説明

運転支援情報送信装置および運転支援情報送信方法

【課題】運転支援情報を適切な間隔で送信することができない。
【解決手段】本発明の運転支援情報送信装置は、無線チャネルを介して他車両の危険度合いを示す他車両危険レベルを含む危険レベル情報と他車両の運転支援情報とを受信する受信部と、自車両の運転支援情報の生成に用いる自車両の情報を取得する取得部と、危険レベル情報および他車両の運転支援情報と自車両の情報とに基づき自車両危険レベルを判定する危険レベル判定部と、無線チャネルの使用状態を監視するチャネル使用状態監視部と自車両の情報に基づき運転支援情報を生成する運転支援情報生成部と、無線チャネルの使用状態と他車両危険レベルと判定された自車両危険レベルとに基づき運転支援情報の送信間隔を決定する決定部と、無線チャネルを介して送信間隔に基づき運転支援情報を他車両に送信する送信部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の状態を示す運転支援情報を送信する運転支援情報送信装置および運転支援情報送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路面状態など、周囲の状況に自動的に対応する先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)の研究が盛んに行われている。
【0003】
ASVでは、各種の車載レーダーや車載カメラ画像の解析に加え、車両同士で無線通信を行う、車々間通信の活用に力が入れられている。各車両は、車々間通信により、車載レーダーや車載カメラでは把握することができない見通し外にいる他車両の情報や、自車両の状態を示す運転支援情報を、車両間で相互に交換することができ、交換した情報を自車両の運転支援に利用することができる。
【0004】
また、道路等に適宜配置された路側装置と、車両が無線通信を行う路車間通信の検討も行われている。路車間通信は、道路等に設置されたセンサーやカメラ等の路側装置で収集された情報を車両に送信するものである。各車両は、路側装置から送信された情報を自車両の運転支援に利用することができる。
【0005】
ここで、一般的に車々間通信や路車間通信では、頻繁に周囲の状況が変動することから、アクセス方式として自律分散的にネットワークを構成するCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式が検討されている。
【0006】
しかし、CSMA/CA方式では、渋滞等により車両の密度が高くなった場合に、通信の衝突回数が増大し、車々間通信や路車間通信で通信される情報の信頼性や即時性の確保ができず、通信品質が低下するという問題が生じる。
【0007】
この問題に対応するために、特許文献1には、自車両の周囲に存在する他車両の数を推定し、推定した他車両の数に基づき、自車両の運転支援情報を送信する送信間隔を変更することにより、CSMA/CA方式において、通信の衝突回数の増大を抑え、通信品質が低下することを防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−278045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、自車両の周囲に存在する他車両の数にのみ基づいて、運転支援情報の送信間隔を決定するため、車両異常等により周囲の他車両に危険を及ぼす可能性の高い車両も、通常の車両も、同じ送信間隔でしか運転支援情報の送信を行わない。そのため、特許文献1に開示された方法では、車両の運転支援に利用される運転支援情報を、他車両に危険を及ぼす可能性の有無等の、各車両の状態に応じて、より適切な送信間隔で送信することができないという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、車両の集中による通信品質の低下を防止しつつ、各車両の状態に基づき、より適切な送信間隔で、運転支援情報を送信することができる運転支援情報送信装置および運転支援情報送信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の運転支援情報送信装置は、
