説明

通報装置

【課題】不審者の存在や非常事態の発生を自動的に検出して通報する場合に、正当な者を不審者と誤判定することを低減して信頼性を向上させた通報装置の提案。
【解決手段】 監視区域において不審者の存在を検出し遠隔に通報する通報装置であって、前記監視区域内の移動物体が認識可能な監視情報を取得する監視情報取得部と、前記取得した監視情報に基づいて、前記監視区域内の人数を検出する人数検出部と、前記監視区域に存在する不審者を検出する不審者検出処理を実行する不審者検出部と、前記不審者が検出されると通報する通報部と、を備え、前記不審者検出部は、前記監視区域内の人数が所定数未満であるときに前記不審者検出処理を実行し、前記監視区域内の人数が所定数以上であるときは前記不審者検出処理の実行を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視区域の保全を損うおそれのある不審者の存在や非常事態の発生を検出して通報する通報装置に関し、特に、正当な者を不審者と誤判定することを低減できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗や事務所などの利用者が強盗など不審者の存在を外部に通報するための通報装置として、いわゆる非常ボタンの操作により、非常信号とともに監視カメラが撮像している画像を遠隔の監視センタに送出するものが広く知られている。
この種の通報装置は、利用者の自発的な操作に基づくために非常事態を誤って通報することが少ない反面、強盗などの非常事態が発生したときに当該強盗により非常ボタンの操作が規制されたり、利用者の気が動転して非常ボタンの操作を失念してしまうことがあり、通報の確実性に欠けるという問題があった。
【0003】
本出願人は、このような問題への対策として特許文献1にかかる特許出願を行っている。
この特許文献1には、予め非常事態が発生したときに発音が予測される語句と当該語句の危険度合いに応じた音圧レベルとを対応付けて記憶しておき、店舗などにおいてマイクに入力される音声中の語句と音圧とを監視して、語句と音圧の組み合わせから非常事態が発生したか否かを判定する通報装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−11872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に提案される通報装置によれば、利用者による非常ボタンの操作を不要としつつ、強盗など非常事態の発生を外部に通報することができ、利便性と通報の確実性の双方を向上させることができる。
【0006】
ところで、一般に、強盗などの不審者は、監視区域を制圧して金品の強奪を図ることを目的としており、この成功確率が高くなる人の少ない時間帯を狙って現れることが多い。
これに対し、特許文献1の通報装置は、監視区域の音声を常時集音して不審者の存在や非常事態の発生を判定する構成であるために、不審者が現れる可能性が低い繁忙時間帯などであっても継続的に監視を行うこととなる。
【0007】
しかしながら、このような繁忙時間帯は総じて雑踏による環境音が大きくなり、特許文献1の通報装置では正当な者しか存在しない状況であっても不審者が存在すると誤判定してしまうおそれがあった。例えば、多数の来客による喧騒音や店内放送など比較的大音量で流れるメッセージなどにより非常事態と誤判定してしまうといった具合である。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、不審者の存在や非常事態の発生を自動的に検出して通報する場合に、正当な者を不審者と誤判定することを低減して信頼性を向上させた通報装置の提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明による通報装置は、監視区域において不審者の存在を検出し遠隔に通報する通報装置であって、前記監視区域内の移動物体が認識可能な監視情報を取得する監視情報取得部と、前記取得した監視情報に基づいて、前記監視区域内の人数を検出する人数検出部と、前記監視区域に存在する不審者を検出する不審者検出処理を実行する不審者検出部と、前記不審者が検出されると通報する通報部と、を備え、前記不審者検出部は、前記監視区域内の人数が所定数未満であるときに前記不審者検出処理を実行し、前記監視区域内の人数が所定数以上であるときは前記不審者検出処理の実行を禁止することを特徴としている。
