説明

遠心薄膜乾燥機

【課題】処理場や季節によって汚泥性状が変わっても、最適な軸受交換時期を判定することができる遠心薄膜乾燥機を提供する。
【解決手段】遠心薄膜乾燥機20において、監視盤11は、温度計9により、回転する主軸2を支持する軸受8の温度を検出する。検出される軸受温度が警報値(例えば50℃)を越えてから、規定値(例えば55℃)を越えるまでの時間を計測し、計測された時間が所定時間(例えば3分)以内である場合に、軸受の交換時期であると判定し、乾燥機の動作を停止し、表示器17に軸受交換のアラームを表示する。これにより、処理場や季節によって汚泥性状が変わっても、最適な軸受交換時期を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業、化学工業、産業廃棄物処理業、水処理業などにおいて用いられる遠心薄膜乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に、従来の遠心薄膜乾燥機の例を示す。図7において、遠心薄膜乾燥機20は薄肉の伝熱胴1と、伝熱胴1内部に伝熱胴1と同軸に設けられた主軸2とを備えている。伝熱胴1の上部には脱水汚泥6が投入される汚泥投入口1aが設けられ、伝熱胴1の下端部には乾燥汚泥10が排出される汚泥排出口1bが設けられている。主軸2は、駆動モーター7の駆動によってプーリー15およびベルト16を介して回転するようになっている。主軸2の汚泥投入口1a近傍部分に汚泥投入口1aから伝熱胴1内に供給された脱水汚泥6を伝熱胴1内面に沿って分散させるための分配リング3が設けられている。
【0003】
また、伝熱胴1の外側には汚泥の脱水、乾燥用の熱源となる蒸気ジャケット5が設けられ、この蒸気ジャケット5内に蒸気入口5aから加熱蒸気が流入し、蒸気出口5bから流出するようになっている。
【0004】
図4において、汚泥投入口1aから伝熱胴1内に供給された脱水汚泥6は、主軸2とともに回転する分配リング3によって伝熱胴1の内壁に沿うように分散される。さらに脱水汚泥6は主軸2とともに回転するブレード4によって伝熱胴1の内壁に押付けられ薄膜状に引延ばされる。そして、薄膜状となった脱水汚泥6は、脱水汚泥6の自重および次々に供給される新たな脱水汚泥6の圧力によって、少しずつ降下する。その際、脱水汚泥6は、伝熱胴1の外側の蒸気ジャケット5内に供給される加熱蒸気によって伝熱胴1を介して加熱され、その水分が蒸発して乾燥されて、乾燥汚泥10となる。この乾燥汚泥10は伝熱胴1の下端に設けられた汚泥排出口1bから排出される。他方、脱水汚泥6から蒸発した水分は、伝熱胴1の上部に設けられた蒸発蒸気排出口12から抽気ファン(図示せず)により外方へ排出される。主軸2は軸受8により支持されている。
【0005】
この軸受8には寿命があり、寿命に近づいた場合これを交換する必要がある。ところで、主軸2は汚泥がブレードに付着してアンバランスとなって振動するが、汚泥の付着程度が処理場の汚泥性状によってばらつきがあるため、軸受8に掛かる負荷も処理場によりばらつきがある。そのため、軸受8の寿命も処理場によりばらつきがあるため、寿命の長い処理場もあれば、寿命の短い処理場もある。そこで、軸受交換推奨時期としては短い周期を基準としているが、必ずしも適切であるとはいえない。
【0006】
一方、軸受の寿命を監視するため、回転機械のすべり軸受の温度を温度センサーで監視し、高温になった場合に異常が発生している、あるいは寿命であると判定することが、従来行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、汚泥の脱水、乾燥を行う遠心薄膜乾燥機においては、処理場の汚泥性状にばらつきがあるため、軸受に掛かる負荷も処理場によりばらつきがあり、また負荷の変化に季節的要因などがあって、一時的に軸受の温度が高温になることもあるので、軸受の温度を監視して単に高温になったことだけで交換時期であるとはいえないという事情がある。
【特許文献1】特開平6−193629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、処理場の汚泥性状によってばらつきがあるため、汚泥の脱水、乾燥を行う遠心薄膜乾燥機においては、最適な軸受交換時期を判定し、表示することができなかった。
【0009】
本発明は、従来のこのような点に鑑みて為されたもので、処理場や季節によって汚泥性状が変わっても、最適な軸受交換時期を判定することができる遠心薄膜乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に、本発明に係る遠心薄膜乾燥機は、