車両に搭載され、前記車両の状態を示す運転支援情報を送信する運転支援情報送信装置であって、
無線チャネルを介して、他車両の危険度合いを示す他車両危険レベルを含む危険レベル情報と前記他車両の運転支援情報とを受信する受信部と、
自車両の運転支援情報の生成に用いる前記自車両の情報を取得する取得部と、
前記受信された危険レベル情報および前記他車両の運転支援情報と、前記取得された自車両の情報とに基づき、前記自車両危険レベルを判定する危険レベル判定部と、
前記無線チャネルの使用状態を監視するチャネル使用状態監視部と、
前記取得された自車両の情報に基づき、前記運転支援情報を生成する運転支援情報生成部と、
前記無線チャネルの使用状態と、前記受信された他車両危険レベルと、前記判定された自車両危険レベルとに基づき、前記生成された運転支援情報の送信間隔を決定する決定部と、
前記無線チャネルを介して、前記決定された送信間隔に基づき、前記生成された運転支援情報を、前記他車両に送信する送信部と、を有する。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の運転支援情報送信方法は、
車両に搭載され、前記車両の状態を示す運転支援情報を送信する運転支援情報送信装置による運転支援情報送信方法であって、
無線チャネルを介して、他車両の危険度合いを示す他車両危険レベルを含む危険レベル情報と前記他車両の運転支援情報とを受信する受信ステップと、
自車両の運転支援情報の生成に用いる前記自車両の情報を取得する取得ステップと、
前記受信された危険レベル情報および前記他車両の運転支援情報と、前記取得された自車両の情報とに基づき、前記自車両危険レベルを判定する危険レベル判定ステップと、
前記無線チャネルの使用状態を監視するチャネル使用状態監視ステップと、
前記取得された自車両の情報に基づき、前記運転支援情報を生成する運転支援情報生成ステップと、
前記無線チャネルの使用状態と、前記受信された他車両危険レベルと、前記判定された自車両危険レベルとに基づき、前記生成された運転支援情報の送信間隔を決定する決定ステップと、
前記無線チャネルを介して、前記決定された送信間隔に基づき、前記生成された運転支援情報を、前記他車両に送信する送信ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転支援情報送信装置は、自車両の状態を示す運転支援情報を送信する送信間隔を、通信を行う無線チャネルの使用率と、自車両および他車両の危険レベルに基づき決定するので、車両の集中による通信品質の低下を防止しつつ、各車両の状態に基づき、より適切な送信間隔で、運転支援情報を送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の運転支援情報送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】危険レベル通知メッセージの構成の一例を示す図である。
【図3】危険レベル設定要求メッセージの構成の一例を示す図である。
【図4】運転支援情報の構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の運転支援情報送信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】チャネル使用率と運転支援情報の送信間隔の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の運転支援情報送信装置100の構成を示すブロック図である。
【0017】
なお、本発明の運転支援情報送信装置100は、車両に搭載されるものである。
【0018】
図1に示す運転支援情報送信装置100は、車々/路車間通信部101と、チャネル使用状態監視部102と、他車両情報蓄積部103と、ナビゲーション部104と、車載レーダー部105と、車内ネットワーク監視部106と、自車両情報蓄積部107と、危険レベル判定部108と、警告部109と、車両制御部110と、運転支援情報生成部111と、送信可否判定部112と、を有する。なお、車々/路車間通信部101は、受信部および送信部の一例である。また、送信可否判定部112は、決定部の一例である。また、ナビゲーション部104、車載レーダー部105および車内ネットワーク監視部106は、取得部の一例である。
