説明

遠隔から非接触でビーム発射および信号検知を行う受動読取ヘッドを有する光学式エンコーダ

【課題】受動読取ヘッドを有する光学式エンコーダを提供する。
【解決手段】受動読取ヘッドは、接続ケーブルを有さず、ただの光学式読取ヘッドである。スケールに対する相対位置を示す測定位置情報は、遠隔随伴部に通じる見通し線によって遠隔的に読み取られる。遠隔随伴部は、光源と、検出部と、を備える。検出部は、遠隔レンズ部と、光検出機構部と、を有していてもよい。遠隔随伴部は、受動読取ヘッドから得られる像領域の輝度(明暗)を光学的に検知し、検知した輝度(明暗)に基づいて、測定位置を示す複数の信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密測定装置に関し、具体的には、光学式変位測定エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
直線運動、回転運動、角運動のセンシングに様々な光学式エンコーダが利用されている。光学式エンコーダは、概して、周期性を有するスケールを利用しており、これにより、スケールに対する読取ヘッドの相対変位がインクリメント方式で求められる。絶対位置測定を行う場合には、周期性スケールとともに、もしくは、周期性スケールに代えて、コード化されたスケールトラックを用いることもある。
【0003】
ここで、光学式エンコーダの電子回路部だけでもスケールから離れたところに配置できると望ましい。これにより、例えば、スケールに近接配置されるエンコーダ読取ヘッドを非常にコンパクトにしたり、信頼性を高めたりすることができる。スケールから電子回路部を離すための一つの方法は、光学式読取ヘッドをスケールに近接させて配置し、そして、読取ヘッドとリモート電子回路部もしくはホストシステムとの間でやりとりする光や光信号は光ファイバーを通して行うようにするというものである。
【0004】
光ファイバーを用いたシステムが米国特許4,733,071(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示のシステムは、コードスケールと、光学式センサヘッドと、を備え、光学式センサヘッドは、光ファイバー先端光発光部と、コード測定軸に沿って近接配置された二つの光ファイバー先端受光部と、を備える。しかし、この構成は、測定精度が比較的粗い。
米国特許6,906,315(特許文献2)と米国特許7,126,696(特許文献3)とには、回折格子スケールの変位を検出するファイバー光学式エンコーダ読取ヘッドシステムが開示されている。
【0005】
特許文献2においては、読取ヘッドの検出チャネルは、それぞれが位相格子マスクを有するファイバー光学式検出チャネルであり、ファイバー光学式エンコーダ読取ヘッドは、スケール格子から得られるセルフイメージの変位を検出できるように構成されている。
特許文献3においては、読取ヘッドの検出チャネルは、それぞれが位相格子マスクを有するファイバー光学式検出チャネルであり、ファイバー光学式エンコーダ読取ヘッドは、スケール格子によって生じる干渉縞の変位を検出できるように構成されている。
しかしながら、これらの読取ヘッドシステムにおいては、読取ヘッドに必要とされるケーブルが比較的高価であり、また、伝送に限界があり、結果として、検出可能領域が狭くなる。
【0006】
電子回路部や光ファイバーをスケールに近接配置することを必要とせずにスケールの変位を検出するため、スケールの遠隔撮像もしくは望遠撮像が利用されることもある。
もしくは、米国特許4,899,048(特許文献4)に開示のように、離れた場所にあるスケールの変位を検出するために、集光レーザビームが用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許4,733,071
【特許文献2】米国特許6,906,315
【特許文献3】米国特許7,126,696
【特許文献4】米国特許4,899,048
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光源および撮像システムとスケールとの距離、距離が増加したときの光学的もしくは測定的分解能、光学的配置の困難さと信頼性、などのトレードオフ関係により、実際の装置に適用するには実用的ではないという問題がある。
スケールに近接配置された伝送ケーブルを必要とせずに、光学式エンコーダスケールの変位を離れた位置から高い分解能で検出できる改良されたシステムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
受動読取ヘッドを有する光学式エンコーダシステムを提供する。
本発明では、受動読取ヘッドは接続ケーブルを有しておらず、ただの光学的読取ヘッドであり、スケールに対する相対的測定位置は、遠隔随伴部に通じる見通し線による光学的伝送によって遠隔的に読み取られる。
【0010】
本発明では、受動読取ヘッドは、スケール照明パス部と、測定光パス部と、を有し、遠隔随伴部は、光源と、検出部と、を有するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明では、遠隔随伴部の検出部は、遠隔レンズ部と、光検出機構部と、を備えていてもよい。
【0012】
遠隔随伴部は、受動読取ヘッドから離隔して設けられており(すなわち、遠隔随伴部と受光読取ヘッドとは異なるハウジングに収納されている)、受動読取ヘッドに至る第1パスに沿って光源光を発射し、受動読取ヘッドは、前記光源光を受光して、スケール照明パス部からのスケール照明光をスケール格子に射出するようになっていてもよい。
【0013】
スケール格子は、スケール照明光を受光して、受動読取ヘッドに干渉光を射出し、干渉光の位相空間は、スケール格子に対する受動読取ヘッドの相対的測定位置に依存するようになっていてもよい。
【0014】
また、本発明では、受動読取ヘッドは、さらに、測定光パス部がスケール格子からの干渉光を受光して、複数の輝度(明暗)領域を有する測定光を遠隔レンズに至る第2パスに沿って射出するようになっていてもよい。
【0015】
測定光パス部は、複数の位相パス(例えば空間フィルタ)を有する位相信号部を有し、この位相パスに干渉光が入射して対応する各輝度(明暗)領域が生成されるようにしてもよい。
【0016】
また、位相パスは、対応する位相オフセットを有し、各輝度(明暗)領域の輝度(明暗)が、干渉光の空間位相と、対応する位相パスの位相オフセットと、相関するようになっていてもよい。
【0017】
遠隔レンズ部は、測定光が入射して、各輝度(明暗)領域の像を光検出機構部に提供するようになっている。
【0018】
また、遠隔レンズ部は、望ましい像の不鮮明を提供するようになっており、これによって、空間的な平均や不鮮明パターンを助長するようにし、光検出機構部において撮像された輝度(明暗)領域がより均質になるようにしてもよい。
【0019】
これは、厳密過ぎず、もしくはロバスト的で、もしくは、測定光に残存してしまった干渉縞のために生じてしまうエラーを減じたり、排除したりする構成配置を作るにあたって利点となりうる。
【0020】
光検出機構部は、撮像される複数の各輝度(明暗)領域の輝度(明暗)を検知し、検知した輝度(明暗)に基づいて測定位置を示す複数の信号を出力するようになっていてもよい。
【0021】
位相信号(例えば、干渉縞パターン)は、巨視的な輝度(明暗)領域に変換され、そして、巨視的な輝度(明暗)領域として遠隔随伴部によって撮像されるようになっていてもよい。
これによって、検出信号は、受動読取ヘッドから遠隔随伴部までの間に受ける環境変動(例えば乱流)に対してロバスト性を有する。
【0022】
これに対し、長い距離に渡ってコヒーレント光による干渉パターンを伝え、この干渉パターンから位置情報を読み出すようなシステム構成とすると、環境変動(乱流)によって生じる干渉縞パターンの乱れに対して鋭敏に反応してしまうことになる。
【0023】
また、本発明では、位相信号部は、光遮蔽要素を有する空間フィルタを備え、光遮蔽要素は周期的パターンで配置され、このパターンは位相フィルタピッチを有しており、位相フィルタピッチは、測定光を空間的に濾過するようになっていてもよい。
【0024】
また、本発明では、空間フィルタ部の光遮蔽要素の周期パターンの少なくとも一部は、測定光の周期パターンに対して循環的であってもよく、またあるいは、測定軸に平行な線に対して対称な矢羽根模様になっていてもよい。
【0025】
受動読取ヘッドは、空間フィルタが設けられた基板を有し、スケール照明光は基板を通過するようになっていてもよい。
【0026】
また、本発明では、スケール照明パス部は(例えば基板に設けられた)光源格子を有し、この光源格子に光源光が入射し、回折次数を有するスケール照明光を射出するようになっていてもよい。
【0027】
また、本発明では、位相信号部は位相パスを含み、位相パスはコンバイナ回折格子を有しており、コンバイナ回折格子は、スケール格子からの干渉光が入射し、様々な次数で回折された干渉光を互いに平行なパスで出力するようになっており、これら平行な光線が干渉することで各位相パスからの各輝度(明暗)領域が提供されるようになっていてもよい。
