説明

運転支援装置

【課題】駐停車の際のドアの開閉が分かりやすく、搭乗者の利便性に優れた運転支援装置を得る。
【解決手段】車両のデータを記録した車両DB3と、データ解析部5と、表示生成部6とを備える。データ解析部5は、車両の周辺の障害物を検出する障害物検出部4からの障害物データ及び車両DB3からの車両データを用いて、車両並びにこの車両の全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と、障害物との距離及び位置を算出する。表示生成部6は、データ解析部5からのデータと車両データと障害物データとを用いて、少なくとも1つの方向から見た、ドアを開けた車両及びこのドアの開閉の軌跡並びに障害物の画像を生成し、表示部8に表示するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載され、車両の運転者の運転作業、特に駐停車の運転作業を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転支援装置においては、駐車する際、レーザ等を使って障害物までの距離を測定し、3次元座標変換をして、運転者が操縦するのに見易い角度に変換した画像を合成して映像表示部で画面表示する。これにより、運転者は車両と障害物との位置関係を把握できる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−224013号公報(第7頁、第12頁、第16〜17図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の運転支援装置においては、車両と障害物との関係は把握できるが、車両と障害物が接触していなくても、これらの位置関係によってはドアが開かない、あるいは半開きになるため、車両の搭乗者の乗降や荷物の積み降ろしが制限され、搭乗者の利便性に欠けるといった問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、駐停車の際のドアの開閉が分かりやすく、搭乗者の利便性に優れた運転支援装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置は、車両のデータを記録した車両データベースと、データ解析部と、表示生成部とを備える。データ解析部は、車両の周辺の障害物を検出する障害物検出部からの障害物データ及び車両データベースからの車両データを用いて、車両並びにこの車両の全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と、障害物との距離及び位置を算出する。表示生成部は、データ解析部からのデータと車両データと障害物データとを用いて、少なくとも1つの方向から見た、ドアを開けた車両及びこのドアの開閉の軌跡並びに障害物の画像を生成し、表示部に表示するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ドアとドアの開閉の軌跡が表示され、障害物との位置関係が分かるので、ドアの開閉が分かり易く、搭乗者の利便性に優れた運転支援装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1〜3の運転支援装置を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1〜3の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1を示す画面表示の例である。
【図4】この発明の実施の形態2を示す画面表示の例である。
【図5】この発明の実施の形態2を示す別の画面表示の例である。
【図6】この発明の実施の形態2を示す別の画面表示の例である。
【図7】この発明の実施の形態3を示す画面表示の例である。
【図8】この発明の実施の形態3を示す別の画面表示の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における運転支援装置を示すブロック図である。操作入力部1は、モニタ等に装着されたタッチパネル等の操作パネルや、リモコン等から構成され、ユーザの操作を受け取る。車両情報取得部2は、半ドア等のドアの開閉の度合いや、バックギアやシフトレバーのパーキングの検出、車速の検出、サイドブレーキ等の検出を行う。車両制御部21は、車両情報取得部2からの車両情報を参考にし、ドアの開閉や車両の停止等の車両の制御を行う。車両DB(Data Base)3は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や大容量メモリ等から構成され、車両の外形、車両等の写真や絵、全開時のドアの位置、このドアの開閉時の軌跡の位置、カメラやセンサ等の位置などの車両データを記憶する。
【0010】