【0019】
車々/路車間通信部101は、他車両または道路等に適宜配置された路側装置と車々間通信や路車間通信を行い、後述する危険レベル通知メッセージ200や、危険レベル設定要求メッセージ300や、運転支援情報400の送受信を行う。車々/路車間通信部101の例としては、無線LAN装置、DSRC(Dedicated Short Range Communications)通信装置、アマチュア無線装置、トランシーバ装置等がある。
【0020】
チャネル使用状態監視部102は、車々/路車間通信部101が無線通信を行う無線チャネルの使用状態を監視し、記録する。そして、チャネル使用状態監視部102は、記録した無線チャネルの使用状態に基づき、無線チャネルの使用率を算出する。無線チャネルの使用率は、例えば、単位時間当たりに無線チャネルが占有されている時間の割合で表される。
【0021】
他車両情報蓄積部103は、他車両より受信した、危険レベル通知メッセージ200や、危険レベル設定要求メッセージ300や、運転支援情報400に含まれる他車両に関する情報を、受信時刻とともに蓄積する。なお、以下では、他車両情報蓄積部103に蓄積された他車両に関する情報を、他車両情報という。
【0022】
ナビゲーション部104は、GPS(Global Positioning System)や、ジャイロセンサーや、地図情報を記録した記録媒体を有し、ドライバーに対して、目的地までの誘導を行う。また、ナビゲーション部104は、GPSや、ジャイロセンサーや、記録した地図情報に基づき、自車両の位置情報や、自車両が走行中の道路区分(高速道路や一般道路)、道路幅、次の交差点までの距離、周囲の構造物等の情報といった自車両の走行位置に基づく情報を取得する。
【0023】
車載レーダー部105は、例えば、車両の前後左右に設けられ、他車両との車間距離や障害物との距離を、電磁波またはレーザー等によって測定することにより、自車両の周囲の情報を取得する。また、車載レーダー部105は、3次元スキャンにより、周囲の他車両または障害物の大まかな形状を把握することも可能である。
【0024】
車内ネットワーク監視部106は、不図示の、車内の横滑り防止装置、ABSといった様々な制御装置と接続されるネットワークの監視を行うことにより、ネットワークに接続された制御装置から、自車両の走行状態を示す情報を取得する。
【0025】
車内ネットワーク監視部106が取得する自車両の走行状態を示す情報は、横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)からの前後左右の加速度、ハンドル舵角、アクセル開度等の情報、ABS(Antilocked Braking System)からのブレーキ状態、車輪速度等の情報、LIN(Local Interconnect Network)コントローラからのウインカーやハザードランプ等の点灯の状態等の情報である。
【0026】
自車両情報蓄積部107は、ナビゲーション部104、車載レーダー部105および車内ネットワーク監視部106が取得した自車両に関する情報を、情報を取得した時刻とともに蓄積する。なお、以下では、自車両情報蓄積部107に蓄積された自車両に関する情報を、自車両情報という。
【0027】
危険レベル判定部108は、他車両情報蓄積部103に蓄積された他車両情報と、自車両情報蓄積部107に蓄積された自車両情報とに基づき、自車両の危険レベルの判定を行う。ここで、危険レベルとは、自車両情報や他車両情報に基づき、自車両に危険を及ぼす可能性があると判定された危険要素が、自車両に及ぼす危険度合いを示すものであり、例えば、自車両のスピードが高い、あるいは、自車両と他車両のそれぞれの予想通過ラインが交差するという危険要素に対して、それぞれの危険要素に対する危険度合いを示すものである。
【0028】
また、危険レベル判定部108は、自車両および他車両の危険レベルの変更の要否の判定を行う。そして、危険レベル判定部108は、自車両の危険レベルの変更が必要であると判定した場合、他車両に対して自車両の危険レベルの通知を行う危険レベル通知メッセージ200を生成し、車々/路車間通信部101を介して、周囲の他車両に送信する。
【0029】
