説明

通信装置

【課題】無線による映像・音声通信とデータ通信との共存を容易にする。
【解決手段】シンク側との有線通信手段と、ソース側からの映像信号を受信する第1の無線通信手段と、ソース側とデータ信号を送受信する第2の無線通信手段と、各通信手段に対して通信制御する通信制御手段とを備え、通信制御手段は、第1の無線通信手段による無線リンクを確立後、シンク装置及びソース装置がデータ通信能力をもつかどうかの能力交換を中継させる機能と、第1の無線通信手段を介して第1の無線通信手段および第2の無線通信手段とソース側通信装置の無線通信手段との間でデータ通信能力があるかどうかの能力交換をさせる機能と、シンク装置およびソース装置およびソース側通信装置の無線通信手段のいずれもがデータ通信の能力を有している場合にデータ通信可能であるとして設定する機能とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像・音声信号およびデータ信号を無線により伝送する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、60GHz帯を使用する無線通信技術が、IEEE802.15委員会においてその標準化作業が進められている。この無線通信技術は、10m以内の無線ネットワークであるWPAN(Wireless Personal Area Network)をターゲットとしている。この無線通信技術は、従来の無線LANやBluetoothに対し、広帯域を使用してギガビットのオーダの無線伝送を実現することが可能である。したがって、高速に映像・音声信号を伝送できるHDMI(High Definition Multimedia Interface)のような既存の有線通信により伝送される映像・音声信号を、無線化して伝送することが可能である。
【0003】
映像・音声信号を、無線化して伝送する従来技術としては、例えば、特許文献1に、HDMI規格に従って映像信号を無線送受信するシステムが開示されている。この特許文献1では、特に、表示手段の設定情報を無線送受信することで、従来に比べて高速な表示手段の設定情報の読み込みを実現できる技術が提案されている。
【0004】
一方、HDMI規格においては、近年、映像・音声信号の伝送だけでなくデータ通信もできることが求められてきており、そのための標準化が進められている。上記無線通信技術によれば、映像・音声信号を無線伝送するだけではなく、IPネットワークのようなデータ通信も、その指向性の強さから無線通信機間が1対1となる通信に限れば、これらを無線化して伝送することも支障なく行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−35517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、有線通信においては、1つのケーブルで映像・音声通信とデータ通信を同時に行うことが可能であるのに対し、無線通信においては、(1)無線区間だけデータ通信がサポートできないがそのことを映像機器が認識できない、(2)映像信号は帯域を多く必要とするため映像・音声通信とデータ通信を同時に行うと映像品質が低下する、(3)無線区間においてデータ通信のための帯域が取れない場合がある、(4)データ通信も行うため帯域のあるミリ波帯を使用すると、指向性が強いことから複数の無線通信装置が存在し無線リンクが複数存在する場合のデータ通信に向かない等、映像・音声通信とデータ通信とを共存することが困難な場合が多々ある。また、複数の無線方式を利用しようとすると、セキュアな接続を確立するまでの手順が煩雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、上記無線通信に係る問題点の1つ以上を解決して映像・音声通信とデータ通信との共存を容易にできるように、特に、映像・音声通信とデータ通信の両方が可能である装置と映像・音声通信のみ可能な装置等が混在する場合でも、映像・音声通信とデータ通信との共存を容易にできるようにする通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ソース側通信装置と無線接続されるシンク側通信装置であって、有線通信により、シンク装置への映像・音声信号映像信号の送信およびシンク装置との間でのデータ信号の送受信をする有線通信手段と、少なくとも映像・音声信号映像信号の送受信が可能な無線通信方式により、いずれかのソース装置に有線接続されるソース側通信装置からの映像・音声信号映像信号の受信をする第1の無線通信手段と、前記第1の無線通信手段が用いる無線通信方式とは異なる方式の無線通信により、いずれかのソース側通信装置との間でデータ信号を送受信する