道路端検出装置、運転者支援装置、および道路端検出方法
【課題】自車両が走行する道路における端部の位置を検出する道路端検出装置において、精度よく道路端を検出できるような技術を提供する。
【解決手段】レーダ装置は、レーダ処理にて、個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域の各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光して、対物距離および反射強度をそれぞれ検出する(S110〜S140)。各個別領域のうちの隣接する個別領域で各対物距離の差が基準距離差以上となる第1境界と(S160)、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各反射強度の差が基準強度差以上となる第2境界とを検出し(S170)、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定する(S180)。
【解決手段】レーダ装置は、レーダ処理にて、個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域の各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光して、対物距離および反射強度をそれぞれ検出する(S110〜S140)。各個別領域のうちの隣接する個別領域で各対物距離の差が基準距離差以上となる第1境界と(S160)、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各反射強度の差が基準強度差以上となる第2境界とを検出し(S170)、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定する(S180)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行する道路における端部の位置を検出する道路端検出装置、運転者支援装置、および道路端検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路端を検出する技術として、レーザ光を走査しつつ照射し、物標までの距離(対物距離)を検出し、この対物距離が大きく変化する領域(つまり、凹凸がある領域)を道路端として推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4100269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、道路端に凹凸がない場合には、対物距離が大きく変化する領域を検出できないため、道路端を検出できない虞がある。例えば、上記技術では、図10(a)に示す壁面や崖、図10(b)に示すガードレール、縁石など、凹凸を持つ道路端を検出することは可能だが、白線や図11に示す車道と二輪車専用通行帯との間など、凹凸のない道路境界は検出することができない。そこで、このような問題点を鑑み、自車両が走行する道路における端部の位置を検出する道路端検出装置において、精度よく道路端を検出できるような技術を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために成された第1の構成の道路端検出装置において、検出結果取得手段は、被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、被測定物までの距離(以下、「対物距離」という。)と、被測定物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する。そして、第1境界検出手段は、各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出し、第2境界検出手段は、各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する。
【0006】
このような道路端検出装置によれば、対物距離および反射強度の両方を利用し道路端を検出することができるので、少なくとも何れかの境界が検出されていれば、道路端を検出することができる。よって、道路端の検出精度を向上させることができる。
【0007】
なお、第1境界検出手段は、対物距離の差(レーザ光が照射されてから反射光を受光するまでの時間差)に基づいて、道路上の凹凸を検出することができ、第2境界検出手段は、反射光の反射強度の差に基づいて、道路において材質(反射率)が変化する境界を検出することができる。 また、道路端を検出する際には、第1境界および第2境界のうちの少なくとも一方に基づいて道路端を設定すればよい。例えば、第1境界または第2境界を道路端に設定したり、第1境界および第2境界の間に道路端を設定したりする構成を採用することができる。
【0008】
ところで、上記道路端検出装置においては、第2の構成のように、第1境界検出手段は、第1境界として、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各対物距離の差が基準距離差以上となる部位を検出し、第2境界検出手段は、第2境界として、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各反射強度の差が基準強度差以上となる部位を検出するようにしてもよい。
【0009】
このような道路端検出装置によれば、対物距離の差や反射強度の差が基準値以上となる境界を、第1境界および第2境界に設定することができる。
さらに、上記道路端検出装置においては、第3の構成のように、検出結果取得手段は、被測定物を検出する対象となる個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域において、各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光することにより、該反射光の反射強度および対物距離をそれぞれ検出する光学式検出手段、によって検出された、個別領域毎の反射強度および対物距離を取得するようにしてもよい。
【0010】
このような道路端検出装置によれば、個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて検出対象領域を形成しているので、各境界をより精細に検出することができる。
【0011】
また、上記道路端検出装置においては、第4の構成のように、光学式検出手段を備えていてもよい。
このような道路端検出装置によれば、光学式検出手段を備えたレーダ装置として機能することができる。
【0012】
さらに、上記道路端検出装置においては、第5の構成のように、検出結果取得手段は、光学式検出手段が複数の検出対象領域においてそれぞれ検出した複数組の反射強度および対物距離を取得し、各領域検出手段は、複数の検出対象領域にて検出された反射強度および対物距離を利用して各境界を検出するようにしてもよい。
【0013】
このような道路端検出装置によれば、複数の検出対象領域において検出された複数組の反射強度および対物距離を利用して道路端を検出するので、1組の反射強度および対物距離を利用する場合と比較して、ノイズ等の影響を受け難くすることができる。よって、道路端の検出精度をより向上させることができる。
【0014】
加えて、上記道路端検出装置においては 第6の構成のように、各境界の位置を各境界に対応する各対物距離に基づいて特定し、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定する道路端設定手段、を備えていてもよい。
【0015】
このような道路端検出装置によれば、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定することができる。
また、上記道路端検出装置においては、第7の構成のように、道路端設定手段は、自車両の左右方向における正面の位置を基準として、左右方向のそれぞれにおいて道路端を検出するようにしてもよい。
【0016】
このような道路端検出装置によれば、一方の道路端だけでなく、左右両方の道路端を検出することができる。
さらに、上記道路端検出装置においては、第8の構成のように、道路端設定手段は、各境界検出手段が検出した各境界の位置のうちの自車両の正面の位置に近い境界を道路端として設定してもよい。
【0017】
このような道路端検出装置によれば、道路端を、より自車両の正面に近い位置に設定することで、道路端を検出し間違えたとしても、自車両に脱輪等を誘発させないようにすることができる。
【0018】
また、上記道路端検出装置においては、第9の構成のように、道路端設定手段は、各境界検出手段が検出した各境界の位置が異なる場合、第1境界を物理境界としての道路端に設定し、第2境界を法規境界としての道路端に設定してもよい。ここで、「物理境界」とは、この境界を越えると衝突や脱輪が発生する虞がある境界を示し、「法規境界」とは、この境界を越えても直ちに衝突や脱輪が発生する虞は少ないが、道路として認められた領域外を走行することになる境界を示す。
【0019】
このような道路端検出装置によれば、物理境界と法規境界とを識別することができる。
次に、上記目的を達成するために成された第10の構成としての運転者支援装置は、自車両が走行する道路の道路端を検出する道路端検出手段と、自車両が道路端に接近したとき、自車両が道路端に接近しなくなるような運転支援を行う運転支援手段と、を備え、道路端検出手段は、上記何れか1項に記載の道路端検出装置として構成されている。
【0020】
このような道路端検出装置によれば、道路端の検出結果に応じて自車両が道路を逸脱しないように運転支援を行うことができる。
また、上記運転者支援装置においては、第11の構成のように、道路端検出手段は、第9の構成の道路端検出装置として構成されており、運転支援手段は、自車両が物理境界に接近したときと、自車両が法規境界に接近したときとで異なる運転支援を行うようにしてもよい。
【0021】
このような運転者支援装置によれば、物理境界と法規境界との両方が検出された場合には、自車両が何れの境界に接近するかに応じて異なる運転支援を行うことができる。
次に、上記目的を達成するために成された第12の構成の道路端検出方法は、車両において、自車両が走行する道路の左右何れかの端部(以下、「道路端」という。)を検出するための方法であって、被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、被対象物までの距離(以下、「対物距離」という。)と被対象物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する検出結果取得工程と、各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出する第1境界検出工程と、各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する第2境界検出工程と、を実施することを特徴とする。
【0022】
このような道路端検出方法によれば、少なくとも請求項1に記載の道路端検出装置と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】運転支援システム1の概略構成を示す説明図である。
【図2】実施形態において、レーザ光を照射する領域を示す模式図である。
【図3】レーダ処理を示すフローチャート(a)、および対物距離/反射強度検出処理を示すフローチャート(b)である。
【図4】実施形態において、受光部15による検出レベルを時間との関係で示すグラフである。
【図5】道路境界検出処理を示すフローチャートである。
【図6】投票処理の概念図である。
【図7】境界判定処理を示すフローチャートである。
【図8】車両制御処理を示すフローチャート(a)および車両制御処理の概要を示す鳥瞰図(b)(c)である。
【図9】対物距離と反射強度との両方を用いることの利点を示す鳥瞰図である。
【図10】従来技術で検出できる道路端の一例を示す鳥瞰図である。