また、危険レベル判定部108は、自車両に危険を及ぼす可能性が高い他車両の危険レベルの変更が必要と判定した場合、他車両に対して危険レベルの変更の要求を行う危険レベル設定要求メッセージ300を生成し、車々/路車間通信部101を介して、自車両に危険を及ぼす可能性が高い他車両に送信する。
【0030】
警告部109は、危険レベル判定部108で、自車両に危険を及ぼす可能性があると判定された危険要素のうち、ドライバーへの通知が必要な情報を出力する。警告部109の具体例としては、液晶ディスプレー、LED表示板、音声合成装置、ブザー、チャイム等がある。
【0031】
車両制御部110は、危険レベル判定部108で、自車両に危険を及ぼす可能性があると判定された危険要素のうち、警告部109によるドライバーへの通知では危険の回避が間に合わないと判断される危険要素に対し、自車両の自動制御により、回避を試みる。自動制御の具体例としては、自動ブレーキや自動操舵等がある。
【0032】
運転支援情報生成部111は、自車両情報蓄積部107に蓄積された自車両情報から自車両の状態を示す運転支援情報400を生成する。
【0033】
送信可否判定部112は、従来の方法と同様に、キャリアセンスを行うことにより、運転支援情報400の送信の可否を判定する。また、送信可否判定部112は、チャネル使用状態監視部102で算出される車々/路車間通信部101が無線通信を行う無線チャネルの使用率と、他車両情報蓄積部103に蓄積された他車両情報に含まれる他車両の危険レベルと、危険レベル判定部108で判定された自車両の危険レベルとに基づいて運転支援情報400の送信間隔の決定を行う。
【0034】
次に、本実施形態の運転支援情報送信装置100が、他車両と送受信を行う危険レベル通知メッセージ200の構成について説明する。
【0035】
図2は、危険レベル通知メッセージ200の構成の一例を示す図である。
【0036】
図2に示すように、危険レベル通知メッセージ200は、自車両IDと、危険レベルと、危険レベル設定理由と、危険レベル設定有効期間と、を有する。
【0037】
自車両IDは、危険レベル通知メッセージ200を送信した車両を特定するIDを示すものである。
【0038】
危険レベルは、他車両に対して通知を行う、自車両の危険レベルを示すものである。
【0039】
危険レベル設定理由は、他車両に対して通知を行った自車両の危険レベルを設定した理由を示すものである。
【0040】
危険レベル設定有効期間は、他車両に対して通知を行った自車両の危険レベルを他車両で有効とする期間を示すものである。
【0041】
このように、運転支援情報送信装置100は、自車両を特定する自車両IDと、自車両の危険レベルを示す危険レベルと、を有する危険レベル通知メッセージ200を送信することにより、他車両に対して、自車両の危険レベルを通知することができる。
【0042】
また、運転支援情報送信装置100は、他車両から送信された危険レベル通知メッセージ200を受信することにより、他車両の危険レベルを他車両情報蓄積部103に蓄積することができる。
【0043】
次に、本実施形態の運転支援情報送信装置100が他車両と送受信を行う危険レベル設定要求メッセージ300の構成について説明する。
【0044】
図3は、危険レベル設定要求メッセージ300の構成の一例を示す図である。
【0045】
図3に示すように、危険レベル設定要求メッセージ300は、要求先車両IDと、要求危険レベルと、要求理由と、要求有効期間と、を有する。
【0046】
要求先車両IDは、危険レベルの変更の要求を行う他車両を特定するIDを示すものである。
【0047】
要求危険レベルは、危険レベルの変更の要求を行う他車両に対して変更を要求する危険レベルを示すものである。
【0048】
要求理由は、他車両に対して危険レベルの変更を要求する理由を示すものである。
【0049】
要求有効期間は、他車両に対して危険レベルの変更を要求する期間を示すものである。
【0050】
このように、運転支援情報送信装置100は、危険レベルの変更の要求を行う他車両を特定するIDと、危険レベルの変更の要求を行う他車両に対して変更を要求する危険レベルと、を有する危険レベル設定要求メッセージ300を送信することにより、他車両に対して、自車両の危険レベルの変更の要求を行うことができる。