第2の無線通信手段と、前記有線通信手段、前記第1の無線通信手段および前記第2の無線通信手段に対する通信制御を行う通信制御手段と、を備え、前記通信制御手段は、前記第1の無線通信手段による無線リンクを確立後、前記有線通信手段での通信方式で用いるに関する物理アドレスに係る処理を前記シンク側通信装置との間で行うを設定する機能と、前記シンク装置およびソース装置が、相手となるシンク装置またはソース装置に対して行う、相手装置がデータ通信の能力を有しているかどうかの能力交換を、前記有線通信手段および前記第1の無線通信手段を介して中継させる機能と、前記第1の無線通信手段を用いて介して、前記第1の無線通信手段および前記第2の無線通信手段と前記ソース側通信装置が有するいずれかの無線通信手段との間でデータ通信の能力を有しているかどうかの能力交換をさせる機能と、前記シンク装置、およびソース装置およびソース側通信装置が有する無線通信手段のいずれもがデータ通信の能力を有している場合に、前記第2の無線通信手段を用いて行う無線通信その物理アドレスを有する装置または通信手段とがデータ通信可能であるとして設定する機能と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、シンク側通信装置と無線接続されるソース側通信装置であって、有線通信により、ソース装置との間で映像信号およびデータ信号を送受信する有線通信手段と、無線通信手段として、少なくとも映像信号の送受信が可能な無線通信方式によりシンク側通信装置への映像信号の送信をする第1の無線通信手段および前記第1の無線通信手段が用いる無線通信方式とは異なる方式の無線通信によりデータ信号を送受信する第2の無線通信手段の内、少なくとも前記第1の無線通信手段を有する無線通信手段と、前記有線通信手段および前記無線通信手段に対する通信制御を行う通信制御手段と、を備え、前記通信制御手段は、前記第1の無線通信手段による無線リンクを確立後、無線リンクを確立した通信装置間で、前記有線通信手段に関する共通の物理アドレスを設定する機能と、前記シンク装置およびソース装置が行う、データ通信の能力を有しているかどうかの能力交換を、前記有線通信手段および前記第1の無線通信手段を介して中継させる機能と、前記第1の無線通信手段を用いて、前記無線通信手段とシンク側通信装置が有するいずれかの無線通信手段との間でデータ通信の能力を有しているかどうかの能力交換をさせる機能と、前記シンク装置、ソース装置およびシンク側通信装置がデータ通信の能力を有している場合に、その物理アドレスを有する装置または通信手段がデータ通信可能であるとして設定する機能と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、(1)無線区間だけデータ通信がサポートできないがそのことを映像機器が認識できない、(2)映像信号は帯域を多く必要とするため映像・音声通信とデータ通信を同時に行うと映像品質が低下する、(3)無線区間においてデータ通信のための帯域が取れない場合がある、(4)データ通信も行うため帯域のあるミリ波帯を使用すると、指向性が強いことから複数の無線通信装置が存在し無線リンクが複数存在する場合のデータ通信に向かない等の問題点を解決でき、特に、映像・音声通信とデータ通信の両方が可能である装置と映像・音声通信のみ可能な装置等が混在する場合でも、映像・音声通信とデータ通信との共存を容易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である無線通信装置が有する基本的な機能であるHDMI規格およびWirelessHD規格に従った通信確立に関して説明するための一構成例を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すシステムにおける通信確立の際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、本実施形態の無線通信装置と各機器が接続されたシステム構成例を示す図である。
【図4】図4は、図3に示すシステムにおける通信確立の際の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる通信装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本出願に添付の図面および以下の説明においては、本発明に係わる主要部についてのみ説明し、周知の構成等についてはその記載を省略する。
【0013】
(HDMI規格およびWirelessHD規格に従った通信確立)
