帯でデータ通信速度の高速化を実現することが可能である。LTEはPS(Packet Switched:パケット交換)呼のみをサポートするため、LTEの通信ネットワークにおいてCS(Circuit Switched:回線交換)呼を利用することができない。そこで、LTEの通信ネットワークにおいてCS呼を利用可能とするために、CSFB(Circuit Switched Fall Back)という技術が3GPPで標準化されている(例えば、非特許文献1参照)。本技術は、LTEの通信ネットワークに在圏中の移動機がCS呼の発着信を行う際に、UMTSやGSM(Global System for Mobile communications)、cdma1x(Code Division Multiple Access 1x)といったCS呼をサポートする既存のRAT(Radio Access Technology)に遷移して、発着信を行うというものである。以下、CS呼をサポートする既存のRATを総称して「Legacy RAT」ともいう。
【0005】
図5は、上記標準仕様に従ったLTEの通信ネットワークにおいてCS呼の着信を拒否する場合の手順を示すシーケンス図である。ここで、Legacy RATは、UMTS又はGSMであるものとする。
同図に示すMSC(Mobile Switching Centre)50と、RNS/BSS(Radio Network Subsystem/Base Station Subsystem)40と、MME(Mobility Management Entity)30と、eNB(Evolved Node B)20とは、通信ネットワーク(以下「NW」という)を構成するノードである。
【0006】
MSC50とRNS/BSS40とは、Legacy RATの通信ネットワーク(以下「Legacy NW」という)を構成するノードであり、MME30とeNB20とは、LTEのネットワーク(以下「LTE NW」という)を構成するノードである。
MSC50は、Legacy NWにおける移動機100の在圏場所等を管理し、移動機100の移動管理を制御するノードである。MME30は、LTE NWにおける移動機100の在圏場所等を管理し、移動機100の移動管理を制御するノードである。呼の着信があった場合は、MSC50又はMME30から着信先の移動機100を呼び出すためのページング信号(以下「Paging」ともいう)が送出される。また、RNS/BSS40はLegacy NWの無線ネットワーク制御局であり、eNB20はLTE NWの無線ネットワーク制御局である。NWを構成するこれらのノードは各々複数存在するが、図5においては各ノードを1つずつ示している。
【0007】
APL(Application)110は、移動機100が備える図示せぬCPU(Central Processing Unit)が、移動機100が備える図示せぬ不揮発性メモリに記憶されているアプリケーションソフトウェアに従って処理を実行することにより実現されるアプリケーション機能を示す。Legacy−PS(Protocol Stack)12は、同様にCPUが通信ソフトウェアであるプロトコルスタックに従って処理を実行することにより実現される機能であり、Legacy NWとの制御信号のやりとりを制御する。また、LTE−PS13は、同様にCPUが通信ソフトウェアであるプロトコルスタックに従って処理を実行することにより実現される機能であり、LTE NWとの制御信号のやりとりを制御する。
【0008】
MSC50にCS呼の着信(以下「CS着信」ともいう)があると、MSC50は、配下にある全てのRNS/BSS40に、着信ドメインがCSであることを示すCS domain indicatorを含むページング信号(以下、「Paging(CS)」という)を送信し、呼び出しをかけると共に(図5のステップS201)、隣接するMME30にもPaging(CS)を渡す(ステップS202)。MME30は、配下にある全てのeNB20にPaging(CS)を送信し、呼び出しをかける(ステップS203)。
【0009】
移動機100のLTE−PS13は、Paging(CS)をNWから受信し(ステップS204)、自分宛に呼び出しがかかっていると判断すると、CSFB Indicatorを含むService Requestというメッセージ(Service Request(CSFB))をNWに送信することにより、CSFBを行う旨をNWに伝える(ステップS205)。
これにより、CSFB処理が行われる(ステップS206)。具体的には、移動機100は、NWとの間で制御信号を授受することにより、Legacy RATへのハンドオーバ又はセルチェンジなどを行い、移動機100が在圏するRATをLegacy RATに遷移させる。なお、在圏RATの遷移方法は3GPPで標準化されている方法であればどのような方法であってもよい。RATの遷移が完了すると、Legacy−PS12はMSC50へPaging Responseを返す(ステップS207)。