主軸を回転させて汚泥を乾燥させる遠心薄膜乾燥機において、
主軸を支持する軸受の温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段により検出される前記軸受の温度が所定の第1の温度を越えてから、第1の温度より高い所定の第2の温度を越えるまでの時間を計測する計測手段と、
この計測手段により計測された時間が第1の所定時間以下である場合に、軸受の交換時期であると判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、処理場や季節によって汚泥性状が変わっても、最適な軸受交換時期を判定することができる遠心薄膜乾燥機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る遠心薄膜乾燥機の第1の実施形態の構成を示すもので、図7に示す従来例と同一部分または対応する部分には同一符号を付している。
【0013】
図1に示すように、本実施形態においては、図7に示す従来例の構成に加えて、主軸2の回転を支持する軸受8と、軸受8の温度を測定する温度計9が設けられている。更に、温度計9の温度から軸受交換時期を判定する監視盤11を設け、監視盤11の判定により軸受交換のアラームを表示する表示器17が設けられている。
【0014】
次に、このような構成からなる本実施形態の動作について説明する。図2は本実施形態における監視盤11の制御手順を示すフローチャート、図3は本実施形態の動作を説明するための軸受の温度変化を示す図である。
【0015】
図1において、汚泥投入口1aから伝熱胴1内に供給された脱水汚泥6は、主軸2とともに回転する分配リング3によって伝熱胴1の内壁に沿うように分散される。さらに脱水汚泥6は、回転する主軸2に取り付けられたブレード4によって伝熱胴1の内壁に押付けられ薄膜状に引延ばされる。そして、薄膜状となった脱水汚泥6は、脱水汚泥6の自重および次々に供給される新たな脱水汚泥6の圧力によって、少しずつ降下する。その際、脱水汚泥6は、伝熱胴1の外側の蒸気ジャケット5内に供給される加熱蒸気によって伝熱胴1を介して加熱され、その水分が蒸発して乾燥されて、乾燥汚泥10となる。この乾燥汚泥10は伝熱胴1の下端に設けられた汚泥排出口1bから排出される。他方、脱水汚泥6から蒸発した水分は、抽気ファン(図示せず)の吸引により伝熱胴1の上部に設けられた蒸発蒸気排出口12から外方へ排出される。
【0016】
長期間の使用により、軸受の玉やガイドが磨耗したり、グリースが劣化したりすることなどにより転がり抵抗が増加し、熱エネルギーとなり温度上昇する。このように軸受が交換時期に達した場合は、図3(a)のように、軸受8の温度が警報値(例えば50℃)を越えてから一定時間t1内(例えば3分以内)に規定値(例えば55℃)を越えるので、乾燥機を停止しアラームを表示する。
【0017】
一方、交換時期が寿命に達していない場合でも、処理場の汚泥性状によっては(例えば、ある地区で、いのししなべを集団で食べたような場合は)、負荷が重くなり、軸受8の温度が警報値(例えば50℃)を越えてから更に規定値(例えば55℃)を越えることもあるが、この場合は、図3(b)のように、軸受8の温度が警報値(例えば50℃)を越えてから一定時間t1(例えば3分)を越えた後に、規定値(例えば55℃)を越えることになる。そして、この場合は、ある時間を経過して、負荷の重い状態が解消されると、軸受8の温度は規定値および警報値以下に下がる。
【0018】
このように、長期間の使用による軸受の劣化の場合は、軸受温度が警報値(例えば50℃)を越える時点での、時間に対する温度上昇の変化率が大きく、一定時間(例えば3分)内に規定値(例えば55℃)を越えるが、処理場の汚泥性状により一時的に負荷が重くなった場合の軸受温度が警報値(例えば50℃)を越える時点での時間に対する温度上昇の変化率はあまり大きくないので、一定時間(例えば3分)内には規定値(例えば55℃)を越えることはない。そこで、監視盤11においては、この両者の状態を区別して判定し、長期間の使用による軸受の劣化の場合に、軸受8の交換時期と判定して乾燥機の動作を停止し、表示器17に軸受交換のアラームを表示する。
【0019】
