説明

過酸化水素送達システム

過酸化水素を含む上方構成要素と、水和状態の下方構成要素とを含み、過酸化水素が下方構成要素の方へ移動するように、上方構成要素および下方構成要素が互いに接触して置かれる、送達システム、例えば皮膚包帯が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体または動物体の一部への塗布のための特に皮膚、例えば創傷部位の治療のための過酸化水素を含む、送達システム、例えば包帯に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素(H)は、皮膚上でのおよび創傷での使用のための公知の抗菌性物質である。それは、感染に対応して免疫防御活動の一環として、および酵素スーパーオキシドジスムターゼの作用により白血球によって身体中で自然に生成される。微生物がその効果を逃れ得る公知の微生物の回避メカニズムは全くなく、かつ、それは短い寿命を有し、組織中で非常に速く水と酸素とに分解する。しかしながら、過剰の過酸化水素は組織細胞に有毒であり得るし、医学界では一般的にその潜在的な毒性が強すぎるため、皮膚または開放創傷へのその習慣的な塗布を正当化することはできないと考えられている。たとえそうでも、過酸化水素の非常に注意深く限定された用量は、元のままの過酸化水素が生体組織に達することが、たとえあったとしても、ほとんどないという条件で、創傷環境に豊富な酸素を富化するための手段として使用することができる。過酸化水素を分解させるカタラーゼおよび他の物質が創傷中、および表皮中に非常に速い分解を確実にするのに十分な量で存在する。
【0003】
このため、液体またはフィルムまたは他の形態としての過酸化水素源の直接塗布に勝る、創傷または皮膚上へ直接に、過酸化水素を創傷または皮膚に送達するための手段を提供する必要性がある。過酸化水素が創傷または皮膚の治療のために効果的に使用されるべきである場合、塗布のより制御された方法が必要とされる。
【0004】
特に、簡単に実施できるメカニズムによって、用量レベルを確実に、自動的に制御できるならば、過酸化水素は非常に有利に安全に使用することができよう。任意のかかるメカニズムは、かなりの量が包帯から離れ得る前に、それが水と酸素とに直ちにおよび完全に分解されるように、過酸化水素の創傷または皮膚への送達の速度を制限しなければならないであろう。この状況では、創傷の組織が過酸化水素暴露を決して受けずに、酸素化を達成することが可能であろう。ある種のタイプの創傷包帯または装置では、反応が起こり得るリアクター区画が包帯内に存在し、かつ、過酸化水素の進入を適切に調節できるという条件で、過酸化水素をヨウ化物からのヨウ素の生成を推進するために使用することができる。このように、過酸化水素は、それ自体抗菌剤として、酸素を提供するための手段として、または制御されたヨウ素送達のためのヨウ素その場生成を推進するための手段として、創傷または皮膚状態の治療に利用することができる。全3つの機能が同時に提供されることが望ましいかもしれない。
【0005】
過酸化水素は、あらゆる種類の創傷をきれいにするための抗菌性物質として、および生物学的に相溶性の一般消毒剤として長年使用されてきた。それはしばしば、より環境的に受け入れることができる、そしてより安全な「漂白剤」(次亜塩素酸ナトリウムの溶液)の代替品として家庭および表面クリーニング用に使用される。医療用途では、過酸化水素含有軟膏が、例えば、下腿潰瘍、褥瘡、軽傷および感染の治療用に使用されてきた。しかしながら、現在使用されているような、過酸化水素に関連した問題がある。過酸化水素溶液は不安定であり、水と酸素とに容易に酸化され、さらに、高濃度の過酸化水素は、正常皮膚に、および創傷床の治癒に関与する細胞に悪影響を及ぼし得る。その不安定性は不便にも短い寿命の製品を生成するであろうので、前投与創傷包帯の一部として過酸化水素を使用することは非常に困難であるか、または不可能でさえある。塗布の時点での過酸化水素の単純溶液の投与は、有効に長い期間にわたって持続した送達を提供しないであろう。
それが創傷治療に使用されるとき(例えば、英国薬局方(British Pharmacopoeia)に記載されているように)、非常に高い濃度(典型的には3%)が非常に短い時間間隔にわたって強力な抗菌性効果を達成するために必要とされる。過酸化水素の抗菌有効性と、多量のガス状酸素が放出されるときに起こる必然的な泡立ちの物理的クリーニング効果とのために、このタイプの短いバースト(burst)でさえ有効であり得るが、かかる高濃度は宿主細胞に比較的悪影響を及ぼし得るし、治癒過程を遅らせ得るというさらなる欠点がある。このため、過酸化水素の使用は、創傷の初期クリーン−アップおよび殺菌に限定される傾向がある。たとえそうでも、それは、身体の自らの細胞によって生成される(より低い濃度でであるけれども)自然防御物質であり、そしてそれは、細胞−細胞分子情報伝達および調節に関与する、細胞間および細胞内メッセンジャー分子として次第に認識されている。疑いもなく、過酸化水素を適切な時間経過にわたって妥当な濃度で、および妥当なアクセサリー分子または調合物と共に使用することができれば、それは潜在的に非常に有益な分子である。
【0006】
