説明

連続するファイバ合成部品をモールド成形する方法と装置。

【課題】連続ファイバ合成部品を製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の方法は、(A)ファブリクをモールド領域に供給するステップと、前記ファブリクの連続性は、前記ファブリクの供給ポイントと供給されたファブリクの間で保持され、(B)供給された前記ファブリクにレジンを含浸させるステップと、(C)ワークピースを形成するために、前記レジンを硬化するステップと、(D)前記ワークピースを、前記モールド領域から取り出すステップとを有する。前記(D)ステップは前記ファイバの連続性によって可能であり、これにより更にファブリクが供給ポイントからモールド領域に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続するファイバ合成材料からなる長尺物の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋発電(OTEC:Ocean Thermal Energy Conversion)は、二酸化炭素を発生しない発電手段として注目を集めている。
【0003】
海洋発電(OTEC)システムは、熱帯地方の海水の表面の温かい海水と深海にある冷たい海水との間の温度差を利用して発電するものである。
【0004】
図1に、海洋発電システムである閉鎖ループのOTECシステム100を示す。このOTECシステム100は、海上を浮遊するプラットフォーム102の上に配置される。OTECシステム100の主な構成要素は、閉鎖ループ導管104と、蒸発機106と、温水パイプ108と、ターボ発電機110と、凝縮器(コンデンサ)112と、冷水パイプ116とである。
【0005】
閉鎖ループ導管104は、アンモニアのような低沸点の作業流体103を流す。動作について説明すると、流体である作業流体103が閉鎖ループ導管104にポンプで押し込まれる。温水が温水パイプ108を介して蒸発機106に送り込まれる。温水からの熱が作業流体103を蒸発させる。
【0006】
この蒸発した作業流体103がターボ発電機110内に流れ、そこでタービンを回す。するとタービンは発電機を駆動し電気エネルギーを発生させる。蒸発した作業流体103がターボ発電機110を通過した後、凝縮器112内で凝縮する。この凝縮は、深い場所から冷水パイプ116を介してポンプでくみ上げられた冷たい海水で行われる。この新たに流体に戻った作業流体103が、蒸発機106にポンプ114を介して供給される。このサイクルが繰り返される。
【0007】
海洋発電(OTEC)のシステムは、原理的には簡単であるが、製造上の問題点がある。例えば冷水パイプ116である。冷水を取り出すために、冷水パイプ116は、1000m以上も海中に延びなければならない。OTECプロセスを駆動する冷水と温水の間の温度差が小さいために、この冷水パイプ116は大量の水を凝縮器112に運ばなければならず、そのため過大な要件を満たさなければならない。この異常な長さに加えて、冷水パイプは極めて大きな直径を有さなければならない。商用レベルのプラントにおいては、冷水パイプは約9mの直径を有しなければならない。この様な巨大な冷水パイプを製造し輸送し設置することは大事業である。
【0008】
金属に比べ有利な特性(例、軽く歪みに対する許容差が大きくかつ耐腐食性)のために、ポリマー・マトリックスからなる連続するファイバ合成材料は、冷水パイプを製造する最適な材料である。この様な合成材料を製造する様々なプロセスが利用できる。
【0009】
1000mもの長さのOTEC用の冷水パイプは、1回の製造プロセスで一度に(即ちワン・ショット)でモールド成形するには長すぎる。通常の製造方法を用いる場合には、冷水パイプは、複数の短いパイプ部分をモールド成形し、それらを機械的ジョイントあるいは接着により連結して長いパイプを製造している。短いパイプを複数個作りそれらを機械的に結合して形成された長いパイプの一例は、煙突、トンネルのライナーがある。更に小さな作業でOTECの冷水パイプを製造する様々な試みがなされている。
【0010】
短いパイプを接続して長い冷水パイプを製造しても、接続部分は、接続部分に渡ってラミネートが連続する場合と同様に、強固なものではない。言い換えると、パイプは接合がなければ更に強くなる。これらの接合は別の不利益がある。例えば重量が増したり、製造工程が複雑になったり、元の合成材料よりも信頼性が低くなる点である。更に長さ1000m直径が9mのパイプを陸上と海上を通って目的地(海洋発電プラント)に運ぶことは、困難でありコストが高くなる。このことは、パイプを複数の別々のセグメントで搬送して、それを浮遊プラットフォーム上で組み立てたり、あるいは1本の極めて長いユニットとして予め組立て輸送する場合でも、そうである。この場合、組立(接続)は、垂直方向につり下げてプラットフォームに取り繋がなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
OTECの冷水パイプの製造は、挑戦的なタスクであり、現在の所満足するアプローチは得られていない。
【0012】
本発明の目的は、極めて長くかつ大きな直径の部品をモールド成形する装置と方法を、従来のコストと不利益もなしに、提供することである。特に本発明の方法は、極めて長い物品をそれが使用される現場で、一連のモールドショットで製造し、物品の主な負荷担持部分内で、ショット間でファイバの完全な連続性を維持することである。従って、生成された製品は、一連のショットで形成されるが、最終製品は、ワン・ショットでモールドした製品の利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施例によれば、本発明の方法と装置を用いてOTEC用の冷水パイプを製造できる。本発明の方法は、海洋に浮かぶプラットフォーム上の現場で、実行できる。一実施例においては、そのプラットフォームがOTECプラントの表面部分となる。このアプローチにより、嵩張る中空のパイプを取り扱ったり輸送したりする必要がなくなる。更に大きな利点として、本発明の方法は、原材料(例、ファイバグラス)と、レジンと、個々の長さのコアである「プランク」を、コンパクトな形態で、現場(例、プラットフォーム)まで運ぶだけでよい。
【0014】
製造期間あるいはコストを下げるためには、部品(例冷水パイプ)を形成するモールドショットの回数を制限するのが望ましい。しかしショットの回数が減ると、1回当たりのショットでモールド成形するパイプの長さを長くしなければならない。パイプがモールドされる作業現場の必要高さは、このユニットパイプの長さによる。
【0015】
