説明

通信ルートの探索方法およびそれを用いる通信端末

【課題】ネットワークトポロジーが変化した際にトラフィックの増大を招くことなく短時間で代替の通信ルートを探索可能な通信ルートの探索方法および通信端末を提供する。
【解決手段】通信ネットワークは1台の親機Aと複数台の子機B0〜B4とで構成される。親機Aと子機B0との間では、親機A→子機B3→子機B0なる通信ルートが設定され、隣接端末間で通信信号を授受することによりマルチホップ通信を行うようになっている。ここで、親機Aと子機B3との間で通信に失敗したことを親機Aが検出すると、親機Aは、記憶部に記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機B3を経由する通信ルートを除いて親機Aから送信先の子機B0に至る通信ルートを、送信先の子機B0側から隣接端末を順番に辿って探索する処理を行い、探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチホップ通信を用いた通信端末における通信ルートの探索方法およびそれを用いる通信端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信網に接続された複数台の通信端末からなる通信ネットワークにおいて、通信端末間で通信信号を中継することで、自端末と直接通信できない端末との通信を行う方法が知られている(いわゆるマルチホップ通信)。
【0003】
また近年、電力線に接続された複数台の電気機器の間で、電力線を通信線とした電力線搬送通信(以下、PLC(Power Line Communication)と略す。)を行う電力線搬送通信ネットワーク(以下、PLCネットワークと言う。)が普及している。
【0004】
このようなPLCネットワークを利用し、集合住宅の各住戸に設置された電力量計に電力線搬送通信機能を付加するとともに、電気室にPLC親機を設置し、PLC親機が各住戸の電力量計(PLC子機)から検針データを取得して、取得した検針データをネットワークを通じて遠隔の検針サーバに送信するような遠隔検針システムが提案されている。また、集合住宅の電気室などに設置される幹線分岐盤に親機ユニットを設置するとともに、各住戸の住宅分電盤内に子機ユニットを設置して、親機ユニットと子機ユニットの間で分岐幹線を介して電力線搬送通信を行うことで、各住戸の電気使用量を監視、制御するシステムも提案されている。このシステムでは、子機ユニットから親機ユニットへ各住戸の電気使用量を送信させて、親機ユニットで各住戸の電気使用量と集合住宅全体の電気使用量とを同時に監視し、各住戸の電気使用量の合計が共用電気幹線の容量を超えそうな場合には、電気使用量の多い住戸の子機ユニットに親機ユニットが使用制限命令を送信し、子機ユニットが予め設定された家電製品を自動的に停止させて、集合住宅全体の電気使用量を制限するようにしている。PLCネットワークを利用したこれらのシステムでは、通信端末間の配線長が長く、また通信端末の接続台数も多くなるため、通信可能な距離にある通信端末が通信信号を中継することで、子機と親機との間で通信を行うマルチホップ通信が行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
ところで、上述した無線の通信ネットワークでは、ネットワーク内で端末が移動するため、ネットワークトポロジーが変化しやすい傾向があり、トポロジーの変化に対応して、各端末間の通信ルートを再構築する必要があった。またPLCネットワークにおいても、電力線を介して通信を行うために、電気機器から発生するノイズの影響により通信不可能な状態になる場合があり、また電気機器からの電源プラグを電源コンセントに抜き差しすることで、電気機器の電力線への接続状態が変化し、通話不可能になる電気機器が発生するため、ネットワークトポロジーが変化しやすいという特徴があり、トポロジーの変化に対応して、各端末間の通信ルートを再構築する必要があった。
【0006】
そこで、これらの通信ネットワークでは、所定時間が経過する毎に端末間で通信品質レベルの最も良い通信ルートを探索する必要があり、通信ルートを効率的に探索するためにダイクストラアルゴリズムと呼ばれるアルゴリズムが用いられていた(例えば非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−67557号公報
【非特許文献1】西丸泰之、佐藤文明;「QoSマルチキャスト配送木の構築方式」;情報処理学会研究報告 Vol.2003,No.34;社団法人 情報処理学会;2003年3月20日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通信ネットワークにおいて、何れかの通信端末が通信不能になった際、通信ルートを再構築するために、ダイクストラアルゴリズムを用いて通信ルートの探索を行う場合は、送信先の通信端末に至る通信ルートだけではなく、全ての端末について通信ルートの探索を行うため、代替の通信ルートを探索するのに時間がかかるという問題があった。またネットワークトポロジーの変化に対応してダイクストラアルゴリズムによりルート探索を行う際に、ネットワークトポロジーが変化する毎に現在のトポロジーの情報を取得する場合、端末間で他の端末に対して自端末の生存を通知する通信パケット(Hello Packet、以下、Hパケットと略す。)