本発明にかかる通信装置の一実施形態である無線通信装置について説明するにあたり、はじめに、この無線通信装置が有する基本的な機能であるHDMI規格およびWirelessHD規格に従った通信確立に関して説明する。以下では、説明を簡単にするため、図1に示すように無線通信装置200,300が、HDMI1.4におけるHEC(HDMI Ethernet(登録商標) Channel)をサポートするWirelessHD規格に従った1種類の無線通信方式による無線通信手段(WVAN通信部)を備えた無線通信装置(200,300)を例示して説明する。図1に例示するシステムは、無線で接続される2台の無線通信装置の一方にシンク装置としての映像・音声受信機を有線(HDMI)で接続し、他方にソース装置としての映像・音声送信機を有線(HDMI)で接続したシステムとなっている。
【0014】
まず、図1に示す装置の構成であるが、図1において、100は、映像・音声受信機本体である。具体的にはTVやプロジェクタ等である(以下、TV100と記す)。101は、映像・音声信号を受信する映像・音声受信部であり、受信した映像・音声信号に所定の信号処理を施して図示しないディスプレイおよびスピーカに出力する。102は、データ通信部であり、TV100と他の機器との間でIPネットワーク等を使用し、データ通信を行う。103のHDMI通信部は、有線で映像・音声通信やデータ通信を行う有線通信手段である(本実施形態ではHDMI規格によるものとする)。映像・音声受信部101、データ通信部102、およびHDMI通信部103は、TV100に含まれる。
【0015】
続いて、同図に示す200は、映像・音声信号の受信とデータ通信を行う無線通信装置である。201は、CPU等を含んで構成される通信制御部であり、以下のWVAN通信部202およびHDMI通信部203の通信全般の制御を司る。WVAN通信部202は、無線による映像・音声信号の受信やデータ通信を行う無線通信手段である。本実施形態では、具体的には60GHz帯のミリ波を利用するWirelessHD等の映像・音声通信が可能な無線通信方式により構築されるWVAN(wireless video area network)を例とする。
【0016】
同図に示す203は、データ格納部であり通信制御部201が、通信を制御するために必要な情報(通信制御部201用の制御プログラム、物理アドレス等)を格納するために使用される。具体的にはROM、RAM、HDD等である。なお、図1およびその他の図に示す“HDMI 1.0.0.0”等の記載は、その装置またはHDMI通信部のHDMI規格に基づく物理アドレス(以下、HDMI物理アドレスと称す;なお、このアドレスは動的に割り付けられる)が“1.0.0.0”等であることを示すものである。同様に、“WVAN 00:11:22:33:01”等の記載は、WVAN上での物理アドレス(このアドレスは製品出荷時に一意に割り付けられている)が“00:11:22:33:01”等であることを示すものである。
【0017】
同図に示す300は、映像・音声信号の送信とデータ通信(データの送受信)を行う無線通信装置である。この無線通信装置300には、通信制御部301、WVAN通信部302,HDMI通信部303、およびデータ格納部304を備えている。これらの構成要素は各々、上記無線通信装置200に備わる通信制御部201、WVAN通信部202,HDMI通信部203、およびデータ格納部204と同様の機能をもつ。
【0018】
同図に示す400は、映像・音声信号の送信とデータ通信が可能な映像・音声送信機本体である。具体的にはDVDプレーヤやPC等である(以下、DVDプレーヤ400と記す)。401は、図示しないDVDディスク等の記録媒体から読み出したデータに所定の信号処理を施して生成された映像・音声信号を送信する映像・音声送信部である。402は、データ通信部であり、DVDプレーヤ400と他の機器との間でIPネットワーク等を使用し、データ通信を行う。403のHDMI通信部は、有線で映像・音声通信やデータ通信を行う有線通信手段である(本実施形態ではHDMI規格によるものとする)。映像・音声送信部401、データ通信部402、およびHDMI通信部403は、DVDプレーヤ400に含まれる。
【0019】
次に、上記のように構成されるシステムにおける各装置の動作について、図1および2を参照し説明する。図2は、本実施形態におけるTV100、無線通信装置200,300、DVDプレーヤ400の、図1に示すシステムにおける通信確立の際の動作を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明では、TV100はデータ通信可能であるものとする。
【0020】