【0010】
かかる構成において、通報装置は、監視区域内の移動物体が認識できる監視情報を取得するとともに当該監視情報から監視区域内の人数を検出してこの人数の変化を監視し、監視区域内の人数が所定数より少なければ監視区域に存在する不審者を検出する不審者検出処理を実行して不審者の存在を通報するよう作用する。また、監視区域内の人数が所定数以上であれば不審者検出処理の実行を禁止するよう作用する。
【0011】
かかる構成によれば、監視区域内の人数が所定数より少ないときに不審者検出の処理を実行するので、店舗や事務所などの監視区域が繁忙時間帯であるときは不審者検出処理の実行が禁止され、雑踏などのノイズ源による誤判定を抑制して、不審者の検出精度を向上することができる。
【0012】
また、本発明の通報装置において、前記監視情報取得部は、前記監視情報として前記監視区域の画像データ及び/又は前記監視区域内の物体までの距離データを取得し、前記人数検出部は、前記監視情報から前記監視区域内の移動物体を検出して該移動物体の数に基づき監視区域内の人数を検出してもよい。
【0013】
これにより、画像データ及び/又は距離データに基づき移動物体を検出し、移動物体の数を監視区域の人数として検出することで、簡易な処理により容易に人数検出を行うことができる。
【0014】
また、本発明の通報装置において、さらに、予め設定した不審者の特性を不審パターンとして記憶する記憶部を備え、前記不審者検出部は、前記不審者検出処理として、前記監視情報から移動物体を抽出し該抽出した移動物体の外観または行動が予め設定した不審パターンに合致すると不審者と判定してもよい。
【0015】
これにより、人数が所定数より少ない監視区域内の移動物体を抽出して、この移動物体を即ち人体として不審者か否かを判定すればよく、ノイズの影響を抑制しつつ簡易な処理により容易に不審者判定を行うことができる。移動物体が不審者であるか否かを判定する処理としては例えば存在位置や移動軌跡、滞留時間、顔の各部位が隠蔽されていないこと、など種々の判定基準を用いることができる。
【0016】
また、本発明の通報装置において、さらに、前記監視区域の音声データを取得する音声取得部を備え、前記不審者検出部は、前記不審者検出処理として前記音声データを音声認識処理し該音声データに含まれる文字列に基づき前記監視区域に存在する不審者を検出してもよい。
【0017】
これにより、人数が所定数より少ない監視区域内において取得される音声データを音声認識処理し、その結果抽出される文字列から不審者が存在しているか否かを判定すればよく、ノイズの影響を抑制しつつ簡易な処理により容易に不審者判定を行うことができる。音声データに含まれる文字列から不審者を判定する処理としては、例えば予め記憶した危険語句の有無や、語句と音圧の組み合わせによる判定など、種々の判定基準を用いることができる。
【0018】
また、本発明の通報装置において、前記監視区域は複数の分割区域に区分され、前記人数検出部は、前記複数の分割区域のうち予め設定された特定の分割区域の人数を検出し、前記不審者検出部は、前記特定の分割区域内の人数が所定数未満であるときに前記不審者検出処理を実行し、前記特定の分割区域内の人数が所定数以上であるときは前記不審者検出処理の実行を禁止してもよい。この場合、通報装置は前記監視区域を複数の分割区域に区分した区域情報を記憶する記憶部を備える。
【0019】
これにより、外来者の往来が自由となるような特定の区域の人数を特に監視して、この特定の区域が特に閑散としている場合に不審者を監視することができ、正当な者を不審者と誤って判定することを防止しつつ、効果的に不審者の出現を監視することができる。
【0020】
また、本発明の通報装置において、さらに、前記監視区域の利用者数を予め記憶する記憶部と、前記前記監視区域の利用者数に所定の係数を乗じて前記不審者検出処理を実行するための判定に用いる所定数を決定するしきい値決定部と、を備えてもよい。
【0021】