などの送受信を行って、端末間の通信品質レベルを示す通信コスト値を取得する処理を行うのであるが、ネットワークトポロジーが変化する毎にトポロジーの情報を取得しようとすると、Hパケットなどの送受信が頻繁に行われることになり、通信トラフィックが増大してしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ネットワークトポロジーが変化した際にトラフィックの増大を招くことなく短時間で代替の通信ルートを探索可能な通信ルートの探索方法および通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、通信ネットワークを構成する複数の通信端末の内の1台を親機、残りを子機とし、親機が、当該親機と各子機との間の通信ルート、および、各通信端末が直接通信可能な隣接端末に関するリンク情報を記憶した記憶部から、所望の子機への通信ルートを読み出し、当該通信ルートにしたがって隣接端末間で通信信号を授受することにより、親機と子機との間で通信を行う場合に、不通になった通信ルートの代替ルートを探索する通信ルートの探索方法であって、親機と何れかの子機との間の通信ルートが不通になると、親機が、記憶部に記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機を経由する通信ルートを除いて親機から送信先の子機に至る通信ルートを、送信先の子機側から隣接端末を順番に辿って探索するルート探索ステップと、探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択するルート選択ステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、親機が、当該親機との間で直接通信を行う子機との通信に失敗すると、親機が上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、通信ルートの途中の子機が下位側の子機との通信に失敗し、通信の失敗を報知する通信失敗メッセージを親機に送信すると、通信失敗メッセージを受信した親機が上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、何れかの子機が、隣接端末と通信不能になったことを検出し、通信不能を通知するメッセージを親機に送信すると、当該メッセージを受信した親機が、上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことにより、通信不能になった子機を経由する通信ルートの代替ルートを探索することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、通信ネットワークを構成する複数の通信端末の内の1台を親機、残りを子機とし、親機が、当該親機と各子機との間の通信ルート、および、各通信端末が直接通信可能な隣接端末に関するリンク情報を記憶した記憶部から、所望の子機への通信ルートを読み出し、当該通信ルートにしたがって隣接端末間で通信信号を授受することにより、親機と子機との間で通信を行う親機側の通信端末であって、親機と何れかの子機との間の通信ルートが不通になると、記憶部に記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機を経由する通信ルートを除いて親機から送信先の子機に至る通信ルートを、送信先の子機側から隣接端末を順番に辿って探索するルート探索手段と、探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択するルート選択手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、親機と何れかの子機との間の通信ルートが不通になると、記憶部に予め記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機を経由する通信ルートを除いて、親機から送信先の子機に至る通信ルートを、送信先の子機側から隣接端末を順番に辿って探索した後、探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択しているので、通信失敗時にダイクストラアルゴリズムなどの方法で通信ルートを探索する場合に比べて、代替ルートの探索にかかる時間が短い通信ルートの探索方法を提供することができる。また代替ルートを探索する際に、各通信端末間で通信パケットを送受信することによって、端末間の通信品質レベルを示す通信コスト値を取得する処理が不要になるから、通信トラフィックの増大を防止することもできる。
【0015】
請求項2の発明によれば、親機が、当該親機との間で直接通信を行う子機との通信に失敗すると、親機が上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことで、代替の通信ルートを探索することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、通信ルートの途中の子機から通信失敗メッセージを親機が受信した場合に、通信失敗メッセージを受信した親機が上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことで、代替の通信ルートを探索することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、何れかの子機で、隣接端末と通信不能になったことを検出すると、当該子機から送信された通知メッセージを受信した親機が上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことで、代替の通信ルートを探索することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、親機と何れかの子機との間の通信ルートが不通になると、ルート探索手段が、記憶部に記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機を経由する通信ルートを除いて、親機から送信先の子機に至る通信ルートを、送信先の子機側から隣接端末を順番に辿って探索した後、ルート選択手段が、ルート探索手段により探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択しているので、通信失敗時にルート探索手段がダイクストラアルゴリズムなどの方法で通信ルートを探索する場合に比べて、通信ルートの探索にかかる時間が短くて済む通信端末を提供することができる。