【0051】
また、運転支援情報送信装置100は、他車両から送信された危険レベル設定要求メッセージ300を受信することにより、他車両情報蓄積部103に蓄積された他車両の危険レベルを変更することができる。
【0052】
次に、本実施形態の運転支援情報送信装置100が他車両と送受信を行う運転支援情報400の構成について説明する。
【0053】
図4は、運転支援情報400の構成の一例を示す図である。
【0054】
図4に示すように、運転支援情報400は、自車両IDと、自車両位置と、自車両速度と、自車両進行方向と、自車両進行方向加速度と、自車両シフト位置と、自車両ブレーキ状態と、自車両ウインカー状態と、自車両ハザード状態と、自車両アクセルペダル位置と、を有する。
【0055】
自車両IDは、自車両を特定するIDを示すものである。
【0056】
自車両位置は、自車両の位置を示すものである。
【0057】
自車両速度は、自車両の走行速度を示すものである。
【0058】
自車両進行方向は、自車両が進行している方向を示すものである。
【0059】
自車両進行方向加速度は、走行中の自車両の進行方向の加速度を示すものである。
【0060】
自車両シフト位置は、走行中の自車両のシフトの位置を示すものである。
【0061】
自車両ブレーキ状態は、自車両のブレーキの動作状態を示すものである。
【0062】
自車両ウインカー状態は、自車両のウインカーの点灯状態を示すものである。
【0063】
自車両ハザード状態は、自車両のハザードランプの点灯状態を示すものである。
【0064】
自車両アクセルペダル位置は、自車両のアクセルペダルの位置を示すものである。
【0065】
運転支援情報送信装置100は、自車両の状態を示す運転支援情報400を、他車両と互いに送受信することにより、周囲に存在する他車両の状態を把握することができる。
【0066】
図5は、本発明の一実施形態の運転支援情報送信装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、車々/路車間通信部101は、他車両から危険レベル通知メッセージ200または危険レベル設定要求メッセージ300の受信の有無を確認する(ステップS1)。
【0068】
他車両から危険レベル通知メッセージ200または危険レベル設定要求メッセージ300を受信した場合(ステップS1:YES)、他車両情報蓄積部103は、受信時刻とともに、危険レベル通知メッセージ200または危険レベル設定要求メッセージ300に含まれる他車両に関する情報を蓄積する(ステップS2)。
【0069】
次に、車々/路車間通信部101は、他車両から運転支援情報400の受信の有無を確認する(ステップS3)。
【0070】
他車両から運転支援情報400を受信した場合(ステップS3:YES)、他車両情報蓄積部103は、受信時刻とともに、運転支援情報400に含まれる他車両に関する情報を蓄積する(ステップS4)。
【0071】
次に、自車両情報蓄積部107は、ナビゲーション部104、車載レーダー部105および車内ネットワーク監視部106で取得した自車両の走行位置に基づく情報、自車両の周囲の情報および自車両の走行状態を示す情報を、情報を取得した時刻とともに、自車両情報として蓄積する(ステップS5)。
【0072】
なお、ここで蓄積される情報の例としては、自車両の位置、進行方向、速度、加速度、走行中の道路に関する情報、前方の交差点に関する情報、周囲の構造物に関する情報、前後左右の車両/障害物に関する情報、自車両のシフト位置、ブレーキ状態、ウインカー状態、ハザードランプの点灯状態、アクセルペダル位置、各ECU(Engine Control Unit)の動作状態等である。
【0073】
次に、危険レベル判定部108は、他車両情報蓄積部103に蓄積された他車両情報と、自車両情報蓄積部107に蓄積された自車両情報とに基づき、自車両の危険レベルの判定を行う(ステップS6)。
【0074】
具体的には、危険レベル判定部108は、自車両が見通しの悪い交差点に近づいた場合、高速道路の合流点に近づいた場合、横滑り防止装置(ESC)が動作した場合、ABSが動作した場合等、自車両情報蓄積部107に蓄積された自車両情報に、自車両に危険を及ぼす可能性があると判定された危険要素が存在する場合に、その危険要素の重要度に従って自車両の危険レベルを上昇させ、その危険要素が消滅すれば自車両の危険レベルを低下させる。