国際公開第2005/072784号パンフレットは、あらかじめ形成された過酸化水素の補給品または過酸化水素前駆体物質を含有する重ね合わせ層と併せて使用されてもよい、乳酸イオン源およびグルコースの補給品を包含する水和ヒドロゲル材料を含む皮膚包帯に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、過酸化水素を含む上方構成要素と、水和状態の下方構成要素とを含み、過酸化水素が下方構成要素の方へ移動するように、上方構成要素および下方構成要素が互いに接触して置かれる過酸化水素送達システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ヨウ素含有ヒドロゲル透過層と組み合わせた本発明によるポリマーフィルムからのヨウ素生成を示す電流(マイクロアンペア単位)対時間(分単位)のグラフである。
【図2】ヒドロゲル層と組み合わせた本発明によるポリマーフィルムからの酸素生成を示す酸素化効果(100%の大気酸素と比較して)対時間(分単位の)のグラフである。
【図3】フィルムのミリグラム当たり回収されたμgHとして表される、乾燥保管フィルムからのH回収対保管時間(日単位の)のグラフである。
【図4】本発明によるポリマーフィルムからのならびにグルコースおよび/または乳酸イオンを含むポリマーフィルムからのヨウ素生成を示す電流(マイクロアンペア単位)対時間(分単位)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本送達システムは好ましくは乳酸イオン源およびグルコースの補給品を含まない。
上方構成要素は湿潤または乾燥状態にあってもよいが、保管安定性の理由により好ましくは乾燥状態にある。
【0010】
本送達システムは、人体または動物体の一部への過酸化水素の送達に好適である。しかしながら、典型的にはそれは皮膚、例えば創傷部位に塗布されるだろうし、この場合に本送達システムは包帯の形態をとり、上方構成要素および下方構成要素は包帯構成要素である。
【0011】
本送達システムは、2つの構成要素が使用の時点で一緒にされる、単一ユニットとして使用されるように設計される。下方構成要素は使用中に皮膚により近い構成要素を意味し
、上方構成要素は下方包帯構成要素の上部に配置される。
【0012】
本構成要素は、シート(またはフィルム)形態で、あるいは非晶質ゲル(例えば計量分配装置から圧搾することができる)として、密着体として計量分配することができ、かつ、標的部位(例えば創傷または皮膚の区域)へ塗布されたときに適所に留まるであろう材料で構成される。
【0013】
「乾燥状態」は、かなりのまたは測定できる水損失が温度、圧力および湿度の通常の周囲条件下に蒸発によって全く起こらないように、材料中に遊離水が全く存在しないことを意味する。乾燥状態には、特別十分に乾燥した状態である、デシケーターに入れた状態が含まれる。デシケーターに入れた状態は、材料が加えた乾燥剤を用いて水を含まないように慎重に保たれる、水分不透過性バリアによって取り囲まれた環境中での保管により維持される状態を意味する。
【0014】
上方構成要素が乾燥状態にある実施形態では、過酸化水素は特に安定であり、材料中に保持される。上方構成要素は、過酸化水素がその中で安定した状態を保って、長期間好適な条件下に保管することができる。
上方過酸化水素含有構成要素
過酸化水素は、過酸化水素用の「キャリア」材料であると考えることができる、上方構成要素中に組み込まれる。上方構成要素は、より便利であるかまたは費用効果的である場合には、乾燥状態にあってもよいが、キャリア材料が高い水ヒドロゲルなどの、水和状態にあることは同様に受け入れることができる。過酸化水素は好ましくは上方構成要素の全体にわたって分散される。典型的には上方構成要素は、過酸化水素がその中に、好ましくは適度に均一に分散された状態で、マトリックス(乾燥状態または水和状態)を含む。
【0015】
上方構成要素は好ましくはポリマー材料を含む。
好ましいポリマー材料はポリビニルアルコール(PVA)を含む。PVAは皮膚治療用途にとって便利な、受け入れることができる特性(例えば非毒性である)を有する。PVAはまた、取扱および使用が容易であり、水中のPVA溶液が乾燥するとフィルムを容易に形成し、生じたフィルムは取り扱うのが容易である。PVAはまた容易に入手可能であり、かつ、安価である。架橋は場合により用いられてもよいが、架橋は、例えばフィルムの形態で、固体材料を形成するために必要とされない。PVAは、材料の物理的特性に影響を及ぼす、分子量および加水分解度を基準として幅広い範囲の銘柄で入手可能である。適切な銘柄のPVAを容易に選択して特定の意図される使用にとって望ましい特性を有するポリマー製品を生成することができる。例えば、皮膚包帯用には、良好な結果は、実質的に完全に加水分解された(98〜99%加水分解された)100,000〜200,000の範囲の分子量の、例えばアルドリッチ(Aldrich)製のコード36,316−2の形態の、非架橋形態のPVAを用いて得られた。
【0016】
別の好ましいポリマー材料はポリビニルピロリドン(PVP)を含む。PVPの特性は、PVAの特性に非常に似ており、PVPもまた皮膚治療用途に受け入れることができる。PVPは、異なる分子量の範囲で容易に入手可能である。PVPの適切な銘柄は容易に選択することができる。例えば、良好な結果は、360,000の平均分子量を有する、例えばシグマ(Sigma)製のコードPVP360の形態での、非架橋形態でのPVPを使用して得られてきた。
【0017】
ポリマー材料の混合物が使用されてもよく、少なくとも一部のPVPの存在が過酸化水素安定性に有益であることが分かっている。
【0018】
上方構成要素の形態は、意図される使用に好適であるように選択されてもよい。皮膚包
帯用には、この構成要素は好都合にはシート、層またはフィルムの形態にある。層またはフィルムは典型的には0.01〜1.0mmの範囲の、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲の厚さを有する。