【0010】
MSC50がPaging Responseを受けると、SETUPという着信通知メッセージを移動機100へ送信する(ステップS208)。SETUPには発信者番号が含まれる。
移動機100のAPL110はCS着信の可否を判定する(ステップS209)。ここで、移動機100が例えば公共モード等の特定のサービスのCS呼を利用しない設定にされている、ユビキタスモジュール(登録商標)等の特定のサービスのCS呼が利用できない端末である、あるいは発信者の電話番号を着信拒否するよう登録されているために、当該CS着信を受け付けることができないとAPL110が判断すると、Pagingに対するRejectメッセージを送信して、着信を拒否する(ステップS210)。なお、着信が許容される場合には、Pagingに対するRejectメッセージの代わりに、CALL COMFIRMEDが送信される。
【0011】
そして、移動機100のAPL110は、ステップS208において受信したSETUPに含まれる発信者番号を、不揮発性メモリに記憶されている着信履歴に追加する(ステップS211)。
ステップS210においてPagingに対するRejectメッセージが送信されることで着信拒否が完了するが、ステップS204における移動機100のページング信号受信からステップS210におけるPagingに対するRejectメッセージ送信までに、移動機100とNWとの間で多くの制御信号のやりとりが行われていることがわかる。
【特許文献1】特開2006−80693号公報
【特許文献2】特開2008−219402号公報
【非特許文献1】3GPP TS23.272 V8.1.0(2008−09) “7 Mobile Terminating Call”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、移動機100が特定のサービスのCS呼を利用できない設定にされている、あるいは、特定のサービスのCS呼をサポートしていない場合に、当該移動機100を着信先とした特定のサービスのCS着信があると、従来の標準仕様では、CSFB処理によりLegacy RATに切り替わった後にCS着信が拒否されるため、NWと移動機100との間に無駄な制御信号のやりとりが発生する。これにより、以下のような問題が発生することが懸念される。
【0013】
(1)無線リソースの浪費
(2)移動機100のパケット通信中に着信があった場合、CSFB処理中はパケット通信が中断されてしまうため、パケットの品質を落としてしまう。また、CSFB処理後はLTEからLegacy RATへ遷移する為、パケット通信速度が落ちてしまうことが懸念される。
(3)着信が連続的にあった場合、移動機100の電池消耗を早める。
【0014】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、CSFBに対応した通信システムにおいて、無駄な信号のやりとりをすることなく、特定のCSサービスによるCS着信を拒否することを可能とする通信システム、移動機、着信制御方法を提供することを目的とする。
また、無駄な信号のやりとりを減らしつつも、着信側の移動機への発信者番号の通知機能を保持することを可能とする通信システム、移動機、着信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の通信システムは、回線交換フォールバックに対応した通信システムにおいて、回線交換呼の着信があった場合に、該回線交換呼の通信サービス種別を含むページング信号を送信するノード装置と、前記ノード装置から送信されたページング信号に含まれる通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信先となる移動機への着信可否を判定する着信可否判定手段と、前記着信可否判定手段により着信可と判定された場合に回線交換フォールバック処理を行う回線交換フォールバック手段と、前記着信可否判定手段により着信不可と判定された場合には前記回線交換フォールバック処理を実行せずに前記回線交換呼の着信を拒否する着信拒否手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ページング信号に含まれる通信サービス種別により着信先となる移動機への回線交換呼の着信可否を判定し、着信可と判定された場合にのみ回線交換フォールバック処理を行い、着信不可と判定された場合には回線交換フォールバック処理を行わずに回線交換呼の着信を拒否するため、回線交換呼の着信を拒否する場合には、回線交換フォールバック処理のための信号のやりとりを行う必要がなくなる。したがって、無駄な信号のやりとりをすることなく、回線交換呼の着信を拒否することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の通信システムは、請求項1において、前記ノード装置は、前記回線交換呼の発信元を識別するための発信者番号をさらに含むページング信号を送信することにより、前記着信先となる移動機のユーザに前記発信者番号を提示可能とすることを特徴とする。