比較的大きな合成製品例えばOTEC冷水パイプを製造する際には、処理される材料は合成製品の要素例えば出発材料である「コア」として用いられる。このコアが最終製品の形状を決める。従って処理される材料は現場に運ばれそこで製品にモールド成形される。本発明者らは、この様な状況においては、1回当たりのショットでモールドされる長さの許容可能な限界は、標準の輸送用コンテナの長さに基づくことを認識した。その理由は、コンテナを用いて「コア」のセクション(以下プランクとも称する)を輸送するからである。標準の輸送用コンテナの長さは、12mである。従って1セクション当たり12mの最大長さを仮定すると、75回のショットが、900mのパイプをモールド成形するのに必要である。本発明の方法と装置はを用いることにより、75回のショットが2ヶ月の間行われて完了する。これは不合理なものではない。
【0016】
様々な合成製造プロセスがOTEC冷水パイプあるいは他の極端に長い製品のステップ毎のモールド成形に利用できる。このプロセスの大部分は、autoclave moldingとfilament windingとwet layupとsprayupとを有し、これを応用する際には大きな不利益があり、本発明者はこれらを考慮の対象外にした。本発明者らは、Liquid Resin Moldingプロセスは非常に長く大きな連続するファイバ合成製品をモールド成形するのに適したものであることを見出した。
【0017】
液状のレジンモールドプロセスはResin Transfer Molding(RTM)である。RTMは、閉鎖したキャビティを有するモールドの型を用いている。この型は全ての側面が合成体である。RTMの最も単純な形態は、空気がレジンを注入する前にファブリク中に残っていることである。しかし空気の一部がファブリクをレジンで充填する際にベントを介して駆逐される。この残留した空気が存在する状態で許容可能なボイドのコンテンツを得るためには極めて高い圧力(275psig)をレジンが固化する間加えなければならない。圧力を加える目的は、残留した空気のボイドのサイズを許容可能なレベルまで小さくすることである。この大きな内部圧力により大きな力が発生し、この力がモールドの型の対向する面を押し広げるようになることである。小さなモールドの型にとっては、この問題は比較的安価なプロセスを用いて解決することができる。しかしこのアプローチは、大きなモールド型を取り扱う場合には極めて高価になる。
【0018】
別の液状レジンプロセスは、Vacuum-Assisted Resin Transfer Molding(VARTM)である。VARTMは1つの側面を具備するツールを用いる。本明細書において用語「ツール」は、合成材料がモールドされる際にあたる固体状部材/表面を意味し、流体状のレジンが固体に変わる間モールドされた物品の形状を形成する。このツールはモールド中の物品の1つの側面で液体状レジンを保持し、真空バッグが製品の他側で液状レジンを保持する。VARTMの適用においては、一般には大気圧の空気あるいはある場合には高圧のガスが真空バッグの外側入れられる。
【0019】
あるワンショットの間、モールド成形領域で処理中のレジンは液状である。従って背の高いワークピースにおいては、レジン内に水圧の傾斜が存在する。具体的には、モールド領域の上部における内部の絶対圧力が0(最小)であると、モールド領域の底部における真空バッグ内の内部圧力は0よりも幾分大きくなる(これはレジンの比重とモールド領域の高さに依存する)。ワークピースの高さとレジンの密度との積は、ワークピースの底部の水圧が1気圧以上であり、真空バッグは外側に膨らみ、レジンを適正に保有することができなくなる。
【0020】
液状レジンの密度は水のそれに近いので(約1g/cc)、上記の影響/効果は、VARTMにより行われるワークピースの高さに対し約10mの制限を課すことになる。1気圧の圧縮力がワークピースのトップ(見た目には、下側)の合成ラミネートにかかり、0気圧がその底部(見た目には、上側)にかかる。これでは非常に均一でないラミネートの特性が発生してしまう。例えばファイバの容積部分が不均一となる。第2の影響は、VARTMの1回のショットに対する実際の作業高さを約4.5mに制限してしまうことである。900mの長さの冷水パイプを製造するには、1回のショットが4.5m の長さのパイプ部分しか成形できない場合には、200回のショットが必要であり、これは受け入れがたい。
【0021】
本発明が成される前の従来のモールドプロセスは、長く太い合成製品の製造には不向きであった。従来のプロセスの欠点を解決するために、本発明者らは、VARTMの特徴の一部を取りつつ入れた新たなタイプのRTMを開発した。
【0022】
一実施例においては、長尺で大口径の連続ファイバ合成製品をモールド成形する装置は、モールド領域と、流体分配システムと、レジン分配システムと、真空システムとを有する。モールド領域は、固定した硬い外側表面と、固定した硬い内側表面と、前記内側表面と外側表面の間に配置された外側ソフトツールと内側ソフトツールとを有する。内側と外側のソフトツールは、柔軟性のある材料例えば合成製品をモールド成形するのに使用されるシリコンゴムシートを有する。複数のファブリクロールをモールド領域の上方に配置されるファイバ供給領域に配置する。
【0023】
ファブリクをモールド領域内に配置するのを容易にするために、内側ソフト・ツールと外側ソフト・ツールの背後で真空引きされる(即ちソフト・ツールと最も近いハード表面との間の領域が真空引される)。この真空引きにより内側ソフト・ツールは、ハードな内側表面の方向に移動し、外側ソフト・ツールはハードな外側表面の方向に移動する。ロールから出てきたファブリクは、その後モールド領域にコア材料と共に供給される。コア材料がサンドイッチのパイプ壁のコアを構成し、ファブリクがそのサンドイッチの表面シートを形成する。具体的にはファブリクが、内側ソフト・ツールとコアの間に配置され、ファブリクは、外側ソフト・ツールとコアの間にも配置される。一実施例によれば、レジン分散材料(レジンをファブリク内に拡散させる材料)が、ファブリクと共にモールド領域内に引き込まれる。
【0024】
ファブリクとコアがモールド領域内に配置された後、ソフトツールの背後に形成された真空が解かれる。内側と外側の真空シールが、モールド領域の底部で活性化されてソフトツールをワークピースのその部分にシールする。このワークピースは前のモールド操作の間(即ち前のショット)既に形成されたものである。真空引きがソフトツールの外側サイドで行われ、そこに乾いたファブリクが配置される。モールド領域内のファブリクからの空気が抜かれて、これにより、積層構造物の空気ボイドの量を最小にする。ファイバ供給領域とモールド領域の間のガスタイトのシールができるのを回避するために、ドライな多孔質ファブリク上にそして底に、時に難しく更には不可能かも知れないこのようなシールが形成される。ファイバ供給領域とモールド領域は互いに連通して両方とも真空状態となる。