【0019】
過酸化水素は、過酸化水素それ自体または別の実体と組み合わせたもしくは錯体形成した過酸化水素の形態で上方構成要素中に組み込まれてもよい。良好な結果は、過酸化水素尿素錯体で得られてきたし、これは乾燥粉末として入手可能であるため、取り扱うのが容易であり、その上、過酸化水素を放出するであろう。
【0020】
過酸化水素材料は場合により、湿潤時に剛性を与えるための支持体を含んでもよい。
過酸化水素材料はまた、乾燥フィルムの可撓性に役立つための保湿剤、例えばグリセロールまたはプロピレングリコールを含んでもよい。
【0021】
上方構成要素は好都合には、ポリマーの溶液(例えばPVAおよび/またはPVPの水溶液)と過酸化水素(例えば過酸化水素尿素錯体の水溶液)とを混合し、そして固体材料を生成するために混合物を乾燥させる、例えばキャスティング手順によってフィルムを形成することによって製造される。好適な技法は当業者に周知である。
下方水和構成要素
下方構成要素は、上方構成要素中に運ばれる過酸化水素がその構造を通って標的、例えば創傷または皮膚との界面へ拡散するための十分な水をそれが含有することを意味する、水和状態にある。上方構成要素が乾燥状態で供給される場合、それは、下方構成要素の水との接触によって水和(湿潤)状態になるであろう。この場合に、過酸化水素は溶解し、下方構成要素中へ放出されるであろう。材料と水源との間の接触液体接点を形成するために十分な水が下方構成要素内に必要とされる。
【0022】
さらに、下方構成要素は、標的創傷部位内に有益な湿った環境を維持するための使用に役立つことができる水分源を提供する。
【0023】
下方構成要素の材料は、ヒドロゲル、スポンジ、泡または過酸化水素層と標的部位との間の制御された拡散経路を可能にするのに十分な水を保持することができる親水性マトリックスの他の何らかの形の形態にあってもよい。好ましくは、水は、ポリマー、例えば、グリコサミノグリカンをはじめとする、多糖類の適切な濃度によって達成されてもよく、例えば水素結合によって、過酸化水素の通過を調節するのに役立つ溶質を含有するであろう。好ましくは層は、過酸化水素の透過を制御する能力だけでなく固体ゲル特性を与えるのに役立つ、ポリ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ポリAMPS)などの、ポリアクリルポリマーを含有するであろう。
【0024】
下方構成要素は、その物理的寸法(特に、拡散経路距離に影響を及ばす深さ)、その含水率(より少ない水はより遅い拡散速度をもたらす)、その組成(固定化水素結合基が過酸化水素移動を遅くして)および/または標的部位、例えば創傷部位との界面での、および/または上方構成要素との界面でのその表面構造(接触表面積、それによって下方構成要素中へのまたはそれからの移動の速度に影響を及ぼす)の選択をはじめとする、多くの方法で過酸化水素流動速度を制御することができ、例えば、それは起伏のある(場合により波形の)表面を有してもよい。
【0025】
上方構成要素は、湿潤時に過酸化水素を放出するので、滞水下方構成要素は、過酸化水素(乾燥状態での場合)の再水和/溶解のための水源としておよび過酸化水素が送達システムを通って通過するための、例えば包帯から創傷への送達のための手段としての両方で役立つことができる。水和/溶解の速度は、2つの層の組み合わせ特性、およびそれらが相互作用する方法によって制御することができる。これは、過酸化水素が例えば創傷に届
く速度を調節することができ、かつ、投与量が創傷を過酸化水素にではなく酸素のみに効果的に暴露させるのに十分であることを確実にするために使用することができる(包帯との即時接触における組織カタラーゼおよび他の過酸化水素−分解物質の効果によって)。
【0026】
加えて、下方構成要素は、過酸化水素が酸素と水とに活発に分解する(例えば、過酸化水素との複雑な化学反応を受け、適切な酸素生成をもたらす、ヨウ化物イオンを含有することによって)、リアクターとして機能することができる。下方構成要素はまた、典型的には過酸化水素との化学反応によって、活性な創傷治癒物質を合成し、送達するという利益を提供することもできる。例えば、ヨウ素は、ヨウ化物イオンの酸化によって、このように合成することができて抗菌剤として働く。過酸化水素と同様に、微生物を殺すのに十分なヨウ素が存在するが、このレベルが創傷組織への毒性効果を回避するのに十分に低いように制御された速度で創傷がヨウ素を受け取ることは有益である。別の例は、治癒効果を有すると特許請求されている、アラントインの送達によって提供される。アラントインは不安定であるため、透過層が、入ってくる過酸化水素で酸化されてアラントインをもたらす、比較的安定な尿酸イオンをあらかじめ投与されることが好ましい。
【0027】
典型的には、皮膚または創傷は滞水下方構成要素と直接接触する。下方構成要素は、好ましくは後述されるように水和ヒドロゲル形態にあるときに、(その化学組成に依存して)創傷部位からにじみ出た水および他の物質を吸収する役割を果たすことができ、かかる物質を創傷部位から除去することによって包帯が価値ある有用な機能を果たすことを可能にする。
【0028】
下方構成要素の形態は、意図される使用に合わせて選択されてもよい。皮膚包帯用に、この材料は好都合にはシート、層またはフィルムの形態にある。層またはフィルムは典型的には0.01〜1.0mmの範囲の、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲の厚さを有する。