障害物検出部4は、カメラや、超音波センサ、レーザセンサ、車載レーダ等から構成され、自車周辺を撮影したり測定したりして障害物を検出する。データ解析部5と表示生成部6と音声案内生成部7は、例えばマイクロコンピュータとメモリから構成され、アプリケーションプログラムによって動作する。データ解析部5は、この装置の全体を制御すると共に、障害物検出部4からの画像データやセンサの測定データ及び車両DB3からの車両データを用いて、車両並びにこの車両の全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と、障害物との距離及び位置を立体的に算出する。また、その際、車両の動きから、障害物との距離が0となる場所、つまり衝突や接触予想場所も算出する。
【0011】
表示生成部6は、データ解析部5からの車両並びにこの車両の全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との位置データと、車両DB3からの車両データ及びここに予め保存してある自車等の写真や絵のデータと、障害物検出部4からの例えばカメラからの実写画像等の障害物データを用い、座標変換をして、自車の側方、上方、前方や後方、斜め方向等の任意の方向から見た、ドアを開けた車両及びこのドアの開閉の軌跡並びに障害物の画像を生成し、モニタ等の表示部8に表示する。また、障害物との距離に応じて、運転支援のため車両の搭乗者への案内表示の生成も行う。表示部8は 例えばLCD(Liquid Crystal Display)から構成され、表示生成部6から送られてくる信号に応じて、ドアを開けたときの自車や、このドアの開閉の軌跡、障害物、案内メッセージ等を画面に表示する。
【0012】
音声案内生成部7は、データ解析部5からの障害物との距離及び位置のデータを用い、障害物との距離に応じ、表示生成部6の表示と関連させて運転支援のための音声案内を生成し、スピーカ等の音声出力部9に音声を出力する。音声出力部9は、例えばアンプやスピーカから構成され、音声案内生成部7から送られてくる誘導案内メッセージを音声で出力する。
【0013】
なお、この運転支援装置の障害物検出部4、表示部8、音声出力部9は車両に備え付けのカメラやセンサ、モニタ、スピーカ等を使ったり、車両と着脱したり通信したりできる携帯機器等のモニタやスピーカを使っても良い。また、車両情報取得部2も車両に備え付けのドアの開閉位置センサ、トランスミッションのギアのセンサやシフトレバーのセンサ、車速パルス、ブレーキのセンサ等を用いたり、車両制御部21も車両に備え付けのドア開閉モータや車両制御モータや、ブレーキ等を用いたりしても良い。
【0014】
このように構成された運転支援装置の動作について図2のフローチャートに従って説明する。また、図3には、車両のドアの一例として、車両後部の天井部分に設置された水平芯を中心にこの周りを上下に開く上下開閉式のリアゲート11の場合の画面表示例を示す。
【0015】
まず、運転支援装置は、ステップS100において車両情報取得部2からのバックギアの検出待ち、又は、タッチパネル等の操作入力部1からの「駐停車案内」釦の入力待ちを行う。ユーザが後進して駐車する際にバックギアが検出されたり、ユーザが例えば前進しながら路肩等への停車をするため「駐停車案内」釦を押すと、障害物検出部4は、車載カメラや各種センサを用いて自車周辺を撮影したり測定したりして自車周辺の障害物を検出する(ステップS110)。
【0016】
次に、データ解析部5は、障害物検出部4からの障害物データと車両DB3からの車両データを用いて、自車と障害物との位置及び距離a、並びに、衝突予想場所を立体的に算出する(ステップS120)。また、全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との位置及び距離b、接触予想場所、及び、ドアを開けた際に障害物と接触する時は、ドアが半開きとなるため、ドアの開く幅cやドアの開く角度θを算出する(ステップS130)。
【0017】
その後、ステップS140において表示生成部6は、側方や上方、前方、後方や斜め方向など任意の方向から見た自車と障害物とのビュー表示のため、自車位置と、全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡の位置と、障害物の位置の座標変換を行う。この座標変換されたデータを用いて、ドアを開けた自車とこのドアの開閉の軌跡と障害物のビュー表示用の画像を作成し、モニタ等の表示部8に表示する。
【0018】
ビュー表示用の画像の作成は、具体的には、先ず、超音波センサ、車載レーダ、レーザ等の距離測定用のデバイスを使って障害物までの立体的な距離測定をしたり、車両DB3からの車載カメラの位置とこの車載カメラを2台使って画像の対応点の差を用いた画像処理で障害物までの立体的な距離を求めたりする。次に、これらのデータを座標変換して、任意の方向(例えば車の側方や上方)からの画像を作成する。これらの方法は、例えば特許文献1に記載されている方法を用いても良い。この際、ビュー表示用の画像は、車載カメラからの実写の画像を用いても良いし、車両DB3に予め保存してある写真や絵を用いても良い。なお、車載カメラが1台の場合は、このカメラを速く動かして2箇所から撮影した画像を用いたり、プリズムや鏡を用いて2箇所からの光路を速く切り替えて撮影した画像を用いたりしてもよい。
