説明

通信機器及び絶縁耐圧試験方法

【課題】公衆回線網に接続される伝送ラインと機器のフレームとの間の絶縁耐圧試験を、これら両者間に接続されるサージ保護素子によるサージ保護性能を高いレベルに維持しつつ、より簡易的な構成で且つ低コストで実施できるようにする。
【解決手段】通信機器1内のプリント回路板10に、第1フレームグランド端子11と第2フレームグランド端子12が分離して形成されている。第1フレームグランド端子11と各伝送ライン5,6の間には各ガスアレスタ7,8が接続され、第2フレームグランド端子12と各伝送ライン5,6の間には各コンデンサC1,C2等が接続される。絶縁耐圧試験は、プリント回路板10単体で各伝送ライン5,6と第2フレームグランド端子12との間に試験用電圧を印加して行う。出荷時には、プリント回路板10をフレーム20にネジ締めして各フレームグランド端子11,12をフレーム20に接触・導通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公衆回線網を介して通信を行う通信機器、及びこの通信機器に対して行われる絶縁耐圧試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機やファクシミリ装置、CATV用のセットトップボックスなどの各種通信機器は、対応する外部の公衆回線網と接続され、公衆回線網を介して通信を行う。このような通信機器では、落雷などによって外部から混入する過大な電気エネルギー(サージ)から機器内部を保護するために、通常、公衆回線網に接続される伝送ラインと機器のフレーム(以下「フレームグランド」ともいう)との間にガスアレスタ等のサージ保護素子が接続される。また、フレームグランドには、サージ保護素子の他にも、例えば、放射ノイズや静電気等の対策用のコンデンサが伝送ラインとの間に接続されたり、公衆回線網から絶縁された各種素子・回路等が接続されたりするのが一般的である。
【0003】
なお、上述した各種素子・回路等とフレームグランドとを接続する構成例として、伝送ラインを含む各種素子・回路等が搭載されたプリント回路板にフレームグランド接続用の端子を設け、このプリント回路板をフレームに固定することによってフレームグランド接続用の端子をフレームグランドに接触(導通)させる構成が知られている。
【0004】
落雷等によるサージから機器内部を効果的に保護するためには、サージ保護素子の放電開始電圧は低い方がよい。放電開始電圧の低いサージ保護素子を用いることで、早い段階で(高い電圧に上昇する前に)サージ保護素子を反応(放電)させ、機器内部をサージから保護することができる。
【0005】
一方、このような通信機器では、製品として市場に出荷される前に、一定の絶縁耐力を有していることを保障すべく、絶縁耐圧試験が行われる。具体的には、伝送ラインとフレームグランドとの間に所定の試験用電圧(例えば1.5kV)を所定時間(例えば1分間)印加し、その間の電気的特性(例えば漏れ電流等)を計測・評価する。
【0006】
上述の通り、サージからの保護性能を高めるためには、放電開始電圧の低いサージ保護素子を用いるのが良い。しかし、サージからの保護性能を高めるために低い放電開始電圧(例えば1kV)のサージ保護素子を用いると、絶縁耐圧試験時にサージ保護素子が放電してしまい、絶縁耐力の評価ができなくなってしまう。つまり、サージ保護性能の向上と絶縁耐圧試験の適正な実施とがトレードオフとなってしまう。
【0007】
このような問題を避けるために、例えば、プリント回路板において半田付けにて取り付けられたサージ保護素子を一旦取り外してから絶縁耐圧試験を行い、試験完了後に再びサージ保護素子を半田付けにて取り付けるという方法が考えられる。しかし、このような試験方法では、試験工数が増大し、コスト高を招くのは勿論、製品の品質に対しても悪影響を及ぼす。
【0008】
これに対し、例えば特許文献1には、絶縁耐圧試験を簡易に行うべく、AC入力からサージ保護素子を介してフレームグランドに至る経路中に、この経路を導通・遮断するための捜抜容易なコネクタを設ける技術が記載されている。この技術によれば、絶縁耐圧試験時にはコネクタを抜いて上記経路を遮断して試験を行い、試験完了後は再びコネクタを挿入して上記経路を導通させることにより、絶縁耐圧試験の作業工数低減が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−253695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、サージからの保護性能を高いレベルに維持しつつ絶縁耐圧試験を確実に行うために、本来必要ではないコネクタを別途設ける必要がある。そのため、機器の複雑化や大型化、コストアップといった問題を招いてしまう。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、公衆回線網に接続される伝送ラインと機器のフレームとの間の絶縁耐圧試験を、これら両者間に接続されるサージ保護素子によるサージ保護性能を高いレベルに維持しつつ、より簡易的な構成で且つ低コストで実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の通信機器は、導体からなるフレームと、公衆回線網と接続されて該公衆回線網との間で信号を送受する伝送ライン、及び該伝送ラインから絶縁されたフレームグランド端子部を有し、伝送ラインとフレームグランド端子部との間にサージ保護素子を含む複数の素子が接続されていると共に該両者間が一定の絶縁耐力を有するように構成されたプリント回路板と、を備え、このプリント回路板がフレームに固定されることによりフレームグランド端子部がフレームに接触するよう構成されたものである。
【0013】
そして、フレームグランド端子部は、プリント回路板に形成された複数の導体パターンのうちサージ保護素子が接続される第1導体パターンの端部に形成された少なくとも1つの第1ランドと、プリント回路板における第1ランドが形成された面と同じ面において、第1ランドと電気的に絶縁され、上記複数の導体パターンのうちサージ保護素子とは別の素子が接続される第2導体パターンの端部に形成された少なくとも1つの第2ランドと、を備え、プリント回路板がフレームに固定されることにより、各ランドの双方がフレームに直接又は間接的に接触して各ランドとフレームとが導通するように構成されている。
【0014】
上記のように構成された本発明の通信機器では、プリント回路板において、フレームグランド端子部が、例えば共通の1つのランドにて構成されているのではなく、互いに絶縁された2種類のランド(少なくとも1つの第1ランドと、少なくとも1つの第2ランド)に分離して構成されている。
【0015】