【0025】
その後ファブリクをコアに対し圧縮する。その手段は、実施例によれば、流体を内側ソフト・ツールと外側ソフト・ツールの背後の加えることによって行われる。その後、レジンがソフトツールのファブリク側に導入される。真空がソフトツールのファブリク側に維持され、流体がソフトツールの背後に保持される。レジンがファブリク内に分散し、上記の高さまで立ち上がる(これは加えたレジンの量に依存する)。しかしこの高さは圧縮力が加えられるレジンの領域を超えることはない。圧力がレジンが固化する間ソフトツールの背後で保持される。
【0026】
一実施例においては、レジンが自己支持ソリッドの内側で固化することは、1時間から5時間の間、周囲温度で放置することにより行われる。一実施例においては、固化したレジンは、更にレジンに熱を加えることにより事後固化されて、大量のクロスリンク(ポリマー)を形成する。これにより最終製品の腐食耐力(一般的にレジンの化学的な耐性を最大にする)。この点に関し冷水パイプの様な製品は、水中で管理せずに50年持つ必要があり、厳しい環境に適したレジンがその使用に適したものである。この様なレジンは、ビニールエステルレジンである。例えばDeraKane 8084であり、Ashland Inc. of Covington, KYから市販されている。当業者は、意図したアプリケーションに応じて、ここに開示された装置と方法に使用される適切なレジンを選択できる。
【0027】
レジンが固化した後、ソフトツールの背後の圧力が抜かれ、真空がソフトツールをハードな内側表面と外側表面の方向に引くようにかけられ、かつ固化した積層構造物から離すようにかけられる。
【0028】
固化プロセスが完了すると、モールド領域の下側のシールが解放され、ファブリクロールのブレーキが解放される。するとワークピースはモールド領域の下外側に動く。これはモールド領域の下に配置され、以前に固化した部分を確実に把持と移動装置の制御の基で行われる。一実施例においては、形成中の製品はOTECプラントの冷水パイプであり、モールド装置はOTECプラントのサイトである浮遊プラットフォーム上に配置される。従ってワークピースが解放されると、このワークピースは海の中下側に向かって移動する。
【0029】
ワークピースとファブリクのロールとの間のファイバの連続性があるために、ワークピースがモールド領域の外側下方に移動すると、ファブリクはモールド領域内に引き込まれる。更なるコア材料がモールド領域内に配置され、圧力が再びかけられて、第2のワークピースを形成する。この第2のワークピースは、第1のワークピースとロール状のファイバと共にファイバの連続性を有する。このプロセスは成長する製品が所望の長さに達するまで繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のOTECプラントの概念図。
【図2】本発明の一実施例の連続ファイバ合成製品を製造する装置を表す図。
【図3A】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するステップを表す図。
【図3B】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するステップを表す図。
【図3C】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するステップを表す図。
【図3D】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するステップを表す図。
【図3E】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するステップを表す図。
【図4】本発明の一実施例より連続ファイバ合成製品に対し、連続ファイバ合成製品をマルチ・ショットで製造する方法を表すフローチャート図。
【図5】図2の装置の詳細を表す断面図。
【図6】図2の装置内に配置されたファブリクのロールを表す図。
【図7】図2の装置のモールド領域を通る断面図。
【図8A】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するプロセスを表す図。
【図8B】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するプロセスを表す図。
【図8C】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するプロセスを表す図。
【図8D】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するプロセスを表す図。
【図8E】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するプロセスを表す図。
【図8F】図2の装置を用いて連続ファイバ合成製品を製造するプロセスを表す図。
【図9】モールド領域の領域内のソフトツールに配置された流体を用いて一定の圧縮力を生成する方法を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で使用される用語について以下定義する。
【0032】
「連続ファイバ合成」とは、ファイバが合成品内でに連続している状態である。これは、切られたり短い(不連続な)ファイバとは異なる。
【0033】
「ショット」とは、モールドキャビティ(鋳型の中、溝、穴)内に必要なレジンの量を充填することである。「マルチ・ショット」の製品とは、複数回連続してレジンをモールドキャビティ内に入れて(ショットして)固化させてできた製品である。
【0034】
「ワークピース」とは、モールド領域内で1回のショットで構造体を形成する組立体(例、コア、ファイバ、レジン)、あるいは生成された構造体を意味する。マルチ・ショット製品に関しては、ワークピースは、最終合成製品(例、冷水パイプのセグメント)の一部即ちセグメントを表す。
【0035】
「ファイバの連続性」とは、マルチ・ショットの合成製品を構成する複数のワークピースの間にファイバの不連続性がない、あるいは破損がないものを意味する。このために以下に規定する間にファイバの不連続性が存在してはならない。
(A)合成製品をモールド成形する装置の供給領域にあるファイバとモールド領域にあるファイバとの間。これはレジンがモールド領域に導入される前後を問わない。
(B)モールド領域内のファイバとワークピースとの間。これは、レジンが導入される前後のいずれかにおいて。