【0019】
ビュー表示画面を作成した例を図3(a)に示す。この図は水平に後進して駐車する途中の車両を側方から見たものである。リアゲート11を開けた場合の先端の軌跡12を点線で表示し、車両後部には木などの障害物10が表示されている。ステップS120でリアゲートを閉じたときの車両と障害物10との水平方向(車両の移動方向)の最短部分aを求め、ステップS130でリアゲートの軌跡12と障害物10の水平方向(車両の移動方向)の最短部分bを求める。
【0020】
車両と障害物との衝突事故を避けるため、データ解析部5はこの判定を優先的に行う。そのため、ステップS150では、車両と障害物との距離aが、衝突警告距離d以下となった場合、ステップS155で案内処理を行う。図3(d)は、車両と障害物との距離a≦衝突警告距離dの場合であり、この時、車両の搭乗者への案内のため、表示生成部6は、モニタ等の表示部8に対して「衝突注意」等の表示を行い、音声案内生成部は表示生成部の表示と関連させ、この「衝突注意」の音声合成を行いスピーカ等の音声出力部9に出力する。また、「あと20cm」のように、障害物との距離をリアルタイムで表示したり、これと関連させて「あと20cmで車体が衝突します。」のように音声案内をしたり警報音を鳴らしたりしても良い。また、衝突予想場所を強調表示したり、この衝突予想場所を音声案内したりしても良い。
【0021】
なお、この時、データ解析部5は、車両を制御する車両制御部21へ車両停止のためのデータを出力しても良い。車両制御部21は、このデータを元にブレーキをかけて車両を止める。この結果、車両と障害物との衝突事故を防ぐことが出来る。
【0022】
これらにより車両と障害物との衝突事故が減少可能となる。なお、この時、障害物が全開時のドアにも衝突する場合(b≦0)は、開閉可能な限界位置にリアゲート11bを表示しても良い。その後ステップS180へ行く。
【0023】
次に、不用意にドアを全開すると障害物に接触する事故を避けるため、データ解析部5はこの判定を行う。そのため、ステップS150で車両と障害物との距離aが、衝突警告距離dよりも大きい場合は、ステップS160でデータ解析部5が全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離bが0以下となっているかを判定する。図3(c)は、リアゲートの軌跡と障害物との距離b≦0の場合である。この場合は、ドアが全開しないため、ステップS165で案内処理を行う。
【0024】
まず、障害物によって開閉可能な限界位置にリアゲート11aを表示する。また、車両の搭乗者への案内のため、表示生成部6は、表示部に対して「リアゲート開閉注意」等の表示を行い、音声案内生成部は、表示生成部の表示と関連させ、この「リアゲート開閉注意」の音声合成を行いスピーカ等の音声出力部9に出力する。また、「リアゲートが30cmしか開きません。」、「リアゲートが30°しか開きません。」のように、リアゲートの開く幅cやこの角度θをリアルタイムで表示したり、これと関連させて音声案内をしたり警報音を鳴らしたりしても良い。また、接触予想場所を強調表示したり、この接触予想場所を音声案内したりしても良い。これにより、車両の搭乗者が不用意にドアを全開することにより障害物に接触する事故が減少可能となる。その後ステップS180へ行く。
【0025】
なお、この時、データ解析部5は、車両のドアの開閉を制御する車両制御部21へドアが開閉可能な限界位置のデータを出力してもよい。車両制御部21は、このデータを元に、ドアが障害物と接触する直前までドアを自動で開けたり、手動でドアを開ける場合でもドアと障害物とが接触する直前で、それ以上ドアが開かないようにドアをロックしたりドア開閉機構にブレーキをかけたりしても良い。この結果、ドアと障害物との接触事故を防ぐことが出来る。
【0026】
引き続き、全開時のドアが障害物に接触する事故を避けるため、データ解析部5はこの判定を行う。そのため、ステップS160で全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離bが0よりも大きい場合は、ステップS170でデータ解析部5は、この障害物までの距離bがドア接触警告距離e以下となっているかを判断する。図3(b)は、リアゲートの軌跡と障害物の距離b>0、かつ、b≦eの場合である。この場合、ドアは全開するが、障害物に接触しそうになるため、ステップS175で案内処理を行う。
【0027】
