説明

運転支援システムおよび運転支援方法

【課題】定速運転時の乗り心地を改善させる。
【解決手段】車両速度9Dが所定の値に達すると定速運転指令8Dを出力する高速運転支援装置11と、一または複数の車両に搭載され、定速運転指令8Dに基づいて各車両の電動機10のトルクを制御する車両制御装置9と、高速運転支援装置11から送信された定速運転指令8Dを受信する列車情報管理装置8とを備え、列車情報管理装置8は、各車両制御装置9に一括して定速運転指令8Dを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の運転を支援する運転支援システムおよび運転支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速運転中の列車においては、乗務員のハンドル操作が頻繁になるため、一定の速度を維持することが極めて困難であるが、定速運転支援機能を導入することにより、乗務員のハンドル操作をサポートすることが可能である。
【0003】
従来、例えば下記特許文献1に示される運転支援装置では、上述した定速運転支援機能に加え、定速運転中に乗務員のハンドル操作が介入した場合には定速運転を解除し、乗務員のハンドル操作を優先した自由度の高い運転支援を実現している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−269764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の運転支援装置による運転支援では、運転制御に必要な速度演算が各車両に搭載されている車両制御装置において行われていたので、車両制御装置の演算誤差などにより、各車両制御装置に接続される原動機の発生トルクに差が生じていた。すなわち、運転支援装置から送信された定速運転開始指令を各車両の車両制御装置が受信すると、各車両制御装置が維持しようとする速度が相違していた。そのため、車両同士が接近と離反とを繰り返す玉突き状態となり、乗り心地が悪くなるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、定速運転時の乗り心地を改善することができる運転支援システムおよび運転支援方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる運転支援システムは、列車速度が所定の値に達すると定速運転指令を出力する運転支援装置と、一または複数の車両に搭載され、前記定速運転指令に基づいて各車両の電動機のトルクを制御する車両制御装置と、前記運転支援装置から送信された前記定速運転指令を受信する列車情報管理装置とを備え、前記列車情報管理装置は、前記各車両制御装置に一括して前記定速運転指令を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる運転支援システムおよび運転支援方法によれば、走行管理部が各車両に設置された列車情報管理装置に制御情報を一括送信するようにしたので、定速運転時の乗り心地を改善することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる運転支援システムおよび運転支援方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる高速運転支援システムの構成の一例を示す図である。図1に示す高速運転支援システム12は、主たる構成部として、制御開始操作部3、列車保安装置4、ハンドル5、キロ程管理装置6、速度発電機7、高速運転支援装置11、車両制御装置9、電動機10、および列車情報管理装置(Train Information Management System)8を有して構成されている。
【0011】
制御開始操作部3は、定速運転を開始するときに使用するものである。乗務員が当該制御開始操作部3を操作することにより、定速運転の開始を示す制御開始指令1Dを出力することが可能である。
【0012】
列車保安装置4は、ATC(Automatic Train Control)からATC制限速度を示す制限速度情報2Dを受信することが可能である。ハンドル5は、乗務員によってアクセルまたはブレーキ操作が行われたときに、ハンドル操作情報3Dを出力することが可能である。なお、列車保安装置4としてATCを示しているが、これに限定されるものではなく、ATS(Automatic Train Stop)などの運転保安装置を使用することも可能である。
【0013】