本発明によれば、ページング信号に発信者番号を含めることで、信号のやりとりを省いて着信を拒否したとしても、発信者番号を移動機に送信することができ、着信先となる移動機のユーザに発信者番号を提示することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の移動機は、回線交換フォールバックに対応した通信ネットワークを介して通信を行う移動機において、回線交換呼の着信があった時に前記通信ネットワークから受信したページング信号に含まれる前記回線交換呼の通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信可否を判定する着信可否判定手段と、前記着信可否判定手段により着信可と判定された場合に、回線交換フォールバック処理を要求するための信号を前記通信ネットワークに送信する回線交換フォールバック手段と、前記着信可否判定手段により着信不可と判定された場合に、前記回線交換フォールバック処理を行うことなく前記回線交換呼の着信を拒否するための信号を前記通信ネットワークに送信する着信拒否手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、移動機は、受信したページング信号に含まれる通信サービス種別により回線交換呼の着信可否を判定し、回線交換呼の着信が可と判定した場合に回線交換フォールバック処理を要求する信号を通信ネットワークに送信し、着信不可と判定した場合には回線交換フォールバック処理を行うことなく回線交換呼の着信を拒否する信号を通信ネットワークに送信するため、回線交換呼の着信を拒否する場合には、回線交換フォールバック処理のための信号のやりとりを行う必要がなくなる。したがって、無駄な信号のやりとりをすることなく、回線交換呼の着信を拒否することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の着信制御方法は、回線交換フォールバックに対応した通信システムが実行する着信制御方法において、回線交換呼の着信があった場合に、着信先となる移動機を呼び出すノード装置が、前記回線交換呼の通信サービス種別を含むページング信号を送信するページング信号送信ステップと、前記ページング信号送信ステップにおいて送信されたページング信号に含まれる通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信可否を判定する着信可否判定ステップと、前記着信可否判定ステップにおいて着信可と判定された場合には、回線交換フォールバック処理を行う回線交換フォールバックステップと、前記着信可否判定ステップにおいて着信不可と判定された場合には、前記回線交換フォールバック処理を行うことなく前記回線交換呼の着信を拒否する着信拒否ステップとを備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、ページング信号に含まれる通信サービス種別により着信先となる移動機への回線交換呼の着信可否を判定し、着信可と判定された場合にのみ回線交換フォールバック処理を行い、着信不可と判定された場合には回線交換フォールバック処理を行わずに回線交換呼の着信を拒否するため、回線交換呼の着信を拒否する場合には、回線交換フォールバック処理のための信号のやりとりを行う必要がなくなる。したがって、無駄な信号のやりとりをすることなく、回線交換呼の着信を拒否することが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の着信制御方法は、回線交換フォールバックに対応した通信ネットワークを介して通信を行う移動機が実行する着信制御方法において、回線交換呼の着信があった時に前記通信ネットワークから受信したページング信号に含まれる前記回線交換呼の通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信可否を判定する着信可否判定ステップと、前記着信可否判定ステップにおいて着信可と判定された場合に、回線交換フォールバック処理を要求するための信号を送信する回線交換フォールバックステップと、前記着信可否判定手段により着信不可と判定された場合に、前記回線交換フォールバック処理を行うことなく前記回線交換呼の着信を拒否するための信号を送信する着信拒否ステップとを備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、移動機は、受信したページング信号に含まれる通信サービス種別により回線交換呼の着信可否を判定し、回線交換呼の着信が可と判定した場合に回線交換フォールバック処理を要求する信号を通信ネットワークに送信し、着信不可と判定した場合には回線交換フォールバック処理を行うことなく回線交換呼の着信を拒否する信号を通信ネットワークに送信するため、回線交換呼の着信を拒否する場合には、回線交換フォールバック処理のための信号のやりとりを行う必要がなくなる。