【図11】従来技術で検出することが難しい道路端の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
図1は本実施形態の運転支援システム1(運転者支援装置)の概略構成を示す説明図、図2はレーザ光を照射する領域を示す模式図である。運転支援システム1は、例えば乗用車等の車両に搭載されており、図1に示すように、レーダ装置10(道路端検出装置、光学式検出手段)と車両制御部30とを備えている。
【0025】
レーダ装置10は、レーダ制御部11と、走査駆動部12と、光学ユニット13とを備えている。
レーダ制御部11は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、ROM等に記憶されたプログラムに従って、後述するレーダ処理等の各種処理を実施する。なお、レーダ制御部11は、回路などによるハードウェアで構成してもよい。また、レーダ制御部11は、後述するレーダ処理を実施することにより、被対象物(物体50)までの対物距離および反射強度を測定するとともに、自車両が走行する道路における左右方向の境界(道路端)を検出する。
【0026】
走査駆動部12は、例えばモータ等のアクチュエータとして構成されており、レーダ制御部11からの指令を受けて、光学ユニット13を水平方向および鉛直方向の任意の方向に向けることができるよう構成されている。なお、走査駆動部12は、レーダ制御部11からの走査開始信号を受ける度に1周期分の走査ができるように光学ユニット13を駆動する(図4参照)。
【0027】
光学ユニット13は、レーダ制御部11からの指令に応じてレーザ光を射出する発光部14と、発光部14からのレーザ光(図1では実線の矢印で示す)が物体50に反射したときの反射波(図1では破線の矢印で示す)を受光する受光部15と、を備えている。
【0028】
なお、走査駆動部12は、結果として発光部14によるレーザ光の射出方向が受光部15により反射光を受光可能な方向と同じ方向となるよう変化させられる構成であればよい。例えば、走査駆動部12は、光学ユニット13に換えて、レーザ光および反射光を任意の方向に反射させるミラーを駆動するよう構成されていてもよい。
【0029】
この場合には、複数の反射面を有するミラーを走査駆動部12で回転させることによって水平方向にレーザ光を走査し、反射面の角度をそれぞれ異なる角度に設定することによって、鉛直方向にもレーザ光を振りつつ走査する構成を採用すればよい。また、1つの反射面を有するミラーを任意の方向に向ける機構を採用してもよい。
【0030】
或いは、走査駆動部12は、受光部15のみの方向を変化させる構成でもよい。この場合、発光部14は、発光部14の方向を変化させることなく、受光部15が走査される領域の一部または全体にレーザ光を照射可能な構成にされていてもよい。例えば、受光部の方向を周知の微小電気機械素子(Micro-Electro-Mechanical Systems: MEMS)などで構成することで、レーダ装置10を小型に設計することができる。
【0031】
上述のようにレーダ装置10は、自車両周囲の任意の方向(本実施形態では自車両の進行方向である前方)の所定領域に対して、走査しつつ間欠的に電磁波であるレーザ光を照射し、その反射波(反射光)をそれぞれ受信することによって、自車両前方の物標を各検出点の集合として検出するレーザレーダとして構成されている。
【0032】
ここで、本実施形態のレーダ装置10においてレーダ制御部11は、前述のように走査駆動部12を利用して、光学ユニット13から照射されるレーザ光を所定の領域内において走査させるが、詳細には図2に示すように、この領域の左上隅から右上隅に水平方向右側にレーザ光を照射させる範囲を変化させつつ間欠的に等間隔(等角度)でレーザ光を照射させ、レーザ光が右上隅に到達すると、左上隅よりも所定角度だけ下方の領域から水平方向右側にレーザ光を照射させる範囲を変化させつつ再びレーザ光を照射させる。
【0033】
この作動を繰り返すことによってレーダ装置10は、所定領域の全域に順次レーザ光を照射させることになる。そしてレーダ装置10は、反射波を検出したタイミングとレーザ光を照射した方向とに基づいて、レーザ光を照射する度に物標(検出点)の位置を検出する。
【0034】
なお、レーダ装置10が向けられた方向については、レーザ光を照射する全領域をレーザ光が照射される領域毎にマトリクス状に区切り、各領域に番号を付すことによって特定できるようにしておく。例えば、図2に示すように、水平方向については左から順に番号を付し、この番号を方位番号と呼ぶ。また、鉛直方向については上から順に番号を付し、この番号をレイヤ番号と呼ぶ。
【0035】
次に、車両制御部30においては、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、ROM等に記憶されたプログラムに従って、自車両の挙動を制御する処理や、運転者に対する報知を行う等の各種処理を実施する。例えば、車両制御部30は、自車両の挙動を変更するような(或いは挙動の変更を促すような)運転支援を行う旨の指令をレーダ装置10から受けると、この指令に応じた制御信号を図示しない表示装置、音声出力装置、制動装置、操舵装置等の何れかに出力するようにすればよい。
【0036】
なお、本実施形態の車両制御部30は、後述する車両制御処理を実施し、自車両が道路を逸脱しそうになると、警報や制動を行う。
[本実施形態の処理]
このような運転支援システム1では、例えば、以下の処理が実施される。図3(a)はレーダ装置10のレーダ制御部11が実行するレーダ処理(道路端検出手段)を示すフローチャート、図3(b)はレーダ処理のうちの対物距離/反射強度検出処理を示すフローチャートである。また、図5はレーダ処理のうちの道路境界検出処理を示すフローチャート、図7はレーダ処理のうちの境界判定処理を示すフローチャートである。
【0037】
レーダ処理は、例えばレーダ装置10の電源が投入されると開始され、その後、所定の周期(例えば100ms毎)で実施される処理である。詳細には、図3(a)に示すように、まず、対物距離および反射強度を検出する方向(方位番号およびレイヤ番号)を設定し(S110)、設定した方向にレーザ光の照射方向が向けられたときに発光部14からレーザ光を射出させる(S120)。
【0038】
そして、対物距離/反射強度検出処理(S130)を実施する。対物距離/反射強度検出処理では、図3(b)に示すように、反射光を受光したタイミングに応じてレーザ光を反射した物体までの距離を演算する対物距離算出処理(S220)、反射光の受光強度(反射強度)を検出する反射強度算出処理(S230)、を順に実施し、これらの処理が終了すれば、対物距離/反射強度検出処理を終了する。
【0039】
ここで、距離算出処理や反射強度算出処理等において、受光部15が検出した反射光から物体までの距離および反射強度を検出する仕組みについて、図4を用いて説明する。図4は受光部15による検出レベルを時間との関係で示すグラフである。
【0040】
図4に示す例では、レイヤ番号の最大値が3、方位番号の最大値がNの場合において、レイヤ2における受光部15からの出力を示している。図4の横軸は時間軸を表しており、最上段は走査開始信号を表している。走査開始信号は、所定の周期(例えば100ms毎)に発せられるパルス信号であり、レイヤ1からレイヤ3までの走査が終了し、再びレイヤ1に戻るタイミングと一致する。
【0041】
図4の2段目は、走査するレイヤの遷移を表している。図4の2段目に示すように、レイヤ1からレイヤ3まで順次走査を行い、再びレイヤ1に戻り、発光および受光を繰り返す構成となっている。
【0042】
図4の3段目以降は、レイヤ2の中での処理を拡大して図示したものである。なお、図4の3段目以降の処理は、レイヤ2だけでなく、レイヤ1およびレイヤ3でも同様の処理が行われる。
【0043】
図4の3段目は、走査する方位の遷移を表している。図4の3段目に示すように、各レイヤの中では、方位1から方位Nまで順次走査を行い、次のレイヤの方位1へと走査位置を進める構成となっている。
【0044】
図4の4段目は、各方位における発光パルスの時間位置を表している。図4の4段目に示すように、各方位における走査の開始時刻と同時にパルスを発光する構成となっている。
【0045】
図4の5段目および6段目は、受光信号および受光信号に基づく物体の有無の判断結果を表している。上述したように、レーザ装置10は、反射光を受光したタイミングに応じてレーザ光を反射した物体までの距離を演算する。
【0046】
しかしながら、実際には、受光部15は発光部14から照射したレーザ光だけでなく、レーザ装置10の周囲に存在する光(環境光)も感知するため、その中から発光部14が照射したレーザ光を検出する処理が必要となる。ここでは、環境光に比べ、反射強度が大きな受光信号がある場合、物体が存在すると判断する。例えば、図4の5段目・6段目における方位1では、該当方位における環境光の平均輝度に対して突出した受光信号が存在しないため、物体は存在しないと判断される。
【0047】
一方、方位2では、環境光の平均輝度に対して突出した受光信号があり、物体が存在すると判断される。また、環境光の輝度レベルが異なる場合の状況を、図4の方位3から方位5に示す。このような場合においても、環境光を基準にして発光部14から照射したレーザ光を検出する。
【0048】
方位3は、環境光の輝度が方位1、方位2よりも高い環境を模した図であり、このような場合においても、環境光の平均輝度に比べ、大きな受光信号があれば物体が存在すると判断する。方位4、方位5は、方位3よりも環境光の輝度レベルが高い環境を模した図であり、方位4では環境光の平均輝度に比べ、大きな受光信号があるため、物体が存在すると判断するが、方位5ではそのような受光信号が存在しないため、物体は存在しないと判断する。
【0049】
ここで、受光部15は、フォトダイオードやフォトトランジスタ、光電子倍増管等の、光量に応じて電気的な物理量を出力する光電変換手段を採用することができる。このような受光部15は、レーザ光の反射光を受けると、周囲の明るさに応じた電圧に、反射光の光量に応じた電圧Vpが加算された出力が、レーザ光の照射時間に応じた時間だけ出力される。
【0050】
上述の距離算出処理では、受光部15によりレーザ光の反射光に応じた電圧Vpが検出されたことを認識し、発光部14がレーザ光を射出してから電圧Vpが検出されるまでの時間に基づいて対物距離を演算する。
【0051】
また、対物距離算出処理においては、外光に応じた電圧を基準として所定の閾値以上の電圧差が検出できたときに、レーザ光の反射光に応じた電圧Vpが検出されたものとして処理を行う。なお、外光に応じた電圧は、ある時間範囲(例えば反射光を検出していないとき(物体が存在しないと判断されるとき))における受光部15からの出力の平均値から得ることができる。
【0052】
また、反射強度算出処理では、レーザ光の反射光に応じた電圧Vpが検出されたときに、この電圧Vpの大きさを算出する。このような対物距離算出処理、反射強度算出処理で検出された対物距離や反射強度についての検出結果は、RAM等の認識用メモリに格納される。
【0053】
このような対物距離/反射強度検出処理が終了すると、レーザ光の走査を終了するか否かを判定する(S140)。走査を終了するか否かについては、対物距離または反射強度を検出する最終の方位番号かつレイヤ番号を有する方向(例えば、方位番号およびレイヤ番号が最大値を採る方向)に受光部15(発光部14)が向けられたか否かによって判定する。
【0054】
走査を終了しない場合には(S140:NO)、S110以下の処理を繰り返す。また、走査を終了する場合には(S140:YES)、RAM等の認識用メモリから対物距離検出結果および反射強度検出結果を取得する(S150:検出結果取得手段)。
【0055】
そして、取得した検出結果に基づいて、対物距離検出結果に基づく道路端(第1境界)を検出する(S160:第1境界検出手段)。この処理では、方位1〜Nにおける対物距離検出結果について、レイヤ毎に道路端の候補を検出する。
【0056】
