説明

通信機器のユーザ認証システム

【課題】本発明の目的は、従来の課題を解決し、セキュリティ性が高く、汎用性があり、既存の通信機器への適用が容易であり、簡易な構造であるなどの特徴を備えた、実用性の高いセキュリティ性を有する通信機器のユーザ認証システムを提供することにある。
【解決手段】本発明は、通信機器の通信ポートに起動キーを挿着し、通信機器に電源を投入し、起動キーを認証するための認証データを、通信機器から起動キーに送信し、起動キーが認証データを加工した後に通信機器に返信し、通信機器が返信データの適否を判断し、返信データが正当であるときに、通信機器が動作を開始することを特徴とする通信機器のユーザ認証システムに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正当な使用者以外の者が通信機器を使用することを防止するのに有効な通信機器のユーザ認証システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信機器内に蓄積されたデータが盗用されたり、破壊されたりするのを防止するため、通信機器の起動時にパスワード等を入力するようにしたり、通信機器本体に錠を設置したり、通信機器本体を筐体に収容し施錠したり、USBポートに認証装置を装着すること等がおこなわれている。
【0003】
パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略)の本体に金具を付設して、南京錠で施錠するという方法は、具体的には、以下のような方法で行われる。ノート型パソコンの場合には、本体に金具を取り付け、南京錠でディスプレーと本体が開かないように固定する。デスクトップ型パソコン又はタワー型パソコンの場合には、パソコン本体に、CD−R、DVD、フロッピー(登録商標)ディスク及び光磁気ディスク等のディスクの挿入孔、及びUSBポートを覆う金具を取り付けて南京錠で固定する。(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0004】
USBポートを利用する個人の認証装置に関しては、指紋の形状によりユーザの認証を行う装置や、WINDOWS(登録商標)への自動ログオン・ログオフ、ファイルフォルダの暗号化、スクリーンセーバーのロック及びパスワードメモリ機能を搭載した装置が市販されている。(例えば、特許文献1、特許文献3、非特許文献3及び非特許文献4参照)
【0005】
特許文献2には、鎖錠装置を備えた筐体に、通信機器を収容し、かつ鎖錠装置と連動する着脱可能なメモリ装置を収容する部分を覆う蓋を備え、且つ電源レバーについてもロックできる通信機器が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−49913
【特許文献2】特開2002−351570
【特許文献3】特開2002−251226
【非特許文献1】“ノートパソコンを開けなくする、鍵付き金具”[online]、業株式会社オークヒル・テクノロジー、[平成18年4月14日検索]、インターネット<URL:http://www.ipros.jp/products/002822021/>
【非特許文献2】“パソコン媒体、CD−RWや、USB端子を、南京錠で、使用不可にする金具”[online]、株式会社オークヒル・テクノロジー、[平成18年4月14日検索]、インターネット<URL:http://www.ipros.jp/ipros/contents/products.do?bannerId=6&syouhinId=002822020>
【非特許文献3】“USB認証キー<FILSAFER KEY>(フィルセイファーキー)”[online][平成18年4月14日検索]、インターネット<URL:http://www.sapulife.com/cat01/sec/item/eamuk500.html>
【非特許文献4】“NEC指紋認証システム SecureFinder”[online]日本電気株式会社[平成18年6月1日検索]、インターネット<URL:http://www.sw.nec.co.jp/pid/product/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のセキュリティ装置では、セキュリティ装置の設置場所の確保、セキュリティ性及び導入コストの面で課題があった。
【0008】
南京錠により通信機器をロックする場合、通信機器の本体に南京錠及びその金具を設置するスペースを確保する必要があるし、南京錠の吊部分が、ケーブルカッターで切断されてしまう危険性があるし、また、南京錠でデスクトップ型の通信機器又はタワー型の通信機器をロックする場合、紙媒体へのデータの出力は可能であるなど、万全な通信機器の保護手段とは言い難い。
【0009】
パスワードを用いる個人認証の場合、パスワードは記憶によるものであるから、忘れやすく、利用者には不便な場合がある。また、操作を盗み見られて漏洩しやすい、あるいは辞書攻撃により破られやすいなどの課題がある。
【0010】