【0029】
下方構成要素はあるいはまた、ノズルを通して圧搾されることをはじめとして、3次元で変形させ、造形することができる、固定した形態または形状を有さない、非晶質ゲルまたはローション、好ましくはヒドロゲルの形態にあってもよい。非晶質ゲルは典型的には架橋されていないか、または低レベルの架橋を有する。剪断低粘稠化(shear−thinning)の非晶質ゲルが使用されてもよい。かかるゲルは、剪断応力にかけられたとき(例えば、ノズルを通して注がれつつあるか、または圧搾されつつあるとき)は液体であるが、静的であるときはゲル化する。従って、ゲルは、例えば、ピストンおよびシリンダーを含む、典型的には約3mm直径のノズル付きの、圧縮可能なチューブまたはシリンジ用の計量分配装置から計量分配されてもよい、注ぐことができるか、または圧搾できる構成要素の形態にあってもよい。かかるゲルは、表面層の形態で、または利用可能な空間を満たし、そして創傷表面と接触する十分にコンフォーマブルなゲルとして創傷空洞中へ塗布されてもよい。
【0030】
この手法は、空洞が非晶質ゲルおよびゲル上へ置かれた上方構成要素(例えば、おそらく巻き取られた状態でのフィルム)で満たされて、例えば、チューブまたはシリンジから圧搾することによって空洞創傷の治療に特定の用途を見いだす。材料がロープまたはテープの形態で運ばれて空洞中へ詰められることもまた可能である。例えばゲルまたはローションからの水によって、上方構成要素を湿らせるとすぐに、過酸化水素は放出され、創傷部位のカタラーゼと反応して酸素を生成する。ゲルまたはローションがヨウ化物イオンを含む場合、主に酸素がゲル内で生成する(ヨウ化物イオンが低濃度で存在する場合)か、かなりのレベルのヨウ素および酸素が発生する(ヨウ化物イオンが好適にも増加した濃度で存在する場合)かのいずれかであろう。
【0031】
非晶質ゲル調合物の典型的な例は、容量が分析グレードのDI水で100%に構成されて、15%w/wのAMPS(ナトリウム塩)、5%w/wグルコース、0.05%w/wヨウ化カリウム、0.1%乳酸亜鉛、0.19%ポリエチレングリコールジアクリレートおよび0.01%ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。試薬は十分に混合され、溶解され、次に、約100mW/cmを発するUV−Aランプを使用して、30〜60秒間重合されて必要とされるヒドロゲルを形成する。これは、平らなシートの形態であっても、または、より好都合には、プラスチックシリンジ中に格納されてもよい。非晶質ゲルは次に、シリンジから標的部位へ計量分配されてもよい。
ヒドロゲル
下方構成要素は好ましくは水和ヒドロゲルの形態にある。水和ヒドロゲルは、水和形態での、1つ以上の水ベースまたは水性ゲルを意味する。水和ヒドロゲルは、創傷部位からにじみ出た水および他の物質を吸収する役割を果たすことができ、包帯がかかる物質を創傷部位から除去することによって価値ある有用な機能を果たすことを可能にする。水和ヒドロゲルはまた、創傷部位を湿った状態に維持し、治癒を助けるための使用に役立つことができる、水分源を提供する。水和ヒドロゲルはまた、水源としての役割を果たし、過酸化水素の放出をもたらす。水和ヒドロゲルの使用は、国際公開第03/090800号パンフレットに記載されているような他の利益を有する。
【0032】
好適な水和ヒドロゲルは、国際公開第03/090800号パンフレットに開示されている。水和ヒドロゲルは好都合には親水性ポリマー材料を含む。好適な親水性ポリマー材料には、ポリ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ポリAMPS)またはその塩(例えば国際公開第01/96422号パンフレットに記載されているような)をはじめとする、例えば専有されたシート・ヒドロゲルの形態でファースト・ウォ−ター社(First Water Ltd)によって供給されるような、ポリアクリレートおよびメタクリレート、多糖類、例えば多糖ゴム、特にキサンタンゴム(例えば商標ケルトロール(Keltrol)で入手可能な)、様々な糖、ポリカルボン酸(例えばISP欧州(ISP Europe)から商標ガントレッツ(Gantrez)AN−169BFで入手可能な)、ポリ(メチルビニルエーテル・コ−無水マレイン酸)(例えば、20,000〜40,000の範囲の分子量を有する、商標ガントレッツAN139で入手可能な)、ポリビニルピロリドン(例えばPVP K−30およびPVP K−90として公知の商業的に入手可能な銘柄の形態での)、ポリエチレンオキシド(例えば商標ポリオックス(Polyox)WSR−301で入手可能な)、ポリビニルアルコール(例えば商標エルバノール(Elvanol)で入手可能な)、架橋ポリアクリルポリマー(例えば商標カーボポール(Carbopol)EZ−1で入手可能な)、セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースをはじめとする変性セルロース(例えば商標クルセル(Klucel)EEFで入手可能な)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば商標セルロースガム(Cellulose Gum)7LFで入手可能な)およびヒドロキシエチルセルロース(例えば商標ナトロゾル(Natrosol)250LRで入手可能な)が含まれる。
【0033】
親水性ポリマー材料の混合物がゲルに使用されてもよい。