したがって、無駄な信号のやりとりをすることなく、回線交換呼の着信を拒否することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ページング信号に含まれる通信サービス種別により着信先となる移動機への回線交換呼の着信可否を判定し、着信可と判定された場合にのみ回線交換フォールバック処理を行い、着信不可と判定された場合には回線交換フォールバック処理を行わずに回線交換呼の着信を拒否するため、回線交換呼の着信を拒否する場合には、回線交換フォールバック処理のための信号のやりとりを行う必要がなくなる。したがって、無駄な信号のやりとりをすることなく、回線交換呼の着信を拒否することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等の構成要素は同一符号によって示されている。
(システム全体の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る通信システムの全体構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る通信システムは、移動機10と、LTE NWを構成するeNB20及びMME30と、Legacy NWを構成するRNS/BSS40及びMSC50と、を含んで構成される。Legacy RATは、UMTS又はGSMであるものとする。eNB20、MME30、RNS/BSS40は従来と同様の機能を有するノードである。すなわち、MME30は、LTE NWにおける移動機10の移動管理を制御するノードであり、RNS/BSS40はLegacy NWにおける無線ネットワーク制御局であり、eNB20はLTE NWにおける無線ネットワーク制御局である。
【0026】
MSC50は、Legacy NWにおける移動機10の移動管理を制御するノードである。MSC50は、CPU、記憶装置、通信インターフェース等を備えている。MSC50は、CS着信を受けると、従来のCS domain indicatorや着信先の識別番号に加えて、CSの通信サービス種別と、発信者番号と、を含むページング信号を生成し、当該生成したページング信号を送信して着信先の移動機10を呼び出す。
【0027】
ここで、CSの通信サービス種別には、AMR(Adaptive Multi-Rate:音声のコーデック)、AV(Audio/Visual:テレビ電話をはじめとした音声と映像のサービス)、LCS(LoCation Service:位置情報サービス)、SMS(Short Message Service:ショートメッセージサービス)等が存在する。
発信者番号は、IMSI(International Mobile Subscriber Identity:加入者識別子)であるが、発信者を識別できる番号であればよく、MSISDN(Mobile Station ISDN number definition:電話番号)であってもよい。
【0028】
(移動機の構成)
移動機10は、LTE NWを介した通信及びCSFBをサポートする端末であり、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、移動機10の各種通信機能やアプリケーション機能を実現するためのソフトウェアが記憶された不揮発性メモリ、無線アンテナ、液晶ディスプレイ、操作キー、スピーカ、マイクロホン等、一般的な移動機が備えるハードウェア構成を備えている。
【0029】
また、移動機10は、特定のCSのサービスを利用不可の状態に設定することが可能な端末である。例えば、ユーザが運転中や電車乗車中に移動機10を公共モードに設定した場合には、移動機10はAMRサービスが利用不可となり、音声着信を受け付けることができなくなる。
なお、移動機10は、設定により特定のCSサービスを利用不可とすることができる端末である他に、機種が対応していない、サービス契約に加入していない等により、特定のCSのサービスをサポートしていない端末であってもよい。
【0030】
次に、移動機10の機能構成について説明する。図2は、移動機10の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、移動機10は、APL11と、Legacy−PS12と、LTE−PS13とを含んで構成される。