【0075】
また、危険レベル判定部108は、他車両情報蓄積部103に蓄積された他車両情報と、自車両情報蓄積部107に蓄積された自車両情報とに基づき、自車両の危険レベルを上昇させることがある。例えば、他車両と自車両のそれぞれの予想通過ラインが交差する場合や、急速に車間距離が縮まっている場合などがその例である。
【0076】
また、危険レベル判定部108は、他車両からの危険レベル設定要求メッセージ300の受信によっても、自車両の危険レベルを変更する。
【0077】
次に、危険レベル判定部108は、自車両の危険レベルの変更が必要かを判定する(ステップS7)。
【0078】
自車両の危険レベルの変更が必要であると判定された場合(ステップS7:YES)、車々/路車間通信部101は、自車両の危険レベルの通知を行う危険レベル通知メッセージ200を、周囲の他車両に対して送信する(ステップS8)。
【0079】
次に、危険レベル判定部108は、他車両の危険レベルの変更が必要かを判定する(ステップS9)。
【0080】
具体的には、危険レベル判定部108は、自車両の危険レベルの判定に際し、他車両の影響があり、その他車両からの運転支援情報400の送信頻度を上げる必要がある場合に、他車両情報蓄積部103に蓄積された、その他車両の危険レベルが、自車両が要求する危険レベルよりも低ければ、その他車両からの運転支援情報400の送信頻度を上げることができるように、自車両の危険レベルの判定に影響のある他車両の危険レベルを上げる変更が必要であると判定する。
【0081】
自車両の危険レベルの判定に影響のある他車両の危険レベルの変更が必要であると判定された場合(ステップS9:YES)、車々/路車間通信部101は、他車両に対して危険レベルの変更の要求を行う危険レベル設定要求メッセージ300を、危険レベルの変更の要求を行う他車両に対して送信する(ステップS10)。
【0082】
次に、チャネル使用状態監視部102は、車々/路車間通信部101が無線通信を行う無線チャネルの使用率を算出する。具体的には、チャネル使用状態監視部102は、無線チャネルの使用状態を監視し、記録する。そして、チャネル使用状態監視部102は、記録した無線チャネルの使用状態を一定時間で集計することにより、無線チャネルの使用率を算出する(ステップS11)。
【0083】
次に、送信可否判定部112は、運転支援情報400の送信の可否の判定および送信間隔を決定する(ステップS12)。
【0084】
具体的には、送信可否判定部112は、従来の方法と同様に、キャリアセンスを行うことにより、運転支援情報400の送信の可否を判定する。また、送信可否判定部112は、チャネル使用状態監視部102で算出された無線チャネルの使用率と、他車両情報蓄積部103に蓄積された他車両情報に含まれる他車両の危険レベルと、危険レベル判定部108で判定された自車両の危険レベルとに基づき運転支援情報400の送信間隔を決定する。
【0085】
図6は、チャネル使用率と運転支援情報400の送信間隔の関係の一例を示すグラフである。
【0086】
図6に示すグラフの縦軸は、運転支援情報400の送信間隔を示す。また、グラフの横軸は、チャネル使用率を示す。また、グラフ中の実線は、車両の危険レベルが「高」の場合の、チャネル使用率と運転支援情報400の送信間隔の関係を示す。同様に、グラフ中の破線、点線、一点鎖線は、それぞれ、危険レベルが「中」(周囲に危険レベルが「高」の車両なし)、危険レベルが「中」(周囲に危険レベルが「高」の車両あり)、危険レベルが「低」の場合の、チャネル使用率と運転支援情報400の送信間隔を示す。
【0087】
図6に示すように、送信可否判定部112は、基本的に、チャネル使用率が高くなると、運転支援情報400の送信間隔が長くなるように、送信間隔を決定する。
【0088】
また、送信可否判定部112は、チャネル使用率が同じ場合でも、自車両の危険レベルに応じて、運転支援情報400の送信間隔を決定する。すなわち、送信可否判定部112は、自車両の危険レベルが高いほど、運転支援情報400の送信間隔が短くなるように、送信間隔を決定する。
【0089】