(C)供給領域のファイバとワークピースとの間。
【0036】
本発明によるマルチ・ショットの連続ファイバ合成製品は、マルチ・ショットの製品全体に渡ってファイバの連続性を表す。
【0037】
図2に、本発明の装置200の切り欠き断面を表す。同図の実施例において、本発明の装置200を用いて、OTECプラント用の冷水パイプ(例、図1の冷水パイプ116)を製造する。より一般的には、本発明の装置200は、連続ファイバ合成製品、特にマルチ・ショットにより連続ファイバ合成製品を製造するのに適したものであり、更に非常に大きくかつ長い部品(例えばOTECの冷水パイプ又は煙突)の製造に適したものである。
【0038】
一実施例によれば、本発明の装置200は、海上に浮かんだプラットフォーム202の上に配置される。更に別の実施例によれば、本発明の装置200は、OTECプラントの一部として機能する(例えば図1ではプラットフォーム102である)。本発明の装置200は、プラットフォーム202上で垂直方向を向いている。即ち本発明の装置200により製造されるワークピースの軸方向は、垂直を向いている。
【0039】
本発明の装置200は、ファイバ供給領域206とモールド領域212とを有する。ファイバ供給領域206はファイバを連続してモールド領域212に供給する。連続ファイバ合成製品で使用されるファイバは様々な形態を採る。一例として、様々な幅の一方向を向いたテープ、Plain weave fabric、harness satin fabric、braided fabric、stitched fabricがある。
【0040】
通常使用されるファイバは、Owens Corning Technical fabrics社から市販されているファイバ・ガラス、PPG,AGY Zoltek社から市販されているカーボン・ファイバである。本発明で使用されるファイバは、製品のサイズと断面形状に応じて提供される適宜の幅のファブリクの形態である。例えば10mの直径のパイプに対しては、1−2mの幅のファイバが使用される。この様なファイバ・ガラスとしてのファブリクは、Zoltek社からの市販されているカーボン・ファイバである。
【0041】
ファイバ供給領域206とモールド領域212とは、本発明の装置200の他の部分から切り離されている。これは、ファイバ供給領域206内の想像線の閉鎖シール207とモールド領域212の底部にあるシールとで示されている。アクセスするには、コア214がモールド領域212に挿入される必要である。
【0042】
一実施例において、ファブリク210A,210Bの形態のファイバ(以下ファブリク210と総称する)を、ロール208A,208B(以下ロール208を総称する)の上に配置する。ロール208Aとファブリク210Aは、ロール208Bとファブリク210Bの半径方向外側に配置される。図示した一実施例においては、ファブリク210A,210Bとの間に材料としての差はない。一実施例によれば、ファイバの連続性は、ファイバ供給領域206内のファブリク210と、モールド領域212内に供給されるファブリク210との間で維持される。
【0043】
本発明の装置200の内側部分、例えば内側のロール208Bと中央内側シェル213は、垂直中心部材205で安定して支持される。中心部材205は、フレーム204で支持されている。
【0044】
一実施例において、コア214はモールド領域212に配置される。コア材料は、複数のプランク状のセグメント(plank-like segment:板部品)から得られ、モールド領域212内に組み立てられ配置された時に、円筒形の形状あるいはリングの形態を採る。
【0045】
このコア214のリング(円筒形状あるいは他の形状)が、モールド領域212で生成されるワークピースの基本的な形状を決定する。図2に示すように、ファブリク210は、コア214の両側に配置され、ワークピースの製造が準備される。具体的には、ファブリク210Aは、コア214とモールド領域212の外側周囲の間に配置される。ファブリク210Bは、コア214とモールド領域212の内側(213)周囲の間に配置される。
【0046】
コア214の両側にあるファブリク210をコア214に押し当て、このファブリク210にレジンを含浸させ、このレジンを固化するプロセスを、以下説明する。
【0047】
一実施例において、コア214は、モールド領域212内に架空式移動クレーン203を介して下げられる。他の実施例においては、コア214は、引き抜きプロセスで生成されたファイバとポリマ製の中空プランクを含む。このプロセスは、当業者には周知であり、線状の合成形状物を形成する他の方法と比較すると安価で単位重量あたりのコストも安く例えばGlasforms、Strongwellの様な引き抜き器を使用して得られる。本明細書において、当業者は、コア214として使用できる適宜の構造を製造するプロセスを選択できる。他の実施例においては、コアは、他の材料(例、アルミ他)から生成され、他の構造配列(発泡体、シールしたハニカムの内部配置等)を有してもよい。
【0048】
図3A−3Eは、本発明の装置200を用いて製造するOTECプラントのマルチ・ショットで連続ファイバ合成製品(例、冷水パイプ)を製造する外観図である。図4は、本発明の一実施例よりマルチ・ショットで連続ファイバ合成製品を製造する本発明の方法400のフローチャート図である。
【0049】
図4Aと図3A−3Eをおいて、本発明の方法400のステップ402は、乾燥したファブリクをモールド領域に連続的に供給する。これを図3Aに示す。同図において、ロール208からのファブリク210がモールド領域212内に伸びる。ファイバの連続性は、ロール上のファブリク210とモールド領域内のファブリク210との間で、維持される。
【0050】
組立部品316は、コアを使用する実施例においては、コアの底端部に取り付けられる。組立部品316は、複数の目的の内の1つを達成する。組立部品316は「クランプ重り」を冷水パイプに加える。この加えられた重りが、つり下げられた冷水パイプが海水の流れの影響で横方向に動くのを押さえる。一実施例においては、組立部品316を用いて、スクリーン(冷水パイプの底部に配置された場合)を保持して、パイプ内に入ってくる水を濾過する。この様なスクリーニングは、大量の海洋微生物がパイプ内に入らないようにするためである。
【0051】
本発明の方法400のステップ404では、モールド領域内のファブリクにレジンを含浸させる。ステップ406ではレジンを固化する。レジンはモールド領域212内のファブリクに加えられその後それを固化して、ワークピース318を形成する(図3B)。レジン注入ステップと固化ステップの詳細は後述する。
【0052】
