過電流検出装置
【課題】駆動に適した推奨値からずれた電気的特性を持つ負荷を駆動した場合でも誤検出を極力防止する。
【解決手段】しきい値生成回路11は、抵抗13、14にしきい値生成電流ITH、ITLを流してしきい値電圧VTH、VTLを生成し、コンパレータ12はシャント抵抗7の検出電圧Vaと比較して過電流検出信号Scを得る。しきい値補正回路17は、平均負荷電流、負荷電流の交流変化分、電源電圧VBが大きいほどしきい値電圧VTH、VTLを増やし、負荷4の温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。
【解決手段】しきい値生成回路11は、抵抗13、14にしきい値生成電流ITH、ITLを流してしきい値電圧VTH、VTLを生成し、コンパレータ12はシャント抵抗7の検出電圧Vaと比較して過電流検出信号Scを得る。しきい値補正回路17は、平均負荷電流、負荷電流の交流変化分、電源電圧VBが大きいほどしきい値電圧VTH、VTLを増やし、負荷4の温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に流れる電流に応じて生成される電圧としきい値電圧とを比較して過電流検出信号を出力する過電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のユーザは、車両を取得した後に道路運送車両の保安基準に適合する範囲内で、車両に取り付けるランプの数を増やしたり、光量を増やすために消費電流の大きいランプに交換したり、その他の種々の自動車用電気パーツを購入して取り付ける場合がある。こうした自動車用電気パーツには、自動車メーカが各車両用に提供する純正品の他に、パーツメーカが独自に製造して販売しているものがある。
【0003】
ランプなどの電気パーツは、ICとして構成された負荷駆動装置により駆動される。この負荷駆動装置は、高精度の過電流保護回路を備えており、駆動電流が予め決められたしきい値電流を超えると電流を遮断するようになっている(特許文献1、2参照)。
【0004】
純正品は、その選択および取り付けを誤らない限り車両の電気的仕様に適合した電気的特性を有している。これに対し、一般のパーツメーカが販売する電気パーツは、複数種類の車両に共通して適用できる汎用品として設計および製造されている場合が多く、純正品に比べると車両の電気的仕様に対して電気的特性のずれが生じ易い。
【0005】
例えば、電気パーツの消費電力が車両の電気的仕様に適した推奨値よりも大きい場合、駆動電流が増大するとともに駆動電流のリプル分も増大するので、電気パーツ自身の温度変動やバッテリ電圧の変動など僅かな変動要因により過電流保護機能が動作する場合がある。また、正常動作に必要な電源電圧範囲が狭いため電気パーツ自身が昇圧回路または降圧回路を備えるものがあり、これら昇圧回路または降圧回路が動作することにより負荷駆動装置にノイズを与えるものがある。このノイズは、温度や電源電圧の変動などによって増大し、駆動電流に重畳して現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−21071号公報
【特許文献2】特開2005−204375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように負荷(電気パーツ)を車両の電源線に接続する場合、その負荷の電気的特性が車両の電気的仕様に適した推奨値からずれていると、過電流検出装置は、本来問題のない通常の使い方でも過電流状態と誤検出する虞がある。この不具合は車両の負荷駆動装置と接続した電気パーツとの不適合が生じて初めて現れるため、ユーザの事前対策は困難である。また、車両メーカも、純正品以外の種々の電気パーツに適合する負荷駆動装置を提供することは困難である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、推奨値からずれた電気的特性を持つ負荷を駆動した場合でも誤検出を極力防止できる過電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した過電流検出装置は、負荷に流れる電流を電圧に変換して出力する電流検出回路と、しきい値電圧を生成するしきい値生成回路と、電流検出回路が出力する電圧をしきい値電圧と比較して過電流検出信号を出力する比較回路とを備えている。しきい値生成回路は、負荷に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほどしきい値電圧を増大させる第1状態検出回路と、負荷に流れる電流の交流変化分を検出し、その検出した交流変化分が大きいほどしきい値電圧を増大させる第2状態検出回路のうち少なくとも一方を備えている。
【0010】
第1状態検出回路によれば、負荷の電気的特性に応じて負荷に定常的に流れる平均電流を検出し、その平均電流が大きいほど過電流と判定する際のしきい値電圧を増大補正する。また、第2状態検出回路によれば、負荷の電気的特性に応じて負荷電流に定常的に現れるリプル分やノイズ分などの交流変化分を検出し、その交流変化分が大きいほど過電流と判定する際のしきい値電圧を増大補正する。これにより、負荷駆動装置に過熱やノイズによる誤動作などの不具合を発生させない限り、車両の電気的仕様に適した推奨値からずれた電気的特性を持つ負荷を正常に駆動した場合に過電流と誤検出することを極力防止できる。
【0011】
請求項2に記載した手段によれば、しきい値生成回路は、第1状態検出回路および/または第2状態検出回路に加え、第3状態検出回路と第4状態検出回路のうち少なくとも一方を備えている。第3状態検出回路は、負荷の温度または負荷の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほど負荷の種類に応じてしきい値電圧を増大または減少させる。例えばハロゲン電球、白熱電球など温度の低下に伴い抵抗が低くなる負荷では、検出温度が低いほどしきい値電圧を増大させる。一方、発光ダイオードなど温度の低下に伴い順電圧が高くなる負荷では、検出温度が低いほどしきい値電圧を減少させる。これにより、負荷の温度または負荷の環境温度に依存した過電流の誤検出を極力防止できる。第4状態検出回路は、負荷に印加される電源電圧を検出し、その検出した電源電圧が高いほどしきい値電圧を増大させる。これにより、電源電圧に依存した過電流の誤検出を極力防止できる。
【0012】
請求項3に記載した手段によれば、比較回路は、電流検出手段が出力する電圧を所定のヒステリシス幅だけ離間した高レベルしきい値電圧および低レベルしきい値電圧と比較して過電流検出信号を出力する。状態検出回路は、所定のヒステリシス幅を保ちつつ高レベルしきい値電圧と低レベルしきい値電圧を増大または減少させる。これにより、しきい値電圧の補正量に合わせてヒステリシス幅を変更することができ、過電流の検出動作と過電流からの復帰動作とを安定して行うことができる。
【0013】
請求項4に記載した手段によれば、各状態検出回路は、それぞれしきい値電圧の増大分または減少分に相当する大きさのしきい値生成電流を出力する。しきい値生成回路は、しきい値生成電流を重畳させて抵抗性回路に流すことによりしきい値電圧を生成する。これにより、複数種類の状態を反映した総合的なしきい値電圧を容易且つ正確に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す過電流検出回路を備えた負荷駆動回路の構成図
【図2】しきい値補正回路の構成図
【図3】第1状態検出回路の構成図
【図4】検出電圧Vaの平均値と補正電流ITH1、ITL1との関係を示す図
【図5】第2状態検出回路の構成図
【図6】電圧VSの交流変化分V2と補正電流ITH2、ITL2との関係を示す図
【図7】電圧VSの波形図
【図8】第3状態検出回路の構成図
【図9】ランプ負荷の場合の順方向電圧VDと補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図10】ランプ負荷の場合の検出温度と補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図11】負荷が発光ダイオードの場合の順方向電圧VDと補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図12】負荷が発光ダイオードの場合の検出温度と補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図13】第4状態検出回路の構成図
【図14】電源電圧VBと補正電流ITH4、ITL4との関係を示す図
【図15】電源電圧VBが増加する場合の電圧、電流の波形図
【図16】過電流が検出されたときの電圧、電流の波形図