無線通信装置200、300の電源投入後、TV100およびDVDプレーヤ400を、それぞれ無線通信装置200、300にHDMIケーブルで接続する。すると、無線通信装置200、300は、この接続を検知する(ステップS201)。そして、無線通信装置200、300は、映像・音声信号を伝送するために、WVAN通信部202,302間で無線通信を確立する(ステップS202)。この時、シンク装置であるTV100のHDMI物理アドレスは、図1に示す0.0.0.0である。無線通信装置200は、HDMI通信部203経由で通信制御部201が、無線通信装置200が接続されたTV100のHDMIポートを通じて(このポートにはHDMIアドレスとして1.0.0.0が割り付けられているものとする)、自機のHDMI物理アドレス(1.0.0.0)を取得する(ステップS203)。そして、自身のHDMI物理アドレスを図1示すように、1.0.0.0と設定する(ステップS204)。
【0021】
次いで、無線通信装置300の通信制御部301は、無線通信装置200のHDMI物理アドレス(1.0.0.0)を取得し、このアドレスを自身のHDMI物理アドレスとして記憶する(ステップS205)。そして、通信制御部301は、自機のHDMI物理アドレスを基に、各HDMIポートにHDMI物理アドレスを割り付ける。DVDプレーヤ400は、その接続先のHDMIポートを通じて(このポートには通信制御部301によりHDMIアドレスとして1.1.0.0が割り付けられているものとする)、自機のHDMI物理アドレス(1.1.0.0)を取得し、これを、図1に示すようにHDMI物理アドレス1.1.0.0として設定する(ステップS206)。ここで、TV100のような映像・音声受信機や、DVDプレーヤ400のような映像・音声送信機が、双方でデータ通信を行いたい場合、データ通信の能力があるか否かをHDMIのCEC(Consumer Electronics Control)により、直近のHDMI物理アドレスを有する装置に問い合わせる。ここでCECとは、HDMIで規格化されている機器制御信号と制御プロトコルである。
【0022】
図1において、HDMI機器としてのTV100にはそのHDMI物理アドレスとして0.0.0.0が、無線通信装置300には1.0.0.0が、DVDプレーヤ400には1.1.0.0が、それぞれ上述の手順で割り当てられている。この時TV100がデータ通信を確立したい場合、TV100は他のHDMI物理アドレスを持っている機器に対し、データ通信能力があるか否かを問い合わせる(ステップS207)。無線通信装置200、300間でデータ通信可能であり、かつDVDプレーヤ400にもその能力がある場合は、DVDプレーヤ400からのデータ通信可能であるという応答と共に、無線通信装置200自身もデータ通信可能であるという応答をそれぞれのHDMI物理アドレスと共にTV100に返す。
【0023】
具体的には、図3に示すように、DVDプレーヤ400がデータ通信能力(機能)をもっている場合(ステップS208でYes)、DVDプレーヤ400はデータ通信可と応答する(ステップS209)。この応答を通信制御部301がHDMI通信部303,403経由で受信する(ステップS210)。そして、WVAN通信部202,302間でデータ通信が可能である場合(ステップS211でYes)、WVAN通信部202,302経由で、DVDプレーヤ400はデータ通信可能であるという応答を通信制御部201が受信する(ステップS212)。通信制御部201は、HDMI物理アドレスが1.0.0.0、1.1.0.0を有した機器のいずれともデータ通信可能であることをCECでTV100へ応答する(ステップS213)。そして、応答のあった機器間でデータ通信のリンクを確立する(ステップS214)。
【0024】
一方、無線通信装置200、300間(すなわちWVAN通信部202、302間)でデータ通信が可能でない場合(ステップS211でNoのケース)は、DVDプレーヤ400からのデータ通信可能であるという応答を無線通信装置200、300は中継せず、通信制御部201がHDMI物理アドレス1.0.0.0を有した自身のみ、データ通信可能とTV100へ応答する(ステップS215)。結果、TV100はDVDプレーヤ400と無線通信装置300に、その能力がないものとして認識する。
【0025】
他方、DVDプレーヤ400がデータ通信機能をもっていない場合(ステップS208でNoのケース)は、DVDプレーヤ400がデータ通信ができないことを示す応答をするので(ステップS216)、TV100、無線通信装置200、300は、TV100、無線通信装置200、300、DVDプレーヤ400間のデータ通信のリンクを確立せずに(ステップS217)、一連の動作を終了する。
【0026】