これら第1ランド及び第2ランドは、プリント回路板単体では互いに絶縁されているが、通信機器としてこのプリント回路板がフレームに固定されると、第1ランド及び第2ランドの双方が共にフレームと接触・導通し、各ランド相互間もフレームを介して導通する。このような構成により、絶縁耐圧試験は、プリント回路板単体で、即ち第1ランドと第2ランドが絶縁された状態で、伝送ラインと第2ランドとの間に試験用電圧を印加すること等によって実施することができる。
【0016】
つまり、絶縁耐圧試験時にサージ保護素子が放電しないよう、プリント回路板単体としては、フレームグランド端子部をサージ保護素子が接続される第1ランドとそれ以外の第2ランドに分離し、絶縁耐圧試験は伝送ラインと第2ランドとの間で行うのである。
【0017】
そのため、伝送ラインと第1ランドとの間に接続されるサージ保護素子としては、絶縁耐圧試験時の印加電圧にかかわらず、放電開始電圧が低くてサージ保護性能の高いものを適宜選定することができる。そして、絶縁耐圧試験の完了後は、プリント回路板をフレームに固定するだけで、上記の通り各ランドとフレームとの導通が図れる。
【0018】
従って、本発明の通信機器によれば、フレームグランド端子部を、サージ保護素子が接続される第1ランドとそれ以外の素子が接続される第2ランドとに分離するという、ごく簡易的な構成によって、サージからの保護性能を高いレベルで維持しつつ絶縁耐圧試験を確実に実施することが可能となる。しかも、そのようなごく簡易的な構成により、機器のコストアップや試験工数(試験コスト)の増大を抑えることも可能となる。
【0019】
また、上記課題を解決するためになされた本発明の絶縁耐圧試験方法は、上述した本発明の通信機器の絶縁耐力を試験する方法であって、少なくとも、各ランドが互いに絶縁された状態で、伝送ラインと第2ランドとの間に予め設定された値の電圧を印加する電圧印加ステップと、この電圧印加ステップによって電圧が印加されている間の、伝送ラインと第2ランドの間の電気的特性を計測する計測ステップと、を備えたものである。
【0020】
従って、本発明の絶縁耐圧試験方法によれば、試験用の上記電圧の印加が、伝送ラインと第2ランドとの間に対して行われるため、通信機器内のサージ保護素子が放電開始電圧の低いもの(サージからの保護性能が高いもの)であっても、試験実施時にこのサージ保護素子が放電してしまうのを防止することができる。つまり、サージ保護素子の放電を抑えつつ、絶縁耐力を試験するために必要な電圧を印加して確実に試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の通信機器の概略構成を表す構成図である。
【図2】第1実施形態の通信機器における、NCU基板が固定されたフレーム(但しネジ締めが完全に行われていない状態)を表す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】第1実施形態の通信機器における、NCU基板が固定されたフレーム(但しネジ締めが完全に行われていない状態)を表す側面図である。
【図4】ネジによってNCU基板をフレームに固定することを説明するための説明図(斜視図)である。
【図5】第1実施形態のNCU基板における、各フレームグランド端子の位置・形状を説明するための説明図であり、(a)は裏面側の平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図6】NCU基板における、フレームグランド端子を形成可能な領域を説明するための説明図である。
【図7】第2実施形態のNCU基板における、各フレームグランド端子の位置・形状を説明するための説明図である。
【図8】第3実施形態のNCU基板における、各フレームグランド端子の位置・形状を説明するための説明図であり、(a)は裏面側の平面図、(b)は裏面側から表面を透視した透視図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)通信機器の構成
図1に示すように、本実施形態の通信機器1は、公衆回線網の1つであるPSTN(Public Switched Telephone Network :公衆交換電話網)と接続されてこのPSTNを介して音声信号やファクシミリ信号等の各種信号を送受するよう構成されたものであり、当該通信機器1をPSTNに接続するための図示しないコネクタが接続される外線用モジュラージャック(MJ)2と、この外線用MJ2を介して送受される各種信号が伝送される2本の伝送ライン5,6と、この2本の伝送ライン5,6における外線用MJ2とは反対側の端部に接続された通信インタフェース(I/F)4と、を備えている。
【0023】
通信I/F4は、具体的には、例えば外部のPSTNと当該通信機器1を接続するインタフェースとしての半導体化DAA(半導体化データアクセスアレンジメント;SDAA)や、ファクシミリ通信用のモデムなどが挙げられる。
【0024】
なお、通信機器1には、音声信号やファクシミリ信号等の処理を含む通信動作全般を制御する制御部やユーザインタフェースなどの各種回路、ユニット等も搭載されているが、図1ではそれらについての図示を省略している。
【0025】
また、外線用MJ2及び2本の伝送ライン5,6は、後述する2つのガスアレスタ7,8、2つのコンデンサC1,C2、及び2つのフレームグランド端子11,12と共に、1つのプリント回路板10として構成されている。このプリント回路板10には、後述するように外付け用の電話機を接続するための外付け電話用MJ3(図2参照)も設けられているが、図1では図示を省略している。なお、このプリント回路板10は、当該通信機器1におけるNCU(Network Control Unit:網制御装置)を構成するものであるため、以下の説明ではNCU基板と称す。
【0026】
NCU基板10には、当該通信機器1のフレーム20(即ちフレームグランド)に接触・導通されるフレームグランド端子部が、2つに分離して形成されている。具体的には、第1フレームグランド端子11と、第2フレームグランド端子12とに分離形成されている。
【0027】
そして、一方の伝送ライン5と第1フレームグランド端子11との間にガスアレスタ7が接続され、他方の伝送ライン6と第1フレームグランド端子11との間にもガスアレスタ8が接続されている。
【0028】
これら各ガスアレスタ7,8は、落雷によって混入してくるサージから通信機器1内部を保護するためのサージ保護素子である。本実施形態では、雷耐力を向上させるため、即ちサージに対する保護性能を高めるために、各ガスアレスタ7,8としていずれも放電開始電圧の低いもの(例えば1kVで放電開始するもの)が用いられている。そのため、サージが混入してもそれをいち早く各ガスアレスタ7,8にて放電させてフレームグランドへ逃がすことができ、機器内部をサージから効果的に保護することができる。