【図17】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図18】本発明の第3の実施形態を示すしきい値生成回路の構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について図1ないし図16を参照しながら説明する。図1は、過電流検出回路を内蔵した負荷駆動回路に係る構成を示している。車載用ICとして構成された負荷駆動回路1は、図示しないバッテリから電源電圧VBの供給を受けて動作し、ライトスイッチ2がオンされるとリレー3をオン駆動してランプからなる負荷4を通電させる。負荷駆動回路1の内外における高電位側電源線、低電位側電源線をそれぞれ電源線5、6とすると、電源線5、6間にはシャント抵抗7とリレー3の接点3bと負荷4とが直列に接続されている。抵抗値Raを持つシャント抵抗7は、負荷4に流れる電流ILを電圧Va(=IL・Ra)に変換して出力する電流検出回路に相当し、後述する過電流検出回路8の一部を構成している。
【0016】
負荷駆動回路1は、過電流検出回路8、制御回路9およびハイサイド駆動用のPチャネル型MOSトランジスタ10を備えている。過電流検出装置に相当する過電流検出回路8は、上述したシャント抵抗7の他に、高レベルしきい値電圧VTHおよび低レベルしきい値電圧VTLを生成するしきい値生成回路11と、シャント抵抗7の検出電圧Vaとしきい値電圧VTH、VTLとを比較して過電流検出信号Scを出力するヒステリシスコンパレータ12(比較回路に相当)とから構成されている。
【0017】
高レベルしきい値電圧VTHと低レベルしきい値電圧VTLとは、所定のヒステリシス幅だけ離間している。ヒステリシスコンパレータ12は、検出電圧Vaがしきい値電圧VTHよりも大きくなると過電流検出信号ScをHレベル(過電流検出状態)にする。その後、検出電圧Vaがしきい値電圧VTL以下になると、その状態が所定の待ち時間だけ継続したことを条件として過電流検出信号ScをLレベルに戻す。
【0018】
しきい値生成回路11は、一端が電源線5に接続された抵抗13、14(抵抗性回路)、電流出力回路15、16およびしきい値補正回路17により構成されている。しきい値生成回路11は、抵抗13、14にそれぞれしきい値生成電流ITH、ITLを流すことによりしきい値電圧VTH、VTLを生成する。電流出力回路15は、一定値を持つ標準電流ITH0としきい値補正回路17が流し込む補正電流ITH1〜ITH4とを重畳(加算)して抵抗13に流す。電流出力回路16は、一定値を持つ標準電流ITL0としきい値補正回路17が流し込む補正電流ITL1〜ITL4とを重畳(加算)して抵抗14に流す。
【0019】
しきい値補正回路17は、図2に示すように第1状態検出回路18、第2状態検出回路19、第3状態検出回路20および第4状態検出回路21と、ダイオード22H〜25Hからなる加算回路26Hと、ダイオード22L〜25Lからなる加算回路26Lとにより構成されている。
【0020】
制御回路9は、ライトスイッチ2を介して電源線5に接続されている。ライトスイッチ2がオンしており過電流検出信号ScがLレベル(過電流非検出状態)であるときに、例えば0Vを持つゲート駆動信号を出力してMOSトランジスタ10をオン駆動する。これに対し、ライトスイッチ2がオンしており過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)であるときおよびライトスイッチ2がオフしているときに、例えば電源電圧VBを持つゲート駆動信号を出力してMOSトランジスタ10をオフ駆動する。MOSトランジスタ10のドレイン(負荷駆動回路1の出力端子)と電源線6との間には、IC外部においてリレー3のコイル3aが接続されている。
【0021】
続いて、図3ないし図14を参照しながら第1状態検出回路18ないし第4状態検出回路21の構成および作用を説明する。これらの状態検出回路18〜21において同一構成部分(抵抗値、基準電圧値のみ異なる構成部分を含む)には同一符号を付している。
【0022】
図3に示す第1状態検出回路18は、負荷4に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほど補正電流ITH1、ITL1を増やしてしきい値電圧VTH、VTLを増大させる。オペアンプ31は、シャント抵抗7の低電位側端子の電圧VSを受けるバッファ回路である。オペアンプ32と抵抗33〜36からなる差動増幅回路は、抵抗33〜36の抵抗値が等しいことから、(1)式に示すように負荷電流ILに応じた検出電圧Vaを出力する。
Va=VB−VS …(1)
【0023】
オペアンプ37、抵抗38〜41、基準電圧生成回路42およびコンデンサ43からなる差動増幅回路は、基準電圧生成回路42の基準電圧をVT1、抵抗38、40の抵抗値をR1、抵抗39、41の抵抗値をR2とすれば、(2)式に示すように検出電圧Vaを基準電圧VT1だけオフセットしてゲインR2/R1倍に増幅した平均化された電圧V1を出力する。
V1=R2/R1(Va−VT1) …(2)
【0024】
この電圧V1は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH1、ITL1に変換される。すなわち、定電流回路45と直列に接続されたトランジスタ46は、エミッタフォロアの形態を有しておりインピーダンス変換する。トランジスタ47と抵抗値R3を持つ抵抗48は、(3)式に示すように電圧V1を電流Im1に変換する。抵抗値R3により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im1=V1/R3 …(3)
【0025】
この電流Im1は、トランジスタ49、50、51からなるカレントミラー回路に流れ込む。そして、トランジスタ52、53からなるミラー比1のカレントミラー回路によりシンク電流である補正電流ITH1に変換され、トランジスタ54、55からなるミラー比1のカレントミラー回路によりシンク電流である補正電流ITL1に変換される。電源線5とトランジスタ50、51との間に接続された抵抗56、57により、それぞれ補正電流ITH1、ITL1の傾きおよび大きさを調整できる。このときの関係式は、抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR4、R5とすれば以下の(4)式、(5)式となる。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R4・ITH1 …(4)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R5・ITL1 …(5)
【0026】
図4は、第1状態検出回路18の入出力特性を示している。横軸はシャント抵抗7による検出電圧Vaの平均値を示しており、縦軸は補正電流ITH1、ITL1を示している。基準電圧VT1は補正開始電圧に相当する。検出電圧Vaの平均値が基準電圧VT1以下のとき、すなわち負荷電流ILの平均値がVT1/Ra以下のときには補正電流ITH1、ITL1は流れない。負荷電流ILの平均値がVT1/Raを超えると、その平均電流が大きくなるほど補正電流ITH1、ITL1が増加するので、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。
【0027】
図5に示す第2状態検出回路19は、負荷4に流れる電流ILの交流変化分を検出し、その検出した交流変化分が大きいほど補正電流ITH2、ITL2を増やしてしきい値電圧VTH、VTLを増大させる。ピークホールド回路58は電圧VSのピーク値VSmaxを検出し、ボトムホールド回路59は電圧VSのボトム値VSminを検出する。ここでのサンプリング時間およびホールド時間は、負荷電流ILに定常的に現れるリプルやノイズなどの交流変動分のピークツーピーク値を捉えられるように設定されている。オペアンプ32と抵抗33〜36からなる差動増幅回路は、抵抗33〜36の抵抗値が等しいことから、(6)式に示すように交流変化分V2を出力する。
V2=VSmax−VSmin …(6)
【0028】
この電圧V2は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH2、ITL2に変換される。トランジスタ47と抵抗値R6を持つ抵抗48は、(7)式に示すように電圧V2を電流Im2に変換する。抵抗値R6により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im2=V2/R6 …(7)
【0029】
抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR7、R8とすれば以下の(8)式、(9)式が成立する。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R7・ITH2 …(8)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R8・ITL2 …(9)
【0030】
図6は、第2状態検出回路19の入出力特性を示している。横軸は電圧VSの交流変化分V2を示しており、縦軸は補正電流ITH2、ITL2を示している。ここでの交流変化分V2は、リプル分およびノイズ分の両者を含むピークツーピーク値である。また、図7は、負荷電流ILが大きいときの電圧VSの波形(a)と、負荷電流ILが小さいときの電圧VSの波形(b)とを同一スケールで示している。二点鎖線は、検出したピーク値VSmaxとボトム値VSminである。
【0031】