親水性ポリマー材料の水和ヒドロゲルで、親水性ポリマー材料は、ゲルの総重量を基準として少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、さらにより好ましくは少なくとも10重量%、または少なくとも20重量%、望ましくは少なくとも25重量%、さらにより望ましくは少なくとも30重量%の濃度で望ましくは存在する。ゲルの総重量を基準として約40重量%以下の、さらにより多い量が使用されてもよい。
【0034】
好ましい水和ヒドロゲルは、ポリ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ポリAMPS)またはその塩を好ましくはゲルの総重量の約30重量%の量で含む。
【0035】
下方構成要素は公知の方法によって製造することができる。好ましくはそれは、ヨウ化物などの、過酸化水素透過または反応の速度を制御するために必要とされる任意のさらなる原料を含有する、約5.5のpHに緩衝された溶液中約40%w/vの比率で溶解されたAMPSモノマーの重合によって製造される。ヨウ化物が過酸化水素を酸素と水とに分解させるためのみに主に必要とされる場合、ヨウ化物濃度は約0.01%w/vであるべきである。酸素を放出するため、およびヨウ素を合成するために使用されるべきである場合には、ヨウ化物のレベルは約0.05%〜約0.2%w/vであるべきである。この材料の製造方法は特許番号欧州特許第1631328号明細書に記載されている通りである。
使用
身体で用いるために、本送達システム、例えば皮膚包帯は、上方構成要素を下方構成要素上へ置くことによって簡単に組み合わされてもよい。これは、皮膚/創傷表面から離れて実施することができ、その場合に複合包帯は、過酸化水素上方構成要素が皮膚表面から離れて、外側を向いて、単一体として皮膚/創傷上に置かれる。あるいはまた、下方構成要素を先ず標的皮膚または創傷部位に塗布し、次に過酸化水素構成要素を上部に加えることができる。包帯が治療されるべき区域にとって大きすぎるならば、両構成要素はまた適切なサイズにカットされてもよく、その場合上方構成要素は下方構成要素より小さいままであり、こうして上方構成要素が皮膚または創傷表面と直接接触するのを防ぐ。
【0036】
通常、下方構成要素は身体の上に直接置かれるが、介在材料が存在することは可能である。
【0037】
ほとんどの身体治療のためには、本送達システムは、人間または動物の皮膚上にまたはその近くに、例えば、美容または治療目的のために、例えば上述されたような広範囲の疾患の治療のために、治療されるべき創傷にわたってまたは皮膚の領域上に置くことによって皮膚治療のために使用される。
【0038】
上方構成要素が乾燥状態にある場合(例えばPVAフィルム)、それは、使用の時点で合わされるとすぐに、下方構成要素から水を自動的に供給されるであろう。いったん再水和されると、過酸化水素は、所定の速度で下方構成要素中へ、従って包帯と創傷または皮膚との界面に移動することができる。過酸化水素層が既に水和されている場合(例えば溶解した過酸化水素入りの40%w/vポリAMPSヒドロゲル)、後は、過酸化水素が下方構成要素中へおよびそれを通って拡散するだけである。両方の状況で、過酸化水素は、上述されたような公知の有益な効果を伴って、適切な速度で放出される。
【0039】
特に、本複合包帯は、皮膚治療包帯または創傷包帯に使用されてもよい。
任意の原料
過酸化水素の通過を制御するおよび/または過酸化水素と反応して所定の場所で有益な試剤を発生させるために不可欠な構成要素に加えて、本包帯、好ましくは下方構成要素は、国際公開第2004/108917号パンフレットに開示されているような、亜鉛イオンなどの1つ以上の他の活性な原料を組み込んでもよい。亜鉛イオンは、過酸化水素と安定化錯体を形成し、標的部位への過酸化水素の送達を助けることが知られている。亜鉛はまた、必須栄養素の微量元素でもあり、それは健康な組織の成長および修復に多くの機能を有する。
【0040】
本発明の第2態様では、乳酸イオンが本送達システムに含められてもよい。乳酸イオンは、本送達システム内で穏和な緩衝効果を有する。乳酸イオンはまた、血管形成−新しい血管の成長および再生を刺激するのに重要な役割を果たすと考えられる。しかしながら、乳酸イオンは本発明の第1態様では存在しない。
【0041】
本発明の第2態様では、グルコース源が本送達システムに含められてもよい。グルコースは、組織修復および治癒に不可欠な、細胞外マトリックス(ECM)を形成する様々なタイプの多糖類を構築するのに関与する(代謝前駆体として)と考えられる。この種の好ましい皮膚接触層は、本発明者らの欧州特許出願公開第04250508.1号明細書および英国特許出願公開第0427444.5号明細書に開示されている。しかしながら、グルコース源は本発明の第1態様では存在しない。
包装
本送達システムは好都合には、公知の方法で人間または動物対象の皮膚に包帯を付けるためのカバーもしくは外層を含む、またはそれと共に使用される。
【0042】
本送達システムの構成要素は好ましくは、使用前に最適性能のために別々に包装され、例えば積層アルミ箔の、例えば好適な滅菌した水不透過性パッケージ中に密封される。
好ましい実施形態
好ましい実施形態では、本送達システムは、過酸化水素尿素錯体およびPVAを含む、層の形態の、乾燥状態での上方構成要素と、層の形態のポリ−AMPSヒドロゲルである下方構成要素とを含む包帯である。
【0043】
本発明は、添付の図面に言及する以下の実施例に、例示の目的で、さらに記載される。
【実施例1】
【0044】