【0029】
また、一方の伝送ライン5と第2フレームグランド端子12との間には、コンデンサC1が接続され、他方の伝送ライン6と第2フレームグランド端子12との間にも、コンデンサC2が接続されている。これら各コンデンサC1,C2は、放射ノイズや静電気等に対する対策用として設けられている。
【0030】
なお、第2フレームグランド端子12には、上記の各コンデンサC1,C2の他にも、図示は省略したものの、例えば各伝送ライン5,6の何れか一方(又は双方)に挿入されたリレー接点を開閉するためのリレーコイルの一端や、各伝送ライン5,6と機器内部とを絶縁するために各伝送ライン5,6の一端に設けられたトランスの二次側巻線の一端なども接続される。
【0031】
そして、各伝送ライン5,6と各フレームグランド端子11,12との間は、一定の絶縁耐力を有するように構成されている。
各フレームグランド端子11,12は、NCU基板10単体では互いに絶縁された状態となっているが、通信機器1が製品として出荷される際には、このNCU基板10がフレーム20にネジ締めにより固定され、これにより各フレームグランド端子11,12の双方がフレーム20に(詳しくは後述する端子接触片25に)接触・導通する。フレーム20は、例えば鉄板などの導体板が加工されてなるものである。そのため、サージ混入時には、そのサージを各ガスアレスタ7,8を介してフレーム20(フレームグランド)に逃がすことができる。
【0032】
また、通信機器1を市場に出荷するためには、各伝送ライン5,6とフレームグランドとの間に一定の絶縁耐力があることを確認するための絶縁耐圧試験を行う必要があるが、本実施形態では、後述するように、絶縁耐圧試験は、NCU基板10がフレーム20に固定されていない、NCU基板10単体の状態で行われ、且つ、2つのフレームグランド端子11,12のうち第2フレームグランド端子12と各伝送ライン5,6との間に試験用電圧を印加することにより行われる。
【0033】
次に、フレーム20へのNCU基板10の固定について、図2〜図4を用いて説明する。なお、図2及び図3はいずれも、フレーム20にNCU基板10が載置・固定された状態(但しネジ31が完全には締められていない状態)を示しており、図2(a)は正面図、図2(b)は平面図、図3は側面図である。
【0034】
図2及び図3に示すように、フレーム20は、主として、鉄板が折り曲げ形成されてなるフレーム本体21と、このフレーム本体21の端縁(詳しくは第3開口24の端縁)から屈曲して突出するように形成された端子接触片25と、を備えている。
【0035】
フレーム本体21における正面側の板面には、第1開口22、第2開口23、及び第3開口24が形成されている。このうち第1開口22は、NCU基板10がフレーム20に固定されたときに外付け電話用MJ3の先端がこの第1開口22から突出するように形成され、第2開口23は、NCU基板10がフレーム20に固定されたときに外線用MJ2の先端がこの第2開口23から突出するように形成されている。
【0036】
端子接触片25は、第3開口24の端縁から、この第3開口24が形成された板面に対して直角に屈曲されてその板面から突出するように形成されており、その先端は円弧状の形状となっている。また、端子接触片25には、NCU基板10をフレーム20にネジ締めにて固定する際にネジ31が挿通されるフレーム側締結穴26が形成されている。
【0037】
NCU基板10は、その一方の面である表面側に、各MJ2,3や各ガスアレスタ7,8、各コンデンサC1,C2等の部品・素子が搭載され、他方の面である裏面側に、銅箔からなる導体パターン及び各フレームグランド端子11,12が形成されている。また、NCU基板10には、当該NCU基板10をフレーム20にネジ締めにて固定する際にネジ31が挿通される基板側締結穴32が形成されている。
【0038】
このような構成により、NCU基板10をフレーム20に固定する際には、NCU基板10における基板側締結穴32とフレーム20におけるフレーム側締結穴26とが重なるように、NCU基板10をフレーム20内における端子接触片25の上面側に載置する。この状態で、図4に示すように、各締結穴32,26にネジ31を挿通することにより、NCU基板10がフレーム20に締結・固定される。
【0039】
そして、NCU基板10がフレーム20に固定されると、NCU基板10の裏面に形成された第1フレームグランド端子11及び第2フレームグランド端子12が、フレーム20における端子接触片25に接触し、これにより各フレームグランド端子11,12の双方がフレーム20と導通することとなる。
【0040】
なお、各フレームグランド端子11,12はいずれも、NCU基板10の裏面における導体パターンの端部に形成されたランドに半田が付着形成されてなるものであるが、その詳細構成については後で詳述する。
【0041】
(2)フレームグランド端子部(各フレームグランド端子11,12)の詳細構成
次に、フレームグランド端子部としての各フレームグランド端子11,12の詳細構成について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、NCU基板10の裏面における、各フレームグランド端子11,12が形成されている部分を示しており、図5(a)は裏面から見た平面図、図5(b)はそのB−B断面図である。
【0042】
図5に示すように、NCU基板10は、紙フェノールやガラスエポキシ等からなる基材19の裏面に銅箔からなる導体パターンが形成された構成となっており、導体パターンとして、各ガスアレスタ7,8の一端が接続される第1フレームグランドパターン13と、各コンデンサC1,C2の一端が接続される第2フレームグランドパターン14が形成されている。各フレームグランドパターン13,14の先端はいずれも、図示のように円弧形状となっている。
【0043】
また、NCU基板10の裏面には、半田付け工程(本実施形態ではフロー法)の際に不要な部分への半田付着を防ぐためのソルダレジスト15が施されている。このソルダレジスト15には、半田付けが必要な部分には適宜レジスト開口が形成されており、そのレジスト開口として少なくとも、第1レジスト開口15a及び第2レジスト開口15bが形成されている(図5(b)参照)。
【0044】
第1レジスト開口15aは、第1フレームグランドパターン13の端部に形成された円弧状の導体パターンにおける内部領域(円弧形状の領域)が露出するように、円弧形状のレジスト開口として形成されている。第1フレームグランドパターン13の端部のうち、この円弧状の第1レジスト開口15aから露出している部分は、円弧状の第1ランド13aとして、半田付け工程の際に半田が付着形成される。