【0028】
また、本発明では、測定光パス部は、位相信号部からの光を受けて、測定光を射出する分散要素を備えていてもよい。
【0029】
また、本発明では、位相信号部からの光を受けて、測定光を射出する蛍光体粒子の層を備えていてもよい。
【0030】
また、本発明では、受動読取ヘッドとスケール格子との間のギャップよりも第2パスの方が長い(例えば少なくも5倍より長い)。
【0031】
また、本発明では、第2パスは受動読取ヘッドを囲む筐体に付随した透明部材を有し、これによって、測定動作中に機構的な安定性を実現しつつ、受動読取ヘッドに対する遠隔随伴部の望ましい距離を可能にするようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】受動読取ヘッドと遠隔随伴部とを備える光学式エンコーダを示す図。
【図2A】受動読取ヘッドが測定光パス部の第1実施形態を有し、入射光と射出光とがX軸方向で離間するように入射パスと射出パスとを案内するビームスプリッタが設けられている様子を示す図。
【図2B】は、受動読取ヘッドの基板上にある部材を図2A中の矢印線Aで見たときの図。
【図3A】受動読取ヘッドが測定光パス部の第2実施形態を有し、入射光のパスと射出光のパスとがY軸方向で離間している様子を示す図。
【図3B】光学式エンコーダをX軸に沿ってみたときの側面図。
【図3C】受動読取ヘッドの基板上の諸要素を示す図であり、図3AのAA線断面図。
【図3D】受動読取ヘッドの基板上の諸要素を示す図であり、図3BのBB線断面図。
【図4】斜め線の光遮蔽要素を受動読取ヘッドの位相信号部に使用した例を示す図。
【図5A】受動読取ヘッドが測定光パス部の第1実施形態を有し、入射光のパスと射出光のパスとがY軸方向で離間している様子を示す図。
【図5B】受動読取ヘッドの基板上の諸要素を示す図であり、図5AのDD線断面図。
【図6】受動読取ヘッドに隣接して偏向器要素が設けられ、入射光のパスと射出光のパスとが測定軸に対してほぼ平行である様子を示す図。
【図7】図6の遠隔随伴部において動的トラッキングシステムを適用した図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
図1は、光学式エンコーダ100を示す図であり、光学式エンコーダ100は受動読取ヘッド110と、遠隔随伴部180と、スケール格子80と、を備える。
以下に詳細に後述するように、受動読取ヘッド110は、接続ケーブルを必要とせず、ただの光学読取ヘッドである。
スケール格子80に対する相対変位情報は、見通し線(line of sight)による光伝送によって、遠隔随伴部180により遠隔的に読まれる。
【0034】
図1に示されるように、受動読取ヘッド110はスケール格子80に近接配置されており、スケール格子80は、X方向測定軸に沿った周期格子パターン85を有する。受動読取ヘッド110とスケール格子80とは、X方向測定軸に沿って相対移動可能である。
【0035】
一実施形態において、光学式エンコーダ100は、受動読取ヘッド110を囲む筐体ENCL(例えば真空チャンバー)を備えてもよい。筐体ENCLは、透明窓TWを有する。
従来のエンコーダ読取ヘッド(図1中の符号10のブロック)と対比すると、従来のエンコーダ読取ヘッドは、ホストシステムと電力や制御信号をやりとりするためにケーブル(図1の10W)を必要としたが、受動読取ヘッド110はケーブルを必要としない。
【0036】
したがって、受動読取ヘッド110を有する光学式エンコーダ100であれば、筐体ENCLに配線通過の手段を講じる必要がなく、これにより、装置構成の複雑さやコストを無くすことができる。
ただ、この後理解されるように、筐体ENCL自体も必要ないのであり、光学式エンコーダ100が極めて使いやすくなる。
【0037】
ハウジングHSRが遠隔随伴部180に設けられ、受動読取ヘッド110と遠隔随伴部180とはそれぞれ別々のハウジングに収納されている。遠隔随伴部180と受動読取ヘッド110とは、測定作業中に互いに機構的に安定した配置関係になるように設けられている。すなわち、両者は、光源光30と測定光50とを安定してやりとりできるように相対的に固定されるようにフレーム要素等に組付けられている。
【0038】
遠隔随伴部180は受動読取ヘッド110から離隔して(すなわち別のハウジング内に)配置されており、遠隔随伴部180は、光源181と検出部182とを有する。遠隔随伴部180は、ワイヤ180Wによってホスト等と接続されてもよい。
【0039】
もしくは、遠隔随伴部180はワイヤレス電源や信号処理部を内蔵し、ホストからワイヤレスで動作できるようになっていてもよく、独立したディスプレイ等を備えていてもよい。
測定作業中には、光源181(例えばレーザーダイオード)が第1パスに沿って光源光30を受動読取ヘッド110に向けて発射する。スケール格子80は受動読取ヘッド110からの光を受光し、位置に依存した干渉光を受動読取ヘッド110に返す。受動読取ヘッド110は、光学的に干渉光を処理し、測定光50を第2パスに沿って遠隔随伴部180の検出部182に射出する。筐体ENCLを備える場合には、透明窓TWを設けておき、光源光30と測定光50とはこの透明窓TWを通るようにする。
【0040】
後述するように、遠隔随伴部180は、受動読取ヘッド110から得られる測定光50の明暗を光学的に検出し、この検出した明暗に基づいた測定位置を示す複数の信号を出力するように構成されている。
【0041】
光学式エンコーダ100が従来の読取ヘッド10に対して利点を有することが理解されるであろう。特に、ケーブル(電気信号ケーブルもしくは光ファイバーあるいはその両方)10Wの有無に関して光学式エンコーダ100は利点を有する。すなわち、従来の読取ヘッド110に必要なケーブル10Wを設けるには、相当なコストが掛かり(読取ヘッドのコストの50%)、配線が困難であり(例えば、電子回路のための真空筐体の場合には相当のコストが掛かる)、疲労や耐用年数の問題があったり、データレートを制限したりする(特にワイヤケーブルの場合)。
【0042】
これに対して、光学式エンコーダ100においては、受動読取ヘッド110は接続ケーブルを持たず(ただし、例えば、何らかのワイヤ180Wは遠隔随伴部180に取り付けられる)、ただ光学的部品からなる装置であり、情報の読み出しは見通し線(line−of−sight)による遠隔随伴部180への光伝送で行われ、これにより、受動読取ヘッド110は従来の読取ヘッド110に比べてよりコンパクトになるのである。
その他の利点やより詳しい実装方法などは、図2を参照して後述する。
【0043】
図1に表される本発明によれば、簡便かつ安価で、高分解能に、離間した位置からもしくは筐体を通して、スケールの動きをモニタできるということが理解されるであろう。
従来技術と対比すると、スケールと遠隔随伴部とが離れているからといって測定分解能を落とす必要はない(0.1μm、0.01μm、さらにもっとよい測定分解能が得られる。)
【0044】
付加的な利点としては、受動読取ヘッドがかなりコンパクトになる、ということである。(例えば干渉計を使用するようなシステムと比べた場合)、スケールをモニタするようなシステムの付加的な利点としては、スケールのコストが安く、既知の測定精度が得られ、そして、組み立てや使用に専門的技術をそれほど要しないという点である。
【0045】
図2Aは、受動読取ヘッドを有する光学式エンコーダ200をY軸に沿った方向から見た側面図であり、受動読取ヘッド(110)は、測定光パス部150(150')の第1実施形態を含んでおり、図1の光学式エンコーダ100の一実施形態と見做し得る。
光学式エンコーダ200において、光の入出力パスは、X軸に沿う方向において離れており、遠隔随伴部180は入出力光パスを案内するビームスプリッタ183を有する。
図2の構成は、例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0046】
以下、図2A、図2Bを参照して、分離した二つの測定光パスを説明する。
なお、第2測定光パスは、符号にプライム記号(ダッシュ記号)を付する。
測定作業には実質的には一つの測定光パスが必要とされ、したがって、第2測定光は削除し得るということが理解されるであろう。
【0047】
しかしながら、冗長的な光パスを持つことにより、信号強度が改善され、適切な信号処理で二つのパスの信号を合わせることにより、同相エラーを排斥することも可能になる。
【0048】
図2Aに示されるように、受動読取ヘッド110は、スケール照明パス部120と、測定光パス部150、150'と、を有し、一方、遠隔随伴部180は、光源181(例えばレーザーダイオード)と、検出部182と、ビームスプリッタ183と、を有する。
検出部182は、遠隔レンズ部184と、光検出機構部188と、を有する。
遠隔随伴部180は光源光30を射出する。
光源光30は、光源181から射出された後、平行光となり、ビームスプリッタ183を介して第1パスを通り、受動読取ヘッド110に至る。
既知の原理を用いることにより、光源181の光学系は、照明ビームの望ましい断面サイズと形状を与えるであろう。