なお、DVDプレーヤ400からのデータ通信ができないことを示す応答は、無線通信装置200、300がTV100へ物理アドレスを返さないことにより行う。TV100側は、DVDプレーヤ400の物理アドレスが返されないことにより、DVDプレーヤ400側にデータ通信能力がないと判断する。もちろん、DVDプレーヤ400からのデータ通信ができないことを示す応答を中継してTV100に渡すようにしてもよい。一方、DVDプレーヤ400がデータ通信可能であっても、無線通信装置200,300間でデータ通信ができない場合(ステップS211でNoのケース)、無線通信装置200、300はDVDプレーヤ400からの応答を中継しないようにしているが、通信制御部201,301の制御により無線通信装置200、300が、DVDプレーヤ400からのデータ通信ができない旨の代理回答をTV100にするようにしてもよい。
【0027】
上記動作により、複数の映像・音声送信装置が無線接続されている状態においても、TV100は適切に各装置に対してデータ通信可能かどうかの能力交換を行い、データ通信能力のある機器に対して自動的にWVANによるデータ通信を開始することが可能となる。なお、上記は、TV100側からデータ通信の能力の問い合わせを行う場合の例だが、DVDプレーヤ400側からの場合も、信号の流れが逆方向になるが同様に可能である。
【0028】
(本実施形態の無線通信装置)
上記に例示した無線通信装置では、ミリ波帯を利用する無線通信方式(WirelessHD)で、映像・音声通信とデータ通信を行えるようにしている。ミリ波帯を使用する無線は映像・音声信号を無線伝送できる反面、物理的な特性として指向性が強いという特徴がある。これは、TVのような映像・音声受信機とDVDプレーヤのような映像・音声送信装置間では、映像・音声信号は1対1の通信となるため問題にならない場合が多い。しかし、データ通信を行う場合、特にインターネットプロトコルのようにブロードキャストも可能なプロトコルを使用する場合、指向性の強いミリ波帯の無線を使用すると、複数の無線通信装置に対してデータをブロードキャストする際に支障が生じうる。
【0029】
ミリ波帯を利用する無線通信方式のみで映像・音声通信とデータ通信を行おうとすると上記のような問題がある。そこで、映像・音声信号の伝送やデータ通信ができるHDMIケーブルを無線化する際は、映像・音声信号の伝送に利便性のあるミリ波帯無線と、データ通信に利便性のある無線LANを合わせて使用することにより、無線化する構成をとることが可能である。しかし、このような構成をとる場合、ユーザがTVやDVDプレーヤといった機器同士の無線リンクの確立を簡単かつセキュアに確立することは、パソコンのように、キーボードなどの入力装置やGUIがないため、容易ではない。そこで、本実施形態では、ミリ波帯無線(WirelessHD)とデータ通信に利便性のある無線LANを組み合わせた構成において、この問題を解決できる無線通信装置を提案する。具体例として、図3に、本実施形態の無線通信装置と各機器が接続されたシステム構成例を示す。
【0030】
図3において、500は、映像・音声信号の受信とデータ通信(データの送受信)を行う無線通信装置である。501はCPU等を含んで構成される通信制御部であり、有線通信手段としてのHDMI通信部506や下記のWVAN通信部503およびWLAN通信部504の通信に関する全般的な制御を司る。502は、データ格納部であり通信制御部501が、通信を制御するために必要な情報を格納するために使用される。具体的にはROM、RAM、HDD等であり、通信制御部501や下記のセキュリティ部505の制御プログラムやHDMI通信部506やWVAN通信部503、WLAN通信部504の物理アドレス等の情報も含まれている。
【0031】
503は映像・音声信号の受信やデータ通信を行う第1の無線通信部としてのWVAN通信部である。具体的には60GHz帯のミリ波を利用するWirelessHD等の映像・音声通信が可能な無線通信方式による。504は、データ通信を行う第2の無線通信部としてのWLAN通信部である。具体的には無線LAN(例えば、WiFi(Wireless Fidelity))やBluetooth等による、主にデータ通信に使用する、無指向性の(或いは、WirelessHD等よりも指向性の低い)通信方式を用いて通信する通信手段である。また、少なくともP2P通信においては、WVAN通信部503での通信速度の方がWLAN通信部504よりも早く、非圧縮信号の伝送に適しているものとする。なお、各通信部は専用のハードウェアにより構成される。
なお、以下、データ通信と称する場合には、WVAN通信部503/603を使用する場合でも、WLAN通信部506/604を使用する場合でも、TCP/IP等の同一の通信方式により通信可能であるものとする。
【0032】