また、送信可否判定部112は、自車両の危険レベルが同じ場合でも、他車両情報蓄積部103に蓄積された周囲に存在する他車両の危険レベルに応じて、運転支援情報400の送信間隔を決定する。すなわち、送信可否判定部112は、自車両の周囲に自車両よりも危険レベルの高い他車両が存在する場合には、周囲に自車両よりも危険レベルの高い他車両が存在しない場合よりも、運転支援情報400の送信間隔が短くなるように、送信間隔を決定する。
【0090】
送信可否判定部112にて運転支援情報400の送信が可能と判定された場合(ステップS12:YES)、運転支援情報生成部111は、自車両情報蓄積部107に蓄積された自車両情報に基づき、運転支援情報400を生成する。そして、車々/路車間通信部101は、送信可否判定部112にて決定された送信間隔で、自車両の運転支援情報400を送信する(ステップS13)。
【0091】
以下、ステップS1から同様の動作を繰り返す。
【0092】
上述したように、本実施形態においては、運転支援情報送信装置100は、自車両の状態を示す運転支援情報400を送信する送信間隔を、通信を行う無線チャネルの使用率と、自車両および他車両の危険レベルに基づき決定する。このように、運転支援情報送信装置100は、無線チャネルの使用率と、各車両の危険レベルに応じて、運転支援情報の送信間隔を決定するため、車両の集中による通信品質の低下を防止しつつ、各車両の状態に基づき、より適切な送信間隔で、運転支援情報400を送信することができる。
【0093】
また、本実施形態においては、運転支援情報送信装置100は、他車両に対して危険レベルの変更を要求する危険レベル設定要求を送信し、自車両に対して危険を及ぼす可能性のある他車両の危険レベルを上げる。そのため、危険レベルを上げられた他車両は、運転支援情報400を、より高い頻度で送信することになり、運転支援情報送信装置100は、自車両に対して危険を及ぼす可能性のある他車両から、より多くの運転支援情報400を取得することができる。
【符号の説明】
【0094】
100 運転支援情報送信装置
101 車々/路車間通信部
102 チャネル使用状態監視部
103 他車両情報蓄積部
104 ナビゲーション部
105 車載レーダー部
106 車内ネットワーク監視部
107 自車両情報蓄積部
108 危険レベル判定部
109 警告部
110 車両制御部
111 運転支援情報生成部
112 送信可否判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の状態を示す運転支援情報を送信する運転支援情報送信装置であって、
無線チャネルを介して、他車両の危険度合いを示す他車両危険レベルを含む危険レベル情報と前記他車両の運転支援情報とを受信する受信部と、
自車両の運転支援情報の生成に用いる前記自車両の情報を取得する取得部と、
前記受信された危険レベル情報および前記他車両の運転支援情報と、前記取得された自車両の情報とに基づき、前記自車両危険レベルを判定する危険レベル判定部と、
前記無線チャネルの使用状態を監視するチャネル使用状態監視部と、
前記取得された自車両の情報に基づき、前記運転支援情報を生成する運転支援情報生成部と、
前記無線チャネルの使用状態と、前記受信された他車両危険レベルと、前記判定された自車両危険レベルとに基づき、前記生成された運転支援情報の送信間隔を決定する決定部と、
前記無線チャネルを介して、前記決定された送信間隔に基づき、前記生成された運転支援情報を、前記他車両に送信する送信部と、
を有する運転支援情報送信装置。
【請求項2】
前記無線チャネルの使用状態は、前記自車両および他車両による、前記無線チャネルの使用率である、請求項1記載の運転支援情報送信装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記無線チャネルの使用率が高いほど、前記運転支援情報の送信間隔を長くする、請求項2記載の運転支援情報送信装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記自車両の周囲に前記他車両危険レベルが所定のレベルよりも高い他車両が存在する場合、前記自車両の周囲に前記他車両危険レベルが所定のレベルよりも高い他車両が存在しない場合に比べて、前記運転支援情報の送信間隔を長くする、請求項1から3のいずれか1項に記載の運転支援情報送信装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記自車両危険レベルが高いほど、前記運転支援情報の送信間隔を短くする、請求項1から4のいずれか1項に記載の運転支援情報送信装置。