キロ程管理装置6は、列車がどのキロ程にいるのかを管理し、キロ程情報4Dを出力することが可能であり、駅間の走行基準時間に対する定時運転を行うときなどに用いられる。速度発電機7は、車両の速度センサから得られた速度信号5Dを出力することが可能である。そのため、例えば、先頭車両の速度信号5Dのみ受信するように構成すれば、走行管理部1は各車両で検知される速度を用いなくても列車の速度を認識し走行制御を行うことが可能である。
【0014】
高速運転支援装置11は、走行管理部1と速度規制区間記憶部2を有して構成されている。なお高速運転支援装置11は、先頭車両などに搭載されるが、これに限定されるものではない。
【0015】
速度規制区間記憶部2には、速度規制区間における規制速度情報17Dなどが予め格納されている。なお、速度規制区間記憶部2に格納される情報は、これに限定されるものではない。例えば、列車速度、走行距離に基づく残走距離や路線勾配などにより、予めキロ程毎の到達予測時間を演算しておき、この到達予測時間を運行開始前に速度規制区間記憶部2に格納しておき、定速運転に使用するように構成してもよい。
【0016】
走行管理部1は、制御開始指令1Dを受信したとき、規制速度情報17Dまたは制限速度情報2Dに従い、定速運転を行うために必要な目標速度を設定する。目標速度は、制限速度情報2Dまたは規制速度情報17Dから約3km/h減じた値で示されるが、これに限定されるものではない。この定速運転制御は、列車の速度を上述した目標速度に追従するようにノッチを調整して実現している。このノッチに関する情報は、走行管理部において、キロ程を一定速度で走行できるノッチ情報として記録されているので、走行距離などから、当該キロ程情報に対応するノッチを導き出し、列車の速度が目標速度に追従するように、追従する速度を中心にして、ノッチを上げたり、または下げたりしながら運転速度を微調整することで定速運転を実現している。なお、ここでは、規制速度情報17Dを速度規制区間記憶部2から読み出して使用する態様となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、規制速度情報17Dやキロ程情報などを、予め持ち運び可能な記憶媒体などに記録し、列車運行前に受け渡し、高速運転支援装置11に外部接続する態様であってもよい。
【0017】
走行管理部1は、速度信号5Dに基づいて現在の列車速度を目標速度に近づけるため、力行指令6Dまたはブレーキ指令7Dを出力することが可能である。車両速度9Dが目標速度10Dに近づくと、走行管理部1は定速運転指令8Dを出力し、定速運転に切り替えることが可能である。また、走行管理部1は、定速運転中にハンドル操作情報3Dを受信した場合、定速運転指令8Dの出力を中断し、手動運転に切り替えることが可能である。また、手動運転に切り替えた後に、制御開始指令1Dを受信した場合、定速運転指令8Dを出力し再び定速運転に切り替えることが可能である。
【0018】
列車情報管理装置8は、走行管理部1から送信された情報を一括管理することが可能である。図1において、列車情報管理装置8は1台のみ記載されているが、これに限定されるものではなく、列車情報管理装置8を各車両に搭載し、車両間に敷設されている伝送路に接続することにより、力行指令11D、ブレーキ指令12D、定速運転指令13D、車両速度14D、および目標速度15Dなどの情報を、例えば先頭車両の列車情報管理装置8から先頭車両以外の車両に搭載されている列車情報管理装置8に中継することが可能である。また各列車情報管理装置8は、これらの情報を車両制御装置9aから車両制御装置9nに送信することが可能である。なお、上述した伝送路は情報伝達の一手段であり、これに限定されるものではない。
【0019】
列車を加速する場合、車両制御装置9aから車両制御装置9nは、列車情報管理装置8から送信された目標速度15D、車両速度14D、および力行指令11Dに基づいて、電動機10aから電動機10nの回転トルク制御信号(以下「トルク制御指令」という)を出力することが可能である。
【0020】
車両速度14Dが目標速度15Dに近づいた場合、定速運転に切り替えるために、車両制御装置9aから車両制御装置9nは、定速運転指令13Dに基づいてトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを出力することが可能である。また、列車を減速する場合、ブレーキ指令12Dに基づいて、図示されていない制動装置を制御することが可能である。
【0021】
図1において、走行管理部1から列車情報管理装置8に送信される情報と、列車情報管理装置8から車両制御装置9aから車両制御装置9nに送信される情報の記号は相違するが、同種の内容を示しているものとする。