この時、車両の搭乗者への案内のため、表示生成部6は、表示部に対して「リアゲート接触注意」等の表示を行い、音声案内生成部は、表示生成部の表示と関連させ、この「リアゲート接触注意」の音声合成を行いスピーカ等の音声出力部9に出力する。また、「あと15cmでリアゲートが接触します。」のように、接触までの距離をリアルタイムで表示したり、これと関連させて音声案内をしたり警報音を鳴らしたりしても良い。また、接触予想場所を強調表示したり、この接触予想場所を音声案内したりしても良い。これによりドアと障害物との接触事故が減少可能となる。その後ステップS180へ行く。
【0028】
ステップS170で全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離bがドア接触警告距離eを越える場合は障害物と接触する危険性を無視できるため、案内処理は行わずにステップS180へ行く。このステップでは、車両情報取得部2が車速パルス等からの情報により車両の停車を確認した場合や、ギアをパーキングの位置に入れた場合や、サイドブレーキを使った場合や、ユーザが駐停車案内を終了させたいため、例えば「終了」、「戻る」等の釦を押したかを判定する。これらの場合は、駐停車案内を終了する。車両が移動中や「終了」釦等を押下していない場合は、ステップS110に戻り、駐停車案内を継続する。
【0029】
なお、ドア全開時の車両の長さや高さを使ってドアの開閉の可否や運転支援の案内をする場合は、例えば、図3(b)のような場合は、障害物にすでに衝突していると判断され、ドアは開かないと判断される。しかし、実際には衝突しておらず、ドアを開くことが出来る。このように、ドア開閉時の軌跡を用いることにより、衝突の判定がより正確になると共に搭乗者は視覚的にもドアの開閉判定を容易に行うことが出来、搭乗者の利便性が向上する。
【0030】
図3では、リアゲートの先端の軌跡を点線で表示しているが、実線や破線等でも良いし、色や線の太さを変えても良い。また、見易くするために、リアゲートの先端の軌跡とリアゲートと車両とで構成される扇型の部分に色をつけたり、半透明にしたり、ハッチングやテクスチャー処理を行っても良い。
【0031】
なお、案内処理は、搭乗者への注意喚起のため、車両と障害物との距離が短くなるのに対応して、先ずは、障害物とドアとの接触注意の案内を画面に黄色で表示し(ステップS175)、次に、ドア開閉注意の案内を橙色や薄い赤色で表示し(ステップS165)、最後に障害物との衝突注意の案内を赤色で表示しても良い(ステップS155)。この時、表示を点滅させても良いし、点滅速度を3段階で速くしても良い。
【0032】
また、同様に音声案内を行う際は、最初は音量を小さくし(ステップS175)、次に音量を少し上げ(ステップS165)、最後に音量を更に上げても良い(ステップS155)。また、警告音を用いても良く、この場合は、最初は音程を低くしたり、音の間隔を長くしておき(ステップS175)、その後、少し上げたり短くしたり(ステップS165)、最後に更に上げたり更に短くしても良い(ステップS175)。また、ステップS175、ステップS165、ステップS155の各ステップ内及び各ステップ間において、ドアと障害物、及び、車両と障害物との距離に対応させ、音量や音程を連続的に上げても良いし、警告音の間隔や表示の点滅速度を連続的に速くしても良い。これらにより、搭乗者は障害物との距離を感覚的に判断可能となる。
【0033】
また、音声案内生成部7は、車両並びにこの車両の全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離が所定値(衝突警告距離d、又は、ドア接触警告距離e)以下となった場所に最も近い音声出力部(スピーカ等)から音声案内を行ったり、音声の位相を調整し、複数の音声出力部を用いて、障害物との距離が所定値以下となった場所の方向から聞こえるように音声案内を行ったりしても良い。また、音声案内生成部7は、全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離が0以下となったため、ドアを開けると障害物と接触する場合、この接触場所に最も近い音声出力部から音声案内を行ったり、音声の位相を調整し、複数の音声出力部を用いて障害物と接触する場所の方向から聞こえるように音声案内を行ったりしても良い。これらの場合は、衝突や接触する方向が音で分かるため、注意喚起が出来、更に衝突や接触事故が減少可能となる。
【0034】
このように構成された運転支援装置においては、駐停車の際のドアの開閉の軌跡が表示され、車両とドアと障害物との位置関係が分かるので、ドアの全開や半開きといったドアの開き方が認識できる。その結果、搭乗者の乗降や荷物の積み降ろしが可能かどうか容易に判断でき、搭乗者の利便性に優れた運転支援装置が得られる。また、その際、障害物との距離に応じて画面や音声で案内されるので、運転者は障害物との接触やドアの半開きについて認識でき、衝突や接触事故を減少させることが可能となる。また、ドアの開閉可能な限界位置のデータを出力したり、車両停止のデータを出力したりして車両を制御するので、ドアと障害物との接触事故や、車両と障害物との衝突事故が減少可能となる。
【0035】
実施の形態2.