この監視盤11の動作を、図2のフローチャートを参照して説明する。監視盤11は、温度計9により軸受温度を検出し(ステップS21)、検出した軸受温度を表示器17に表示する(ステップS22)とともに、検出した軸受温度が警報値(例えば50℃)を越えたかどうかを判定する(ステップS23)。警報値を越えた場合、軸受温度が警報値を越えていることを表示器17に表示するとともに、タイマーのカウントを開始する(ステップS24)。その後、規定値(例えば55℃)を越えたかどうかを判定し(ステップS25)、越えた場合は、タイマーのカウントを停止する(ステップS26)。そして、タイマーのカウント値が一定時間t1(例えば3分)以内であるかどうかを判定し(ステップS27)、一定時間t1以内である場合は、監視盤11は軸受8の交換時期であると判定して乾燥機の動作を停止し、軸受交換のアラームを表示器17に表示する(ステップS28)。一方、タイマーのカウント値が一定時間t1を越えている場合は、処理場の汚泥性状により一時的に負荷が重くなったもので、軸受交換の時期ではないと判定する。なお、軸受温度が警報値を越えた後、規定値に達することなく警報値以下になった場合は(ステップS29)、タイマーのカウント値をクリアーして、ステップS21に戻り軸受温度の検出を続行する。
【0020】
以上説明したように、本実施形態によれば、長期間の使用による軸受の劣化の場合と処理場の汚泥性状により一時的に負荷が重くなった場合とを区別して判定し、処理場の汚泥性状により一時的に負荷が重くなった場合は、軸受交換時期と判定せず、長期間の使用による軸受の劣化の場合に、軸受交換時期と判定することができ、最適な軸受交換時期を判定することができる。従って、処理場によりばらつきがある場合でも、従来のように軸受交換推奨時期として短い周期を基準とする必要がないので、従来に比べて軸受の交換周期が長くなるとともに、軸受交換忘れを防止することもできる。
【0021】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述の実施形態においては、軸受温度が警報値を越えた後、規定値に達することなく警報値以下になった場合については、軸受交換の時期の判定を行ってはいない。しかし、規定値に達しない場合でも、軸受温度が警報値を越えた状態が長時間にわたって継続する場合は、軸受が劣化している可能性が高い。そこで、この第2の実施形態では、軸受温度が警報値(例えば50℃)を越えた後、規定値(例えば55℃)に達しない場合でも、軸受温度が警報値を越えたときから、軸受温度が警報値以下になるまでの時間が、一定時間(例えば数時間)を越えている場合は、軸受の交換時期と判定して乾燥機の動作を停止し、表示器17に軸受交換のアラームを表示する。
【0022】
この場合の監視盤11の動作を、図4のフローチャートおよび図5の軸受の温度変化を示す図を参照して説明する。図4において、図2と同一部分または対応する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0023】
上述の第1の実施形態の場合と同様に、警報値(例えば50℃)を越えた場合、軸受温度が警報値を越えていることを表示器17に表示するとともに、タイマーのカウントを開始する(ステップS24)。その後、軸受温度の検出を続行し、規定値(例えば55℃)を越えているかどうかの判定で(ステップS25)、規定値を越えていない場合、軸受温度が警報値以下になったかどうかを判定する(ステップS41)。軸受温度が警報値以下になった場合は、タイマーのカウントを停止する(ステップS42)。そして、図6のように、タイマーのカウント値が一定時間t2(例えば数時間)を越えている場合は(ステップS43)、監視盤11は軸受の交換時期であると判定して乾燥機の動作を停止し、軸受交換のアラームを表示器17に表示する(ステップS28)。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、長期間の使用による軸受の劣化を適切に判定して、軸受交換時期と判定することができ、最適な軸受交換時期を判定することができる。
【0025】
(第3の実施形態)
第2の実施形態のように、軸受温度が警報値を越えたときから、軸受温度が警報値以下になるまでの時間が、一定時間(例えば数時間)を越えていることを判定する代わりに、この第3の実施形態においては、軸受温度が警報値を越えたときから、越えている状態が一定時間t2(例えば数時間)を越えていることを判定する。
【0026】
この場合の監視盤11の動作を、図6のフローチャートを参照して説明する。図6において、図2と同一部分または対応する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0027】