【0022】
なお、前者の記号は、先頭車両に搭載されている高速運転支援装置11から、例えば先頭車両に搭載されている第一の列車情報管理装置8に送信される情報と、第一の列車情報管理装置8から各車両に搭載されている第二の列車情報管理装置8に中継される情報を包含しているものとする。また、後者の記号は、第一の列車情報管理装置8から先頭車両に搭載されている車両制御装置9aに送信される情報と、第二の列車情報管理装置8から各車両に搭載されている車両制御装置9bから車両制御装置9nに送信される情報を包含しているものとする。
【0023】
図2は、加速運転から定速運転に切り替わる状態の一例を示す図である。図2の左側に示される列車Aは、停止状態の場合において、乗務員が制御開始操作部3を操作したとき、走行管理部1は、制御開始指令1Dを受信し、列車情報管理装置8に力行指令6Dを送信する。
【0024】
列車情報管理装置8は、車両制御装置9aから車両制御装置9nに力行指令11Dを送信する。車両制御装置9aから車両制御装置9nは、受信した力行指令11Dに基づいて、トルク制御指令16aからトルク制御指令16nを生成する。そして、生成されたトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを電動機10aから電動機10nに送信することにより、加速運転を行うことが可能である。
【0025】
走行管理部1は、制限速度情報2Dを超えない範囲で目標速度10Dを演算しており、車両速度9Dが所定の値に達したとき、定速運転に移行するために力行指令6Dの送信を中断する。走行管理部1は、目標速度10D、定速運転指令8D、および目標速度10Dを出力し、それらの情報を受信した列車情報管理装置8は、車両制御装置9aから車両制御装置9nに目標速度15D、定速運転指令13D、および車両速度14Dを送信することが可能である。
【0026】
車両制御装置9aから車両制御装置9nは、列車情報管理装置8から送信された目標速度15Dに基づいて、トルク制御指令16aからトルク制御指令16nを生成する。そして、生成されたトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを電動機10aから電動機10nに送信することにより、定速運転に切り替えることが可能である。
【0027】
なお、上述した所定の値は、加速運転から定速運転に移行するときの車両速度を示しており、設定された目標速度の高さや、列車の加速度などに応じて任意に設定することが可能である。例えば、停止状態からの最初の目標速度が高く設定されている場合において、加速度を高めにしたときは、目標速度の達する前の早い段階で加速運転を中断し、惰性で目標速度に到達するように構成してもよいし、加速度を低めにしたときは、目標速度の直前まで加速運転を継続し、滑らかに定速運転に切り替えるように構成してもよい。
【0028】
このように、高速運転支援装置11は車両速度が所定の値に達すると定速運転指令8Dを出力し、各車両の列車情報管理装置8は、高速運転支援装置11から送信された定速運転指令8Dを受信し、また各車両の車両制御装置9aから車両制御装置9nは、各車両の列車情報管理装置8から送信された定速運転指令13Dに基づいて、各車両の電動機10aから電動機10nのトルクを制御するように構成されている。また、列車情報管理装置8は、各車両の車両制御装置9aから車両制御装置9nに、一括して定速運転指令8Dを送信することが可能である。
【0029】
なお、本実施の形態1において、高速運転支援システム12および高速運転支援装置11の呼称には「高速」と付しているが、これは新幹線などにおいて、200.0km/hなどの高速巡航時の速度を一例にしたものであり、これに限定されるものではない、また、高速運転支援システム12および高速運転支援装置11は、「高速」運転時における「定速」運転に限定されるものではなく、例えば「低速」運転時における定速運転にも使用することが可能である。
【0030】
図6は、定速運転への切り替えを決定するフローの一例を示すフローチャートである。列車が停止しているときに乗務員が制御開始操作部3を操作すると、走行管理部1は、制御開始指令1Dを受信する(ステップS601)。
【0031】