負荷電流ILが大きくなるに従って電圧VSの交流変化分V2が増大するので、補正電流ITH2、ITL2を増加させている。これにより、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。
【0032】
図8に示す第3状態検出回路20は、負荷4の温度または負荷4の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほど補正電流ITH3、ITL3を増大させる。温度は、定電流回路60と直列に接続されたダイオード61の順方向電圧VDにより検出される。順方向電圧VDは、周知のように負の温度特性を持つ。ダイオード61は、負荷4の温度または負荷4の周囲温度を検出できるように負荷4の近傍に配置されるが、図1に示すリレー3に設けてもよい。
【0033】
オペアンプ37、抵抗38〜41および基準電圧生成回路42からなる差動増幅回路は、基準電圧生成回路42の基準電圧をVT2、抵抗38、40の抵抗値をR9、抵抗39、41の抵抗値をR10とすれば、(10)式に示すように順方向電圧VDを基準電圧VT2だけオフセットしてゲインR10/R9倍に増幅した電圧V3を出力する。
V3=R10/R9(VD−VT2) …(10)
【0034】
この電圧V3は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH3、ITL3に変換される。トランジスタ47と抵抗値R11を持つ抵抗48は、(11)式に示すように電圧V3を電流Im3に変換する。抵抗値R11により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im3=V3/R11 …(11)
【0035】
抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR12、R13とすれば以下の(12)式、(13)式が成立する。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R12・ITH3 …(12)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R13・ITL3 …(13)
【0036】
図9は、第3状態検出回路20の入出力特性を示している。横軸はダイオード61の順方向電圧VDを示しており、縦軸は補正電流ITH3、ITL3を示している。この図9を検出温度と補正電流ITH3、ITL3との関係として表すと図10になる。すなわち、順方向電圧VDが基準電圧VT2(例えば0.45V)以下のとき、すなわち検出温度が例えば150℃以上のときには補正電流ITH3、ITL3は流れない。検出温度が150℃よりも低い場合、検出温度が低くなるほど補正電流ITH3、ITL3が増加するので、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。
【0037】
ここに示した第3状態検出回路20の特性は、ハロゲン電球、白熱電球など温度の低下に伴い抵抗が低くなる負荷に適している。このような負荷4では、ライトスイッチ2をオンした時の温度が低いほどラッシュカレントが増えるからである。これに対し、発光ダイオードなど温度の低下に伴い順電圧が高くなる負荷4では、図11、図12に示すように、順方向電圧VDが高くなるほど、すなわち検出温度が低くなるほど補正電流ITH3、ITL3を減少させる特性とする。
【0038】
図13に示す第4状態検出回路21は、負荷4に印加される電源電圧VBを検出し、その検出した電源電圧VBが高いほど補正電流ITH4、ITL4を増大させる。電源線5、6間には、抵抗値R14、R15を持つ分圧用の抵抗62、63が直列に接続されている。電源電圧VBの分圧電圧VRは(14)式に示すようになる。
VR=R15/(R14+R15)・VB …(14)
【0039】
オペアンプ37、抵抗38〜41および基準電圧生成回路42からなる差動増幅回路は、基準電圧生成回路42の基準電圧をVT3、抵抗38、40の抵抗値をR16、抵抗39、41の抵抗値をR17とすれば、(15)式に示すように電源電圧VBの分圧電圧VRを基準電圧VT3だけオフセットしてゲインR17/R16倍に増幅した電圧V4を出力する。
V4=R17/R16(VR−VT3) …(15)
【0040】
この電圧V4は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH4、ITL4に変換される。トランジスタ47と抵抗値R18を持つ抵抗48は、(16)式に示すように電圧V4を電流Im4に変換する。抵抗値R18により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im4=V4/R18 …(16)
【0041】
抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR19、R20とすれば以下の(17)式、(18)式が成立する。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R19・ITH4 …(17)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R20・ITL4 …(18)
【0042】
図14は、第4状態検出回路21の入出力特性を示している。横軸は電源電圧VBを示しており、縦軸は補正電流ITH4、ITL4を示している。電源電圧VBが(R14+R15)/R15・VT3以下のときには補正電流ITH4、ITL4は流れない。電源電圧VBが(R14+R15)/R15・VT3を超えると、その電圧値が大きくなるほど補正電流ITH4、ITL4が増加するので、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。これは、負荷4に加わる電源電圧VBが増加するほど負荷電流ILが増大するからである。基準電圧VT3は補正開始電圧に相当する。
【0043】
図15は、電源電圧VBが増加する場合の電圧、電流の波形を示している。時刻t1〜t2の期間および時刻t5〜t6の期間でライトスイッチ2がオンする。ライトスイッチ2がオンした時には負荷4の温度(ランプのフィラメント温度)が低いのでラッシュカレントが流れ、点灯状態が継続するのに伴い負荷電流ILが徐々に低下する。この図では、シャント抵抗7の検出電圧Vaがしきい値電圧VTHを超えることがないので、負荷4への通電が遮断されることはない。また、時刻t3から時刻t4にかけて電源電圧VBが徐々に増加するのに伴い、第4状態検出回路21が補正電流ITH4、ITL4を徐々に増やす。その結果、しきい値生成電流ITH、ITLおよびしきい値電圧VTH、VTLも増大する。
【0044】
図16は、過電流が検出されたときの電圧、電流の波形を示している。時刻t11〜t12の期間および時刻t13〜t15の期間でライトスイッチ2がオンする。時刻t14で負荷4の端子間が短絡すると、シャント抵抗7の検出電圧Vaがしきい値電圧VTHを超えるので、過電流検出信号ScがHレベルとなって負荷4への通電が遮断される。ここでは時刻t15でライトスイッチ2がオフしているが、ライトスイッチ2がオンし続ける場合には、遮断されてから所定の待ち時間が経過すると過電流検出信号ScがLレベルに戻り通電が再開される。
【0045】
以上説明した本実施形態によれば、過電流検出回路8は、シャント抵抗7による検出電圧Vaとしきい値電圧VTH、VTLとの比較に基づいて過電流検出信号Scを出力する。この場合、しきい値生成回路11は、駆動に関する4種類の状態(平均負荷電流、負荷電流ILの交流変化分、温度、電源電圧VB)に応じてそれぞれ独立して補正電流ITH1〜ITH4および補正電流ITL1〜ITL4を変更し、これら補正電流を重畳させてシャント抵抗7に流すことによりしきい値電圧VTH、VTLを生成する。これにより、各状態を反映した総合的なしきい値電圧VTH、VTLを容易且つ正確に生成でき、各状態に基づいてバランスよく過電流を検出できる。
【0046】
しきい値生成回路11は、第1状態検出回路18ないし第4状態検出回路21を備えている。このうち第1状態検出回路18は、負荷4に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。また、第2状態検出回路19は、負荷4に流れる電流ILの交流変化分V2を検出し、その検出した交流変化分V2が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。
【0047】
これら第1状態検出回路18および第2状態検出回路19を備えれば、負荷4の消費電力が負荷駆動回路1の電気的仕様に適した推奨値に比べ大きい方にずれていても、短絡や劣化などの異常がなく正常に動作しており、負荷駆動回路1に対し過熱やノイズによる誤動作などの不具合を発生させない限り、過電流と誤検出することを極力防止できる。その結果、複数種類の車両に共通して適用できる汎用品としてパーツメーカが設計および製造したランプ等の負荷を、車両メーカ等が設計および製造した純正品と同等に支障なく使用できるようになる。
【0048】