これにより、監視区域によって異なる利用者数から動的に不審者検出処理の実行が許容される人数を算出することができ、通報装置設置時の設定を容易とし、また、設置時の設定忘れによるセキュリティ性の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、監視区域内の人数が所定数より少ないときに不審者検出の処理を実行するので、店舗や事務所などの監視区域が繁忙時間帯であるときは不審者検出処理の実行が禁止され、雑踏などのノイズ源による誤判定を抑制して、不審者の検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の通報装置による通報システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の通報装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の通報装置の監視処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態では、監視区域として金融機関や商店など店舗エリアと事務所エリアとが併設されている区域を監視する場合を例示するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明の通報装置を用いた通報システム1を示す構成図である。
図1は、外部との出入口を有する店舗エリア2a及び事務所エリア2bからなる監視区域2と、監視区域2に設置される監視カメラ3と、この監視カメラ3が接続される通報装置4との関係を模式的に平面図上に示している。
【0026】
ここで、本実施形態において、店舗エリア2aとは、監視区域2の利用者となる店員と外部からの来訪者となる客とが混在して存在し得る領域であり、事務所エリア2bとは店員のみが存在し得る領域である。図1に示すように、店舗エリア2aは、外部との出入口として店舗出入口21が設けられ事務所エリア2bとの間に通用口22が設けられている。また、事務所エリア2bには、前述の通用口22の他に外部との出入口として事務所出入口23が設けられている。
【0027】
図1の例では、店舗エリア2aの全体が撮像可能な位置に監視カメラ3が設置され、また事務所エリア2bの全体が撮像可能な位置にも監視カメラ3が設置されている。これら監視カメラ3と通報装置4とは図示しないLANにより接続され、通報装置4は更に遠隔の監視センタ5と通信回線網6を介して接続されている。
なお、特に図示はしていないが、通報装置4と監視カメラ3とを結ぶLANには熱線センサや開閉センサなどの警備センサや非常ボタンが接続されてよい。
【0028】
監視カメラ3は、監視区域2の監視情報を生成する監視手段である。監視カメラ3は、予め各監視カメラ3を識別するカメラ番号を記憶しており、撮像素子から入力される画像信号を所定の撮影間隔(例えば0.2秒周期、すなわち5fps(フレーム/秒))でデジタル信号に変換し、圧縮符号化処理を行い所定の規格(例えばJPEG規格)に準拠した画像データを生成する。生成された画像データは、LANに出力され通報装置4に送信される。このとき送信される画像データには、カメラ番号が含まれる。なお、監視カメラ3は、マイクから入力される音声信号を圧縮符号化して音声データを生成し、画像データと音声データを多重化してLANに出力してもよい。
【0029】
通報装置4は、監視カメラ3から入力される画像データを受信して、この画像データから監視区域2に存在する人の数を検出する。そして、監視区域2内の人数が予め設定されたしきい値より少なければ監視区域2内に不審者が存在するか否かを判定する不審者検出処理を実行する。不審者検出処理の結果、監視区域2内に不審者が存在することが判定されると、通信回線網6を介して監視センタ5に不審者検出信号を通報するとともに、監視カメラ3から受信する画像データを監視センタ5に送信する。画像データの送信処理は監視センタ5又は監視区域2の利用者から停止入力があるまで継続して行われる。
一方、通報装置4は、監視区域2内の人数がしきい値以上であれば不審検出処理の実行を禁止する。
【0030】
本実施形態において、不審者とは監視区域2の保全を損うおそれのある者をいい、具体的には、外観や行動が予め定めた不審パターンに合致する者のことである。例えば、極端にうつむいたりサングラスやマスク等を装着することで顔の一部分を隠して人相が分らない人物や、特定の領域に踏み込んだり滞留している人物、自ら大声を上げたり周囲の者が悲鳴を上げるような人物などである。