【0045】
そのため、この第1ランド13aには、半田付け工程により円弧形状の第1半田16が付着形成されることとなる。そして、第1ランド13a及びこれに付着形成される第1半田16により、第1フレームグランド端子11が構成される。つまり、第1フレームグランド端子11がフレーム20の端子接触片25に接触・導通するということは、詳しくは、第1半田16が端子接触片25に接触し、これによりこの第1半田16を介して端子接触片25と第1ランド13aとが導通し、延いてはフレーム20と第1フレームグランドパターン13が導通するということである。
【0046】
一方、第2レジスト開口15bも、第1レジスト開口15aと同じように、第2フレームグランドパターン14の端部に形成された円弧状の導体パターンにおける内部領域(円弧形状の領域)が露出するように、円弧形状のレジスト開口として形成されている。第2フレームグランドパターン14の端部のうち、この円弧状の第2レジスト開口15bから露出している部分は、円弧状の第2ランド14aとして、半田付け工程の際に半田が付着形成される。
【0047】
そのため、この第2ランド14aには、半田付け工程により円弧形状の第2半田17が付着形成されることとなる。そして、第2ランド14a及びこれに付着形成される第2半田17により、第2フレームグランド端子12が構成される。つまり、第2フレームグランド端子12がフレーム20の端子接触片25に接触・導通するということは、詳しくは、第2半田17が端子接触片25に接触し、これによりこの第2半田17を介して端子接触片25と第2ランド14aとが導通し、延いてはフレーム20と第2フレームグランドパターン14が導通するということである。
【0048】
次に、各フレームグランド端子11,12の形状や相対的な位置関係について、より具体的に説明する。なお、以下の説明で、各フレームグランド端子11,12について「形状」というときは、対応する各ランド13a,14aの形状及び対応する各レジスト開口15a,15bの形状をも示しているものとする。また、各フレームグランド端子11,12について「位置」というときも、対応する各ランド13a,14aの位置及び対応する各レジスト開口15a,15bの位置をも示しているものとする。
【0049】
図5(a)に示すように、各フレームグランド端子11,12は、基板側締結穴32の中心を通る境界線34に対して線対称となるような形状及び位置にて形成されている。境界線34は、NCU基板10の板面に平行であって、且つ、端子接触片25の突出方向に平行な直線である。
【0050】
ここで、本実施形態における各フレームグランドパターン13,14や各フレームグランド端子11,12の形成条件について、図6も併用して説明する。本実施形態では、各フレームグランド端子11,12や各フレームグランドパターン13,14の形成条件として、次のa〜eの事項が設定されている。
【0051】
a.各フレームグランド端子11,12は、境界線34に対して線対称の位置関係となるように形成すること。
b.各フレームグランド端子11,12は、NCU基板10をフレーム20に固定したときに端子接触片25の板面が対向する領域である端子接触片対向領域25aの内部に形成すること。
【0052】
c.各フレームグランド端子11,12は、基板側締結穴32の中心からの距離が所定距離未満の範囲であるランド形成不可領域51(図6参照)を除く位置に形成すること。つまり基板側締結穴32の中心から所定距離以上離れた位置に形成すること。
【0053】
d.各フレームグランド端子11,12の数は、それぞれ、1個又は2個とすること。
e.第1フレームグランドパターン13と第2フレームグランドパターン14の距離である導体距離Dを、所定の離間距離以上とすること。
【0054】
このうちaについては、各フレームグランド端子11,12相互間の絶縁を確実に図り、且つ、両者を共に確実に端子接触片25に接触させるようにするためである。なお、必ずしも形状まで線対称となるように形成する必要はないが、端子接触片25への安定した接触のためには、各フレームグランド端子11,12の形状についても線対称となるように形成するとよい。本実施形態の各フレームグランド端子11,12は、図5(a)から明らかなように、形状までも線対称となるように形成されている。
【0055】
また、境界線34は、端子接触片25の突出方向と平行な直線であるが、これは、次の理由による。即ち、端子接触片25は、フレーム20のフレーム本体21に対して90度の角度で屈曲された構成となっているが、この屈曲角度は、実際には必ずしも正確に90度にできるとは限らず、90度よりも若干小さい角度になったり、或いは90度よりも若干大きい角度になったりする可能性もある。
【0056】
そして、屈曲角度が90度とは異なる角度であると、NCU基板10をフレーム20に固定すべく所定位置に載置したときに、NCU基板10の板面と端子接触片25の板面とが平行とはならず、これによって各フレームグランド11,12の双方を端子接触片25に接触させることが困難となってしまう可能性がある。
【0057】
そこで、そのように屈曲角度が正確に90度にならなかった場合であっても各フレームグランド端子11,12が共に確実に端子接触片25に接触するように、端子接触片25の突出方向(屈曲角度が90度である場合に端子接触片25がフレーム本体21の正面側の板面から突出する方向)に平行な直線を境界線34として、この境界線34に対して線対称の位置関係となるように各フレームグランド端子11,12を形成しているのである。
【0058】
また、bについては、各フレームグランド端子11,12を共に端子接触片25に接触させる必要があることから、必然的な条件といえる。
また、cについては、各フレームグランド端子11,12を構成する各半田16,17の形状に差異があっても両者が共に確実に端子接触片25に接触するようにするためである。各半田16,17の付着形成は、必ずしも均一な量、形状、高さ(裏面からその板面に垂直な方向の高さ)となるように行われるとは限らず、両者間でバラツキが生じるおそれがある。そのため、仮に、基板側締結穴32の中心のすぐ近くに各フレームグランド端子11,12を形成した場合に、一方のフレームグランド端子の半田が他方の半田よりも高く形成されていると、ネジ31によってNCU基板10を端子接触片25に締結していくと、その高く形成された一方の半田が先に端子接触片25に当接し、その後さらにネジ31を締め続けても、他方の半田は端子接触片25に当接しないおそれがある。
【0059】