第3状態検出回路20は、負荷4の温度または負荷4の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。これにより、負荷4のラッシュカレントにより過電流と誤検出することを極力防止できる。また、第4状態検出回路21は、負荷4に印加される電源電圧VBを検出し、その検出した電源電圧VBが高いほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。これにより、バッテリ電圧の変動に起因する過電流の誤検出を防止できる。
【0049】
過電流検出回路8は、ヒステリシスコンパレータ12を備え、各状態検出回路18〜21は、抵抗56、57のトリミングにより所望のヒステリシス幅を保ちつつしきい値電圧VTH、VTLを増大または減少させることができる。これにより、過電流の検出動作と過電流検出状態からの復帰動作とを安定して行うことができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図17は、過電流検出回路を内蔵した負荷駆動回路の第2の実施形態を示しており、図1に示した各構成要素と対応する構成要素に同一符号を付している。この負荷駆動回路71は、各構成要素の電源線5、6との接続態様が図1に示す負荷駆動回路1とは逆の関係となっている。例えば負荷4の一端は電源線5に接続されており、シャント抵抗7の一端は電源線6に接続されている。負荷駆動回路71において、Nチャネル型MOSトランジスタ10はローサイド駆動であり、抵抗13、14の一端は電源線6に接続されている。負荷駆動回路71と負荷駆動回路1は実質的に同一構成である。従って、本実施形態によれば、第1の実施形態と同一の作用および効果が得られる。
【0051】
(第3の実施形態)
図18は、過電流検出回路のしきい値生成回路を表す第3の実施形態を示している。本実施形態においても、図1または図17に示すように電源線5、6間にシャント抵抗7とリレー3の接点3bと負荷4とが直列に接続されている。ライトスイッチ2がオンされると、負荷4に対し電源電圧VBが印加されて負荷電流ILが流れる。過電流検出回路は、シャント抵抗7による検出電圧Vaとしきい値電圧VTH、VTLとを比較して過電流検出信号Scを出力する。
【0052】
しきい値生成回路81は、しきい値電圧VTH、VTLを生成する処理の一部をマイクロコンピュータ82(以下、マイコン82と称す)により行っている。マイコン82の外部には、負荷電流ILに応じた電圧VSを検出する電圧検出部83、負荷4の温度または負荷4の周囲温度に応じた電圧VDを検出する温度検出部84、電源電圧VBを検出する電圧検出部85、A/D変換器86〜88およびD/A変換器89、90を備えている。A/D変換器86〜88、D/A変換器89、90などは、マイコン82に内蔵されていてもよい。電圧検出部83はシャント抵抗7からなり、温度検出部84は例えばダイオードからなる。
【0053】
第1補正部91ないし第4補正部94および補正値算出部95は、マイコン82のCPUがROMに記憶されたプログラムに従って実行する処理をブロックとして示したものである。二点鎖線で囲まれた第1状態検出部96ないし第4状態検出部99は、本発明でいう第1状態検出回路ないし第4状態検出回路に相当する。補正値算出部95は、第1補正部91ないし第4補正部94でそれぞれ演算されたしきい値電圧VTH、VTLの補正値を加算して総合的なしきい値電圧VTH、VTLの値を算出する。このしきい値電圧VTH、VTLのデジタル値は、D/A変換器89、90を介してアナログ値であるしきい値電圧VTH、VTLに変換される。
【0054】
第1補正部91は、A/D変換器86を介して入力した電圧VSに基づいて負荷電流ILの平均値を算出し、その平均値が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。第2補正部92は、入力した電圧VSの交流変化分を算出し、その交流変化分が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。交流変化分は、負荷電流ILに定常的に現れるリプルやノイズのピークツーピーク値である。第3補正部93は、A/D変換器87を介して入力した電圧VDに基づいて負荷4の温度または負荷4の周囲温度を算出し、その温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。この場合、負荷4の特性に応じて温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を減らしてもよい。第4補正部94は、A/D変換器88を介して入力した電源電圧VBが高いほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。
【0055】
本実施形態によれば、第1、第2の実施形態と同様に、パーツメーカが供給する汎用的な負荷を駆動した場合、過熱、ノイズ障害、短絡、劣化などの異常がなく正常に動作している限り、過電流と誤検出することを極力防止することができる。また、マイコン82を用いてしきい値電圧VTH、VTLの補正処理を実行するので、駆動に関する4種類の状態(平均負荷電流、負荷電流ILの交流変化分、温度、電源電圧VB)に応じた複雑な補正処理も可能となる。
【0056】
負荷駆動回路を備えたECU(Electronic Control Unit)が本来的に有しているマイコンを利用することができれば、過電流検出のために新たなマイコンを追加する必要がなく、図1、図17に示したしきい値生成回路11も不要になる。従って、過電流検出装置の回路サイズを低減することができる。
【0057】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、拡張を行うことができる。
【0058】
第1、第2実施形態では第1状態検出回路18ないし第4状態検出回路21を備えているが、第1状態検出回路18と第2状態検出回路19のうち少なくとも一方を備えていればよい。これに追加して、第3状態検出回路20と第4状態検出回路21のうち少なくとも一方を備えてもよい。第3実施形態についても同様である。
【0059】
比較回路にヒステリシスコンパレータ12を用いるため、しきい値生成回路11、81は2つのしきい値電圧VTH、VTLを生成したが、ヒステリシス特性を省く場合には1つのしきい値電圧VTのみを生成すればよい。
【0060】
しきい値生成回路11は、しきい値生成電流ITH、ITLを抵抗13、14に代わる抵抗性回路に流すことによりしきい値電圧VTH、VTLを生成してもよい。抵抗性回路は、入力した電流に対し一定の関係を持つ電圧を出力する回路要素である。
【0061】
負荷4は、モータ、ソレノイド、LEDなどランプ以外の負荷であってもよい。
制御回路9により駆動される出力トランジスタは、MOSトランジスタに限らずバイポーラトランジスタ、IGBTなどであってもよい。出力トランジスタは、ハイサイドとローサイドの何れに配置してもよい。Pチャネル型、Nチャネル型の何れを用いてもよく、PNP形、NPN形の何れを用いてもよい。
リレー3に替えて半導体スイッチング素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
図面中、4は負荷、7はシャント抵抗(電流検出回路)、8は過電流検出回路(過電流検出装置)、11、81はしきい値生成回路、12はヒステリシスコンパレータ(比較回路)、13、14は抵抗(抵抗性回路)、18、96は第1状態検出回路、19、97は第2状態検出回路、20、98は第3状態検出回路、21、99は第4状態検出回路、VTHは高レベルしきい値電圧、VTLは低レベルしきい値電圧、ITH1〜ITH4、ITL1〜ITL4はしきい値生成電流、Scは過電流検出信号である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に流れる電流に応じて生成される電圧としきい値電圧とを比較して過電流検出信号を出力する過電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のユーザは、車両を取得した後に道路運送車両の保安基準に適合する範囲内で、車両に取り付けるランプの数を増やしたり、光量を増やすために消費電流の大きいランプに交換したり、その他の種々の自動車用電気パーツを購入して取り付ける場合がある。こうした自動車用電気パーツには、自動車メーカが各車両用に提供する純正品の他に、パーツメーカが独自に製造して販売しているものがある。
【0003】
ランプなどの電気パーツは、ICとして構成された負荷駆動装置により駆動される。この負荷駆動装置は、高精度の過電流保護回路を備えており、駆動電流が予め決められたしきい値電流を超えると電流を遮断するようになっている(特許文献1、2参照)。
【0004】
純正品は、その選択および取り付けを誤らない限り車両の電気的仕様に適合した電気的特性を有している。これに対し、一般のパーツメーカが販売する電気パーツは、複数種類の車両に共通して適用できる汎用品として設計および製造されている場合が多く、純正品に比べると車両の電気的仕様に対して電気的特性のずれが生じ易い。
【0005】