505は、セキュリティ部であり、主にデータ通信を行うための認証やその他セキュリティの管理のための処理を行う。具体的には接続を許可する物理アドレスの管理や、WiFiの場合、WPS(Wi-Fi Protected Setup)によって、ESSID(extended service set identifier)やWPA2(Wi-Fi Protected Access 2)のセキュリティ設定等を行う。このセキュリティ部505(および下記の605)により、データ通信に必要なネットワーク名やパスワードを自動的に生成しそれを交換し、無線データ通信のリンクを自動的かつ安全に確立する。このセキュリティ部505は、実装上、通信制御部501に含めて構成することができる。
【0033】
なお、図3に示す“HDMI 1.0.0.0”等の記載は、その装置または該当のHDMI通信部のHDMI物理アドレスが“1.0.0.0”等であることを示すものである。同様に、“WVAN 00:11:22:33:01”等の記載は、WVAN上での物理アドレスが“00:11:22:33:01”等であることを、また“WLAN aa:bb:cc:dd:01”等の記載は、WLAN上での物理アドレスが“aa:bb:cc:dd:01”等であることを示すものである。
【0034】
同図に示す600は、映像・音声信号の送信とデータ通信の送受信を行うソース側の無線通信装置である。通信制御部601、データ格納部602、WVAN通信部603、WLAN通信部604、セキュリティ部605、HDMI通信部606はそれぞれ、無線通信装置500の通信制御部501、データ格納部502、WVAN通信部503、WLAN通信部504、セキュリティ部505、HDMI通信部506と同様の機能を有する。
【0035】
また、同図に示す300は、前述した無線通信装置300と同一の構成を有する。図3に示すように、ソース側の無線通信装置は、WirelessHD規格に従ったWVAN通信部を備えることにより、無線通信装置500との間でWVANを構成する。また、各無線通信装置は、HDMI機器として共通のHDMI物理アドレスを有する。したがって、その他のHDMI機器からは、ソース側無線通信装置とシンク側無線通信装置は、1つのHDMI機器として取り扱われる。一方、各無線通信装置間は、WVAN上の物理アドレスおよびWLAN上の物理アドレスに基づいて通信が行われる。
【0036】
次に、上記のように構成されるシステムにおける各装置の動作について、図3、4を参照し説明する。図4は、本実施形態におけるTV100、無線通信装置500,600、DVDプレーヤ400の通信確立の際の動作を説明するためのフローチャートである。なお、図4は、最終的にデータ通信のリンクが確立するケースを例示するものである。WVAN通信部503または603がデータ通信不可である場合や、WLAN通信部504または604が存在しない場合や、TV100またはDVDプレーヤ400にデータ通信能力が無い場合は、データ通信のリンクは確立せずに一連の動作を終了する。
【0037】
前述した図2の手順で、WVAN通信部(第1の無線通信部)503,603の無線リンクを確立し(ステップS401)、HDMI物理アドレスを各機器に割り当てる(ステップS402)。
【0038】
WVAN通信部503がデータ通信能力を有していた場合(ステップS403でYes)、能力があるという応答としてWVAN通信部503,603の自身の物理アドレスを、WVAN通信部503,603を通じて無線通信装置500、600間で通信制御部501,601が交換し、そのアドレスをそれぞれデータ格納部502,602へ格納する(ステップS404)。
【0039】
次に第2の無線通信部504が存在する場合(ステップS405でYes)、上記と同様に、能力があるという応答として自身のWLAN通信部504,604の物理アドレスを、WVAN通信部503,603を通じて通信制御部501,601が交換し、それぞれデータ格納部502,602に格納する(ステップS406)。ここでWVAN通信部503,603とWLAN通信部504,604共に、無線LANでも使用されているIEEE 802が定めた48ビット長のアドレス体系であるEUI−48に準拠する物理アドレスを使用することにより、両方のアドレスがユニークであることが保証される。
【0040】
上述した、第1の無線通信部503と第2の無線通信部504に関するデータ通信の能力有無の交換が完了した後、WVAN通信部503,603にデータ通信能力がある場合(ステップS407でYes)、通信制御部501,601はそれぞれ、データ格納部502,602に格納されている物理アドレスに関しては、各第1、第2の無線通信部の物理アドレスに関わらず、一括して、データ通信可能として取り扱う(ステップS408)。具体的には、WVAN通信部(第1の無線通信部)503,603がデータ通信能力を有していた場合、WVAN通信部503,603に対し、データ格納部502,602に格納されている物理アドレスからのアクセスをすべて許可し、データ通信可能と設定する。そして、データ通信の無線リンクを確立する(ステップS409)。