【0031】
監視センタ5は、警備会社などが運営するセンタ装置51を備えた施設である。センタ装置51は、1又は複数のコンピュータで構成されており、本発明に関連する監視センタ5の機能を実現する。監視センタ5では、センタ装置51により各種機器が制御され、通報装置4から受信した不審者検出信号を記録するとともに、通報装置4から送信される画像データをディスプレイ52に表示することで、監視員が監視対象となる複数の監視区域2を監視している。
【0032】
<通報装置>
次に、図2を用いて通報装置4の構成について説明する。図2は、通報装置4の構成を示すブロック図である。
通報装置4は、監視カメラ3及び監視センタ5と通信可能に監視区域2内(本実施形態では事務所エリア2b)に設置されている。
【0033】
通報装置4は、LANに接続される通信I/F(インタフェース)としての監視情報取得部41と、通信回線網6と接続される通信部42と、利用者が入力操作を行う操作部43と、HDDやメモリなどで構成される記憶部44と、MPUやマイコンなどで構成され各部の制御を行う制御部45とを有して概略構成される。
【0034】
監視情報取得部41は、監視カメラ3と接続され、監視区域2の監視情報として監視カメラ3から出力されるカメラ番号及び画像データを受信して制御部45にこれらデータを出力する。
通信部42は、通信回線網6を介してセンタ装置51と接続されて監視センタ5との間で通信を行う。通信部42は、制御部45にて監視区域2内に不審者が存在すると判定されると、自己のアドレス情報を含む不審者検出信号および監視カメラ3が撮像する画像データを監視センタ5に送信する。
操作部43は、利用者の人数など設定情報が入力可能なスイッチである。
【0035】
記憶部44は、ROMやRAM、又はHDDにて構成され自己を特定するためのアドレス情報と各種プログラムなどを記憶しており、更に通報装置4を動作させるための各種情報を記憶する。具体的に、記憶部44は、移動物体を抽出するための背景情報となる基準データと、不審者検出処理を行うか否かを判定するためのしきい値情報と、監視区域2を構成するエリアの情報を示す区域情報を記憶している。また、記憶部44には、監視カメラ3から出力された過去所定時間分の画像データが記憶されている。
【0036】
ここで、記憶部44に記憶される基準データは、後述する人数検出処理にて現在の画像データと比較して監視区域2内の移動物体を抽出するために用いられる比較基準情報であり、予め無人時の監視区域2を撮像して取得された画像データである。
また、しきい値情報は、不審者検出処理の実行を許容する監視区域2内の基準人数を定めた情報であり、通報装置4の設置時や監視区域2の警備プランニング変更時などに制御部により算出される値である。
さらに、区域情報は、監視区域2を構成する店舗エリア2aと事務所エリア2bそれぞれに対応する監視カメラ3や出入口21,22,23、及び画像データに設定される各種領域の情報が予め設定された情報である。
【0037】
制御部45は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成され、上述した各部を制御する。そのために、制御部45は、このマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、監視区域2内の人数を検出する人数検出部451と、不審者検出処理を実行する不審者検出部452と、不審者検出処理を実行するための判定に用いるしきい値を決定するしきい値決定部453と、通信部42による通信処理を制御する通信制御部454を備えている。
【0038】
人数検出部451は、監視情報取得部41で取得した画像データ(監視カメラ3から入力された画像データ)に画像処理を施して移動物体を検出し、この移動物体数から監視区域2内に存在している人の数を検出する。例えば、人数検出部451によって画像データから検出される人数は、画像データ中の変動領域の数である。人数検出部451は、記憶部44に記憶された基準データ(無人時の画像データ)と監視情報取得部41より入力された現在の画像データとを比較して、輝度値の変動が所定以上であった変動画素を抽出するとともに、略連続した変動画素群を1つの変動領域としてグループ化し、各変動領域に固有のラベルでラベリングする。そして、この変動領域の数を検出人数として検出する。