実施の形態1では、駐車の際に車両の側方から見た側面図を用いて上下開閉式のリアゲートの開閉状況を表示したが、本実施の形態2では、駐車の際に左右に開くドアや、前後にスライドするドアの開閉状態を表示する運転支援装置について述べる。
【0036】
装置構成は図1のブロック図と同じであり、処理の流れも図2のフローチャートと同じである。ここでは、左右に開くドアや、前後にスライドするドアの開閉状態を表示するため、車両の上方から見た上面図と、ドア開閉の際の軌跡の表示について、図4〜6を用いて説明する。
【0037】
図4は、車両後部の側面部分に設置された垂直芯を中心にこの周りを左右に開く左右開閉式のリアゲート13を有し、後進して駐車する途中の車両を上方から見た画面表示例を示す。まず、ステップS100でバックギア検出、又は、「駐停車案内」釦を押下した後、自車周辺の障害物10の検出を行い(ステップS110)、車両と障害物との位置及び距離a、全開時のリアゲート及びこの開閉の軌跡と障害物との位置及び距離b、衝突や接触予想場所等を求める(ステップS120、S130)。その後、図4(a)に示すように、リアゲート13を開けた場合の先端の軌跡14を点線で表示し、車両後部には木などの障害物10が表示されるビュー表示を行う(ステップS140)。
【0038】
その後、車両が後進し、全開時のリアゲート及びこの開閉の軌跡と障害物との距離bがドア接触警告距離e以下になった場合(ステップS170)、図4(b)のように「リアゲート接触注意」の表示や音声案内を行う(ステップS175)。更に車両が後進し、全開時のリアゲート及びこの開閉の軌跡と障害物との距離bが0以下となった場合(ステップS160)、図4(c)のように「リアゲート開閉注意」の表示や音声案内を行う(ステップS165)。この際、障害物によって開閉可能な限界位置にリアゲート13aを表示すると共に、リアゲートの開く幅cやこの角度θをリアルタイムで表示したり、音声案内したりしてもよい。また、開閉可能な限界位置までしかドアが開かないように車両を制御しても良い。
【0039】
更に車両が後進し、車両と障害物との距離aが衝突警告距離d以下となった場合(ステップS150)、図4(d)のように「衝突注意」の表示や音声案内を行う(ステップS155)。この際、障害物によって開閉可能な限界位置にリアゲート13bを表示すると共に、リアゲートの開く幅cやこの角度θをリアルタイムで表示したり、音声案内したりしてもよい。また、ブレーキをかけて車両を止めたり、開閉可能な限界位置までしかドアが開かないように車両を制御しても良い。
【0040】
なお、リアゲート全開時の車両の長さを使ってリアゲートの開閉の可否や障害物に対する案内をする場合は、例えば、図4(b)のような場合は、障害物にすでに衝突していると判断され、リアゲートは開かないと判断されるが、実際には衝突しておらず、リアゲートを開くことが出来る。このように、ドア開閉時の軌跡を用いることにより、衝突の判定がより正確になると共に搭乗者は視覚的にもドアの開閉判定を容易に行うことが出来、搭乗者の利便性が向上する。
【0041】
図5は、車両の側面部分に設置された垂直芯を中心にこの周りを左右に開く左右開閉式のドア15を有し、後進して駐車する途中の車両を上方から見た画面表示例を示す。この場合も同様に駐車の際に、車両と障害物との距離a、全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離b、衝突や接触予想場所等を求め、図5(a)のようなドアの先端の軌跡16と障害物10を有するビュー表示を行う。
【0042】
その後、車両が後進し、全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離bがドア接触警告距離e以下になった場合、図5(b)のように「右ドア接触注意」の表示や音声案内を行う。更に車両が後進し、全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離bが0以下となった場合、図5(c)のように「右ドア開閉注意」の表示や音声案内を行う。この際、開閉可能な限界位置にドア15aを示すと共に、ドアの開く幅cやこのドアの角度θをリアルタイムで表示したり、音声案内したりしてもよい。また、開閉可能な限界位置までしかドアが開かないように車両を制御しても良い。
【0043】
更に車両が後進し、車両と障害物との距離aが衝突警告距離d以下となった場合、図5(d)のように「衝突注意」の表示や音声案内を行う。この際、開閉可能な限界位置にドア15bを示すと共に、ドアの開く幅cやこのドアの角度θをリアルタイムで表示したり、音声案内したりしてもよい。また、ブレーキをかけて車両を止めたり、開閉可能な限界位置までしかドアが開かないように車両を制御しても良い。
【0044】