【0049】
受動読取ヘッド110は、光源光30が入力されるようになっており、スケール照明パス部120からのスケール照明光35をスケール格子80に射出するようになっている。この点に関し、受動読取ヘッド110の詳細構成が図2Bに示されている。すなわち、図2Aは、光学式エンコーダ100のY軸方向に見た側面図であり、図2Bは、受動読取ヘッド110の基板190上にある部材を図2A中の矢印線Aで見たときの図である(すなわちZ軸方向から見た図である。)
【0050】
図2Bにあるように、スケール照明パス部120において、光源光30は照明スプリッタ123に達する。
照明スプリッタ123は、基板190上に光源格子として配されており、照明格子ピッチIGPは、スケール格子80に対し、複数の回折次数のスケール光35(35−0はゼロ次、35+Pはプラス一次、35−Mはマイナス一次)を提供するようになっている。もしくは、光源格子に代えて、同様の作用をもつ屈折素子を用いてもよい。
【0051】
スケール格子80は、スケール照明光35を受光し、干渉光40、40'を受動読取ヘッド110に出力する。
干渉光(40、40')の空間位相は、スケール格子80に対する受動読取ヘッド110の相対測定位置に依存する。
図2A、Bにあるように、複数のビームからなるスケール照明光35(35−0はゼロ次、35+Pはプラス一次、35−Mはマイナス一次)はスケール格子80で回折され、複数のビームからなる干渉光40、40'を生じさせ(たとえば、40−0は回折された35−0ビームから生じ、40-Pは回折された35-Pビームから生じ、40'−0は回折された35−0ビームから生じ、40'-Mは回折された35-Mビームから生じる。)、これらが干渉する(この実施形態では、干渉縞41、41'を生成する。)。
【0052】
つまり、受動読取ヘッド110において、干渉光40−0、40−Pにより干渉縞41ができ、干渉光40'−0、40'−Mにより干渉縞41'が生じる。照明格子ピッチIGP(もしくは、もし屈折素子を使用する場合には、その表面の角度)が適切に選択されることにより、望ましい相対角度をもつビームが生じ、スケール格子80(スケールピッチSP)でそれら光が回折されたときに、それら回折光が望ましい干渉縞ピッチを持つようにする。
【0053】
測定光パス部150、150'は干渉縞を受けるものであり、位相信号部160、160'(例えば空間フィルタ)を有する。
位相信号部160、160'は、干渉縞を空間的に濾過し、出力光を生成する。(詳しくは後述する。)位相信号部160、160'は様々に変更可能であることは理解できるであろう。
図2Bで示されるように、位相信号部160、160'は、複数の位相パス161X、161'X(161A〜161D、161'A〜161'Dのそれぞれは対応する周期的空間フィルタ165−0〜165−270、165'−0〜165'−270を有する)を有する。
複数の位相パス161X、161'Xは、干渉光40、40’が入射され、空間的に濾過した光を出力し、これにより、それぞれ対応する輝度(明暗)領域51X、51'Xを測定光50、50’に作り出す(例えば、51A〜51D、51'A〜51'D)。
【0054】
位相パス161X、161'Xは、対応する位相オフセットを有し、入力された干渉光40、40'の空間位相と対応する位相パスの位相オフセットとに関連する輝度(明暗)領域を生じさせるように構成されている。
【0055】
空間フィルタ165X、165'Xは、基板190に固定され、光遮蔽要素を有している。(スケール照明光35は、基板190を透過する。)
光遮蔽要素は、周期的パターンで配置され、このパターンは位相フィルタピッチPFPを有しており、位相フィルタピッチPFPは、干渉光40、40'を空間濾過して、(光学的に)検知された輝度領域51X、51'Xを測定光50、50'に生じさせるようにするように実現できる。
位相フィルタピッチPFPは、干渉縞のピッチと同じであってもよい。図4を参照して後述するように、空間フィルタ部の光遮蔽要素の周期パターンの少なくとも一部は、測定光の周期パターンに対して循環的であってもよい。
【0056】
図2Bに示されるように、位相信号部160X、160'X(空間フィルタ部165−0,165−90,165−180,165−270、165'−0,165'−90,165'−180,165'−270)は、90度ずつずれた関係で、それぞれ位相パス161X、161X(位相パス161A,161B,161C,161D、161'A,161'B,161'C,161'D)に対応している。
対応する周期的空間フィルタ165X、165'Xを有する位相パス161X、161'Xは、したがって、スケール格子80からの干渉光40、40'が入射し、各フィルタの位相オフセット(末尾に付加した空間位相オフセット0、90、180、270度)で空間濾過された光を射出する。
【0057】
特に、空間フィルタ部165X、165'Xで空間的に濾過されて射出された光は、空間的に濾過されたパターンの光を生成する。
この空間的に濾過されたパターンの光というのは、平均化された輝度を有するところ、この平均化された輝度というのは、干渉光40、40'の空間位相に対して空間フィルタ部が有する相対的な位相オフセットに依存するのであり、そして、干渉光40、40'はスケール格子80の位置に依存しているわけである。
【0058】
様々な実施形態において、次のような条件が満たされたときに、部品の位置合わせや像の拡大要求が容易に満たされる。
すなわち、各空間濾過されたパターンの光が、測定光分散要素(拡散器や蛍光体粒子の層)170、170'を通して射出または撮像され、対応する輝度(明暗)領域51X、51’Xを生じさせるようになっている。
そして、この輝度(明暗)領域51X、51'Xが、様々な角度から撮像され、かつ、入力の平均輝度に対応して比較的揃った輝度(明暗)分布を有するようになっている。
このようなとき、アラインメントや像の拡大の要求が容易に満たされる。
様々な輝度(明暗)領域51X、51'Xは、出力測定光50、50'を生成し、出力測定光50、50'は、検知され、処理され、次に説明するように、差動二相信号を生成する。
【0059】
説明が分かりやすいように、検出部182における光検出機構部188による検知動作の側からみたときの機能上の位置合わせを示すため、典型的な輝度(明暗)領域51X、51'Xの一例と、点線で表した各光検出領域188X(すなわち、188Aから188D)、188'Xと、を空間フィルタ部165X、165'Xと、位相パス161X、161'Xと、に重ねて、図2Bに示す。
すなわち、受動読取ヘッド110に対する遠隔随伴部180の相対位置は、対応する各輝度(明暗)領域51X、51'Xからの測定光が光検出領域188X、188X'に入射するように、調整されている。
【0060】
したがって、各光検出領域188X、188'Xは輝度(明暗)信号を受光するところ、これら各輝度(明暗)信号は、スケール格子80位置、および、位相信号部160X、160'X(すなわち、空間フィルタ部165X、165'X)の空間位相に関連しており、つまり、スケール格子80位置および位相信号部160X、160'Xの空間位相によって各光検出領域188X、188'Xが受光する測定光が決まる。
【0061】
遠隔レンズ部184は、上述したように、測定光50、50'が入射し、それぞれの輝度(明暗)領域の像を光検出機構部188に提供するように配置されている。
一例として、遠隔レンズ部184は、位相信号部160、160'から出たときにほぼ同一面になっているものを光検出機構部188(すなわち測定光分散要素170、170'の射出面に等価的といってもよい)に結像させる。前に説明したように、光検出機構部188は、複数の光検出188X、188'Xを備え、撮像された各輝度(明暗)領域51X、51'Xの明暗度を検知し、検知した輝度(明暗度)に基づく複数の信号60を出力して、測定位置を示すように構成されている。
【0062】
例えば、遠隔レンズ部184は、望ましい程度の不鮮明さをもたらし、空間的平均や不鮮明パターンを作るようし、これによって、光検出機構部188において撮像された各輝度(明暗)領域がより均等になるように構成されてもよい。
これは、厳密過ぎず、もしくはロバスト的で、もしくは、測定光に残存してしまった干渉縞のために生じてしまうエラーを減じたり、排除したりする構成配置を作るにあたって利点となりうる。
【0063】
測定光分散要素170は、主として、測定光50、50'を散乱もしくは分散させるために使用され、これにより、測定光50、50'が複数のあらゆる結像パスを通って検出部182で撮像されるようになるということが理解されるであろう。
(すなわち、非常に厳密な配置を要求するような特定のひとつの光線パスだけの場合とは対照的である。)
すなわち、分散要素170が無いと、位相信号部160、160'を通過する光線は当初の真っ直ぐなパスを通り続けて、検出部182に届かない恐れがあり、特に、10もしくは100mmも逸れてしまうような場合には、その配置調整は困難さを増す。
【0064】
測定光分散要素170は、狭いが十分な角度幅にわたって測定光を分散させる拡散器を備えていてもよい。