【0041】
一方、WLAN通信部(第2の無線通信部)504,604が存在する場合(ステップS410でYes)、WLAN通信部504,604を起動後、データ格納部502,602に格納されている物理アドレスからのアクセスをすべて許可する(ステップS411)。そして、そのアドレスからアクセスがあった場合は、セキュリティ部505,605が、WPS(Wi-Fi Protected Setup)によりESSID(extended service set identifier)とWPA2(Wi-Fi Protected Access 2)のセキュリティ設定をし(ステップS412)、データ通信のリンクを自動的かつセキュアに確立する(ステップS413)。
【0042】
なお、WVAN通信部503,603にデータ通信能力がある場合、ステップS413の段階で、WVAN通信部503,603間とWLAN通信部504,604間の両方でデータ通信可能となるが、ミリ波帯を使用するWVAN通信部503,603では指向性が強いため、WLAN通信部504,604によるデータ通信を優先するのが好ましい。以上のようにして、TV100〜DVDプレーヤ400間のデータ通信のリンクが確立する(ステップS414)。
【0043】
以上により、各無線通信装置間で無線通信を介する映像・音声通信のリンクが確立した際、有線接続の物理アドレス(HDMI物理アドレス)をベースに所望する機器間のみの無線によるデータ通信のリンクを自動的かつ安全に確立することができる。このとき、映像・音声通信とデータ通信が可能となるだけでなく、WVAN通信部302しかもたない無線通信装置300が混在する場合も、同一手順によりデータ通信のリンクを確立することが可能となる。すなわち、映像・音声通信とデータ通信の両方が可能である装置と映像・音声通信のみ可能な装置等が混在する場合でも、映像・音声通信とデータ通信との共存を容易なものとすることができる。
【符号の説明】
【0044】
100…TV、200,300,500,600…無線通信装置、400…DVDプレーヤ、101…映像・音声受信部、102,402…データ通信部、103,203,303,403,506,606…HDMI通信部、201,301,501,601…通信制御部、202,302,503,603…WVAN通信部、204,304,502,602…データ格納部、504,604…WLAN通信部、505,605…セキュリティ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース側通信装置と無線接続されるシンク側通信装置であって、
有線通信により、シンク装置への映像信号の送信およびシンク装置との間でのデータ信号の送受信をする有線通信手段と、
少なくとも映像信号の送受信が可能な無線通信方式により、いずれかのソース装置に有線接続されるソース側通信装置からの映像信号の受信をする第1の無線通信手段と、
前記第1の無線通信手段が用いる無線通信方式とは異なる方式の無線通信により、いずれかのソース側通信装置との間でデータ信号を送受信する第2の無線通信手段と、
前記有線通信手段、前記第1の無線通信手段および前記第2の無線通信手段に対する通信制御を行う通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、
前記第1の無線通信手段による無線リンクを確立後、
前記有線通信手段での通信方式で用いる物理アドレスに係る処理を前記シンク側通信装置との間で行う機能と、
前記シンク装置およびソース装置が行う、データ通信の能力を有しているかどうかの能力交換を、前記有線通信手段および前記第1の無線通信手段を介して中継させる機能と、
前記第1の無線通信手段を用いて、前記ソース側通信装置との間でデータ通信の能力を有しているかどうかの能力交換をさせる機能と、
前記シンク装置、ソース装置およびソース側通信装置がデータ通信の能力を有している場合に、前記第2の無線通信手段を用いて行う無線通信の物理アドレスを有する通信手段とデータ通信可能であるとして設定する機能と、を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の無線通信手段は前記第2の無線通信手段よりも指向性が強く、
前記第2の無線通信手段でのデータ通信と並行して、前記第1の無線通信手段での映像信号の受信が可能であること