なお、ドア全開時の車両の幅を使ってドアの開閉の可否や障害物に対するガイダンスをする場合は、例えば、図5(a)、(b)のような場合は、障害物に衝突すると判断され、ドアは開かないと判断されるが、実際には衝突せずにドアを開くことが出来る。このように、ドア開閉時の軌跡を用いることにより、衝突の判定がより正確になると共に搭乗者は視覚的にもドアの開閉判定を容易に行うことが出来、搭乗者の利便性が向上する。
【0045】
図6は、車両の側面部分に設置され、一度横にはみ出した後、前後に開くスライドドア17を有し、後進して駐車する途中の車両を上方から見た画面表示例を示す。この場合も同様に駐車の際に、車両と障害物との距離a、全開時のスライドドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離b、衝突予想位置等を求め、図6(a)のようなスライドドアの軌跡18と障害物10を有するビュー表示を行う。
【0046】
その後、車両が後進し、全開時のスライドドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離bがドア接触警告距離e以下になった場合、図6(b)のように「右スライドドア接触注意」の表示や音声案内を行う。更に車両が後進し、全開時のスライドドア及びこのドアの開閉の軌跡と障害物との距離bが0以下となった場合、図6(c)のように「右スライドドア開閉注意」の表示や音声案内を行う。この際、開閉可能な限界位置にスライドドア17aを示すと共に、スライドドアの開く幅cをリアルタイムで表示したり、音声案内したりしてもよい。また、開閉可能な限界位置までしかドアが開かないように車両を制御しても良い。
【0047】
更に車両が後進し、車両と障害物との距離aが衝突警告距離d以下となった場合、図6(d)のように「衝突注意」の表示や音声案内を行う。この際、開閉可能な限界位置にスライドドア17bを示すと共に、スライドドアの開く幅cをリアルタイムで表示したり、音声案内したりしてもよい。また、ブレーキをかけて車両を止めたり、開閉可能な限界位置までしかドアが開かないように車両を制御しても良い。
【0048】
なお、スライドドア全開時の車両の幅を使ってスライドドアの開閉の可否や障害物に対するガイダンスをする場合は、例えば、図6(a)、(b)のような場合は、障害物に衝突すると判断され、ドアは開かないと判断されるが、実際には衝突せずにドアを開くことが出来る。このように、ドア開閉時の軌跡を用いることにより、衝突の判定がより正確になると共に搭乗者は視覚的にもドアの開閉判定を容易に行うことが出来、搭乗者の利便性が向上する。
【0049】
このように構成された運転支援装置においては、上方から見ることにより、駐車の際のリアゲートやスライドドア等のドアの開閉の軌跡が表示され、車両とドアと障害物との位置関係が分かるので、ドアの全開や半開きといったドアの開き方が認識できる。その結果、搭乗者の乗降や荷物の積み降ろしが可能か容易に判断でき、搭乗者の利便性に優れた運転支援装置が得られる。また、その際、障害物との距離に応じて画面や音声で案内されるので、運転者は障害物との接触やドアの半開きについて認識でき、衝突や接触事故を減少させることが可能となる。また、ドアの開閉可能な限界位置のデータを出力したり、車両停止のデータを出力したりして車両を制御するので、ドアと障害物との接触事故や、車両と障害物との衝突事故が減少可能となる。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態1、2では、駐車の際、車両の側方から見た側面図、又は、上方から見た上面図を用いてドアの開閉状況を把握したが、本実施の形態3では、立体感を持たせることにより、自車周辺の状況やドアの開閉状況を把握できる運転支援装置について述べる。
【0051】
装置構成は図1のブロック図と同じであり、処理の流れも図2のフローチャートと同じである。図7は、車両後部の天井部分に設置された水平芯を中心にこの周りを上下に開く上下開閉式のリアゲート11を有する車両の画面表示例を示す。この図は後進して駐車する途中の車両を上方及び側方から見た図を組み合わせて、サークルビュー表示したものである。ここでは、自車と障害物10とを表示すると共に、ドア開閉時の軌跡12を示すため、リアゲートと車両で囲まれたエリアのハッチング処理を行っている。図2のフローチャートに従って、「リアゲート接触注意」、「リアゲート開閉注意」、「衝突注意」等の表示や音声ガイダンスを行う。また、上面図及び側面図のリアゲート11と障害物10が接触しそうな場所にマークをつけたり、赤等の危険を示す色に変えたり、点滅処理をするなど強調表示をすると良い。
【0052】
図8は、車両中央部の天井部分に設置された水平芯を中心にこの周りを上下に開くガルウィングドア19を有する車両の画面表示例を示す。この図は後進して駐車する途中の車両を上方及び前方から見た図を組み合わせて、サークルビュー表示したものである。