詳細には、隣接する方位での対物距離検出結果同士を順次比較し、これらの差が基準距離以上となる方位(反射光の受光タイミングが基準時間差以上となる方位)を、自車両の左右方向の正面を基準として左右に1つずつ検出し、これを道路端の候補として設定する。このとき、対物距離検出結果の差が基準距離以上となる複数の方位が検出された場合、自車両の左右方向の正面に近いものを道路端の候補として選択する。なお、前回の道路端の検出結果に近いものを道路端の候補として採用してもよい。
【0057】
続いて、反射強度に基づく道路端(第2境界)を検出する(S170:第2境界検出手段)。この処理では、測距結果に基づく道路端と同様に、方位1〜Nにおける反射強度の検出結果について、レイヤ毎に道路端の候補を検出する。つまり、隣接する方位での反射強度の検出結果同士を順次比較し、これらの差が基準強度差以上となる方位を道路端の候補として検出する。
【0058】
このようなS160,S170の処理を実施すると、レイヤ毎に左右2つずつの道路端の候補が得られる。
続いて、道路境界検出処理を実施する(S180:道路端設定手段)。道路境界検出処理は、対物距離検出結果に基づく道路端と反射強度に基づく道路端とをどのように利用するかを設定し、道路端の位置を決定する処理である。
【0059】
詳細には、図5に示すように、まず、投票空間1および投票空間2を初期化する(S310、S320)。ここで、投票空間とは、近似曲線(近似直線)を求めるために利用される仮想空間を表す。続いて、変数iをリセットする(S330)。そして、変数iと変数Nとを比較する(S340)。ここで、定数Nはレイヤ数(レイヤ番号の最大値)を示す。
【0060】
変数iが変数N未満であれば(S340:YES)、i番目のレイヤについて投票処理を行う(S350、S360)。ここで投票処理とは、近似曲線を表す関数における定数を前述の投票空間における各軸に取り、この関数において、選択している道路端の候補を通るための、取り得る定数の組み合わせをこの投票空間にプロットする処理である。
【0061】
具体的に対物距離検出結果の投票処理(S350)では、図6(a)に示すように、道路端の候補の座標を(x、y)とする。そして、図6(b)に示すように、自車両が位置するx-y平面における近似曲線を表す関数を、「x=ay+b」と仮定し、定数であるaおよびbを各軸に取った投票空間1において、取り得るaおよびbの組み合わせを、bを所定値(例えば0.1)ずつ変更しつつ、プロットすることによって行う。
【0062】
次に、反射強度の投票処理(S360)では、対物距離検出結果の投票処理に用いた投票空間(投票空間1)とは異なる投票空間(投票空間2)において同様の処理を行う。なお、反射強度の投票処理では、対物距離検出結果の投票処理に用いた投票空間と同一の投票空間を用いてもよい。
【0063】
選択したレイヤにおける道路端の候補についての投票処理が終了すると、変数iをインクリメントし(S370)、S340の処理に戻る。このように、投票処理は道路端の候補毎に実施されるので、投票空間においては各道路端の候補に関する多くのプロットがなされる。また、過去に検出した道路端の候補を、自車の並進量および回転量に基づいて現時刻における位置を推定し、投票処理に用いてもよい。
【0064】
このように、過去の検出結果も利用することで、投票空間に対する投票数が増加し、信頼性の高い結果が得られることとなる。なお、自車の並進量および回転量は、自車の速度や操舵角などから、周知の方法を用いることで推定することができる。
【0065】
ところで、S340の処理にて変数iが定数N以上であれば(S340:NO)、全ての道路端の候補についての投票処理が終了しているので、続く処理では投票処理に基づく近似曲線を算出し、道路端を特定する境界判定処理を行う(S380)。この処理は、図7に示すように、まず、対物距離検出結果を投票した投票空間1において、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間から極大投票位置を抽出する(S410)。
【0066】
ここで、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間とは、例えば、xの値が負になるような定数a、bの組み合わせとなる領域を示す。また、近似的な方法として、b<0を満たす投票空間を、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間としてもよい。
【0067】
これは、自車近傍の道路は自車進行方向にほぼ平行な直線で近似できると仮定した上で、その近似直線の切片bが負であれば、自車両の正面に対して左側の道路端であるという考えに基づく。なお、道路形状がカーブであることが分かっている場合等には、左側の道路端が存在すると推定される位置に対応する定数a、bの組み合わせとなる領域を示す。
【0068】
また、極大投票位置とは、各道路端の候補に関する前述のプロットの集中度合いが相対的に高くなる投票空間上の点(領域)を表し、ここでは上記の領域(自車両の正面に対して左側に相当する投票空間)から極大投票位置を1つ抽出する。ここで抽出された極大投票位置は、壁面やガードレールなど、凹凸のある道路境界を、図6(a)のx-y平面における直線x=ay+bで表した際の係数aおよび係数bを表す。
【0069】
これらの位置を検出するためには、例えば、投票空間を所定の値毎にマトリクス状に区切り、区切られた各領域におけるプロット数をカウントするようにすればよい。
このためには、全てのプロットが終了してから各領域のプロット数をカウントしてもよいし、投票処理においてプロットされた領域のカウンタ値をプロットがされる度にインクリメントするようにしてもよい。なお、最大投票位置における投票数(プロット数)は、RAMにおける所定領域に格納される。
【0070】
次に、反射強度を投票した投票空間2における、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間から、極大投票位置を1つ抽出する(S420)。ここで抽出された極大投票位置は、白線など、凹凸のない道路境界を、図6(c)のx−y平面における直線x=ay+bで表した際の係数aおよび係数bを表す。なお、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間の設定方法、および極大投票位置の検出方法は、上述の方法と同様の処理を用いる。
【0071】
続いて、抽出した2つの極大投票位置が所定の条件を満たすか否かを判定する(S430)。ここで、所定の条件とは、極大投票位置の信頼度が高いことを判定することができればよく、例えば、
[1]極大投票位置における投票数が閾値以上であること(信頼度の確認)、
[2]2つの極大投票位置から得られる直線が概ね平行である(傾きaの値の差が閾値以内)、
[3]2つの極大投票位置から得られる直線が異なる位置に存在する(切片bの差が閾値以上)
の各条件の全てを満たすこと等が考えられる。
【0072】
なお、極大投票位置から得られる直線における定数aおよびbを特定する際には、最大投票位置においてプロットされた各定数aおよびbの値を平均化したものを採用すればよい。また、予め投票空間における各領域にこれらの領域を表す値(代表値)を対応付けておき、最大投票位置における代表値を採用するようにしてもよい。
【0073】
抽出した2つの極大投票位置が所定の条件を満たしていれば(S430:YES)、2つの直線のうちの自車両から遠いほうの直線を物理境界に設定し(S440)、2つの直線のうちの自車両が近い方の直線を法規直線に設定する(S450)。ここで、「物理境界」とは、この境界を越えると衝突や脱輪が発生する虞がある境界(例えば、縁石、壁面、崖等)を示し、「法規境界」とは、この境界を越えても直ちに衝突や脱輪が発生する虞は少ないが、道路として認められた領域外を走行することになる境界(例えば、白線、黄線等)を示す。
【0074】
一方、2つの極大投票位置が所定の条件を満たしていなければ(S430:NO)、投票数の多い極大投票位置に対応する直線を物理境界に設定し(S460)、法規境界は存在しないものとする(S470)。ここで、投票数の多い極大投票位置を物理境界に採用するのは、投票数の多い極大投票位置が投票数の少ない極大投票位置に対して信頼性が高いことに起因する。例えば、法規境界として白線を検出しているものの、その白線のペイント状態が悪い場合(白線が擦れている等)は、極大投票位置における投票数が少なくなる。
【0075】
このような場合は、道路構造の変更工事を行った際、以前の道路端として使用されていた白線である可能性もあり、より信頼性の高い(即ち、投票数の多い)物理境界を道路端として採用しても良い。または、道路端からの逸脱を回避することを第一の目的とした場合には、投票数の大小によらず、自車両に近い側の直線を物理境界に設定してもよい。
【0076】
そして、S510〜S570において、自車両の右側に相当する投票空間にて、S410〜S470と同様の処理を実施する。このような境界判定処理が終了すると、道路境界検出処理、およびレーダ処理を終了する。
【0077】
次に、上記のレーダ処理によって検出された道路端を利用して運転者に警報等を行う処理について図8を用いて説明する。図8(a)は車両制御部30が実行する車両制御処理(運転支援手段)を示すフローチャート、図8(b)は車両制御処理の概要を示す鳥瞰図である。
【0078】
車両制御処理は、車両の走行中に所定の周期毎(例えば100ms毎)に繰り返し実施される処理であって、図8(a)に示すように、まず、自車両と道路境界(物理境界または法規境界)との距離と所定の閾値(例えば50cm)とを比較する(S610)。
【0079】
自車両と道路境界との距離が閾値よりも大きければ(S610:NO)、車両制御処理を終了する。また、自車両と道路境界との距離以下であれば(S610:YES)、道路境界が物理境界であるか否かを判定する(S620)。
【0080】
道路境界が物理境界であれば(S620:YES)、図8(b)、図8(c)に示すように、自車両が物理境界に衝突(脱輪)等する虞があるため、警報および車両制御を行う(S630)。この処理では、例えば、画像や音によって運転者に警告を行いつつ、自車両を減速させたり、ステアリングを物理境界とは反対側に切ったりする等の車両制御を行う。
【0081】
また、道路境界が法規境界であれば(S620:NO)、方向指示器が点灯しているか否かを判定する(S640)。方向指示器が点灯していれば(S640:YES)、運転者の意図による道路逸脱と判断し、警報等を行うことなく車両制御処理を終了する。
【0082】
また、方向指示器が点灯していなければ(S640:NO)、運転者の意図ではない道路逸脱ではあるものの、図8(c)に示すように、自車両が衝突等することはないと推定できるので、警報のみを行う(S650)。このような警報等を行うと、車両制御処理を終了する。
【0083】
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した運転支援システム1においてレーダ装置10のレーダ制御部11は、レーダ処理にて、自車両が走行する道路の道路端を検出し、車両制御部30は、車両制御処理にて、自車両が道路端に接近したとき、自車両が道路端に接近しなくなるような運転支援を行う。
【0084】
レーダ装置10の詳細としては、まず、レーダ制御部11は、被測定物を検出する対象となる個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域において、各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光することにより、反射光の反射強度および被測定物までの距離(対物距離)をそれぞれ検出しつつRAM等のメモリに記録する。そして、記録した個別領域毎の反射強度および対物距離を取得する。
【0085】