【0039】
人数検出部451は、各監視カメラ3で撮像された画像データについて上記処理を行い、画像データごとに人数を算出することにより、カメラ番号に基づき、店舗エリア2aの人数、事務所エリア2bの人数、および両者を加算した監視区域2の人数を算出する。
【0040】
なお、人数の検出はこれに限らず、連続する所定フレームの画像データにおいて変動領域をトラッキング処理し移動ベクトル成分を抽出して、人数の検出に利用してもよい。例えば、二人の人物がすれちがう場合など、一つの画像データでは二人の人物が重なって写ることがあるが、そのような場合に、連続する複数の画像データで変動領域をトラッキング処理し、ベクトル成分を抽出することによって、ある画像において一つの変動領域(=1人の人物)として検出されていたものが、実は二つの変動領域(=2人の人物)として検出されるべきものであることがわかる。また、変動領域をグループ化してラベリングするときには、人体形状の特徴を有する変動領域モデルを利用してもよい。これにより、人物以外の移動物体(ペットなど)が検出人数としてカウントされるのを防ぐことができる。
【0041】
不審者検出部452は、人数検出部451より出力される人数に応じて不審者検出処理を実行する。本実施形態では、不審者検出部452は、監視区域2内の人数が記憶部44のしきい値情報に定められた基準人数より少なければ監視区域2内に不審者が存在するか否かを判定する不審者検出処理を実行し、基準人数以上であれば不審者検出処理の実行を禁止する。
これにより、店舗エリア2aや事務所エリア2bが繁忙時間帯であるときは不審者検出処理の実行が禁止され、大勢の往来による雑踏により正当な人物が不審者であると誤判定してしまうことを抑制して、不審者の出現可能性が高い期間にのみ検出処理を行うことで検出精度を向上させている。
【0042】
なお、これに限らず、店舗エリア2aの画像データから検出された店舗エリア2aの人数を基準人数と比較して、店舗エリア2aの人数が基準人数より少なければ不審者検出処理を実行し、基準人数以上であれば不審者検出処理の実行を禁止するようにしてもよい。このようにすることで、外来者の出入りがある店舗エリア2a内が特に閑散としている場合に不審者の存在有無を監視することができ、店舗エリア2aに出現する不審者を効果的に監視することができる。
【0043】
不審者検出部452が実行する不審者検出処理による不審者の検知方法は画像に限らず何れの方法であってもよいが、本実施形態では、不審者の画像特徴として、監視情報取得部41で取得した画像データに人相が判別可能な顔特徴部分となる各部位(目、鼻、口)を隠蔽している(顔の各部位が検出できない)人物が存在することを検出する。不審者検出部452は、顔領域において顔特徴部分を検出するための公知の様々な方法を用いることができる。
【0044】
具体的には、不審者検出部452は不審者検出処理として、人数検出部451にてラベリングされた変動領域のエッジ成分を抽出し、エッジ画像データにおいて顔の輪郭形状に近似した楕円形状のエッジ分布を検出して、そのエッジ分布に囲まれた楕円領域内の色情報が、肌色(例えばHSV表色系において色相(H)成分が0から30にある画素)を含む場合に当該楕円領域を顔領域として抽出する。そして、この顔領域内に、顔特徴部分となるエッジ(例えば、目、口などの水平エッジ)が現れているか否かを判定し、このような顔特徴部分が検出できない顔領域を不審者であると判定する。
【0045】
また、不審者検出部452は、顔領域の輝度分布からサングラスとマスクを装着した顔領域を個別に検出する。サングラスとマスクを装着した顔領域は、上方に暗い画素が集中するため縦方向の輝度重心が中心より低い位置となる。また、横方向に見たライン毎の輝度値が小さくなるのに対し縦方向に見たライン毎の輝度値の分散は大きい。さらに、サングラスの部分により輝度値が極端に低いという性質がある。そこで、顔領域の輝度重心のY座標が顔領域の中心より下方にあり、更に、X方向の標準偏差とY方向の標準偏差の比が所定しきい値より大きく、更に、輝度値の低い画素の割合がしきい値以上となる場合に、この顔領域内の画像はサングラスとマスクを装着した顔の画像であると判定して、当該顔領域を不審者であると判定する。
【0046】