【請求項6】
前記他車両危険レベルの変更を要求する危険レベル設定要求情報を生成する危険レベル設定要求情報生成部を更に有し、
前記送信部は、前記自車両危険レベルの判定に、前記他車両から送信される運転支援情報の送信間隔を短くする必要があると判断した場合、前記無線チャネルを介して、前記生成した危険レベル設定要求情報を、前記他車両に送信する、請求項5記載の運転支援情報送信装置。
【請求項7】
前記送信部は、前記危険レベル判定部にて、前記自車両危険レベルが変更された場合、前記無線チャネルを介して、前記変更された危険レベル情報を、前記他車両に送信する、請求項1から6のいずれか1項に記載の運転支援情報送信装置。
【請求項8】
車両に搭載され、前記車両の状態を示す運転支援情報を送信する運転支援情報送信装置による運転支援情報送信方法であって、
無線チャネルを介して、他車両の危険度合いを示す他車両危険レベルを含む危険レベル情報と前記他車両の運転支援情報とを受信する受信ステップと、
前記自車両の運転支援情報の生成に用いる前記自車両の情報を取得する取得ステップと、
前記受信された危険レベル情報および前記他車両の運転支援情報と、前記取得された自車両の情報とに基づき、前記自車両危険レベルを判定する危険レベル判定ステップと、
前記無線チャネルの使用状態を監視するチャネル使用状態監視ステップと、
前記取得された自車両の情報に基づき、前記運転支援情報を生成する運転支援情報生成ステップと、
前記無線チャネルの使用状態と、前記受信された他車両危険レベルと、前記判定された自車両危険レベルとに基づき、前記生成された運転支援情報の送信間隔を決定する決定ステップと、
前記無線チャネルを介して、前記決定された送信間隔に基づき、前記生成された運転支援情報を、前記他車両に送信する送信ステップと、
を有する運転支援情報送信方法。
【請求項9】
前記無線チャネルの使用状態は、前記自車両および他車両による、前記無線チャネルの使用率である、請求項8記載の運転支援情報送信方法。
【請求項10】
前記決定ステップは、前記無線チャネルの使用率が高いほど、前記運転支援情報の送信間隔を長くする、請求項9記載の運転支援情報送信方法。
【請求項11】
前記決定ステップは、前記自車両の周囲に前記他車両危険レベルが所定のレベルよりも高い他車両が存在する場合、前記自車両の周囲に前記他車両危険レベルが所定のレベルよりも高い他車両が存在しない場合に比べて、前記運転支援情報の送信間隔を長くする、請求項8から10のいずれか1項に記載の運転支援情報送信方法。
【請求項12】
前記決定ステップは、前記自車両危険レベルが高いほど、前記運転支援情報の送信間隔を短くする、請求項8から11のいずれか1項に記載の運転支援情報送信方法。
【請求項13】
前記他車両危険レベルの変更を要求する危険レベル設定要求情報を生成する危険レベル設定要求情報生成ステップを更に有し、
前記送信ステップは、前記自車両危険レベルの判定に、前記他車両から送信される運転支援情報の送信間隔を短くする必要があると判断した場合、前記無線チャネルを介して、前記生成した危険レベル設定要求情報を、前記他車両に送信する、請求項12記載の運転支援情報送信方法。
【請求項14】
前記送信ステップは、前記危険レベル判定ステップにて、前記自車両危険レベルが変更された場合、前記無線チャネルを介して、前記変更された危険レベル情報を、前記他車両に送信する、請求項8から13のいずれか1項に記載の運転支援情報送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−187120(P2010−187120A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28857(P2009−28857)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】