分散要素170は、環境的な揺らぎの問題(例えば乱流)に対処するのにも有効である。例えば、受動読取ヘッド110の厳密な配置の有無に関わらず、遠隔随伴部180においてどの角度からでも縞をより明瞭にするようにする。あるいは、測定光分散要素170による分散に代えて、レンズ配列群が利用でき、このとき、検出部182が様々な角度からレンズ配置群を見られるようにすれば、測定光を受光することができる。
【0065】
しかしながら、部品配置の安定性や遠隔随伴部の離間距離に応じて、測定光分散要素170は削除され得る。また、分散要素170は、入射して来る光の空間的平均化やぼやけパターンを促し、これによって、撮像される輝度(明暗)領域がより一層均質になる。
【0066】
上述のように、測定光パス部150、150'は、スケール格子80からの干渉光40、40'を受光し、遠隔レンズ部184に至る第2(あるいは第3)パスに沿って測定光50、50'を出力する。遠隔随伴部180が離間して配置されていることにより、第2(あるいは第3)パスは距離D2を有することがわかるであろう。
ここに、距離D2は、受動読取ヘッド110とスケール格子80との間の距離D1や、受動読取ヘッド110自身のハウジングの最大寸法よりも十分に長い。(たとえば、少なくとも5倍、あるときは100倍や1000倍長い。)
【0067】
光学式エンコーダ読取ヘッドを自ら含んでしまっていた従来技術に用いられた光学経路および光学配置では、受動読取ヘッド110と遠隔随伴部180との間にここで考えているような十分な距離D2を提供するのに十分ではない。
【0068】
受動読取ヘッド110と遠隔随伴部180との間の距離D2に関わらず、光学式エンコーダ200は、内蔵型干渉計タイプの光学式エンコーダ読取ヘッドと同等の測定位置分解能を有することがわかるであろう。(例えば、数マイクロメートルオーダーであり、さらには、補間によって1−10nmに達する)。その理由は、上記受動読取ヘッド110は、干渉計タイプ読取ヘッドの変形であるからである。
すなわち、空間フィルタ部165X、165'Xからの微細な光パターンを対応する平均化輝度(明暗度)に変換し、これらが、一様に分散されて比較的広い輝度(明暗度)領域(数100マイクロメートルもしくは数ミリメートルオーダー)になり、さらにこれらは、比較的長い距離D2によって安定して撮像される。
【0069】
したがって、本発明は、単純に離間したところからスケール変位を撮像しただけのような場合に生じる分解能の限界を乗り越えることができるのである。
【0070】
加えて、位相信号(例えば、干渉縞パターン)は、巨視的な輝度(明暗)領域に変換され、そして、巨視的な輝度(明暗)領域として遠隔随伴部180によって撮像される。これによって、検出信号は、受動読取ヘッド110から遠隔随伴部180までの間に受ける環境変動(例えば乱流)に対してロバスト性を有する。
これに対し、長い距離に渡ってコヒーレント光による干渉パターンを伝え、この干渉パターンから位置情報を読み出すようなシステム構成とすると、環境変動(乱流)によって生じる干渉縞パターンの乱れに対して鋭敏に反応してしまうことになる。
【0071】
図2Aに示したビームスプリッタ183および検出部182の構成は、Z軸に関して90度回転させてもよいことは容易に理解されるであろう。
【0072】
図3Aは、光学式エンコーダ300をY軸に沿ってみたときの側面図である。
図3Bは、光学式エンコーダ300をX軸に沿ってみたときの側面図である。
光学式エンコーダ300は、受動読取ヘッド310を有し、受動読取ヘッド310は、測定光パス部350、350'の第2実施形態を含んでいる。
光学式エンコーダ200と比べると、光学式エンコーダ300において、入射の光学経路と出射の光学経路とがY軸方向で離間している。
【0073】
受動読取ヘッド310はビーム偏向器322を有しており、これにより、入射と出射の光学経路がY軸方向で離れるようになっている。
なお、図3は、例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
光学式エンコーダ300は、光学式エンコーダ200と同様の各種の要素と動作原理を含む。
図3において、符号3XXは、図2の2XXに対応しており、容易に理解できるであろうから、詳細な説明は省略する。
【0074】
図2の光学式エンコーダ200との違いの一つとして、光学式エンコーダ300はビーム案内要素322(例えば、偏向器またはプリズムなど)を有している。
ビーム案内要素322は、スケール格子に近いところで光学経路がXY平面に平行にならないように設けられている。(図2の光学式エンコーダ200では、スケール格子に近いところで光学経路がXY平面に平行になっていた。)
【0075】
すなわち、図3Bに示されるように、光源光30がビーム案内要素322に達すると、ビーム案内要素322はこの光30を(YZ面内で)傾斜したパスに沿ってスケール格子80に向けて案内する。そして、スケール格子80は、この光を(YZ面内で)傾斜したパスに沿って反射させ、測定光50、50'が生じる。このとき、測定光50、50'は、Y軸方向において、光源光30から離間している。
【0076】
図2中の対応要素と同じように、受動読取ヘッド310は、スケール照明パス部320と、測定光パス部350、350'と、を備え、遠隔随伴部380は、光源381と、検出部382と、を備える。
光学式エンコーダ300では、ビームスプリッタ(例えば図2のビームスプリッタ183)を必要としない。
この点、ビーム案内要素322が、光源光30と測定光50、50'とをY軸に沿って離間させるのに使用されている。
検出部382は、遠隔レンズ部384と、光検出機構部388と、を有する。
【0077】
遠隔随伴部380は、光源光30を出力し、光源光30は光源381から平行光となって第1パスに沿って受動読取ヘッド310に至る。光源381の光学構成は、既知の原理によって、ビーム断面を望ましい径および形状にするようにできる。
【0078】
受動読取ヘッド310は、ビーム案内要素322を介して光源光30が入射し、スケール照明光35をYZ平面に沿った入射角でスケール格子80に入るように射出する。これに関し、受動読取ヘッド310の諸要素を図3C、図3Dに示してある。すなわち、図3Aは光学式エンコーダ300をY軸方向から見た側面図であり、図3Cは、受動読取ヘッド310の基板390上の諸要素を示す図であり、図3AのAA線断面図である(すなわち、Z方向から見た図である。)
【0079】
加えて、図3Bは、光学式エンコーダ300をX軸方向から見た側面図であり、図3Dは、受動読取ヘッド310の基板390上の諸要素を示す図であり、図3BのBB線断面図である(すなわち、Z軸方向から見た図である。)図3Aに示すように、スケール照明パス部320において、光源光30は照明スプリッタ323に達する。
照明スプリッタ323は、基板390上に配置された光源格子となっており、照明格子ピッチIGPは、様々な次数のスケール光35を生じさせ、これがスケール格子80に入射する。
(たとえば、35−0は0次であり、35-Pはプラス1次であり、35-Mはマイナス1次である。)
もしくは、光源格子に代えて、同様の働きをする屈折素子を使用してもよい。
【0080】
スケール格子80は、スケール照明光35を受光して、YZ平面内の角度で受動読取ヘッド310に達するように干渉光40、40'を反射する。
このとき、干渉光の空間位相は、スケール格子に対する受動読取ヘッド310の相対測定位置に依存する。
図3Aに詳細に示すように、複数のビームからなるスケール照明光35(たとえば、35−0は0次であり、35-Pはプラス1次であり、35-Mはマイナス1次である)がスケール格子80で回折される。
これにより、複数のビームからなる干渉光40、40'を生じさせ(たとえば、40−0は回折された35−0ビームから生じ、40-Pは回折された35-Pビームから生じ、40'−0は回折された35−0ビームから生じ、40’-Mは回折された35-Mビームから生じる)、これらが干渉する(この実施形態では、干渉縞41、41'を生成する。)
【0081】
測定光パス部350、350'は干渉縞40、40'を受けるものであり、位相信号部360、360'(例えば空間フィルタ)を有する。位相信号部360、360'は、前記と同じように、干渉縞を空間的に濾過し、空間的に濾過された光を生成する。位相信号部360、360'は様々に変更可能であることは理解できるであろう。
図3Cに示されるように、位相信号部360、360'は、複数の位相パス361X、361'X(それぞれは対応する周期的空間フィルタ365−0〜365−270、365'−0〜365'−270を有する)を有する。
複数の位相パス361X、361'Xは、干渉光40、40'が入射され、空間的に濾過した光を出力し、これにより、それぞれ対応する輝度(明暗)領域51X、51'Xを測定光50、50'に作り出す。
【0082】
輝度(明暗)領域は、入力された干渉光40、40'の空間位相と、対応する位相パスの位相オフセットと、に関連する平均化された輝度(明暗度)を有する。