APL11は、移動機10が備える図示せぬCPUが不揮発性メモリに記憶されているアプリケーションソフトウェアに従って処理を実行することにより実現されるアプリケーション機能を示す。
【0031】
Legacy−PS12は、同様にCPUが不揮発性メモリに記憶されている通信ソフトウェアであるプロトコルスタックに従って処理を実行することにより実現される機能であり、Legacy NWとの制御信号のやりとりを制御する。
LTE−PS13は、同様にCPUが不揮発性メモリに記憶されている通信ソフトウェアであるプロトコルスタックに従って処理を実行することにより実現される機能であり、LTE NWとの制御信号のやりとりを制御する。
【0032】
次に、APL11の機能構成について詳細に説明する。図2に示すように、APL11は、着信可否判定部111と、CSFB処理部112と、着信拒否部113と、発信者番号表示部114とを備えている。
着信可否判定部111は、発信端末からのCS着信により、MSC50からページング信号を受信した場合に、当該ページング信号に含まれるCSの通信サービス種別に基づいて、CS着信の可否を判定する。具体的には、着信可否判定部111は、ユーザの設定入力等により不揮発性メモリに記憶されている設定情報や管理情報を参照して、当該通信サービス種別で示されるサービスが、現在拒否設定がされているサービスかどうか、又は移動機10でサポートしているサービスかどうかを判断し、拒否設定されている又はサポートしていないサービスであれば、着信不可と判定する。
【0033】
CSFB処理部112は、着信可否判定部111がCS着信可と判定した場合に、着信許容を示すMT−TA(Mobile Termination-Terminal Adaptation Interface;アプリケーションとプロトコルスタック間でやりとりされるメッセージのインターフェース)メッセージをLTE−PS13に送信し、LTE−PS13にCSFB処理を要求するための信号をNWに向けて送信させる。これにより、移動機10とNWとの間でCSFB処理のための信号のやりとりが行われ、移動機10はハンドオーバ又はセルチェンジによりCSをサポートするLegacy RATに遷移し、CS着信を可能とする。
【0034】
着信拒否部113は、着信可否判定部111がCS着信不可と判定した場合に、着信拒否を示すMT−TAメッセージをLTE−PS13に送信し、LTE−PS13にPagingに対するRejectメッセージをNWに向けて送信させることにより、着信拒否を行う。
発信者番号提示部114は、CS呼の着信を拒否する場合に、MSC50から受信したページング信号に含まれる発信者番号を、移動機10のユーザに提示する。提示方法としては、ページング信号を受信した時点で、ページング信号に含まれる発信者番号を液晶ディスプレイに表示する、あるいは、当該発信者番号や着信時刻等を含む情報を着信履歴として不揮発性メモリに記憶することにより、移動機10のユーザが着信履歴を照会する操作をした時に発信者番号を液晶ディスプレイに表示する。あるいは、発信者番号を通知するための音声を、スピーカから出力することも考えられる。
【0035】
(着信拒否のシーケンス)
次に、図3に示すシーケンス図を参照して、移動機10が利用することができない特定のCSサービスによるCS着信があったときに、通信システムにおいて行われる着信制御の手順について説明する。
MSC50は、着信先を移動機10としたCS呼の着信を受けると、従来においてページング信号に含めていたCS domain indicatorに加えて、CSの通信サービス種別と、発信者番号と、を含むページング信号(図3中の「Paging(CS、CSの通信サービス種別、発信者番号)」)を生成する。そして、MSC50は、当該生成したページング信号を、従来と同様に、配下にある全てのRNS/BSS40に送信して移動機10の呼び出しをかけると共に、隣接するMME30にもページング信号を渡す。MME30は、配下にある全てのeNB20に当該ページング信号を送信して、移動機10の呼び出しをかける(ステップS101)。
【0036】
移動機10のLTE−PS13は、NWからページング信号を受信すると、自機10宛に呼び出しがかかっていると判断する。これにより、LTE−PS13は、自機10宛のページング信号を受信した旨とCSの通信サービス種別とを、MT−TAメッセージでAPL11に伝える。(ステップS102)。
APL11の着信可否判定部111は、CSの通信サービス種別で示される特定のサービスが移動機10で利用できるサービスかどうかを判断する(ステップS103)。ここでは、移動機10で利用できないサービスであるため、着信可否判定部111は着信不可と判断し、APL11の着信拒否部113は、着信拒否を示すMT−TAメッセージをLTE−PS13へ返す(ステップS104)。
【0037】