また、レーダ制御部11は、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各対物距離の差が基準距離差以上となる第1境界を検出し、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各反射強度の差が基準強度差以上となる第2境界を検出する。そして、レーダ制御部11は、各境界の位置を各境界に対応する各対物距離に基づいて特定し、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定する。
【0086】
このようなレーダ装置10によれば、道路端の検出結果に応じて自車両が道路を逸脱しないように運転支援を行うことができる。また、対物距離および反射強度の両方を利用して対物距離の差や反射強度の差が基準値以上となる境界を検出するので、少なくとも何れかの境界が検出されていれば、道路端を検出することができる。よって、道路端の検出精度を向上させることができる。
【0087】
なお、レーダ制御部11は、対物距離の差に基づいて、道路上の凹凸を検出することができ、レーダ制御部11は、反射光の反射強度の差に基づいて、道路において材質(反射率)が変化する境界を検出することができる。このように、対物距離の差だけでなく、反射強度の差も利用することで、従来技術では検出が困難であった白線や二輪車専用通行帯を示す路面ペイントによる道路境界(図10)も検出することができる
また、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、複数の検出対象領域においてそれぞれ検出した複数組の対物距離および反射強度を取得し、複数の検出対象領域にて検出された対物距離および反射強度を利用して各境界を検出する。
【0088】
このようなレーダ装置10によれば、複数の検出対象領域において検出された複数組の対物距離および反射強度を利用して道路端を検出するので、1組の対物距離および反射強度を利用する場合と比較して、ノイズ等の影響を受け難くすることができる。例えば、図9に示すように、自車両の進行方向に向かって左側の壁面などは、道路面に比べ凹凸が大きいため、従来技術でも検出することができる。
【0089】
一方、自車両の進行方向に向かって右側にある砂、石、樹木などの微小な凹凸は、対物距離の変化が道路面に比べ十分に大きくないため、道路端が検出できない虞がある。それに比べ、本発明は凹凸のある物理境界だけでなく、凹凸の無い法規境界も検出することができるため、図9に記載の白線も検出することができる。よって、道路端の検出精度をより向上させることができる。
【0090】
また、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、自車両の左右方向における正面の位置を基準として、左右方向のそれぞれにおいて道路端を検出する。
このようなレーダ装置10によれば、一方の道路端だけでなく、左右両方の道路端を検出することができる。
【0091】
さらに、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、第1境界の位置または第2境界の位置のうちの自車両の正面の位置に近い境界を道路端として設定してもよい。
このようなレーダ装置10によれば、道路端を、より自車両の正面に近い位置に設定することで、道路端を検出し間違えたとしても、自車両に脱輪等を誘発させないようにすることができる。
【0092】
また、運転支援システム1において車両制御部30は、車両制御処理にては、自車両が物理境界に接近したときと、自車両が法規境界に接近したときとで異なる運転支援を行う。
【0093】
このような運転システム1によれば、物理境界と法規境界との両方が検出された場合には、自車両が何れの境界に接近するかに応じて異なる運転支援を行うことができる。また、自車両が法規境界に接近した場合は、直ちに衝突や転落、脱輪等が発生する虞は低いため、例えば画像や音によって運転者に警告を行いつつ、自車両を減速させたり、ステアリングを物理境界とは反対側に切ったりする等の車両制御を行うことができる。
【0094】
さらに、例えば、自車両が物理境界に接近した場合は、衝突や転落、脱輪等が発生する虞があるため、警報および車両制御を行うことができる。このように上記実施形態の運転システム1では、法規境界および物理境界に接近したときに、2段階に分けて警報等を行うことができるので、より安全になるように運転者を支援することができる。
【0095】
また、運転支援システム1では、法規境界および物理境界を検出するので、注意(軽度の警報)と警告(重度の警報)とを使い分けることができる。
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0096】
例えば、上記実施形態において、複数のレイヤにおいてそれぞれ道路端の候補を検出し、複数の道路端の候補について投票処理を行うことによって道路端の位置を設定したが、この際、過去の処理の際に検出された道路端の候補の位置を考慮して投票処理を実施してもよい。即ち、過去において検出された道路端の候補の位置が、どの程度相対移動したかを自車両の挙動(速度、角速度)を検出することによって予測し、この予測した位置にて道路端の候補を検出したものとして、投票処理(S340,S350)の際に併せて投票してもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、抽出した2つの極大投票位置が所定の条件を満たしていれば(S420:YES)、2つの直線のうちの自車両から遠いほうの直線を物理境界に設定し(S430)、2つの直線のうちの自車両が近いほうの直線を法規境界に設定する(S440)ようにしたが、対物距離検出結果に基づく道路端を物理境界に設定し、反射強度に基づく道路端を法規境界に設定してもよい。つまり、壁面や崖等の立体物があると推定できる場合に物理境界に設定し、立体物ではないと推定できる場合に法規境界に設定する。
【0098】
このような処理を実現するためには、対物距離検出結果に基づく道路端を検出するための投票空間と、反射強度に基づく道路端を検出するための投票空間とを別に設定すればよい。上記のようにしても、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、投票空間の中から極大投票位置を抽出し、物理境界および法規境界を設定するようにしたが、極大投票位置における投票数が少ない場合は、検出結果の信頼性が低いと判断し、信頼性が低い旨の判断結果を、図示しない表示装置、音声出力装置等に出力してもよい。このような処理を行うことで、道路端の誤検出による運転支援への悪影響を回避することができる。
【0100】
また、上記実施形態では、自車両近傍の道路は直線で近似できるとし、投票処理における近似曲線を「x=ay+b」と仮定したが、直線だけでなくカーブも表現できる「x=ay^2+by+c」のような二次曲線に設定してもよい。このようにすることで、道路端の位置を一次曲線よりも正確に求めることができる。
【0101】
さらに、操舵角などの車両情報や地図情報などから自車前方が直線かカーブかが分かる場合は、状況に応じて近似曲線を切り換えてもよい。このように地図情報を利用する場合には、地図情報については周知のナビゲーション装置等から取得できるように構成すればよい。
【符号の説明】
【0102】
1…運転支援システム、10…レーダ装置、11…レーダ制御部、12…走査駆動部、13…光学ユニット、30…車両制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行する道路における端部の位置を検出する道路端検出装置、運転者支援装置、および道路端検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路端を検出する技術として、レーザ光を走査しつつ照射し、物標までの距離(対物距離)を検出し、この対物距離が大きく変化する領域(つまり、凹凸がある領域)を道路端として推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4100269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、道路端に凹凸がない場合には、対物距離が大きく変化する領域を検出できないため、道路端を検出できない虞がある。例えば、上記技術では、図10(a)に示す壁面や崖、図10(b)に示すガードレール、縁石など、凹凸を持つ道路端を検出することは可能だが、白線や図11に示す車道と二輪車専用通行帯との間など、凹凸のない道路境界は検出することができない。そこで、このような問題点を鑑み、自車両が走行する道路における端部の位置を検出する道路端検出装置において、精度よく道路端を検出できるような技術を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために成された第1の構成の道路端検出装置において、検出結果取得手段は、被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、被測定物までの距離(以下、「対物距離」という。)と、被測定物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する。そして、第1境界検出手段は、各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出し、第2境界検出手段は、各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する。
【0006】
このような道路端検出装置によれば、対物距離および反射強度の両方を利用し道路端を検出することができるので、少なくとも何れかの境界が検出されていれば、道路端を検出することができる。よって、道路端の検出精度を向上させることができる。
【0007】
なお、第1境界検出手段は、対物距離の差(レーザ光が照射されてから反射光を受光するまでの時間差)に基づいて、道路上の凹凸を検出することができ、第2境界検出手段は、反射光の反射強度の差に基づいて、道路において材質(反射率)が変化する境界を検出することができる。 また、道路端を検出する際には、第1境界および第2境界のうちの少なくとも一方に基づいて道路端を設定すればよい。例えば、第1境界または第2境界を道路端に設定したり、第1境界および第2境界の間に道路端を設定したりする構成を採用することができる。
【0008】
ところで、上記道路端検出装置においては、第2の構成のように、第1境界検出手段は、第1境界として、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各対物距離の差が基準距離差以上となる部位を検出し、第2境界検出手段は、第2境界として、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各反射強度の差が基準強度差以上となる部位を検出するようにしてもよい。
【0009】
このような道路端検出装置によれば、対物距離の差や反射強度の差が基準値以上となる境界を、第1境界および第2境界に設定することができる。
さらに、上記道路端検出装置においては、第3の構成のように、検出結果取得手段は、被測定物を検出する対象となる個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域において、各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光することにより、該反射光の反射強度および対物距離をそれぞれ検出する光学式検出手段、によって検出された、個別領域毎の反射強度および対物距離を取得するようにしてもよい。
【0010】
このような道路端検出装置によれば、個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて検出対象領域を形成しているので、各境界をより精細に検出することができる。
【0011】
また、上記道路端検出装置においては、第4の構成のように、光学式検出手段を備えていてもよい。
このような道路端検出装置によれば、光学式検出手段を備えたレーダ装置として機能することができる。
【0012】