ポリビニルアルコール(PVA)(98〜99%加水分解された、124,000〜186,000分子量、アルドリッチ製のコード36,316−2)を、5%w/wの最終濃度へ脱イオン水に溶解させた。一定の攪拌を行いながら、水を沸点に加熱し、PVA顆粒をゆっくり加えた。PVAが溶解してしまうまで、水温を80℃以上に維持した。PVA溶液を使用前に室温(約21℃)に放冷した。
【0045】
尿素−過酸化水素(UHP)(35%過酸化水素を含有、シグマ製のコードU1753)を5%PVA溶液に加えて、1.0%w/wを得た。これは最終PVA濃度4.95%w/wを生じた。UHPは容易に溶け、RT(21℃)でのほんのわずかな攪拌が粉末を溶解させるために必要であった。
【0046】
上方構成要素を構成する乾燥フィルムを形成するために、124cmの表面積のプラスチック容器を使用した。これに、10または20グラムのUHP/PVA溶液を注ぎ込んだ。UHP/PVA溶液を全体表面にわたって均一に広げ、40℃で16〜24時間置いて乾燥させた。フィルムが乾燥した後、それらを取り出し、RT(21℃)で、気密ポリエチレン袋中に保った。フィルムは、使用したUHP/PVA溶液の量に依存して、約0.1mmまたは0.2mmの厚さを有した。
【0047】
UHP/PVAフィルムからの過酸化水素(H)の放出を評価するために、ヨウ素および酸素の生成を、電気滴定電気化学を用いて二次水和ヒドロゲルから測定した。
【0048】
下方構成要素を構成する水和ヒドロゲル層を、重量で以下の原料を含むように調合した。
【0049】
【表1】

【0050】
この混合物を、寸法100cm×100cmのポリエステル・スクリム(ポリエステル不織、オープンメッシュ支持体、HDKインダストリーズ社(HDK Industries)から入手可能な、製品コード(Product Code)5722)を含有するキャスティングトレー中へ約1.5mmの深さに計量分配した。ヒドロゲルを次に、約100mW/cmの電力定格で60秒までの間UVランプ下の照射への露光によって硬化させた。ヒドロゲルを次に30℃以下に放冷した。
【0051】
測定は、英国ルトンのウィストンブルック・テクノロジーズ(Whistonbrook Technologies,Luton、UK)によって供給されるエゼスキャン(Ezescan)機器およびソフトウェア(エゼスキャンは商標である)を用いて行った。測定は、3電極(作用電極、参照電極および対極)を生成するためにカーボンペーストでプリントされたアルミナ基材スクリーンを含むセンサー(英国のエレクトラ社(Electra Ltd)製のED5000)を用いて行った。参照電極は、Ag/AgClペーストでさらにコートした。酸素を測定するために、および過酸化水素からの干渉を防ぐために、酸素センサーをラップし、テフロン(登録商標)(Teflon)フルオロカーボン0.005インチ(0.013mm)厚さの単一層中に密封した。これは、電極緩衝液を入れることができるチャンバーを形成した。ヨウ素生成を測定するために、−100mVの電位を16時間にわたってかけ、酸素生成を測定するために、−550mVの電位を16時間にわたってかけた。
ヨウ素測定
オープンセンサーを好適な連結器ブロックおよび鉛によってエゼスキャン機器に取り付けた。ブロックおよびセンサーを、蒸発による水損失を最小限にするために、チャンバー内部に入れた。25μlの0.1MのKCl溶液を作用電極に加えた。5×5×0.1cm平方の二次ヒドロゲルを、作用電極がヒドロゲルの中心の下にあるように、KClおよびセンサー上へ置いた。2×2cm平方のUHP/PVAフィルムを、電極の真上に、ヒドロゲルの中心上へ置いた。電位を次にかけ、実験を25℃で16時間にわたって実施し、毎分発生した電流を読み取った。
【0052】
UHPが放出されるにつれて、過酸化物がヨウ化物をヨウ素に酸化し、ヒドロゲルの全体にわたって拡散する。ヨウ素は次に電極で還元され、発生した電流を過酸化物の放出についてのマーカーとして用いることができる。
【0053】
結果を図1に示す。この結果は、(i)ヨウ素が生成されたこと、および(ii)異なる重量のPVA/UHPフィルムが増加する量のUHPを放出したことを示す。
酸素測定
センサーを0.1MのKClで満たし、使用前に24時間この溶液中に浸した。センサーをリンスし、未使用の0.1MのKClで再び満たした。開放端を、流体損失を防ぐために密封した。センサーを好適な連結器ブロックおよび鉛によってエゼスキャン機器に取り付けた。ブロックおよびセンサーを、蒸発による水損失を最小限にするために、チャンバー内部に入れた。センサー上方のテフロン(登録商標)に、25μl脱イオン水を加え、次に−550mVの電位をかけた。電流応答が大気酸素との平衡を示唆する約−2.5μAでプラトーを形成するまで、これを監視した。水を次に除去し、25μlの水中の0.1mg/mlカタラーゼ(6ユニットの活性と同等)で置き換えた。
【0054】
この上へ、5×5cm平方の二次ヒドロゲルを、引き続き2×2cm平方のUHP/PVAフィルムを置いた。実験を25℃で16時間にわたって行い、毎分電流を読み取った。この技法の原理は、商業的に入手可能な「クラーク(Clark)酸素センサー」のそれと同一であった。酸素が過酸化水素のカタラーゼ媒介分解によって生成される場合、それはテフロン(登録商標)層を通って電極電解質中へ拡散し、Ag−AgCl参照電極に対して−550mVで平衡を保つ作用電極でそれが還元される、KCl中で平衡するであろう。生じる陰極電流は溶解酸素の濃度に比例する。
【0055】