例えば、電気パーツの消費電力が車両の電気的仕様に適した推奨値よりも大きい場合、駆動電流が増大するとともに駆動電流のリプル分も増大するので、電気パーツ自身の温度変動やバッテリ電圧の変動など僅かな変動要因により過電流保護機能が動作する場合がある。また、正常動作に必要な電源電圧範囲が狭いため電気パーツ自身が昇圧回路または降圧回路を備えるものがあり、これら昇圧回路または降圧回路が動作することにより負荷駆動装置にノイズを与えるものがある。このノイズは、温度や電源電圧の変動などによって増大し、駆動電流に重畳して現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−21071号公報
【特許文献2】特開2005−204375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように負荷(電気パーツ)を車両の電源線に接続する場合、その負荷の電気的特性が車両の電気的仕様に適した推奨値からずれていると、過電流検出装置は、本来問題のない通常の使い方でも過電流状態と誤検出する虞がある。この不具合は車両の負荷駆動装置と接続した電気パーツとの不適合が生じて初めて現れるため、ユーザの事前対策は困難である。また、車両メーカも、純正品以外の種々の電気パーツに適合する負荷駆動装置を提供することは困難である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、推奨値からずれた電気的特性を持つ負荷を駆動した場合でも誤検出を極力防止できる過電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した過電流検出装置は、負荷に流れる電流を電圧に変換して出力する電流検出回路と、しきい値電圧を生成するしきい値生成回路と、電流検出回路が出力する電圧をしきい値電圧と比較して過電流検出信号を出力する比較回路とを備えている。しきい値生成回路は、負荷に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほどしきい値電圧を増大させる第1状態検出回路と、負荷に流れる電流の交流変化分を検出し、その検出した交流変化分が大きいほどしきい値電圧を増大させる第2状態検出回路のうち少なくとも一方を備えている。
【0010】
第1状態検出回路によれば、負荷の電気的特性に応じて負荷に定常的に流れる平均電流を検出し、その平均電流が大きいほど過電流と判定する際のしきい値電圧を増大補正する。また、第2状態検出回路によれば、負荷の電気的特性に応じて負荷電流に定常的に現れるリプル分やノイズ分などの交流変化分を検出し、その交流変化分が大きいほど過電流と判定する際のしきい値電圧を増大補正する。これにより、負荷駆動装置に過熱やノイズによる誤動作などの不具合を発生させない限り、車両の電気的仕様に適した推奨値からずれた電気的特性を持つ負荷を正常に駆動した場合に過電流と誤検出することを極力防止できる。
【0011】
請求項2に記載した手段によれば、しきい値生成回路は、第1状態検出回路および/または第2状態検出回路に加え、第3状態検出回路と第4状態検出回路のうち少なくとも一方を備えている。第3状態検出回路は、負荷の温度または負荷の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほど負荷の種類に応じてしきい値電圧を増大または減少させる。例えばハロゲン電球、白熱電球など温度の低下に伴い抵抗が低くなる負荷では、検出温度が低いほどしきい値電圧を増大させる。一方、発光ダイオードなど温度の低下に伴い順電圧が高くなる負荷では、検出温度が低いほどしきい値電圧を減少させる。これにより、負荷の温度または負荷の環境温度に依存した過電流の誤検出を極力防止できる。第4状態検出回路は、負荷に印加される電源電圧を検出し、その検出した電源電圧が高いほどしきい値電圧を増大させる。これにより、電源電圧に依存した過電流の誤検出を極力防止できる。
【0012】
請求項3に記載した手段によれば、比較回路は、電流検出手段が出力する電圧を所定のヒステリシス幅だけ離間した高レベルしきい値電圧および低レベルしきい値電圧と比較して過電流検出信号を出力する。状態検出回路は、所定のヒステリシス幅を保ちつつ高レベルしきい値電圧と低レベルしきい値電圧を増大または減少させる。これにより、しきい値電圧の補正量に合わせてヒステリシス幅を変更することができ、過電流の検出動作と過電流からの復帰動作とを安定して行うことができる。
【0013】
請求項4に記載した手段によれば、各状態検出回路は、それぞれしきい値電圧の増大分または減少分に相当する大きさのしきい値生成電流を出力する。しきい値生成回路は、しきい値生成電流を重畳させて抵抗性回路に流すことによりしきい値電圧を生成する。これにより、複数種類の状態を反映した総合的なしきい値電圧を容易且つ正確に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す過電流検出回路を備えた負荷駆動回路の構成図
【図2】しきい値補正回路の構成図
【図3】第1状態検出回路の構成図
【図4】検出電圧Vaの平均値と補正電流ITH1、ITL1との関係を示す図
【図5】第2状態検出回路の構成図
【図6】電圧VSの交流変化分V2と補正電流ITH2、ITL2との関係を示す図
【図7】電圧VSの波形図
【図8】第3状態検出回路の構成図
【図9】ランプ負荷の場合の順方向電圧VDと補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図10】ランプ負荷の場合の検出温度と補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図11】負荷が発光ダイオードの場合の順方向電圧VDと補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図12】負荷が発光ダイオードの場合の検出温度と補正電流ITH3、ITL3との関係を示す図
【図13】第4状態検出回路の構成図
【図14】電源電圧VBと補正電流ITH4、ITL4との関係を示す図
【図15】電源電圧VBが増加する場合の電圧、電流の波形図
【図16】過電流が検出されたときの電圧、電流の波形図
【図17】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図18】本発明の第3の実施形態を示すしきい値生成回路の構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について図1ないし図16を参照しながら説明する。図1は、過電流検出回路を内蔵した負荷駆動回路に係る構成を示している。車載用ICとして構成された負荷駆動回路1は、図示しないバッテリから電源電圧VBの供給を受けて動作し、ライトスイッチ2がオンされるとリレー3をオン駆動してランプからなる負荷4を通電させる。負荷駆動回路1の内外における高電位側電源線、低電位側電源線をそれぞれ電源線5、6とすると、電源線5、6間にはシャント抵抗7とリレー3の接点3bと負荷4とが直列に接続されている。抵抗値Raを持つシャント抵抗7は、負荷4に流れる電流ILを電圧Va(=IL・Ra)に変換して出力する電流検出回路に相当し、後述する過電流検出回路8の一部を構成している。
【0016】
負荷駆動回路1は、過電流検出回路8、制御回路9およびハイサイド駆動用のPチャネル型MOSトランジスタ10を備えている。過電流検出装置に相当する過電流検出回路8は、上述したシャント抵抗7の他に、高レベルしきい値電圧VTHおよび低レベルしきい値電圧VTLを生成するしきい値生成回路11と、シャント抵抗7の検出電圧Vaとしきい値電圧VTH、VTLとを比較して過電流検出信号Scを出力するヒステリシスコンパレータ12(比較回路に相当)とから構成されている。
【0017】
高レベルしきい値電圧VTHと低レベルしきい値電圧VTLとは、所定のヒステリシス幅だけ離間している。ヒステリシスコンパレータ12は、検出電圧Vaがしきい値電圧VTHよりも大きくなると過電流検出信号ScをHレベル(過電流検出状態)にする。その後、検出電圧Vaがしきい値電圧VTL以下になると、その状態が所定の待ち時間だけ継続したことを条件として過電流検出信号ScをLレベルに戻す。
【0018】
しきい値生成回路11は、一端が電源線5に接続された抵抗13、14(抵抗性回路)、電流出力回路15、16およびしきい値補正回路17により構成されている。しきい値生成回路11は、抵抗13、14にそれぞれしきい値生成電流ITH、ITLを流すことによりしきい値電圧VTH、VTLを生成する。電流出力回路15は、一定値を持つ標準電流ITH0としきい値補正回路17が流し込む補正電流ITH1〜ITH4とを重畳(加算)して抵抗13に流す。電流出力回路16は、一定値を持つ標準電流ITL0としきい値補正回路17が流し込む補正電流ITL1〜ITL4とを重畳(加算)して抵抗14に流す。
【0019】
しきい値補正回路17は、図2に示すように第1状態検出回路18、第2状態検出回路19、第3状態検出回路20および第4状態検出回路21と、ダイオード22H〜25Hからなる加算回路26Hと、ダイオード22L〜25Lからなる加算回路26Lとにより構成されている。
【0020】