さらに、上記道路端検出装置においては、第5の構成のように、検出結果取得手段は、光学式検出手段が複数の検出対象領域においてそれぞれ検出した複数組の反射強度および対物距離を取得し、各領域検出手段は、複数の検出対象領域にて検出された反射強度および対物距離を利用して各境界を検出するようにしてもよい。
【0013】
このような道路端検出装置によれば、複数の検出対象領域において検出された複数組の反射強度および対物距離を利用して道路端を検出するので、1組の反射強度および対物距離を利用する場合と比較して、ノイズ等の影響を受け難くすることができる。よって、道路端の検出精度をより向上させることができる。
【0014】
加えて、上記道路端検出装置においては 第6の構成のように、各境界の位置を各境界に対応する各対物距離に基づいて特定し、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定する道路端設定手段、を備えていてもよい。
【0015】
このような道路端検出装置によれば、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定することができる。
また、上記道路端検出装置においては、第7の構成のように、道路端設定手段は、自車両の左右方向における正面の位置を基準として、左右方向のそれぞれにおいて道路端を検出するようにしてもよい。
【0016】
このような道路端検出装置によれば、一方の道路端だけでなく、左右両方の道路端を検出することができる。
さらに、上記道路端検出装置においては、第8の構成のように、道路端設定手段は、各境界検出手段が検出した各境界の位置のうちの自車両の正面の位置に近い境界を道路端として設定してもよい。
【0017】
このような道路端検出装置によれば、道路端を、より自車両の正面に近い位置に設定することで、道路端を検出し間違えたとしても、自車両に脱輪等を誘発させないようにすることができる。
【0018】
また、上記道路端検出装置においては、第9の構成のように、道路端設定手段は、各境界検出手段が検出した各境界の位置が異なる場合、第1境界を物理境界としての道路端に設定し、第2境界を法規境界としての道路端に設定してもよい。ここで、「物理境界」とは、この境界を越えると衝突や脱輪が発生する虞がある境界を示し、「法規境界」とは、この境界を越えても直ちに衝突や脱輪が発生する虞は少ないが、道路として認められた領域外を走行することになる境界を示す。
【0019】
このような道路端検出装置によれば、物理境界と法規境界とを識別することができる。
次に、上記目的を達成するために成された第10の構成としての運転者支援装置は、自車両が走行する道路の道路端を検出する道路端検出手段と、自車両が道路端に接近したとき、自車両が道路端に接近しなくなるような運転支援を行う運転支援手段と、を備え、道路端検出手段は、上記何れか1項に記載の道路端検出装置として構成されている。
【0020】
このような道路端検出装置によれば、道路端の検出結果に応じて自車両が道路を逸脱しないように運転支援を行うことができる。
また、上記運転者支援装置においては、第11の構成のように、道路端検出手段は、第9の構成の道路端検出装置として構成されており、運転支援手段は、自車両が物理境界に接近したときと、自車両が法規境界に接近したときとで異なる運転支援を行うようにしてもよい。
【0021】
このような運転者支援装置によれば、物理境界と法規境界との両方が検出された場合には、自車両が何れの境界に接近するかに応じて異なる運転支援を行うことができる。
次に、上記目的を達成するために成された第12の構成の道路端検出方法は、車両において、自車両が走行する道路の左右何れかの端部(以下、「道路端」という。)を検出するための方法であって、被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、被対象物までの距離(以下、「対物距離」という。)と被対象物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する検出結果取得工程と、各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出する第1境界検出工程と、各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する第2境界検出工程と、を実施することを特徴とする。
【0022】
このような道路端検出方法によれば、少なくとも請求項1に記載の道路端検出装置と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】運転支援システム1の概略構成を示す説明図である。
【図2】実施形態において、レーザ光を照射する領域を示す模式図である。
【図3】レーダ処理を示すフローチャート(a)、および対物距離/反射強度検出処理を示すフローチャート(b)である。
【図4】実施形態において、受光部15による検出レベルを時間との関係で示すグラフである。
【図5】道路境界検出処理を示すフローチャートである。
【図6】投票処理の概念図である。
【図7】境界判定処理を示すフローチャートである。
【図8】車両制御処理を示すフローチャート(a)および車両制御処理の概要を示す鳥瞰図(b)(c)である。
【図9】対物距離と反射強度との両方を用いることの利点を示す鳥瞰図である。
【図10】従来技術で検出できる道路端の一例を示す鳥瞰図である。
【図11】従来技術で検出することが難しい道路端の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
図1は本実施形態の運転支援システム1(運転者支援装置)の概略構成を示す説明図、図2はレーザ光を照射する領域を示す模式図である。運転支援システム1は、例えば乗用車等の車両に搭載されており、図1に示すように、レーダ装置10(道路端検出装置、光学式検出手段)と車両制御部30とを備えている。
【0025】
レーダ装置10は、レーダ制御部11と、走査駆動部12と、光学ユニット13とを備えている。
レーダ制御部11は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、ROM等に記憶されたプログラムに従って、後述するレーダ処理等の各種処理を実施する。なお、レーダ制御部11は、回路などによるハードウェアで構成してもよい。また、レーダ制御部11は、後述するレーダ処理を実施することにより、被対象物(物体50)までの対物距離および反射強度を測定するとともに、自車両が走行する道路における左右方向の境界(道路端)を検出する。
【0026】
走査駆動部12は、例えばモータ等のアクチュエータとして構成されており、レーダ制御部11からの指令を受けて、光学ユニット13を水平方向および鉛直方向の任意の方向に向けることができるよう構成されている。なお、走査駆動部12は、レーダ制御部11からの走査開始信号を受ける度に1周期分の走査ができるように光学ユニット13を駆動する(図4参照)。
【0027】
光学ユニット13は、レーダ制御部11からの指令に応じてレーザ光を射出する発光部14と、発光部14からのレーザ光(図1では実線の矢印で示す)が物体50に反射したときの反射波(図1では破線の矢印で示す)を受光する受光部15と、を備えている。
【0028】
なお、走査駆動部12は、結果として発光部14によるレーザ光の射出方向が受光部15により反射光を受光可能な方向と同じ方向となるよう変化させられる構成であればよい。例えば、走査駆動部12は、光学ユニット13に換えて、レーザ光および反射光を任意の方向に反射させるミラーを駆動するよう構成されていてもよい。
【0029】
この場合には、複数の反射面を有するミラーを走査駆動部12で回転させることによって水平方向にレーザ光を走査し、反射面の角度をそれぞれ異なる角度に設定することによって、鉛直方向にもレーザ光を振りつつ走査する構成を採用すればよい。また、1つの反射面を有するミラーを任意の方向に向ける機構を採用してもよい。
【0030】
或いは、走査駆動部12は、受光部15のみの方向を変化させる構成でもよい。この場合、発光部14は、発光部14の方向を変化させることなく、受光部15が走査される領域の一部または全体にレーザ光を照射可能な構成にされていてもよい。例えば、受光部の方向を周知の微小電気機械素子(Micro-Electro-Mechanical Systems: MEMS)などで構成することで、レーダ装置10を小型に設計することができる。
【0031】
上述のようにレーダ装置10は、自車両周囲の任意の方向(本実施形態では自車両の進行方向である前方)の所定領域に対して、走査しつつ間欠的に電磁波であるレーザ光を照射し、その反射波(反射光)をそれぞれ受信することによって、自車両前方の物標を各検出点の集合として検出するレーザレーダとして構成されている。
【0032】
ここで、本実施形態のレーダ装置10においてレーダ制御部11は、前述のように走査駆動部12を利用して、光学ユニット13から照射されるレーザ光を所定の領域内において走査させるが、詳細には図2に示すように、この領域の左上隅から右上隅に水平方向右側にレーザ光を照射させる範囲を変化させつつ間欠的に等間隔(等角度)でレーザ光を照射させ、レーザ光が右上隅に到達すると、左上隅よりも所定角度だけ下方の領域から水平方向右側にレーザ光を照射させる範囲を変化させつつ再びレーザ光を照射させる。
【0033】
この作動を繰り返すことによってレーダ装置10は、所定領域の全域に順次レーザ光を照射させることになる。そしてレーダ装置10は、反射波を検出したタイミングとレーザ光を照射した方向とに基づいて、レーザ光を照射する度に物標(検出点)の位置を検出する。
【0034】
なお、レーダ装置10が向けられた方向については、レーザ光を照射する全領域をレーザ光が照射される領域毎にマトリクス状に区切り、各領域に番号を付すことによって特定できるようにしておく。例えば、図2に示すように、水平方向については左から順に番号を付し、この番号を方位番号と呼ぶ。また、鉛直方向については上から順に番号を付し、この番号をレイヤ番号と呼ぶ。
【0035】
次に、車両制御部30においては、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、ROM等に記憶されたプログラムに従って、自車両の挙動を制御する処理や、運転者に対する報知を行う等の各種処理を実施する。例えば、車両制御部30は、自車両の挙動を変更するような(或いは挙動の変更を促すような)運転支援を行う旨の指令をレーダ装置10から受けると、この指令に応じた制御信号を図示しない表示装置、音声出力装置、制動装置、操舵装置等の何れかに出力するようにすればよい。
【0036】
なお、本実施形態の車両制御部30は、後述する車両制御処理を実施し、自車両が道路を逸脱しそうになると、警報や制動を行う。
[本実施形態の処理]
このような運転支援システム1では、例えば、以下の処理が実施される。図3(a)はレーダ装置10のレーダ制御部11が実行するレーダ処理(道路端検出手段)を示すフローチャート、図3(b)はレーダ処理のうちの対物距離/反射強度検出処理を示すフローチャートである。また、図5はレーダ処理のうちの道路境界検出処理を示すフローチャート、図7はレーダ処理のうちの境界判定処理を示すフローチャートである。
【0037】
レーダ処理は、例えばレーダ装置10の電源が投入されると開始され、その後、所定の周期(例えば100ms毎)で実施される処理である。詳細には、図3(a)に示すように、まず、対物距離および反射強度を検出する方向(方位番号およびレイヤ番号)を設定し(S110)、設定した方向にレーザ光の照射方向が向けられたときに発光部14からレーザ光を射出させる(S120)。
【0038】
そして、対物距離/反射強度検出処理(S130)を実施する。対物距離/反射強度検出処理では、図3(b)に示すように、反射光を受光したタイミングに応じてレーザ光を反射した物体までの距離を演算する対物距離算出処理(S220)、反射光の受光強度(反射強度)を検出する反射強度算出処理(S230)、を順に実施し、これらの処理が終了すれば、対物距離/反射強度検出処理を終了する。
【0039】