走行管理部1は、力行指令6Dを列車情報管理装置8に送信し(ステップS602)、列車情報管理装置8は、車両制御装置9aから車両制御装置9nに力行指令11Dを送信する(ステップS603)。車両制御装置9aから車両制御装置9nは、力行指令11Dに基づいて、トルク制御指令16aからトルク制御指令16nを生成し、生成されたトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを電動機10aから電動機10nに送信し、加速運転を行う(ステップS604)。
【0032】
車両速度9Dが目標速度10Dに近づいた場合(ステップS605,Yes)、走行管理部1は力行指令6Dの送信を中断し、列車情報管理装置8に定速運転指令8Dを出力する(ステップS606)。車両制御装置9aから車両制御装置9nは、列車情報管理装置8から送信された目標速度15Dに基づいて、トルク制御指令16aからトルク制御指令16nを生成する。そして、生成されたトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを電動機10aから電動機10nに送信することにより、定速運転に切り替える(ステップS607)。
【0033】
車両速度9Dが目標速度10Dに近づいていない場合(ステップS605,No)、走行管理部1は力行指令6Dを送信し続け加速運転を継続する。
【0034】
以上に説明したように、実施の形態1の高速運転支援システム12によれば、高速運転支援装置11から送信された各制御指令、すなわち、力行指令11Dだけでなく、目標速度15D、車両速度14D、および定速運転指令13Dなどを、各車両に搭載されている列車情報管理装置8から車両制御装置9aから車両制御装置9nに一括送信し、車両制御装置9aから車両制御装置9nは、一括送信された各制御指令に対応するトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを生成するので、列車Aが停止している状態において、制御開始操作部3を操作した場合、加速運転を開始し、車両速度9Dが所定の値に達したとき、定速運転に移行することが可能である。
【0035】
また、定速運転に移行した場合において、従来は、速度を維持するために必要な回転トルク速度を、各車両の車両制御装置9aと車両制御装置9nが個別に生成していたために、各車両の速度は、例えばA車両は199.5km/h、B車両は200.0km/h、C車両は200.5km/hというように、若干ではあるが異なった速度を維持しようとするために車両間の玉突き状態が発生していた。しかし、実施の形態1の高速運転支援システム12によれば、各車両に搭載されている列車情報管理装置8は、各車両の車両制御装置9aと車両制御装置9nに各制御指令を一括送信し、この各制御指令基づいて、定速運転に必要なトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを生成するようにしたので、各車両の車両制御装置9aから車両制御装置9nの演算誤差が無くなり、電動機10aから電動機10nの回転トルクを均一し、車両間の玉突き状態が低減され、乗り心地を改善することが可能である。
【0036】
また、車両間の玉突き現象が低減されることにより、連結器部分を中心とした部品などの劣化を抑え、メンテナンスサイクルを長くし、保守費用を低減することも可能である。さらに、定時運転時において、各車両の車両制御装置9aから車両制御装置9nおよび電動機10aから電動機10nなどのパワーユニットの出力変動に伴うエネルギー損失を低減することができるので、編成全体の速度は保ちながら損失を減少させることができ、省エネ運転に寄与することも可能である。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる高速運転支援システム12は、ATCから送信される制限速度情報2Dが変化した場合、または速度規制区間記憶部2に記録されている速度制限区間が近づいた場合において、目標速度10Dを変更し、各車両に搭載されている列車情報管理装置8は、力行指令6D、ブレーキ指令7D、または定速運転指令8Dを一括送信するようにしたので、定速運転開始操作を行わなくても、新たな目標速度に対応した定速運転を続行することができるように構成されている。
【0038】
図3は、制限速度情報の変化に従い目標速度が切り替わる状態の一例を示す図である。列車が定速運転中に制限速度情報2Dの速度が変化(例えば上昇)した場合、走行管理部1は、新たな制限速度情報2Dの速度に対応する目標速度10Dを演算する。
【0039】
走行管理部1は、定速運転指令8Dの出力を中断し、力行指令6Dを列車情報管理装置8に送信する。車両制御装置9aから車両制御装置9nは力行指令11Dに従い加速運転を行う。また走行管理部1は、車両速度9Dが所定の値に達したときに力行指令6Dの出力を中断し、列車情報管理装置8に目標速度10D、定速運転指令8D、および車両速度9Dを出力し、再び定速運転を行うことが可能である。