そこで、各フレームグランド端子11,12を基板側締結穴32の中心から所定距離以上離す(つまり遠い位置に形成する)ようにすれば、仮に一方の半田が高くてその半田が先に端子接触片25に当接しても、更にネジ31を締め続けることで、他方の半田も端子接触片25に接近していってやがて当接させることができる。
【0060】
なお、上記a〜cの3つの条件をまとめると、要するに、図6に示すように、第1フレームグランド端子11については第1ランド形成可能領域52内に形成すればよく、第2フレームグランド端子12については第2ランド形成可能領域53内に形成すればよい、ということになる。
【0061】
また、dについては、各フレームグランド端子11,12を簡易的に形成するためであり、また、各フレームグランド端子11,12を共に確実に端子接触片25に接触させるためでもある。仮に、第1フレームグランド端子11が3つ以上形成されているとすると、これら3つによって面が形成されてしまい、これら3つの第1フレームグランド端子11に端子接触片25が先に接触すると、他方の第2フレームグランド端子12が端子接触片25に接触しないおそれがある。
【0062】
そこで、各フレームグランド端子11,12を共に確実に端子接触片25に接触させるためには、より好ましくは、各フレームグランド端子11,12をそれぞれ1個又は2個とする(つまり3個以上とはしない)のがよい。
【0063】
但し、実際には、境界線34の片側にフレームグランド端子が3個以上形成された場合であって、その片側の3個以上のフレームグランド端子が先に端子接触片25にが当接したとしても、そこから更にネジ31を締め続ければ、他方側のフレームグランド端子も端子接触片25に当接させることは可能である。つまり、更にネジ31を締め続けることで、その締結力によって、片側の3個以上のフレームグランド端子のうち基板側締結穴32に近い端子を支点として、遠い端子は端子接触片25から徐々に浮き上がり、逆に境界線34の他方側のフレームグランド端子は端子接触片25に近づいて行ってやがて接触する。
【0064】
そのため、上記dの条件は、より好ましくはそのようにするのが良いのだが、必ずしも、境界線34の片側にフレームグランド端子を3個以上形成することを避けなければならないというわけではない。
【0065】
eについては、絶縁耐圧試験時に第1フレームグランドパターン13と第2フレームグランドパターン14との間で放電が起こらないようにするためである。本実施形態では、後述するように絶縁耐圧試験において各伝送ライン5,6と第2フレームグランド端子12との間に1.5kVの電圧を印加するため、その際に各フレームグランドパターン13,14間で放電が起こらないよう、導体距離Dが2mm以上に設定されている。
【0066】
そして、上記の各条件a〜eを満たしつつ、本実施形態では、各フレームグランド端子11,12をいずれも円弧形状に形成している。上述の通り、各フレームグランド端子11,12はそれぞれ、各ランド形成可能領域52,53内(図6参照)であればどのような位置、形状に形成してもよいが、より好ましくは、基板側締結穴32の中心を中心とする円周方向に沿うように、しかも、基板側締結穴の中心を中心とする円の径方向の幅が小さくなるように形成するのがよい。そのため、本実施形態では円弧形状としている。
【0067】
(3)絶縁耐圧試験
次に、本実施形態の通信機器1に対して行われる絶縁耐圧試験について、概略説明する。本実施形態の絶縁耐圧試験は、NCU基板10がフレーム20から取り外された、NCU基板10単体の状態で(つまり各フレームグランド端子11,12が互いに絶縁された状態で)行われる。
【0068】
NCU基板10単体の状態において、まず、各伝送ライン5,6を短絡させた上で、これら各伝送ライン5,6と第2フレームグランド端子12との間に、所定の試験用電圧(本例では1.5kV)を所定時間(本例では1分)印加する。そして、その印加している間の、各伝送ライン5,6と第2フレームグランド端子12との間の電気的特性(例えば漏れ電流など)を計測し、その計測結果に基づいて絶縁耐力を評価する。
【0069】
絶縁耐圧試験の完了後は、NCU基板10がフレーム20に固定され、各フレームグランド11,12が共にフレーム20に導通した状態となって、市場に出荷されることとなる。なお、各伝送ライン5,6を短絡させるのは必須ではなく、各伝送ライン5,6の各々について個別に第2フレームグランド端子12との絶縁耐力を試験するようにしてもよい。
【0070】
(4)第1実施形態の効果等
以上説明した本実施形態の通信機器1によれば、NCU基板10においてフレーム20と接触・導通されるフレームグランド端子部を、各ガスアレスタ7,8が接続される第1フレームグランド端子11とそれ以外の素子(各コンデンサC1,C2等)が接続される第2フレームグランド端子12とに分離するという、ごく簡易的な構成によって、サージからの保護性能を高いレベルで維持しつつ絶縁耐圧試験を確実に実施することが可能となる。 即ち、サージ保護性能の向上と絶縁耐圧試験の適正な実施とのトレードオフを考慮する必要がなくなり、放電開始電圧の低いガスアレスタ(即ちサージ保護性能の高いガスアレスタ)を使用しても絶縁耐圧試験への影響をなくすことができる。しかも、そのようなごく簡易的な構成により、通信機器1のコストアップや絶縁耐圧試験の試験工数(試験コスト)の増大を抑えることも可能となる。
【0071】
また、一本のネジ31によってNCU基板10をフレーム20に締結するという簡易な構成ながら、NCU基板10のフレーム20への固定と、NCU基板10の各フレームグランド端子11,12の双方とフレーム20の端子接触片25との接触・導通が、共に良好に実現される。
【0072】
また、各フレームグランド端子11,12は、基板側締結穴32の中心から所定距離以上離れた位置に形成されているため、仮に、一方のフレームグランド端子の半田が他方の半田よりも高く形成されていてその一方の半田が先に端子接触片25に当接しても、その後さらにネジ31を締め続けることで、他方の半田も端子接触片25に接近していってやがて確実に当接させることができる。
【0073】
また、各フレームグランド端子11,12は、基板側締結穴32の中心を通る境界線34を境界とする2つの領域にそれぞれ分離形成されるため、両者を共に確実に端子接触片25に接触させることができる。また、各フレームグランド端子11,12の距離を離すことができ、絶縁耐圧試験時に両端子間で放電が起こるのを防ぐことができる。
【0074】
しかも、境界線34は、端子接触片25の突出方向と平行な直線であり、この境界線34に対して線対称の位置関係となるように各フレームグランド端子11,12が形成されている。そのため、端子接触片25の屈曲角度が正確に90度になっていなくても、各フレームグランド端子11,12を共に確実に端子接触片25に接触させることができる。
【0075】