ここで、距離算出処理や反射強度算出処理等において、受光部15が検出した反射光から物体までの距離および反射強度を検出する仕組みについて、図4を用いて説明する。図4は受光部15による検出レベルを時間との関係で示すグラフである。
【0040】
図4に示す例では、レイヤ番号の最大値が3、方位番号の最大値がNの場合において、レイヤ2における受光部15からの出力を示している。図4の横軸は時間軸を表しており、最上段は走査開始信号を表している。走査開始信号は、所定の周期(例えば100ms毎)に発せられるパルス信号であり、レイヤ1からレイヤ3までの走査が終了し、再びレイヤ1に戻るタイミングと一致する。
【0041】
図4の2段目は、走査するレイヤの遷移を表している。図4の2段目に示すように、レイヤ1からレイヤ3まで順次走査を行い、再びレイヤ1に戻り、発光および受光を繰り返す構成となっている。
【0042】
図4の3段目以降は、レイヤ2の中での処理を拡大して図示したものである。なお、図4の3段目以降の処理は、レイヤ2だけでなく、レイヤ1およびレイヤ3でも同様の処理が行われる。
【0043】
図4の3段目は、走査する方位の遷移を表している。図4の3段目に示すように、各レイヤの中では、方位1から方位Nまで順次走査を行い、次のレイヤの方位1へと走査位置を進める構成となっている。
【0044】
図4の4段目は、各方位における発光パルスの時間位置を表している。図4の4段目に示すように、各方位における走査の開始時刻と同時にパルスを発光する構成となっている。
【0045】
図4の5段目および6段目は、受光信号および受光信号に基づく物体の有無の判断結果を表している。上述したように、レーザ装置10は、反射光を受光したタイミングに応じてレーザ光を反射した物体までの距離を演算する。
【0046】
しかしながら、実際には、受光部15は発光部14から照射したレーザ光だけでなく、レーザ装置10の周囲に存在する光(環境光)も感知するため、その中から発光部14が照射したレーザ光を検出する処理が必要となる。ここでは、環境光に比べ、反射強度が大きな受光信号がある場合、物体が存在すると判断する。例えば、図4の5段目・6段目における方位1では、該当方位における環境光の平均輝度に対して突出した受光信号が存在しないため、物体は存在しないと判断される。
【0047】
一方、方位2では、環境光の平均輝度に対して突出した受光信号があり、物体が存在すると判断される。また、環境光の輝度レベルが異なる場合の状況を、図4の方位3から方位5に示す。このような場合においても、環境光を基準にして発光部14から照射したレーザ光を検出する。
【0048】
方位3は、環境光の輝度が方位1、方位2よりも高い環境を模した図であり、このような場合においても、環境光の平均輝度に比べ、大きな受光信号があれば物体が存在すると判断する。方位4、方位5は、方位3よりも環境光の輝度レベルが高い環境を模した図であり、方位4では環境光の平均輝度に比べ、大きな受光信号があるため、物体が存在すると判断するが、方位5ではそのような受光信号が存在しないため、物体は存在しないと判断する。
【0049】
ここで、受光部15は、フォトダイオードやフォトトランジスタ、光電子倍増管等の、光量に応じて電気的な物理量を出力する光電変換手段を採用することができる。このような受光部15は、レーザ光の反射光を受けると、周囲の明るさに応じた電圧に、反射光の光量に応じた電圧Vpが加算された出力が、レーザ光の照射時間に応じた時間だけ出力される。
【0050】
上述の距離算出処理では、受光部15によりレーザ光の反射光に応じた電圧Vpが検出されたことを認識し、発光部14がレーザ光を射出してから電圧Vpが検出されるまでの時間に基づいて対物距離を演算する。
【0051】
また、対物距離算出処理においては、外光に応じた電圧を基準として所定の閾値以上の電圧差が検出できたときに、レーザ光の反射光に応じた電圧Vpが検出されたものとして処理を行う。なお、外光に応じた電圧は、ある時間範囲(例えば反射光を検出していないとき(物体が存在しないと判断されるとき))における受光部15からの出力の平均値から得ることができる。
【0052】
また、反射強度算出処理では、レーザ光の反射光に応じた電圧Vpが検出されたときに、この電圧Vpの大きさを算出する。このような対物距離算出処理、反射強度算出処理で検出された対物距離や反射強度についての検出結果は、RAM等の認識用メモリに格納される。
【0053】
このような対物距離/反射強度検出処理が終了すると、レーザ光の走査を終了するか否かを判定する(S140)。走査を終了するか否かについては、対物距離または反射強度を検出する最終の方位番号かつレイヤ番号を有する方向(例えば、方位番号およびレイヤ番号が最大値を採る方向)に受光部15(発光部14)が向けられたか否かによって判定する。
【0054】
走査を終了しない場合には(S140:NO)、S110以下の処理を繰り返す。また、走査を終了する場合には(S140:YES)、RAM等の認識用メモリから対物距離検出結果および反射強度検出結果を取得する(S150:検出結果取得手段)。
【0055】
そして、取得した検出結果に基づいて、対物距離検出結果に基づく道路端(第1境界)を検出する(S160:第1境界検出手段)。この処理では、方位1〜Nにおける対物距離検出結果について、レイヤ毎に道路端の候補を検出する。
【0056】
詳細には、隣接する方位での対物距離検出結果同士を順次比較し、これらの差が基準距離以上となる方位(反射光の受光タイミングが基準時間差以上となる方位)を、自車両の左右方向の正面を基準として左右に1つずつ検出し、これを道路端の候補として設定する。このとき、対物距離検出結果の差が基準距離以上となる複数の方位が検出された場合、自車両の左右方向の正面に近いものを道路端の候補として選択する。なお、前回の道路端の検出結果に近いものを道路端の候補として採用してもよい。
【0057】
続いて、反射強度に基づく道路端(第2境界)を検出する(S170:第2境界検出手段)。この処理では、測距結果に基づく道路端と同様に、方位1〜Nにおける反射強度の検出結果について、レイヤ毎に道路端の候補を検出する。つまり、隣接する方位での反射強度の検出結果同士を順次比較し、これらの差が基準強度差以上となる方位を道路端の候補として検出する。
【0058】
このようなS160,S170の処理を実施すると、レイヤ毎に左右2つずつの道路端の候補が得られる。
続いて、道路境界検出処理を実施する(S180:道路端設定手段)。道路境界検出処理は、対物距離検出結果に基づく道路端と反射強度に基づく道路端とをどのように利用するかを設定し、道路端の位置を決定する処理である。
【0059】
詳細には、図5に示すように、まず、投票空間1および投票空間2を初期化する(S310、S320)。ここで、投票空間とは、近似曲線(近似直線)を求めるために利用される仮想空間を表す。続いて、変数iをリセットする(S330)。そして、変数iと変数Nとを比較する(S340)。ここで、定数Nはレイヤ数(レイヤ番号の最大値)を示す。
【0060】
変数iが変数N未満であれば(S340:YES)、i番目のレイヤについて投票処理を行う(S350、S360)。ここで投票処理とは、近似曲線を表す関数における定数を前述の投票空間における各軸に取り、この関数において、選択している道路端の候補を通るための、取り得る定数の組み合わせをこの投票空間にプロットする処理である。
【0061】
具体的に対物距離検出結果の投票処理(S350)では、図6(a)に示すように、道路端の候補の座標を(x、y)とする。そして、図6(b)に示すように、自車両が位置するx-y平面における近似曲線を表す関数を、「x=ay+b」と仮定し、定数であるaおよびbを各軸に取った投票空間1において、取り得るaおよびbの組み合わせを、bを所定値(例えば0.1)ずつ変更しつつ、プロットすることによって行う。
【0062】
次に、反射強度の投票処理(S360)では、対物距離検出結果の投票処理に用いた投票空間(投票空間1)とは異なる投票空間(投票空間2)において同様の処理を行う。なお、反射強度の投票処理では、対物距離検出結果の投票処理に用いた投票空間と同一の投票空間を用いてもよい。
【0063】
選択したレイヤにおける道路端の候補についての投票処理が終了すると、変数iをインクリメントし(S370)、S340の処理に戻る。このように、投票処理は道路端の候補毎に実施されるので、投票空間においては各道路端の候補に関する多くのプロットがなされる。また、過去に検出した道路端の候補を、自車の並進量および回転量に基づいて現時刻における位置を推定し、投票処理に用いてもよい。
【0064】
このように、過去の検出結果も利用することで、投票空間に対する投票数が増加し、信頼性の高い結果が得られることとなる。なお、自車の並進量および回転量は、自車の速度や操舵角などから、周知の方法を用いることで推定することができる。
【0065】
ところで、S340の処理にて変数iが定数N以上であれば(S340:NO)、全ての道路端の候補についての投票処理が終了しているので、続く処理では投票処理に基づく近似曲線を算出し、道路端を特定する境界判定処理を行う(S380)。この処理は、図7に示すように、まず、対物距離検出結果を投票した投票空間1において、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間から極大投票位置を抽出する(S410)。
【0066】
ここで、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間とは、例えば、xの値が負になるような定数a、bの組み合わせとなる領域を示す。また、近似的な方法として、b<0を満たす投票空間を、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間としてもよい。
【0067】
これは、自車近傍の道路は自車進行方向にほぼ平行な直線で近似できると仮定した上で、その近似直線の切片bが負であれば、自車両の正面に対して左側の道路端であるという考えに基づく。なお、道路形状がカーブであることが分かっている場合等には、左側の道路端が存在すると推定される位置に対応する定数a、bの組み合わせとなる領域を示す。
【0068】
また、極大投票位置とは、各道路端の候補に関する前述のプロットの集中度合いが相対的に高くなる投票空間上の点(領域)を表し、ここでは上記の領域(自車両の正面に対して左側に相当する投票空間)から極大投票位置を1つ抽出する。ここで抽出された極大投票位置は、壁面やガードレールなど、凹凸のある道路境界を、図6(a)のx-y平面における直線x=ay+bで表した際の係数aおよび係数bを表す。
【0069】
これらの位置を検出するためには、例えば、投票空間を所定の値毎にマトリクス状に区切り、区切られた各領域におけるプロット数をカウントするようにすればよい。
このためには、全てのプロットが終了してから各領域のプロット数をカウントしてもよいし、投票処理においてプロットされた領域のカウンタ値をプロットがされる度にインクリメントするようにしてもよい。なお、最大投票位置における投票数(プロット数)は、RAMにおける所定領域に格納される。
【0070】
次に、反射強度を投票した投票空間2における、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間から、極大投票位置を1つ抽出する(S420)。ここで抽出された極大投票位置は、白線など、凹凸のない道路境界を、図6(c)のx−y平面における直線x=ay+bで表した際の係数aおよび係数bを表す。なお、自車両の正面に対して左側に相当する投票空間の設定方法、および極大投票位置の検出方法は、上述の方法と同様の処理を用いる。
【0071】
続いて、抽出した2つの極大投票位置が所定の条件を満たすか否かを判定する(S430)。ここで、所定の条件とは、極大投票位置の信頼度が高いことを判定することができればよく、例えば、
[1]極大投票位置における投票数が閾値以上であること(信頼度の確認)、
[2]2つの極大投票位置から得られる直線が概ね平行である(傾きaの値の差が閾値以内)、