結果を、大気酸素(100%ととられる)の百分率として表される酸素生成対時間のグラフである、図2に示す。テフロン(登録商標)被覆センサーを大気酸素(100%とマークするプラトー)と平衡させた。運転開始の約50分後に、カタラーゼ、引き続きヒドロゲル層(ヨウ素実験のために使用したものと同じ組成物)をテフロン(登録商標)表面に塗布し、次にPVA/UHPフィルムを最上部に加えた。
【0056】
図2は、(i)酸素が生成され、電極で測定可能であったこと、および(ii)増加する量のPVA/UHPフィルムが異なる容量の酸素を送達したことを示す。
【実施例2】
【0057】
5%w/wのPVA溶液を実施例1に記載した通り調製した。
5%w/wのPVP溶液を、5gのPVP(360,000平均分子量、シグマコードPVP360)を95gのDI水中に溶解させることによって調製した。PVPは冷水可溶性であり、いかなるさらなる処理も必要としない。
【0058】
これらの原液を使用して、下記を調製した:
サンプル1:5%PVP溶液に、水を加えて0.5%w/wを得た。最終[PVP]=4.92%w/w。
【0059】
サンプル2:5%PVA溶液に、UHPを加えて1.4%w/wを得た。最終[PVA]=4.93%w/w。pH=5.9。
【0060】
サンプル3:サンプル2の通りだが、pHを小容量のクエン酸で調整してpH4.3を得た。
【0061】
サンプル4:5%PVA溶液に、UHPを加えて1.4%w/wを得て、そしてPVPを加えて1%w/wを得た。最終[PVA]=4.88%w/w。pH=5.9。
【0062】
サンプル5:サンプル4の通りだが、pHを小容量のクエン酸で調整してpH4.3を得た。
【0063】
10gの各サンプルを、8.4cm直径のペトリ皿中へ計量分配し、40℃で18時間
乾燥させた。サンプル2〜5は次にRT(約21℃)でデシケーター中に保管したが、サンプル1はRT(約21℃)でデシケーターに入れずに保管した。
【0064】
以下の方法を用いて、サンプルを過酸化水素について試験した。
10mgの各フィルムを取り出し、7mlの小型の容器中へ入れた。1mlのDI水を加え、サンプルを30分間浸けて過酸化水素を外へ拡散させた。4mlキュベットに、2.2mlのDI水、0.5mlの0.1Mリン酸ナトリウムpH5.0(クエン酸で)、0.1mlの1mg/mlラクトペルオキシダーゼ、0.1mlのDMSO中3mg/mlTMB(テトラメチルベンジジン)を加えた。0.5mlのサンプル浸漬水を次にキュベットに加え、混合し、発色のために5分間放置した。5分後に、色を次に630nmで読み取った。存在する過酸化水素の量を次に、同じ効力検定法を用いて効力検定した、水中の過酸化水素の検量線から推定した。
【0065】
図3の結果は、PVP、PVAおよびPVA+PVPフィルムでの過酸化水素安定性を実証する。試験期間内で、安定な過酸化水素フィルムが維持された。PVPの使用は、フィルム内の過酸化水素安定性を助けるように見える。これは、PVPと過酸化水素との公知の錯体形成のためであると考えられる。
【実施例3】
【0066】
5%w/wのPVA溶液を実施例1に記載した通り調製した。
PVP(360,000平均分子量、シグマコードPVP360)およびH(30%w/w、シグマ コードH1009)を5%PVA溶液に加えてそれぞれ1%および0.5%の最終濃度を得た。PVA最終濃度は4.85%であった。20gのこの混合物を10cm皿に注ぎ込み、40℃で16時間乾燥させた。
【0067】
二次ヒドロゲル層を、以下の調合物を使用して製造した。
【0068】
【表2】

【0069】
50gの調合物のそれぞれを、10cm皿に注ぎ込み、25秒間、100mW/cmUV放射線下に重合させた。ゲルを取り出し、使用前に4℃で保管した。
【0070】
二次ヒドロゲル中のグルコースおよび乳酸塩の効果を、H放出についてのマーカーとしてヨウ素を使用して試験した。オープンセンサーを好適な連結器ブロックおよび鉛によってエゼスキャン機器に取り付けた。ブロックおよびセンサーを、蒸発による水損失を最小限にするために、チャンバー内部に入れた。30μlの0.1MのKCl溶液を作用電極に加えた。5×5cm平方の二次ヒドロゲルを、作用電極がヒドロゲルの中心の下
にあるように、KClおよびセンサー上へ置いた。2×2cm平方のH/PVAフィルムを、電極の真上に、ヒドロゲルの中心上へ置いた。電位を次にかけ、実験を25℃で16時間にわたって実施し、毎分発生した電流を読み取った。
【0071】
が放出されるにつれて、過酸化物がヨウ化物をヨウ素に酸化し、ヒドロゲルの全体にわたって拡散する。ヨウ素は次に電極で還元され、発生した電流を過酸化物の放出についてのマーカーとして用いることができる。
考察
実施例1ならびに図1および2について言及すると、ヨウ素および酸素生成は過酸化物放出の直接の結果であった。乾燥PVA/UHP層がヒドロゲル上に置かれたとき、PVAフィルムは、UHPの放出を可能にするのに十分に水和した。PVAフィルムは元の状態のままであり、完全に取り除くことができた。ヒドロゲルはヨウ化物イオンを含有するので、過酸化物は方程式:
+2I+2H→ I+2H
に従って、これらと反応してヨウ素を形成した。
【0072】
ヨウ素は次に、ゲルを通ってセンサー電極へ拡散するであろう。図1が示すように、この応答は、より重い重量のPVAフィルムがより大きいヨウ素応答を送達して、UHV容量に依存した。ヨウ化物が使い尽くされたとき、ヨウ素グラフは下降した。これは、表面から蒸発し、こうしてヒドロゲル中のヨウ素濃度を低下させるヒドロゲル中のヨウ素のためである。
【0073】