【0040】
なお図3においては、制限速度情報2Dが上昇した場合を示しているが、制限速度情報2Dが下降した場合には、走行管理部1は、列車情報管理装置8にブレーキ指令7Dを送信するように構成されている。
【0041】
図4は、規制速度情報の変化に従い目標速度が切り替わる状態の一例を示す図である。列車が定速運転中に規制速度情報17Dの速度が変化した場合、走行管理部1は、新たな目標速度10Dを演算する。走行管理部1は、定速運転指令8Dの出力を中断し、ブレーキ指令7Dを列車情報管理装置8に送信する。
【0042】
車両制御装置9aから車両制御装置9nは、ブレーキ指令12Dに従い減速運転を行う。また走行管理部1は、車両速度9Dが所定の値に達したときにブレーキ指令7Dの出力を中断し、列車情報管理装置8に目標速度10D、定速運転指令8D、および車両速度9Dを出力し、再び定速運転を行うことが可能である。
【0043】
なお、上述した所定の値は、減速運転から定速運転に移行するときの車両速度を示しており、規制速度情報17Dまたは制限速度情報2Dにより変化した後の目標速度と変化前の目標速度との差や、列車の減速度などに応じて任意に設定することが可能である。例えば、最初の目標速度と変化した後の目標速度の差が大きい場合において、減速度を高くしたときは、目標速度の達する前の早い段階で減速運転の中断し、惰性で目標速度に到達するように構成してもよい。また減速度を低くしたときは、目標速度の直前まで減速運転を継続し、滑らかに定速運転に切り替えるように構成してもよい。
【0044】
図7は、目標速度の切り替えを決定するフローの一例を示すフローチャートである。定速運転をしている場合において(ステップS701)、制限速度情報2Dの速度が変化したとき(ステップS702,Yes)、走行管理部1は新たな目標速度10Dを演算する(ステップS704)。制限速度情報2Dまたは規制速度情報17Dの速度が定速運転の速度よりも上昇し、加速する必要がある場合(ステップS705,Yes)、走行管理部1は、力行指令6Dを列車情報管理装置8に送信し、車両制御装置9aから車両制御装置9nは、力行指令11Dに従い加速運転を行う(ステップS706)。車両速度9Dが所定の値に達したとき(ステップS708,Yes)、走行管理部1は力行指令6Dの送信を中断し、列車情報管理装置8に定速運転指令8Dを出力する(ステップS709)。車両制御装置9aから車両制御装置9nは、目標速度15D、定速運転指令13D、および車両速度14Dを受信し、再び定速運転を行う(ステップS710)。
【0045】
制限速度情報2Dの速度が変化していない場合において(ステップS702,No)、規制速度情報17Dの速度が変化したときは(ステップS703,Yes)、ステップS704以降のプロセスを行う。
【0046】
制限速度情報2Dの速度が変化していない場合において(ステップS702,No)、規制速度情報17Dの速度が変化していないときは(ステップS703,No)、定速運転を継続する(ステップS701)。
【0047】
制限速度情報2Dまたは規制速度情報17Dの速度が定速運転の速度よりも下降し、減速する必要がある場合(ステップS705,No)、走行管理部1は、ブレーキ指令7Dを列車情報管理装置8に送信し、車両制御装置9aから車両制御装置9nは、ブレーキ指令12Dに従い減速運転を行う(ステップS707)。
【0048】
なお、ステップS707において、減速するための手段としてブレーキ指令12Dを出力しているが、これに限定されるものではなく、例えば定速運転指令8Dの出力を中断して、自然に減速するように構成してもよい。
【0049】
車両速度9Dが目標速度10Dに近づいていない場合(ステップS7085,No)走行管理部1は力行指令6Dを送信し続け、加速運転を継続(ステップS706)または減速運転を継続する(ステップS707)。
【0050】
以上に説明したように、実施の形態2の高速運転支援システム12によれば、列車が定速運転中に制限速度情報2Dまたは規制速度情報17Dが変化した場合、各車両に搭載されている列車情報管理装置8は、車両制御装置9aから車両制御装置9nに対して、力行指令6Dまたはブレーキ指令7Dを一括送信し、さらに、両速度9Dが所定の値に達したとき、定速運転指令8Dを一括送信するようにしたので、定速運転開始操作を行わなくても、新たな目標速度に対応した定速運転を続行することが可能である。
【0051】
実施の形態3.