制御回路9は、ライトスイッチ2を介して電源線5に接続されている。ライトスイッチ2がオンしており過電流検出信号ScがLレベル(過電流非検出状態)であるときに、例えば0Vを持つゲート駆動信号を出力してMOSトランジスタ10をオン駆動する。これに対し、ライトスイッチ2がオンしており過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)であるときおよびライトスイッチ2がオフしているときに、例えば電源電圧VBを持つゲート駆動信号を出力してMOSトランジスタ10をオフ駆動する。MOSトランジスタ10のドレイン(負荷駆動回路1の出力端子)と電源線6との間には、IC外部においてリレー3のコイル3aが接続されている。
【0021】
続いて、図3ないし図14を参照しながら第1状態検出回路18ないし第4状態検出回路21の構成および作用を説明する。これらの状態検出回路18〜21において同一構成部分(抵抗値、基準電圧値のみ異なる構成部分を含む)には同一符号を付している。
【0022】
図3に示す第1状態検出回路18は、負荷4に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほど補正電流ITH1、ITL1を増やしてしきい値電圧VTH、VTLを増大させる。オペアンプ31は、シャント抵抗7の低電位側端子の電圧VSを受けるバッファ回路である。オペアンプ32と抵抗33〜36からなる差動増幅回路は、抵抗33〜36の抵抗値が等しいことから、(1)式に示すように負荷電流ILに応じた検出電圧Vaを出力する。
Va=VB−VS …(1)
【0023】
オペアンプ37、抵抗38〜41、基準電圧生成回路42およびコンデンサ43からなる差動増幅回路は、基準電圧生成回路42の基準電圧をVT1、抵抗38、40の抵抗値をR1、抵抗39、41の抵抗値をR2とすれば、(2)式に示すように検出電圧Vaを基準電圧VT1だけオフセットしてゲインR2/R1倍に増幅した平均化された電圧V1を出力する。
V1=R2/R1(Va−VT1) …(2)
【0024】
この電圧V1は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH1、ITL1に変換される。すなわち、定電流回路45と直列に接続されたトランジスタ46は、エミッタフォロアの形態を有しておりインピーダンス変換する。トランジスタ47と抵抗値R3を持つ抵抗48は、(3)式に示すように電圧V1を電流Im1に変換する。抵抗値R3により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im1=V1/R3 …(3)
【0025】
この電流Im1は、トランジスタ49、50、51からなるカレントミラー回路に流れ込む。そして、トランジスタ52、53からなるミラー比1のカレントミラー回路によりシンク電流である補正電流ITH1に変換され、トランジスタ54、55からなるミラー比1のカレントミラー回路によりシンク電流である補正電流ITL1に変換される。電源線5とトランジスタ50、51との間に接続された抵抗56、57により、それぞれ補正電流ITH1、ITL1の傾きおよび大きさを調整できる。このときの関係式は、抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR4、R5とすれば以下の(4)式、(5)式となる。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R4・ITH1 …(4)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R5・ITL1 …(5)
【0026】
図4は、第1状態検出回路18の入出力特性を示している。横軸はシャント抵抗7による検出電圧Vaの平均値を示しており、縦軸は補正電流ITH1、ITL1を示している。基準電圧VT1は補正開始電圧に相当する。検出電圧Vaの平均値が基準電圧VT1以下のとき、すなわち負荷電流ILの平均値がVT1/Ra以下のときには補正電流ITH1、ITL1は流れない。負荷電流ILの平均値がVT1/Raを超えると、その平均電流が大きくなるほど補正電流ITH1、ITL1が増加するので、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。
【0027】
図5に示す第2状態検出回路19は、負荷4に流れる電流ILの交流変化分を検出し、その検出した交流変化分が大きいほど補正電流ITH2、ITL2を増やしてしきい値電圧VTH、VTLを増大させる。ピークホールド回路58は電圧VSのピーク値VSmaxを検出し、ボトムホールド回路59は電圧VSのボトム値VSminを検出する。ここでのサンプリング時間およびホールド時間は、負荷電流ILに定常的に現れるリプルやノイズなどの交流変動分のピークツーピーク値を捉えられるように設定されている。オペアンプ32と抵抗33〜36からなる差動増幅回路は、抵抗33〜36の抵抗値が等しいことから、(6)式に示すように交流変化分V2を出力する。
V2=VSmax−VSmin …(6)
【0028】
この電圧V2は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH2、ITL2に変換される。トランジスタ47と抵抗値R6を持つ抵抗48は、(7)式に示すように電圧V2を電流Im2に変換する。抵抗値R6により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im2=V2/R6 …(7)
【0029】
抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR7、R8とすれば以下の(8)式、(9)式が成立する。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R7・ITH2 …(8)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R8・ITL2 …(9)
【0030】
図6は、第2状態検出回路19の入出力特性を示している。横軸は電圧VSの交流変化分V2を示しており、縦軸は補正電流ITH2、ITL2を示している。ここでの交流変化分V2は、リプル分およびノイズ分の両者を含むピークツーピーク値である。また、図7は、負荷電流ILが大きいときの電圧VSの波形(a)と、負荷電流ILが小さいときの電圧VSの波形(b)とを同一スケールで示している。二点鎖線は、検出したピーク値VSmaxとボトム値VSminである。
【0031】
負荷電流ILが大きくなるに従って電圧VSの交流変化分V2が増大するので、補正電流ITH2、ITL2を増加させている。これにより、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。
【0032】
図8に示す第3状態検出回路20は、負荷4の温度または負荷4の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほど補正電流ITH3、ITL3を増大させる。温度は、定電流回路60と直列に接続されたダイオード61の順方向電圧VDにより検出される。順方向電圧VDは、周知のように負の温度特性を持つ。ダイオード61は、負荷4の温度または負荷4の周囲温度を検出できるように負荷4の近傍に配置されるが、図1に示すリレー3に設けてもよい。
【0033】
オペアンプ37、抵抗38〜41および基準電圧生成回路42からなる差動増幅回路は、基準電圧生成回路42の基準電圧をVT2、抵抗38、40の抵抗値をR9、抵抗39、41の抵抗値をR10とすれば、(10)式に示すように順方向電圧VDを基準電圧VT2だけオフセットしてゲインR10/R9倍に増幅した電圧V3を出力する。
V3=R10/R9(VD−VT2) …(10)
【0034】
この電圧V3は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH3、ITL3に変換される。トランジスタ47と抵抗値R11を持つ抵抗48は、(11)式に示すように電圧V3を電流Im3に変換する。抵抗値R11により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im3=V3/R11 …(11)
【0035】
抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR12、R13とすれば以下の(12)式、(13)式が成立する。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R12・ITH3 …(12)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R13・ITL3 …(13)
【0036】
図9は、第3状態検出回路20の入出力特性を示している。横軸はダイオード61の順方向電圧VDを示しており、縦軸は補正電流ITH3、ITL3を示している。この図9を検出温度と補正電流ITH3、ITL3との関係として表すと図10になる。すなわち、順方向電圧VDが基準電圧VT2(例えば0.45V)以下のとき、すなわち検出温度が例えば150℃以上のときには補正電流ITH3、ITL3は流れない。検出温度が150℃よりも低い場合、検出温度が低くなるほど補正電流ITH3、ITL3が増加するので、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。