また代替ルートを探索する際に、各通信端末間で通信パケットを送受信することによって、端末間の通信品質レベルを示す通信コスト値を取得する処理が不要になるから、通信トラフィックの増大を防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る通信ルートの探索方法を、電力線搬送通信により通信を行う通信ネットワークに適用した実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図6は電力線搬送通信ネットワーク(以下、PLCネットワークと略称す。)1の概略構成図である。このPLCネットワーク1は、例えば集合住宅のような建築物等で用いられ、複数の通信端末2を電力線Lに接続することにより構成され、複数台の通信端末2の内の1台を親機A、残りを子機Bn(n=1,2,3…)としている。
【0021】
このPLCネットワーク1では、親機Aおよび子機Bnが、通信可能な距離にある隣接端末2(親機A又は子機Bn)との間で所定の通信プロトコル(例えばSCP、エコーネット等)を用いて電力線搬送通信を行っており、親機Aが子機Bnから所定の情報を収集するとともに、子機Bnの遠隔監視が行われるものである。ここで、本ネットワーク1では、親機Aと各子機Bnとの間で直接又は間接に通信が行われ、親機Aと直接通信できない子機Bnは、通信可能な距離にある他の子機Bnに通信信号を順次中継することで、親機Aとの通信を行っている。
【0022】
図7は本実施形態に用いる通信端末2(親機A又は子機Bn)のブロック図である。本実施形態では親機Aと子機Bnとに同一の通信端末2を用いており、例えば何れかの通信端末2で、ジャンパースイッチや切替スイッチなどの設定手段(図示せず)を用いて親機側に設定することで親機Aとして機能させ、他の通信端末2では設定手段を用いて子機側に設定することで子機Bnとして機能させるようになっている。
【0023】
通信端末2は、記憶部3と、電力線搬送通信インターフェース部(以下、PLCインターフェース部と略す)4と、制御部5とを備える。記憶部3は、ROMなどの不揮発性のメモリや、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性のメモリや、RAMなどの揮発性メモリからなり、通信ルートや通信可能な隣接端末に関するリンク情報などを記憶するテーブル記憶部3aを備えると共に、この通信端末2を動作させるための制御プログラムなどの各種プログラムや、各プログラムの実行に必要な情報などを記憶する。
【0024】
テーブル記憶部3aはテーブル形式のデータを記憶する領域であり、本端末が親機Aの場合にはテーブル記憶部3aに、ネットワーク内で構築された端末間の全通信ルートを登録するための通信ルートデータテーブルや、各端末が直接通信可能な隣接端末の情報(リンク情報)を記録するためのトポロジーテーブルが記憶される。一方、本端末が子機Bnの場合にはテーブル記憶部3aに、当該子機Bnが通信可能な隣接端末2(親機Aまたは他の子機Bn)と、当該子機Bnと隣接端末2(親機Aまたは他の子機Bn)との間の通信品質レベルを示す通信コスト値(以下、リンクコストと言う。)と、隣接端末2を経由した当該子機Bnと親機Aとの間の通信品質レベルを示す通信コスト値(以下、ルートコストと言う。)とを表す通信可能端末データテーブルDを記憶する。
【0025】
表1は通信可能端末データテーブルDの一例を示し、このデータテーブルDには、自端末と直接通信が可能な隣接端末2(親機Aまたは他の子機Bn)に割り当てた端末IDと、隣接端末2の種別(親機Aまたは他の子機Bn)を示す端末種別データと、隣接端末2と自端末との間の通信品質レベルを示すリンクコストと、隣接端末2と親機Aとの間の通信品質レベルを示すルートコストと、隣接端末2から親機Aまでの通信ルートにおいて自機から1ホップ目、2ホップ目、…、Nホップ目の通信端末2を示す端末IDとが対応付けて記憶されている。なお、上記の通信コスト値(リンクコストおよぼルートコスト)は、隣接端末から受信した通信信号の受信信号強度を数段階のレベルで表したものであり、値が小さいほど、通信信号の減衰が小さく、通信品質レベルが高いことを示している。また、自端末から親機Aまでのルートコストは、自端末と隣接端末との間のリンクコストに、隣接端末と親機Aとの間の上位側ルートコストを加算した値になる。
【0026】
【表1】

【0027】
ここで、PLCネットワーク1では電力線Lを通じて通信を行うため、電力線Lに接続される他の家電機器が発生するノイズや、他の家電機器が接続されることによる電力線Lのインピーダンスの低下等により、伝送環境が悪化して、通信エラー率が増大する虞がある。またPLCネットワーク1の伝送環境は、家電機器の電源プラグを電源コンセントに抜き差したり、家電機器の可動状態に応じてダイナミックに変化する。そのため、PLCネットワーク1では、ネットワークトポロジーが固定的ではなく、容易に変化するという傾向があり、ネットワークトポロジーが変化しても、親機Aと子機Bnとの間で通信を良好に行えるように、親機Aと各子機Bnとの間の通信ルートを定期的に探索し、最適な通信ルートを構築する必要がある。
【0028】