実施の形態3にかかる高速運転支援システム12は、列車が定速運転中に乗務員によるハンドル操作3Dを受信した場合、各車両に搭載されている列車情報管理装置8は、定速運転を中断し、再び制御開始指令1Dを受信したとき、力行指令11Dまたは定速運転指令8Dを一括送信することにより、定速運転を中断して自動運転に切り替え、制御開始操作部3を操作すれば定速運転を再開できるように構成されている。
【0052】
図5は、ハンドル操作が介入した状態の一例を示す図である。列車が定速運転中にハンドル操作情報3Dを受信した場合、走行管理部1は定速運転を中断する。図5において、ハンドル操作が介入したことにより、列車の運転速度が一時的に下降した状態を示しているが、再び定速運転を行う場合、乗務員は、制御開始操作部3を操作すればよい。
【0053】
制御開始操作部3を操作したときの高速運転支援システム12の動作は以下の通りである。走行管理部1は制御開始指令1Dを受信し、列車情報管理装置8は、車両制御装置9aから車両制御装置9nに力行指令11Dを送信する。車両制御装置9aから車両制御装置9nは、受信した力行指令11Dに従い、電動機10aから電動機10nにトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを送信し、加速運転を開始する。
【0054】
車両速度9Dが所定の値に達したとき、定速運転に移行するため、走行管理部1は力行指令6Dの送信を中断する。走行管理部1は、目標速度10D、定速運転指令8D、および車両速度9Dを出力し、それらの情報を受信した列車情報管理装置8は、車両制御装置9aから車両制御装置9nに目標速度15D、定速運転指令13D、および車両速度14Dを送信する。
【0055】
なお、上述した所定の値は、加速運転から定速運転に移行するときの車両速度を示しており、手動運転中の速度と目標速度の差や、目標速度に達するまでの加速度などに応じて任意に設定することが可能である。例えば、手動運転中の速度と目標速度の差が大きい 場合、加速度を高めにしたときは、目標速度の達する前の早い段階で加速運転を中断し、惰性で目標速度に到達するように構成してもよいし、加速度を低く設定している場合には、目標速度の直前まで加速運転を継続し、スムースに定速運転に切り替えるように構成してもよい。
【0056】
車両制御装置9aから車両制御装置9nは、列車情報管理装置8から送信された目標速度15Dに従い、電動機10aから電動機10nにトルク制御指令16aからトルク制御指令16nを送信する。
【0057】
なお、図5において、ハンドル操作を終了してから定速運転を再開するまでの間において、再びハンドル操作を介入し手動運転に切り替えることができるように構成してもよい。
【0058】
図8は、定速運転の再開を決定するフローの一例を示すフローチャートである。定速運転をしている場合において(ステップS801)、ハンドル操作情報3Dを受信したとき(ステップS802,Yes)、走行管理部1は、定速運転を中断する(ステップS803)。その後、走行管理部1が制御開始指令1Dを受信した場合(ステップS804,Yes)、走行管理部1は、力行指令6Dを列車情報管理装置8に送信し、車両制御装置9aから車両制御装置9nは、力行指令11Dに従い、加速運転を行う(ステップS805)。車両速度9Dが目標速度10Dに近づいたとき(ステップS806,Yes)、走行管理部1は力行指令6Dの送信を中断し、列車情報管理装置8に定速運転指令8Dを出力する(ステップS807)。車両制御装置9aから車両制御装置9nは、目標速度15D、定速運転指令13D、および車両速度14Dを受信し、再び定速運転を行う(ステップS808)。
【0059】
ハンドル操作情報3Dを受信しないとき(ステップS802,No)、定速運転を継続する(ステップS801)。
【0060】
走行管理部1が制御開始指令1Dを受信しない場合(ステップS804,No)、定速運転を中断した状態を継続する。
【0061】
車両速度9Dが目標速度10Dに近づいていない場合(ステップS806,No)走行管理部1は力行指令6Dを送信し続け、加速運転を継続する(ステップS805)。
【0062】