ここでは、自車と障害物10とを表示すると共に、ガルウィングドア開閉時の軌跡20を点線で示している。この場合も、図2のフローチャートに従って、「左ドア接触注意」、「左ドア開閉注意」、「衝突注意」等の表示や音声ガイダンスを行う。また、上面図及び前面図のドアと障害物が接触しそうな場所にマークをつけると良い。
【0053】
なお、ここでは、上面、側面、前面の中の図を2つ用いたが、後面から見た図を組み合わせても良いし、上面、側面、後面、前面の中から3つ以上組み合わせて表示しても良い。また、斜め方向から見た鳥瞰図を作成し、立体的に見える表示を行っても良い。
【0054】
このように構成された運転支援装置においては、立体的感を持たせる表示をするため、ドアと障害物との接触場所が把握しやすくなる。また、木や看板など高い位置にある障害物を検出し表示させることで接触を未然に防きやすくなる。また、ガルウィングドアの一種で、斜め上方に開くドアのように単純な左右・上下の動きではないドアの場合もドアの開閉と障害物との関係が把握しやすくなる。その結果、搭乗者の利便性に優れた運転支援装置が得られる。
【0055】
なお、この運転支援装置は、カーナビゲーション装置と組み合わせても良い。この場合、カーナビゲーション装置のナビゲーション機能や現在位置特定機能を用い、現在地や目的地等の駐車場や道路の情報を取得し、これを表示部8で表示したり、音声出力部9で音声案内したりして、運転支援に活用しても良い。この場合、車載カメラや各種のセンサでは得られない情報が得られるため、普段使わないため駐車慣れしていない目的地等の駐車場に駐停車する際に、搭乗者の利便性が更に向上する。
【符号の説明】
【0056】
1 操作入力部
2 車両情報取得部
3 車両DB
4 障害物検出部
5 データ解析部
6 表示生成部
7 音声案内生成部
8 表示部
9 音声出力部
10 障害物
11、11a、11b リアゲート(上下開閉式)
12 リアゲートの軌跡
13、13a、13b リアゲート(左右開閉式)
14 リアゲートの軌跡
15、15a、15b ドア
16 ドアの軌跡
17、17a、17b スライドドア
18 スライドドアの軌跡
19 ガルウィングドア
20 ガルウィングドアの軌跡
21 車両制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のデータを記録した車両データベースと、
前記車両の周辺の障害物を検出する障害物検出部からの障害物データ及び前記車両データベースからの車両データを用いて、前記車両並びにこの車両の全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と、前記障害物との距離及び位置を算出するデータ解析部と、
このデータ解析部からのデータと前記車両データと前記障害物データとを用いて、少なくとも1つの方向から見た、ドアを開けた前記車両及びこのドアの開閉の軌跡並びに前記障害物の画像を生成し、表示部に表示する表示生成部とを備える運転支援装置。
【請求項2】
前記表示生成部は、前記障害物との距離が所定値以下となったとき、前記障害物との距離表示、前記所定値以下となった場所の強調表示、及び、前記車両の搭乗者への案内表示の少なくとも1つを行う請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記表示生成部は、前記全開時のドア及びこのドアの開閉の軌跡と、前記障害物との距離が0以下となったとき、開閉可能な限界位置のドアの表示を行う請求項1記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記表示生成部は、前記限界位置のドアの開く幅の表示、このドアの開く角度の表示、このドアと前記障害物とが接触する場所の強調表示、及び、前記車両の搭乗者への案内表示の少なくとも1つを行う請求項3記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記データ解析部は、車両のドアの開閉を制御する車両制御部へ前記限界位置のデータを出力する請求項3記載の運転支援装置。
【請求項6】
音声案内を生成し音声出力部に音声を出力する音声案内生成部を備え、
この音声案内生成部は、前記表示生成部の表示と関連させ、前記車両の搭乗者への音声案内を行う請求項2又は請求項4記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−16484(P2011−16484A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163520(P2009−163520)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】