不審者検出処理は、これに限らず人物の外観または行動が予め設定した不審パターンに合致することを判定できればよい。
例えば、人物の存在位置に基づき不審者であるかを判定してよく、この場合は画像データ中に重要監視領域を設定し、当該重要監視領域に存在する人物を不審者と判定する。また、人物の移動軌跡に基づき不審者であるかを判定してよく、この場合例えば、ラベリングされた変動領域のトラッキング処理により検出される人物(移動物体)の移動軌跡が画像データ中に設定された店舗出入口21の領域からレジなど重要監視領域に直線的となる場合に当該人物を不審者と判定してよい。また、人物の滞留時間に基づき不審者であるかを判定してよく、この場合は店舗エリア2a内や画像データ中に設定された重要監視領域に所定時間に渡り存在する人物を不審者と判定する。この他、既に知られる種々の方法により不審パターンに合致する人物を抽出可能である。
【0047】
しきい値決定部453は、不審者検出処理の実行を許容する監視区域2内の基準人数を算出して記憶部44のしきい値情報に記憶する。しきい値決定部453は、操作部43から監視区域2の利用者の人数(店員の人数)が入力されて記憶部44に記憶されると、この数に所定の係数(例えば2)を掛け合わせて基準人数を算出する。
基準人数は、不審者判定処理を行うか否かの区域内人数の基準値であって、上述したように強盗などの不審者が人の少ないときを狙って現れることを鑑みると大きな値とすることは好ましくない。そこで、本実施形態では、基準人数を店員数の倍とすることで監視区域2の利用者となる店員の人数に対して外部から来訪する客が同数未満であるときに不審者検出処理を実行するようにしている。
なお、基準人数の設定はしきい値決定部453によらず、直接操作部43から入力されて記憶部44に記憶されてよいことは云うまでもない。
【0048】
通信制御部454は、不審者検出部452により監視区域2内に不審者が存在することが判定されると監視センタ5に不審者検出信号を送信する。不審者検出信号には通報装置4のアドレス情報が含まれる。また、通信制御部454は、不審者の存在が判定されると監視カメラ3から入力される画像データを監視センタ5に送信開始する。送信される画像データにはカメラ番号と通報装置4のアドレス情報がヘッダ情報として付加され、監視カメラ3から入力される都度継続的に現在の画像データを送信する。そして、通信制御部454は、操作部43への画像送信の停止入力による停止信号、又は監視センタ5から送信される画像送信の停止信号の何れかを受け付けると監視センタ5への画像データ送信処理を停止する。
【0049】
<動作の説明>
以上のように構成された通報システム1について、図面を参照してその動作を説明する。ここでは、主として通報装置4に関する動作について説明する。図3は、通報装置4にて繰り返し実行される監視プログラムの動作を示すフローチャートである。
【0050】
通報装置4は、所定周期(例えば0.2秒周期、すなわち5fps(フレーム/秒))ごとに監視情報取得部41より監視カメラ3が撮像した画像データの入力を受け付けて記憶部44に記憶する。図3に示す監視プログラムが実行されると、人数検出部451は、各監視カメラ3で撮像された現在の画像データから移動物体の数を抽出して監視区域2内の人数を検出する(ステップST1)。そして不審者検出部452は、人数検出部451が検出した監視区域2内の人数と、記憶部44のしきい値情報に記憶した基準人数とを読み出して比較し、監視区域2内の人数が基準人数より少ないか否か判定する(ステップST2)。
【0051】
監視区域2の人数が基準人数より少なければ(ステップST2−Yes)、不審者検出部452は不審者検出処理を実行する(ステップST3)。かかる不審者検出処理では、監視区域2内の人物の外観または行動が予め設定した不審パターンに合致することを判定して不審者の存在を判定する。本実施形態では、不審者の画像特徴として、監視情報取得部41で取得した画像データに人相が判別可能な顔特徴部分となる各部位(目、鼻、口)を隠蔽している(顔の各部位が検出できない)人物を不審者として検出している。
【0052】