以上に説明したように、実施の形態3の高速運転支援システム12によれば、ハンドル操作情報3Dを受信した場合、各車両に搭載されている列車情報管理装置8は、定速運転を中断し、また再び制御開始指令1Dを受信したとき、車両制御装置9aから車両制御装置9nに対して、力行指令11Dを一括送信し、さらに車両速度9Dが所定の値に達したとき、定速運転指令8Dを一括送信するようにしたので、例えば定速運転中に霧などが発生し、乗務員の判断により減速する場合には、ハンドル操作を行えば、定速運転を中断して乗務員のハンドル操作による自動運転に切り替えることが可能であり、また手動運転中であっても制御開始操作部3を操作すれば定速運転を再開できるので、自由度の高い運転を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる高速運転支援システムの構成の一例を示す図である。
【図2】加速運転から定速運転に切り替わる状態の一例を示す図である。
【図3】制限速度情報の変化に従い目標速度が切り替わる状態の一例を示す図である。
【図4】規制速度情報の変化に従い目標速度が切り替わる状態の一例を示す図である。
【図5】ハンドル操作が介入した状態の一例を示す図である。
【図6】加速運転から定速運転への切り替えを決定するフローの一例を示すフローチャートである。
【図7】目標速度が切り替えを決定するフローの一例を示すフローチャートである。
【図8】定速運転の再開を決定するフローの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 走行管理部
2 速度規制区間記憶部
3 制御開始操作部
4 列車保安装置
5 ハンドル
6 キロ程管理装置
7 速度発電機
8 列車情報管理装置
9a,9b,9n 車両制御装置
10a,10b,10n 電動機
11 高速運転支援装置
12 高速運転支援システム
16a,16b,16n トルク制御指令
1D 制御開始指令
2D 制限速度情報
3D ハンドル操作情報
4D キロ程情報
5D 速度信号
6D,11D 力行指令
7D,12D ブレーキ指令
8D,13D 定速運転指令
9D,14D 車両速度
10D,15D 目標速度
17D 規制速度情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車速度が所定の値に達すると定速運転指令を出力する運転支援装置と、
一または複数の車両に搭載され、前記定速運転指令に基づいて各車両の電動機のトルクを制御する車両制御装置と、
前記運転支援装置から送信された前記定速運転指令を受信する列車情報管理装置と、
を備え、
前記列車情報管理装置は、前記各車両制御装置に一括して前記定速運転指令を送信することを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記運転支援装置は、定速運転の開始を示す制御開始指令を受信した場合、地上装置から送信される制限速度情報に基づく定速運転の目標速度、力行指令、および列車速度を出力し、
前記列車情報管理装置は、前記各車両制御装置に一括して前記力行指令、前記目標速度、および前記列車速度を出力することを特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記運転支援装置は、速度規制区間における規制速度情報または前記制限速度情報が変化した場合、前記規制速度情報または前記制限速度情報に対応する新たな目標速度を出力することを特徴とする請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記運転支援装置は、ハンドル操作情報を受信した場合、前記定速運転指令の出力を中断することを特徴とする請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項5】
列車の運転支援方法であって、
列車速度が所定の値に達すると一の定速運転指令を出力する出力ステップと、
前記一の定速運転指令を各車両に一括して送信する送信ステップと、
前期一の定速運転指令に基づくトルク制御指令を各車両の電動機毎に生成する生成ステップと、
前記トルク制御指令を各電動機に出力する制御指令出力ステップと、
を含むことを特徴とする運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−178417(P2010−178417A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15292(P2009−15292)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】