USBポートに装着する指紋又は認証のためのソフトウエアによる認証装置の場合、指紋による認証装置や認証ソフトウエアは高価であり、その導入コストは高価になるし、USBポートから抜き忘れたままコンピュータとともに盗まれ、認証情報の漏洩、または認証情報の破壊やコンピュータの分解により、認証機構をバイパスされ使用されてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
通信機器を、鎖錠装置を付設した筐体に収容するタイプのセキュリティ装置の場合、通信機器の大きさが、筐体に収容されるので大型化する。したがって、通信機器をオフィスに設置する上で、スペース的に制約を受ける。
【0012】
本発明の目的は、従来の課題を解決し、セキュリティ性が高く、汎用性があり、既存の通信機器への適用が容易であり、簡易な構造であるなどの特徴を備えた、実用性の高いセキュリティ性を有する通信機器のユーザ認証システムを提供することにある。
【0013】
詳細には、本発明は、通信機器の通信ポートに起動キーを挿着し、通信機器に電源を投入し、起動キーを認証するための認証データを通信機器から起動キーに送信し、起動キーが認証データを加工した後に通信機器に返信し、通信機器が返信データの適否を判断し、返信データが正当であるときに、通信機器が動作を開始することを特徴とする通信機器のユーザ認証システムに関するものである。
また、本発明の通信機器のユーザ認証システムは、起動キーが、符号反転回路を用いて認証データを加工することを特徴とする通信機器のユーザ認証システムである。なお、符号反転回路としては、例えば、この通信機器のデジタル出力(認証データ)の全ビットを反転する全ビット反転回路、あるいは通信機器のデジタル出力の最上位ビットを反転するMSB反転回路等の公知の符号反転回路等を使用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の通信機器のユーザ認証システムに関しては、以下の<1>〜<5>の従来の課題を解決できることから、本発明の通信機器のユーザ認証システムは、セキュリティ性が高く、汎用性があり、且つ安価であるので、工業的に実用的なユーザ認証システムである。
【0015】
<1> 通信機器の起動には、本発明の信機器のユーザ認証システムが必要とされる通信機器の場合、外見上、普通の通信機器と何ら変わるところがないので、不審者が、通信機器に電源を投入しても、パスワードの入力を求める表示が現れることもなく、それでいて通信機器が起動しないことから、その原因が故障なのか又はその他の原因なのかを察知することが困難であるため、セキュリティ性が高い。
【0016】
<2> ネットワークへの接続に使用されている通信ポートにおいて、ネットワークからのラインを一旦取り外す、起動キーを装着して通信機器を起動させ、その後、起動キーを取り外し、ネットワークのラインを再度接続するようにできるので、起動キーを取り外すことを忘れることもないので、不審者に持ち去られることもない。
【0017】
<3> たとえば、RS232C又は10BASE−Tといった通常の通信機器が備えている通信ポートならばいずれも、本発明の通信機器のユーザ認証システムは適用できるので、汎用性が高く、かつ特別にセキュリティ用の装置を設置するための場所を通信機器本体に確保する必要もないし、本発明の通信機器のユーザ認証システムの適用により、通信機器の筐体の大きさが変化しない。
【0018】
<4> 起動キーの符号反転回路としては、例えば、通信機器のデジタル出力(認証データ)の全ビットを反転する全ビット反転回路、あるいは通信機器のデジタル出力の最上位ビットを反転するMSB反転回路等の公知の符号反転回路が使用されているので、本発明に使用される起動キーは安価に供給されうる。
【0019】
<5> 起動キーは、ただ通信機器の通信ポートに差し込むだけで機能するので、パスワードの入力は不要であるなど通信機器の起動に従来のセキュリティ装置に必要とされる操作が不要であるため、ユーザの利便性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次の図面を参照して、下記に本発明の通信機器のユーザ認証システムに関する好適な一実施例について説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、この実施形態の通信機器8は、例えば、自家発電装置や各種電器機器の動作状況を監視し、LANやインターネットを介してリモート監視端末に提供するネットワーク対応型の環境監視装置、及びネットワークに接続されたパソコンが挙げられる。
【0022】
通信機器8の筐体7には通信機器8に電源を投入する電源スイッチ10と、RS232Cや10BASE−T等の通信ポート3とが設けられている。通信ポート3は、通信ケーブルのコネクタ(通信コネクタ)及び起動キー1により共用され、通信機器8の起動時には、通信ポート3に起動キー1が挿着され、通信機器8の起動後には、起動キー1が外され、代わりに通信ケーブルが接続される構成となっている。
【0023】
筐体7の内部には、外部機器との通信を制御する通信用コントローラ4と、これを含む通信機器8の全体を制御するCPU5と、ROM及びRAMを備えたメモリ6が設けられている。メモリ6には起動プログラムが格納され、電源の投入と同時に、CPU5が、起動プログラムを実行し、起動キー1にユーザ認証をするためのデータAを通信ポート3に送信する構成となっている。