すなわち通信端末2の制御部5は、例えば、マイクロプロセッサやその周辺回路等で構成され、親機Aと子機Bnとの間の通信ルートを探索するための処理を実行するために、通信処理部5aと、テーブル処理部5bと、ハロー・パケット送信タイマ部(以下、Hパケット送信タイマ部と略す)5cと、リンク通知パケット送信タイマ部5dとを備えている。
【0029】
通信処理部5aは、PLCインターフェース部4を用いて他の通信端末2との間で電力線搬送通信により通信信号を送受信し、後述の動作を行うことによって、親機Aと子機Bnとの間の通信ルートを構築する通信ルート構築処理(ルート探索処理およびルート選択処理からなる)を行う。図8(a)は通信端末2(親機Aおよび子機Bn)間で授受される通信パケットの基本フォーマットを示しており、送信元の通信端末2の送信端末IDと、受信側の通信端末2の受信端末IDと、メッセージタイプと、メッセージタイプに応じたデータ(メッセージ依存部)とで構成される。メッセージタイプとしては、自端末の生存や通信ルートを通知するためのハロー・パケット、隣接端末情報を親機に通知するためのリンク通知パケット、通常パケットを送信したときに中継途中で通信エラーが起こった場合に送信するルートエラーパケットなどがある。図8(b)はハロー・パケット(Hパケット)のパケットフォーマットを示し、送信端末IDと、受信端末IDと、メッセージタイプを示すデータ「Hello」と、送信元の端末タイプ(親機Aまたは子機Bnの種別)を示すデータと、自機から親機Aまでの通信ルートを示すデータとを少なくとも含み、リンクが喪失した端末が存在する場合はそのアドレスを示すリンク喪失端末アドレスを付加して構成される。また図8(c)はリンク通知パケットのパケットフォーマットを示し、送信端末IDと、受信端末IDと、メッセージタイプを示すデータ「リンク通知」と、自機から親機Aまでの通信ルートを示すルート情報と、直接通信可能な隣接端末に関する隣接端末情報とを少なくとも含み、リンクが喪失した端末が存在する場合はそのアドレスを示すリンク喪失端末アドレスを付加して構成される。また図8(d)はルートエラーパケットのパケットフォーマットを示し、送信端末IDと、受信端末IDと、メッセージタイプを示すデータ「ルートエラー」と、自機から親機Aまでの通信ルートを示すルート情報と、通信エラーが発生したエラー箇所を示す情報とを含んで構成される。
【0030】
また、テーブル処理部5bは、テーブル記憶部3aに記憶されているデータテーブル(通信ルートデータテーブル又は通信可能端末データテーブルDからなる)を管理する。
【0031】
Hパケット送信タイマ部5cは時間を計時する計時手段を有し、所定の送信時間が経過する毎に通信処理部5aにトリガ信号を与え、通信処理部5aからHパケットを送信させる。すなわち、Hパケットが所定の送信時間間隔で送信されることになる。
【0032】
またリンク通知パケット送信タイマ部5dも時間を計時する計時手段を有し、所定の送信時間が経過する毎に通信処理部5aにトリガ信号を与え、通信処理部5aからリンク通知パケットを送信させる。すなわち、リンク通知パケットが所定の送信時間間隔で送信されることになる。
【0033】
各通信端末2では、Hパケット送信タイマ部5cから通信処理部5aに送信タイミングの到来を示す信号が出力されると、通信処理部5aがHパケットを作成し、ブロードキャストで電力線Lに送信しており、Hパケットを受信可能な隣接端末との間の通信品質レベル(リンクコスト)や、隣接端末の上位ルートに関する情報を取得する。
【0034】
ここで、図1(a)に示す通信ネットワークにおいて通信ルートを構築する処理について以下に説明する。この通信ネットワークは1台の親機Aと複数台(例えば5台)の子機B0〜B4とで構成され、親機Aの端末IDを100、子機B0〜B4の端末IDをそれぞれ200〜204に設定してある。また図1(a)において実線でつながれた端末同士は直接通信可能な端末を示し、両端末間をつなぐ線の近傍に表示した数字は両端末間のリンクコストを示している。
【0035】
先ず親機Aにおいて、Hパケット送信タイマ部5cから通信処理部5aに送信タイミングの到来を示す信号が出力されると、通信処理部5aが上述のHパケットを作成し、ブロードキャストで電力線Lに送信する。この時、親機Aから送信されるHパケットは、送信端末IDが自機のID=100、受信端末IDがブロードキャスト、メッセージタイプが「Hello」、端末タイプが親機となる。
【0036】
子機B1,B2,B3の通信処理部5aは、親機Aから送信されたHパケットを受信することで、親機Aと直接通信が可能であることが分かり、また上記Hパケットの受信信号強度から親機Aとの間の通信品質レベル(リンクコスト)を算出することができる。そして、各子機B1,B2,B3の通信処理部5aでは、親機AからのHパケットを受信することで、親機と直接通信できることが判明したため、上述のHパケットを作成し、ブロードキャストで電力線Lに送信する。この時、子機B1から送信されるHパケットは、送信端末IDが自機のID=201、受信端末IDがブロードキャスト、メッセージタイプが「Hello」、端末タイプが子機、親機へのルートが子機B1(201)→親機A(100)で、そのルートコストが9となる。子機B2から送信されるHパケットは、送信端末IDが自機のID=202、受信端末IDがブロードキャスト、メッセージタイプが「Hello」、端末タイプが子機、親機へのルートが子機B2(202)→親機A(100)で、そのルートコストが9となる。また子機B3から送信されるHパケットは、送信端末IDが自機のID=202、受信端末IDがブロードキャスト、メッセージタイプが「Hello」、端末タイプが子機、親機へのルートが子機B3(203)→親機A(100)で、そのルートコストが9となる。