空間フィルタ365X、365'Xは、基板390に固定的に設けられ、光遮蔽要素を有している。
光遮蔽要素は、位相フィルタピッチPFPで配置され、位相フィルタピッチPFPは、干渉光40、40'を空間濾過して、(光学的に)検知された輝度(明暗)領域51X、51'Xを測定光50、50'に生じさせるようにするように実現できる。(前記の通りである。)
【0083】
特に、各空間フィルタ部365X、365'Xで空間的に濾過された射出光は、空間的に濾過されたパターンの光を生成する。
この空間的に濾過されたパターンの光というのは、平均化された輝度を有するところ、この平均化された輝度というのは、干渉光40、40'の空間位相に対して空間フィルタ部365X、365X'が有する相対的な位相オフセットに依存するのであり、そして、干渉光40、40'はスケール格子80の位置に依存しているわけである。
【0084】
各空間濾過されたパターンの光が、測定光分散要素370、370'を通して射出または撮像され、対応する輝度(明暗)領域51X、51'Xを生じさせるようになっている。
そして、この輝度(明暗)領域51X、51'Xが、様々な角度から撮像され、かつ、入力の平均輝度に対応して比較的揃った輝度(明暗)分布を有するようになっている。
様々な輝度(明暗)領域51X、51'Xは、出力測定光50、50'を生成し、出力測定光50、50'は、検知され、処理され、次に説明するように、位置を示す信号を生成する。
【0085】
説明が分かりやすいように、検出部382における光検出機構部388による検知動作の側からみたときの機能上の位置合わせを示すため、典型的な輝度(明暗)領域51X、51'Xの一例と、点線で表した各光検出領域388X、388'Xと、を空間フィルタ部365X、365'Xと、位相パス361X、361'Xと、に重ねて、図3C、図Dに示す。
すなわち、受動読取ヘッド310に対する遠隔随伴部380の相対位置は、対応する各輝度(明暗)領域51X、51'Xからの測定光が光検出領域388X、388X'に入射するように、調整されている。
【0086】
したがって、各光検出領域388X、388'Xは輝度(明暗)信号を受光するところ、これら各輝度(明暗)信号は、スケール格子80位置、および、位相信号部360X、360'X(すなわち、空間フィルタ部365X、365'X)の空間位相に関連しており、つまり、スケール格子80位置および位相信号部360X、360'X(例えば、空間フィルタ部365X、365'X)の空間位相によって各光検出領域388X、388'Xが受光する測定光が決まる。
【0087】
遠隔レンズ部384は、上述したように、測定光50、50'が入射し、それぞれの輝度(明暗)領域の像を光検出機構部388に提供するように配置されている。
一例として、遠隔レンズ部384は、位相信号部360、360'から出たときにほぼ同一面になっているものを光検出機構部388(すなわち測定光分散要素370、370'の射出面に等価的といってもよい)に結像させる。
【0088】
前に説明したように、光検出機構部388は、複数の光検出388X、388'Xを備え、撮像された各輝度(明暗)領域51X、51'Xの明暗度を検知し、検知した輝度(明暗度)に基づく複数の信号60を出力して、測定位置を示すように構成されている。
例えば、遠隔レンズ部384は、望ましい程度の不鮮明さをもたらし、空間的平均や不鮮明パターンを作るようし、これによって、光検出機構部388において撮像された各輝度(明暗)領域がより均等になるように構成されてもよい。
【0089】
前記のように、測定光分散要素370は、主として、測定光50、50'を散乱もしくは分散させるために使用され、これにより、測定光50、50'が複数のあらゆる結像パスを通って検出部382で撮像されるようになる。
すなわち、分散要素370が無いと、位相信号部360、360'を通過する光線は当初の真っ直ぐなパスを通り続けて、検出部382に届かない恐れがあり、特に、10もしくは100mmも逸れてしまうような場合には、その配置調整は困難さを増す。
【0090】
あるいは、測定光分散要素370による分散に代えて、レンズ配列群が利用でき、このとき、検出部382が様々な角度からレンズ配置群を見られるようにすれば、測定光を受光することができる。
【0091】
上述のように、測定光パス部350、350'は、スケール格子80からの干渉光40、40'を受光し、遠隔レンズ部384に至る第2(あるいは第3)パスに沿って測定光50、50'を出力する。
遠隔随伴部380が離間して配置されていることにより、第2(あるいは第3)パスは距離D2を有することがわかるであろう。
ここに、距離D2は、受動読取ヘッド310とスケール格子80との間の距離D1や、受動読取ヘッド310内の光学距離よりも十分に長い。(例えば、少なくとも5倍長い。)
【0092】
図4は、基板490の一実施形態であり、受動読取ヘッドの位相信号部に用いられる。(これは図3の基板390に代用できる。)
基板490上の要素は、図3の基板390上の要素と同様の構造と作用をもつ。
【0093】
図4において、符号4XXは、図3の3XXに対応しており、容易に理解できるであろうから、詳細な説明は省略する。
ここで、位相信号部460、460'は、斜め線である光遮蔽要素を含んでいてもよく、これら斜め線光遮蔽要素は、空間フィルタ465−0から465−270、465'−0から465'−270を与える。これら斜め線の光遮蔽要素は、図3の位相信号部360、360'に設けられているような"斜め線ではない光遮蔽要素"、つまり離散的な位相オフセットをもつ光遮蔽要素、と機能上実質的に同等である。
【0094】
説明が分かりやすいように、検出部(不図示)における光検出機構部488による検知動作の側からみたときの機能上の位置合わせを示すため、典型的な輝度(明暗)領域51X、51'Xの一例と、点線で表した各光検出領域488X、488'Xと、を空間フィルタ部465X、465'Xと、位相パス461X、461'Xと、に重ねて、図4に示す。
すなわち、受動読取ヘッドに対する遠隔随伴部の相対位置は、対応する各輝度(明暗)領域51X、51'Xからの測定光が各光検出領域488X、488X'に入射するように、調整されている。
【0095】
類似要素に関して既に説明したように、各光検出領域488X、488'Xは輝度(明暗)信号を受光するところ、これら各輝度(明暗)信号は、スケール格子80位置、および、位相信号部460X、460'X(すなわち、空間フィルタ部465X、465'X)の空間位相に関連しており、つまり、スケール格子80位置および位相信号部460X、460'Xの空間位相によって各光検出領域488X、488'Xが受光する測定光が決まる。
【0096】
図3の位相信号部360、360'のような斜め線ではない要素と比較すると、位相信号部460、460'における斜め線要素の利点としては、斜め線要素は、Y軸方向における位置合わせズレに敏感ではなくなる、という点がある。
すなわち、斜め線の角度と組み合わさって、検出器間隔Sは、様々な位相パス461X、461X'の相対位相オフセットを決め、このとき、各空間フィルタ部465X、465'Xに対する光検出領域488X、488'X全体の位置合わせは関係ない。
これに対して、図3の位相信号部360、360'のY軸方向における位置合わせがずれると、位相信号部360、360'からの信号が意図した光検出領域の外側に当たってしまい、隣接する光検出領域における検出エラーを引き起こしたり、意図した光検出領域の信号が無くなってしまう、といったことになってしまう。
【0097】
空間フィルタ465−0から465−270、465'−0から465'−270における斜め線光遮蔽要素は、空間フィルタ部において測定光の周期パターンに対し循環的であってもよいということは理解されるであろう。
場合によっては、光遮蔽要素の周期パターンの少なくとも一部が互いに反対向きの斜め線を有する矢羽根模様(chevron shape)になっていてもよく、これらは、すなわち、測定軸に平行な線に対して対称であり、したがって、図4のような同じ方向の斜め線の場合と同じように理解できるであろう。
【0098】
また、光検出領域188X、188'X,388X、388'X,488X、488'Xに代表される光検出機構部の光検出領域は、アドレス指示できる複数のピクセルからなる二次元アレイを含んでいてもよい。二次元アレイにおいてアドレス指示できるピクセルは、校正や位置合わせの際に特定の位相信号を取り出すのに便利である。
このような構成により、検出器の機構的な位置合わせはより自由度が増し(場合によっては、大凡あっていれば良いという程度にできる)、そして、"検出器位置合わせ"は、どのピクセルがどの位相信号を受光するかを定義することによって、ソフト的に実行できるようになる。
【0099】
測定光パス部は、スケール格子からの干渉光を受光できる位置に拡大手段を有していてもよい。
このとき、干渉光が第1微細ピッチの干渉縞(例えば1マイクロメートル程度の微小格子ピッチでできる微細干渉縞)を有しており、拡大手段は、測定光パス部の他の要素に向けて、第2の粗いピッチを有する干渉縞を射出する。
【0100】