また、各フレームグランド端子11,12は、それぞれ1つずつ円弧形状に形成されている。そのため、各フレームグランド端子11,12の形成を簡易的且つ低コストで行うことができる。また、幅の細い円弧形状であるため、全体に渡って基板側締結穴32からの距離を離すことができ、双方共に端子接触片25に確実に接触させることができる。
【0076】
また、各フレームグランド端子11,12は、位置だけでなくその形状(円弧形状)も境界線34に対して線対称となるように形成されている。そのため、各フレームグランド端子11,12の配置・形状のバランスがとれ、より確実に両者を共に端子接触片25に接触させることができる。
【0077】
なお、本実施形態において、第1フレームグランドパターン13は本発明の第1導体パターンに相当し、第2フレームグランドパターン14は本発明の第2導体パターンに相当し、ネジ31は本発明の締結具に相当し、基板側締結穴32及びフレーム側締結穴26はいずれも本発明の挿通孔に相当する。
【0078】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のNCU基板について、図7を用いて説明する。図7示す本実施形態のNCU基板40は、各フレームグランド端子の形状及びその近傍の導体パターンの形状を除けば、第1実施形態のNCU基板10と同じである。そのため、第1実施形態のNCU基板10と同じ構成には第1実施形態と同じ符号を付している。
【0079】
図7に示す本実施形態のNCU基板40は、各ガスアレスタ7,8が接続される第1フレームグランドパターン43の先端側が二股に分かれ、それぞれの先端に円形の第1フレームグランド端子41,42が形成されている。各コンデンサC1,C2が接続される第2フレームグランドパターン48も同様であり、その先端側が二股に分かれ、それぞれの先端に円形の第2フレームグランド端子46,47が形成されている。
【0080】
2つの第1フレームグランド端子41,42及び2つの第2フレームグランド端子46,47は、いずれも、第1実施形態で説明した5つの形成条件a〜eを満たすように形成されている。即ち、2つの第1フレームグランド端子41,42は、図6に示した第1ランド形成可能領域52内に形成され、2つの第2フレームグランド端子46,47は、図6に示した第2ランド形成可能領域53内に形成されており、両者は境界線34に対して線対称となるように形成されている。
【0081】
更に、本実施形態のNCU基板40では、各フレームグランド端子41,42,46,47が、基板側締結穴32の中心を中心とする円の円周方向に沿うように形成されている。つまり、各フレームグランド端子41,42,46,47はいずれも、基板側締結穴32の中心から等距離の位置に形成されている。しかも、各ガスアレスタ7,8に接続される2つの第1フレームグランド端子41,42は、境界線34と平行な方向に沿って並ぶように形成され、各コンデンサC1,C2に接続される2つの第2フレームグランド端子46,47も、境界線34と平行な方向に沿って並ぶように形成されている。
【0082】
従って、本実施形態のNCU基板40は、ガスアレスタ7,8側の2つの第1フレームグランド端子41,42及び各コンデンサC1,C2側の2つの第2フレームグランド端子46,47として、それぞれ2つずつ形成されているため、いずれか一方のフレームグランド端子によって面が形成されてしまうのを防ぐことができ、各フレームグランド端子46,47を共に確実に端子接触片25に接触させることができる。
【0083】
また、各フレームグランド端子46,47はそれぞれ2つずつ形成されているため、その2つのうち最低でも1つが端子接触片25に接触すればよい(勿論、好ましいのは2つ共に接触することであるが)。そのため、双方1つずつ形成する場合に比べて、より信頼性の高いNCU基板40を提供することができる。
【0084】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のNCU基板について、図8を用いて説明する。図8(a)は、本実施形態のNCU基板60の裏面側の平面図であり、図8(b)は、NCU基板60の裏面側から表面を透視した透視図、即ち表面の導体パターンや部品配置を裏面側から透視した場合の図である。
【0085】
図8に示す本実施形態のNCU基板60は、その裏面に、2つの伝送ライン5,6のうち一方の伝送ライン5としての第1伝送パターン61及び第2伝送パターン62と、他方の伝送ライン6としての第3伝送パターン63及び第4伝送パターン64が形成されている。また、同じく裏面には、各ガスアレスタ7,8が接続される第1主フレームグランドパターン65及び第1副フレームグランドパターン66と、各コンデンサC1,C2が接続される第2フレームグランドパターン67が形成されている。
【0086】
NCU基板60の表面には、裏面側における第1伝送パターン61と第2伝送パターン62を導通させるための第1交差接続パターン68が形成されている。この表面側の第1交差接続パターン68と、裏面側の第1伝送パターン61及び第2伝送パターン62とは、基板内層に設けられたバイア等によって互いに導通されており、これにより、第1伝送パターン61と第2伝送パターン62は、第3伝送パターン63との干渉を避けつつ、これと交差するように形成された第1交差接続パターン68を介して導通される。
【0087】
また同じように、基板60の表面には、裏面側における第3伝送パターン63と第4伝送パターン64を導通させるための第2交差接続パターン69が形成されている。第3伝送パターン63と第4伝送パターン64は、第2伝送パターン62との干渉を避けつつ、これと交差するように形成された第2交差接続パターン69を介して導通される。
【0088】
更に同じように、基板60の表面には、裏面側における第1主フレームグランドパターン65と第1副フレームグランドパターン66を導通させるための第3交差接続パターン70が形成されている。第1主フレームグランドパターン65と第1副フレームグランドパターン66は、第2フレームグランドパターン67との干渉を避けつつ、これと交差するように形成された第3交差接続パターン70を介して互いに導通される。
【0089】
また、第1伝送パターン61には、ガスアレスタ7の一方の端子が挿入されるスルーホール71が形成されており、第2伝送パターン62には、コンデンサC2の一方の端子が挿入されるスルーホール77が形成されており、第3伝送パターン63には、ガスアレスタ8の一方の端子が挿入されるスルーホール73及びコンデンサC1の一方の端子が挿入されるスルーホール75が形成されており、第1主フレームグランドパターン65には、各ガスアレスタ7,8の他方の端子が挿入される2つのスルーホール72,74が形成されており、第2フレームグランドパターン67には、各コンデンサC1,C2の他方の端子が挿入される2つのスルーホール76,78が形成されている。