本発明の400のステップ408は、ワークピースをモールド領域から解放し、それと同時に更にファブリクをモールド領域内に引き込む。図3Cは、ワークピース318が、モールド領域212から解放され、垂直下方向に海中内に伸びる状態を示す。ワークピース318が海中下方向に移動(ワークピースを把持し移動させる機構の制御の基で行われるが)すると、更なるファブリク210がロール208からモールド領域212内に引き込ま(供給さ)れる。これは、ロール上の10とワークピース318との間のファイバの連続性があるために可能である。
【0053】
ステップ410において、製造中の製品が所望の長さに達したか否かが調べられる。達していない場合には、プロセスはステップ404に戻る。そこで、プロセスは、レジンを、モールド領域にあるファブリク(ワークピースは解放されている)に追加することにより、繰り返される。この実施例においては、生成されつつある冷水パイプの長さは、図3Cに示すように達成されるが、長さが計測され短いと決定されると、このステップは更に継続される。そのため、第2のショットでレジンが、モールド領域212に追加されその後固化され、ワークピース320を生成する(図3D)。ファイバの連続性は、ワークピース318,ワークピース320,ロール208上のファブリク210の間で保持される。
【0054】
図3Eは、モールド領域212から放出され海中に垂直方向に伸びるワークピース320を示す。ワークピース318内のファブリクとワークピース320内のファブリクの間の境界は、継ぎ目がない。即ち、連続性は、両方のワークピースのシートが1回のショットで一体に形成されているかのように、維持される。上記したように、ワークピース320は海中(下方向)に移動すると、更なるファブリク210がロール208から引き出され、モールド領域212内に引き込まれる。
【0055】
本発明の方法400は、ショット・バイ・ショットで繰り返され、パイプの所望の長さが達成するまで行われる。
【0056】
図5,6,7は、本発明の装置200の更なる詳細を示す。図5は本発明の装置200の断面図である。図6は本発明の装置200のファイバ供給領域206の上面図である。図7は本発明の装置200のモールド領域212の断面上面図である。
【0057】
図5において、本発明の装置200のモールド領域212は、外側硬質壁522と内側硬質壁524の間に規定される。モールド領域212の上端部は、コア位置決め装置530で規定され、モールド領域212の下端はシール532で規定される。コア位置決め装置530は、コア214の複数のプランクを、モールド領域212内に固定する。例えば円筒形状を規定するよう固定する。コア位置決め装置530は、シールではない。
【0058】
モールド領域212内に、外側ソフト・ツール526と内側ソフト・ツール528が配置される。内側ソフト・ツール528と外側ソフト・ツール526は、柔軟性のある材料(例えばシリコンラバー等)で形成され、固化した合成製品から容易にはがれる。流体通路ライン536Aと真空引きライン534Aはキャビティ544と連通している。キャビティ544は、外側硬質壁522と外側ソフト・ツール526の間に規定される。同様に、流体通路ライン536Bと真空引きライン534Bはキャビティ5446と連通している。このキャビティ5446は、内側硬質壁524と内側ソフト・ツール528との間に規定される(図7)。
【0059】
レジン注入ライン538Aは、チューブであり、領域540と連通している。領域540は、外側ソフト・ツール526とコア214の間に規定される。同様に、レジン注入ライン538Bは、チューブであり、領域542と連通している。領域542は、内側ソフト・ツール528とコア214の間に規定される。レジンは、モールド領域212内にレジン注入ラインを介して注入される。レジン注入ライン538Aと538Bは、それぞれ、硬質壁522と524と、更にソフト・ツール526と528を貫通する。ソフト・ツールに取り付けられたレジン注入ラインの端部はソフト・ツールと共に移動する。流体シールが維持されながら、レジン注入ラインが硬質壁を貫通する。一実施例おいては、これは、レジン注入ライン538A,538Bを螺旋状に方向付けることにより達成される。本明細書を参照することにより、この目的を達成するメカニズム構成装置を想到できる。図示した実施例においては、図を明瞭にするために、一本のレジン注入ライン538Aが外側硬質壁522を貫通し、一本のレジン注入ライン538Bが内側硬質壁524を貫通するが、複数本のレジン注入ラインを設けてもよい。一実施例においては、レジン注入ライン538には1本のレジン注入ライン538Aと1本のレジン注入ライン538Bのみがある。
【0060】
壁520は、モールド領域212の半径方向外側に配置される。壁520は、外側に伸びファイバ供給領域206を規定する。このファイバ供給領域206内に、ファブリク210Aの複数のロール208Aと、ファブリク210Bの複数のロール208Bが配置される(但し図5にはロールは示していない)。
【0061】
コア位置決め装置530はシールではなく、ファイバ供給領域206はモールド領域212と連通している。ファイバ供給領域206は、その上端部でシール可能に(例えば図5にはシールと上端部とを図示していない。図2の閉鎖シール207を参照のこと)構成される。モールド領域212の底部のシール532と共に、ファイバ供給領域206と流体的に連通している領域540と542が、真空引きされる。
【0062】
ロール208Aから供給されたファブリク210Aが、コア214と外側ソフト・ツール526の間に配置される。ロール208Bから供給されたファブリク210Bは、コア214と内側ソフト・ツール528の間に配置される。
【0063】
図6において、複数のロール208A,208Bが、ファイバ供給領域206内に配置され、その外側境界は壁520により規定される(図5)。一実施例においては、ファイバ供給領域206はモールド領域212の上方に配置される。モールド領域212は外側硬質壁522と内側硬質壁524の間に規定される。一実施例においては、6個のロール208Aが、外側硬質壁522の上方で半径方向外側に配置される。6個のロール208Bが、内側硬質壁524の上方で半径方向内側に配置される。ロール208Aからのファブリク210Aが、モールド領域212内に配置される。モールド領域212は外側硬質壁522とコア214の間に規定されている。ロール208Bからのファブリク210Bは、モールド領域212内に配置される。モールド領域212は、内側硬質壁524とコア214の間に規定される。図6は、1個のロール208Aと1個のロール208Bからモールド領域212内に伸びるファブリクを示す。
【0064】