例えば、測定光パス部の他の要素には空間フィルタを含んでいてもよく、粗い干渉縞は、安価でかつロバストな空間フィルタ構成を可能にする。
もちろん、"拡大手段"というのは、フラクショナルな拡大(つまり縮小)であってもよく、例えば、入力の干渉縞が粗くて(例えば40マイクロメートルや100マイクロメートル以上)、より細かい干渉縞(例えば40マイクロメートル以下)を出力したいような場合には、そうすればよい。
【0101】
拡大手段を提供する様々な技術が知られており、例えば、既知の従来および/またはテレセントリック拡大レンズや、回折格子がある。
(これらは、米国特許3,796,498や米国特許5,009,506、米国特許公開2009/0279100に開示されている。)
【0102】
図5Aは、受動読取ヘッド510を有する光学式エンコーダ500をY軸に沿った方向から見た側面図であり、受動読取ヘッド510は、測定光パス部550の第3実施形態を含んでおり、図1の光学式エンコーダ100の一実施形態と見做し得る。
【0103】
光学式エンコーダ500は、光学式エンコーダ300に類似のものと見做すことができ、同様に理解されるであろうが、以下に説明する測定光パス部550に関して特徴を有する。
図5において、符号5XXは、図3の3XXに対応しており、容易に理解できるであろうから、詳細な説明は省略する。
【0104】
受動読取ヘッド510はビーム偏向器522を有しており、これにより、入射と出射の光学経路がY軸方向で離れるようになっており、これは図3のエンコーダ300と同様の構成であり、X軸方向からみた側面図(不図示)についても図3Bと同様である。
すなわち、光源光30がビーム案内要素522に達すると、ビーム案内要素522はこの光30を(YZ面内で)傾斜したパスに沿ってスケール格子80に向けて案内する。そして、スケール格子80は、この光をYZ面内で傾斜したパスに沿って反射させ、測定光50、50'が生じる。このとき、測定光50、50'は、Y軸方向において、光源光30から離間している。
【0105】
図3中の対応要素と同じように、受動読取ヘッド510は、スケール照明パス部520と、測定光パス部550と、を備え、遠隔随伴部580は、光源581と、検出部582と、を備える。
光源581は、既述の光源381と同様に動作すればよい。
検出部582は、遠隔レンズ部584と、光検出機構部588と、を備える。
【0106】
受動読取ヘッド510は、ビーム案内要素522を介して光源光30が入射し、スケール照明光35をYZ平面に沿った入射角でスケール格子80に入るように射出する。
これに関し、受動読取ヘッド310の諸要素を図5Bに示してある。すなわち、図5Aは光学式エンコーダ500をY軸方向から見た側面図であり、図5Bは、受動読取ヘッド510の基板590上の諸要素を示す図であり、図5AのDD線断面図である(すなわち、Z方向から見た図である。)
【0107】
図5Aに示すように、スケール照明パス部520において、光源光30は照明スプリッタ523に達する。
照明スプリッタ523は、基板590上に配置された光源格子となっており、照明格子ピッチIGPは、様々な次数のスケール光35を生じさせ、これがスケール格子80に入射する。
(たとえば、35−0は0次であり、35-Pはプラス1次であり、35-Mはマイナス1次である。)
もしくは、光源格子に代えて、同様の働きをする屈折素子を使用してもよい。
【0108】
スケール格子80は、スケール照明光35を受光して、YZ平面内の角度で受動読取ヘッド510に達するように干渉光40、40'を反射する。
このとき、干渉光の空間位相は、スケール格子80に対する受動読取ヘッド510の相対測定位置に依存する。図3Aに詳細に示すように、複数のビームからなるスケール照明光35(たとえば、35−0は0次であり、35-Pはプラス1次であり、35-Mはマイナス1次である)がスケール格子80で回折される。
これにより、複数のビームからなる干渉光40、40'を生じさせ(たとえば、40−0は回折された35−0ビームから生じ、40-Pは回折された35-Pビームから生じ、40'−0は回折された35−0ビームから生じ、40'-Mは回折された35-Mビームから生じる)、これらは測定光パス部550に入射する。
【0109】
第3実施形態としての測定光パス部550は、上記第1、第2実施形態の150や350とは違った働きをする。干渉光40は、スケール格子80に近位しているときは干渉縞を含んでいてもよいが、これらは直接使用されるわけではない。
干渉光40から回折された回折光40−0、40−Mがコンバイナ回折格子560CGに入射される。コンバイナ回折格子560CGは、測定光パス部550の位相信号部560に含まれている。コンバイナ回折格子560の格子ピッチPCGは次のように設けられている。すなわち、入射した回折光40−0をさらに回折した成分を、"回折されていない"出射成分と平行になるように出射し、これによって測定光成分50−Aを生成する。これら平行な成分が干渉して測定光成分50−Aを生成する。
【0110】
それらは平行であるので、測定光成分50−Aは重要な干渉縞構造を含んでいない。むしろ、付加的な空間濾過を経なくても、それは望ましい輝度(明暗)領域を生成し、これら輝度(明暗)領域の輝度(明暗度)は、その平行出力成分の相対的空間位相に依存している。そして、その平行出力成分の相対的空間位相は、スケール格子80の測定位置によって変化する干渉光の空間位相に依存している。
【0111】
同様に、コンバイナ回折格子560CGは、回折光40−Mをさらに回折した成分を、回折されていない成分(40−0)と平行になるように射出し、これによって測定光成分50−Bを生成する。これら平行な成分が干渉して測定光成分50−Bが生成する。それらは平行であるので、測定光成分50−Bは重要な干渉縞を含んでいない。
【0112】
むしろ、付加的な空間濾過を経なくても、それは望ましい輝度(明暗)領域を生成し、これら輝度(明暗)領域の輝度(明暗度)は、その平行出力成分の相対的空間位相に依存している。
そして、その平行出力成分の相対的空間位相は、スケール格子80の測定位置によって変化する干渉光の空間位相に依存している。
偏向器要素DEFLは、測定光要素50−Bを偏向させて、遠隔随伴部580に向かわせる。
【0113】
このような場合、測定光分散要素570は任意であり、削除してもよい。
例えば、測定光成分50−Aと測定光成分50−Bとが光検出機構部588の対応要素に対して位置合わせを維持できるのであれば、測定光分散要素570は削除してもよい。(後述する。)もしくは、測定光分散要素570を設ける場合には、偏向器DEFLは任意であって、削除してもよい。
なぜなら、測定光分散要素570自身が測定光成分50−Bによって得られる輝度(明暗)領域が検出部582によって様々な角度から撮像されるようにするからである。(これは既に述べたことである。)
【0114】
位相信号部560は、複数の位相パス561X(それぞれは対応するコンバイナ回折格子560CG−0から560CG−270を有する)を有し、位相パス561Xには干渉光40が入射して、それぞれ対応する輝度(明暗)領域を有する測定光50を射出する。
輝度(明暗)領域は、入力された干渉光40の空間位相と、対応する位相パスの位相オフセットと、に関連する平均化された輝度(明暗度)を有する。
【0115】
各位相パスの位相オフセットは、受動読取ヘッド510の様々な格子ピッチおよび/またはコンバイナ回折格子560CG−0から560CG−270の空間位相オフセットに依存している。
当業者であれば解析または実験に基づいて望ましい位相オフセットに辿り着くであろう。
例えば、設計解析に関する指針は、米国特許4,776,701に開示されている。
【0116】
コンバイナ回折格子560CG−0から560CG−270は基板590に固定的に設けられ、光遮蔽要素を有している。
この光遮蔽要素は、コンバイナ回折格子ピッチPCGで設けられており、このコンバイナ回折格子ピッチPCGは望ましい回折角を実現するように設けられている。(前述の通りである。)
様々な輝度(明暗)領域51Xによって、光学的に検知され、そして、位置を示す信号をもたらす測定光50となる。
【0117】
説明が分かりやすいように、検出部582における光検出機構部588による検知動作の側からみたときの機能上の位置合わせを示すため、典型的な輝度(明暗)領域51X、51'Xの一例と、点線で表した各光検出領域588Xと、をコンバイナ回折格子CG−Xと、位相パス561Xと、に重ねて、図5Bに示す。
すなわち、受動読取ヘッド510に対する遠隔随伴部580の相対位置は、対応する各輝度(明暗)領域51X、51'Xからの測定光が光検出領域588Xに入射するように、調整されている。
したがって、各光検出領域588Xは輝度(明暗)信号を受光するところ、これら各輝度(明暗)信号は、スケール格子80位置、および、位相信号部560X(すなわち、コンバイナ回折格子560CG−X)の空間位相に関連しており、つまり、スケール格子80位置および位相信号部560Xの空間位相によって各光検出領域588X、588’Xが受光する測定光が決まる。
【0118】