【0090】
なお、本実施形態の各ガスアレスタ7,8及び各コンデンサC1,C2は、いずれも挿入実装部品であって、NCU基板60の表面に配置され、各々の端子が対応するスルーホールに挿入されて裏面側で半田付けされる。
【0091】
そして、ネジ31が挿通される基板側締結穴32の周囲には、フレーム20の端子接触片25と接触・導通されるフレームグランド端子として、各ガスアレスタ7,8に接続される2つの第1フレームグランド端子81,82と、各コンデンサC1,C2に接続される2つの第2フレームグランド端子83,84の、計4つのフレームグランド端子が形成されている。
【0092】
即ち、2つの第1フレームグランド端子81,82のうち一方の第1フレームグランド端子81は第1主フレームグランドパターン65の端部に形成され、他方の第1フレームグランド端子82は第1副フレームグランドパターン66の端部に形成されている。また、2つの第2フレームグランド端子83,84のうち一方の第2フレームグランド端子83は、第2フレームグランドパターン67における二股に分かれた端部のうち一方の端部に形成され、他方の第2フレームグランド端子84は第2フレームグランドパターンにおける二股に分かれた端部のうち他方の端部に形成されている。
【0093】
これら4つのフレームグランド端子81,82,83,84は、全体としては、境界線34に対して線対称となるように形成されている。また、いずれも、端子接触片対向領域25aの内部であって且つ図6に示したランド形成不可領域51を除く領域内に形成されており、しかも基板側締結穴32の中心を通る円周方向に沿うように形成されている。
【0094】
そのため、本実施形態の4つのフレームグランド端子81,82,83,84は、全体としてみれば、その形状を除き、第2実施形態の4つのフレームグランド端子41,42,46,47と同じように形成されているといえる。
【0095】
但し、本実施形態の各フレームグランド端子81,82,83,84は、第2実施形態の各フレームグランド端子41,42,46,47に対して、次の点で異なる。即ち、第2実施形態では、2つの第1フレームグランド端子41,42と2つの第2フレームグランド端子46,47が、境界線34を境にそれぞれ分離して形成されていたが、本実施形態では、図8から明らかなように、第1フレームグランド端子81,82と第2フレームグランド端子83,84が、上記円周方向に沿って、交互に1つずつ配置されている。つまり、円周方向に沿って、第1フレームグランド端子81,第2フレームグランド端子83,第1フレームグランド端子82,第2フレームグランド端子84、というように交互に配置されているのである。
【0096】
従って、本実施形態のNCU基板60についても、第2実施形態のNCU基板40と同様の効果が得られる。特に本実施形態では、第1フレームグランド端子81,82と第2フレームグランド端子83,84が円周方向に沿って1つずつ交互に配置されていることから、端子接触片25の板面がNCU基板60の板面に対して傾いた場合であっても、各フレームグランド端子81,82,83,84とフレーム20との接触・導通(延いては各フレームグランドパターン65,67とフレーム20との導通)をより確実に行うことができる。
【0097】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0098】
例えば、上記各実施形態では、ガスアレスタ7,8に接続される第1フレームグランド端子及びコンデンサC1,C2に接続される第2フレームグランド端子として、それぞれ1つの例(第1実施形態)とそれぞれ2つの例(第2,第3実施形態)を示したが、それぞれ3つ以上形成するようにしてもよい。但し、好ましいのはそれぞれ1つ又は2つ形成することである。また、双方を同じ数にする必要は必ずしもない。
【0099】
また、各フレームグランド端子の形状についても、上記各実施形態では、円弧形状や円形のものを示したが、これらはあくまでも一例であり、他の形状にしてもよい。
また、境界線34に対して線対称となるように形成すること、基板側締結穴32の中心から所定距離離れた位置に形成すること、及び基板側締結穴32の中心を中心とする円周方向に沿うように形成することについては、各フレームグランド端子を確実に端子接触片25に接触・導通させるための好ましい条件の一例であり、必ずしもこれらを厳守する必要があるわけではない。各フレームグランド端子を確実に端子接触片25に接触・導通させることができる限り、各フレームグランド端子をどこにどのように形成するかは適宜決めることができる。
【0100】
また、上記実施形態では、各フレームグランド端子が、プリント回路板上のランドに半田が付着形成されてなるものであったが、このような構成もあくまでも一例であり、例えば半田の付着形成を省いてランドと端子接触片25を直接接触させるようにしてもよいし、ランドと端子接触片25の間に何らかの導体を介在させてその導体を介して両者間を導通させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…通信機器、2…外線用MJ、3…外付け電話用MJ、4…通信I/F、5、6…伝送ライン、7,8…ガスアレスタ、10,40,60…NCU基板(プリント回路板)、11,41,42,81,82…第1フレームグランド端子、12,46,47,83,84…第2フレームグランド端子、13,43…第1フレームグランドパターン、13a…第1ランド、14,48,67…第2フレームグランドパターン、14a…第2ランド、15…ソルダレジスト、15a…第1レジスト開口、15b…第2レジスト開口、16…第1半田、17…第2半田、19…基材、20…フレーム、21…フレーム本体、22…第1開口、23…第2開口、24…第3開口、25…端子接触片、25a…端子接触片対向領域、26…フレーム側締結穴、31…ネジ、32…基板側締結穴、34…境界線、
51…ランド形成不可領域、52…第1ランド形成可能領域、53…第2ランド形成可能領域、61…第1伝送パターン、62…第2伝送パターン、63…第3伝送パターン、64…第4伝送パターン、65…第1主フレームグランドパターン、66…第1副フレームグランドパターン、68…第1交差接続パターン、69…第2交差接続パターン、70…第3交差接続パターン、71〜78…スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体からなるフレームと、