【0037】
子機B0の通信処理部5aでは、子機B1,B2,B3から送信されたHパケットを受信することにより、子機B1,B2,B3との間でそれぞれ直接通信が可能であることが分かり、また各子機からのHパケットの受信信号レベルに基づいて各子機との間のリンクコスト(子機B1間はリンクコストが15、子機B2間はリンクコストが12、子機B3間はリンクコストが9)を求める。この時、子機B0の通信処理部5aでは、自機と親機とをつなぐ通信ルートとして子機B1,B2,B3をそれぞれ経由した3つの通信ルートを発見でき、各通信ルートのルートコストは各ホップのリンクコストの総和になるので、子機B1を経由するルートコストは24、子機B2を経由するルートコストは21、子機B3を経由するルートコストは18であることが分かる。ここで、ルートコストは値が小さいほど通信品質レベルが良好であるので、子機B3を経由するルートコストが最も小さいことから、子機B0の通信処理部5aは、自機と親機Aとの間の通信ルートとして「子機B0→子機B3→親機A」との通信ルートを選択し、選択した通信ルートを通知するためのHパケットを作成し、ブロードキャストで送信する。なお、子機B0から送信されるHパケットは、送信端末IDが自機のID=200、受信端末IDがブロードキャスト、メッセージタイプが「Hello」、端末タイプが子機、親機へのルートが子機B0(200)→子機B3(203)→親機A(100)で、そのルートコストが18となる。
【0038】
また子機B4の通信処理部5aでは、子機B0,B2から送信されたHパケットを受信することにより、子機B0,B2との間でそれぞれ直接通信が可能であることが分かり、また各子機からのHパケットの受信信号レベルに基づいて子機B0,B2との間のリンクコスト(ともに10)を求める。この時、子機B2の通信処理部5aでは、自機と親機とをつなぐ通信ルートとして子機B0,B2をそれぞれ経由した2つの通信ルートを発見でき、各通信ルートのルートコストは各ホップのリンクコストの総和になるので、子機B0を経由するルートコストは28、子機B2を経由するルートコストは19であることが分かる。ここで、子機B2を経由するルートコストの方が小さいことから、子機B4の通信処理部5aは、自機と親機Aとの間の通信ルートとして「子機B4→子機B2→親機A」の通信ルートを選択し、選択した通信ルートを通知するためのHパケットを作成し、ブロードキャストで送信する。なお、子機B4から送信されるHパケットは、送信端末IDが自機のID=204、受信端末IDがブロードキャスト、メッセージタイプが「Hello」、端末タイプが子機、親機へのルートが子機B4(204)→子機B2(202)→親機A(100)で、そのルートコストが19となる。
【0039】
以上のようにして各子機B0〜B4では、親機Aとの間の通信ルートとして通信品質が低い通信ルートを選択でき、以後は選択された通信ルートを用いて親機Aとの間で通信を行う。また各子機Bnの通信処理部5aではHパケットを送受することで、直接通信可能な隣接端末の情報を取得でき、リンク通知パケット送信タイマ部5dからトリガ信号が与えられると、隣接端末に関するリンク情報をリンク通知パケットに格納して親機Aに送信する。
【0040】
例えば、子機B0がリンク通知パケットを送信する場合、そのリンク通知パケットは、送信端末IDが自機のID=200、受信端末IDが子機B3のID=203、メッセージタイプが「リンク通知」、親機へのルートが子機B0(200)→子機B3(203)→親機A(100)でそのルートコストが18、隣接端末情報が子機B1(ID=201、リンクコスト15)、子機B2(ID=202、リンクコスト12)、子機B3(ID=203、リンクコスト9)、子機B4(ID=204、リンクコスト10)となる。このリンク通知パケットを受信した子機B3の通信処理部5aでは、リンク通知パケットに含まれる親機へのルート情報を参照することにより、親機Aに中継すれば良いことが分かるので、子機B0から受信したリンク通知パケットをもとに、親機Aへ送信するリンク通知パケットを作成し、親機Aに送信する。ここで、子機B3が送信するリンク通知パケットは、送信端末IDが自機のID=203、受信端末IDが親機のID=100、メッセージタイプが「リンク通知」、親機へのルートが子機B0(200)→子機B3(203)→親機A(100)でそのルートコストが18、隣接端末情報が子機B1(ID=201、リンクコスト15)、子機B2(ID=202、リンクコスト12)、子機B3(ID=203、リンクコスト9)、子機B4(ID=204、リンクコスト10)となる。このリンク通知パケットを親機Aが受信すると、リンク通知パケットに含まれる親機へのルート情報から送信元が子機B0(200)であることが分かるので、子機B0間の通信ルートに関する情報を取得するとともに、上記パケットに含まれる隣接端末情報をもとに、表2に示すリンクテーブルを作成する。このリンク通知パケットは各子機Bnから一定の時間間隔で送信されるので、親機Aでは各子機Bnからのリンク通知パケットを受信することで、各子機Bnとの間の通信ルートや、各子機Bnの隣接端末情報を取得することができる。
【0041】
【表2】

【0042】
而して、親機Aの通信処理部5aでは、各子機Bnからのリンク通知パケットを受信することで、各子機Bnが直接通信可能な隣接端末のリンク情報を取得することができ、テーブル処理部5bを用いて各子機Bnの隣接端末に関するリンク情報をトポロジーテーブルに記憶させており、一定周期でダイクストラアルゴリズムにて各子機Bnへの通信ルートを計算し、その結果を通信ルートデータテーブルに反映させている。
【0043】