【0024】
起動キー5は、接合部9により通信ポート3に挿着され、通信機器8から受信したユーザ認証データAを加工する符号反転回路2を備え、符号反転回路2で加工されたデータBを、通信ポート3を介して通信用コントローラ4、延いてはCPU5に返信する構成となっている。なお、この実施形態では、符号反転回路2には、この通信機器のデジタル出力(認証データ)の全ビットを反転する全ビット反転回路が用いられている。
【0025】
次に、図2に示した、本発明の通信機器のユーザ認証システムの稼動に関するフローチャートについて、説明する。
本発明の通信機器のユーザ認証システムの稼動は、まず、ユーザが、起動キー1を接合部9に挿着後、電源スイッチ10により電源を通信機器8に投入すると、CPU5が、起動プログラムに従い、通信機器8の各部のモジュールを初期設定し(S1)、所定の認証データA(例えば、「AAAAh」)を、起動キー1に通信コントローラ4を経由して送信することで開始される(S2)。
【0026】
ついで、起動キー1は、受信した認証データAを、符号反転回路2(例えば、全ビット反転回路)において加工し、加工済データB(例えば、「5555h」)を、通信コントローラ4を経由して、CPU5に送信する。
【0027】
ついで、CPU5において、返信された加工済データBの受信処理が実行された後(S3)、起動プログラムに指定された照合テーブルを用い、加工済みデータBが正当であるかを判断する(S4)。
【0028】
返信された加工済データBが適正である場合には、通信機器8が起動され(S5)、起動キー1を取り外し、通信用コネクタに差し替える。
【0029】
一方、返信された加工済データBが適正でない場合に、CPU5が、メモリ6を初期化し、通信機器8は起動されずに停止する(S6)。
【0030】
したがって、この実施形態のユーザ認証システムによれば、次のような作用効果を期待できる。
(a)通信機器8の起動には、起動キー1が必要であるため、正当なユーザ以外の第三者による通信機器8の不正使用を防止できる。
(b)起動キー1を通信機器8に通常設置されている通信ポート3を挿着するので、筐体に施錠専用のキー差込口や施錠用の金具を設けることが不要であり、通信機器8の大きさが肥大化されないし、既存の通信機器に導入しやすい。
【0031】
(c)通信機器8から認証データAを起動キー1に送信するので、起動キー1に認証データAを記憶するためのメモリやバッテリーが不要になり、軌道キー1を堅牢かつ安価に構成できる。
(d)起動キー1が加工済データBを通信機器8に返信するので、第三者による 交信情報の解読が困難になり、通信機器8について高度のセキュリティを保証できる。
【0032】
(e)起動キー1は、符号反転回路2を用いて、認証データAを加工するので、暗号化法を用いる場合に比べ、通信機器8の起動プログラム及び起動キー5の回路構成を共に簡略化でき、セキュリティを保証するためのコストを削減できる。
(f)パスワードを入力する従来のユーザ認証システムに比べ、パスワードの入力に伴うトラブルがなく、ユーザが、単に起動キー1を通信ポート3に挿着するだけでユーザ認証ができ、通信機器8の使用を素早く且つ簡単に開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の本質及び目的をより理解するために、図面を添付する。
【図1】本発明のユーザ認証システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明のユーザ認証システムの稼動に関するフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1: 起動キー
2: 符号反転回路
3: 通信ポート
4: 通信用コントローラ
5: CPU(中央制御装置)
6: メモリ
7: 筐体
8: 通信機器
10: 電源スイッチ
A: 認証データ
B: 加工済データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機器の通信ポートに起動キーを挿着し、通信機器に電源を投入し、起動キーを認証するための認証データを、通信機器から起動キーに送信し、起動キーが認証データを加工した後に通信機器に返信し、通信機器が返信データの適否を判断し、返信データが正当であるときに、通信機器が動作を開始することを特徴とする通信機器のユーザ認証システム。
【請求項2】
起動キーが、符号反転回路を用いて認証データを加工することを特徴とする請求項1記載の通信機器のユーザ認証システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−334807(P2007−334807A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168828(P2006−168828)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】