【0037】
ここに示した第3状態検出回路20の特性は、ハロゲン電球、白熱電球など温度の低下に伴い抵抗が低くなる負荷に適している。このような負荷4では、ライトスイッチ2をオンした時の温度が低いほどラッシュカレントが増えるからである。これに対し、発光ダイオードなど温度の低下に伴い順電圧が高くなる負荷4では、図11、図12に示すように、順方向電圧VDが高くなるほど、すなわち検出温度が低くなるほど補正電流ITH3、ITL3を減少させる特性とする。
【0038】
図13に示す第4状態検出回路21は、負荷4に印加される電源電圧VBを検出し、その検出した電源電圧VBが高いほど補正電流ITH4、ITL4を増大させる。電源線5、6間には、抵抗値R14、R15を持つ分圧用の抵抗62、63が直列に接続されている。電源電圧VBの分圧電圧VRは(14)式に示すようになる。
VR=R15/(R14+R15)・VB …(14)
【0039】
オペアンプ37、抵抗38〜41および基準電圧生成回路42からなる差動増幅回路は、基準電圧生成回路42の基準電圧をVT3、抵抗38、40の抵抗値をR16、抵抗39、41の抵抗値をR17とすれば、(15)式に示すように電源電圧VBの分圧電圧VRを基準電圧VT3だけオフセットしてゲインR17/R16倍に増幅した電圧V4を出力する。
V4=R17/R16(VR−VT3) …(15)
【0040】
この電圧V4は、電圧−電流変換回路44により補正電流ITH4、ITL4に変換される。トランジスタ47と抵抗値R18を持つ抵抗48は、(16)式に示すように電圧V4を電流Im4に変換する。抵抗値R18により電圧−電流変換の変換レートを調整できる。
Im4=V4/R18 …(16)
【0041】
抵抗56、57の抵抗値をそれぞれR19、R20とすれば以下の(17)式、(18)式が成立する。
トランジスタ49のVBE=トランジスタ50のVBE+R19・ITH4 …(17)
トランジスタ49のVBE=トランジスタ51のVBE+R20・ITL4 …(18)
【0042】
図14は、第4状態検出回路21の入出力特性を示している。横軸は電源電圧VBを示しており、縦軸は補正電流ITH4、ITL4を示している。電源電圧VBが(R14+R15)/R15・VT3以下のときには補正電流ITH4、ITL4は流れない。電源電圧VBが(R14+R15)/R15・VT3を超えると、その電圧値が大きくなるほど補正電流ITH4、ITL4が増加するので、過電流検出信号ScがHレベル(過電流検出状態)に移行するのに必要なしきい値電圧VTH、VTLが増大する。これは、負荷4に加わる電源電圧VBが増加するほど負荷電流ILが増大するからである。基準電圧VT3は補正開始電圧に相当する。
【0043】
図15は、電源電圧VBが増加する場合の電圧、電流の波形を示している。時刻t1〜t2の期間および時刻t5〜t6の期間でライトスイッチ2がオンする。ライトスイッチ2がオンした時には負荷4の温度(ランプのフィラメント温度)が低いのでラッシュカレントが流れ、点灯状態が継続するのに伴い負荷電流ILが徐々に低下する。この図では、シャント抵抗7の検出電圧Vaがしきい値電圧VTHを超えることがないので、負荷4への通電が遮断されることはない。また、時刻t3から時刻t4にかけて電源電圧VBが徐々に増加するのに伴い、第4状態検出回路21が補正電流ITH4、ITL4を徐々に増やす。その結果、しきい値生成電流ITH、ITLおよびしきい値電圧VTH、VTLも増大する。
【0044】
図16は、過電流が検出されたときの電圧、電流の波形を示している。時刻t11〜t12の期間および時刻t13〜t15の期間でライトスイッチ2がオンする。時刻t14で負荷4の端子間が短絡すると、シャント抵抗7の検出電圧Vaがしきい値電圧VTHを超えるので、過電流検出信号ScがHレベルとなって負荷4への通電が遮断される。ここでは時刻t15でライトスイッチ2がオフしているが、ライトスイッチ2がオンし続ける場合には、遮断されてから所定の待ち時間が経過すると過電流検出信号ScがLレベルに戻り通電が再開される。
【0045】
以上説明した本実施形態によれば、過電流検出回路8は、シャント抵抗7による検出電圧Vaとしきい値電圧VTH、VTLとの比較に基づいて過電流検出信号Scを出力する。この場合、しきい値生成回路11は、駆動に関する4種類の状態(平均負荷電流、負荷電流ILの交流変化分、温度、電源電圧VB)に応じてそれぞれ独立して補正電流ITH1〜ITH4および補正電流ITL1〜ITL4を変更し、これら補正電流を重畳させてシャント抵抗7に流すことによりしきい値電圧VTH、VTLを生成する。これにより、各状態を反映した総合的なしきい値電圧VTH、VTLを容易且つ正確に生成でき、各状態に基づいてバランスよく過電流を検出できる。
【0046】
しきい値生成回路11は、第1状態検出回路18ないし第4状態検出回路21を備えている。このうち第1状態検出回路18は、負荷4に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。また、第2状態検出回路19は、負荷4に流れる電流ILの交流変化分V2を検出し、その検出した交流変化分V2が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。
【0047】
これら第1状態検出回路18および第2状態検出回路19を備えれば、負荷4の消費電力が負荷駆動回路1の電気的仕様に適した推奨値に比べ大きい方にずれていても、短絡や劣化などの異常がなく正常に動作しており、負荷駆動回路1に対し過熱やノイズによる誤動作などの不具合を発生させない限り、過電流と誤検出することを極力防止できる。その結果、複数種類の車両に共通して適用できる汎用品としてパーツメーカが設計および製造したランプ等の負荷を、車両メーカ等が設計および製造した純正品と同等に支障なく使用できるようになる。
【0048】
第3状態検出回路20は、負荷4の温度または負荷4の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。これにより、負荷4のラッシュカレントにより過電流と誤検出することを極力防止できる。また、第4状態検出回路21は、負荷4に印加される電源電圧VBを検出し、その検出した電源電圧VBが高いほどしきい値電圧VTH、VTLを増やす。これにより、バッテリ電圧の変動に起因する過電流の誤検出を防止できる。
【0049】
過電流検出回路8は、ヒステリシスコンパレータ12を備え、各状態検出回路18〜21は、抵抗56、57のトリミングにより所望のヒステリシス幅を保ちつつしきい値電圧VTH、VTLを増大または減少させることができる。これにより、過電流の検出動作と過電流検出状態からの復帰動作とを安定して行うことができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図17は、過電流検出回路を内蔵した負荷駆動回路の第2の実施形態を示しており、図1に示した各構成要素と対応する構成要素に同一符号を付している。この負荷駆動回路71は、各構成要素の電源線5、6との接続態様が図1に示す負荷駆動回路1とは逆の関係となっている。例えば負荷4の一端は電源線5に接続されており、シャント抵抗7の一端は電源線6に接続されている。負荷駆動回路71において、Nチャネル型MOSトランジスタ10はローサイド駆動であり、抵抗13、14の一端は電源線6に接続されている。負荷駆動回路71と負荷駆動回路1は実質的に同一構成である。従って、本実施形態によれば、第1の実施形態と同一の作用および効果が得られる。
【0051】
(第3の実施形態)
図18は、過電流検出回路のしきい値生成回路を表す第3の実施形態を示している。本実施形態においても、図1または図17に示すように電源線5、6間にシャント抵抗7とリレー3の接点3bと負荷4とが直列に接続されている。ライトスイッチ2がオンされると、負荷4に対し電源電圧VBが印加されて負荷電流ILが流れる。過電流検出回路は、シャント抵抗7による検出電圧Vaとしきい値電圧VTH、VTLとを比較して過電流検出信号Scを出力する。
【0052】
しきい値生成回路81は、しきい値電圧VTH、VTLを生成する処理の一部をマイクロコンピュータ82(以下、マイコン82と称す)により行っている。マイコン82の外部には、負荷電流ILに応じた電圧VSを検出する電圧検出部83、負荷4の温度または負荷4の周囲温度に応じた電圧VDを検出する温度検出部84、電源電圧VBを検出する電圧検出部85、A/D変換器86〜88およびD/A変換器89、90を備えている。A/D変換器86〜88、D/A変換器89、90などは、マイコン82に内蔵されていてもよい。電圧検出部83はシャント抵抗7からなり、温度検出部84は例えばダイオードからなる。
【0053】