[3]2つの極大投票位置から得られる直線が異なる位置に存在する(切片bの差が閾値以上)
の各条件の全てを満たすこと等が考えられる。
【0072】
なお、極大投票位置から得られる直線における定数aおよびbを特定する際には、最大投票位置においてプロットされた各定数aおよびbの値を平均化したものを採用すればよい。また、予め投票空間における各領域にこれらの領域を表す値(代表値)を対応付けておき、最大投票位置における代表値を採用するようにしてもよい。
【0073】
抽出した2つの極大投票位置が所定の条件を満たしていれば(S430:YES)、2つの直線のうちの自車両から遠いほうの直線を物理境界に設定し(S440)、2つの直線のうちの自車両が近い方の直線を法規直線に設定する(S450)。ここで、「物理境界」とは、この境界を越えると衝突や脱輪が発生する虞がある境界(例えば、縁石、壁面、崖等)を示し、「法規境界」とは、この境界を越えても直ちに衝突や脱輪が発生する虞は少ないが、道路として認められた領域外を走行することになる境界(例えば、白線、黄線等)を示す。
【0074】
一方、2つの極大投票位置が所定の条件を満たしていなければ(S430:NO)、投票数の多い極大投票位置に対応する直線を物理境界に設定し(S460)、法規境界は存在しないものとする(S470)。ここで、投票数の多い極大投票位置を物理境界に採用するのは、投票数の多い極大投票位置が投票数の少ない極大投票位置に対して信頼性が高いことに起因する。例えば、法規境界として白線を検出しているものの、その白線のペイント状態が悪い場合(白線が擦れている等)は、極大投票位置における投票数が少なくなる。
【0075】
このような場合は、道路構造の変更工事を行った際、以前の道路端として使用されていた白線である可能性もあり、より信頼性の高い(即ち、投票数の多い)物理境界を道路端として採用しても良い。または、道路端からの逸脱を回避することを第一の目的とした場合には、投票数の大小によらず、自車両に近い側の直線を物理境界に設定してもよい。
【0076】
そして、S510〜S570において、自車両の右側に相当する投票空間にて、S410〜S470と同様の処理を実施する。このような境界判定処理が終了すると、道路境界検出処理、およびレーダ処理を終了する。
【0077】
次に、上記のレーダ処理によって検出された道路端を利用して運転者に警報等を行う処理について図8を用いて説明する。図8(a)は車両制御部30が実行する車両制御処理(運転支援手段)を示すフローチャート、図8(b)は車両制御処理の概要を示す鳥瞰図である。
【0078】
車両制御処理は、車両の走行中に所定の周期毎(例えば100ms毎)に繰り返し実施される処理であって、図8(a)に示すように、まず、自車両と道路境界(物理境界または法規境界)との距離と所定の閾値(例えば50cm)とを比較する(S610)。
【0079】
自車両と道路境界との距離が閾値よりも大きければ(S610:NO)、車両制御処理を終了する。また、自車両と道路境界との距離以下であれば(S610:YES)、道路境界が物理境界であるか否かを判定する(S620)。
【0080】
道路境界が物理境界であれば(S620:YES)、図8(b)、図8(c)に示すように、自車両が物理境界に衝突(脱輪)等する虞があるため、警報および車両制御を行う(S630)。この処理では、例えば、画像や音によって運転者に警告を行いつつ、自車両を減速させたり、ステアリングを物理境界とは反対側に切ったりする等の車両制御を行う。
【0081】
また、道路境界が法規境界であれば(S620:NO)、方向指示器が点灯しているか否かを判定する(S640)。方向指示器が点灯していれば(S640:YES)、運転者の意図による道路逸脱と判断し、警報等を行うことなく車両制御処理を終了する。
【0082】
また、方向指示器が点灯していなければ(S640:NO)、運転者の意図ではない道路逸脱ではあるものの、図8(c)に示すように、自車両が衝突等することはないと推定できるので、警報のみを行う(S650)。このような警報等を行うと、車両制御処理を終了する。
【0083】
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した運転支援システム1においてレーダ装置10のレーダ制御部11は、レーダ処理にて、自車両が走行する道路の道路端を検出し、車両制御部30は、車両制御処理にて、自車両が道路端に接近したとき、自車両が道路端に接近しなくなるような運転支援を行う。
【0084】
レーダ装置10の詳細としては、まず、レーダ制御部11は、被測定物を検出する対象となる個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域において、各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光することにより、反射光の反射強度および被測定物までの距離(対物距離)をそれぞれ検出しつつRAM等のメモリに記録する。そして、記録した個別領域毎の反射強度および対物距離を取得する。
【0085】
また、レーダ制御部11は、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各対物距離の差が基準距離差以上となる第1境界を検出し、各個別領域のうちの隣接する個別領域で各反射強度の差が基準強度差以上となる第2境界を検出する。そして、レーダ制御部11は、各境界の位置を各境界に対応する各対物距離に基づいて特定し、第1境界の位置または第2境界の位置を道路端として設定する。
【0086】
このようなレーダ装置10によれば、道路端の検出結果に応じて自車両が道路を逸脱しないように運転支援を行うことができる。また、対物距離および反射強度の両方を利用して対物距離の差や反射強度の差が基準値以上となる境界を検出するので、少なくとも何れかの境界が検出されていれば、道路端を検出することができる。よって、道路端の検出精度を向上させることができる。
【0087】
なお、レーダ制御部11は、対物距離の差に基づいて、道路上の凹凸を検出することができ、レーダ制御部11は、反射光の反射強度の差に基づいて、道路において材質(反射率)が変化する境界を検出することができる。このように、対物距離の差だけでなく、反射強度の差も利用することで、従来技術では検出が困難であった白線や二輪車専用通行帯を示す路面ペイントによる道路境界(図10)も検出することができる
また、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、複数の検出対象領域においてそれぞれ検出した複数組の対物距離および反射強度を取得し、複数の検出対象領域にて検出された対物距離および反射強度を利用して各境界を検出する。
【0088】
このようなレーダ装置10によれば、複数の検出対象領域において検出された複数組の対物距離および反射強度を利用して道路端を検出するので、1組の対物距離および反射強度を利用する場合と比較して、ノイズ等の影響を受け難くすることができる。例えば、図9に示すように、自車両の進行方向に向かって左側の壁面などは、道路面に比べ凹凸が大きいため、従来技術でも検出することができる。
【0089】
一方、自車両の進行方向に向かって右側にある砂、石、樹木などの微小な凹凸は、対物距離の変化が道路面に比べ十分に大きくないため、道路端が検出できない虞がある。それに比べ、本発明は凹凸のある物理境界だけでなく、凹凸の無い法規境界も検出することができるため、図9に記載の白線も検出することができる。よって、道路端の検出精度をより向上させることができる。
【0090】
また、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、自車両の左右方向における正面の位置を基準として、左右方向のそれぞれにおいて道路端を検出する。
このようなレーダ装置10によれば、一方の道路端だけでなく、左右両方の道路端を検出することができる。
【0091】
さらに、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、第1境界の位置または第2境界の位置のうちの自車両の正面の位置に近い境界を道路端として設定してもよい。
このようなレーダ装置10によれば、道路端を、より自車両の正面に近い位置に設定することで、道路端を検出し間違えたとしても、自車両に脱輪等を誘発させないようにすることができる。
【0092】
また、運転支援システム1において車両制御部30は、車両制御処理にては、自車両が物理境界に接近したときと、自車両が法規境界に接近したときとで異なる運転支援を行う。
【0093】
このような運転システム1によれば、物理境界と法規境界との両方が検出された場合には、自車両が何れの境界に接近するかに応じて異なる運転支援を行うことができる。また、自車両が法規境界に接近した場合は、直ちに衝突や転落、脱輪等が発生する虞は低いため、例えば画像や音によって運転者に警告を行いつつ、自車両を減速させたり、ステアリングを物理境界とは反対側に切ったりする等の車両制御を行うことができる。
【0094】
さらに、例えば、自車両が物理境界に接近した場合は、衝突や転落、脱輪等が発生する虞があるため、警報および車両制御を行うことができる。このように上記実施形態の運転システム1では、法規境界および物理境界に接近したときに、2段階に分けて警報等を行うことができるので、より安全になるように運転者を支援することができる。
【0095】
また、運転支援システム1では、法規境界および物理境界を検出するので、注意(軽度の警報)と警告(重度の警報)とを使い分けることができる。
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0096】
例えば、上記実施形態において、複数のレイヤにおいてそれぞれ道路端の候補を検出し、複数の道路端の候補について投票処理を行うことによって道路端の位置を設定したが、この際、過去の処理の際に検出された道路端の候補の位置を考慮して投票処理を実施してもよい。即ち、過去において検出された道路端の候補の位置が、どの程度相対移動したかを自車両の挙動(速度、角速度)を検出することによって予測し、この予測した位置にて道路端の候補を検出したものとして、投票処理(S340,S350)の際に併せて投票してもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、抽出した2つの極大投票位置が所定の条件を満たしていれば(S420:YES)、2つの直線のうちの自車両から遠いほうの直線を物理境界に設定し(S430)、2つの直線のうちの自車両が近いほうの直線を法規境界に設定する(S440)ようにしたが、対物距離検出結果に基づく道路端を物理境界に設定し、反射強度に基づく道路端を法規境界に設定してもよい。つまり、壁面や崖等の立体物があると推定できる場合に物理境界に設定し、立体物ではないと推定できる場合に法規境界に設定する。
【0098】
このような処理を実現するためには、対物距離検出結果に基づく道路端を検出するための投票空間と、反射強度に基づく道路端を検出するための投票空間とを別に設定すればよい。上記のようにしても、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、投票空間の中から極大投票位置を抽出し、物理境界および法規境界を設定するようにしたが、極大投票位置における投票数が少ない場合は、検出結果の信頼性が低いと判断し、信頼性が低い旨の判断結果を、図示しない表示装置、音声出力装置等に出力してもよい。このような処理を行うことで、道路端の誤検出による運転支援への悪影響を回避することができる。
【0100】
また、上記実施形態では、自車両近傍の道路は直線で近似できるとし、投票処理における近似曲線を「x=ay+b」と仮定したが、直線だけでなくカーブも表現できる「x=ay^2+by+c」のような二次曲線に設定してもよい。このようにすることで、道路端の位置を一次曲線よりも正確に求めることができる。
【0101】
さらに、操舵角などの車両情報や地図情報などから自車前方が直線かカーブかが分かる場合は、状況に応じて近似曲線を切り換えてもよい。このように地図情報を利用する場合には、地図情報については周知のナビゲーション装置等から取得できるように構成すればよい。