不審者検出処理の結果、監視区域2内に不審者の存在が判定されると(ステップST4−Yes)、通信制御部454が監視センタ5に不審者検出信号を送信し(ステップST5)、監視カメラ3から入力される画像データを監視センタ5に送信開始する(ステップST6)。画像データの送信は、操作部43から又は監視センタ5から画像送信の停止信号が入力されるまで継続して行われる。操作部43から又は監視センタ5から画像送信の停止信号が入力されると(ステップST7−Yes)、監視センタ5への画像データの送出を停止して処理を終了する(ステップST8)。
【0053】
他方、ステップST2において、監視区域2内の人数が基準人数以上である場合には(ステップST2−No)、ステップST3〜ステップST8の処理をスキップすることで、不審者検出処理の実行を禁止している。従って、監視区域2内の人数が基準人数以上である場合は、監視区域2内に不審者が存在すると判定することを防止して誤判定を抑制することが可能となる。
なお、上述したように、ステップST1の人数検出処理において特定の分割区域としての店舗エリア2aの人数を検出し、ステップST2において店舗エリア2aの人数と基準人数とを比較して、店舗エリア2aの人数が基準人数より少なければ不審者検出処理を実行し、基準人数以上であれば不審者検出処理の実行を禁止するようにしてもよい。このようにすることで、外来者の出入りが頻繁にある店舗エリア2a内が特に閑散としている場合に不審者を監視することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0055】
例えば、本実施形態では、人数検出部451が画像データに基づいて監視区域2の人数を検出する例について説明したが、これに限定されない。すなわち、監視区域2内の人の数が判別できればどのような方法であってもよく、例えば、監視区域2における各出入口21、22、23において人物が通行した方向を検知可能な通行検知センサを設置し、この通行検知センサの検知信号を監視情報として監視情報取得部41に入力して、各出入口を通行した人数と通行方向を検出することで店舗エリア2aおよび事務所エリア2bに入場した人物数と退場した人物数の差を求めて現在存在する人物の数を算出するようにしてもよい。このような通行検知センサとしては、赤外線センサを通行方向に沿って複数設けてその検知順序により通行方向を検知する方法など種々の方法が公知である。
【0056】
また、不審者検出処理において、監視区域2内の人数が基準人数より少ない度合いに応じて不審者と判定するためのレベルを異ならせてもよい。即ち、基準人数より少ない第2の基準人数をしきい値情報に設定し、監視区域2内の人数が基準人数より少なく第2の基準人数以上である場合には明らかな不審者(例えばサングラスとマスクを装着した顔領域の人物)が検出された場合)に不審者が存在すると判定し、第2の基準人数より少ない場合には明らかな不審者に加え、より不審者らしさが低い人物(例えば顔領域内に顔特徴部分となるエッジが現れていない人物)であっても不審者として判定する。
【0057】
また、本実施形態では、監視情報取得部41が監視区域2の監視情報として画像データを取得し、この画像データを用いて人数検出および不審者検出を行う例について説明したが、これに限定されない。すなわち、監視情報としては画像データに限らず、監視区域2の移動物体を識別して認識可能な情報であればよい。例えば、監視カメラ3に換えて、若しくは監視カメラ3の他に、監視手段として監視区域2内にレーザ光を照射しながら所定周期で空間走査を行い、光路上にある物体にて反射した反射光を受光することで、区域内に存在する物体までの距離データと照射方向を得て当該物体の位置を検出するレーザ走査型距離センサを用いてもよい。
【0058】
この場合、監視情報取得部41には、監視情報としてレーザ走査型距離センサから監視区域2内の物体の位置(距離データと照射方向)が入力される。基準データとしては無人時に計測した既設物体の位置が記憶され、この基準データと現在の監視区域2内の物体の位置との差分から変動物体が抽出されてラベリングされ、ラベル数により人数が検出される。
【0059】
不審者検出処理では、上述した実施形態と同様にラベリングされた変動物体(人物)の存在位置や移動軌跡、滞留時間に基づき不審者であるかを判定してよい。即ち、レーザ走査型距離センサの走査範囲内に重要監視領域を設定し、この領域内への人物の進入を監視して予め定めた不審パターン(重要監視領域への進入、重要監視領域への移動軌跡、重要監視領域での滞留時間)に合致する人物を不審者と判定する。