第1補正部91ないし第4補正部94および補正値算出部95は、マイコン82のCPUがROMに記憶されたプログラムに従って実行する処理をブロックとして示したものである。二点鎖線で囲まれた第1状態検出部96ないし第4状態検出部99は、本発明でいう第1状態検出回路ないし第4状態検出回路に相当する。補正値算出部95は、第1補正部91ないし第4補正部94でそれぞれ演算されたしきい値電圧VTH、VTLの補正値を加算して総合的なしきい値電圧VTH、VTLの値を算出する。このしきい値電圧VTH、VTLのデジタル値は、D/A変換器89、90を介してアナログ値であるしきい値電圧VTH、VTLに変換される。
【0054】
第1補正部91は、A/D変換器86を介して入力した電圧VSに基づいて負荷電流ILの平均値を算出し、その平均値が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。第2補正部92は、入力した電圧VSの交流変化分を算出し、その交流変化分が大きいほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。交流変化分は、負荷電流ILに定常的に現れるリプルやノイズのピークツーピーク値である。第3補正部93は、A/D変換器87を介して入力した電圧VDに基づいて負荷4の温度または負荷4の周囲温度を算出し、その温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。この場合、負荷4の特性に応じて温度が低いほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を減らしてもよい。第4補正部94は、A/D変換器88を介して入力した電源電圧VBが高いほどしきい値電圧VTH、VTLの補正値を増やす。
【0055】
本実施形態によれば、第1、第2の実施形態と同様に、パーツメーカが供給する汎用的な負荷を駆動した場合、過熱、ノイズ障害、短絡、劣化などの異常がなく正常に動作している限り、過電流と誤検出することを極力防止することができる。また、マイコン82を用いてしきい値電圧VTH、VTLの補正処理を実行するので、駆動に関する4種類の状態(平均負荷電流、負荷電流ILの交流変化分、温度、電源電圧VB)に応じた複雑な補正処理も可能となる。
【0056】
負荷駆動回路を備えたECU(Electronic Control Unit)が本来的に有しているマイコンを利用することができれば、過電流検出のために新たなマイコンを追加する必要がなく、図1、図17に示したしきい値生成回路11も不要になる。従って、過電流検出装置の回路サイズを低減することができる。
【0057】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、拡張を行うことができる。
【0058】
第1、第2実施形態では第1状態検出回路18ないし第4状態検出回路21を備えているが、第1状態検出回路18と第2状態検出回路19のうち少なくとも一方を備えていればよい。これに追加して、第3状態検出回路20と第4状態検出回路21のうち少なくとも一方を備えてもよい。第3実施形態についても同様である。
【0059】
比較回路にヒステリシスコンパレータ12を用いるため、しきい値生成回路11、81は2つのしきい値電圧VTH、VTLを生成したが、ヒステリシス特性を省く場合には1つのしきい値電圧VTのみを生成すればよい。
【0060】
しきい値生成回路11は、しきい値生成電流ITH、ITLを抵抗13、14に代わる抵抗性回路に流すことによりしきい値電圧VTH、VTLを生成してもよい。抵抗性回路は、入力した電流に対し一定の関係を持つ電圧を出力する回路要素である。
【0061】
負荷4は、モータ、ソレノイド、LEDなどランプ以外の負荷であってもよい。
制御回路9により駆動される出力トランジスタは、MOSトランジスタに限らずバイポーラトランジスタ、IGBTなどであってもよい。出力トランジスタは、ハイサイドとローサイドの何れに配置してもよい。Pチャネル型、Nチャネル型の何れを用いてもよく、PNP形、NPN形の何れを用いてもよい。
リレー3に替えて半導体スイッチング素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
図面中、4は負荷、7はシャント抵抗(電流検出回路)、8は過電流検出回路(過電流検出装置)、11、81はしきい値生成回路、12はヒステリシスコンパレータ(比較回路)、13、14は抵抗(抵抗性回路)、18、96は第1状態検出回路、19、97は第2状態検出回路、20、98は第3状態検出回路、21、99は第4状態検出回路、VTHは高レベルしきい値電圧、VTLは低レベルしきい値電圧、ITH1〜ITH4、ITL1〜ITL4はしきい値生成電流、Scは過電流検出信号である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に流れる電流を電圧に変換して出力する電流検出回路と、しきい値電圧を生成するしきい値生成回路と、前記電流検出回路が出力する電圧を前記しきい値電圧と比較して過電流検出信号を出力する比較回路とを備えた過電流検出装置において、
前記しきい値生成回路は、前記負荷に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほど前記しきい値電圧を増大させる第1状態検出回路と、前記負荷に流れる電流の交流変化分を検出し、その検出した交流変化分が大きいほど前記しきい値電圧を増大させる第2状態検出回路のうち少なくとも一方を備えていることを特徴とする過電流検出装置。
【請求項2】
前記しきい値生成回路は、前記第1状態検出回路および/または前記第2状態検出回路に加え、前記負荷の温度または前記負荷の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほど前記負荷の種類に応じて前記しきい値電圧を増大または減少させる第3状態検出回路と、前記負荷に印加される電源電圧を検出し、その検出した電源電圧が高いほど前記しきい値電圧を増大させる第4状態検出回路のうち少なくとも一方を備えていることを特徴とする請求項1記載の過電流検出装置。
【請求項3】
前記比較回路は、前記電流検出手段が出力する電圧を所定のヒステリシス幅だけ離間した高レベルしきい値電圧および低レベルしきい値電圧と比較して前記過電流検出信号を出力し、
前記状態検出回路は、前記所定のヒステリシス幅を保ちつつ前記高レベルしきい値電圧と前記低レベルしきい値電圧を増大または減少させることを特徴とする請求項1または2記載の過電流検出装置。
【請求項4】
前記各状態検出回路は、それぞれ前記しきい値電圧の増大分または減少分に相当する大きさのしきい値生成電流を出力し、
前記しきい値生成回路は、前記しきい値生成電流を重畳させて抵抗性回路に流すことにより前記しきい値電圧を生成することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の過電流検出装置。
【請求項1】
負荷に流れる電流を電圧に変換して出力する電流検出回路と、しきい値電圧を生成するしきい値生成回路と、前記電流検出回路が出力する電圧を前記しきい値電圧と比較して過電流検出信号を出力する比較回路とを備えた過電流検出装置において、
前記しきい値生成回路は、前記負荷に流れる平均電流を検出し、その検出した平均電流が大きいほど前記しきい値電圧を増大させる第1状態検出回路と、前記負荷に流れる電流の交流変化分を検出し、その検出した交流変化分が大きいほど前記しきい値電圧を増大させる第2状態検出回路のうち少なくとも一方を備えていることを特徴とする過電流検出装置。
【請求項2】
前記しきい値生成回路は、前記第1状態検出回路および/または前記第2状態検出回路に加え、前記負荷の温度または前記負荷の周囲温度を検出し、その検出した温度が低いほど前記負荷の種類に応じて前記しきい値電圧を増大または減少させる第3状態検出回路と、前記負荷に印加される電源電圧を検出し、その検出した電源電圧が高いほど前記しきい値電圧を増大させる第4状態検出回路のうち少なくとも一方を備えていることを特徴とする請求項1記載の過電流検出装置。
【請求項3】
前記比較回路は、前記電流検出手段が出力する電圧を所定のヒステリシス幅だけ離間した高レベルしきい値電圧および低レベルしきい値電圧と比較して前記過電流検出信号を出力し、
前記状態検出回路は、前記所定のヒステリシス幅を保ちつつ前記高レベルしきい値電圧と前記低レベルしきい値電圧を増大または減少させることを特徴とする請求項1または2記載の過電流検出装置。
【請求項4】
前記各状態検出回路は、それぞれ前記しきい値電圧の増大分または減少分に相当する大きさのしきい値生成電流を出力し、
前記しきい値生成回路は、前記しきい値生成電流を重畳させて抵抗性回路に流すことにより前記しきい値電圧を生成することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の過電流検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−62721(P2013−62721A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200555(P2011−200555)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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