ところで、本実施形態のPLCネットワーク1では、電力線Lを介して通信を行うために、電気機器から発生するノイズの影響により通信不可能な状態になる場合があり、また電気機器からの電源プラグを電源コンセントに抜き差しすることで、電気機器の電力線への接続状態が変化し、通話不可能になる電気機器(通信端末2)が発生するため、ネットワークトポロジーが変化しやすいという特徴があり、トポロジーの変化に対応して、各端末間の通信ルートを再構築する必要がある。
【0044】
ここで、通信ルートが不通になった場合に通信ルートを再構築する通信ルートの構築方法について図1及び図2を参照して説明する。図1(a)に示すPLCネットワーク1において、親機Aから子機B0に至る通信ルートとして「親機A→子機B3→子機B0」という通信ルートが設定され、この通信ルートを用いて親機Aが子機B0に信号を送信しようとした場合に(ステップS1)、図1(b)に示すように親機Aと子機B3との間が通信不能になって、この間で通信に失敗すると、親機Aの通信処理部5a(通信失敗検出手段)は、子機B3との間の通信が行えないことから、通信に失敗したことを検出する(ステップS2)。
【0045】
親機Aの通信処理部5a(ルート探索手段)は、子機B3が通信不能になったことを検出すると、テーブル処理部5bを用いてトポロジーテーブルからリンク情報を読み出し、通信不能になった子機B3を経由する通信ルートを除いて、親機Aから送信先の子機B0に至る通信ルートを、送信先の子機B0側から隣接端末を順番に辿って探索するとともに、探索された代替ルートについて通信不能になったリンクが存在しないかを確認し、通信不能になったリンクを含む代替ルートは除外する(ルート探索ステップ)。すなわち親機Aの通信処理部5aは、送信先の子機と直接通信可能な端末をトポロジーテーブルから抽出しており(ステップS3)、ここでは子機B0を含むリンクとして子機B1,B2,B4が該当し、親機Aの通信処理部5aは、代替ルートの候補として「親機A→子機B1→子機B0」という通信ルートaと、「親機A→子機B2→子機B0」という通信ルートbとを抽出する。なお、本実施形態では代替ルートのホップ数の最大値が2に設定されており、子機B4を経由する通信ルート「親機A→子機B2→子機B4→子機B0」はホップ数が3となるから、子機B4を経由する通信ルートは除外される。最大ホップ数は各通信システムの仕様によって決定され、end-to-endの遅延が許容されるシステムでは最大ホップ数を大きい値に設定できるが、ホップ数が多くなると伝送遅延が大きくなるので、end-to-endの遅延が許容できない場合は最大ホップ数を小さい値に設定するのが好ましい。
【0046】
代替ルートの候補の探索を終えると、親機Aの通信処理部5a(ルート選択手段)は送信先の子機B0と直接通信可能な端末(リンク)が存在するか否かを判断し(ステップS4)、リンクが存在する場合は、代替ルートの候補のルートコストを求め、ルートコストの小さい方を代替ルートとして選択する(ステップS5)。ここで、子機B1を経由する通信ルートaのルートコストは15+9=24となり、子機B2を経由する通信ルートbのルートコストは12+9=21となるので、代替ルートとして「親機A→子機B2→子機B0」という通信ルートbが選択される。代替ルートが決定されると、親機Aの通信処理部5aは、テーブル処理部5bを用いて記憶部3に記憶された子機B0への通信ルートが書き換え、次のルート計算タイミングがくるまで、子機B0への通信ルートとして上記の代替ルートが使用される。なお、ルート探索ステップ(上記のステップS3,4)で、送信先の子機B0を含むリンクとして、通信不能になった子機B3以外のリンクが見つからなかった場合は、子機B0への通信ルートを消去するのではなく、ノイズなどの影響で一時的に喪失したものと判断して、元の通信ルートを登録しておく方が好ましい。
【0047】
ところで、図1に示す例では、親機Aと、当該親機Aとの間で直接通信を行う子機B3との通信に失敗した場合を例に説明を行ったが、子機B0への通信ルートとして「親機A→子機B3→子機B0」という通信ルートが設定され、この通信ルートを用いて親機Aが子機B0に信号を送信しようとした場合に、図3(b)に示すように子機B3と子機B0との間が通信不能になり、この間で通信に失敗した場合の代替ルート探索処理について図3及び図4を参照して以下に説明する。
【0048】
図3(a)に示すように親機Aから子機B0に至る通信ルートとして「親機A→子機B3→子機B0」という通信ルートが設定され、この通信ルートを用いて親機Aが子機B0に信号を送信しようとした場合に(ステップS11)、図3(b)に示すように子機B3と子機B0との間で通信に失敗した場合、子機B3から子機B0との間が通信不能になったことを示すルートエラーパケットが親機Aに送信され、このルートエラーパケットを受信することで親機Aの通信処理部5a(通信失敗検出手段)は通信に失敗したことを検知する(ステップS12)。
【0049】
親機Aの通信処理部5a(ルート探索手段)は、子機B3から送信されたルートエラーパケットに基づいて、子機B0との間が通信不能になったことを検出すると、テーブル処理部5bを用いてトポロジーテーブルTB1からリンク情報を読み出し、子機B0との間が通信不能になった子機B3を経由する通信ルートを除いて、親機Aから送信先の子機B0に至る通信ルートを、送信先の子機B0側から隣接端末を順番に辿って探索するとともに、探索された代替ルートについて通信不能になったリンクが存在しないかを確認し、通信不能になったリンクを含む代替ルートは除外する(ルート探索ステップ)。すなわち親機Aの通信処理部5aは、送信先の子機と直接通信可能な通信端末をトポロジーテーブルから抽出しており(ステップS13)、ここでは子機B0を含むリンクとして子機B1,B2,B4が該当し、親機Aの通信処理部5aは、代替ルートの候補として「親機A→子機B1→子機B0」という通信ルートaと、「親機A→子機B2→子機B0」という通信ルートbとを抽出する。なお、本実施形態では代替ルートのホップ数の最大値を2に設定してあり、子機B4を経由する通信ルート「親機A→子機B2→子機B4→子機B0」はホップ数が3となるから、この通信ルートは除外される。