遠隔レンズ部584は、上述したように、測定光50、50'が入射し、それぞれの輝度(明暗)領域の像を光検出機構部588に提供するように配置されている。(既述の通りである)
一例として、遠隔レンズ部584は、位相信号部560、560'から出たときにほぼ同一面になっているものを光検出機構部588(すなわち測定光分散要素570の射出面に等価的といってもよい)に結像させる。
前に説明したように、光検出機構部588は、複数の光検出588Xを備え、撮像された各輝度(明暗)領域51Xの明暗度を検知し、検知した輝度(明暗度)に基づく複数の信号60を出力して、測定位置を示すように構成されている。
例えば、遠隔レンズ部584は、望ましい程度の不鮮明さをもたらし、空間的平均や不鮮明パターンを作るようし、これによって、光検出機構部588において撮像された各輝度(明暗)領域がより均等になるように構成されてもよい。
【0119】
図6は、受動読取ヘッド610の近くに偏向器要素635を備えた光学式エンコーダ600の構成を示す図であり、入射パスおよび射出パスは測定軸に対してほぼ平行である。例えば、偏向器要素635は、受動読取ヘッド610のハウジング内に設けられる。
【0120】
偏向器要素635は、単純に、受動読取ヘッド610に対して固定的な位置を保つように設けられている。図6は、単なる例示であって、この構成に限定されないことは容易に理解されるであろう。光学式エンコーダ600は、図2の光学式エンコーダ200と同様の要素および動作原理を含む。
【0121】
図6において、符号6XXは、図2の2XXに対応しており、容易に理解できるであろうから、重要な差異だけを説明する。
【0122】
例えばある一つの実施形態として、スケール格子80がX軸に沿って移動するのに対して、遠隔随伴部680、偏向器要素635および受動読取ヘッド610は位置が固定されているとする。
このような構成のエンコーダでも、図2を参照して説明したものと同様に機能する。
【0123】
またあるいは、スケール格子80と遠隔随伴部680との位置が固定されており、受動読取ヘッド610および偏向器要素が移動するとする。このような実施形態において、光学式エンコーダ600は前述の原理に従って機能する。
ただし、遠隔随伴部683の撮像要素684は、既知の焦点合わせおよび像拡大の技術によって積極的に制御されるようになっていなければならない。
なぜならば、測定光パス部650、650'への距離が変化したとしても、測定光パス部650、650'に近いところ(すなわち、測定光分散要素670、670'の射出面に近いところ)の測定光50を適切に撮像しなければならず、また、前記の輝度(明暗)領域を光検出部で受光するように適合および/または調整しなければならないからである。
図7を参照しながら以下に説明する。
【0124】
例えば、上記のような実施形態においてロバスト性を向上させようとすると、光検出機構部688の光検出領域の間隔やサイズ、および、位相信号部460、460'の位相パスの間隔やサイズを、前述の実施形態よりも大きくすることになるであろう。これによって、位置合わせや焦点合わせがそれほど厳密ではなくなるからである。なお、これは場合によっては必須ではない。
【0125】
これまで説明した実施形態は、例示であって、これらに限定されるものではない。
例えば、図6は、図2に類似の受動読取ヘッドを用いた実施形態を示していた。
これに代えて、図3に類似の受動読取ヘッドを用いることもできる。
【0126】
そのような場合、遠隔随伴部は図6の状態からX軸回りに90度回転させることもでき、遠隔随伴部680のビームスプリッタは削除できる。なぜならば、Y軸方向で入射パスと出射パスとが離間するからである。入射パスと出射パスとが測定軸に対してほぼ平行であるような実施形態は、これまでの説明から当業者には明らかであろう。
【0127】
図7は、検出部782の一実施形態を示す図であり、検出部782は、動的トラッキングシステムを備えており、これは、図6の遠隔随伴部680の検出部682に置き換えて使用することができる。
図7において、符号7XXは、図6の6XXおよび/または図3の3XXに対応しており、容易に理解できるであろうから、重要な差異だけを説明する。
【0128】
図7に示すように、検出部782は、測定光(パスまたは光線)50−Aから50−Dに位置合わせされている。測定光(パスまたは光線)50−Aから50−Dというのは、前述の各輝度(明暗)領域に相当するとしてもよい。
検出部782は、遠隔オートフォーカス部784と、ビームスプリッタ785と、光検出機構部788と、オートフォーカスアパーチャー786と、複数のオートフォーカス検出器789A−789Dと、を備えている。そして、遠隔オートフォーカス部784は、ズームおよび/またはオートフォーカスレンズと、アクチュエータと、制御部784'と、を有し、これらは既知の原理を利用すればよい(例えば、適切な部品を購入すればよい。)
【0129】
例えば、検出器789A−789Dは、90度位相差二相検出器や光位置センサ(PSD)を備えていてもよい。
測定にあたって、各輝度領域751A−751Dは、測定光750A−750Dを出力し、測定光750A−750Dは、検出部782の各遠隔オートフォーカスレンズ部784に至るパスに沿って進む。遠隔オートフォーカスレンズ部784は、測定光750A−750Dが入射され、オートフォーカスアパーチャー786を通過した各輝度領域751A−751Dの像を検出器789A−789Dに提供するように配置されている。
【0130】
検出器789A−789Dは、各輝度領域751A−751Dの像の輝度(明暗)および/または位置を検知して、合焦の程度を示す信号CS(例えば、検出器上における各スポットの位置やサイズ)を出力する。
オートフォーカスレンズ部784の制御部784'は、前記信号CSが入力され、アクチュエータを制御し、これによって、各輝度領域750A−750Dの像が検出器789A−789D上に結像するようにする。
同時に、ビームスプリッタ785は、測定光750A−750Dの一部を案内し、各輝度領域750A−750Dの像が光検出機構部788上に結像するようにし、これによって、測定位置を示す信号が生成される。(前述の通り。)
【0131】
または、受動読取ヘッドからの出力として、オートフォーカス用の信号領域が含まれるようにしてもよい。すると、このオートフォーカス信号は常に強い。
(例えば、遠隔随伴部の光源で照射された受動読取ヘッド上の特定のターゲットからの反射を得てもよい。)
または、光検出機構部788からの信号がフォーカス信号生成回路やプログラムで処理されるようにしてもよく、これによって、オートフォーカスレンズ部784のコントロール部784'が利用できる制御信号が得られる。
【0132】
例えば、光検出機構部788が二次元ピクセルアレイで構成されている場合、輝度(明暗)領域751A−751Dの像が限定された数のピクセルにおいて最も高い光強度を示したときに合焦したことが判定される。
これまで説明してきたフォーカスシステムの実施形態は例示であって限定されるものではない。
既知の様々な動的オートフォーカスおよび/または拡大の方法が利用され得る。
【0133】
本発明の好適な実施形態を説明したが、様々な変形が可能であることは当業者には明らかであろう。
したがって、本発明の趣旨を逸脱することなく様々な変更がなされ得る。
【符号の説明】
【0134】
10・・・読取ヘッド、10W・・・ケーブル、30・・・光源光、35・・・スケール照明光、40・・・干渉光(干渉縞、回折光)、50・・・測定光、51X・・・輝度(明暗)領域、60・・・信号、80・・・スケール格子、85・・・周期格子パターン、100・・・光学式エンコーダ、110・・・受動読取ヘッド、120・・・スケール照明パス部、123・・・照明スプリッタ、150・・・測定光パス部、160・・・位相信号部、160X・・・位相信号部、161A,161B,161C,161D、161X・・・位相パス、165、165X・・・空間フィルタ部、170・・・測定光分散要素、180・・・遠隔随伴部、180W・・・ワイヤ、181・・・光源、182・・・検出部、183・・・ビームスプリッタ、184・・・遠隔レンズ部、188・・・光検出機構部、188X・・・光検出領域、190・・・基板、200・・・光学式エンコーダ、300・・・光学式エンコーダ、310・・・受動読取ヘッド、320・・・スケール照明パス部、322・・・ビーム偏向器、323・・・照明スプリッタ、350・・・測定光パス部、360、360X・・・位相信号部、361X・・・ 位相パス、365、365X・・・周期的空間フィルタ、370・・・測定光分散要素、380・・・遠隔随伴部、381・・・光源、382・・・検出部、384・・・遠隔レンズ部、388・・・光検出機構部、388X・・・光検出領域、390・・・基板、460、460X・・・位相信号部、461X・・・位相パス、465、465X・・・空間フィルタ、488・・・光検出機構部、488X・・・光検出領域、490・・・基板、500・・・光学式エンコーダ、510・・・受動読取ヘッド、520・・・スケール照明パス部、522・・・ビーム偏向器(ビーム案内要素)、523・・・照明スプリッタ、550・・・測定光パス部、560、560X・・・位相信号部、560CG コンバイナ回折格子、561X・・・位相パス、570・・・測定光分散要素、580・・・遠隔随伴部、581・・・光源、582・・・検出部、584・・・遠隔レンズ部、588・・・光検出機構部、588X・・・光検出領域、590・・・基板、600・・・光学式エンコーダ、610・・・受動読取ヘッド、635・・・偏向器要素、650・・・測定光パス部、670・・・測定光分散要素、680・・・遠隔随伴部、682・・・検出部、683・・・遠隔随伴部、684・・・撮像要素、688・・・光検出機構部、750A-750D・・・測定光(輝度領域)、782・・・検出部、784・・・遠隔オートフォーカス部、784'・・・制御部、785・・・ビームスプリッタ、786・・・オートフォーカスアパーチャー、788・・・光検出機構部、789A−789D・・・オートフォーカス検出器、DEFL・・・偏向器要素、ENCL・・・筐体、HSR・・・ハウジング、IGP・・・照明格子ピッチ、PCG・・・格子ピッチ、PFP・・・位相フィルタピッチ、S・・・検出器間隔、SP・・・スケールピッチ、TW・・・透明窓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式エンコーダであって、