図6は、外被シートを形成するロール208Aの1つの組と、内被シートを形成するロール208の1つの組のみを示す。一実施例においては、各被シート用に2つのロールの組を用いることもできる。
【0065】
図6の実施例においては、6個のロール208Bが存在し、これらは全て同一水平面上にある。他の実施例においては、全てのファブリク・ロールは同一水平面になくてもよい。例えば、複数のロール208Bは異なる水平面の上にあってもよい。又あるロールは他のロールから60度ずれていてもよい。
この様にロールがずれていると、ある組のファブリク・ロールの間の繋ぎ目は、他の組のロールの真ん中にくることになる。従って、積層したファブリクが固化すると、継ぎ目直近の連続するファイバは、継ぎ目に跨って負荷を担うことになる。これは「剪断力の移動(shear transfer)」によって行われる。この種の配置により、スプライス(繋ぎ目)を重ね合わせ、隣接するロールのエッジの間で更なる剪断力の移動を容易にする。このスプライスを分散する公知技術により、フェイスシートは、周囲方向に完全に連続するファブリクと同一の機械的特性を有する。ファブリクが長手方向に連続していることと組み合わせることにより、フェイスシートは、それらが冷水パイプ全体に渡って完全に連続したかのように機能し、更なる利点を有する。
【0066】
ロール208A,208Bの幅は、十分な円周方向のカバレッジを提供できるよう、モールド成形中の製品のサイズ(例、直径)に応じて、選択される。その結果、あるサイズの製品に大しては、適宜の数のロールを用いて、コア214のファブリクのカバレッジの増減が可能となる。一実施例においては、ロール208Bの幅はロール208Aの幅よりも狭い。これにより、ロール208Aによるより大きな円周カバレッジを与えることができる。
【0067】
図7は、モールド領域212の断面図である。同図において、外側ソフト・ツール526と内側ソフト・ツール528はモールド領域212内に配置される。外側ソフト・ツール526は、外側硬質壁522とコア214の間に配置される。ファブリク210Aは、外側ソフト・ツール526とコア214の間に配置される。内側ソフト・ツール528は、内側硬質壁524とコア214の間に配置される。ファブリク210Bは、内側ソフト・ツール528とコア214の間に配置される。流体通路ライン536A,536Bと、真空引きライン534A,534Bも図7に示す。
【0068】
図8A−8Eは、本発明の装置200で本発明の方法400により、ワークピース(マルチ・ショットによる連続ファイバ合成製品の断面)を製造する行程を示す。これらの図は断面図の全てを示すのではなく、図2の右側のみを示す。その理由は、モールド領域212である時点で全ての円周位置において同一のプロセスが行われるからである。
【0069】
図8Aは、ファブリク210A,210Bとコア214が、モールド領域212内に引き込まれる状態を示す。この作業を容易にするために、外側ソフト・ツール526,内側ソフト・ツール528の背後であるキャビティ544,546内で真空引きされる。真空アシストのレジン転写モールド(この方法は、VARTMの技術を組み込んだものである)で一般的に行われているように、「レジン分散材料」(図示せず)も、ファブリク210A,210Bと共に、モールド領域212内に引き込まれる。「レジン分散材料」の働きにより、レジンは、モールド領域212内のファブリク210A,210Bの全体に渡って急速に拡散できるようになる。適宜のレジン分散材料の一例は、Colbond-USA(Enka,North Carolina)から市販されているEnkaFusion(登録商標)である。レジン分散材料の代わりに、溝をコア214の表面に付けてもよい
【0070】
図8Bにおいて、ファブリク210A,210Bと選択的事項としてのレジン分散材料とコア214がモールド領域212内に完全に伸びた後、空気がモールド領域内のファブリク210A,210Bから抜かれる。そうすることにより、ワークピース内の空気ボイドを減らす。一実施例においては、ファイバ供給領域206内のロール208A,208B上のファブリクは、モールド領域212内のファブリクと流体的には切り離されてはいない。その結果、ファイバ供給領域206を真空引きすることにより、図8Bに示すように、空気はシール532より上にある全てのファブリクから抜かれる。外側ソフト・ツール526と内側ソフト・ツール528のコアの側にある領域540,542も、ファイバ供給領域206とともに、真空引きされる。
【0071】
真空引き後、モールド領域212内のファブリク210A,210B(と、レジン分散媒体)がコア214に押しつけられる(図8C)。これは圧力を、外側ソフト・ツール526と内側ソフト・ツール528の背後にからかけることにより行われる。一実施例においては、圧力は、流体例えば水を、外側ソフト・ツール526と内側ソフト・ツール528の背後のキャビティ544,546に導入することにより、加えられる。他の実施例においては、流体の代わりに気体を用いることもできる。一実施例においては、流体は流体通路ライン536A,536Bを介して、分配される。
【0072】
一実施例においては、流体は、モールド領域212よりも低い位置にある流体貯蔵庫(図示せず)からキャビティ544,546に供給される。流体は、貯蔵庫から取り出されたり戻されたりするが、これはキャビティ544,546内の圧力を変えるだけで、行うことができる。言い換えると、キャビティ544,546内に貯蔵庫から流体を入れるためには、キャビティ544,546を真空引きして、流体通路ライン536A,536Bにあるバルブを開く。流体を保持するためにはこれらのバルブ閉じておく。逆に、領域540と542内の真空引きを止めてバルブを開くことにより、流体は重力で貯蔵庫に戻る。
【0073】
図8Dに示すように、レジンは、モールド領域212の底部に、レジン注入ライン538A,538Bを介して、導入される。一般的には、触媒とレジンを正確な比率で混合する測定/混合ポンプをレジンを供給ラインに導入する。VARTMには低粘度のレジンが用いられ、これは、ポリエステル、ビニールエステル、エポキシ、フェノリック、ポリーミド、ポリアミドを含む。当業者は、レジンを生産される製品に応じて適宜選択することができる。
【0074】