LTE−PS13は、着信拒否を示すMT−TAメッセージを受けると、CS呼を解放してCS着信を拒否するために、Pagingに対するRejectメッセージをNWに返す(ステップS105)。
また、APL11の発信者番号提示部114は、受信したページング信号に含まれていた発信者番号を、不揮発性メモリに記憶されている着信履歴に追加する(ステップS106)。
【0038】
以上のような手順で着信拒否を行うことにより、図5に示す従来のシーケンスにおいて、ステップS205のService Request(CSFB)送信からステップS208のSETUP送信までのシーケンスを省くことができる。また、従来においては、発信者番号はページング信号ではなくSETUPに含まれていたため、移動機10がSETUPを受信せずにページング信号を受信した時点で着信拒否をしてしまうと、発信者番号を着信履歴に残すことができない。これを防ぐために、上記手順においては、ページング信号の中に発信者番号を含めて呼び出しを行っているため、発信者番号を着信履歴に残すことが可能となる。
【0039】
(着信可のシーケンス)
次に、図4に示すシーケンス図を参照して、移動機10が利用することができるCSサービスによるCS着信があったときに、通信システムにおいて行われる着信制御の手順について説明する。
図4に示すステップS101及びステップS102における動作は、図3に示すステップS101及びステップS102における動作と同様である。
ステップS103においては、APL11の着信可否判定部111は、MT−TAメッセージに含まれるCSの通信サービス種別に基づいて、当該種別の通信サービスが移動機10で利用できるサービスかどうかを判断する(ステップS103)。ここでは、移動機10で利用できるサービスであるため、着信可否判定部111は、着信可と判断する。これにより、CSFB処理部112は、着信許容を示すMT−TAメッセージをLTE−PS13へ返す(ステップS107)。
【0040】
ステップS108〜ステップS111においては、図5に示すステップS205〜ステップS208での動作と同様に、CSFB処理、ページング応答、着信通知等が行われる。
ステップS112においては、移動機10は、CS着信を許容することを示すCALL COMFIRMEDをNWに返し、ステップS113においては、発信者番号提示部114は、発信者番号を着信履歴に追加する。
【0041】
以上説明したように、移動機10は、ページング信号に含まれるCSの通信サービス種別によりCS呼の着信可否を判定し、着信可と判定された場合にのみCSFB処理を行い、着信不可と判定された場合にはCSFB処理を行わずにCS着信を拒否する。このため、CS着信を拒否する場合には、CSFB処理のための多くの信号のやりとりをする必要がなくなる。したがって、移動機10とNWとの無駄な信号のやりとりをせずに、CS着信を拒否することが可能となり、リソースの浪費を防ぐことができる。また、移動機10のパケット通信中にCS着信が発生した場合、従来においては着信を拒否する場合にもCSFB処理を行うためCSFB処理中はパケット通信が中断されてしまうが、CSFB処理を行うことなく着信を拒否することができるため、無駄にパケットの品質を落とすことを防ぐこともできる。また、CS着信が連続で来るようなケースでは、CSFB処理のためのNWとの制御信号のやりとりやLegacy RATへの切替の動作を省いてCS着信を拒否することができるので、移動機10の電池の消耗量を減らすことができる。
【0042】
また、ページング信号に発信者番号を含めることで、信号のやりとりを削減してCS着信を拒否しても、発信者番号を移動機10に送信することができるため、移動機10のユーザに発信者番号を提示することが可能となる。
なお、上述した実施形態では、ページング信号に発信者番号を含めることで移動機10のユーザへの発信者番号の提示を可能としたが、これに限らず、ページング信号に発信者番号を含めずに、着信拒否した後にNWからSMSで移動機10に発信者番号を通知したり、着信拒否があったことだけをNWから移動機10に伝えて、後に移動機10のユーザがNWに発信者番号を問い合わせる方法も考えられる。
【0043】
また、上述した実施形態では、移動機10がCS着信の可否を判定するとして説明したが、これに限らず、NWを構成するノードが判定するようにしてもよい。また、LTEに限らず、CS呼をサポートしない通信ネットワークであって、CSFB処理に相当する処理を行うことによりCS呼のサポートが可能となる通信ネットワークに本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの全体構成を示す図である。
【図2】同実施形態に係る移動機の機能構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係る移動機が利用できない特定のCSサービスによるCS着信があった場合に通信システムにおいて行われる着信制御の手順を示すシーケンス図である。