測定軸方向に沿った周期的格子パターンを有するスケール格子と、
スケール格子に近接して設けられた受動読取ヘッドと、
光源および検出部を有する遠隔随伴部と、備え、
スケール格子と受動読取ヘッドとの一方は測定軸に沿って移動可能になっており、
受動読取ヘッドは、スケール照明パス部と、測定光パス部と、を有し、
検出部は、遠隔レンズ部と、光検出機構部と、を有し、
遠隔随伴部は、受動読取ヘッドから離隔して設けられ、光源光を受動読取ヘッドに至る第1パスに沿って射出し、
受動読取ヘッドは、光源光が入射し、スケール照明パス部からスケール照明光をスケール格子に向けて出力し、
スケール格子は、スケー照明光を受光して干渉光を受動読取ヘッドに射出し、
干渉光の空間位相は測定位置に依存しており、
受動読取ヘッドの測定光パス部がスケール格子からの干渉光を受光して、測定光を射出するようになっており、
測定光は、遠隔レンズ部に至る第2パスに沿って複数の輝度領域を有しており、
測定光パス部は、複数の位相パスを有する位相信号部を有し、位相信号部に干渉光が入射して対応する各輝度領域を生成し、
位相パスは、対応する位相オフセットを有し、各輝度領域の輝度が、入射してくる干渉光の空間位相と、対応する位相パスの位相オフセットと、に相関するようになっており、
遠隔レンズ部は、測定光が入射し、複数の各輝度領域の像を光検出機構部に提供し、
光検出機構部は、撮像された複数の各輝度領域の輝度を検知し、検知した輝度に基づいて測定位置を示す信号を出力する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
位相信号部は、光遮蔽要素を有する空間フィルタを備え、光遮蔽要素は周期的パターンで配置され、このパターンによって測定光を空間的に濾過する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、
光遮蔽要素の周期パターンの少なくも一部は、測定光の周期パターンに対して循環的である
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、
光遮蔽要素は、測定軸に平行な線に対して対称な矢羽根模様になっている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、
受動読取ヘッドは、基板を有し、空間フィルタはこの基板に固定的に設けられ、スケール照明光は基板を通過する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項6】
請求項5に記載の光学式エンコーダにおいて、
スケール照明パス部は、光源格子を有し、光源格子には光源光が入射し、回折次数を有するスケール照明光を射出する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項7】
請求項6に記載の光学式エンコーダにおいて、
光源格子は基板上に設けられている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項8】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
位相信号部は、少なくとも一つのコンバイナ回折格子を有し、
コンバイナ回折格子は周期的パターンの回折格子要素を有し、
周期的パターンの回折格子要素は、スケール格子からの干渉光が入射し、様々な次数で回折された干渉光を互いに平行なパスで出力するようになっており、これら平行な光線が干渉することで各位相パスからの各輝度領域が提供されるようになっている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項9】
請求項8に記載の光学式エンコーダにおいて、
受動読取ヘッドは、基板を有し、回折格子要素は基板に固定的に設けられ、スケール照明光は基板を通過する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項10】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
測定光パス部は、位相信号部からの光を受光して測定光を射出する測定光分散要素を備える
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項11】
請求項10に記載の光学式エンコーダにおいて、
測定光分散要素は、少なくとも一つの拡散器と蛍光体粒子の層とを有している
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項12】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
第2パスは、受動読取ヘッドとスケール格子との間の距離、または、受動読取ヘッドの最大寸法、の少なくとも一方よりは長い
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項13】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
第2パスは、受動読取ヘッドを囲む筐体に付随した透明部材を有する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項14】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
受動読取ヘッドは、スケール格子からの干渉光を受光できる位置に拡大手段を備えており、
拡大手段に入射する干渉光は、縞間隔が第1ピッチである干渉縞を有しており、
そして、拡大手段は、測定光パス部の要素に向けて、縞間隔が第2ピッチである干渉縞を有する干渉光を射出する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項15】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
受動読取ヘッドは、偏向器要素を有し、
偏向器要素は、光源光を受光して、光を測定軸方向に対して直交する方向からスケール格子に入射させるように案内する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項16】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
受動読取ヘッドと遠隔随伴部とは別々のハウジングに収納されている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項17】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
受動読取ヘッドは偏向器要素を有し、
偏向器要素は、測定軸方向に沿った光源光を受光し、光をスケール格子に向かう方向に案内し、測定軸方向に直交する方向の測定光を受光し、光を測定軸に沿って遠隔随伴部に向かうように案内する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項18】
請求項17に記載の光学式エンコーダにおいて、
遠隔随伴部は、オートフォーカス手段を有し、
測定動作中に、受動読取ヘッドが遠隔随伴部とスケールに対して相対移動し、オートフォーカス手段は、複数の各輝度領域の像を自動焦点合わせして光検出機構部に提供する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−15518(P2013−15518A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141140(P2012−141140)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】