図8Eは、レジン注入プロセスの詳細を示す。レジンの分配を容易にするために、レジン注入ライン538A,538B近傍にあるソフト・ツール526,528の部分は、コア214から離れている。これは、ソフト・ツール526,528と硬質壁522,524との間に配置された管状真空アクチュエータ848で、可能となる。これにより、レジン注入ライン538A,538Bの出口近傍に通路850A,850Bを形成し、再利用可能な装置によりワークピースの円周の周りの近傍にレジンを分配することができる。ソフト・ツール526,528背後にかかった圧力と真空状態にあるファブリク210A,210Bにより、レジンはファブリク中に含浸され、モールド領域212の上方に上がる。モールド領域に導入されたレジンの量は、流れの先端(即ちファブリク内のの上部レジンのレベル)がレベル852の下で停止するように、又レジンがソフト・ツール526,528により圧縮力が加わる領域に留まるように、制御される。かくして、形成されるワークピースの形状は、モールド領域212内のあらゆる場所で制御可能となる。
【0075】
一実施例において、レジン注入ライン538A,538Bと通路850A,850Bは、モールド領域212の底部に配置される。これにより、ワークピースのファブリクを底部からレジンで充填することができる。従って、レジンの流れの先端(即ちショットの間あらゆる点でレジンの最も前進したポイント)は、濡れた領域のトップと真空が引かれるラインに最も近い位置にある。これが好ましいのは、レジン注入前の乾燥したファブリク210A,210Bに対し真空引きされても、ファブリク内に残留空気があるからである。レジンがファブリク210A,210Bを濡らすと、この残留空気が移動し気泡が形成される。この気泡はレジンよりも遙かに密度が低いために、気泡は流体レジン内を上昇する。真空ラインと連通状態にあるレジンの流れのフロントにより、気泡は流れの先端に容易に達し、ワークピースを真空引きする。これにより得られたワークピースは、空気ボイドの量が極めて少なくなる。
【0076】
レジンがワークピースを所望の程度(各ファブリク210A,210Bに対し)まで充填すると、レジン注入ライン538A,538B内のバルブ(図9)を閉じる。ファブリクに行われる真空引きにより、余分なレジンを通路850A,850Bから取り除き、レジンの分散通路を形成するソフト・ツールの一部が、ワークピース上に綴じ込まれる。このレジン分散通路は、ソフト・ツールの一部であるが、固化後レジンを取り出し、リプレースすることなく再利用ができる。これは、従来のVARTMと同様な機能を提供するレジン分散ラインに対し極めて利点がある。この従来から使用されているレジン供給ラインは、レジンの固化プロセスの間そしてライン内に残ったレジンが固化する間、その形状を維持する。従って、従来のレジン供給ラインは、使用後、洗浄するか破棄する必要がある。
【0077】
圧縮力は、レジンが固化する間、ソフト・ツール526,528の背後で、維持される。この圧縮力は、ソフト・ツールを介してワークピースのファブリク上にかかり、これによりファブリクを圧縮して、制御され、所望のファイバの量の合成ラミネートを生成する。この圧縮力のソースは、キャビティ544,546内に導入された流体である。流体レジンの密度とほぼ一致する密度を有する流体を選択することにより、均一の圧縮力がワークピースのあらゆる場所(上から下まで)で維持される。例えば6%の砂糖水の溶液はDeraKane(商標登録)8084 レジン(Ashland,Inc)と同一の密度を有する。均一の圧縮力は極めて背の高い(例えば5m)ワークピースでさえも維持することができる。これは、流体の垂直方向の水圧の傾斜は、流体レジン内の水圧の傾斜と一致するからである。
【0078】
図9を参照すると、ソフト・ツールからファブリクにかかる正味圧縮力は、レジンの圧力とある高さのソフト・ツールの背後にある流体の圧力との差である。その為、この2つの傾斜を図9に示すように等しくすることにより、圧縮力はあらゆる所で一定とすることができる。例えば、図9に示すように、完全な真空が、ファブリク・ロールを包囲するファイバ供給領域206の内側でかつ領域540,542内で引かれると、レジンの流れのフロントの圧力の絶対圧がゼロになり、流体が充填されたキャビティ544,546のトップの圧力が大気圧になると、1気圧の均一な圧縮力があらゆる所でかかる。これは、背の高いワークピースのフェイス・シートのあらゆる場所で高く均一な量のファイバを有するよう製造できる点でかなり利点がある。流体が充填されたキャビティ544,546の上部の圧力は、領域540,542の圧力(真空あるいはほぼ真空)よりも高い圧力である。圧力の選択は、設計的選択事項である。
【0079】
レジンが、自己支持示型の固体に固化した後、図8に示すように、ソフト・ツールの背後の圧力が抜ける。ソフト・ツール526,528が、固化したワークピース854から引き抜かれるが、これはキャビティ544,546を真空引きすることにより行われる。ソフト・ツールが解放される前あるいは解放された後、ワークピース854は事後固化される。例えば一実施例においては、これは、ソフト・ツールの背後のキャビティ544,546を圧縮するために使用された同一の流体を加熱し巡回することにより、行われる。他の実施例においては、事後固化は、熱風をワークピースとソフト・ツールの間で循環させるにより、解放後行われる。
【0080】
ワークピースが完全に固化した後、下側のシール532とロール208A,208Bを止めていたブレーキが、解放される。これにより、ワークピース854がモールド領域212により下側にくる。ワークピース854とロール208A,208B上のファブリクの間のファイバの連続性が存在するために、ワークピースが下がると、更なるファブリクがモールド領域212に供給される。次のコア214が、更なるファブリクと同時にモールド領域212内に挿入される。その後、別のワークピースのモールドが開始の準備状態となる。
【0081】
本発明の方法により、製造中の各ワークピースは、形成中のマルチ・ショットの合成製品の他の全てのワークピースでファイバ(フェイスシート)の連続性が示される。
【0082】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0083】
100 閉鎖ループOTECシステム
102 プラットフォーム
103 作業流体
104 閉鎖ループ導管
106 蒸発機
108 温水パイプ
110 ターボ発電機
112 凝縮器
114 ポンプ
116 冷水パイプ
200 本発明の装置
202 プラットフォーム
203 架空式移動クレーン
204 フレーム
205 垂直中心部材
206 ファイバ供給領域
207 閉鎖シール
208 ロール
210 ファブリク
212 モールド領域
213 中央内側シェル
214 コア
316 組立部品
318 ワークピース
320 ワークピース
図4
402:乾燥したファブリクをモールド領域に連続的に供給する。
404:モールド領域内のファブリクにレジンを含浸させる。
406:レジンを固化する。
408:出来上がったワークピースをモールド領域から引き抜き、同時に乾いたファブリクをモールド領域内に更に引き込む。
410:所望の長さを達成したか?