【0050】
代替ルートの候補の探索を終えると、親機Aの通信処理部5a(ルート選択手段)は、送信先の子機Bnと直接通信が可能な端末(リンク)が存在するか否かを判断し(ステップS14)、リンクが存在する場合は代替ルートの候補のルートコストを求め、ルートコストの小さい方を代替ルートとして選択する(ステップS15)。ここで、子機B1を経由する通信ルートaのルートコストは15+9=24となり、子機B2を経由する通信ルートbのルートコストは12+9=21となるので、代替ルートとして「親機A→子機B2→子機B0」という通信ルートbが選択される。代替ルートが決定されると、親機Aの通信処理部5aは、テーブル処理部5bを用いて記憶部3に記憶された子機B0への通信ルートを書き換え(ステップS15)、次のルート計算タイミングがくるまで、子機B0への通信ルートとして上記の代替ルートが使用される。なお、ルート探索ステップで、送信先の子機B0を含むリンクとして、通信不能になった子機B3以外のリンクが見つからなかった場合は、子機B0への通信ルートは消去してしまうのではなく、ノイズなどの影響で一時的に喪失していると考え、元の通信ルートを登録しておく方が好ましい。
【0051】
このように本実施形態では、何れかの子機Bnで通信に失敗した場合、親機Aの記憶部3に予め記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機Bnを経由する通信ルートを除いて、親機から送信先の子機Bnに至る通信ルートを、送信先の子機Bn側から隣接端末を順番に辿って探索した後、探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択しているので、通信失敗時にダイクストラアルゴリズムなどの方法で通信ルートを探索する場合に比べて、代替ルートの探索にかかる時間が短い通信ルートの探索方法およびこの探索方法を用いた通信端末2を提供することができる。また代替ルートを探索する際には、各通信端末2間で通信パケットを送受信することによって、送信側および受信側の通信品質レベルを示す通信コスト値を取得する処理が不要になるから、通信トラフィックの増大を防止することもできる。
【0052】
また、図1および図3で説明した例では、親機Aと子機Bnとの間で通信を行う際に何れかの子機で通信に失敗すると、通信の失敗をトリガとして親機Aが代替ルートの探索を行っているが、親機Aと子機Bnとの通信時以外でも、各子機Bnが、隣接端末とのリンクが喪失したと判断すると、リンクが喪失したことを親機Aに通知して、親機Aにより代替ルートの探索を行わせるようにしても良い。この場合の通信ルートの構築方法を図5に基づいて説明する。
【0053】
各子機Bnでは一定の時間間隔でHパケットやリンク通知パケットを送信しており、リンクがつながっている隣接端末からのHパケットやリンク通知パケットを一定期間受信できなければ、この隣接端末とのリンクが喪失したものと見なし、当該端末がHパケットやリンク通知パケットを送信する際に、リンクが喪失したと見なした端末の端末IDをリンク喪失端末アドレスに格納したHパケットあるいはリンク通知パケットを送信する。親機Aの通信処理部5aでは、子機BnからHパケット或いはリンク通知パケットを受信した際に(ステップS21)、受信したHパケット或いはリンク通知パケットにリンク喪失端末アドレスが付加されているか否かを判断し(ステップS22)、リンク喪失端末アドレスが付加されている場合、当該リンク通知パケットの送信端末とリンク喪失端末アドレスに格納された端末IDとの間のリンク情報を削除するか、或いは、当該リンク情報のリンクコストを最大値に設定する。また親機Aの通信処理部5aでは、テーブル処理部5bを用いてトポロジーテーブルに記録されたリンク情報を変更(消去あるいはリンクコストの変更)すると、変更したリンク情報が通信ルートデータテーブルに記録された通信ルートに使用されているか否かを検索し、通信ルートに使用されている場合は、上述と同様に代替ルートの探索処理を行う。つまり親機Aの通信処理部5aは、トポロジーテーブルに記録されたリンク情報をもとに、送信先の子機Bnと直接通信可能な端末をトポロジーテーブルより検索することで(ステップS23)、通信不能になった子機Bn(リンク喪失端末アドレスに端末IDが格納された子機Bn)を経由する通信ルートを除いて、親機Aから送信先の子機Bnに至る通信ルートを、送信先の子機Bn側から隣接端末を順番に辿って探索するとともに、探索された代替ルートについて通信不能になったリンクが存在しないかを確認し、通信不能になったリンクを含む代替ルートは除外する。通信ルートの探索を終えると、親機Aの通信処理部5aは送信先の子機Bnと通信可能なリンクが存在するか否かを判断し(ステップS24)、リンクが存在する場合は、探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択する(ステップS25)。而して、トポロジーが変化する度にダイクストラアルゴリズムなどの方法で通信ルートを探索する場合に比べて、代替ルートの探索にかかる時間が短い通信ルートの探索方法およびこの探索方法を用いた通信端末2を提供することができる。また代替ルートを探索する際には、各通信端末2間で通信パケットを送受信することによって、送信側および受信側の通信品質レベルを示す通信コスト値を取得する処理が不要になるから、通信トラフィックの増大を防止することもできる。