【0060】
また、上述の実施形態に加えて、不審者検出処理では、監視区域2(店舗エリア2a及び事務所エリア2b)に設置したマイクから入力される音声データに基づいて不審者を検出してよい。
この場合、監視情報取得部41はマイクにて集音された音声データを取得する音声取得部としても機能し、不審者検出部452は不審者検出処理として、音声データを音声認識処理して音声データに含まれる文字列に基づき監視区域に不審者が存在しているか否かを判定する。具体的には、不審者検出部452は、音声データから音声特徴量を抽出しパターンマッチングにより音声を切り出して符号の文字列に置き換え、この文字列が予め記憶部に記憶した非常事態が発生したときに発音が予測される危険語句(例えば「助けて」「金を出せ」など)と一致した場合に不審者が存在していると判定する。この場合、危険語句と判定音圧とを対応付けておき、監視区域2の音声データに危険語句が含まれ更にこの語句の音圧が判定音圧以上であるときに不審者の存在を判定することが好適である。
【符号の説明】
【0061】
1 通報システム
2 監視区域
2a 店舗エリア
2b 事務所エリア
3 監視カメラ
4 通報装置
41 監視情報取得部
42 通信部
43 操作部
44 記憶部
45 制御部
451人数検出部
452不審者検出部
453しきい値決定部
454通信制御部
5 監視センタ
51 センタ装置
52 ディスプレイ
6 通信回線網




【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域において不審者の存在を検出し遠隔に通報する通報装置であって、
前記監視区域内における移動物体の監視情報を取得する監視情報取得部と、
前記取得した監視情報に基づいて、前記監視区域内の人数を検出する人数検出部と、
前記監視区域に存在する不審者を検出する不審者検出処理を実行する不審者検出部と、
前記不審者が検出されると通報する通報部と、
を備え、
前記不審者検出部は、前記監視区域内の人数が所定数未満であるときに前記不審者検出処理を実行し、前記監視区域内の人数が所定数以上であるときは前記不審者検出処理の実行を禁止することを特徴とした通報装置。

【請求項2】
前記監視情報取得部は、前記監視情報として前記監視区域の画像データ及び/又は前記監視区域内の物体までの距離データを取得し、
前記人数検出部は、前記監視情報から前記監視区域内の移動物体を検出して該移動物体の数に基づき監視区域内の人数を検出する請求項1に記載の通報装置。

【請求項3】
さらに、予め設定した不審者の特性を不審パターンとして記憶する記憶部を備え、
前記不審者検出部は、
前記不審者検出処理として、前記監視情報から移動物体を抽出し該抽出した移動物体の外観または行動が予め設定した不審パターンに合致すると不審者と判定する請求項1又は2に記載の通報装置。

【請求項4】
さらに、前記監視区域の音声データを取得する音声取得部を備え、
前記不審者検出部は、
前記不審者検出処理として前記音声データを音声認識処理し該音声データに含まれる文字列に基づき前記監視区域に存在する不審者を検出する請求項1から3の何れかに記載の通報装置。

【請求項5】
前記監視区域は複数の分割区域に区分され、
前記人数検出部は、前記複数の分割区域のうち予め設定された特定の分割区域の人数を検出し、
前記不審者検出部は、前記特定の分割区域内の人数が所定数未満であるときに前記不審者検出処理を実行し、前記特定の分割区域内の人数が所定数以上であるときは前記不審者検出処理の実行を禁止する請求項1から4の何れかに記載の通報装置。

【請求項6】
さらに、
前記監視区域の利用者数を予め記憶する記憶部と、
前記監視区域の利用者数に所定の係数を乗じて前記不審者検出処理を実行するための判定に用いる所定数を決定するしきい値決定部と、
を備える請求項1から5の何れかに記載の通報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−227677(P2011−227677A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96355(P2010−96355)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】