522 外側硬質壁
524 内側硬質壁
526 外側ソフト・ツール
528 内側ソフト・ツール
530 コア位置決め装置
532 シール
534A 真空引きライン
536A 流体通路ライン
538 レジン注入ライン
540 レジン充填領域
542 レジン充填領域
544 流体充填キャビティ
546 流体充填キャビティ
848 管状真空アクチュエータ
850 通路
852 レベル
854 ワークピース
図9
大気圧 トップ 流体 レジン 高さ 正味圧縮力 絶対圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ハウジングと、
(B)モールド領域(212)と、
前記モールド領域(212)は、前記ハウジング内に配置され、
前記モールド領域(212)は、内側硬質壁(524)と外側硬質壁(522)との間の管状スペースであり、
(C)内側ソフト・ツール(528)と、
前記内側ソフト・ツール(528)は、前記管状スペース内で、前記外側硬質壁(522)よりも内側硬質壁(524)の近くに配置され、
(D)外側ソフト・ツール(526)と、
前記外側ソフト・ツール(526)は、前記管状スペース内で、前記内側硬質壁(524)よりも外側硬質壁(522)に近くに配置され、
(E)第1流体供給システムと、
前記第1流体供給システムは、流体を、前記内側ソフト・ツール(528)と内側硬質壁(524)の間の第1領域に供給し、
(F)レジン分配システムと、
前記レジン分配システムは、レジンを前記管状スペースに分配する
を有する
ことを特徴とする連続ファイバ合成部品を製造する装置。
【請求項2】
(G)第2流体分配システムを更に有し、
前記第2流体分配システムは、流体を、前記外側ソフト・ツール(526)と外側硬質壁(522)の間の第2領域に供給する
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
(H)第1真空システムを更に有し、
前記第1真空システムは、前記第1領域を真空状態におく
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
(I)第2真空システムを更に有し、
前記第2真空システムは、前記第1領域を真空状態におく
ことを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項5】
(J)第3真空システムを更に有し、
前記第3真空システムは、前記内側ソフト・ツール(528)と外側ソフト・ツール(526)の間の第3領域を真空状態にする
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
(K)ファイバ分配システムを更に有し、
前記ファイバ分配システムは、ファイバを、前記モールド領域(212)に供給する
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記ファイバは、複数のロールの上に配置され、
前記複数のロールは、前記ハウジング内でモールド領域(212)の上方に配置される
ことを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
(L)コアを管状スペースに分配するシステムを更に有し、
前記コア(214)は、前記内側ソフト・ツール(528)と外側ソフト・ツール(526)の間に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
連続ファイバ合成部品を製造する方法において、
(A)ファブリクをモールド領域に供給するステップと、
前記ファブリクの連続性は、前記ファブリクの供給ポイントと供給されたファブリクの間で保持され、
(B)供給された前記ファブリクにレジンを含浸させるステップと、
(C)ワークピースを形成するために、前記レジンを硬化するステップと、
(D)前記ワークピースを、前記モールド領域から取り出すステップと、
前記(D)ステップは前記ファイバの連続性によって可能であり、これにより更にファブリクが供給ポイントからモールド領域に供給される
を有する
ことを特徴とする連続ファイバ合成部品を製造する方法。
【請求項10】
(E)所定長さのコア材料を、前記モールド領域内に配置するステップ
を更に有する
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
(F)前記モールド領域内のファブリクを、前記コア材料に強制的に押し当てるステップ、
を更に有する
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記(F)ステップは、前記モールド領域内に配置されたソフトツールの背後に圧力をかけるステップを含む
ことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記(F)ステップは、前記モールド領域内に配置されたソフトツールの背後に流体を供給するステップを含む
ことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記(F)ステップは、前記モールド領域内に配置されたソフトツールの背後に流体を供給するステップを含み、
前記流体の密度は、前記レジンのそれと同一である
ことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記(B)ステップは、前記モールド領域の底からレジンを供給するステップを含む
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記(B)ステップは、前記供給されたファブリクを真空状態におくステップを含む
ことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記(B)ステップは、前記供給されたファブリクとファブリク供給装置を真空状態におくステップを含む
ことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記(B)ステップは、レジンが前記モールド領域(212)に供給される領域近傍にレジン供給通路を形成するステップを含み、
前記レジン供給通路により、レジンは供給されたファブリクの円周周囲に流れる
ことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記レジン供給通路を形成するステップは、前記モールド領域内に配置されたコア材料からソフトツールを引き離すステップを含む
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記ソフトツールをコア材料から引き離すステップは、前記ソフトツールの領域の背後に真空を形成するステップを含む
ことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項9記載の方法が、前記連続ファイバ合成部品を使用する場所で実行される
ことを特徴とする連続ファイバ合成部品を製造する方法。
【請求項22】
前記(D)ステップは、前記ワークピースを海水中に放出するステップを含む
ことを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記連続ファイバ合成部品は、海洋発電用の冷水パイプである
ことを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記(A)−(D)のステップは、複数回繰り返され、
複数のワークピースが形成され、各ワークピースは互いに連続するファイバ合成部品を構成する
ことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項25】
連続ファイバ合成部品を製造する方法において、
前記連続ファイバ合成部品は、複数回のショットにより生成され、
前記ショットは、ファイバの連続性が保持されるように、複数のワークピースを構成し、
(i)ファブリクをモールド領域に供給するステップと、
前記ファブリクの連続性は、前記ファブリクの供給装置とモールド領域に供給されたファブリクの間で保持され、
(ii)供給された前記ファブリクにレジンを含浸させるステップと、
(iii)前記レジンを硬化することにより、ワークピースを形成するステップと
を有する
ことを特徴とする連続ファイバ合成部品を製造する方法。
【請求項26】
各ショットに対し、前記ワークピースが形成された後、更なるファブリクをモールド領域に、前記ワークピースをモールド領域から解放することにより、供給する
ことを特徴とする請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−3C】
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【図3D−3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−524275(P2011−524275A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513748(P2011−513748)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/047388
【国際公開番号】WO2009/152510
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(504242618)ロッキード マーティン コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】