【図4】同実施形態に係る移動機が利用できるCSサービスによるCS着信があった場合に通信システムにおいて行われる着信制御の手順を示すシーケンス図である。
【図5】従来の標準仕様に従ったLTEの通信ネットワークにおいて、CS着信を拒否する場合の手順を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0045】
10 移動機
111 着信可否判定部
112 CSFB処理部
113 着信拒否部
114 発信者番号提示部
20 eNB
30 MME
40 RNS/BSS
50 MSC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線交換フォールバックに対応した通信システムにおいて、
回線交換呼の着信があった場合に、該回線交換呼の通信サービス種別を含むページング信号を送信するノード装置と、
前記ノード装置から送信されたページング信号に含まれる通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信先となる移動機への着信可否を判定する着信可否判定手段と、
前記着信可否判定手段により着信可と判定された場合に回線交換フォールバック処理を行う回線交換フォールバック手段と、
前記着信可否判定手段により着信不可と判定された場合には前記回線交換フォールバック処理を実行せずに前記回線交換呼の着信を拒否する着信拒否手段と
を備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記ノード装置は、前記回線交換呼の発信元を識別するための発信者番号をさらに含むページング信号を送信することにより、前記着信先となる移動機のユーザに前記発信者番号を提示可能とすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
回線交換フォールバックに対応した通信ネットワークを介して通信を行う移動機において、
回線交換呼の着信があった時に前記通信ネットワークから受信したページング信号に含まれる前記回線交換呼の通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信可否を判定する着信可否判定手段と、
前記着信可否判定手段により着信可と判定された場合に、回線交換フォールバック処理を要求するための信号を前記通信ネットワークに送信する回線交換フォールバック手段と、
前記着信可否判定手段により着信不可と判定された場合に、前記回線交換フォールバック処理を行うことなく前記回線交換呼の着信を拒否するための信号を前記通信ネットワークに送信する着信拒否手段と
を備えたことを特徴とする移動機。
【請求項4】
回線交換フォールバックに対応した通信システムが実行する着信制御方法において、
回線交換呼の着信があった場合に、着信先となる移動機を呼び出すノード装置が、前記回線交換呼の通信サービス種別を含むページング信号を送信するページング信号送信ステップと、
前記ページング信号送信ステップにおいて送信されたページング信号に含まれる通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信可否を判定する着信可否判定ステップと、
前記着信可否判定ステップにおいて着信可と判定された場合には、回線交換フォールバック処理を行う回線交換フォールバックステップと、
前記着信可否判定ステップにおいて着信不可と判定された場合には、前記回線交換フォールバック処理を行うことなく前記回線交換呼の着信を拒否する着信拒否ステップと
を備えたことを特徴とする着信制御方法。
【請求項5】
回線交換フォールバックに対応した通信ネットワークを介して通信を行う移動機が実行する着信制御方法において、
回線交換呼の着信があった時に前記通信ネットワークから受信したページング信号に含まれる前記回線交換呼の通信サービス種別に基づいて、前記回線交換呼の着信可否を判定する着信可否判定ステップと、
前記着信可否判定ステップにおいて着信可と判定された場合に、回線交換フォールバック処理を要求するための信号を送信する回線交換フォールバックステップと、
前記着信可否判定手段により着信不可と判定された場合に、前記回線交換フォールバック処理を行うことなく前記回線交換呼の着信を拒否するための信号を送信する着信拒否ステップと
を備えたことを特徴とする着信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−154079(P2010−154079A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328236(P2008−328236)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】