公衆回線網と接続されて該公衆回線網との間で信号を送受する伝送ライン、及び該伝送ラインから絶縁されたフレームグランド端子部を有し、前記伝送ラインと前記フレームグランド端子部との間にサージ保護素子を含む複数の素子が接続されていると共に該両者間が一定の絶縁耐力を有するように構成されたプリント回路板と、
を備え、前記プリント回路板が前記フレームに固定されることにより前記フレームグランド端子部が前記フレームに接触するよう構成された通信機器であって、
前記フレームグランド端子部は、
前記プリント回路板に形成された複数の導体パターンのうち前記サージ保護素子が接続される第1導体パターンの端部に形成された少なくとも1つの第1ランドと、
前記プリント回路板における前記第1ランドが形成された面と同じ面において、該第1ランドと電気的に絶縁され、前記複数の導体パターンのうち前記サージ保護素子とは別の前記素子が接続される第2導体パターンの端部に形成された少なくとも1つの第2ランドと、
を備え、
前記プリント回路板が前記フレームに固定されることにより、前記各ランドの双方が前記フレームに直接又は間接的に接触して該各ランドと該フレームとが導通するように構成されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項2】
請求項1に記載の通信機器であって、
前記プリント回路板及び前記フレームには、両者を締結するための1つの締結具が挿通される挿通孔がそれぞれ形成されており、
前記プリント回路板は、前記締結具によって前記フレームと締結されることにより該フレームに固定される
ことを特徴とする通信機器。
【請求項3】
請求項2に記載の通信機器であって、
前記各ランドは、前記プリント回路板における前記挿通孔の中心から所定距離以上離れた位置に形成されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の通信機器であって、
前記第1ランドは、前記プリント回路板における、前記挿通孔の中心を通り且つ該プリント回路板の板面に平行な直線を境界とする2つの領域のうち一方の領域内に形成され、
前記第2ランドは、前記プリント回路板における、前記2つの領域のうち他方の領域内に形成されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の通信機器であって、
前記各ランドは、それぞれ少なくとも2つ以上形成されており、
該2つ以上の前記各ランドは、前記挿通孔の中心を中心とする円周方向に沿って前記第1ランドと前記第2ランドが交互に1又は複数個ずつ配置されている。
ことを特徴とする通信機器。
【請求項6】
請求項5に記載の通信機器であって、
前記各ランドは、それぞれ2つであって、前記円周方向に沿って前記各ランドが1つずつ交互に配置されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項7】
請求項4に記載の通信機器であって、
前記フレームは、
フレーム本体と、
前記フレーム本体の端縁から屈曲して突出するように形成されると共に前記挿通孔が形成された板状の端子接触片と、
を備え、
前記プリント回路板が前記フレームに固定されたとき、前記端子接触片に前記各ランドの双方が接触するよう構成されており、
前記境界は、前記端子接触片が前記フレーム本体から突出する方向に平行な直線である
ことを特徴とする通信機器。
【請求項8】
請求項7に記載の通信機器であって、
前記各ランドは、それぞれ1つ又は2つ形成されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項9】
請求項8に記載の通信機器であって、
前記各ランドは、それぞれ1つであって、いずれも前記挿通孔の中心を中心とする円弧形状に形成されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項10】
請求項8に記載の通信機器であって、
前記各ランドは、それぞれ、前記挿通孔の中心を中心とする円周方向に沿って且つ前記境界と同じ方向に沿うように、2つ配置されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項11】
請求項4、請求項7〜請求項10の何れか1項に記載の通信機器であって、
前記各ランドは、前記境界に対して線対称に形成されている
ことを特徴とする通信機器。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の通信機器であって、
前記各ランドには、それぞれはんだが付着形成されており、
前記各ランドと前記フレームとの導通は、前記各ランド上の前記各はんだが前記フレームに直接接触することにより該各はんだを介してなされる
ことを特徴とする通信機器。
【請求項13】
導体からなるフレームと、
公衆回線網と接続されて該公衆回線網との間で信号を送受する伝送ライン、及び該伝送ラインから絶縁されたフレームグランド端子部を有し、前記伝送ラインと前記フレームグランド端子部との間にサージ保護素子を含む複数の素子が接続されていると共に該両者間が一定の絶縁耐力を有するように構成されたプリント回路板と、
を備え、前記プリント回路板が前記フレームに固定されることにより前記フレームグランド端子部が前記フレームに接触するよう構成された通信機器の、絶縁耐圧試験方法であって、
前記フレームグランド端子部は、前記プリント回路板に形成された複数の導体パターンのうち前記サージ保護素子が接続される第1導体パターンの端部に形成された少なくとも1つの第1ランドと、前記プリント回路板における前記第1ランドが形成された面と同じ面において、該第1ランドと電気的に絶縁され、前記複数の導体パターンのうち前記サージ保護素子とは別の前記素子が接続される第2導体パターンの端部に形成された少なくとも1つの第2ランドとを備え、前記プリント回路板が前記フレームに固定された場合に前記各ランドの双方が前記フレームに接触して該各ランドと該フレームとが導通するように構成されており、
少なくとも、
前記各ランドが互いに絶縁された状態で、前記伝送ラインと前記第2ランドとの間に予め設定された値の電圧を印加する電圧印加ステップと、
前記電圧印加ステップによって前記電圧が印加されている間の、前記伝送ラインと前記第2ランドの間の電気的特性を計測する計測ステップと、
を備えている
ことを特徴とする絶縁耐圧試験方法。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−109255(P2011−109255A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260115(P2009−260115)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】