図2の酸素化グラフもまた、ヒドロゲルと接触した水和後に、PVAフィルムからのUHPの放出を実証した。センサーは、安定化したグラフを得るために、周囲空気と平衡させられた。これが100%ととられた。この時点からの減少はセンサーでの酸素濃度が低下したことを示唆するが、いかなる増加も酸素濃度が周囲空気のそれよりも上に上がったことを示すであろう。図2は、空気のそれと比べて酸素濃度の増加が起こっていることを明らかに示した。再び、PVAフィルムの重量が異なる酸素応答を与え、PVAフィルム厚さの増加がより多くのUHPを下のヒドロゲル中へ送達できることを示唆した。同様に、ヒドロゲル調合物は、ヨウ素実験で使用されたものと同じものであった、すなわちヒドロゲルはヨウ化物を含有し、そのため酸素化実験中にヨウ素を生成した。これは、UHPが過剰にあり、ヨウ素および酸素生成の両方を推進し得ることを示した。
【0074】
さらに、図3に提示されたグラフは、過酸化水素を安定な乾燥フィルムとして調合できることを明らかに実証する。過酸化水素は、PVAのみのフィルム、PVA+PVPフィルム、およびPVPのみのフィルム中へ調合された。PVPは過酸化水素と錯体を形成することが知られており、それ故、調合物中に存在するPVPが乾燥および保管中の過酸化水素安定性を助けたと推測される。グラフは、%PVPが増加する(0%から1%へ、5%へ)につれて、回収可能な過酸化水素もまた増加することを示した。調合物でのPVPの使用はそれ故過酸化水素安定剤として有利であるが、PVAのみのフィルムもまた、より低いレベルではあるが、安定な過酸化水素回収を与えるので、それが不可欠であるわけでない。
【0075】
図4は、ヒドロゲル内のグルコースおよび乳酸塩の存在または不存在下のヨウ素生成を示す。一般に、グラムは、小さな差があるが、ヨウ素の生成への全体影響が全くないことを示す。これらの差の最も可能性の高い原因は、乾燥プロセスによって引き起こされる、PVA/PVP/Hフィルムの厚さの変動であり、それはヨウ化物含有ヒドロゲル中へのHの異なる用量をもたらすであろう。しかし全体的には、グラフは、ヨウ素生成がグルコース、乳酸塩または両方の不存在によって妨げられない、すなわち、Hを使用するヨウ素生成がヒドロゲル層中のグルコースおよび/または乳酸塩の存在に依
存しないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素を含む上方構成要素と、水和状態の下方構成要素とを含み、過酸化水素が下方構成要素の方へ移動するように、上方構成要素および下方構成要素が互いに接触して置かれる、過酸化水素送達システム。
【請求項2】
乳酸イオン源およびグルコースの補給品を含まない、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記上方構成要素が乾燥状態にある、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項4】
皮膚包帯であり、そして前記上方構成要素および下方構成要素が包帯構成要素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項5】
前記上方構成要素がポリマー材料を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項6】
前記ポリマー材料がポリビニルアルコールを含む、請求項6に記載の送達システム。
【請求項7】
前記上方構成要素がシート、層またはフィルムの形態にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項8】
前記過酸化水素が過酸化水素尿素錯体の形態にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項9】
前記下方構成要素が水和ヒドロゲルを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項10】
前記下方構成要素がヨウ化物イオンを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項11】
前記下方構成要素がシート、層またはフィルムの形態にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項12】
前記下方構成要素が非晶質ゲルまたはローションの形態にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項13】
亜鉛イオンを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項14】
前記上方および下方構成要素が使用前に別々にパッケージされる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の送達システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−543644(P2009−543644A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520045(P2009−520045)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002706
【国際公開番号】WO2008/009925
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(504394847)インセンス・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】INSENSE LIMITED
【Fターム(参考)】