上述の第1の実施形態の場合と同様に、警報値(例えば50℃)を越えた場合、軸受温度が警報値を越えていることを表示器17に表示するとともに、タイマーのカウントを開始する(ステップS24)。そして、規定値(例えば55℃)を越えたかどうかの判定(ステップS25)で、規定値を越えていない場合、軸受温度が警報値以下になったかどうかを判定する(ステップS61)。軸受温度が警報値以下になった場合は、タイマーのカウント値をクリアーして、ステップS21に戻り軸受温度の検出を続行する。軸受温度が警報値以下になっていない場合は、タイマーのカウント値が一定時間t2(例えば数時間)を越えているかどうかを判定し(ステップS62)、カウント値が一定時間t2を越えている場合は、監視盤11は軸受の交換時期であると判定して乾燥機の動作を停止し、軸受交換のアラームを表示器17に表示する(ステップS28)。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、長期間の使用による軸受の劣化を適切に判定して、軸受交換時期と判定することができ、最適な軸受交換時期を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る遠心薄膜乾燥機の第1の実施形態の構成を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態における監視盤の制御手順を示すフローチャート。
【図3】本発明の第1の実施形態の動作を説明するための軸受の温度変化を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態における監視盤の制御手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の第2の実施形態の動作を説明するための軸受の温度変化を示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態における監視盤の制御手順を示すフローチャート。
【図7】従来例の構成を示す図。
【符号の説明】
【0030】
1…伝熱胴
1a…汚泥投入口
1b…汚泥排出口
2…主軸
3…分配リング
4…ブレード
5…蒸気ジャケット
5a…蒸気入口
5b…蒸気出口
6…脱水汚泥
7…駆動モーター
8…軸受
9…温度計
10…乾燥汚泥
11…監視盤
12…排出口
15…プーリー
16…ベルト
17…表示器
20…遠心薄膜乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸を回転させて汚泥を乾燥させる遠心薄膜乾燥機において、
主軸を支持する軸受の温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段により検出される前記軸受の温度が所定の第1の温度を越えてから、前記第1の温度より高い所定の第2の温度を越えるまでの時間を計測する計測手段と、
この計測手段により計測された前記時間が第1の所定時間以下である場合に、前記軸受の交換時期であると判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする遠心薄膜乾燥機。
【請求項2】
前記軸受の温度が前記第1の温度を越えてから、前記軸受の温度が前記第1の温度以下になるまでの時間を計測する計測手段と、
この計測手段により計測された前記時間が第2の所定時間を越えている場合に、前記軸受の交換時期であると判定する判定手段と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の遠心薄膜乾燥機。
【請求項3】
前記軸受の温度が前記第1の温度を越えてから、前記軸受の温度が前記第1の温度を越えている状態が第2の所定時間を越えて継続した場合に、前記軸受の交換時期であると判定する判定手段
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の遠心薄膜乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−188554(P2008−188554A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27600(P2007−27600)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】