【0054】
上述した構成例は、従来構成において説明したPLCネットワークに用いることを想定しているが、他の有線の伝送路を用いる通信ネットワーク、あるいは小電力無線による無線LANのように無線の伝送路を用いる無線ネットワークなど、種々のマルチホップ通信ネットワークに上述の技術を適用してもよい。
【0055】
さらにいえば、PLCネットワークには、10〜450kHzの低周波帯を利用する低速PLCと、2〜30MHzの高周波帯を利用する高速PLCとが知られており、低速PLCのノードは、高速PLCより伝送速度が遅いから、上述の構成のように低トラフィックでもネットワークトポロジを把握できることはとくに有効であり、また、通信ネットワーク全体のリンクを各ノードが持たなくとも隣接ノードテーブルがあればよいから、ノードに実装するメモリの容量を小さくすることができる。しかも、他の有線の伝送路を用いる場合に比較すると、PLCでは各ノードとなる電気機器のオン/オフや稼働状態によってネットワークトポロジや通信品質が変化しやすいから、本発明の技術は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)(b)は本発明に係る通信ルートの探索方法を説明する説明図である。
【図2】同上の探索方法を説明するフローチャートである。
【図3】(a)(b)は同上の探索方法の他の例を説明する説明図である。
【図4】同上の探索方法の他の例を説明するフローチャートである。
【図5】同上の探索方法のまた別の例を説明するフローチャートである。
【図6】同上を用いる通信ネットワークのシステム構成図である。
【図7】同上を用いる通信端末の概略ブロック図である。
【図8】(a)〜(d)は同上に用いるパケットフォーマットの説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 通信ネットワーク
2 通信端末
3 記憶部
4 PLCインターフェース部
5 制御部
5a 通信処理部(ルート探索手段、ルート選択手段)
5b テーブル処理部
5c Hパケット送信タイマ部
A 親機
B0〜B4 子機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを構成する複数の通信端末の内の1台を親機、残りを子機とし、親機が、当該親機と各子機との間の通信ルート、および、各通信端末が直接通信可能な隣接端末に関するリンク情報を記憶した記憶部から、所望の子機への通信ルートを読み出し、当該通信ルートにしたがって隣接端末間で通信信号を授受することにより、親機と子機との間で通信を行う場合に、不通になった通信ルートの代替ルートを探索する通信ルートの探索方法であって、
親機と何れかの子機との間の通信ルートが不通になると、親機が、記憶部に記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機を経由する通信ルートを除いて親機から送信先の子機に至る通信ルートを、送信先の子機側から隣接端末を順番に辿って探索するルート探索ステップと、
探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択するルート選択ステップとを備えることを特徴とする通信ルートの探索方法。
【請求項2】
親機が、当該親機との間で直接通信を行う子機との通信に失敗すると、親機が上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことを特徴とする請求項1記載の通信ルートの探索方法。
【請求項3】
通信ルートの途中の子機が下位側の子機との通信に失敗し、通信の失敗を報知する通信失敗メッセージを親機に送信すると、通信失敗メッセージを受信した親機が上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことを特徴とする請求項1記載の通信ルートの探索方法。
【請求項4】
何れかの子機が、隣接端末と通信不能になったことを検出し、通信不能を通知するメッセージを親機に送信すると、当該メッセージを受信した親機が、上記ルート探索ステップおよびルート選択ステップを行うことにより、通信不能になった子機を経由する通信ルートの代替ルートを探索することを特徴とする請求項1記載の通信ルートの探索方法。
【請求項5】
通信ネットワークを構成する複数の通信端末の内の1台を親機、残りを子機とし、親機が、当該親機と各子機との間の通信ルート、および、各通信端末が直接通信可能な隣接端末に関するリンク情報を記憶した記憶部から、所望の子機への通信ルートを読み出し、当該通信ルートにしたがって隣接端末間で通信信号を授受することにより、親機と子機との間で通信を行う親機側の通信端末であって、
親機と何れかの子機との間の通信ルートが不通になると、記憶部に記憶されたリンク情報をもとに、通信不能になった子機を経由する通信ルートを除いて親機から送信先の子機に至る通信ルートを、送信先の子機側から隣接端末を順番に辿って探索するルート探索手段と、
探索された1乃至複数の通信ルートから通信品質レベルの最も良い通信ルートを代替ルートとして選択するルート選択手段とを具備したことを特徴とする通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−301268(P2008−301268A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146012(P2007−146012)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】