を特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信制御手段は、前記シンク装置またはソース装置がデータ通信の能力を有していないとの応答に対し、前記能力交換の中継を行わないことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
データ通信をする能力を有しているかどうかの前記能力交換の際、本通信装置がデータ通信をする能力を有していない場合、前記通信制御手段は、データ通信能力なしとして代理回答することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
データ通信可能の場合の前記能力交換における応答として、前記通信制御手段は、該当装置の物理アドレスを含めて返すように制御することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
データ通信をする能力を有しているかどうかの前記能力交換の際、その応答として物理アドレスが返されなかった場合、前記通信制御手段は、相手装置側にデータ通信能力がないと判断することを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
シンク側通信装置と無線接続されるソース側通信装置であって、
有線通信により、ソース装置との間で映像信号およびデータ信号を送受信する有線通信手段と、
無線通信手段として、少なくとも映像信号の送受信が可能な無線通信方式によりシンク側通信装置への映像信号の送信をする第1の無線通信手段および前記第1の無線通信手段が用いる無線通信方式とは異なる方式の無線通信によりデータ信号を送受信する第2の無線通信手段の内、少なくとも前記第1の無線通信手段を有する無線通信手段と、
前記有線通信手段および前記無線通信手段に対する通信制御を行う通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、
前記第1の無線通信手段による無線リンクを確立後、
無線リンクを確立した通信装置間で、前記有線通信手段に関する共通の物理アドレスを設定する機能と、
前記シンク装置およびソース装置が行う、データ通信の能力を有しているかどうかの能力交換を、前記有線通信手段および前記第1の無線通信手段を介して中継させる機能と、
前記第1の無線通信手段を用いて、前記無線通信手段とシンク側通信装置が有するいずれかの無線通信手段との間でデータ通信の能力を有しているかどうかの能力交換をさせる機能と、
前記シンク装置、ソース装置およびシンク側通信装置がデータ通信の能力を有している場合に、その物理アドレスを有する装置または通信手段がデータ通信可能であるとして設定する機能と、を有することを特徴とする通信装置。
【請求項8】
前記第1の無線通信手段は前記第2の無線通信手段よりも指向性が強く、
前記第2の無線通信手段でのデータ通信と並行して、前記第1の無線通信手段での映像信号の受信が可能であること
を特徴とする請求項7記載の通信装置。
【請求項9】
前記通信制御手段は、前記シンク装置またはソース装置がデータ通信の能力を有していないとの前記シンク装置またはソース装置からの応答に対し、前記能力交換の中継をさせないことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項10】
データ通信をする能力を有しているかどうかの前記能力交換の際、本通信装置がデータ通信をする能力を有していない場合、前記通信制御手段は、データ通信能力なしとして代理回答することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項11】
データ通信可能の場合の前記能力交換における応答として、前記通信制御手段は、該当装置の物理アドレスを含めて返すように制御することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項12】
データ通信をする能力を有しているかどうかの前記能力交換の際、その応答として物理アドレスが返されなかった場合、前記通信制御手段は、相手装置側にデータ通信能力がないと判断することを特徴とする請求項11に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−9963(P2011−9963A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150201(P2009−150201)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【特許番号】特許第4564574号(P4564574)
【特許公報発行日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】