【符号の説明】
【0102】
1…運転支援システム、10…レーダ装置、11…レーダ制御部、12…走査駆動部、13…光学ユニット、30…車両制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、自車両が走行する道路の左右何れかの端部(以下、「道路端」という。)を検出する道路端検出装置であって、
被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、前記被測定物までの距離(以下、「対物距離」という。)と前記被測定物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、前記検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する検出結果取得手段と、
前記各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出する第1境界検出手段と、
前記各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する第2境界検出手段と、
を備えたことを特徴とする道路端検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道路端検出装置において、
前記第1境界検出手段は、前記第1境界として、前記各個別領域のうちの隣接する個別領域で前記各対物距離の差が基準距離差以上となる部位を検出し、
前記第2境界検出手段は、前記第2境界として、前記各個別領域のうちの隣接する個別領域で前記各反射強度の差が基準強度差以上となる部位を検出すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の道路端検出装置において、
前記検出結果取得手段は、被測定物を検出する対象となる個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域において、各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光することにより、前記対物距離および前記反射強度をそれぞれ検出する光学式検出手段、によって検出された、個別領域毎の対物距離および反射強度を取得すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の道路端検出装置において、
前記光学式検出手段を備えたこと
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の道路端検出装置において、
前記検出結果取得手段は、前記複数の検出対象領域においてそれぞれ検出された複数組の対物距離および反射強度を取得し、
前記各領域検出手段は、前記複数の検出対象領域にて検出された対物距離および反射強度を利用して前記各境界を検出すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の道路端検出装置において、
前記第1境界の位置または前記第2境界の位置を道路端として設定する道路端設定手段、を備えたこと
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の道路端検出装置において、
前記道路端設定手段は、前記自車両の左右方向における正面の位置を基準として、左右方向のそれぞれにおいて道路端を検出すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の道路端検出装置において、
前記道路端設定手段は、前記各境界検出手段が検出した各境界の位置のうちの自車両の正面の位置に近い境界を前記道路端として設定すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の道路端検出装置において、
前記道路端設定手段は、前記各境界検出手段が検出した各境界の位置が異なる場合、前記第1境界を物理境界としての道路端に設定し、前記第2境界を法規境界としての道路端に設定すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項10】
車両に搭載され、自車両の運転者による運転操作を支援する運転者支援装置であって、
自車両が走行する道路の端部(以下、「道路端」という。)を検出する道路端検出手段と、
自車両が道路端に接近したとき、自車両が道路端に接近しなくなるような運転支援を行う運転支援手段と、を備え、
前記道路端検出手段は、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の道路端検出装置として構成されていること
を特徴とする運転者支援装置。
【請求項11】
請求項10に記載の運転者支援装置において、
前記道路端検出手段は、請求項9に記載の道路端検出装置として構成されており、
前記運転支援手段は、自車両が物理境界に接近したときと、自車両が法規境界に接近したときとで異なる運転支援を行うこと
を特徴とする運転者支援装置。
【請求項12】
車両において、自車両が走行する道路の左右何れかの端部(以下、「道路端」という。)を検出するための道路端検出方法であって、
被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、前記被測定物までの距離(以下、「対物距離」という。)と前記被測定物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、前記検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する検出結果取得工程と、
前記各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出する第1境界検出工程と、
前記各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する第2境界検出工程と、
を実施することを特徴とする道路端検出方法。
【請求項1】
車両に搭載され、自車両が走行する道路の左右何れかの端部(以下、「道路端」という。)を検出する道路端検出装置であって、
被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、前記被測定物までの距離(以下、「対物距離」という。)と前記被測定物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、前記検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する検出結果取得手段と、
前記各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出する第1境界検出手段と、
前記各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する第2境界検出手段と、
を備えたことを特徴とする道路端検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道路端検出装置において、
前記第1境界検出手段は、前記第1境界として、前記各個別領域のうちの隣接する個別領域で前記各対物距離の差が基準距離差以上となる部位を検出し、
前記第2境界検出手段は、前記第2境界として、前記各個別領域のうちの隣接する個別領域で前記各反射強度の差が基準強度差以上となる部位を検出すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の道路端検出装置において、
前記検出結果取得手段は、被測定物を検出する対象となる個別領域を自車両の進行方向の左右方向に仮想的に多数並べて形成される検出対象領域において、各個別領域に対してそれぞれ光波を照射し、この光波が被測定物に反射されることによる反射光を受光することにより、前記対物距離および前記反射強度をそれぞれ検出する光学式検出手段、によって検出された、個別領域毎の対物距離および反射強度を取得すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の道路端検出装置において、
前記光学式検出手段を備えたこと
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の道路端検出装置において、
前記検出結果取得手段は、前記複数の検出対象領域においてそれぞれ検出された複数組の対物距離および反射強度を取得し、
前記各領域検出手段は、前記複数の検出対象領域にて検出された対物距離および反射強度を利用して前記各境界を検出すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の道路端検出装置において、
前記第1境界の位置または前記第2境界の位置を道路端として設定する道路端設定手段、を備えたこと
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の道路端検出装置において、
前記道路端設定手段は、前記自車両の左右方向における正面の位置を基準として、左右方向のそれぞれにおいて道路端を検出すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の道路端検出装置において、
前記道路端設定手段は、前記各境界検出手段が検出した各境界の位置のうちの自車両の正面の位置に近い境界を前記道路端として設定すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の道路端検出装置において、
前記道路端設定手段は、前記各境界検出手段が検出した各境界の位置が異なる場合、前記第1境界を物理境界としての道路端に設定し、前記第2境界を法規境界としての道路端に設定すること
を特徴とする道路端検出装置。
【請求項10】
車両に搭載され、自車両の運転者による運転操作を支援する運転者支援装置であって、
自車両が走行する道路の端部(以下、「道路端」という。)を検出する道路端検出手段と、
自車両が道路端に接近したとき、自車両が道路端に接近しなくなるような運転支援を行う運転支援手段と、を備え、
前記道路端検出手段は、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の道路端検出装置として構成されていること
を特徴とする運転者支援装置。
【請求項11】
請求項10に記載の運転者支援装置において、
前記道路端検出手段は、請求項9に記載の道路端検出装置として構成されており、
前記運転支援手段は、自車両が物理境界に接近したときと、自車両が法規境界に接近したときとで異なる運転支援を行うこと
を特徴とする運転者支援装置。
【請求項12】
車両において、自車両が走行する道路の左右何れかの端部(以下、「道路端」という。)を検出するための道路端検出方法であって、
被測定物を検出する対象となる検出対象領域に対して光波または電磁波を照射し、前記被測定物までの距離(以下、「対物距離」という。)と前記被測定物による反射波の強度(以下、「反射強度」という。)とを、前記検出対象領域を複数に分割した個別領域毎に取得する検出結果取得工程と、
前記各対物距離に基づいて道路端の候補となる第1境界を検出する第1境界検出工程と、
前記各反射強度に基づいて道路端の候補となる第2境界を検出する第2境界検出工程と、
を実施することを特徴とする道路端検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−32378(P2012−32378A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85477(P2011−85477)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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